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特許7323809金属帯の反り測定方法および金属帯の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】金属帯の反り測定方法および金属帯の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/00 20060101AFI20230802BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20230802BHJP
   C23C 2/18 20060101ALI20230802BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C23C2/00
C23C2/40
C23C2/18
G01B11/16 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020022155
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021127489
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】飯田 眞一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 忠明
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-188907(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003144(WO,A1)
【文献】特開2009-076633(JP,A)
【文献】特開平9-279323(JP,A)
【文献】特開平5-287478(JP,A)
【文献】特開2005-281799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00-2/40
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的にめっき浴に浸漬させ、ワイピングノズルにより余剰メッキ液を払拭してめっき層を形成する金属帯を製造する際に、前記ワイピングノズル近傍の金属帯に発生した反りを測定する方法であって、
前記ワイピングノズルの下流側に、前記金属帯の幅方向の端面側を撮影するカメラと、前記金属帯を挟んで前記カメラと対向する位置にバーライトとを配置し、
前記カメラにより検知された前記バーライトからの光に基づいて、前記金属帯の反りを測定することを特徴とする金属帯の反り測定方法。
【請求項2】
前記バーライトを前記金属帯の搬送方向に対して傾斜させて配置することを特徴とする請求項1に記載の金属帯の反り測定方法。
【請求項3】
前記カメラにより得られた画像に基づいて前記金属帯の反り量を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の金属帯の反り測定方法。
【請求項4】
連続的にめっき浴に浸漬させ、ワイピングノズルにより余剰メッキ液を払拭してめっき層を形成する金属帯を製造する方法であって、
請求項1~3に記載の金属帯の反り測定方法により測定した反りに基づき、前記ワイピングノズルの位置または前記めっき浴中のロール位置を変更することを特徴とする金属帯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融めっきライン上を移動する金属帯に発生した反りを検知する反り検知方法およびそれを利用した金属帯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、亜鉛を主体とした溶融亜鉛めっき鋼板等の溶融めっき鋼板は、脱脂および洗浄された帯状の鋼板(鋼帯)を、水素および窒素を主体とした連続焼鈍炉を用いて焼鈍してから所定温度まで冷却し、スナウトを介して溶融亜鉛めっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを行うことによって、製造される。
このとき、溶融亜鉛めっき浴から上方に引き上げた鋼板には、過剰に溶融亜鉛が付着しているので、狙い付着量になるようにワイピングノズルからのガスジェットで払拭している。この時に、狙い付着量は、同一のワイピングノズルを使用している場合、ワイピングノズルからの噴射ガス圧力(ワイピング圧力)やワイピングノズル先端と鋼板との距離(スタンドオフ距離)を変えることで調整される。
【0003】
一般に鋼板のオモテ面とウラ面のめっき付着量は同一、かつ幅方向に均一にする必要がある。オモテ面ワイピングノズルとウラ面ワイピングノズルとの間の中央位置を鋼板が通過すれば、オモテ面とウラ面のめっき付着量は等しくなるが、何らかの理由で鋼板の位置(パスライン)がどちらかに近づくと、近づいた側のめっき付着量は薄く、遠のいた側のめっき付着量は厚くなる。この場合には、表裏のめっき付着量が等しくなるように、浴中ロールの押込み量を変えてパスラインの位置を調整したり、ワイピングノズル位置をスタンドオフ距離がオモテ/ウラで等しくなるように動かしたりする。また、鋼板に反り(C反り)が生じると、鋼板の幅方向で均一なワイピングができなくなり、幅方向のめっき付着量が不均一になるため、この場合も浴中ロールの押込み量を変えて鋼板にかかる張力を調整したりする。
【0004】
鋼板オモテ/ウラ面の幅方向のめっき付着量はワイピングノズルの下流にある付着量計により測定する。
一般には、付着量の測定はめっきが乾いた後に行う必要があることから、付着量計はワイピングノズルから一定距離(例えば100m)離れた位置に配置することが多い。この場合、鋼板のパスラインが変動することで付着量が管理範囲を外れたことを付着量計で感知しようとすると、鋼板が一定距離進行するまで外れたことに気づかないことになり、次工程で切り下げ処置をする量も多くなって、製品歩留まりが低下する。よって、パスライン変動時には可及的速やかに上記対応をすることが望まれ、ワイピングノズルのすぐ下流に光学的距離計を配置して、ワイピングノズルと鋼板との距離を測定し、間接的に付着量を計測(付着量を推定)して、ワイピングノズルの距離を変更することが行われている(例えば、特許文献1)。
【0005】
一方、パスラインを流れる鋼板の反りも監視し、幅方向のめっき不均一性が生じないようにすることが行われている。
反りの監視に関しては、例えば、特許文献2には、鋼板の幅方向の両端に投光器と受光器を配置すること(方法1)、または鋼板の幅方向の片端にカメラを配置すること(方法2)で鋼板の反り量を測定する発明が記載されている。特許文献2に記載の発明では、測定結果に応じて電磁石の出力を調整して鋼板の板形状の制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-281799号公報
【文献】特開2002-188907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、鋼板の幅方向端にそれぞれ投光器と受光器を配置する場合(方法1)、両機器の光軸を正確に合わせる必要があり、調整が困難である。
また、鋼板の幅方向片端にカメラを配置する場合(方法2)も、カメラで捉えた画像から反りを正確に特定することが困難である場合があった。すなわち、カメラをこのように配置すると、反りが発生した場合、特許文献2の図15(a)のような画像が得られる。これを画像処理すれば、一応の反り量は計算可能である。
しかし、反りの凸部側は徐々に画像輝度が変化するため、凸部先端を判断することは難しい。特許文献2に記載の発明では、鋼板の幅方向に(薄板の走行面に垂直な方向に引いた直線上に)微分する処理を行い、微分値のピーク位置(図15(b)中の16a、16b)から反り量を得るが、この方法は画像を1次元的に処理しているに過ぎない。これを2次元的に処理すれば、より正確な反り量を測定できる。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、ワイピングノズル近傍で発生する反りを簡便に測定できる金属帯の反り測定方法およびそれを利用した金属帯の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、このような課題を解決するために、ワイピングノズルの下流側における鋼板(鋼帯)は、溶融めっき浴を通過することによりきれいな鏡面が形成されることから、この鏡面を利用することを考えた。
カメラを配置した位置と鋼板を挟んで反対側の位置に光源を配置すれば、鋼板が光源の陰になる。反りが生じていない場合には、鋼板の板厚分のみしか影とはならない。しかし、反りが生じた場合、光源として、予想される反り量を超える長さの棒状の光源(バーライト)を用いれば、反りの凹部側は鋼板が影となってバーライトの光と鋼板の影のコントラストがより明確になり(=2値化しやすくなり)、凹部先端が把握しやすくなるのに対し、凸部側もバーライトが鋼板に映り込み凸部先端を把握できる。
【0010】
このように光源により照らされた鋼板の画像を2次元で捉えれば、容易に反り量を把握することができる。特にバーライトを鋼板の進行方向に対して傾斜して配置すれば、バーライトは鋼板に斜めに映り込むので、凸部側のバーライトの光はV字を形成し、より一層凸部先端を把握しやすくなる。
反り量は計算装置(PC)による画像処理により求めればよいが、現場の装置として反り調整が自動化されていないものも存在する。反り調整が自動化されておらずオペレータが確認の上、手動で反り調整を行う場合には、オペレータが視覚により明確に反り量を把握できるので、反り調整の誤動作を低減できる。
そして、このようにワイピングノズル近傍でワイピングノズルと鋼板との距離を測定するとともに鋼板の反り検知を行えば、ワイピングノズルから一定距離(100m)離れた位置の付着量計で付着量の測定を行い、それをフィードバックすることも不要であり、ほぼリアルタイムでワイピングノズル位置や浴中ロール押込み量を調整することができるようになる。
【0011】
本発明は以上に基づいてなされたもので、ワイピングノズル近傍で発生する金属帯の反りを簡便に測定できる金属帯の反り検知方法およびそれを利用した金属帯の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の金属帯の反り測定方法は、連続的にめっき浴に浸漬させ、ワイピングノズルにより余剰メッキ液を払拭してめっき層を形成する金属帯を製造する際に、前記ワイピングノズル近傍の金属帯に発生した反りを測定する方法であって、
前記ワイピングノズルの下流側に、前記金属帯の幅方向の端面側を撮影するカメラと、前記金属帯を挟んで前記カメラと対向する位置にバーライトとを配置し、
前記カメラにより検知された前記バーライトからの光に基づいて、前記金属帯の反りを測定することを特徴とする。
【0013】
ここで、「前記カメラにより検知された前記バーライトからの光に基づいて、前記金属帯の反りを測定する」とは、例えば、以下のようにして金属帯の反りを測定する。
めっき浴に浸漬され、ワイピングノズルでならされれば、金属帯は鏡面となる。この鏡面に映り込んだバーライトの光を捉えれば、反り量も容易にわかる。バーライトの光の輝度が高ければ、光と金属帯の形成する影のコントラストを大きくできるし、鏡面に映り込み反射する光の輝度も高くできる。
金属帯に反りが生じている場合、反りの凹部側は金属帯が影となってバーライトの光と金属帯の影のコントラストがより明確になり、凹部先端(金属帯の幅方向の先端)が把握しやすくなる。これに対し、金属帯の凸部側では、当該金属帯の凸曲面(鏡面)にバーライトからの光が映り込む。凸曲面の幅方向中央の最も突出している部位に映り込んだ光の位置を把握し、金属帯の幅方向の先端と凸曲面(鏡面)に映り込んだ光の位置から反り量を算出する。
また、金属帯は、溶融亜鉛めっき鋼板であってもよいし、その他の金属がめっきされる金属板であってもよい。
【0014】
本発明においては、ワイピングノズルの下流側に金属帯の幅方向の端面側を撮影するカメラにより検知されたバーライトからの光に基づいて、金属帯の反りを測定するので、ワイピングノズル近傍で発生する金属帯の反り量を簡便に測定できる。
【0015】
また、本発明の前記構成において、前記バーライトを前記金属帯の搬送方向に対して傾斜させて配置してもよい。
このような構成によれば、金属帯の鏡面となっている凸曲面にバーライトからの光がバーライトに対して傾斜して映り込んで反射し、バーライトから直接の光と、映り込んだ光とによってV字形の光となり、映り込んだ光Hの先端を判別しやすくなる。このため、金属帯の反り量を確実に測定できる。
【0016】
また、本発明の前記構成において、前記カメラにより得られた画像に基づいて前記金属帯の反り量を求めてもよい。
このような構成によれば、画像処理で平面データを2値化、金属帯の凹部先端および凸部先端を把握し、差分から反り量を求めることができる。
【0017】
また、本発明の金属帯の製造方法は、連続的にめっき浴に浸漬させ、ワイピングノズルにより余剰メッキ液を払拭してめっき層を形成する金属帯を製造する方法であって、
上述した金属帯の反り測定方法により測定した反りに基づき、前記ワイピングノズルの位置または前記めっき浴中のロール位置を変更することを特徴とする。
【0018】
本発明においては、金属帯の反り測定方法により測定した反りに基づいて、ワイピングノズルの位置またはめっき浴中のロール位置を変更するので、金属帯にその幅方向に均一な付着量を有するめっき層を形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ワイピングノズル近傍で発生する金属帯の反りを簡便に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る金属帯の反り測定方法を行う際の連続溶融亜鉛めっき装置の概略構成を示す側断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る金属帯の反り測定方法を説明するためのもので、カメラとバーライトとの配置関係を模式的に示す図である。
図3】同、金属帯に対するバーライトの傾斜角を模式的に示す図である。
図4】同、金属帯の反り測定装置の概略構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明に係る金属帯の反り測定方法について説明する。
まず、本実施形態の金属帯の反り測定方法を説明する前に、連続溶融亜鉛めっき装置について図1を参照して簡単に説明する。
図1に示すように、連続溶融亜鉛めっき装置では、その溶融亜鉛めっき浴槽10内の溶融亜鉛めっき浴3に、搬送される帯状の鋼帯(金属帯)1を包囲する溶融めっき浴用スナウト(以下、スナウトと称する。)2の先端部(図1において下端部)が差し込まれており、鋼帯1はスナウト2内を通じて直接溶融亜鉛めっき浴3に搬入されるようになっている。
溶融亜鉛めっき浴3に搬入された鋼帯1は、溶融亜鉛めっき浴槽10の深部に配設されたシンクロール4を周回した後、溶融亜鉛めっき浴槽10の外部に引き上げられるようになっており、溶融亜鉛めっき浴槽10内を移動する過程で鋼帯1に連続的に亜鉛めっきが施されるようになっている。
【0022】
鋼帯1は、脱脂および洗浄された後、水素および窒素を主体とした連続焼鈍炉(図示略)により所定の温度に焼鈍されてから所定温度まで冷却され、スナウト2を介して溶融亜鉛めっき浴槽10中の溶融亜鉛めっき浴3に浸漬されることにより溶融亜鉛めっきが行われる。なお、シンクロール4の上方でかつスナウト2の内部の上部には、シンクロール4と協働して鋼帯1を連続して搬送するためのターンダウンロール5が設けられている。
また、引き上げ直後の鋼帯1は溶融亜鉛が必要以上に付着しているため、溶融亜鉛めっき浴3を出た後、ワイピングノズル6により溶融亜鉛量が必要な目付量となるように調整される。
【0023】
本実施形態の金属帯の反り測定方法は、金属帯1を連続的に溶融亜鉛めっき浴3に浸漬させ、ワイピングノズル6により余剰メッキ液を払拭して亜鉛めっき層を形成する金属帯1を製造する際に、ワイピングノズル6近傍の金属帯1に発生した反りを測定する方法である。
図1および図2に示すように、金属帯1の反りを測定する場合、まず、ワイピングノズル6の下流側(図1において上側)に、金属帯1の幅方向の一端面側を撮影するカメラ11を配置するとともに、金属帯1をその幅方向において挟んでカメラ11と対向する位置にバーライト12を配置する。つまり、バーライト12を金属帯1の幅方向の他端部側にカメラ11と対向させて配置する。
【0024】
バーライト12は、棒状の光源であり、例えば棒状の蛍光灯やLEDバーライトが使用される。また、バーライト12は、金属帯1の反り量(C反り量)を超える長さを有しており、金属帯1の搬送方向(図1および図2において上方向)に対して所定の傾斜角θで傾斜させて配置されている。
図2および図3に示すように、傾斜角θは、C反り量を判定するためには0°<θ<90°であることが必要である。このように傾斜角θを設定することによって、金属帯1の鏡面となっている凸曲面1a(金属帯1の幅方向中央よりカメラ11側の凸曲面1a)にバーライト12からの光がバーライト12に対して傾斜して映り込んで反射し、バーライト12から直接の光と、映り込んだ光HとによってV字形の光となり、映り込んだ光Hの先端13bを判別しやすくなる。なお、金属帯1の幅方向中央よりバーライト12側の凸曲面1bにもバーライト12からの光がバーライト12に対して傾斜して映り込む。
金属帯1の凸曲面(鏡面)1aに映り込んだ光Hの見やすさからは、傾斜角θは、20°≦θ≦70°が望ましく、さらに望ましくは30°≦θ≦60°が良い。
また、バーライト12の光の輝度が高ければ、光と金属帯1の形成する影のコントラストを大きくできるし、金属帯1の凸曲面(鏡面)1aに映り込んだ光Hの反射光の輝度も高くできる。
【0025】
なお、前記傾斜角θ=0°の場合では、金属帯1とバーライト12が重なっているので、バーライト12の光の映り込みがなく、C反り量の判定ができない。
また、傾斜角θ=90°の場合では、金属帯1がC反りしていてもバーライト12と金属帯1に映り込んだバーライト12の光Hが一直線上になるため、金属帯1のエッジ(金属帯1の凸曲面(鏡面)1aに映り込んだバーライト12の光Hの先端13b)が見え難くなり、0°<θ<90°に設定した場合に比して、エッジの判別が行い難くなるが、判別を行えないわけではない。
【0026】
図4は本実施形態に係る金属帯の反り測定方法を行う反り測定装置の概略構成を示す図である。
図4において、符号11はカメラであり、このカメラ11は金属帯1の幅方向の一端面側に金属帯1から所定距離だけ離間して配置され、バーライト12は、金属帯1をその幅方向において挟んでカメラ11と対向する位置に金属帯1から所定距離だけ離間して配置されている。このように、カメラ11は金属帯1の幅方向の一端面側に配置され、バーライト12は金属帯1の幅方向の他端面側に配置されている。
【0027】
また、バーライト12は2種類あり、前記傾斜角θが0°<θ<90°に設定されたバーライト12aと、傾斜角θ=90°に設定されたバーライト12bとがある。
また、金属帯1をその幅方向と直交する方向に挟むようにして左右一対のワイピングノズル6,6が配置され、このワイピンノズル6,6を金属帯1の搬送方向と直交する方向に移動させるアクチュエータ(例えば電動シリンダ等)14が制御装置15に接続されている。そして、この制御装置15によってアクチュエータ14が制御され、これによってワイピングノズル6,6は金属帯1に対して接離する方向に移動制御される。また、制御装置15を図示しない浴中ロールを移動させる図示しないアクチュエータに接続し、制御装置15によってアクチュエータが制御され、これによって浴中ロールの押込み量を制御して金属帯1のパスラインの位置を調整してもよい。
【0028】
また、カメラ11はパーソナルコンピュータ等の計算装置16に接続されており、カメラ11によって撮影された画像に基づいて金属帯1の反り量を計算するようになっている。そして、この計算された反り量が制御装置15に入力され、この反り量に基づいてワイピングノズル6,6を、アクチュエータ14を介して移動制御し、金属帯1に対する位置を調整する。つまり、金属帯1のパスラインがワイピングノズル6,6から等しい距離となるように、ワイピングノズル6,6を移動制御する。また、前記反り量に基づいて浴中ロールを、アクチュエータを介して押込み量を制御し、金属帯1のパスラインの位置を調整してもよい。
【0029】
バーライト12(12a,12b)によって照らされ、カメラ11によって撮影された画像を図4中の窓20a,20bに示す。窓20aに表示された画像は、バーライト12a、バーライト12aによって照らされた金属帯1およびその近傍を示し、窓20bに表示された画像は、バーライト12b、バーライト12bによって照らされた金属帯1およびその近傍を示す。
上述したように、カメラ11とバーライト12(12a,12b)を配置することによって、金属帯1に反り(C反り)が生じていない場合には、金属帯1の板厚分のみしか影とはならない。
【0030】
しかし、金属帯1に反りが生じた場合、反りの凹部側は金属帯1が影となってバーライト12の光と金属帯1の影のコントラストがより明確になり(=2値化しやすくなり)、凹部先端(金属帯1の幅方向の凹部先端13a)が把握しやすくなる。
これに対し、金属帯1の凸部側では、当該金属帯1の凸曲面(カメラ側鏡面)1aにバーライト12aからの光がバーライト12aに対して傾斜して映り込んで反射する。このため、カメラ11側から見れば、バーライト12aからの直接的な光と凸曲面(カメラ側鏡面)1aに映り込んだ光HがV字をなす。
【0031】
したがって、バーライト12aを使用した場合、カメラ11により得られた画像には、窓20aに示すように、金属帯1の幅方向の凹部先端13aが明確に現れるとともに、凸曲面(鏡面)1aの幅方向中央の最も突出している部位を頂点とするV字状の光(バーライト12aからの直接的な光と凸曲面(鏡面)1aに映り込んだ光H)から金属帯1の幅方向の凸部先端13bを把握できる。
そして、これを計算装置16によって、画像処理で平面データを2値化し、金属帯1の幅方向の先端(凹部先端)13aおよび凸曲面(鏡面)1aに映り込んだ光Hの先端(凸部先端)13bを把握し、差分から反り量を求めることができる。
【0032】
また、バーライト12bを使用した場合、カメラ11により得られた画像には、窓20bに示すように、金属帯1の幅方向の凹部先端13aが明確に現れる。この場合も上記バーライト12aを使用した場合と同様、バーライト12bの光と金属帯1の影のコントラストが明確になることから、その位置を把握しやすい。
これに対し、金属帯1の凸部側では、当該金属帯1の凸曲面(カメラ側鏡面)1aにバーライト12bからの光が映り込んで反射するが、前記バーライト12aを使用した場合とは異なり、バーライト12bからの直接的な光と凸曲面(カメラ側鏡面)1aに映り込んだ光HがV字をなすことはなく、両者によって形成される光は直線をなす。この場合、視覚的に金属帯1の幅方向の凸部先端13bを捉えることは難しくなるが、計算装置16によって、画像処理で平面データを2値化すれば、金属帯1の幅方向の先端(凹部先端)13aおよび凸曲面(鏡面)1aに映り込んだ光Hの先端(凸部先端)13bを把握し、差分から反り量を求めることができる。
【0033】
そして、本実施形態では、上述した金属帯1の反り測定方法により測定した反り量に基づき、ワイピングノズル6,6の位置またはめっき浴中ロールの位置を調整する。
すなわち、計算装置16によって計算された金属帯1の反り量が制御装置15に入力され、この反り量に基づいてアクチュエータ14を介してワイピングノズル6,6を移動制御して、金属帯1に対する位置を調整したり、浴中ロールの位置を調整する。つまり、金属帯1のパスラインがワイピングノズル6,6から等しい距離となるように、ワイピングノズル6,6を移動制御したり、浴中ロールの押込み量を変更してパスラインの位置を調整する。また、金属帯1の製造中に反り量を計算装置16によって連続的に求め、この反り量を制御装置15にフィードバックする制御を行うことによって、ほぼリアルタイムでワイピングノズル6,6の位置や浴中ロール押込み量を調整することができる。
【0034】
金属帯1の反り量は計算装置16による画像処理により求めればよいが、現場の装置として自動化されていないものも存在する。つまり、制御装置15を備えておらず、ワイピングノズル6,6を自動的に移動制御できない場合や浴中ロールの押込み量を変更できない場合もある。この場合、オペレータが計算装置16によって計算された反り量を確認の上、手動で反り調整を行う。このように、オペレータが視覚により明確に反り量を把握できるので、反り調整の誤動作を低減できる。
そして、このようにワイピングノズル近傍で、ワイピングノズル6,6と金属帯1との距離の測定および金属帯1の反り検知を行えば、ワイピングノズル6,6から一定距離(100m)離れた位置の付着量計で付着量の測定を行い、それをフィードバックすることも不要であり、ほぼリアルタイムでワイピングノズル6,6の位置や浴中ロール押込み量を調整することができるようになる。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、連続的にめっき浴3に浸漬し、ワイピングノズル6により余剰めっきを払拭して製造されるめっき金属帯1の製造の際、パスライン上を搬送される金属帯1に生じる反りの大きさ(反り量)を簡便に測定できる。この反り量に基づいてワイピングノズル6や浴中ロールの位置を調整することによって、幅方向に均一な付着量を有するめっき層を形成することができる。
また、カメラ11によって撮影された画像に基づいて計算装置16が金属帯1の反り量を計算するので、ワイピングノズル6よりかなり下流側(100m)にある付着量計により付着量を確認しなくても、金属帯1のオモテ面とウラ面のめっき付着量は同一かつ幅方向に均一にすることができる。したがって、金属帯1のめっき付着量外れに伴う切下げ量を減少させることができ、歩留まりが上昇、金属帯1の生産効率も上げることができる。
【0036】
(実施例)
次に実施例について説明する。
金属帯に溶融亜鉛めっき鋼板を用いた予備試験を実施した。溶融亜鉛めっき鋼板の板幅は900mm、板厚は1.0mm、バーライトにはLED灯(出力10W)、バーライトの長さは400mmを用いた。カメラには汎用ビデオカメラを用い、溶融亜鉛めっき鋼板のエッジ(幅方向の端部)からバーライトまでの距離およびカメラまでの距離はそれぞれ1mとした。
溶融亜鉛めっき鋼板の幅中央部が凸になるように意図的に3mmのC反りを溶融亜鉛めっき鋼板に付与し、カメラで撮影された反り像を画像処理ソフトを用いて二値化し、反り量を求めた。その結果、手前側エッジ(金属帯の凸曲面(鏡面)に映り込んだバーライトの光の先端)の位置と反り量の両方を正確に検出することができ、反り量は3mmと算出できた。これより、本発明の金属帯の反り測定方法の有効性を確認できた。
【0037】
次に、本発明に係る金属帯の反り測定方法を連続溶融亜鉛めっきラインのワイピングノズル下流に導入した。
実製造ラインでは、金属帯の板幅が900~1500mmで変化するので、広幅の1500mmが通板してもバーライトやカメラに接触しないようことが必要であり、板幅1500mmの時で600mm、板幅900mmの時で900mmの間隔を金属帯とバーライトおよびカメラとの間に設けた。
溶融亜鉛めっき鋼板(金属帯)の移動速度は、約60~180m/minの間で変化したが、この通常操業中においても反り量を検知することができた。その結果、反り量を平坦にする操業操作を行うことができ、溶融亜鉛めっきの幅方向付着量を一様に制御することができた。
また、連続通板ラインでは、先行コイルと後行コイルの材質が異なる場合には、先行コイルと後行コイルとの溶接部で板形状が大きく変化することがあるが、本検出方法を用いることで、その変化量をリアルタイムに把握することができ、迅速な操業操作を行うことができた。
【符号の説明】
【0038】
1 金属帯
3 めっき浴
6 ワイピングノズル
11 カメラ
12,12a,12b バーライト
図1
図2
図3
図4