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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】乾式吹付けノズル構造
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/04 20060101AFI20230802BHJP
   E04F 21/08 20060101ALI20230802BHJP
   B28B 1/32 20060101ALI20230802BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20230802BHJP
   E04F 21/12 20060101ALI20230802BHJP
   B05B 7/14 20060101ALN20230802BHJP
【FI】
B05B7/04
E04F21/08 T
B28B1/32 E
F27D1/16 C
E04F21/12 X
B05B7/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021185410
(22)【出願日】2021-11-15
(65)【公開番号】P2022151549
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2021050894
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】西口 英邦
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-255370(JP,A)
【文献】実開昭52-102914(JP,U)
【文献】特開平01-278618(JP,A)
【文献】実開平02-081641(JP,U)
【文献】実開昭55-147857(JP,U)
【文献】実開昭58-132559(JP,U)
【文献】特開2004-034432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-3/18
7/00-9/08
B05D 1/00-7/26
F27D 1/00-1/18
B28B 1/00-1/54
B28C 1/00-9/04
B21B 37/00-37/78
B01F 21/00-25/90
E04F 21/08
21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹付け材料を供給する材料供給管の下流側に設けられた水添加器と、
前記水添加器の下流側に設けられたインラインミキサと、
前記インラインミキサの下流側に設けられたノズル部材と
を備え、
前記インラインミキサは、上流側に設けられた大径部と、下流側に設けられた小径部と、前記大径部と前記小径部との間に設けられたテーパ部とを含み、中心軸に沿って上流側から下流側に直列に設けられた複数の円錐状部材を有し、上流側の前記円錐状部材の前記小径部は下流側に隣接する前記円錐状部材の前記大径部の内部に挿入されている、乾式吹付けノズル構造。
【請求項2】
前記小径部の下流側端部には、下流側に向かって内径を縮小するテーパ面が設けられている請求項1に記載の乾式吹付けノズル構造。
【請求項3】
前記小径部は、前記複数の円錐状部材の前記中心軸の延びる方向に沿って延び、内径が一定である直線部を有する請求項1又は2に記載の乾式吹付けノズル構造。
【請求項4】
前記インラインミキサは、超硬合金により形成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の乾式吹付けノズル構造。
【請求項5】
前記ノズル部材のノズル先端部には、下流側に向かって内径を縮小するテーパ面が設けられている請求項1~のいずれか一項に記載の乾式吹付けノズル構造。
【請求項6】
前記円錐状部材の前記大径部の内径が24~34mmであり、前記小径部の内径が11~19mmである請求項1~のいずれか一項に記載の乾式吹付けノズル構造。
【請求項7】
前記ノズル部材の内径は、最も下流側に設けられた前記円錐状部材の前記小径部の内径の1.2~2.5倍である、請求項1~のいずれか一項に記載の乾式吹付けノズル構造。
【請求項8】
前記ノズル部材のノズル全長は、前記ノズル部材の内径の5~10倍である、請求項1~のいずれか一項に記載の乾式吹付けノズル構造。
【請求項9】
前記水添加器の水供給管と、前記水添加器の下流側端部との間に、緩衝部を有する請求項1~のいずれか一項に記載の乾式吹付けノズル構造。
【請求項10】
前記緩衝部の前記中心軸に沿う方向の長さが30mm~130mmである請求項に記載の乾式吹付けノズル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式吹付けノズル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート、モルタル及び耐火材等を施工するための乾式吹付け工法に用いられるノズル構造としては、特許文献1に記載されているノズル構造が知られている。この特許文献1に記載されているノズル構造は水添加器と乱流混錬装置とノズル部材とを有しており、上流側から圧縮空気により輸送された粉末状の吹付け材料に水添加器において水を添加し、次に乱流混錬装置において吹付け材料と水との混合物を乱流により混練し、次にノズル部材から吹付け材料と水との混合物を施工対象物に吹付ける。
【0003】
また、乾式吹付け工法に使用する吹付け材料としては、特許文献2に記載されている高密度吹付け材料等を使用することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-255370号公報
【文献】特開平11-223325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている従来のノズル構造において、特許文献2に記載の吹付け材料を用いて乾式吹付けを実施した場合には、吹付け材料と水との混錬不良により施工対象物への吹付け材料の付着率が低くなるという問題点を有していた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、簡単な構成により、吹付け材料と水との混練性を向上させることができる乾式吹付けノズル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る乾式吹付けノズル構造は、吹付け材料を供給する材料供給管の下流側に設けられた水添加器と、水添加器の下流側に設けられたインラインミキサと、インラインミキサの下流側に設けられたノズル部材とを備え、インラインミキサは、上流側に設けられた大径部と、下流側に設けられた小径部と、大径部と小径部との間に設けられたテーパ部とを含み、中心軸に沿って上流側から下流側に直列に設けられた複数の円錐状部材を有し、上流側の円錐状部材の小径部は下流側に隣接する円錐状部材の大径部の内部に挿入されている
【0008】
また、小径部の下流側端部には、下流側に向かって内径を縮小するテーパ面が設けられていてもよい。
また、小径部は、複数の円錐状部材の中心軸の延びる方向に沿って延び、内径が一定である直線部を有してもよい。
また、インラインミキサは、超硬合金により形成されてもよい。
また、上流側の円錐状部材の小径部は下流側に隣接する円錐状部材の大径部の内部に挿入されてもよい。
また、ノズル部材のノズル先端部には、下流側に向かって内径を縮小するテーパ面が設けられていてもよい。
また、円錐状部材の大径部の内径が24~34mmであり、小径部の内径が11~19mmであってもよい。
また、ノズル部材の内径は、最も下流側に設けられた円錐状部材の小径部の内径の1.2~2.5倍であってもよい。
また、ノズル部材のノズル全長は、ノズル部材の内径の5~10倍であってもよい。
また、水添加器の水供給管と、水添加器の下流側端部との間に、緩衝部を有してもよい。
また、緩衝部の中心軸に沿う方向の長さが30mm~130mmであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乾式吹付けノズル構造のインラインミキサが、上流側に設けられた大径部と、下流側に設けられた小径部と、大径部と小径部との間に設けられたテーパ部とを含み、中心軸に沿って上流側から下流側に直列に設けられた複数の円錐状部材を有するため、簡単な構成により、吹付け材料と水との混練性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1に係るノズル構造の側面断面図である。
図2図1に示すインラインミキサの側面断面図である。
図3図1に示すインラインミキサの第1ミキサ、第2ミキサ、第3ミキサを示す側面断面図である。
図4図1に示す第1ノズル部材の側面断面図である。
図5】本発明の実施の形態2に係るインラインミキサの側面断面図である。
図6】本発明の実施の形態3に係るインラインミキサの側面断面図である。
図7】本発明の実施の形態4に係るインラインミキサの側面断面図である。
図8】本発明の実施の形態5に係る第2ノズル部材の側面断面図である。
図9】本発明の実施の形態6に係るノズル構造の側面断面図である。
図10図9に示す緩衝部の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係るノズル構造の側面断面図である。ノズル構造10は、粉末状の吹付け材料に作業者の手元において水を添加し、材料と水との混合物を混練した後に施工対象物に吹付ける工法である、乾式吹付け工法に使用されるノズル構造である。ノズル構造10には、上流側から粉末状の吹付け材料21を圧縮空気によりノズル構造10まで輸送する材料輸送ホース20に接続された、水添加器30と、水添加器30の下流側に設けられ、吹付け材料21を水と混練して混合物とするインラインミキサ40と、インラインミキサ40の下流側に設けられ、混練された混合物を吹付ける第1ノズル部材60とが設けられている。第1ノズル部材60は、SUS304により形成されている。
【0012】
インラインミキサ40はスタティックミキサとも呼ばれ、内部の断面積の変化により通過する物体の流速と圧力を変化させて撹拌、混練するミキサである。なお、以下のノズル構造10の説明において、上流側とは材料輸送ホース20に近い側をいい、下流側とは第1ノズル部材60のノズル先端部に近い側をいう。また、材料輸送ホース20は材料供給管を構成している。
【0013】
材料輸送ホース20は、水添加器30のアダプタソケット31を介して、水添加器30のスリーブ32に接続されている。スリーブ32の下流側には、水添加器入口34が接続されている。水添加器入口34には、ノズル構造10の中心軸Aの軸方向に対して垂直な方向に開口しており、図示しない給水ホースに接続されている水供給管33が接続されている。また、水添加器入口34の下流側には水添加器出口35が接続されている。
【0014】
水添加器出口35の下流側には、インラインミキサ40を構成する第1ミキサ42a、第2ミキサ42b、第3ミキサ42cが上流側から順に接続されている。第1ミキサ42a、第2ミキサ42b、第3ミキサ42cの外側には、第1ミキサ42a、第2ミキサ42b、第3ミキサ42cを互いに接続された状態で保持するためのミキサホルダ41が設けられている。水添加器出口35と第1ミキサ42aとの間には、吹付け材料21及び水の漏れを防止するための平ゴムパッキン43及びOリング44が挿入されている。なお、第1ミキサ42a、第2ミキサ42b、第3ミキサ42cは円錐状部材を構成している。
【0015】
第3ミキサ42cの下流には、第1ノズル部材60が接続されている。第1ノズル部材60はノズル先端部61及びノズル後端部62を有している。第3ミキサ42cとノズル後端部62との間には、吹付け材料21及び水の漏れを防止するための平ゴムパッキン43が挿入されている。
【0016】
材料輸送ホース20、アダプタソケット31、スリーブ32、水添加器入口34、水添加器出口35、第1ミキサ42a、第2ミキサ42b、第3ミキサ42c及び第1ノズル部材60は、ノズル構造10の中心軸Aの方向に沿って配置され、互いに連通している。なお、狭い場所で吹付け作業を実施する場合には作業効率向上のために、ノズル構造10の全長は600mm未満であることが好ましい。
【0017】
図2は、インラインミキサ40を示す側面断面図である。また、図3は、インラインミキサ40の第1ミキサ42a、第2ミキサ42b、第3ミキサ42cを示す側面断面図である。第1ミキサ42a、第2ミキサ42b、第3ミキサ42cは、超硬合金であるタングステンカーバイドにより形成されている。第1ミキサ42aには、上流側に内径がB1である大径部45aが設けられている。また第1ミキサ42aの下流側には、大径部45aの内径B1よりも小さい内径C1を有する、小径部47aが設けられている。さらに、第1ミキサ42aの、大径部45aと小径部47aとの間にはテーパ部46aが設けられている。
【0018】
第2ミキサ42b及び第3ミキサ42cは、第1ミキサ42aと同じ形状を有している。すなわち、第2,第3ミキサ42b,42cには、上流側に内径がB1である大径部45b,45cが設けられている。また、第2,第3ミキサ42b,42cの下流側には、内径が大径部45b,45cの内径B1よりも小さい内径C1を有する小径部47b,47cが設けられている。さらに、第2,第3ミキサ42b,42cの、大径部45b,45cと小径部47b,47cとの間にはテーパ部46b,46cが設けられている。図3に示すように、第1,第2,第3ミキサ42a,42b,43cの中心軸Aに沿う方向の軸方向長さL1は好ましくは20mm以上である。
【0019】
再度図2及び図3を参照すると、第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの大径部45a,45b,45cの内径B1は、好ましくは24~34mmの範囲内であり、より好ましくは24~26mmの範囲内である。また、第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの小径部47a,47b,47cの内径C1は、好ましくは11~19mmの範囲内であり、より好ましくは14~16mmの範囲内である。すなわち、より好ましい第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの小径部47a,47b,47cの内径C1に対する大径部45a,45b,45cの内径B1の比は0.8以下である。
【0020】
第1ミキサ42aの小径部47aは、第2ミキサ42bの大径部45bの内側に位置している。第2ミキサ42bの小径部47bは、第3ミキサ42cの大径部45cの内側に位置している。すなわち、インラインミキサ40の中心軸Aの延びる方向において、第1ミキサ42aは第2ミキサ42bと一部が重なっており、第2ミキサ42bは第3ミキサ42cと一部が重なっている。
【0021】
第1,第2,第3ミキサ42a,42b,43cの小径部47a,47b,47cの内部には、中心軸Aの延びる方向に沿って延び、所定の軸方向長さM1と一定の内径C1とを有するストレート部48a,48b,48cが形成されている。ストレート部48a,48b,48cの長さM1は、好ましくは4.5mm以下である。なお、ストレート部48a,48b,48cは直線部を構成している。
【0022】
第1,第2,第3ミキサ42a,42b,43cの下流側の各端部には、径方向の外周側に対して内周側がより下流側に位置するように下流側に向かって径を縮小するテーパ面である下流側端部49a,49b,49cが形成されている。具体的には、下流側端部49a,49b,49cには、中心軸Aの延びる方向に対して垂直な方向に広がる仮想的な平面に対して鋭角である、角度D1をなすテーパ面がそれぞれ形成されている。また、角度D1は好ましくは4°以上である。
【0023】
図4は、第1ノズル部材60の側面断面図である。第1ノズル部材60は、下流側にノズル先端部61を有し、上流側にノズル後端部62を有している。ノズル先端部61は、径方向の外周側に対して内周側がより下流側に位置するように下流側に向かって径を縮小するテーパ面である。具体的には、ノズル先端部61には、中心軸Aの延びる方向に対して垂直な方向に広がる仮想的な平面に対して、鋭角である角度E1をなすテーパ面が形成されている。また、角度E1は好ましくは4°以上である。
【0024】
ノズル後端部62は、インラインミキサ40の下流側に接続可能に構成されている。第1ノズル部材60の内径は、ノズル後端部62のインラインミキサ40との接合部を除いて、一定の内径F1に形成されている。内径F1は、好ましくは第3ミキサ42c(図3参照)の小径部47cの内径C1の1.2~2.5倍、すなわち13.2~47.5mmの範囲である。また、第1ノズル部材60の軸方向のノズル全長N1は、好ましくは第1ノズル部材60の内径F1の5~10倍である。
【0025】
次に、この実施の形態1に係るノズル構造10の動作について説明する。
図1に示すように、ノズル構造10により吹付け材料21の乾式吹付けを実施する場合には、吹付け材料21が収容された図示しない既知の乾式吹付け機の材料収容部材に、材料輸送ホース20が接続されている。吹付け材料としては、既知の乾式吹付け用の任意の吹付け材料が使用される。また、水添加器30の水供給管33には、図示しない既知の乾式吹付け機の給水装置が接続されている。
【0026】
次に、作業者の操作で乾式吹付け機が駆動すると、圧縮空気により吹付け材料21が材料収容部材から輸送され、材料輸送ホース20から下流のアダプタソケット31及びスリーブ32を経由して水添加器30の水添加器入口34に流入する。水添加器30では、上流から輸送された吹付け材料21と給水装置から給水された水とが混合される。次に、吹付け材料21と水との混合物は圧縮空気によりインラインミキサ40に輸送される。
【0027】
インラインミキサ40に輸送された吹付け材料21と水との混合物は、第1ミキサ42aに進入する。吹付け材料21と水との混合物は、図2に示すように第1ミキサ42aを通過するときにテーパ部46aの内径変化による第1ミキサ42aの断面積の変化により流速と圧力が変化するため、第2ミキサ42a内部で乱流が発生し、該混合物が第1ミキサ42aの内部で撹拌、混練されながら第2ミキサ42bに輸送される。次に、第2ミキサ42bにおいても吹付け材料21と水との混合物が通過するときのテーパ部46bの内径変化による第2ミキサ42bの断面積の変化により吹付け材料21と水との混合物の流速と圧力が変化するため、第2ミキサ42b内部で乱流が発生し、該混合物が第2ミキサ42bの内部で撹拌、混練され第3ミキサ42cに輸送される。次に、第3ミキサ42cにおいても吹付け材料21と水との混合物が通過するときのテーパ部46cの内径変化による第3ミキサ42cの断面積の変化により吹付け材料21と水との混合物の流速と圧力が変化するため、第3ミキサ42c内部で乱流が発生し、該混合物が第3ミキサ42cの内部で撹拌、混練される。
【0028】
次に、第3ミキサ42cを通過した吹付け材料21と水との混合物は、図1図4に示すように圧縮空気により第1ノズル部材60に輸送される。そして、吹付け材料21と水との混合物は第1ノズル部材60のノズル後端部62からノズル先端部61まで第1ノズル部材60の内部を輸送され、ノズル先端部61から吐出されて吹付け対象物に吹付けられる。
【0029】
本実施の形態1では、図2に示すようにインラインミキサ40が第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの合計3個のミキサを有するため、吹付け材料21と水との混合物とを十分に撹拌、混錬することができる。また、本実施の形態1では、第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの大径部45a,45b,45cの内径B1は、好ましくは24~34mmの範囲内であり、より好ましくは24~26mmの範囲内であり、第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの小径部47a,47b,47cの内径C1は、好ましくは11~19mmの範囲内であり、より好ましくは14~16mmの範囲内であるため、第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの内部で強力な乱流が派生し、吹付け材料21と水との混合物とを十分に撹拌、混錬することができる。そのため、吹付け材料21の吹付け対象物への付着率が向上し、粉塵の発生を低減し、第1ノズル部材のノズル先端部61からのスラリーの垂れを低減することができる。
【0030】
また、一般的な乾式吹付け工法においては、吹付け材料と水との混合を促進し、粉塵発生の低下と吹付け対象物への高付着率とを実現するためには、ノズル部材の軸方向のノズル全長は長いほうが有利である。しかしながら長いノズル部材を用いる場合には、一般的に吹付け材料は短時間で凝集しやすいため、ノズル部材内部で吹付け材料が凝集してノズルの閉塞が生じやすくなるという問題点や、狭所における作業性の悪化という問題点があった。これに対して、本実施の形態1におけるノズル構造10は、インラインミキサ40において吹付け材料21と水とが十分に混合されるため、第1ノズル部材60及びノズル構造10の全長を短縮しつつ短時間で吹付け材料21と水とを十分に混合することが可能である。
【0031】
また、吹付け工法として既知のSNG工法を採用する場合には、SNG工法に好適な吹付け材料を採用する必要があった。さらに、SNG工法を採用する場合には、粗粒部分を圧送する装置と微粉を含有するスラリーを圧送する装置とを設ける必要があり、装置規模が大型化するという問題点があった。一方、吹付け工法として既知の湿式吹付け工法を採用する場合には、硬化剤の分離システムを使用することができず、また、水と混錬した吹付け材がホース内を通過するため、乾式吹付け工法と比較して作業時のホースの重量が増加して、作業員の作業負荷が大きいという問題点があった。さらに、硬化剤をノズル部において添加する場合には硬化剤を添加するためのポンプが必要となり、設備規模が大型化する上に、混合不良が発生する可能性があった。これに対して、本実施の形態1におけるノズル構造10は、SNG工法のように吹付け材料を分割圧送する必要がなく、乾式吹付け工法の簡便性を維持したまま吹付け材料21の混合不良を防止し、SNG工法と同等の混合材料を吐出することが可能である。
【0032】
また、一般的に、乾式吹付けノズルのインラインミキサを吹付け材料が通過するときには、特に各ミキサの下流側端部の小径部においてインラインミキサ内部のテーパ部に対して、硬度の高い吹付け材料が流速、圧力の変化により高速で接触しながら送出されるため、テーパ部が摩耗しやすいという課題があった。一方、本実施の形態1では、第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの、下流側の各小径部47a,47b,47cにはストレート部48a,48b,48cがそれぞれ形成されている。これにより、第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの下流側において、第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの内部、特にテーパ部46a,46b,46cに対して吹付け材料21の接触が低減されるため、第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの内部、特にテーパ部46a,46b,46cの摩耗を低減することができる。
【0033】
また、第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの各下流側端部49a,49b,49cは、下流側に向かって径を縮小するテーパ面である。これにより、吹付け材料21と水との混合物が、第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cをそれぞれ通過するときに、各下流側端部49a,49b,49cに沿って径方向外側に流れることを防止又は低減することができる。そのため、径方向外側に流れた吹付け材料21と水との混合物の、第1ノズル部材60の内周壁面への堆積を低減することができる。
【0034】
また、図4に示すように、第1ノズル部材60のノズル先端部61には、下流側に向かって径を縮小するテーパ面が形成されている。これにより、第1ノズル部材60から吹付け材料21と水との混合物が吐出されたときに、ノズル先端部61に沿って吹付け材料21と水との混合物が流れて第1ノズル部材60の外周部に付着するという不具合及びノズル先端部61から垂れた状態で固化するという不具合の発生を防止し、又はその不具合の発生を低減することができる。
【0035】
このように、本実施の形態1に係る乾式吹付けノズル構造10は、吹付け材料21を供給する材料輸送ホース20の下流側に設けられた水添加器30と、水添加器30の下流側に設けられたインラインミキサ40と、インラインミキサ40の下流側に設けられた第1ノズル部材60とを備え、インラインミキサ40は、上流側に設けられた大径部45a,45b,45cと、下流側に設けられた小径部47a,47b,47cと、大径部45a,45b,45cと小径部47a,47b,47cとの間に設けられたテーパ部46a,46b,46cとを含み、中心軸に沿って上流側から下流側に設けられた複数の第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cを有するため、簡単な構成により乾式吹付けノズル構造における吹付け材料と水との混練性を向上させることができる。
【0036】
また、小径部47a,47b,47cの下流側端部49a,49b,49cには、下流側に向かって内径を縮小するテーパ面が設けられているため、各下流側端部49a,49b,49cを吹付け材料21と水との混合物が径方向外側に流れることによる、第1ノズル部材60の内周壁面への堆積を低減することができる。
【0037】
また、小径部47a,47b,47cは、第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの中心軸Aの延びる方向に沿って延び、内径C1が一定である直線部を有するため、テーパ部46a,46b,46cの摩耗を低減することができる。
【0038】
また、インラインミキサ40は超硬合金により形成されているため、吹付け材料21によるインラインミキサ40の内周の摩耗を抑制することができる。
【0039】
また、上流側の第1,第2ミキサ42a,42bの小径部47a,47bは下流側に隣接する第2,第3ミキサ42b,42cの大径部45b,45cの内部に挿入されている。これにより、第1ミキサ42aと第2ミキサ42bとの接触部が第1ミキサ42aの下流側端部49aよりも上流側に位置し、また、第2ミキサ42bと第3ミキサ42cとの接触部が第2ミキサ42bの下流側端部49bよりも上流側に位置するため、第1ミキサ42aと第2ミキサ42bとの接触部及び第2ミキサ42bと第3ミキサ42cとの接触部に吹付け材料21と水との混合物が直接的に衝突することを防止し、インラインミキサ40側面からの吹付け材料21と水との混合物の漏出を低減することができる。
【0040】
また、第1ノズル部材60のノズル先端部61には、下流側に向かって内径を縮小するテーパ面が設けられているため、ノズル先端部61に沿って吹付け材料21と水との混合物が流れて第1ノズル部材60の外周部に付着するという不具合及びノズル先端部61から垂れた状態で固化するという不具合の発生を防止し、又はその不具合の発生を低減することができる。
【0041】
また、第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの大径部45a,45b,45cの内径B1が24~34mmであり、小径部47a,47b,47cの内径C1が11~19mmであるため、第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの内部で強力な乱流が派生し、吹付け材料21と水との混合物とを十分に撹拌、混錬することができる。
【0042】
また、第1ノズル部材60の内径F1は、最も下流側に設けられた第3ミキサ42cの小径部47cの内径の内径C1の1.2~2.5倍であるため、吹付け材料21と水との混合物が、第1ノズル部材60に輸送された直後に第1ノズル部材60の内部の円周方向に流れることによる、第1ノズル部材60の内部の摩耗を抑制することができる。
【0043】
また、第1ノズル部材60のノズル全長N1は、第1ノズル部材60の内径F1の5~10倍であるため、ノズル構造10の全長を短縮しつつ、第1ノズル部材60から吐出される吹付け材料21と水との混合物の直進性を向上させることができ、吹付け対象範囲が狭い場合に吹付け作業が容易となる。
【0044】
なお、本実施の形態1では、インラインミキサ40はタングステンカーバイドにより構成されていたが、他の種類の超硬合金であってもよい。また、吹付け材料21として硬度が低くインラインミキサ40の摩耗の少ない材料を使うのであれば超硬合金以外の金属によりインラインミキサ40を形成してもよい。
【0045】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。なお、以下の実施の形態において、実施の形態1の図1図4の参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるのでその詳細な説明は省略する。本実施の形態2は、実施の形態1に対してインラインミキサの構成を変更したものである。
図5は、実施の形態2に係るインラインミキサ70の側面断面図である。インラインミキサ70は、上流側から順に第1ミキサ72a、第2ミキサ72b、第3ミキサ72cを有している。なお、図5においてはインラインミキサ70のミキサホルダの記載を省略している。
【0046】
第1ミキサ72aには、上流側に内径がB2である大径部75aが設けられている。また第1ミキサ72aには下流側に、大径部75aの内径B2よりも小さい内径C2を有する小径部77aが設けられている。さらに、第1ミキサ72aには、大径部75aと小径部77aとの間にテーパ部76aが設けられている。
【0047】
第2ミキサ72b及び第3ミキサ72cは、第1ミキサ72aと同様の形状を有している。すなわち、第2,第3ミキサ72b,72cには、上流側に内径がB2である大径部75b,75cが設けられ、下流側に、内径がC2である小径部77b,77cが設けられ、第2,第3ミキサ72b,72cには、大径部75b,75cと小径部77b,77cとの間にテーパ部76b,76cが設けられている。
【0048】
第1,第2,第3ミキサ72a,72b,72cの大径部75a,75b,75cの内径B2は、好ましくは24~34mmの範囲内であり、より好ましくは24~26mmの範囲内である。また、第1,第2,第3ミキサ72a,72b,72cの小径部77a,77b,77cの内径C2は、好ましくは11~19mmの範囲内であり、より好ましくは14~16mmの範囲内である。
【0049】
第1ミキサ72aの小径部77aは、第2ミキサ72bの大径部75bの内側に位置している。第2ミキサ72bの小径部77bは、第3ミキサ72cの大径部75cの内側に位置している。インラインミキサ70の中心軸A方向において、第1ミキサ72aの小径部77a側と第2ミキサ72の大径部75b側との重なり部の長さは、実施の形態1の第1ミキサ42a(図2参照)の小径部47a側と第2ミキサ42の大径部45c側との重なり部の長さよりも長く形成されている。また、第2ミキサ72bの小径部77b側と第3ミキサ72の大径部75c側との重なり部の長さは、実施の形態1の第2ミキサ42bの小径部47b側と第3ミキサ42の大径部45c側との重なり部の長さよりも長く形成されている。
【0050】
第1,第2,第3ミキサ72a,72b,72cのストレート部78a,78b,78cの長さM2は、実施の形態1の第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cのストレート部48a,48b,48cの長さM1よりも短い長さに形成されている。
【0051】
第1,第2,第3ミキサ72a,72b,72cの各下流側端部79a,79b,79cの、中心軸Aの延びる方向に対して垂直な方向に広がる仮想的な平面に対するテーパ面の角度D2は、14°以上である。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0052】
このように、実施の形態1のストレート部48a,48b,48cの長さM1と比較してストレート部78a,78b,78cの長さM2が短い、本実施の形態2に係るインラインミキサ70を有する乾式吹付けノズル構造であっても、乾式吹付けノズル構造における吹付け材料と水との混練性を向上させることができる。
【0053】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態3は、実施の形態1に対してインラインミキサを構成するミキサの数を変更したものである。
図6は、実施の形態3に係るインラインミキサ80の側面断面図である。インラインミキサ80は、上流側から順に第1ミキサ82a、第2ミキサ82bを有している。第2ミキサ82bは、第1ノズル部材60に接続されている。なお、図6においてはインラインミキサ80のミキサホルダの記載を省略している。
【0054】
第1ミキサ82aには、上流側に内径がB3である大径部85aが設けられている。また第1ミキサ82aには下流側に、大径部85aの内径B3よりも小さい内径C3を有する小径部87aが設けられている。さらに、第1ミキサ82aには、大径部85aと小径部87aとの間にテーパ部86aが設けられている。
【0055】
第2ミキサ82bは、第1ミキサ82aと同様の形状を有している。すなわち、第2ミキサ82bには、上流側に内径がB3である大径部85bが設けられ、下流側に内径がC3である小径部87bが設けられ、第2ミキサ82bには、大径部85bと小径部87bとの間にテーパ部86bが設けられている。
【0056】
第1,第2ミキサ82a,82bの大径部85a,85bの内径B3は、好ましくは24~34mmの範囲内であり、より好ましくは24~26mmの範囲内である。また、第1,第2ミキサ82a,82bの小径部87a,87bの内径C3は、好ましくは16~24mmの範囲内であり、より好ましくは19~21mmの範囲内である。すなわち、より好ましい第1,第2ミキサ82a,82bの小径部87a,87bの内径C1に対する大径部45a,45bの内径B1の比は0.75以下である。
【0057】
第1ミキサ82aの小径部87aは、第2ミキサ82bの大径部85bの内側に位置している。
【0058】
第1,第2ミキサ82a,82bのストレート部88a,88bの長さM3は、実施の形態1の第1,第2ミキサ42a,42b(図2参照)のストレート部48a,48bの長さM1よりも短い長さに形成されている。
【0059】
第1,第2ミキサ82a,82bの各下流側端部89a,89bの、中心軸Aの延びる方向に対して垂直な方向に広がる仮想的な平面に対するテーパ面の角度D3は、14°以上である。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0060】
実施の形態1ではインラインミキサ40が第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの3個のミキサから構成されていたが、本実施の形態3に係るインラインミキサ80は、合計2個の第1,第2ミキサ82a,82bから構成されている。また、本実施の形態3に係るインラインミキサ80の、第1,第2ミキサ82a,82bの大径部85a,85bの内径B3に対する小径部87a,87bの内径C3の比は、実施の形態1に係る第1,第2,第3ミキサ42a,42b,42cの大径部45a,45b,45cの内径B1に対する小径部47a,47b,47cの内径C1の比よりも大きい。このような実施の形態3に係る乾式吹付けノズル構造であっても、乾式吹付けノズル構造における吹付け材料と水との混練性を向上させることができる。
【0061】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態4は、実施の形態1に対してインラインミキサの構成を変更したものである。
図7は、本発明の実施の形態4に係るインラインミキサ90の側面断面図である。
インラインミキサ90は、上流側から順に第1ミキサ92a、第2ミキサ92bを有している。第2ミキサ92bは、第1ノズル部材60に接続されている。なお、図7においてはインラインミキサ90のミキサホルダの記載を省略している。
【0062】
第1ミキサ92aには、上流側に内径がB4である大径部95aが設けられている。また第1ミキサ92aには下流側に、大径部95aの内径B4よりも小さい内径C4を有する小径部97aが設けられている。さらに、第1ミキサ92aには、大径部95aと小径部97aとの間にテーパ部96aが設けられている。
【0063】
第2ミキサ92bは、第1ミキサ92aと同様の形状を有している。すなわち、第2ミキサ92bには、上流側に内径がB4である大径部95bが設けられ、下流側に内径がC4である小径部97bが設けられ、第2ミキサ92bには、大径部95bと小径部97bとの間にテーパ部96bが設けられている。
【0064】
第1,第2ミキサ92a,92bの大径部95a,95bの内径B4は、好ましくは24~34mmの範囲内であり、より好ましくは24~26mmの範囲内である。また、第1,第2ミキサ92a,92bの小径部97a,97bの内径C4は、好ましくは11~19mmの範囲内であり、より好ましくは14~16mmの範囲内である。
【0065】
第1ミキサ92aの小径部97aは、第2ミキサ92bの大径部95bの内側に位置している。
【0066】
第1,第2ミキサ92a,92bのストレート部98a,98bの長さM4は、実施の形態1の第1,第2ミキサ42a,42bのストレート部48a,48bの長さM1よりも短い長さに形成されている。
【0067】
第1,第2ミキサ92a,92bの各下流側端部99a,99bの、中心軸Aの延びる方向に対して垂直な方向に広がる仮想的な平面に対するテーパ面の角度D4は、14°以上である。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0068】
このような実施の形態4に係る乾式吹付けノズル構造であっても、乾式吹付けノズル構造における吹付け材料と水との混練性を向上させることができる。
【0069】
なお、本発明の実施の形態1~4におけるインラインミキサ40,70,80及び90の構成は一例であり、適宜これ以外の構成を採用してもよい。例えば、実施の形態1における下流側端部49a,49b,49cのテーパの角度D1は好ましくは4°以上であったが、角度D1はこれ未満の角度であってもよい。
【0070】
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5について説明する。本発明の実施の形態5は、実施の形態1に対してノズル部材の形状を変更したものである。
図8は、本発明の実施の形態5に係る第2ノズル部材60aの側面断面図である。第2ノズル部材60aは、下流側のノズル先端部61aと、上流側のノズル後端部62aとを有する。ノズル後端部62aの内部には、下流側の内径F2が上流側の内径F1よりも小さくなるようにノズルテーパ部63aが形成されている。ノズルテーパ部63aは、上流側の内径が内径F1であるように形成されており、下流側の内径が内径F2であるように形成されている。下流側の内径F2は、好ましくは21mm以下である。また、ノズルテーパ部63aは中心軸Aに平行に延びる仮想的な直線に対して鋭角である角度G1をなすように形成されている。角度G1は、好ましくは10°以上である。また、第2ノズル部材60aは、SUS304により形成されている。
【0071】
第2ノズル部材60aの、ノズル後端部62aからノズル先端部61aまでの間は、一定の内径F2を有するように形成されている。ノズル先端部61aは、径方向の外周側に対して内周側がより下流側に位置するように下流側に向かって径を縮小するテーパ面である。具体的には、ノズル先端部61aには、中心軸Aの延びる方向に対して垂直な方向に広がる仮想的な平面に対して、鋭角である角度E2をなすテーパ面が形成されている。また、角度E2は好ましくは4°以上である。また、第2ノズル部材60aの軸方向のノズル全長N2は、好ましくは第2ノズル部材60aの内径F2の5~10倍である。
【0072】
このように、本実施の形態5に係るノズル構造の第2ノズル部材60aの軸方向のノズル全長N2は、実施の形態1の第1ノズル部材60の内径F1よりも小さい内径である、第2ノズル部材60aの下流側の内径F2の5~10倍であるため、実施の形態1に対してノズル構造全体の長さを短縮することができる。
【0073】
なお、本発明の実施の形態1~4における第1ノズル部材60及び実施の形態5における第2ノズル部材60aの構成は一例であり、適宜これ以外の構成を採用してもよい。例えば、実施の形態1における第1ノズル部材60のノズル先端部61のテーパの角度E1は好ましくは4°以上であったが、角度E1はこれ未満の角度であってもよい。
【0074】
また、本発明の実施の形態1~4における第1ノズル部材60及び実施の形態5における第2ノズル部材60aは、SUS304により形成されていたが、例えばノズル部材の重量軽減のためにアルミニウム合金により形成する等、任意の金属により形成されてもよい。
【0075】
また、本発明の実施の形態2~5に係るノズル構造において、吹付け材料21と水との混合物を実験用壁面に吹付けたときの、第1ノズル部材60又は第2ノズル部材60aから吐出した吹付け材料21と水との混合物の重量に対する、実験用壁面に付着した吹付け材料21と水との混合物の重量の割合である付着率(接着率)を測定する実験を行った。この実験の結果を表1を用いて以下に説明する。なお、この実験で用いられた吹付け材料21は、炭化ケイ素(SiC)を90%含んでいる。また、下記の実験番号1~5の説明において述べられていない構成は、各実験番号1~5において共通の構成である。
【0076】
【表1】
【0077】
実験番号1は、実施の形態2の、インラインミキサ70(図5参照)の第1,第2,第3ミキサ72a,72b,72cの大径部75a,75b,75cの内径B1を25mmとし、小径部77a,77b,77cの内径C1を15mmとし、下流側端部79a,79b,79cの角度D2を15°とし、第1ノズル部材60(図4参照)の内径F1を25mmとし、第1ノズル部材60の軸方向のノズル全長N1を150mmとし、ノズル先端部61のテーパ面の角度E1を5°として実験した場合である。実験番号1における付着率は、85.3%である。
【0078】
実験番号2は、インラインミキサ70は実験番号1と同じであるが、第1ノズル部材60に替えて実施の形態5の第2ノズル部材60aを使用し、第2ノズル部材60aの上流側の内径F1を25mmとし、下流側の内径F2を20mmとし、ノズルテーパ部63aの角度G1を10°とし、第2ノズル部材60aの軸方向のノズル全長N2を120mmとし、ノズル先端部61aのテーパ面の角度E2を5°として実験した場合である。実験番号2における付着率は、90.5%である。
【0079】
実験番号3は、実施の形態3のインラインミキサ80を使用し、インラインミキサ80の第1,第2ミキサ82a,82bの大径部85a,85bの内径B3を25mmとし、小径部87a,87bの内径C3を20mmとし、下流側端部89a,89bの角度D3を15°とし、実験番号2と同じ第2ノズル部材60aを使用して実験した場合である。実験番号3における付着率は、80.5%である。
【0080】
実験番号4は、実施の形態4のインラインミキサ90を使用し、インラインミキサ90の第1,第2ミキサ92a,92bの大径部95a,95bの内径B4を25mmとし、小径部97a,97bの内径C4を15mmとし、下流側端部89a,89bの角度D3を15°とし、実験番号2と同じ第2ノズル部材60aを使用して実験した場合である。実験番号3における付着率は、77.0%である。
【0081】
実験番号5は、比較対象としてインラインミキサを使用せず、実験番号2と同じ第2ノズル部材60aを使用して実験した場合である。実験番号5における付着率は76.1%である。
【0082】
実験番号2~4と実験番号5とを比較すると、インラインミキサを使用した実験番号2の場合は付着率が90.5%、実験番号3の場合は付着率が80.5%であり、実験番号4の場合は付着率が77.0%であり、インラインミキサを使用しなかった実験番号5の付着率が76.1%であるため、同じ第2ノズル部材60aを使用した場合にはインラインミキサを使用した実験番号2~4の方が付着率が良好であるという結果が得られた。
【0083】
実験番号1と実験番号2とを比較すると、第1ノズル部材60を使用した実験番号1の場合の付着率85.3%に対して、第2ノズル部材60aを使用した実験番号2の場合の付着率90.5%であり、同じインラインミキサ70を使用した場合には第2ノズル部材60aを使用した実験番号の方が2が付着率が良好であるという結果が得られた。
【0084】
また、実験番号2、実験番号3及び実験番号4を比較すると、同じ第2ノズル部材60aを使用した場合の付着率は、インラインミキサ70を使用した実験番号2の場合の付着率が90.5%、インラインミキサ80を使用した実験番号3の場合の付着率が80.5%、インラインミキサ90を使用した実験番号4の場合の付着率が77.0%であり、インラインミキサ70を使用した場合に最も付着率が良好であるという実験結果が得られた。
【0085】
実施の形態6.
次に、本発明の実施の形態6について説明する。本発明の実施の形態6は、実施の形態1に対して水添加器の水供給管と水添加器の下流側端部との間に緩衝部を設けたものである。
図9は、本実施の形態6に係るノズル構造の側面断面図である。ノズル構造10aの水添加器30の、水供給管33が設けられている水添加器入口34と水添加器30の下流側端部である水添加器出口35との間には、緩衝部36が形成されている。すなわち、緩衝部36は、水供給管33と水添加器33の下流側端部との間に形成されている。緩衝部36は、中心軸Aに沿って延びる方向の上流側からそれぞれ内径の異なる第1径部36a、第2径部36b及び第3径部36cを有している。
【0086】
図10は、図9に示す緩衝部36の側面断面図である。緩衝部36の第1径部36aは、水供給管33及び水添加器入口34に接続されている。第1径部36aと水添加器入口34との間には、吹付け材料21(図9参照)及び水の漏れを防止するための平ゴムパッキン43が挿入されている。また、第1径部36aは中心軸Aに沿って延びる方向に均一な内径を有している。
【0087】
第1径部36aの下流側には、第2径部36bが接続されている。第2径部36bは、第1径部36aよりも大きく且つ中心軸Aに沿って延びる方向に均一な内径を有している。第2径部36bの下流側には、第3径部36cが接続されている。第3径部36cは、中心軸Aに沿って延びる方向の下流側に向けて連続的に小さくなるテーパ状の内径を有している。第3径部36cの下流側には、インラインミキサ40の第1ミキサ42aが接続されている。第3径部36cのテーパ状の内径は、第1ミキサ42aのテーパ部46aの内径に連続する内径を形成している。また、第3径部36cと第1ミキサ42aとの間には平ゴムパッキン43が挿入されている。
【0088】
緩衝部36の第1径部36aと水供給管33との接続位置の最も上流側の位置である、第1径部36aの内径部の上流側端部37aから、第3径部36cと第1ミキサ42aとの接触部である、第3径部36cの内径部の下流側端部37cまでの間の距離H2は、好ましくは、30mm~130mmであるように緩衝部36が形成され、より好ましくは、該距離H2が50mm~130mmであるように緩衝部36が形成される。なお、距離H2は、水供給管33から下流側端部37cまでの、緩衝部36の中心軸Aに沿う方向における内径部の実質的な長さを構成している。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0089】
なお、図2に示す実施の形態1の水添加器30及びインラインミキサ40においては、水供給管33との接続位置の最も上流側の位置から第1ミキサ42aの上流側端部までの距離H1は、30mm未満であるように形成されている。
【0090】
次に、本実施の形態6に係るノズル構造10aの動作について説明する。図9に示すノズル構造10aにより吹付け材料21の乾式吹付けを実施する場合には、作業者の操作により乾式吹付け機が駆動したときに、材料収容部材から輸送されてノズル構造10aの水添加器30の水添加器入口34に流入した吹付け材料21に、給水装置から給水されて水供給管33に流入した水が添加されて水添加器30内で混合される。次に、吹付け材料21と水との混合物は圧縮空気によりインラインミキサ40に輸送される。次に、インラインミキサ40に輸送された吹付け材料21と水との混合物は、内部で撹拌、混錬されて第1ノズル部材60に輸送される。
【0091】
次に、本実施の形態6のノズル構造10aの利点を説明する。本実施の形態6のノズル構造10aの、インラインミキサ40の第1ミキサ42a、第2ミキサ42b及び第3ミキサ42cの内部に形成された、各テーパ部46a、46b及び46cにおける乾式吹付け実施前の状態に対する乾式吹付け実施後の摩耗状態と、実施の形態1のノズル構造10の、各テーパ部46a、46b及び46cにおける乾式吹付け実施前の状態に対する乾式吹付け実施後の摩耗状態とを比較した。すると、本実施の形態6の各テーパ部46a、46b及び46cの乾式吹付け実施前に対する乾式吹付け実施後の摩耗状態は、実施の形態1の各テーパ部46a、46b及び46cの乾式吹付け実施前に対する乾式吹付け実施後の摩耗状態よりも軽度であった。
【0092】
すなわち、本実施の形態6に係るノズル構造10aの水添加器30が緩衝部36を有していることにより、本実施の形態6のノズル構造10aは、実施の形態1のノズル構造10に対して、乾式吹付け実施後のインラインミキサ40の各テーパ部46a、46b及び46cの摩耗が低減される。
【0093】
このように、本実施の形態6に係るノズル構造10aは、水添加器30の水供給管33と、水添加器30の下流側端部37cとの間に、緩衝部36を有するため、インラインミキサ40の各テーパ部46a、46b及び46cの摩耗を低減することが可能である。
【0094】
また、緩衝部36の中心軸Aに沿う方向の距離H2が30mm~130mmであることで、より効果的にインラインミキサ40の各テーパ部46a、46b及び46cの摩耗を低減することが可能である。
【符号の説明】
【0095】
20 材料輸送ホース(材料供給管)、30 水添加器、33 水供給管、36 緩衝部、37c 下流側端部、40 インラインミキサ、42a 第1ミキサ(円錐状部材)、42b 第2ミキサ(円錐状部材)、42c 第3ミキサ(円錐状部材)、 45a,45b,45c 大径部、46a,46b,46c テーパ部、47a,47b,47c 小径部、48a,48b,48c ストレート部(直線部)、49a,49b,49c 下流側端部、60 第1ノズル部材、60a 第2ノズル部材、61,61a ノズル先端部、70 インラインミキサ、72a 第1ミキサ(円錐状部材)、72b 第2ミキサ(円錐状部材)、72c 第3ミキサ(円錐状部材)、75a,75b,75c 大径部、76a,76b,76c テーパ部、77a,77b,77c 小径部、78a,78b,78c ストレート部(直線部)、79a,79b,79c 下流側端部、80 インラインミキサ、82a 第1ミキサ(円錐状部材)、82b 第2ミキサ(円錐状部材)、85a,85b 大径部、86a,86b テーパ部、87a,87b 小径部、88a,88b ストレート部(直線部)、89a,89b 下流側端部、90 インラインミキサ、92a 第1ミキサ(円錐状部材)、92b 第2ミキサ(円錐状部材)、95a,95b 大径部、96a,96b テーパ部、97a,97b 小径部、98a,98b ストレート部(直線部)、99a,99b 下流側端部、A 中心軸、B1,B2,B3,B4 内径、C1,C2,C3,C4 内径、N1,N2 ノズル全長。
図1
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図10