(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物、立体造形物及び立体造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/118 20170101AFI20230802BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230802BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230802BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230802BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230802BHJP
【FI】
B29C64/118
B33Y10/00
B33Y70/00
C08L101/00
C08K3/013
(21)【出願番号】P 2019135831
(22)【出願日】2019-07-24
【審査請求日】2022-06-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】俣野 高宏
(72)【発明者】
【氏名】藤田 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】笛吹 容子
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 良憲
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/114031(WO,A1)
【文献】特開2016-190942(JP,A)
【文献】国際公開第2016/76180(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と無機充填材粒子とを含む立体造形用樹脂組成物であって、
無機充填材粒子が、直径が1~20μm、アスペクト比(長さ/直径)が1.2~100、30~300℃における熱膨張係数が40×10
-7/℃以下の柱状粒子を含み、
柱状粒子が、ガラスであり、
ガラスが、ガラス組成として、質量%で、WO
3 0.1~15%
、Nb
2
O
5
0.1~15%を含有することを特徴とする立体造形用樹脂組成物。
【請求項2】
ガラスが、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 30~85%、Al
2O
3 0~30%、B
2O
3 0~50%、Li
2O+Na
2O+K
2O 0~10%、CaO+MgO+BaO+SrO 0~10%を含有することを特徴とする請求項1に記載の立体造形用樹脂組成物。
【請求項3】
柱状粒子のヤング率が、50GPa以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の立体造形用樹脂組成物。
【請求項4】
柱状粒子の波長400~800nmにおける厚み0.5mmの平均透過率が、1%以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の立体造形用樹脂組成物。
【請求項5】
体積%で、熱可塑性樹脂 30~99%、無機充填材粒子 1~70%を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の立体造形用樹脂組成物。
【請求項6】
熱可塑性樹脂と無機充填材粒子とを含む立体造形物であって、
無機充填材粒子が、直径が1~20μm、アスペクト比(長さ/直径)が1.2~100、30~300℃における熱膨張係数が40×10
-7/℃以下の柱状粒子を含み、
柱状粒子が、ガラスであり、
ガラスが、ガラス組成として、質量%で、WO
3 0.1~15%
、Nb
2
O
5
0.1~15%を含有することを特徴とする立体造形物。
【請求項7】
軟化溶融した樹脂組成物を押出成形することで樹脂組成物からなる前駆体層を形成し、前記前駆体層を硬化させることにより、所定パターンを有する硬化層を形成し、前記硬化層上に新たな前駆体層を形成し硬化させることにより前記硬化層と連続した所定パターンを有する新たな硬化層を形成し、所定の立体造形物が得られるまで前記硬化層の積層を繰り返すことにより立体造形物を製造する方法であって、
前記樹脂組成物として、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物を使用することを特徴とする立体造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、立体造形物及び立体造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂材料等を積層させて立体造形物を得る方法が知られている。例えば、光造形法、粉末床溶融結合法(PBF)、熱溶解積層法(FDM)法等種々の方法が提案され実用化されている。
【0003】
例えば光造形法は、細やかな造形や正確なサイズ表現に優れており、広く普及している。この方法は以下のようにして立体造形物を作製するものである。まず、液状の光硬化性樹脂を満たした槽内に造形ステージを設け、造形ステージ上の光硬化性樹脂に紫外線レーザーを照射して所望のパターンの硬化層を作製する。このようにして硬化層を一層造った後、造形ステージを一層分だけ下げて、硬化層上に未硬化の樹脂を導入する。その後、同様にして紫外線レーザーを光硬化性樹脂に照射して前記硬化層上に新たな硬化層を積み上げる。この操作を繰り返すことにより、所定の立体造形物を得る(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、粉末床溶融結合法(PBF)は、粉末原料を一層毎に積層し、レーザー等で粉末粒子を溶融固化させて立体造形物を作製するものである。具体的には、樹脂、金属、セラミックス、ガラス等の粉末を満たした槽内に造形ステージを設け、造形ステージ上の粉末に半導体等のレーザーや電子ビームを照射し、軟化、凝固させることで所望のパターンの硬化層を作製する。その後、前記硬化層上に新たな硬化層を積み上げ、この操作を繰り返すことにより、所定の立体造形物を得る。
【0005】
また、熱溶解積層法(FDM)は、溶融した材料をノズルから押出成形することで層を形成し、その層を積み上げて立体造形物を作製するものである。例えば、熱可塑性樹脂を含む材料を線状に成形したフィラメントを材料として用い、それを半液状となるように熱で溶かし、ノズルの位置をコンピューターで制御しながら一層を作製する。その後、前記硬化層上に新たな硬化層を積み上げ、この操作を繰り返すことにより、所定の立体造形物を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-26060号公報
【文献】特開2008-507619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、樹脂のみの立体造形物は、機械的強度等に劣ることが指摘されている。そこで、特許文献1では、光硬化性樹脂に無機充填材を添加することが提案されている。また、特許文献2においても、熱溶解積層法に適する熱可塑性材料に、充填材として無機充填材を添加している。
【0008】
熱溶解積層法の一般的な製造方法は既述の通りであるが、造形中の各層の形成工程において、熱可塑性樹脂を含む材料を半液状に溶融してノズルから押出成形し、前駆体層とした後、迅速に固化することが好ましい。しかしながら、立体造形物の成形では一般的に、各層の形状は、縦方向(Z軸方向)の肉厚が非常に小さい一方、面方向(X-Y軸方向)の面積が比較的大きいため、その冷却速度差により、各層、ひいては立体造形物に反りやヒケが生じやすいという問題があった。
【0009】
本発明の課題は、反りやヒケがない立体造形物を得ることが可能な立体造形用樹脂組成物を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の立体造形用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と無機充填材粒子とを含む立体造形用樹脂組成物であって、無機充填材粒子が、直径が1~20μm、アスペクト比(長さ/直径)が1.2~100、30~300℃における熱膨張係数が40×10-7/℃以下の柱状粒子を含むことを特徴とする。
【0011】
前述したように、立体造形工程における各層は、縦方向(Z軸方向)の肉厚が非常に小さい一方、面方向(X-Y軸方向)の面積が比較的大きいため、冷却固化する際に、縦方向の収縮に比べて面方向の収縮が大きくなり、硬化層に反りやヒケが発生しやすい。しかし、本発明の樹脂組成物は、熱膨張係数が40×10-7/℃以下の柱状粒子を必須成分として含有しているため、各層、ひいては立体造形物の収縮を抑制でき反りやヒケを抑制することができる。更に、柱状粒子は各層において面方向に配向しやすいため、前記効果をより確実に得ることができる。その結果、精密性や機械的強度に優れた立体造形物を得ることが可能になる。
【0012】
なお、「柱状粒子」とは、略円柱状又は略角柱状の粒子を意味する。また「直径」とは、柱状体の断面(長さ方向と直交する断面)の最大径と最小径の和を2で割った値を意味する。「直径」および「長さ」の測定は、デジタルスコープで観察、撮影し、視野中で任意に選択した柱状粒子を100本選択して平均を算出することで得ることができる。また、「アスペクト比」とは、柱状粒子の直径に対する長さ(高さ)の比を意味する。
【0013】
また、本発明の立体造形用樹脂組成物は、柱状粒子が、ガラスであることが好ましい。このようにすると、得られる立体造形物に透明性や審美性を付与しやすくなる。なお、本発明において、「ガラス」には、結晶化ガラスも含むこととする。
【0014】
また、本発明の立体造形用樹脂組成物は、柱状粒子のヤング率が、50GPa以上であることが好ましい。
【0015】
このようにすると、立体造形物の機械的強度が向上する。なお、ヤング率は、共振法により測定したものである。
【0016】
また、本発明の立体造形用樹脂組成物は、柱状粒子の400~800nmにおける厚み0.5mmの平均透過率が、1%以上であることが好ましい。
【0017】
このようにすると、着色の少ない立体造形物を得やすくなる。また、硬化手段として光造形法を使用する場合は、活性エネルギー光線が透過し易くなり、硬化の妨げになりにくい。なお、柱状粒子の光透過率は、試料を厚み0.5mmの板状に成形した試料を、分光光度計(島津製作所製UV-3100)により測定したものである。
【0018】
また、このようにすると、立体造形物に透明性や審美性を付与しやすくなる。
【0019】
また、本発明の立体造形用樹脂組成物は、体積%で、熱可塑性樹脂 30~99%、無機充填材粒子 1~70%を含有することが好ましい。
【0020】
このようにすると、硬化層や立体造形物の反りやヒケが生じにくくなるとともに、立体造形物の機械的強度が向上する。
【0021】
また、本発明の立体造形物は、熱可塑性樹脂と無機充填材粒子とを含む立体造形物であって、無機充填材粒子が、直径が1~20μm、アスペクト比(長さ/直径)が1.2~100、30~300℃における熱膨張係数が40×10-7/℃以下の柱状粒子を含むことを特徴とする。
【0022】
更に、本発明の立体造形物の製造方法は、軟化溶融した樹脂組成物を押出成形することで樹脂組成物からなる前駆体層を形成し、前記前駆体層を硬化させることにより、所定パターンを有する硬化層を形成し、前記硬化層上に新たな前駆体層を形成し硬化させることにより前記硬化層と連続した所定パターンを有する新たな硬化層を形成し、所定の立体造形物が得られるまで前記硬化層の積層を繰り返すことにより立体造形物を製造する方法であって、前記樹脂組成物として、前記した樹脂組成物を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、反りやヒケがない立体造形物を得やすくなる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の立体造形用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と無機充填材粒子を含む。
【0025】
まず、熱可塑性樹脂について以下に説明する。
【0026】
立体造形物用樹脂組成物に占める熱可塑性樹脂の含有量は、体積%で、好ましくは30~99%であり、35~95%、40~90%、45~85%、特に好ましくは50~80%である。熱可塑性樹脂の含有量が多すぎると、相対的に無機充填材粒子の含有量が少なくなって、立体造形物の機械的強度が低下しやすくなる。一方、熱可塑性樹脂の含有量が少なすぎると、軟化溶融時における樹脂組成物の流動性が低下したり、樹脂と無機充填材粒子との接着不足から、却って立体造形物の機械的強度が低下したりする虞がある。
【0027】
次に、本発明に係る熱可塑性樹脂について以下に説明する。
【0028】
以下に、熱可塑性樹脂の代表的なものを挙げるが、本発明の趣旨からこれらに限定されるものではない。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル―スチレン樹脂、アクリロニトリル―ブタジエン―スチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等がある。また、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂等がある。更に、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー樹脂、フッ素樹脂等がある。
【0029】
熱可塑性樹脂は、耐熱性により、汎用樹脂、エンプラ、スーパーエンプラに分類できるが、これらは立体造形物の用途に合わせて適宜選択すればよい。例えば、連続使用温度100℃以上の耐熱性が要求される場合にはエンプラを用いることが好ましく、連続使用温度150℃以上の耐熱性が要求される場合には、スーパーエンプラを用いることが好ましい。
【0030】
また、立体造形物の反りやヒケは、溶融樹脂が固化する際の冷却速度差により起こりやすいため、溶融温度が高い樹脂、すなわちエンプラやスーパーエンプラを採用した場合に顕著に現れる傾向がある。そのため、熱可塑性樹脂にこれらの樹脂を用いる場合に本発明を採用すれば、本発明の効果を特に効果的に得ることができる。
【0031】
代表的なエンプラとしては、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂等が挙げられる。また、代表的なスーパーエンプラとしては、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0032】
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の目的が損なわれない範囲であれば、各種添加成分、例えば、レベリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、核剤、可塑剤、離型剤、難燃剤、顔料、カーボンブラック及び帯電防止剤等の添加剤を適量含有してもよい。
【0033】
次に、無機充填材粒子について以下に説明する。
【0034】
立体造形用樹脂組成物に占める無機充填材粒子の含有量は、体積%で、好ましくは1~70%であり、5~65%、10~60%、15~55%、特に好ましくは20~50%である。無機充填材粒子の含有量が少なすぎると、立体造形物の機械的強度が低下しやすくなる。一方、無機充填材粒子の含有量が多すぎると、軟化溶融時における樹脂組成物の流動性が低下したり、樹脂と無機充填材粒子との接着不足から、却って立体造形物の機械的強度が低下したりする虞がある。
【0035】
本発明に係る無機充填材粒子には、柱状粒子を含む。無機充填剤粒子として柱状粒子のみを使用しても良いが、他の形状の粒子を含んでいても良い。なお、柱状粒子以外形状としては、例えば、真球状、略球状、碁石状、破砕状などが挙げられる。
【0036】
柱状粒子は、直径が1~20μmであり、好ましくは2.5~17.5μm、5~15μm、6~12.5μm、特に好ましくは7~10μmである。柱状粒子の直径が小さすぎると、熱可塑性樹脂と混練する際に破断しやすく、立体造形物の機械的強度を向上させにくくなったり、反りやヒケを抑制する効果を得にくくなったりする。また、樹脂組成物の界面泡(熱可塑性樹脂と柱状粒子との界面に存在する泡)が抜けにくくなったりする。一方、柱状粒子の直径が大きすぎると、樹脂組成物が不均質になりやすかったり、樹脂組成物中に柱状粒子を高含有させにくくなったりする。その結果、立体造形物の機械的強度を向上させにくくなったり、反りやヒケを抑制する効果を得にくくなったりする。また、立体造形物の精密度が低下する虞がある。
【0037】
また、柱状粒子のアスペクト比(長さ/直径)は、1.2~100であり、好ましくは1.3~80、1.5~50、2.0~20、特に好ましくは2.5~10である。柱状粒子のアスペクト比が小さすぎると、立体造形物の反りやヒケを抑制する効果を得にくくなる。また、機械的強度を向上させにくくなる。一方、柱状粒子のアスペクト比が大きすぎると、粒状粒子同士が絡まりやすくなり、樹脂組成物の均質性や流動性が低下する虞がある。また、樹脂組成物が不均質になりやすく、反りやヒケを抑制する効果を得にくくなる。
【0038】
柱状粒子の形状は、上記した直径及びアスペクト比を有するものであれば特に制限はない。また、直径やアスペクト比が異なる二種類以上の形状の柱状粒子を単独または混合して用いてもよい。なお、柱状粒子は、例えば繊維状に成形した材料を所望の長さに切断することにより得ることができる。また、ファイアポリッシュ等の方法を用いて、得られた柱状粒子の表面粗さを低減させてもよい。このようにすれば、樹脂組成物の流動性を高めたり、不当な粘度上昇を抑制したりできる。
【0039】
柱状粒子の30~300℃における熱膨張係数は、40×10-7/℃以下であり、好ましくは30×10-7/℃以下、20×10-7/℃以下、10×10-7/℃以下、特に好ましくは5×10-7/℃以下である。このようにすると、立体造形物の反りやヒケが抑制しやすくなる。また、立体造形物のサーマルショックによる割れや強度劣化を抑制できる。また、硬化時の収縮率が小さくなるため、寸法精度の高い立体造形物を得やすくなる。
【0040】
柱状粒子のヤング率は、好ましくは50GPa以上であり、55GPa以上、特に好ましくは60GPa以上である。ヤング率が低すぎると、立体造形物の機械的強度を向上させにくくなる。
【0041】
柱状粒子は、波長400~800nmにおける厚み0.5mmの透過率が、好ましくは1%以上、3%以上、特に好ましくは5%以上である。透過率が低すぎると、立体造形物に透明性や審美性を付与しにくくなる。また、立体造形物に意図しない着色が生じやすくなる。
【0042】
また、柱状粒子の密度は、2.2~7g/cm3、2.35~6.5g/cm3、2.5~6g/cm3、特に2.6~5g/cm3であることが好ましい。柱状粒子の密度が低すぎると、立体造形物に重厚感や審美性を付与しやすくなる。一方、柱状粒子の密度が大きすぎると、樹脂組成物を製造する際に沈降分離しやすくなる。
【0043】
また、柱状粒子は、その表面がシランカップリング剤によって処理されていることが好ましい。シランカップリング剤で処理すれば、柱状粒子と熱可塑性樹脂の結合力を高めたり、なじみがよくなったりして、より機械的強度の優れた立体造形物を得やすくなる。シランカップリング剤としては、例えばアミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン等が好ましい。なおシランカップリング剤は、用いる樹脂によって適宜選択すればよい。
【0044】
また、柱状粒子は、ガラス(結晶化ガラスを含む)であることが好ましい。このようにすると、立体造形物に透明性や審美性を付与しやすくなる。また、柱状粒子が透明性を有すると立体造形物の透明性を向上させやすく、その場合、立体造形物内部の色調が表面に現れやすいため、樹脂組成物に添加する着色材料を低減することができる。更に、ガラスは様々な組成や形状にしやすいため、例えば、ガラス組成を調整することで、化学的耐久性や強度を向上させる等、立体造形物に所望の特性を付与しやすい。
【0045】
柱状粒子の材質は特に制限はないが、例えば、ガラス組成の例として、SiO2、Al2O3、B2O3及びP2O5から選択される少なくとも1種を含有するものを使用することができる。例えば、SiO2-B2O3-R’2O(R’はアルカリ金属元素)系ガラス、SiO2-Al2O3-RO(Rはアルカリ土類金属元素)系ガラス、SiO2-Al2O3-R’2O-RO系ガラス、SiO2-Al2O3-B2O3-R’2O系ガラス、SiO2-Al2O3-B2O3-R’2O-RO系ガラス、SiO2-R’2O系ガラス、SiO2-R’2O-RO系ガラス等を使用することができる。また、結晶化ガラスに含まれる結晶としては、例えば、SiO2、Al2O3、MgO、β-石英固溶体、β-スポジュメン、β-ユークリプタイト等が挙げられる。特に、結晶化ガラスを用いると、熱膨張係数が小さいため、立体造形物の反りやヒケを抑制する効果が高くなる。
【0046】
本発明に係る柱状粒子は、上記したとおり材質を問わないが、代表的な例として、具体的なガラス組成A、Bについて以下に説明する。ただし、本発明の趣旨からして、これらの組成に限られないことは明らかである。なお、以下の説明において、特に断りがない限り「%」は質量%を示している。
【0047】
(ガラス組成A)
ガラス組成として、質量%で、SiO2 55~75%、Al2O3 15~30%、Li2O 2~10%、Na2O 0~3%、K2O 0~3%、MgO 0~5%、ZnO 0~10%、BaO 0~5%、TiO2 0~5%、ZrO2 0~4%、P2O5 0~5%、及びSnO2 0~2.5%を含有するものが使用できる。上記組成を有するガラスは、結晶化開始温度以上で加熱することにより、低膨張特性を有するβ-スポジュウメン固溶体、β-スポジュウメン、β-石英固溶体、β-ユークリプタイトなどを析出させることができる。なお、ガラスは、前述の結晶を単体で含んでいても良いし、任意の二種類以上を含んでいても良い。
【0048】
SiO2はガラス骨格を形成するとともに、結晶の構成成分にもなる。SiO2の含有量は、好ましくは55~75%であり、より好ましくは60~75%である。SiO2の含有量が少なすぎると、熱膨張係数が高くなったり、化学的耐久性が低下したりする。一方、SiO2の含有量が多すぎると、溶融性が低下しやすくなる。また、溶融ガラスの粘度が大きくなって、清澄や成形が困難となる虞がある。
【0049】
Al2O3はガラス骨格を形成するとともに、結晶の構成成分にもなる。Al2O3の含有量は、好ましくは15~30%であり、より好ましくは17~27%である。Al2O3が少なすぎると、熱膨張係数が高くなったり、化学的耐久性が低下したりする。一方、Al2O3の含有量が多すぎると、溶融性が低下したり、失透しやすくなったりする。また、溶融ガラスの粘度が大きくなって、清澄や成形が困難となる傾向がある。
【0050】
Li2Oは結晶の構成成分であり、結晶性に大きな影響を与えるとともに、粘度を低下させて溶融性及び成形性を向上させる成分である。そのため、Li2Oの含有量は、好ましくは2~10%であり、2~7%、2~5%、特に好ましくは2~4.8%である。Li2Oの含有量が少なすぎると、所望の結晶が析出しにくくなったり、溶融性が低下しやすくなったりする。また、粘度が高くなり清澄や成形が困難になる傾向がある。一方、Li2Oの含有量が多すぎると失透しやすくなる。
【0051】
Na2O及びK2Oは、粘度を低下させて溶融性及び成形性を向上させるための成分である。Na2O及びK2Oの含有量は、好ましくは各々0~3%であり、特に好ましくは各々0.1~1%である。Na2OまたはK2Oの含有量が多すぎると、失透しやすくなったり、熱膨張係数が高くなったりする虞がある。また、立体造形物として用いる際に、ガラス成分が溶出して化学的耐久性が低下する虞がある。
【0052】
MgOは熱膨張係数を調整するための成分である。MgOの含有量は、好ましくは0~5%であり、0.1~3%、特に好ましくは0.3~2%である。MgOの含有量が多すぎると、失透しやすくなったり、熱膨張係数が高くなったりする虞がある。
【0053】
ZnOは熱膨張係数を調整するための成分である。ZnOの含有量は、好ましくは0~10%であり、0~7%、0~3%、特に好ましくは0.1~1%である。ZnOの含有量が多すぎると、失透しやすくなる。
【0054】
BaOは、粘度を低下させて溶融性及び成形性を向上させるための成分である。BaOの含有量は、好ましくは0~5%であり、より好ましくは0.1~3%である。BaOの含有量が多すぎると、失透しやすくなる。
【0055】
TiO2は、結晶化工程で結晶を析出させるための核形成剤として作用する成分である。TiO2の含有量は、好ましくは0~5%であり、より好ましくは1~4%である。TiO2の含有量が多すぎると、失透しやすくなる。
【0056】
ZrO2は、結晶化工程で結晶を析出させるための核形成剤として作用する成分である。ZrO2の含有量は、好ましくは0~4%であり、より好ましくは0.1~3%である。ZrO2の含有量が多すぎると、失透しやすくなる。
【0057】
P2O5は分相を促進して結晶核の形成を助ける成分である。P2O5の含有量は、好ましくは0~5%であり、より好ましくは0.1~4%である。P2O5の含有量が多すぎると、過剰に分相して光透過率が低下したり、失透しやすくなったりする。
【0058】
SnO2は清澄剤として働く成分である。SnO2の含有量は、好ましくは0~2.5%であり、より好ましくは0.1~2%である。SnO2の含有量が多すぎると、失透しやすくなったり、ブツとして析出したりする。また、光透過率が低下しやすくなる。
【0059】
上記成分以外にも、B2O3、CaO、SrO等を適宜含有させることができる。
【0060】
(ガラス組成B)
また例えば、ガラス組成として、質量%で、SiO2 30~85%、Al2O3 0~30%、B2O3 0~50%、Li2O+Na2O+K2O 0~10%、CaO+MgO+BaO+SrO 0~10%、TiO2+WO3+Nb2O5 0~15%を含有するものが好ましい。このようにガラス組成を限定した理由を以下に説明する。
【0061】
SiO2はガラス骨格を形成する成分であり、化学的耐久性を向上させやすく、失透を抑制する効果がある。SiO2の含有量は、好ましくは30~85%であり、40~75%、特に好ましくは45~70%である。SiO2が少なすぎると、上記効果が得られにくくなる。一方、SiO2が多すぎると、軟化点が高くなり成形性に劣る傾向がある。
【0062】
Al2O3はガラス化安定成分である。また化学的耐久性を向上させる効果が高い。Al2O3の含有量は、好ましくは0~30%であり、2.5~25%、特に好ましくは5~20%である。Al2O3が多すぎると、軟化点が上昇して成形しにくくなる。また、溶融性や化学的耐久性が低下しやすくなったり、失透しやすくなったりする。
【0063】
B2O3はガラス骨格を形成する成分である。また化学的耐久性を向上させやすく、失透を抑制する効果がある。B2O3の含有量は、好ましくは0~50%であり、2.5~40%、特に好ましくは5~30%である。B2O3の含有量が多すぎると、溶融性が低下したり、成形時に軟化しにくくなり、製造が困難になったりする。
【0064】
Li2O、Na2O及びK2Oは軟化点を低下させ、成形を容易にする成分である。Li2O+Na2O+K2Oの含有量は、好ましくは0~10%であり、0.01~9%、0.1~8%、特に好ましくは1~7%である。Li2O+Na2O+K2Oが多すぎると、熱膨張係数が大きくなったり、化学的耐久性が低下しやすくなったりする。なお、「Li2O+Na2O+K2O」とは、Li2O、Na2O、K2Oの含有量の合量である。また、Li2O、Na2O及びK2Oの各成分の含有量も、好ましくは0~10%であり、0.01~9%、0.1~8%、特に好ましくは1~7%である。
【0065】
MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOは化学的耐久性を大きく低下させずに粘度を低下させる成分である。また、失透を抑制する成分でもある。CaO+MgO+BaO+SrOの含有量は、好ましくは0~10%であり、0.1~8%、1~6%、特に好ましくは2~5%である。これらの成分の含有量が多すぎると、失透しやすくなる。なお、「CaO+MgO+BaO+SrO」とは、CaO、MgO、BaO、SrOの含有量の合量である。また、CaO、MgO、BaO及びSrOの各成分の含有量も、好ましくは0~10%であり、0.1~8%、1~6%、特に好ましくは2~5%である。
【0066】
TiO2、WO3及びNb2O5は、ガラスの化学耐久性を向上させやすく、粘度を大幅に上昇させにくい成分である。また、ガラスの屈折率を調整しやすい成分である。TiO2+WO3+Nb2O5の含有量は、0~15%は、好ましくは0~15%であり、0.1~12.5%、1~10%、特に好ましくは2~7.5%である。これらの成分の含有量が多すぎると、着色したり、失透しやすくなったりする。なお、「TiO2+WO3+Nb2O5」とは、TiO2、WO3及びNb2O5の含有量の合量である。
【0067】
また、TiO2、WO3及びNb2O5の各成分の含有量は、好ましくは0~15%であり、0.1~10%、1~5%、特に好ましくは2~3%である。これらの成分の含有量が多すぎると、着色したり、失透しやすくなったりする。
【0068】
上記成分以外にも以下の成分を含有させることができる。
【0069】
ZnOは化学的耐久性を大きく低下させずに粘度を低下させる成分である。ZnOの含有量は、好ましくは合量で0~50%であり、0.1~50%、1~40%、特に好ましくは2~30%である。これらの成分の含有量が多すぎると、失透しやすくなる。
【0070】
P2O5はガラス骨格を形成する成分であり、光透過率や化学的耐久性を向上させやすく、また失透を抑制する効果もある。P2O5の含有量は0~50%、2.5~40%、特に5~30%であることが好ましい。P2O5が多すぎると、溶融性が低下しやすくなる。また耐候性が低下しやすくなる。一方、P2O5が少なすぎると失透しやすくなる。
【0071】
なお、ガラス組成A、Bを含むいずれのガラス組成においても、環境上の理由から、ガラス組成中の鉛、水銀、クロム、カドミウム、フッ素及びヒ素の含有量は各々0.01質量%以下とすることが好ましい。また光透過率の低下を抑制する観点から、ガラス組成中のFe2O3、NiO及びCuOの含有量は合量で1%以下、0.75%以下、特に0.5%以下であることが好ましく、TiO2、WO3、La2O3、Gd2O3、及びBi2O3の含有量は合量で5%以下、2.5%以下、特に1%以下であることが好ましい。
【0072】
更に、本発明の樹脂組成物には、上述した無機充填材粒子とは別に、ナノフィラーを添加してもよい。このようにすることで、立体造形物の機械的強度を向上させることができる。また、無機充填材粒子の表面をナノ粒子で被覆してもよい。このようにすることで、無機充填材粒子の凝集を抑制することができる。また特に、柱状ガラス粒子を熱処理して結晶化する場合には、柱状ガラス粒子同士を結着しにくくできる。ナノフィラーの含有量は、体積%で、好ましくは0~3%であり、0.01~2%、0.1~1%、0.2~1%未満である。ナノフィラーの含有量が多すぎると、材料コストが高くなる。また、立体造形時における樹脂組成物の流動性が低下したり、界面泡が抜けにくくなったりする。
【0073】
なお、ナノフィラーは、可視光波長程度かそれよりも小さい粒子であるため、一般に、光散乱を発生せず、立体造形物の透明性や白色度に影響しにくいという特徴がある。ナノフィラーとしては、ZrO2、Al2O3、SiO2等が使用できる。
【0074】
ナノフィラーの平均粒子径D50は、好ましくは0.001~0.3μmであり、0.002~0.2μm、0.003~0.1μm、0.003~0.0.07μm、0.005~0.1μm、特に好ましくは0.005~0.03μmである。ナノフィラーの平均粒度D50が小さすぎると、材料コストが高くなったり、界面泡が抜けにくくなったりする。一方、ナノフィラーの平均粒子D50が大きすぎると、立体造形時における樹脂組成物の流動性が低下しやすくなる。
【0075】
本発明の樹脂組成物は、熱溶解積層(FDM)法に供することが好ましいが、粉末焼結法や指向性エネルギー堆積法、押出射出成形法等、いかなる成形方法にも採用可能である。
【0076】
また、本発明の樹脂組成物は、加熱して軟化溶融させたペースト状で用いても良いが、ペレット状に成形して用いることができる。また、ワイヤー状に成形してフィラメントとして使用しても良い。一般に、このフィラメントは熱溶解積層(FDM)法の材料として好適に用いることができる。
【0077】
フィラメントは、用いる立体造形用装置や造形精度に合わせて所望の直径に成形すればよいが、例えば、直径として0.3~5mm、0.5~4mm、0.7~3mm、1~2mmが挙げられる。フィラメントの直径が小さいと、フィラメント製造時のコストが高くなりやすい。一方、フィラメントの直径が大きいと、立体造形時にノズルの加熱が困難になったり、精度の高い立体造形物が得られにくくなったりする虞がある。
【0078】
また、フィラメント中の柱状粒子はフィラメントの軸方向に配向性を有することが好ましい。すなわち、フィラメントの軸方向(長軸方向)に沿った方向を0°、軸方向に対して垂直な方向を90°と定義したときに、柱状粒子の配向角度が、好ましくは0~40°、5~35°、特に好ましくは10~30°であることが好ましい。軸方向に配向性を有すると、得られる立体造形物の機械的強度が向上する傾向がある。また、立体造形時にノズルが詰まりにくくなる。なお、配向角度の測定方法は、フィラメントをデジタルスコープで観察、撮影し、視野中で任意に選択した柱状粒子を100本選択して軸方向に対する平均角度を算出することで得ることができる。
【0079】
また、本発明の樹脂組成物は、JIS K 7161に従い作製した試験片の引張強度が、好ましくは100MPa以上であり、より好ましくは110MPa以上、特に好ましくは120MPa以上である。このようにすると、立体造形物の機械的強度が向上しやすくなる。なお、引張強度はJIS K 7161の試験方法に従い測定した値である。
【0080】
次に、本発明の立体造形物について説明する。
【0081】
本発明の立体造形物は、熱可塑性樹脂と無機充填材粒子とを含む立体造形物であって、無機充填材粒子が、直径が1~20μm、アスペクト比(長さ/直径)が1.2~100、30~300℃における熱膨張係数が40×10-7/℃以下の柱状粒子を含むことを特徴とする。なお、立体造形物に含まれる各材料については上記した樹脂組成物と共通するため、ここでは説明を割愛する。
【0082】
本発明の立体造形物は、本発明の樹脂組成物からなることが好ましい。
【0083】
次に、本発明の立体造形物の製造方法の一例として、熱溶解積層(FDM)法を用いて説明する。
【0084】
まず、立体造形物形成用材料として、樹脂組成物または樹脂組成物からなるフィラメントを用意する。次に、この材料を加熱することにより、ペースト状または半液状となるように軟化溶融する。
【0085】
次に、ノズルの位置をコンピューターで制御しながら、ノズルから軟化溶融した樹脂組成物を押出成形することで、樹脂組成物からなる前駆体層を形成する。なお、前駆体層は、空冷もしくは強制的に冷却されることにより固化し、所定パターンを有する硬化層となる。
【0086】
その後、前記硬化層上に新たな前駆体層を形成し硬化させることにより前記硬化層と連続した所定パターンを有する新たな硬化層を形成する。そして、所定の立体造形物が得られるまで前記硬化層の積層を繰り返すことにより立体造形物を得る。
【0087】
その後、必要に応じて、得られた立体造形物の表面の少なくとも一部を機械加工してもよい。
【実施例】
【0088】
以下に、本発明について実施例に基づいて説明する。
【0089】
【0090】
【0091】
まず、表1に示す各組成となるように原料を調合、溶融した。その後、溶融ガラスを貴金属製の底面に孔が設けられたブッシングに供給し、ノズルから連続的に引き出して繊維状に成形した後、所望の長さに切断することにより表2のNo.1~4に示す寸法を有する柱状ガラス粒子を作製した。その後、No.1、2について、切断後のガラスにシリカナノ粒子(製品名:アエロジル)を0.1体積%添加し混合した後、No.1は1000℃で1時間熱処理、No.2は850℃で1時間熱処理を行い、結晶化を行った。また、No.6の無機充填剤粒子は、ガラス原料を溶融成形した後、粉砕し、平均粒子径10μmの粉末ガラスを作製した後、この粉末ガラスを酸素バーナーのフレームに当てることで球状に成形した。
【0092】
次に、熱可塑性樹脂として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(連続耐熱温度150℃、密度1.3g/cm3)を準備した。また、無機充填材粒子として作製した前述の材料を用い、表2に示す材料、割合で、射出成型機により混練し、ペレット状に成型を行い、均質な樹脂組成物を得た。それらの樹脂組成物を直径1.75mmのワイヤー状に射出成形し、フィラメントとして立体造形用装置に供することで、厚み5mm、30mmφの板状の立体造形物を得た。
【0093】
無機充填剤粒子及び立体造形物の特性は以下のようにして測定した。
【0094】
析出結晶の同定は、X線回折法により行った。
【0095】
熱膨張係数は、ディラトメーターを用いて30~300℃における値を測定した。
【0096】
ヤング率は、共振法により測定した。
【0097】
平均透過率は、試料を厚み0.5mmに成形した板を、分光光度計(島津製作所製UV-3100)により測定した。
【0098】
密度は、アルキメデス法で測定した。
【0099】
屈折率ndは、精密屈折率計(島津デバイス製KPR-2000)により測定した。
【0100】
立体造形物の引張強度は、JIS K 7161に従い作製した試験片をJIS K 7161の試験方法で、島津製作所製強度試験機を用い測定した値を採用した。
【0101】
また、立体造形物の反りやヒケの状態は、目視で外観を観察することで判断した。反りやヒケが確認されなかったものを「〇」、確認されたものを「×」として評価した。
【0102】
本発明の実施例(No.1~3)及び比較例(No.4~6)の結果を表2に示す。
【0103】
表2から分かるように、No.1~3では、立体造形物に反りやヒケが見られなかった。一方、比較例であるNo.4~6は、立体造形物に反りやヒケが見られた。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の樹脂組成物は、立体造形用、特に熱溶解積層(FDM)法等の立体造形用途に好適に使用できるが、指向性エネルギー堆積法、粉末焼結法にも適用可能である。更に、本発明の樹脂組成物は、加熱して軟化溶融させたペースト状で用いても良いが、ペレット状に成形して用いることができる。また、ワイヤー状に成形して、フィラメントとして用いることも可能である。