(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】バレストレイン試験用補助具及びバレストレイン試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/18 20060101AFI20230802BHJP
G01N 3/20 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
G01N3/18
G01N3/20
(21)【出願番号】P 2020063405
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 大輔
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-128552(JP,U)
【文献】特開2015-025786(JP,A)
【文献】特開2014-182029(JP,A)
【文献】特開平10-132718(JP,A)
【文献】特開昭50-133941(JP,A)
【文献】米国特許第5448918(US,A)
【文献】門井 浩太 他,バレストレイン試験による溶接高温割れ感受性評価での試験・評価方法の統一化に向けた検討,溶接学会論文集,2019年,Vol.37/No.4,p.200-207
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00- 3/62
G01N 17/00-19/10
G01N 25/00-25/72
C22C 5/00-45/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接熱源により部分溶融中の試験片に曲げ受け台を用いて曲げ変形を与えるバレストレイン試験で使用するバレストレイン試験用補助具であって、
前記曲げ受け台に一方の面を当接させた前記試験片の他方の面と接する当接面を具備して該試験片を収容する試験片収容部と、
前記試験片収容部に収容された前記試験片を前記曲げ受け台に固定するための固定部と、
前記試験片収容部に収容された前記試験片を前記固定部により前記曲げ受け台に固定した状態で該曲げ受け台から外れた部位に位置して前記試験片に曲げ変形を与えるための力が加えられる受圧部と、
前記試験片収容部の前記当接面内で、且つ、前記試験片収容部に収容された前記試験片を前記固定部により前記曲げ受け台に固定した状態で前記試験片の他方の面と前記溶接熱源との間に位置する開口部と、を有しているバレストレイン試験用補助具。
【請求項2】
前記試験片に曲げ変形を与えるための力を前記受圧部に加えた状態において、前記試験片収容部と前記試験片との間に生じる変形量の差分だけ、前記試験片よりも前記試験片収容部が大きく形成されている請求項1に記載のバレストレイン試験用補助具。
【請求項3】
前記試験片収容部と前記試験片との寸法差は、あらかじめ成された解析の結果に基づいて設定されている請求項2に記載のバレストレイン試験用補助具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のバレストレイン試験用補助具を用いるバレストレイン試験方法であって、
前記曲げ受け台に前記試験片の前記一方の面を当接させるのに続いて、
前記試験片収容部に前記試験片を収容して該試験片収容部の前記当接面を前記試験片の前記他方の面に当接させ、
前記バレストレイン試験用補助具を前記固定部により前記曲げ受け台に固定した後、
前記バレストレイン試験用補助具の前記開口部から露出する前記試験片の他方の面を前記溶接熱源によって部分溶融させつつ、前記受圧部に力を加えて前記試験片に曲げ変形を与えるバレストレイン試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接部の高温割れ感受性を評価するバレストレイン試験に用いられるバレストレイン試験用補助具及びこのバレストレイン試験用補助具を用いたバレストレイン試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶接部の高温割れ感受性を評価する1つの指標としては高温時の延性がある。
図5は、高温割れ感受性を評価する指標として従来から用いられている高温時の延性と溶接金属に発生する溶接時のひずみとの関係を模式的に示している。
【0003】
図5において、曲線Dは材料の延性を示し、曲線Sは溶接金属が凝固して温度が低下する過程で発生する溶接時のひずみを示している。
延性曲線Dに示されるように、材料によっては、凝固割れ(SC:Solidification Cracking)及び液化割れ(LC:Liquation Cracking)が生じる融点近傍の凝固脆性温度領域(BTR:Brittleness Temperature Range)と、延性低下割れ(DDC:Ductility Dip Cracking)が生じる融点よりも温度が低い延性低下温度領域(DTR:Ductility-Dip Temperature Range)が存在する。
そして、溶接時の凝固収縮の過程で生じる溶接時のひずみ(ひずみ曲線S)がBTRやDTRにおいて延性曲線Dの下限を超えると、材料がひずみに耐えられずに割れが生じるとされている。
【0004】
上記したバレストレイン試験(Varestraint)は、材料のBTRやDTRの下限を評価する試験であり、TIG溶接等の溶接熱源により部分溶融させた試験片に曲げひずみを与えることで溶接割れを再現して、発生した割れの位置と長さとからBTRやDTRの下限を評価する。
なお、溶接熱源には、TIG溶接等のアーク溶接による熱源が含まれるほか、ガス溶接やレーザ溶接や電子ビーム溶接等の溶接による熱源が含まれる。
【0005】
すなわち、
図6に模式的に示すように、バレストレイン試験によって試験片の溶接ビード(溶融部分)に生じたDDCやSC/LCの長さを冷却曲線Tに基づいて温度に換算し、ひずみ量を漸次増加させて試験したときの割れ発生位置の温度から、
図7に示すように、BTR及びDTRを作成する(バレストレイン試験結果)。
【0006】
このバレストレイン試験結果として得たBTR及びDTRを解析で推定される溶接時のひずみと合わせて
図5に示すような模式図を作成することで、溶接金属の割れを定量的に評価することができる。つまり、割れる場合(溶接時のひずみ曲線SがBTRやDTRにおいて延性曲線Dの下限を超える場合)か、割れない場合(溶接時のひずみ曲線SがBTRやDTRにおいて延性曲線Dの下限を超えない場合、すなわち、破線Ssの場合)かを判断することができ、この材料の延性曲線Dを避けるように溶接時のひずみを抑えれば割れの発生を回避することができる。
【0007】
従来において、このようなバレストレイン試験に使用されるバレストレイン試験装置としては、例えば、上面が上に凸の湾曲面として形成された曲げブロック(曲げ受け台)と、この曲げブロックの湾曲面上に載置される試験片の中央を部分溶融する溶接熱源としてのTIGトーチと、曲げブロックを間にして配置された一対のヨークを備えた両側加圧タイプのバレストレイン試験装置がある。
【0008】
このバレストレイン試験装置は、曲げブロックの湾曲面から水平方向に張り出す試験片の両端部分を一対のヨークで加圧することで、TIGトーチにより部分溶融した試験片に3点曲げによる変形を与えるようになっている。このような両側加圧タイプのバレストレイン試験装置に類する試験装置が非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】「溶接・接合便覧」,第2版,社団法人 溶接学会編,平成15年2月25日発行,第1195頁~第1196頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記した従来のバレストレイン試験装置では、曲げブロックから水平方向に張り出す試験片の両端部分を一対のヨークで加圧する都合上、試験に供することができる試験片の幅寸法(一対のヨークを結ぶ方向の寸法)には、曲げブロックの幅寸法や一対のヨークの位置に基づく制限が加えられていた。
すなわち、試験片が曲げブロックの寸法に係る制限をクリアできない場合には、この試験片に対してバレストレイン試験を行うことができないという問題があり、この問題を解決することが従来の課題となっている。
【0011】
本開示は、上記したような従来の課題を解決するためになされたもので、曲げ受け台の寸法に係る制限をクリアできない、例えば、幅が曲げ受け台の幅と同等ないし小さい試験片であったとしても、バレストレイン試験に供することを可能とするバレストレイン試験用補助具及びバレストレイン試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の第1の態様は、溶接熱源により部分溶融中の試験片に曲げ受け台を用いて曲げ変形を与えるバレストレイン試験で使用するバレストレイン試験用補助具であって、前記曲げ受け台に一方の面を当接させた前記試験片の他方の面と接する当接面を具備して該試験片を収容する試験片収容部と、前記試験片収容部に収容された前記試験片を前記曲げ受け台に固定するための固定部と、前記試験片収容部に収容された前記試験片を前記固定部により前記曲げ受け台に固定した状態で該曲げ受け台から外れた部位に位置して前記試験片に曲げ変形を与えるための力が加えられる受圧部と、前記試験片収容部の前記当接面内で、且つ、前記試験片収容部に収容された前記試験片を前記固定部により前記曲げ受け台に固定した状態で前記試験片の他方の面と前記溶接熱源との間に位置する開口部と、を有している構成としている。
【0013】
また、本開示の第2の態様は、前記試験片に曲げ変形を与えるための力を前記受圧部に加えた状態において、前記試験片収容部と前記試験片との間に生じる変形量の差分だけ、前記試験片よりも前記試験片収容部が大きく形成されている構成としている。
【0014】
さらに、本開示の第3の態様において、前記試験片収容部と前記試験片との寸法差は、あらかじめ成された解析の結果に基づいて設定されている構成としている。
【0015】
一方、本開示の第4の態様は、第1~3のいずれかの態様に記載のバレストレイン試験用補助具を用いるバレストレイン試験方法であって、前記曲げ受け台に前記試験片の前記一方の面を当接させるのに続いて、前記試験片収容部に前記試験片を収容して該試験片収容部の前記当接面を前記試験片の前記他方の面に当接させ、前記バレストレイン試験用補助具を前記固定部により前記曲げ受け台に固定した後、前記バレストレイン試験用補助具の前記開口部から露出する前記試験片の他方の面を前記溶接熱源によって部分溶融させつつ、前記受圧部に力を加えて前記試験片に曲げ変形を与える構成としている。
【0016】
本開示の第1の態様に係るバレストレイン試験用補助具では、試験片収容部に試験片を収容して、曲げ受け台から外れた部位に位置する受圧部に試験片に曲げ変形を与えるための力を加えると、バレストレイン試験用補助具が変形するのに伴って、試験片収容部の当接面に他方の面を当接させている試験片も変形する。
【0017】
つまり、幅が曲げ受け台の幅と同等ないし小さい試験片であったとしても、このバレストレイン試験用補助具を用いることで、バレストレイン試験に供し得ることとなる。
【発明の効果】
【0018】
本開示に係るバレストレイン試験用補助具によれば、曲げ受け台の寸法に係る制限をクリアできない、例えば、幅が曲げ受け台の幅と同等ないし小さい試験片であったとしても、バレストレイン試験に供することが可能になるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の一実施形態に係るバレストレイン試験用補助具を用いてバレストレイン試験を行うのに使用するバレストレイン試験装置の側面概略説明図(a)及び
図1(a)における矢印A方向からみた正面概略説明図(b)である。
【
図2】
図1に示したバレストレイン試験用補助具の下方からの斜視説明図である。
【
図3】
図1に示したバレストレイン試験用補助具の
図2における矢印B方向からの断面説明図である。
【
図4】
図1に示したバレストレイン試験用補助具の
図2における矢印C方向からの部分拡大断面説明図である。
【
図5】材料の高温時の延性と溶接金属に発生する溶接時のひずみとの関係を模式的に示すグラフである。
【
図6】バレストレイン試験における割れ発生位置と温度との関係を模式的に示すグラフである。
【
図7】バレストレイン試験で得られた延性低下温度領域及び凝固脆性温度領域を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係るバレストレイン試験用補助具を用いるバレストレイン試験装置を示しており、この実施形態では、溶接線で山折れするように試験片を曲げるトランスバレストレイン試験を行う場合を例に挙げて説明する。
【0021】
図1(a),(b)に概略的に示すように、このバレストレイン試験装置1は、上面が上に凸の湾曲面2aとして形成された曲げブロック(曲げ受け台)2と、この曲げブロック2の湾曲面2a上に載置されるバレストレイン試験用補助具(以下、補助具と呼称する)10に保持された試験片Wを部分溶融する溶接熱源としてのTIGトーチ3と、試験片Wに曲げ変形を与えるヨーク4,4を備えている。
【0022】
このバレストレイン試験装置1は、補助具10の後述する受圧部15,15を一対のヨーク4,4で加圧することで、TIGトーチ3により部分溶融した試験片Wに3点曲げによる変形を与えるようになっている。すなわち、TIGトーチ3によって部分溶融した試験片Wを
図1(b)に実線で示す状態から仮想線で示す状態に変形させるようになっている。
【0023】
この場合、TIGトーチ3は、図示しないアクチュエータによって、水平面内において移動可能となっており、トランスバレストレイン試験時において、TIGトーチ3は、湾曲面2aの峰に沿って試験片W上に溶接ビードを形成するべく、
図1(a)左右方向(
図1(b)奥行き方向)に移動しつつ溶接するようになっている。
【0024】
試験片Wを保持した状態で曲げブロック2の湾曲面2a上に載置される補助具10は、
図2に示すように、全体で略長方形の平板状を成すものである。この補助具10は、
図3にも示すように、その両端部間の中央に位置して下向きに開口して試験片Wを収容する試験片収容部11と、この試験片収容部11の両側に位置する側縁から互いに反する方向にそれぞれ突出する固定部12,12と、これらの固定部12,12にそれぞれ形成されたボルト挿通孔13,13を備えている。
【0025】
この補助具10は、固定部12,12の各ボルト挿通孔13,13に挿し通したボルト14,14(
図1(a)にのみ示す)を曲げブロック2側にねじ込むことで曲げブロック2に固定される。
【0026】
この際、補助具10の試験片収容部11に収容された試験片Wを固定部12,12により曲げブロック2に固定した状態において、曲げブロック2から外れる試験片収容部11の両端部側の部分をそれぞれ受圧部15,15としている。
【0027】
また、補助具10を曲げブロック2に固定した状態において、試験片収容部11に収容した試験片Wの一方の面Waは曲げブロック2に当接しており、試験片収容部11の底面は、試験片Wの他方の面Wbと接する当接面11aとして形成してある。
つまり、補助具10を曲げブロック2に固定した状態では、試験片Wが曲げブロック2と試験片収容部11の当接面11aとの間に、ほとんど隙間なく挟み込まれるようになっている。
【0028】
さらに、試験片収容部11には、その当接面11a内で、且つ、補助具10を曲げブロック2に固定した状態で試験片Wの他方の面WbとTIGトーチ3との間に位置する開口部16が形成してあり、この開口部16を通してTIGトーチ3による試験片Wの他方の面Wbの部分溶融が成されるようにしている。
【0029】
この実施形態において、
図4に示すように、補助具10の厚みtと試験片Wとの厚みtwとの比率を約5:3としており、これを踏まえて、曲げ変形時における試験片収容部11及び試験片Wの関係を説明する。
【0030】
補助具10の受圧部15,15を一対のヨーク4,4で加圧する曲げ変形時において、補助具10の板厚方向における中心線tcに対して、補助具10の試験片収容部11の外側(
図4上側)は、引張力によって伸びる方向(
図4矢印(+)方向)に変形し、試験片収容部11の内側(
図4下側)は、圧縮力によって縮む方向(
図4矢印(-)方向)に変形する。
【0031】
この際、補助具10の中心線tcでは伸びる方向及び縮む方向のいずれの方向にも変形しない。
一方、試験片Wは、その厚みtwが補助具10の厚みtの約3/5であるため、補助具10の中心線tc上において、引張力によって伸びる方向(図示白抜き矢印方向)に変形する。つまり、試験片Wが伸びた分だけ、補助具10の試験片収容部11と干渉することとなる。
【0032】
したがって、この実施形態では、この両者の曲げ変形時における各挙動をあらかじめ解析して、変形する試験片Wが補助具10の試験片収容部11に干渉しないように、試験片収容部11と試験片Wとの間に生じる試験片Wの
図4左右方向における変形量の差分だけ、試験片Wよりも試験片収容部11の寸法を大きく形成している(
図4では試験片Wの左右で差dずつ大きく形成している)。
【0033】
実際には、試験片Wの他方の面Wbが最も大きく変形して試験片収容部11に干渉することになるので、工作精度等を考慮して試験片収容部11の寸法を上記の寸法よりも若干大きく形成している。
【0034】
上記した構成の補助具10を用いて、試験片Wに対してトランスバレストレイン試験を行うに際しては、まず、バレストレイン試験装置1の曲げブロック2の湾曲面2a上に試験片Wを載置すると共に、この試験片Wを試験片収容部11に収容するようにして補助具10を曲げブロック2の湾曲面2a上にセットする。
【0035】
次に、補助具10の固定部12,12の各ボルト挿通孔13,13に挿し通したボルト14,14を曲げブロック2側にねじ込むことで、試験片Wとともに補助具10を曲げブロック2に固定する。
【0036】
この状態において、試験片収容部11に収容されている試験片Wの一方の面Waは曲げブロック2に当接しており、試験片Wの他方の面Wbは試験片収容部11の当接面11aと当接している。
つまり、補助具10を曲げブロック2に固定した状態において、試験片Wは曲げブロック2の湾曲面2aと試験片収容部11の当接面11aとの間に、ほとんど隙間なく挟み込まれることになる。
【0037】
この状態で、TIGトーチ3による溶接を開始し、TIGトーチ3を曲げブロック2の湾曲面2aの峰に沿って移動させて、補助具10の開口部16からのぞく試験片Wの他方の面Wb上に溶接ビードを形成する。
【0038】
そして、この溶接ビードの形成中に、曲げブロック2から外れた部位に位置する補助具10の受圧部15,15を一対のヨーク4,4で加圧することで、TIGトーチ3により部分溶融している試験片Wに3点曲げによる変形を与えて、試験片Wに強制的に凝固割れを発生させる。
【0039】
この一対のヨーク4,4による加圧に際して、試験片Wは曲げブロック2の湾曲面2aと試験片収容部11の当接面11aとの間に隙間なく挟み込まれているので、補助具10が変形するのに伴って一対のヨーク4,4からの曲げ力が試験片Wに伝達されて、試験片Wも変形することとなる。
【0040】
つまり、幅が曲げブロック2の幅と同等ないし小さい試験片Wであったとしても、この補助具10を用いることで、試験片Wに3点曲げによる変形を与え得ることとなる。すなわち、バレストレイン試験に供し得ることとなる。
【0041】
また、この実施形態に係る補助具10では、曲げ変形時において、変形する試験片Wが試験片収容部11に干渉しないように、試験片Wよりも試験片収容部11の寸法を大きく形成しているので、変形する試験片Wの干渉による影響が試験結果に及ぶのを回避し得ることとなる。
【0042】
さらに、この実施形態に係る補助具10では、試験片収容部11及び試験片Wの曲げ変形時における各挙動をあらかじめ解析して、試験片収容部11の寸法を決めるようにしているので、試験片収容部11の寸法を無駄に大きく形成することによる弊害の発生を少なく抑え得ることとなる。
【0043】
上記した実施形態では、本開示のバレストレイン試験用補助具を溶接線で山折れするように試験片を曲げるトランスバレストレイン試験に採用した場合を説明したが、これに限定されるものではなく、本開示のバレストレイン試験用補助具を溶接線と直交する線で山折れするように試験片を曲げるロンジバレストレイン試験に採用してもよい。
【0044】
また、上記した実施形態では、本開示のバレストレイン試験用補助具をTIG溶接等のアーク溶接を熱源とするトランスバレストレイン試験に採用した場合を説明したが、これに限定されるものではない。アーク溶接以外のガス溶接やレーザ溶接や電子ビーム溶接等の溶接を熱源とするトランスバレストレイン試験に本開示のバレストレイン試験用補助具を採用してもよい。
【0045】
本開示に係るバレストレイン試験用補助具及びバレストレイン試験方法の構成は、上記した実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 バレストレイン試験装置
2 曲げブロック(曲げ受け台)
3 TIGトーチ(溶接熱源)
4 ヨーク
10 バレストレイン試験用補助具
11 試験片収容部
11a 当接面
12 固定部
15 受圧部
16 開口部
W 試験片
Wa 試験片の一方の面
Wb 試験片の他方の面