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特許7323872電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/427 20060101AFI20230802BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20230802BHJP
   B60N 2/30 20060101ALI20230802BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20230802BHJP
【FI】
B60N2/427
B60N2/90
B60N2/30
B60K1/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021570657
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2020041654
(87)【国際公開番号】W WO2021145058
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2020006235
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 昇治
(72)【発明者】
【氏名】赤谷 豊
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001783(JP,A)
【文献】特開2018-075878(JP,A)
【文献】特開2017-088077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/427
B60N 2/90
B60N 2/30
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフロアの下側で、前後方向に延びる左右一対のサイドメンバに吊下支持され、サスペンションを介して左右の後輪を支持するリヤサスクロスメンバと、
前記フロアの下側で前記リヤサスクロスメンバに取り付けられ、少なくとも前記左右の後輪を駆動する走行用モータを含む駆動ユニットと、
前記フロアの上側に取り付けられ、少なくとも走行用バッテリからの電力を中継して前記走行用モータに供給するジャンクションボックスを含む電源ユニットと、
前記電源ユニットの直上に配設された後部シートと
を備えた電動車両において、
前記後部シートは、前記フロアの上側における前記左右一対のサイドメンバ上に設けられたブラケットの間で左右方向に掛け渡された骨格部材により当該後部シートのシートクッション後部が支持され、
前記骨格部材は、前記電源ユニットよりも後側位置かつ前記リヤサスクロスメンバの後端よりも前側位置に配設されている
ことを特徴とする電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造。
【請求項2】
前記骨格部材は、前記電源ユニットよりも上側位置に配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造。
【請求項3】
前記フロアは、前記後部シートの後方位置に収納凹部が形成され、
前記後部シートは、前記シートクッションが前記骨格部材を軸中心として回動可能に支持され、当該後部シートのシートバックが前記シートクッションに対して回動可能に支持されるとともに、前記シートバックを回動させて前記シートクッションに重ね合わせた状態で、前記シートクッションを前記骨格部材を軸中心として前記後部シート全体を後方に転回させることで前記収納凹部内に収納可能とされ、
前記骨格部材は、前記電源ユニットよりも上側位置に配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造。
【請求項4】
それぞれ前記フロアの上面に左右方向に延びて形成され、左右両端がそれぞれ前記左右一対のサイドメンバに連結されている前部フロアクロスメンバ及び後部フロアクロスメンバと、
前縁を前記前部フロアクロスメンバ上に固定され、後縁を前記後部フロアクロスメンバ上に固定されて、前記電源ユニットを上方から覆うユニットカバーとをさらに備え、
前記骨格部材は、前記ユニットカバーよりも後側位置に配設されている
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造。
【請求項5】
前記リヤサスクロスメンバは、前記左右一対のサイドメンバの前位置及び後位置の計4点の固定点から吊下支持され、
前記ブラケットは、前記リヤサスクロスメンバの後位置の左右一対の固定点に対して、それぞれ前記左右一対のサイドメンバを挟んで前後方向において重ねられている
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両には、走行用バッテリに対する電力の入出力を制御する各種電源ユニットが搭載されている。例えば電源ユニットとしては、走行用バッテリと走行用モータ等の電気負荷とを接続するジャンクションボックス、充電ステーション等での外部電源からの電力を走行用バッテリに充電する充電器、走行用バッテリからの直流電力を交流電力に変換して家電を使用可能とするDC-ACインバータ、或いは走行用モータを力行制御や回生制御するためのインバータ等が挙げられ、これらの電源ユニットは電力ケーブルを介して走行用バッテリや走行用モータ等の電気負荷と接続されている。
【0003】
車両の衝突時において、電源ユニットが破損したり電力ケーブルが断線したりするとショートの原因になるため、電源ユニットの設置位置や電力ケーブルの配索経路は入念に検討・設定されている。
例えば特許文献1には、後面衝突への対策を講じた後輪駆動の電動車両が開示されている。この電動車両では、車体のフロアの下側に吊下支持されたリヤサスクロスメンバにより左右の後輪を支持すると共に、サスクロスメンバ上に駆動ユニットとしてインバータを備えた走行用モータ及びトランスアクスルを取り付けて後輪を駆動している。フロアの下側において駆動ユニットの上方位置には電源ユニットとしてジャンクションボックス、充電器及びDC-ACインバータを配設し、各電源ユニット、走行用モータのインバータ及び走行用バッテリを電力ケーブルを介して接続している。そして、平面視でのリヤサスクロスメンバの輪郭線よりも内側に、電源ユニット及び駆動ユニットを配設している。強固なリヤサスクロスメンバは後面衝突時に容易に変形せず、これにより電源ユニットや駆動ユニットの破損防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-151174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、駆動ユニット及び電源ユニットを共にフロアの下側のリヤサスクロスメンバ上に配設した車体構造を前提としたものであるが、電源ユニットをフロアの上側に移設した車体構造も広く実施されている。このような車体構造においても、例えばジャンクションボックスと走行用モータのインバータとを電力ケーブルで接続する等の必要性から、電源ユニットは駆動ユニットの直上付近、即ち後面衝突の影響を受ける場所に設置される。そして、フロアを介してリヤサスクロスメンバから上方に離間した電源ユニットは、リヤサスクロスメンバによる保護作用が及び難くなるため、従来から有効な保護対策が要望されていた。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、車体のフロアの上側に電源ユニットを配置し、さらに電源ユニットの直上に後部シートを配置した後輪駆動の車体構造において、後面衝突時に電源ユニットをより確実に保護して破損を防止することができる電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造は、車体のフロアの下側で、前後方向に延びる左右一対のサイドメンバに吊下支持され、サスペンションを介して左右の後輪を支持するリヤサスクロスメンバと、前記フロアの下側で前記リヤサスクロスメンバに取り付けられ、少なくとも前記左右の後輪を駆動する走行用モータを含む駆動ユニットと、前記フロアの上側に取り付けられ、少なくとも走行用バッテリからの電力を中継して前記走行用モータに供給するジャンクションボックスを含む電源ユニットと、前記電源ユニットの直上に配設された後部シートとを備えた電動車両において、前記後部シートが、前記フロアの上側における前記左右一対のサイドメンバ上に設けられたブラケットの間で左右方向に掛け渡された骨格部材により当該後部シートのシートクッション後部が支持され、前記骨格部材が、前記電源ユニットよりも後側位置かつ前記リヤサスクロスメンバの後端よりも前側位置に配設されていることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
このように構成した電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造によれば、骨格部材は、後部シートの重量と共に乗員の体重を支えるために強固な構造体として構成されている。そして、電源ユニットの直上に後部シートが配設され、その後部シートのシートクッション後部が骨格部材により支持されている。さらに、骨格部材は、電源ユニットよりも後側に位置し、かつリヤサスクロスメンバの後端よりも前側に位置している。
【0009】
このため後面衝突時において、フロアの後部を変形させつつ前方へと侵入した他車両は、まずリヤサスクロスメンバの後端により他車両の侵入が阻止され、リヤサスクロスメンバの後端だけでは他車両の侵入を阻止できない場合には、リヤサスクロスメンバに加えて骨格部材により他車両の進入が阻止される。結果として2段階で他車両からの入力が緩和されることから、電源ユニットへの他車両の衝突、ひいては衝突に起因する電源ユニットの破損を未然することができる。
【0010】
その他の態様として、前記骨格部材が、前記電源ユニットよりも上側位置に配設されていることが好ましい(請求項2)。
このように構成した電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造によれば、電源ユニットの下側にはリヤサスクロスメンバの後端が配設され、上側には骨格部材が配設されているため、電源ユニットに衝突する以前に、進入高さに関わらず他車両をリヤサスクロスメンバの後端や骨格部材に確実に衝突させて入力を緩和可能となる。さらに、骨格部材が電源ユニットよりも上側に位置することにより、他車両の侵入により骨格部材が電源ユニット側に変形または移動したとしても、骨格部材が電源ユニットに干渉することを防止でき、電源ユニットをより確実に保護して破損を防止することができる。
【0011】
その他の態様として、前記フロアが、前記後部シートの後方位置に収納凹部が形成され、前記後部シートが、前記シートクッションが前記骨格部材を軸中心として回動可能に支持され、当該後部シートのシートバックが前記シートクッションに対して回動可能に支持されるとともに、前記シートバックを回動させて前記シートクッションに重ね合わせた状態で、前記シートクッションを前記骨格部材を軸中心として前記後部シート全体を後方に転回して前記収納凹部内に収納可能とされ、前記骨格部材が、前記電源ユニットよりも上側位置に配設されていることが好ましい(請求項3)。
【0012】
このように構成した電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造によれば、後部シートが収納凹部内に収納された状態では、後面衝突によりフロアの後部を変形させつつ前方へと侵入した他車両は、まず収納凹部内の後部シートに衝突する。他車両からの侵入高さ等の衝突条件に応じて後部シートの挙動は相違し、例えば、姿勢を保ちつつ前後方向に圧壊したり、或いは骨格部材を軸中心とした回転を伴って跳ね上がったり、或いは双方の挙動を同時に発生させる。
【0013】
後部シートが前後方向に圧壊する場合、後部シートは、強固な骨格部材により前方への移動が規制された状態で圧壊され、その内部のウレタン材等により他車両からの入力が吸収されるため、その後に他車両がリヤサスクロスメンバの後端に衝突した時点の入力、或いは骨格部材に衝突した時点の入力が緩和される。また、後部シートが跳ね上げられる場合、回動中心である骨格部材が電源ユニットよりも上側位置に配設されているため、跳ね上げ後の後部シートの全ての部位が電源ユニットよりも上方に位置して、後部シートの電源ユニットへの衝突が確実に防止される。
【0014】
その他の態様として、それぞれ前記フロアの上面に左右方向に延びて形成され、左右両端がそれぞれ前記左右一対のサイドメンバに連結されている前部フロアクロスメンバ及び後部フロアクロスメンバと、前縁を前記前部フロアクロスメンバ上に固定され、後縁を前記後部フロアクロスメンバ上に固定されて、前記電源ユニットを上方から覆うユニットカバーとをさらに備え、前記骨格部材が、前記ユニットカバーよりも後側位置に配設されていることが好ましい(請求項4)。
【0015】
このように構成した電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造によれば、ユニットカバーの前縁及び後縁が前部及び後部フロアクロスメンバに固定されて位置変位が規制されているため、前後方向におけるユニットカバーの強度が高められる。そして他車両からの入力は、リヤサスクロスメンバの後端への衝突により緩和され、骨格部材への衝突により緩和され、さらに前後方向に高い強度を有するカバーへの衝突により緩和されることから、電源ユニットへの他車両の衝突が一層確実に防止される。
【0016】
その他の態様として、前記リヤサスクロスメンバが、前記左右一対のサイドメンバの前位置及び後位置の計4点の固定点から吊下支持され、前記ブラケットが、それぞれ前記リヤサスクロスメンバの後位置の左右一対の固定点を前後方向で挟んだ位置で前記左右一対のサイドメンバ上に固定されていることが好ましい(請求項5)。
このように構成した電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造によれば、フロアの下側では左右のサイドメンバがリヤサスクロスメンバを介して連結され、フロアの上側では左右のサイドメンバ上のブラケットが骨格部材を介して連結されている。そして左右のブラケットは、それぞれのサイドメンバを挟んでリヤサスクロスメンバの後位置の左右の固定点と前後方向において重ねられている。結果としてリヤサスクロスメンバの後部、左右のブラケット及び骨格部材は、左右のサイドメンバを挟んで前後方向でほぼ一致する位置で連結され、互いに協調して強固な構造体を形作ることから、リヤサスクロスメンバ及び骨格部材の変形が一層抑制される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造によれば、車体のフロアの上側に電源ユニットを配置し、さらに電源ユニットの直上に後部シートを配置した後輪駆動の車体構造において、後面衝突時に電源ユニットを確実に保護して破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の電動車両の後部を左側方より見たサイドメンバに対するリヤサスクロスメンバ及び後部シートの位置関係を示す断面図である。
図2】電動車両の後部を後方より見たフロアに対する駆動ユニット及び電源ユニットの位置関係を示す断面図である。
図3】リヤサスクロスメンバ上の駆動ユニットの配置状態を示す平面図である。
図4】フロア上の電源ユニットの配置状態を示す平面図である。
図5】電動車両の後部を左側方より見た電源ユニットの取付状態を示す断面図である。
図6】フロア上の後部シートの配置状態を示す平面図である。
図7】後部シートを収納した状態を示す模式図である。
図8】車高の比較的高い他車両が後面衝突した場合の後部シートの挙動を示す模式図である。
図9】車高の比較的低い他車両が後面衝突した場合の後部シートの挙動を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した電動車両における電源ユニット及び後部シートの配置構造の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態の電動車両の後部を左側方より見たサイドメンバに対するリヤサスクロスメンバ及び後部シートの位置関係を示す断面図、図2は同じく電動車両の後部を後方より見たフロアに対する駆動ユニット及び電源ユニットの位置関係を示す断面図、図3はリヤサスクロスメンバ上の駆動ユニットの配置状態を示す平面図である。以下の説明では、車両に搭乗した運転者を主体として前後、左右及び上下方向を表現する。
【0020】
本実施形態の電動車両1は、走行用動力源として後述する走行用モータ9及び図示しないエンジンを搭載したハイブリッド車両である。電動車両1の車体を構成するフロア2の下面には左右一対のサイドメンバ3l,3rが設けられ、各サイドメンバ3l,3rはそれぞれフロア2との間で閉断面を形成して前後方向に延設されている。
フロア2の下側にはリヤサスクロスメンバ4が配設され、その左右両側が各サイドメンバ3l,3rから吊下支持されている。詳しくは図3に示す平面視において、左右のサイドメンバ3l,3rの前位置及び後位置には支持マウント5fl,5fr,5rl,5rr(本発明の固定点に相当するため、以下の説明でも固定点と称する)が設けられ、リヤサスクロスメンバ4の前部左右及び後部左右が各固定点5fl,5fr,5rl,5rrから吊下支持されている。また前位置の固定点5fl,5frからリヤサスクロスメンバ4の左右両側は前方に延設され、それぞれ一対のボルト6l,6rにより左右のサイドメンバ3l,3rに締結されている。
【0021】
リヤサスクロスメンバ4の左側部及び右側部には、それぞれ図示しないダブルウィッシュボーン式のサスペンションを介して左右の後輪7(図3に右側のみ図示)が支持されている。当該サスペンションの構成は周知であるため、詳細は説明しないが、アッパアーム、ロアアーム、トーコントロールリンク、スプリング、アブソーバ等から構成されている。電動車両1の走行中において路面からの入力や後輪7への駆動反力等に抗するために、リヤサスクロスメンバ4は厚肉の鋼板から製作されて高い強度を有すると共に、同じく高い強度の左右のサイドメンバ3l,3rから支持されている。
【0022】
フロア2の下側においてリヤサスクロスメンバ4には、駆動ユニット8として走行用モータ9、走行用モータ9に一体的に設けられたインバータ10、及び減速機として機能するトランスアクスル11が支持マウント13を介して取り付けられ、トランスアクスル11には左右一対の駆動軸12を介して左右の後輪7が連結されている。
走行用モータ9はインバータ10により駆動制御される。例えば力行制御時には、図示しない走行用バッテリからの直流電力がインバータ10で三相交流電力に変換されて走行用モータ9に供給され、走行用モータ9の回転がトランスアクスル11内で減速されて駆動軸12を介して左右の後輪7が駆動される。また回生制御時には、左右の後輪7の回転が駆動軸12及びトランスアクスル11を介して走行用モータ9に伝達され、走行用モータ9により発電された三相交流電力がインバータ10により直流電力に変換されて走行用バッテリに充電される。
【0023】
図4はフロア2上の電源ユニットの配置状態を示す平面図、図5は電動車両1の後部を左側方より見た電源ユニットの取付状態を示す断面図である。
図4,5に示すように、フロア2の上面には上側前部及び上側後部フロアクロスメンバ16,17が設けられ、フロア2の下面には下側前部及び下側後部フロアクロスメンバ18,19が設けられている。各フロアクロスメンバ16~19は、フロア2の下面との間で閉断面を形成しつつ左右方向に延設されて、その両端が左右のサイドメンバ3l,3rに連結されている。
【0024】
フロア2上には、電源ユニット20として左側よりジャンクションボックス21、充電器22及びDC-ACインバータ23が取り付けられている。周知のようにジャンクションボックス21は、走行用バッテリと走行用モータ9等の各種電気負荷とを接続する機器であり、充電器22は、充電ステーション等での外部電源からの電力を充電ポート30を介して走行用バッテリに充電する機器であり、DC-ACインバータ23は、走行用バッテリの直流電力を100Vの交流電力に変換して家電を使用可能とする機器である。
【0025】
図5はジャンクションボックス21の取付状態を例示しており、ジャンクションボックス21の前面はブラケット24及びボルト25,26により上側前部フロアクロスメンバ16上に固定され、ジャンクションボックス21の後面はブラケット27及びボルト28,29により上側後部フロアクロスメンバ17上に固定されている。ブラケット27には略三角状をなす脆弱部27aが屈曲形成されており、他車両による後面衝突時には脆弱部27aが屈曲変形して衝撃による入力の吸収作用を奏する。充電器22及びDC-ACインバータ23についても、重複する説明はしないが同様の取付状態となっている。
【0026】
図4に示すように、フロア2の上側で且つ電源ユニット20の前側において、ジャンクションボックス21と充電器22を接続する電力ケーブル40が、ジャンクションボックス21の車両外側の側面と充電器22のジャンクションボックス21側の側面に接続され、同様に、ジャンクションボックス21とDC-ACインバータ23を接続する電力ケーブル41が、ジャンクションボックス21の車両外側の側面とDC-ACインバータ23の前面に接続されている。また図2,5に示すように、ジャンクションボックス21の下面には端子台21aが設けられ、フロア2に形成された貫通孔2aに嵌め込まれて下方に突出している。端子台21aの後面にはモータ側電力ケーブル33の一端が接続され、その他端はインバータ10の端子台10aの左側面に接続されている。
【0027】
図示はしないが、フロア2の下側においてリヤサスクロスメンバ4の前方には走行用バッテリが配設され、ジャンクションボックス21の端子台21aはバッテリ側電力ケーブル34を介して走行用バッテリに接続されている。走行用バッテリと充電器22、DC-ACインバータ23及び走行用モータ9のインバータ10との間の電力の遣り取りは、ジャンクションボックス21を中継して行われる。例えば、走行用バッテリからの直流電力がジャンクションボックス21を介してDC-ACインバータ23に供給され、100Vの交流電力に変換されて家電の作動に利用される。また、充電ステーション等で外部電源から供給された交流電力が充電器22により直流電力に変換され、ジャンクションボックス21を介して走行用バッテリに充電される。また、上記した走行用モータ9の力行制御や回生制御も、ジャンクションボックス21を介して行われる。
【0028】
図5に示すように電源ユニット20の直上には、下方に開口する四角箱状をなすユニットカバー35が配設されている。ユニットカバー35のフランジ状に形成された前縁35a及び後縁35bは、ボルト36及びナット37により上側前部及び上側後部フロアクロスメンバ16,17の上面に固定され、このユニットカバー35により電源ユニット20が上方から覆われている。ユニットカバー35は鋼板を折曲形成して製作され、図示はしないが前後方向に延びる多数のリブが形成されて強度が高められている。
【0029】
図6はフロア2上の後部シートの配置状態を示す平面図である。
図1,2,5,6に示すように、ユニットカバー35の直上には、収納式の3列目シート39(本発明の後部シートに相当し、以下の説明でも後部シートと称する)が配設され、フロア2上の後部シート39の後方位置には、後部シート39を収納するための収納凹部40が形成されている。左右のサイドメンバ3l,3r上には、それぞれ側面視で略三角状をなすブラケット42l,42rの基部が前後一対のボルト41により固定され、左右のブラケット42l,42rの頂部の間には、パイプ材から製作された骨格部材43が左右方向に掛け渡され、その両端がそれぞれブラケット42l,42rに固定されている。
【0030】
図1に示すように骨格部材43は、前後方向においてリヤサスクロスメンバ4の後端よりも寸法L1だけ前側位置に配設され、後位置の左右の固定点5rl,5rrよりも微小な寸法L2だけ前側位置に配設され、且つユニットカバー35の後端よりも寸法L3だけ後側位置に配設されている。また、上下方向において骨格部材43は、電源ユニット20の最上部よりも寸法L4だけ上側位置に配設されている。
【0031】
また、上記のように骨格部材43と後位置の固定点5rl,5rrとの前後位置が微小な寸法L2しか離間していないため、この骨格部材43を支持する左右のブラケット42l,42rは、それぞれ固定点5rl,5rrに対して左右のサイドメンバ3l,3rを挟んで前後方向で重なる位置に配設されている。
このように配置された骨格部材43が、図示はしないが後部シート39のシートクッション39aの後部を左右方向に渡って支持し、これにより後部シート39の後部が骨格部材43及び左右のブラケット42l,42rを介してサイドメンバ3l,3r上から支持されている。また、シートクッション39aの前部は図示しないラッチ機構を介して左右のホイールハウスインナー上にブラケット(不図示)で支持されると共に、ラッチ機構を解除すると、シートクッション39aの前部がホイールハウスインナー上のブラケットから切り離されて骨格部材43を軸中心として回動可能となる。また、シートバック39bは、図示はしないがシートクッション39aに対して回動可能に支持され、所望の角度で図示しないロック機構により固定されるようになっている。また、シートバック39bの上部にはヘッドレスト39cが連結され、このヘッドレスト39cもシートバックに対して回動可能となっている。
【0032】
以上の構成により、後部シート39は骨格部材43を中心として折り畳み可能となっている。図5に基づき収納手順を述べると、まずヘッドレスト39cを前方に折り畳んでシートバック39bに重ね合わせ、次いで、シートバック39bのロック機構を解除した上で、シートバック39bを前方に折り畳んでシートクッション39aに重ね合わせる。これにより後部シート39は三層に折り畳まれ、シートクッション39aのラッチ機構を解除し、骨格部材43を軸中心として後部シート39全体を後方に転回させる。図5中に二点鎖線で示すように、後部シート39はフロア2上の収納凹部40内に収容され、シートクッション39aの底面が荷室ボード面44に対して面一となる。収納状態の後部シート39を展開して使用可能とする場合には、上記と逆の手順が採られる。
【0033】
骨格部材43には、後部シート39の重量と共に乗員の体重を支え、且つ後部シート39の格納・展開を正確に案内するために十分な強度が要求され、これを支持する左右のブラケット42l,42rにも十分な強度が要求される。以上の要求に対応すべく、骨格部材43及びブラケット42l,42rが厚肉の素材で製作されるだけでなく、車体の構造体として機能する左右のサイドメンバ上にブラケット42l,42rが立設されている。このように元々骨格部材43は強固な構造体として構成されており、本実施形態では、骨格部材43を後面衝突時の電源ユニット20の保護のためにも利用すべく、図1に基づき述べたような前後方向及び上下方向の位置設定を行っており、以下、後面衝突時の電源ユニット20の保護作用について説明する。
【0034】
電源ユニット20の直上に後部シート39を配設し、その後部シート39のシートクッション39a後部を骨格部材43により支持しているため、骨格部材43は電源ユニット20よりも後側に位置している。そして、骨格部材43より寸法L1だけ後側にリヤサスクロスメンバ4の後端を位置させているため、後面衝突時において、フロア2の後部を変形させつつ前方へと侵入した他車両は、まずリヤサスクロスメンバ4の後端に衝突する。リヤサスクロスメンバ4自体が高い強度を有すると共に、同じく高い強度を有する左右のサイドメンバ3l,3rから吊下支持されているため、リヤサスクロスメンバ4の変形が抑制されて他車両からの入力が緩和される。激しい後面衝突では、他車両がさらに前方へと侵入して骨格部材43に衝突する場合もある。しかし、上記のように強固な構造体として機能する骨格部材43は前方への変形、例えば前方への屈曲変形等が最小限に抑制され、これにより他車両からの入力がさらに緩和される。
【0035】
このように、まず後部シート39から後方に離間しているリヤサスクロスメンバ4の後端により他車両の侵入を阻止し、リヤサスクロスメンバ4の後端だけでは他車両の侵入を阻止できない場合には、リヤサスクロスメンバ4に加えて骨格部材43により他車両の進入を阻止し、結果として2段階で他車両からの入力を緩和している。
詳しくは、他車両がリヤサスクロスメンバ4に衝突すると、この時点からリヤサスクロスメンバ4の変形により入力の吸収が開始され、他車両はリヤサスクロスメンバ4を変形させながら骨格部材43に接近する。この間にもリヤサスクロスメンバ4を変形させることで入力が吸収され続けるため、多くの場合には骨格部材43に衝突した時点で残存する入力、換言すると、電源ユニット20の保護のために吸収すべき入力は十分に小さくなっている。そして骨格部材43への衝突後は、リヤサスクロスメンバ4の変形に加えて骨格部材43も変形を開始し、これにより残存する入力が確実に吸収される。従って、電源ユニット20への他車両の衝突、ひいては衝突に起因する電源ユニット20の破損を未然することができる。
【0036】
無論、後部シート39に着座している乗員も電源ユニット20の場合と同様であり、リヤサスクロスメンバ4の後端、骨格部材43の順に2段階で入力の緩和を図ることにより、後面衝突から確実に保護することができる。
特に本実施形態では、骨格部材43を支持する左右のブラケット42l,42rが、それぞれ固定点5rl,5rrに対して左右のサイドメンバ3l,3rを挟んで前後方向で重なる位置に配設されている。そして、フロアの下側では左右のサイドメンバ3l,3rがリヤサスクロスメンバ4を介して連結され、フロアの上側では左右のサイドメンバ3l,3r上のブラケット42l,42rが骨格部材43を介して連結されている。このため、リヤサスクロスメンバ4の後部(固定点5rl,5rrの箇所)、左右のブラケット42l,42r及び骨格部材43は、左右のサイドメンバ3l,3rを挟んで前後方向でほぼ一致する位置で連結され、互いに協調して強固な構造体を形作っている。この要因も後面衝突時のリヤサスクロスメンバ4及び骨格部材43の変形抑制、ひいては電源ユニット20の保護に大きく貢献する。
【0037】
また、電源ユニット20の最上部よりも寸法L4だけ上側位置に骨格部材43を配設している。結果として電源ユニット20の下側にはリヤサスクロスメンバ4の後端が配設され、上側には骨格部材43が配設されている。例えば骨格部材43が電源ユニット20の最上部よりも下側に配設されている場合、他車両の侵入高さが高いと、リヤサスクロスメンバ4の後端のみならず骨格部材43にも真向から衝突せず、それほど入力を緩和されないまま電源ユニット20に衝突してしまう可能性がある。骨格部材43及びリヤサスクロスメンバ4を電源ユニット20の上下に配設することにより、電源ユニット20に衝突する以前に、進入高さに関わらず他車両をリヤサスクロスメンバ4や骨格部材43に確実に衝突させて入力を緩和でき、この要因も電源ユニット20の保護に大きく貢献する。
【0038】
さらに、骨格部材43が電源ユニット20よりも上側に位置することにより、他車両の侵入により骨格部材43が電源ユニット20側に変形または移動したとしても、骨格部材43が電源ユニット20に干渉することを防止でき、電源ユニット20をより確実に保護して破損を防止することができる。
一方、左右のサイドメンバ3l,3rに両端を連結された上側前部及び上側後部フロアクロスメンバ16,17の上面に、電源ユニット20を上方から覆うユニットカバー35の前縁35a及び後縁35bを固定している。結果としてユニットカバー35の前縁35a及び後縁35bは、強固な上側前部及び上側後部フロアクロスメンバ16,17への固定により位置変位が規制されるため、多数のリブの形成と相俟って前後方向におけるユニットカバー35の強度が高められている。
【0039】
そして、このユニットカバー35の後端よりも寸法L3だけ後側位置に骨格部材43を配設している。従って、他車両からの入力は、リヤサスクロスメンバ4の後端への衝突により緩和され、骨格部材43への衝突により緩和され、さらに前後方向に高い強度を有するユニットカバー35への衝突により緩和されることから、電源ユニット20への他車両の衝突を一層確実に防止することができる。
【0040】
さらに、寸法L4に基づく骨格部材43の上側位置への配設は、後部シート39の収納状態での後面衝突時においても電源ユニット20の保護機能を奏する。
図7は後部シート39を収納した状態を示す模式図、図8は車高の比較的高い他車両Aが後面衝突した場合の後部シート39の挙動を示す模式図、図9は車高の比較的高い他車両Bが後面衝突した場合の後部シート39の挙動を示す模式図である。
【0041】
後部シート39の収納状態では、後面衝突によりフロア2の後部を変形させつつ前方へと侵入した他車両は、リヤサスクロスメンバ4の後端に先行して、まず収納凹部40内の後部シート39に衝突する。このときの後部シート39の挙動(変形や動き等)は、他車両の侵入高さ等の衝突条件に応じて相違する。例えばバス等の車高が高い他車両Aの場合には、侵入高さが高いことから後部シート39に真向から衝突する場合が多い。このときの後部シート39は強固な骨格部材43により前方への移動が規制されているため、図7に示す正常な収納状態から、図8に示すように収納凹部40内での姿勢を保ちつつ前後方向に圧壊する。この圧壊に伴って、後部シート39の内部のウレタン材等により他車両Aからの入力が吸収される。従って、その後に他車両Aがリヤサスクロスメンバ4の後端に衝突した時点の入力、或いは骨格部材43に衝突した時点の入力が緩和されることから、この要因も電源ユニット20の保護に大きく貢献する。
【0042】
また、例えば乗用車等の車高が低い他車両Bの場合には、侵入高さが低いことからフロア2の後部を持ち上げながら後部シート39よりも下側位置に衝突する場合が多い。このときの後部シート39は、図7に示す正常な収納状態から、図9に示すように他車両Bの衝突により骨格部材43を中心とした回転を伴って跳ね上げられる。回転中心である骨格部材43が電源ユニット20よりも寸法L4だけ上側位置に配設されているため、跳ね上げ後の後部シート39の全ての部位が電源ユニット20よりも上方に位置する。結果として、後部シート39の電源ユニット20への衝突が確実に防止され、この要因も電源ユニット20の保護に大きく貢献する。
【0043】
なお、後面衝突時の後部シート39の挙動は、圧壊や跳ね上げとして明確に表れるとは限らず、例えば双方の挙動が同時に発生したときには、それぞれの作用効果が共に奏される。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態ではハイブリッド車両1における電源ユニット20及び後部シート39の配置構造として具体化したが、電源ユニット20及び後部シート39を備えた電動車両であれば任意に変更可能であり、例えば走行用動力源としてモータを搭載した電気自動車に適用してもよい。
【0044】
また上記実施形態では、リヤサスクロスメンバ4上に駆動ユニットとして走行用モータ9、インバータ10及びトランスアクスル11を配設し、フロア2の上側に電源ユニット20としてジャンクションボックス21、充電器22及びDC-ACインバータ23を配設したが、それらの種別や配置はこれに限るものではない。例えば、走行用モータ9、インバータ10及びトランスアクスル11の配列を変更したり、或いは、インバータ10を電源ユニット20の1つとしてフロア2の上側に配設したりしてもよい。
【0045】
また上記実施形態では、収納式の3列目シートとして後部シート39を構成したが、これに限るものではなく、例えば収納機能を備えない固定式の後部シートとしてもよいし、3列目シートを備えない電動車両の場合には2列目シートを後部シートとしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 電動車両
2 フロア
3l,3r サイドメンバ
4 リヤサスクロスメンバ
5fl,5fr,5rl,5rr 固定点
7 後輪
8 駆動ユニット
9 走行用モータ
16 上側前部フロアクロスメンバ
17 上側後部フロアクロスメンバ
20 電源ユニット
21 ジャンクションボックス
35 ユニットカバー
35a 前縁
35b 後縁
39 後部シート
40 収納凹部
42l,42r ブラケット
43 骨格部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9