(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】感光性を持つ無電解めっき用塗料組成物、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物、及びパターン形状の無電解めっき層を有するめっき物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 18/18 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
C23C18/18
(21)【出願番号】P 2022126426
(22)【出願日】2022-08-08
【審査請求日】2022-08-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-05
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504137554
【氏名又は名称】株式会社イオックス
(73)【特許権者】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 悠人
(72)【発明者】
【氏名】中辻 達也
(72)【発明者】
【氏名】柏木 行康
【合議体】
【審判長】井上 猛
【審判官】土屋 知久
【審判官】佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-155764(JP,A)
【文献】特開昭47-34125(JP,A)
【文献】特開2001-303255(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0332145(US,A1)
【文献】国際公開第2017/154913(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C18/00-18/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解めっき用塗料組成物であって、
(i)金属粒子と分散剤との複合体、
(ii)溶媒、
(iii)バインダー、及び
(iv)感光剤
を含有し(但し、
前記無電解めっき用塗料組成物は、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物
を含む組成物、及び末端に反応基としての二重結合を2~6個有するオリゴマー
を含む組成物、を除く)、
前記金属粒子は、パラジウム粒子であり、
前記感光剤は、
2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、及び2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オンから成る群から選ばれる少なくとも一種のアルキルフェノン系光ラジカル発生剤;
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、エチル-2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、(2,5-ジヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキサイド、(p-ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(p-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキサイド、トリス(p-ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、及びビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドから成る群から選ばれる少なくとも一種のアシルホスフィンオキシド系光ラジカル発生剤;
1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン1-(O-アセチルオキシム)、3-ベンゾイロキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイロキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンから成る群から選ばれる少なくとも一種のオキシムエステル系の光ラジカル発生剤;
2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾールから成る群から選ばれる少なくとも一種のイミダゾール系光ラジカル発生剤;
2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、2-イソプロピルチオキサントン、及び4-イソプロピルチオキサントンから成る群から選ばれる少なくとも一種のチオキサントン系光増感剤;
ビス[4-(tert-ブチル)フェニル]ヨードニウムテトラ(ノナフルオロ-tert-ブトキシ)アルミン酸塩、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、4-イソプロピル-4'-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボラート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、(4-イソブチルフェニル)(p-トリル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボラート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホン酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、及び[4-[(2-ヒドロキシテトラデシル)オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナートから成る群から選ばれる少なくとも一種のヨードニウム塩系光酸発生剤;
(チオジ-4,1-フェニレン)ビス(ジフェニルスルホニウム)ビス(ヘキサフルオロホスファート)、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムブロミド、ヘキサフルオロリン酸トリフェニルスルホニウム、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸、トリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリフェニルメチルスルホニウムクロリド、トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩、テトラフルオロほう酸ジメチルフェナシルスルホニウム、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロリン酸、10-カンファースルホン酸トリフェニルスルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸トリフェニルスルホニウム、及びノナフルオロ-1-ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウムから成る群から選ばれる少なくとも一種のスルフォニウム塩系光酸発生剤;及び、
2-(ピペリジン-1-カルボニル)ベンズアルデヒド、シクロヘキシルカルバミン酸2-ニトロベンジル、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、アセトフェノン O-ベンゾイルオキシム、及びシクロヘキシルカルバミン酸1,2-ビス(4-メトキシフェニル)-2-オキソエチルから成る群から選ばれる少なくとも一種の光塩基発生剤;
から成る群から選ばれる少なくとも一種の感光剤である、
無電解めっき用塗料組成物。
【請求項2】
前記無電解めっきは、前記無電解めっき用塗料組成物を用いて形成される触媒層の表面に形成されるパターン形状の無電解めっき層であり、
前記パターン形状の無電解めっき層は、
前記触媒層の触媒活性が残る部分に形成された無電解めっき層と、
前記触媒層の触媒活性が失活した部分に無電解めっき層が形成されていない事とで、
パターン形状の無電解めっき層である、
請求項1に記載の無電解めっき用塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性を持つ無電解めっき用塗料組成物、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物、及びパターン形状の無電解めっき層を有するめっき物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、本出願人が開示する技術であり、(1)基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、及び(iii)バインダーを含有する触媒組成物から成る触媒層を形成する工程、(2)前記触媒層を形成する工程の後、前記触媒層の表面にマスキング層を形成する工程、(3)前記マスキング層を形成する工程の後、前記触媒層及び前記マスキング層の表面にUV照射する工程、(4)前記UV照射する工程の後、マスキング層を除去する工程、(5)前記マスキング層を除去する工程の後、パターン形状の無電解めっき層を形成する工程を含む、めっき物の製造方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新たに、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討した結果、めっき物において、基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、(iii)バインダー、及び(iv)感光剤を含有する無電解めっき用塗料組成物を用いて、触媒層を形成し、この触媒層の表面に、パターン形状の無電解めっき層を有する、新たなめっき物を開発した。
【0006】
本発明は、次のめっき物及びめっき物の製造方法を包含する。
【0007】
項1.
無電解めっき用塗料組成物であって、
(i)金属粒子と分散剤との複合体、
(ii)溶媒、
(iii)バインダー、及び
(iv)感光剤
を含有する、無電解めっき用塗料組成物。
【0008】
項2.
前記感光剤は、光ラジカル発生剤、光酸発生剤、光塩基発生剤、及び光増感剤から成る群から選ばれる少なくとも一種の感光剤である、前記項1に記載の無電解めっき用塗料組成物。
【0009】
項3.
めっき物の製造方法であって、
(1)基材の表面に、請求項1又は2に記載の無電解めっき用塗料組成物を用いて、触媒層を形成する工程、
(2)前記触媒層を形成する工程の後、前記触媒層の表面に、10nm~500nm程度の波長を有する光を用い、前記光の照射部と非照射部とを形成する工程、及び
(3)前記光の照射部と非照射部とを形成する工程の後、パターン形状の無電解めっき層を形成する工程、
を含む、めっき物の製造方法。
【0010】
項4.
前記光の照射部と非照射部とを形成する工程は、
フォトマスクを用いて露光を行う方法、又は/及び
レーザー光を用いて露光を行う方法、
を含む、前記項3に記載のめっき物の製造方法。
【0011】
項5.
前記触媒層を形成する工程では、
前記基材の表面に、前記触媒層を、全面に形成する、
前記項3又は4に記載のめっき物の製造方法。
【0012】
項6.
前記パターン形状の無電解めっき層を形成する工程では、
前記触媒層の表面に、
前記光の非照射部に、無電解めっき層を形成する事と、
前記光の照射部に、無電解めっき層を形成しない事とで、
パターン形状の無電解めっき層を形成する、
前記項3~5の何れかにに記載のめっき物の製造方法。
【0013】
項7.
前記基材は、基板であり、
前記無電解めっき層は、導体回路であり、
前記めっき物は、回路基板である、
前記項3~6の何れかに記載のめっき物の製造方法。
【0014】
項8.
めっき物であって、
基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、(iii)バインダー、及び(iv)感光剤を含有する触媒層を有し、
前記触媒層の表面に、パターン形状の無電解めっき層を有する、めっき物。
【0015】
項9.
前記基材の表面に、前記触媒層を、全面に有する、請求項8に記載のめっき物。
【0016】
項10.
前記パターン形状の無電解めっき層は、
前記触媒層の触媒活性が残る部分に形成された無電解めっき層と、
前記触媒層の触媒活性が失活した部分に無電解めっき層が形成されていない事とで、
パターン形状の無電解めっき層と成る、前記項8又は9に記載のめっき物。
【0017】
項11.
前記基材は、基板であり、
前記無電解めっき層は、導体回路であり、
前記めっき物は、回路基板である、前記項8~10の何れかに記載のめっき物。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、新たに、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物を提供する事が出来る。
【0019】
本発明は、触媒層は絶縁性であり、触媒層を除去する工程が不要である、めっき物を提供する事が出来る。
【0020】
本発明は、光の照射部と非照射部とを形成する技術に依り、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を有するめっき物を形成する技術である。
【0021】
本発明のめっき物を用いる事に依り、より微細な回路配線を形成する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のめっき物の作製を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明を表す実施の形態は、発明の趣旨がより良く理解出来る説明であり、特に指定のない限り、発明内容を限定するものではない。
【0025】
本明細書において、「含む」及び「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。
【0026】
本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0027】
本明細書において、一般に、部、%等の表示を使用する。
【0028】
本明細書において、特に断りがない限り、質量部又は質量%(wt%)を表す。
【0029】
[1]無電解めっき用塗料組成物
本発明の無電解めっき用塗料組成物は、
(i)金属粒子と分散剤との複合体
(ii)溶媒
(iii)バインダー、及び
(iv)感光剤、を含有する。
【0030】
無電解めっき用塗料組成物では、前記感光剤は、好ましくは、光ラジカル発生剤、光酸発生剤、光塩基発生剤、及び光増感剤から成る群から選ばれる少なくとも一種の感光剤である。
【0031】
本発明のめっき物は、基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、(iii)バインダー、及び(iv)感光剤を含有する触媒層を有し、前記触媒層の表面にパターン形状の無電解めっき層を有する。
【0032】
(i)金属粒子と分散剤との複合体
無電解めっき用塗料組成物は、(i)金属粒子と分散剤との複合体(金属粒子複合体)を含有する。めっき物の触媒層は、金属粒子と分散剤との複合体を含有する無電解めっき用塗料組成物を用いて形成する。
【0033】
金属粒子は、好ましくは、パラジウム粒子(Pd粒子)、金粒子(Au粒子)、銀粒子(Ag粒子)、或は白金粒子(Pt粒子)である。金属粒子と分散剤との複合体は、好ましくは、Pd粒子を含むパラジウム複合体(Pd複合体)である。
【0034】
金属粒子と分散剤との複合体は、好ましくは、例えば、ポリカルボン酸系分散剤、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有するブロック共重合体型高分子分散剤等の分散剤の存在下、金属粒子として、例えば、塩化パラジウム(塩化Pd)等のパラジウム化合物(Pd化合物)から供給されるパラジウムイオン(Pdイオン)を、ヒドラジンヒドラート等の2級又は3級アミン類で還元することによって得ることができる。
【0035】
金属粒子は、これらの金属粒子を一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0036】
金属粒子は、無電解めっき触媒として機能するものであり、好ましくは、Pd粒子、Au粒子、Ag粒子、Pt粒子等の貴金属の超微粒子であり、より好ましくは、Pd粒子である。
【0037】
Pd粒子は、好ましくは、分散剤の存在下、Pd化合物から供給されるPdイオンを、還元剤を用いて還元することによって得ることができる(液相還元法)。
【0038】
Pd化合物は、好ましくは、塩化パラジウム(塩化Pd)、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、安息香酸パラジウム、サリチル酸パラジウム、パラトルエンスルホン酸パラジウム、過塩素酸パラジウム、ベンゼンスルホン酸パラジウム等を用いる。
【0039】
Pd化合物は、これらのPd化合物を一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0040】
還元剤は、好ましくは、ヒドラジンヒドラート(ヒドラジン1水和物)、水素化ホウ素ナトリウム、N,Nジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の1級、2級又は3級アミン類、アスコルビン酸、2,3-ジヒドロキシマレイン酸等のエンジオール類を用いる。
【0041】
Pdイオンを還元する方法は、好ましくは、溶媒(下記の(ii)溶媒)中に分散剤及びPdイオンを存在させた後、還元剤を溶媒中に加える方法であり、これに依りPdイオンと還元剤とが接触し、Pdイオンを還元する。
【0042】
Pd複合体中のPd粒子と分散剤との重量比は、好ましくは、Pd粒子:分散剤=50:50~95:5程度であり、より好ましくは、Pd粒子:分散剤=65:35~85:15程度である。
【0043】
Pd粒子単独の平均粒子径は、好ましくは、2nm~10nm程度である。
【0044】
Pd複合体の平均粒子径は、全体として、好ましくは、平均粒子径20nm~300nm程度の球形状、より好ましくは、40nm~300nm程度の球形状の構造を有する。Pd複合体の平均粒子径は、粒径アナライザー(大塚電子株式会社、FPAR-1000)で測定する(重量基準平均径)。
【0045】
金属粒は、無電解めっき触媒として機能するものであり、好ましくは、Pd粒子、Au粒子、Ag粒子、Pt粒子等の貴金属の超微粒子である。
【0046】
金属粒子として、Pt粒子を用いる時、好ましくは、分散剤の存在下、塩化白金(IV)等の白金化合物(Pt化合物、貴金属化合物)から供給される白金イオン(Ptイオン)を、ヒドラジンヒドラート等の2級又は3級アミン類で還元することによって得る。
【0047】
(ii)溶媒
無電解めっき用塗料組成物は、(ii)溶媒を含有する。めっき物の触媒層は、溶媒を含有する無電解めっき用塗料組成物を用いて形成する。
【0048】
触媒層は、無電解めっき用塗料組成物を塗布・乾燥させて、形成する。無電解めっき用塗料組成物に含まれる溶媒は蒸発する特性を有するものであっても良い。薄く塗布された無電解めっき用塗料組成物に含まれる溶媒は、その後の乾燥工程に依って、蒸発する場合、最終製品であるめっき物の触媒層には、溶媒は含まれていなくても良い。
【0049】
溶媒(分散媒)は、好ましくは、金属複合体(Pd複合体等)を分散させる事が出来、また、(iii)バインダーとの親和性に優れているものである。溶媒は、好ましくは、触媒組成物の粘度、蒸発速度等の観点で選択し、無電解めっき用塗料組成と基板とを良好に密着する点を満足さものである。
【0050】
溶媒は、好ましくは、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、1-ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、シクロヘキサノン等のケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル、サリチル酸メチル等の芳香族カルボン酸エステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n-へキサン、n-へプタン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のグリコールエーテルエステル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のアルカノールエステル類;2-フェノキシエタノール(エチレングリコールフェニルエーテル)等を用いる。
【0051】
溶媒は、好ましくは、印刷性及び塗装性、印刷・塗装後のレベリング過程を考慮して、蒸発速度が遅い溶媒を使用する。蒸発速度が遅い溶媒として、好ましくは、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、2-フェノキシエタノール等を用いる。
【0052】
溶媒は、無電解めっき用塗料組成物中の金属複合体(Pd複合体等)を良好に分散させることができるという観点から、好ましくは、水、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等を用いる。
【0053】
非プロトン性極性溶媒は、好ましくは、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)等の非プロトン性極性溶媒;ジメチルスルホキシド;γ-ブチロラクトン等を用いる。
【0054】
溶媒は、これらの溶媒を一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0055】
溶媒の含有量は、好ましくは、金属粒子複合体(Pd複合体等)100質量部に対して、102質量部~106質量部程度であり、より好ましくは、103質量部~105質量部である。
【0056】
(iii)バインダー
無電解めっき用塗料組成物は、(iii)バインダーを含有する。めっき物の触媒層は、バインダーを含有する無電解めっき用塗料組成物を用いて形成する。
【0057】
バインダーは、好ましくは、無電解めっき用塗料組成物の粘度、無電解めっき用塗料組成物と基板(PETフィルム、ABS基材等)との密着性、硬化条件等の観点から、良好に無電解めっきの反応性が得られるものを選択する。
【0058】
バインダーは、好ましくは、(ii)溶媒に、分散又は溶解するものである。
【0059】
バインダーは、好ましくは、アセタール樹脂(POM)、エポキシ樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂(PA、ポリアミド、ナイロン)、イミド樹脂(ポリイミド)、アミドイミド樹脂(PAI、ポリアミドイミド)、シェラック樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、硝化綿、アルキド樹脂、石油樹脂、ロジン系樹脂、スチレン/マレイン酸樹脂、シリコン樹脂、塩ビ-酢ビ共重合体、アクリルモノマー/オリゴマー及びオレフィン樹脂(ポリオレフィン)等を用いる。
【0060】
塩ビ-酢ビ共重合体(塩化ビニル・酢酸ビニル系変性樹脂)は、塩化ビニルと酢酸ビニル等との共重合樹脂である。
【0061】
バインダーは、これらのバインダーを1種単独で用いても良く、或は2種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0062】
バインダーは、より好ましくは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、アミドイミド樹脂、及び塩ビ-酢ビ共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種を用い、2種以上を組み合わせて使用することもできる。バインダーは、特に好ましくは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂及びアミドイミド樹脂を使用する。
【0063】
バインダーは、必要に応じて、硬化剤を併用する方が好ましい。硬化剤を併用する事に依り、より短時間で光照射に依る効果を発現出来、パターンの鮮明化が可能に成る。
【0064】
硬化剤は、特に限定されず、使用するバインダー樹脂に合わせて適宜選択する。硬化剤は、好ましくは、イソシアネート、アミド樹脂、フェノール樹脂、メルカプタン、イミダゾール、ケティミン、オキサゾリン、カルボジイミド、エポキシ等を用いる。
【0065】
無電解めっき用塗料組成物には、必要に応じて、フィラー、増粘剤等の添加物を使用しても良い。
【0066】
フィラーは、好ましくは、シリカ、アルミナ等を用いる。
【0067】
増粘剤は、好ましくは、スメクタイト系粘土鉱物等の無機増粘剤、セルロースナノファイバー等の有機系増粘剤等を用いる。
【0068】
フィラー、増粘剤等の添加物の粒子径は、特に限定されない。導体回路として微細配線を形成する場合では、好ましくは、粒子径がより小さいフィラー、増粘剤等の添加物を用いる。フィラー、増粘剤等の添加物の粒子径は、好ましくは、100nm以下であり、より好ましくは、10nm以下である。
【0069】
バインダーの含有量は、好ましくは、金属粒子複合体(Pd複合体等)100質量部に対して、100質量部~10,000質量部であり、より好ましくは、500質量部~2,000質量部である。
【0070】
(iv)感光剤
無電解めっき用塗料組成物は、(iv)感光剤を含有する。めっき物の触媒層は、感光剤を含有する無電解めっき用塗料組成物を用いて形成する。
【0071】
感光剤は、好ましくは、(ii)溶媒に、分散又は溶解する感光剤を使用する。
【0072】
感光剤は、好ましくは、光ラジカル発生剤、光酸発生剤、光塩基発生剤、光増感剤であり、より好ましくは、光ラジカル発生剤、光増感剤である。
【0073】
光ラジカル発生剤
光ラジカル発生剤は、好ましくは、アルキルフェノン系、アシルホスフィンオキシド系、オキシムエステル系、チタノセン系、イミダゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート系、テトラメチルチウラムモノスルフィド系、等を使用する。光ラジカル発生剤は、より好ましくは、アルキルフェノン系、アシルホスフィンオキシド系、オキシムエステル系、イミダゾール系、を使用する。
【0074】
アルキルフェノン系光ラジカル発生剤
アルキルフェノン系光ラジカル発生剤は、分子内にアルキルフェノン骨格を有する化合物を意図する。
【0075】
アルキルフェノン系光ラジカル発生剤は、好ましくは、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン等を使用する。
【0076】
アシルホスフィンオキシド系光ラジカル発生剤
アシルホスフィンオキシド系光ラジカル発生剤は、分子内にアシルホスフィンオキシド構造を有する化合物を意図し、ビスアシルホスフィンオキシド化合物も包含する。
【0077】
アシルホスフィンオキシド系光ラジカル発生剤は、好ましくは、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、エチル-2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、(2,5-ジヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキサイド、(p-ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(p-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキサイド、トリス(p-ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド等を使用する。
【0078】
オキシムエステル系光ラジカル発生剤
オキシムエステル系光ラジカル発生剤は、分子内にオキシムエステル構造を有する化合物を意図する。
【0079】
オキシムエステル系の光ラジカル発生剤は、好ましくは、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン1-(O-アセチルオキシム)、3-ベンゾイロキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイロキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン等を使用する。
【0080】
イミダゾール系光ラジカル発生剤
イミダゾール系光ラジカル発生剤は、分子内にイミダゾール骨格を有する化合物を意図する。
【0081】
イミダゾール系光ラジカル発生剤は、好ましくは、2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール等を使用する。
【0082】
光増感剤
光増感剤は、好ましくは、アントラセン系、チオキサントン系等である。光増感剤は、より好ましくはチオキサントン系を使用する。
【0083】
チオキサントン系光増感剤
チオキサントン系光増感剤は、分子内にチオキサントン骨格を有する化合物を意図する。
【0084】
チオキサントン系光増感剤は、好ましくは、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等を使用する。
【0085】
光酸発生剤
光酸発生剤は、好ましくは、ヨードニウム塩系、スルフォニウム塩系等を使用する。
【0086】
ヨードニウム塩系光酸発生剤
ヨードニウム塩系光酸発生剤は、ヨードニウムイオンをカチオン部とするオニウム塩を意図する。
【0087】
ヨードニウム塩系光酸発生剤は、好ましくは、ビス[4-(tert-ブチル)フェニル]ヨードニウムテトラ(ノナフルオロ-tert-ブトキシ)アルミン酸塩、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、4-イソプロピル-4'-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボラート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、(4-イソブチルフェニル)(p-トリル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボラート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホン酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、[4-[(2-ヒドロキシテトラデシル)オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート等を使用する。
【0088】
スルフォニウム塩系光酸発生剤
スルフォニウム塩系光酸発生剤は、スルフォニウムイオンをカチオン部とするオニウム塩を意図する。
【0089】
スルフォニウム塩系光酸発生剤は、好ましくは、(チオジ-4,1-フェニレン)ビス(ジフェニルスルホニウム)ビス(ヘキサフルオロホスファート)、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムブロミド、ヘキサフルオロリン酸トリフェニルスルホニウム、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸、トリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリフェニルメチルスルホニウムクロリド、トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩、テトラフルオロほう酸ジメチルフェナシルスルホニウム、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロリン酸、10-カンファースルホン酸トリフェニルスルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸トリフェニルスルホニウム、ノナフルオロ-1-ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム等を使用する。
【0090】
光塩基発生剤
光塩基発生剤は、好ましくは、2-(ピペリジン-1-カルボニル)ベンズアルデヒド、シクロヘキシルカルバミン酸2-ニトロベンジル、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、アセトフェノン O-ベンゾイルオキシム、シクロヘキシルカルバミン酸1,2-ビス(4-メトキシフェニル)-2-オキソエチル等を使用する。
【0091】
感光剤は、これらの感光剤を一種単独で使用しても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して使用しても良い。
【0092】
感光剤は、公知の物(市販品)を使用しても良い。
【0093】
無電解めっき用塗料組成物に用いる感光剤の添加量は、触媒組成物中に、好ましくは、0.01質量%~10質量%程度であり、より好ましくは、0.1質量%~5質量%程度である。
【0094】
無電解めっき用塗料組成物の複合体は、分散剤の存在下、好ましくは、パラジウムイオンを還元することによって得られる。無電解めっき用塗料組成物は、従来の方法に比べて、簡便に、且つ効率的に触媒層(無電解めっき用塗膜)を形成する事が可能であり、しかも環境に対する悪影響が少なく、安全性が高い。
【0095】
触媒層(無電解めっき用塗膜)は、密着性及び外観皮膜に優れた無電解めっき皮膜を形成する事が出来、無電解めっき皮膜の析出速度に優れる。
【0096】
[2]めっき物(回路基板)の製造方法
本発明のめっき物の製造方法は、
(1)基材の表面に、本発明の無電解めっき用塗料組成物を用いて、触媒層を形成する工程、
(2)前記触媒層を形成する(1)工程の後、前記触媒層の表面に、10nm~500nm程度の波長を有する光を用い、前記光の照射部と非照射部とを形成する工程、及び
(3)前記光の照射部と非照射部とを形成する(2)工程の後、パターン形状の無電解めっき層を形成する工程、を含む。
【0097】
めっき物の製造方法では、前記光の照射部と非照射部とを形成する(2)工程は、好ましくは、フォトマスクを用いて露光を行う方法、又は/及び、レーザー光を用いて露光を行う方法、を含む。
【0098】
めっき物の製造方法では、前記触媒層を形成する工程では、好ましくは、前記基材の表面に、前記触媒層を、全面に形成する。
【0099】
めっき物の製造方法では、前記パターン形状の無電解めっき層を形成する工程では、好ましくは、前記触媒層の表面に、前記光の非照射部に、無電解めっき層を形成する事と、前記光の照射部に、無電解めっき層を形成しない事とで、パターン形状の無電解めっき層を形成する。
【0100】
めっき物の製造方法では、好ましくは、前記基材は、基板であり、前記無電解めっき層は、導体回路であり、前記めっき物は、回路基板である。
【0101】
めっき物の触媒層は、無電解めっき用塗料組成物((i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、(iii)バインダー、及び(iv)感光剤を含有する組成物)を用いて、形成し、絶縁性である。
【0102】
めっき物の触媒層は、除去する工程が不要であり、めっき物を提供する。
【0103】
本発明は、光の照射部と非照射部とを形成する技術に依り、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成するめっき物の製造方法であり、より微細な回路配線を形成することができる。
【0104】
本発明は、従来技術のUV照射をする技術に比べて、触媒層は、更に、感光剤を含有する事に依り、より幅の広い波長領域(10nm~500nm程度の波長)で露光する事が出来る。
【0105】
本発明は、従来技術のマスク材を用いる技術に比べて、マスク材として、メタルマスク(UV照射用)を用いるマスク技術、石英ガラスマスク(200nm以下に吸収が有りマスクとして機能する)を用いる技術等に加えて、フィルムマスク(300nm以下に吸収が有りマスクとして機能する)を用いるマスク技術、ガラスマスク(300nm以下に吸収が有りマスクとして機能する)を用いるマスク技術にも適用する事が出来る。
【0106】
マスクは、光を透過する部分と遮断する部分とのパターン形状を有していても良い。マスクの光を遮断する部分として、金属膜等を用いる事が出来る。
【0107】
本発明は、(a)触媒層において、光の非照射部は、触媒層の触媒活性は失活せず、無電解めっき層(導体回路)が形成される事と、(b)触媒層において、光の照射部は、触媒層の触媒活性は失活し、無電解めっき層(導体回路)が形成されない事とを含む、導体回路のパターン形成を可能とするめっき物を提供する。
【0108】
本発明は、(c)触媒層は絶縁性である事から、その触媒層を除去する事無く、導体回路のパターン形成を可能とし、(d)触媒層が存在しても、それ自体が導電性を表さず、短絡しないめっき物を提供する。
【0109】
本発明は、好ましくは、触媒層は透明であり、透明なめっき物を提供する。
【0110】
本発明は、パターン形状を有する事から、好ましくは、回路のパターン形成に、フォトエッチング、パターン印刷等の工程が不要であるめっき物を提供する。
【0111】
めっき物は、好ましくは、基材は基板であり、無電解めっき層は導体回路である、パターン形状の導体回路を有する回路基板である。
【0112】
(1)基材の表面に、本発明の無電解めっき用塗料組成物を用いて、触媒層を形成する工程
めっき物の製造方法は、(1)基材(回路作製用の基板)の表面に、本発明の無電解めっき用塗料組成物を用いて、触媒層を形成する工程を含む。
【0113】
触媒層は、好ましくは、基材の表面の全面に形成する。
【0114】
基材(基板)
めっき物は、基材の表面に触媒層を有し、触媒層の表面にパターン形状の無電解めっき層を有する。
【0115】
基材(好ましくは、基板、回路基板等)の材料は、好ましくは、絶縁基板であり、プラスチック(樹脂等)、ガラス、セラミックス等を用いる。
【0116】
基材は、好ましくは、基板であり、回路基板である。
【0117】
基材(基板)の材料は、光の照射部と非照射部との形成し易さの点で、好ましくは、均一な厚み(高さ)を有する。
【0118】
プラスチックは、好ましくは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンの共重合樹脂(ABS樹脂)等を用いる。
【0119】
プラスチックは、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸エステル等のポリエステル;ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリ塩化ビニル;ポリアミド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアセタール;ポリエーテルエーテルケトン;ノルボルネン骨格を有する環状ポリオレフィン;ポリフェニレンスルファイド;液晶ポリマー;シクロオレフィンポリマー(COP);変性ポリフェニルエーテル;ポリスルホン;フェノール;ポリフタルアミド(PPA);ポリアリレート等を用いる。
【0120】
プラスチックは、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン等のポリオレフィン等を用いる。
【0121】
プラスチックは、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、フッ化エチレン-フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素樹脂を用いる。
【0122】
セラミックスは、好ましくは、ガラス、アルミナ等を用いる。
【0123】
基材として不織布を使用する場合、木質繊維、ガラス繊維、石綿、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維等を用いる。
【0124】
基材としてプラスチック、セラミックス等を使用する場合、好ましくは、適宜プライマー等で絶縁性を形成した上で、使用する。
【0125】
基材として金属等の導電性物質を使用する場合、好ましくは、プライマー等で絶縁性を形成した上で、基材として用いる。
【0126】
めっき物では、好ましくは、基材は基板であり、無電解めっき層は導体回路であり、めっき物は回路基板である。
【0127】
触媒層の形成
めっき物では、無電解めっき用塗料組成物を、基材(回路作製用の基板)上に、好ましくは、バーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレー塗布、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビアリバースロールコーティング法等の公知の手段に依り、塗布・乾燥させて、触媒層を形成する。
【0128】
触媒層の形成は、より好ましくは、基材(回路基板)上に、無電解めっき用塗料組成物を、バーコート法、スピンコート法、若しくはグラビアリバースロールコーティング法により塗布し、無電解めっき用塗料組成物を乾燥させて、触媒層を形成する。
【0129】
触媒層の厚みは、良好に無電解めっきを行い、無電解めっきの反応性を得て、基材(基板)にめっき皮膜を良好に形成する点から、好ましくは、20μm以下程度であり、より好ましくは、0.01μm~10μm程度である。
【0130】
本発明は、触媒層において、光の非照射部は、触媒層の触媒活性は失活せず、無電解めっき層(導体回路)が形成されること、触媒層において、光の照射部は、触媒層の触媒活性は失活し、無電解めっき層(導体回路)が形成されない事を含み、導体回路のパターン形成を可能とするめっき物を提供する。
【0131】
無電解めっき用塗料組成物を塗布・乾燥させて、触媒層を形成する事から、無電解めっき用塗料組成物に含まれる溶媒は蒸発する特性を有するものであっても良い。薄く塗布された無電解めっき用塗料組成物に含まれる溶媒は、その後の乾燥工程に依って、蒸発する場合、最終製品であるめっき物の触媒層には、溶媒は含まれていなくても良い。
【0132】
めっき物は、好ましくは、基材の表面に、触媒層を、全面に有する。めっき物では、触媒層は絶縁性であることから、その触媒層を除去する事が無く、導体回路のパターン形成を可能とし、触媒層が存在しても、それ自体が導電性を表さず、短絡しないめっき物と成る。
【0133】
めっき物は、先ず、基材の表面に、無電解めっき用塗料組成物(触媒金属錯イオンを含有する触媒処理液)を付着させ、触媒層を形成し、次いで、形成すべき回路パターン状に光を照射して、触媒層の内、光の照射部分の触媒活性を失活させ、その後基材を無電解めっきして(浴中に浸漬等)、光が照射されていない光の未照射部分にめっき回路を形成する方法である。
【0134】
めっき物は、基材の表面に、無電解めっき用塗料組成物(触媒金属(パラジウム(Pd)等)錯イオンを含有する触媒処理液、触媒組成物)を用い、光の照射部分では、触媒組成物の触媒活性を失活させて、光の未照射部分では、触媒組成物の触媒活性は残り、めっき回路を形成する。
【0135】
基材表面に形成された触媒層では、形成すべき回路パターンに応じて、光を照射した部分は、その触媒活性が失活される。触媒層では、一方で、光が照射されていない未照射部分は、その触媒活性は残り、その部分に無電解めっきが形成されて、めっき回路を形成することができる。
【0136】
(2)前記触媒層を形成する(1)工程の後、前記触媒層の表面に、10nm~500nm程度の波長を有する光を用い、前記光の照射部と非照射部とを形成する工程
めっき物の製造方法は、(2)前記触媒層を形成する(1)工程の後、前記触媒層の表面に、10nm~500nm程度の波長を有する光を用い、前記光の照射部と非照射部とを形成する工程を含む。
【0137】
基材上に、パターン形状の無電解めっき層では、好ましくは、触媒層の表面に、光が照射されず(光の非照射部)、無電解めっき層が有る部分と、光が照射されて(光の照射部)、無電解めっき層が無い部分とで、パターン形状の無電解めっき層と成る。
【0138】
光の照射部と非照射部とを形成する工程は、好ましくは、フォトマスクを用いて露光を行う方法、又は/及び、レーザー光を用いて露光を行う方法、を含む。
【0139】
めっき物は、好ましくは、パターン形状の無電解めっき層では、触媒層の表面に、光(10nm~500nm程度の波長を有する光)が照射されず、無電解めっき層が有る部分と、光(10nm~500nm程度の波長を有する光)が照射されて、無電解めっき層が無い部分とで、パターン形状の無電解めっき層と成る。
【0140】
光照射に用いる光は、好ましくは、紫外線光(UV光)、可視光等であり、基材表面に付着させた触媒組成物(触媒処理液)中の触媒を失活させる光を用いる。
【0141】
触媒層が感光剤を含有する事に依り、より幅の広い波長領域(10nm~500nm程度の波長)で露光する事が出来る。
【0142】
光照射に用いる光は、好ましくは、波長が10nm~500nm程度の光であり、更に好ましくは、紫外線(UV光)であり、波長が10nm~400nm程度の光であり、即ち、好ましくは、可視光線より短く、軟X線より長い不可視光線の電磁波である。
【0143】
光照射に用いる光は、例えば、紫外線(UV光)では、波長が10nm~400nm程度の電磁波である。
【0144】
紫外線光(UV光)の光源は、好ましくは、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線LEDランプである。
【0145】
レーザー光を用いて露光を行う方法
光源は、好ましくは、レーザー光源である。レーザー光源は、好ましくは、He-Cd、UV-YAG、DUV-YAG、若しくはエキシマであり、より好ましくは、He-Cd、UV-YAGである。
【0146】
紫外線光(UV光)の積算光量は、好ましくは、1mJ/cm2~20,000mJ/cm2であり、より好ましくは、1mJ/cm2~2,000mJ/cm2であり、更に好ましくは、1mJ/cm2~1,000mJ/cm2である。
【0147】
フォトマスクを用いて露光を行う方法
めっき物では、好ましくは、めっき回路に応じた光透過模様を有する金属板等のフォトマスクを用いて、基材に対してフォトマスクを用いた露光を行う事が出来る。
【0148】
フォトマスクは、好ましくは、めっき回路に応じた光透過模様を有する金属板、ガラス板、フィルム等のマスク材、若しくはレジスト等の樹脂をパターン印刷し、マスクとしたものを用いる。
【0149】
マスク材は、好ましくは、メタルマスク(UV照射用)を用いるマスク技術、石英ガラスマスク(200nm以下に吸収が有りマスクとして機能する)を用いる技術等に加えて、フィルムマスク(300nm以下に吸収が有りマスクとして機能する)を用いるマスク技術、ガラスマスク(300nm以下に吸収が有りマスクとして機能する)を用いるマスク技術を適用する。
【0150】
フォトマスクを用いた露光では、光照射に用いる光として、好ましくは、紫外線光(UV光)を用い、基材表面に形成した触媒層の触媒活性を失活させる。
【0151】
めっき物は、フォトマスクを用いた露光を行った場合、好ましくは、めっき回路に応じた光透過模様を有するフォトマスクを、金属板であれば、その金属板を除去すれば良い。フォトマスクとして金属板以外、例えば、ガラス板、フィルムを使った場合も、それを除去すれば良い。
【0152】
(3)前記光の照射部と非照射部とを形成する(2)工程の後、パターン形状の無電解めっき層を形成する工程
めっき物の製造方法は、(3)前記光の照射部と非照射部とを形成する(2)工程の後、パターン形状の無電解めっき層を形成する工程を含む。
【0153】
パターン形状の無電解めっき層を形成する工程では、基材の触媒層の表面に、光を照射せず(光の非照射部)、無電解めっき層(導体回路)を形成する事と、光を照射して(光の照射部)、無電解めっき層を形成しない事とで、パターン形状の無電解めっき層(回路基板)を形成する。
【0154】
回路基板では、好ましくは、触媒活性が失活していない触媒層(光の非照射部)に対して、無電解めっきを行う事で、基板の上にパターンめっき(回路基板)を形成する。
【0155】
無電解めっき用塗料組成物を用いて形成する触媒層は、無電解めっきの反応性が良く、得られた無電解めっき皮膜はむらがなく、密着性及び外観性に優れる。
【0156】
基材において、パターン形状の無電解めっき層では、好ましくは、触媒層の表面に、光が照射されず(光の非照射部)、無電解めっき層が有る部分と、光が照射されて(光の照射部)、無電解めっき層が無い部分とで、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)と成る。
【0157】
めっき物の製造方法は、好ましくは、基材は、基板であり、無電解めっき層は、導体回路であり、回路基板である。
【0158】
パターン形状の無電解めっき層
めっき物は、基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、(iii)バインダー、及び(iv)感光剤を含有する無電解めっき用塗料組成物を用いて、(i)金属粒子と分散剤との複合体、(iii)バインダー、及び(iv)感光剤を含有する触媒層を形成する。
【0159】
めっき物は、触媒層の表面に、パターン形状の無電解めっき層を有する。
【0160】
めっき物は、好ましくは、パターン形状の無電解めっき層では、触媒層の表面に、光(10nm~500nm程度の波長を有する光)が照射されず、無電解めっき層が有る部分と、光(10nm~500nm程度の波長を有する光)が照射されて、無電解めっき層が無い部分とで、パターン形状の無電解めっき層と成る。
【0161】
めっき物は、好ましくは、基材は、基板であり、無電解めっき層は、導体回路であり、回路基板である。
【0162】
めっき物は、好ましくは、触媒層は絶縁性であり、触媒層を除去する工程が不要である。触媒層は、好ましくは、透明である。
【0163】
めっき物は、マスク層(光の未照射部)に無電解めっき層(回路)が形成されるので、回路のパターン形成を可能とする。
【0164】
めっき物は、回路のパターン形成に、フォトエッチング、パターン印刷等の工程が不要であり、触媒層の除去の工程も不要である、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を有する。
【0165】
めっき条件
本発明は、触媒層において、光の非照射部では、触媒層の触媒活性は失活せず、無電解めっき層(導体回路)が形成され、触媒層において、光の照射部では、触媒層の触媒活性は失活し、無電解めっき層(導体回路)が形成されない。
【0166】
パターン形状の無電解めっき層は、触媒層の触媒活性が残る部分に形成された無電解めっき層と、触媒層の触媒活性が失活した部分に無電解めっき層が形成されていない事とで、パターン形状の無電解めっき層と成る。
【0167】
本発明は、こうして、導体回路のパターン形成を可能とするめっき物を作製する。無電解めっき用塗料組成物を用いて形成する触媒層は、無電解めっきの反応性が良く、得られた無電解めっき皮膜はむらが無く、密着性及び外観性に優れる。
【0168】
回路基板では、好ましくは、失活していない触媒層(光の非照射部)に対して、無電解めっきを行う事に依り、基板の上にパターンめっきを形成する事が出来る。
【0169】
回路基板は、好ましくは、無電解めっき層は導体回路(導通)を形成する。
【0170】
めっき液は、好ましくは、導体回路(導通)を形成し、銅、金、銀、ニッケル等を用いる。めっき液は、好ましくは、触媒層(触媒膜)との関係から、銅又はニッケルを含むめっき液を用いる。
【0171】
めっき条件は、好ましくは、触媒層(触媒膜)は無電解めっきの反応性が非常に良好である為、めっき液の還元剤濃度やアルカリ成分濃度を高める必要がない。その為、めっき液の寿命が長持ちし、触媒層のパターン通りにめっきが選択的に析出される。即ち、無電解めっき用塗料組成物から形成される触媒層(触媒膜)は、パターン形成能に優れる。
【0172】
無電解めっき層(めっき皮膜)の厚みは、好ましくは、0.05μm~10μm程度であり、より好ましくは、0.1μm~6μm程度である。
【0173】
無電解めっき処理で、無電解銅(Cu)めっき浴を用いる時は、その処理温度は、好ましくは、25℃~65℃程度であり、その処理時間は、好ましくは、10分~60分程度である。この無電解めっき処理により、0.3μm~3μm程度の析出膜厚を形成することができる。
【0174】
無電解めっき処理で、無電解ニッケルボロン浴を用いる時は、その処理温度は、好ましくは、55℃~70℃程度であり、その析出速度は、好ましくは、5μm/hr(60℃)程度である。
【0175】
無電解めっき処理で、無電解ニッケルりん浴を用いる時は、その処理温度は、好ましくは、30℃~95℃程度であり、好ましくは、析出速度が浴温30℃では3μm/hr程度であり、浴温90℃では20μm/hr程度である。
【0176】
無電解めっき層を形成する工程において、無電解めっき層を形成する前に、必要に応じて、前処理を行っても良い。前処理は、好ましくは、前工程後の基材に対して、アルカリ脱脂、酸性脱脂、酸活性等の処理を施す。
【0177】
[3]めっき物
本発明のめっき物は、
基材の表面に、(i)金属粒子と分散剤との複合体、(iii)バインダー、及び(iv)感光剤を含有する触媒層を有し、
前記触媒層の表面に、パターン形状の無電解めっき層を有する。
【0178】
めっき物では、基材の表面に、好ましくは、触媒層を、全面に有する。
【0179】
めっき物では、前記パターン形状の無電解めっき層は、好ましくは、触媒層の触媒活性が残る部分に形成された無電解めっき層と、触媒層の触媒活性が失活した部分に無電解めっき層が形成されていない事とで、パターン形状の無電解めっき層と成る。
【0180】
めっき物では、好ましくは、基材は、基板であり、無電解めっき層は、導体回路であり、めっき物は、回路基板である。
【0181】
めっき物の無電解めっき用塗膜は、密着性及び外観皮膜に優れた無電解めっき皮膜を形成する。めっき物の無電解めっき皮膜が析出速度に優れる理由は、次の原理に依るものと考えられる。
【0182】
(原理)金属粒子複合体(Pd複合体)が形成する構造の内部は、溶媒を吸着する様に、溶媒を包含している。金属粒子複合体の内部の溶媒は、無電解めっき用塗料組成物中の溶媒に比べて、乾燥速度が小さい。その為、無電解めっき用塗料組成物を基板に塗布すると、先ず、無電解めっき用塗料組成物中の溶媒が乾燥する事に依り、無電解めっき用塗膜全体が形成され、次に、無電解めっき用塗膜中に存在する金属粒子複合体の内部の溶媒が乾燥する事に依り、無電解めっき用塗膜の表面にクレーター状の凹凸を形成して、無電解めっき用塗膜を形成する。この凹凸表面には、金属粒子(Pd粒子)が多く存在する。
【0183】
無電解めっき用塗膜は、(a)金属粒子(Pd粒子)が、無電解めっき用塗膜表面に密集する様に、多く存在している事から、無電解めっき用塗膜表面と無電解めっき液との反応性に優れる。
【0184】
無電解めっき用塗膜は、(b)無電解めっき用塗膜の表面に、凹凸が形成されている事から、無電解めっき皮膜と無電解めっき用塗膜との間のアンカー効果に優れる。
【0185】
本発明は、導体回路のパターン形成を可能とするめっき物(回路基板、プリント配線板)を提供する。
【0186】
回路基板
回路基板では、無電解めっき用塗料組成物は、特にABS等の基板を対象とする時に、無電解めっきの反応性が高く、めっきまでの多層めっきに耐え得る良好な密着性を実現出来る。
【0187】
回路基板では、無電解めっきの反応性は良く、無電解めっきにおける還元剤の濃度を高める必要が無く、また無電解めっきの反応温度を上げる必要もない。更に、また有害な物質によるエッチング工程を必要としない。
【0188】
回路基板では、好ましくは、電子機器のプリント配線板等の表面に、触媒層を形成し、無電解用めっきを施すための皮膜をパターン形成(露出)する。無電解めっき用皮膜(触媒層)が形成された配線板に対して、無電解めっきを行う事に依り、配線板に電子回路形成用の無電解めっき皮膜を形成する。
【0189】
回路基板では、好ましくは、電子機器のプリント配線板等で、無電解めっきを行う事に依り、金属配線回路を形成する。
【0190】
めっき物(回路基板)の利用性
めっき物(回路基板)では、基材表面に、無電解めっき用塗料組成物を塗布処理及び乾燥処理を行う事に依り、触媒層を形成し(触媒処理液を付着させ)、その上にマスク露光等の方法によりパターン状に光を照射する。この光照射に依り、光の照射部分では、触媒金属イオンがその触媒活性を失活する。
【0191】
次に、基材を無電解めっき(例えば、浴中に浸漬)する。触媒金属イオンとしてPd2+を例に挙げて説明する。光の非照射部分では、Pd金属が存在し、無電解めっきされる。このPd金属、即ち触媒金属の働きに依って、基材表面にCu、Ni等のめっき金属が析出し、めっき回路(導体回路)が形成される。
【0192】
光の非照射部分に、パターン形状のめっき回路が形成される。一方、光の照射部は、めっき回路(導体回路)が形成されない。
【0193】
めっき物は、特定の触媒処理液と光の照射部と非照射部を作る技術を用いる事に依って、光の非照射部の触媒活性部分(めっき回路形成部分)と、光の照射による不活性部分とに区分し、その後、触媒活性部分にめっき回路用金属を析出させて、めっき回路を形成する事か出来る。
【0194】
めっき物は、触媒層は絶縁性である事から、その触媒層を除去する事無く、導体回路のパターン形成を可能とし、触媒層が存在しても、それ自体が導電性を表さず、短絡しないめっき物と成る。
【0195】
めっき物は、レジスト技術を用いる必要がない。めっき物は、基材の種類の制限を受けることが無く、電気特性に優れるめっき回路を形成することができる。
【実施例】
【0196】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0197】
<実施例1>
めっき物の製造(回路基板)
・本発明の(i)金属粒子と分散剤との複合体、(ii)溶媒、(iii)バインダー、及び(iv)感光剤を含有する無電解めっき用塗料組成物
・本発明の(i)金属粒子と分散剤との複合体、(iii)バインダー、及び(iv)感光剤を含有する触媒組成物から成る触媒層
・本発明のフィルムをマスク材とするフォトマスクを用いた露光
・本発明のレーザー光を用いた露光
【0198】
(1)無電解めっき用塗料組成物を調整する工程
(i)Pd粒子(金属粒子)と分散剤との複合体、(ii)溶媒、(iii)バインダーから成る触媒組成物へ、(iv)感光剤を添加し、無電解めっき用塗料組成物ML1~ML4を調整した。
【0199】
添加した(iv)感光剤は以下の通りである。
【0200】
ML1:1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン 2質量%、及び2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン 0.05質量%/無電解めっき用塗料組成物
ML2:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド 2質量%/無電解めっき用塗料組成物
ML3:1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン1-(O-アセチルオキシム) 2質量%/無電解めっき用塗料組成物
ML4:2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール 2質量%/無電解めっき用塗料組成物
【0201】
(2)基材(基板)の表面に触媒層を形成する工程
回路作製用基板として、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムを用いた。
【0202】
このPETフィルムの表面に、(1)で調整した無電解めっき用塗料組成物(ML1~ML4)を、バーコーターを用いて、塗布した。塗布後、無電解めっき用塗料組成物を乾燥する事に依り、Pd触媒を含有する塗膜(触媒層)を形成した。
【0203】
触媒層の厚みは、0.4μmとした。
【0204】
触媒層は、(i)Pd粒子(金属粒子)と分散剤との複合体、(iii)バインダー、及び(iv)感光剤から構成される塗膜である。
【0205】
(3)基材上へ光の照射部と非照射部を形成する工程
(3-1)フィルムをマスク材とするフォトマスクを用いて露光を行った場合
触媒層が形成されたPETフィルムの表面に、フィルムをマスク材とするフォトマスクを被せた。
【0206】
前記フォトマスクのフィルムは、PETフィルムであり、表面に黒色のパターン形状を有する。前記フォトマスクは、黒色パターンである部分は光を遮断し(光の非照射部)、黒色パターンでない部分は光を透過する(光の照射部)。
【0207】
前記フォトマスクは、光を遮断する部分の幅が1mmのパターンを有する。
【0208】
前記フォトマスクを被せた触媒層付きPETフィルムに、高圧水銀ランプを用いて露光を行った。
【0209】
積算光量は、300mJ/cm2とした。
【0210】
触媒層の表面で、前記フォトマスクの黒色部分の下部は光の非照射部となり、前記フォトマスクの黒色でない部分の下部は光の照射部となる。
【0211】
露光の後、触媒層付きのPETフィルム(回路作製用基板)から、被せていた前記フォトマスクを取り除いた。
【0212】
(3-2)レーザー光を用いて露光を行った場合
触媒層が形成されたPETフィルムの表面に、レーザー光をパターン状に照射した。前記レーザー光の光源はUV-YAGを用いた。前記レーザー光の出力は50%、走査速度は3000mm/secとした。前記レーザー光の照射パターンは、光の非照射部となる部分の幅が0.1mmのパターンを有する。
【0213】
(4)パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成する工程
触媒層の表面で、光の非照射部、に無電解めっき層が形成される。触媒層の表面で、光の照射部には、無電解めっき層が形成されない。こうして、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成する。
【0214】
(3-1)及び(3-2)にて露光処理された触媒層付きのPETフィルムに対して、脱脂処理を行い、無電解Cuめっき液(奥野製薬社製OPCカッパーHFS)に40℃×20分浸漬する事に依り、光の非照射部のみに、Cuめっきを形成した。
【0215】
無電解Cu層の厚みは1.0μmとした。
【0216】
めっき層を形成した結果、ML1~ML4から作製した全てのサンプル(PETフィルム)は、光の非照射部に、導電層(無電解めっき層、導体回路)を有し、光の照射部に、導電層(無電解めっき層、導体回路)を有しない。
【0217】
(5)密着性の確認
パターン形成された導体回路に対して、テープ剥離試験を行い、基材に対する導体回路の密着性を評価した。結果、実施例のめっき物では、基材に対して、導体回路部分の剥離は見られなかった。
【0218】
本発明の触媒層を用いると、光の照射部と非照射部を形成する技術に依り、その触媒層は絶縁性と成り、良好に、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物を提供する。本発明の光の照射部と非照射部を形成する技術に依り、パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成し、より微細な回路配線を形成するめっき物(回路部品、回路基板)を作製する、と評価出来る。
【0219】
<比較例1>
めっき物の製造(回路基板)
・従来技術の触媒層
・フィルムマスクに依るマスク露光
(1)基材(基板)の表面に触媒層を形成する工程
回路基板として、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムを用いた。
【0220】
PETフィルムを、触媒層付与液(奥野製薬社製キャタリストC-7)に、35℃×3分浸漬した後、活性化促進剤溶液(奥野製薬社製アクセレーターX)に、35℃×3分浸漬する事に依り、触媒層を形成した。
【0221】
触媒層付与液の触媒は、パラジウムである。
【0222】
触媒層付与液は、感光剤を含まない。
【0223】
(2)基材上へ光の照射部と非照射部を形成する工程
(2-1)フィルムをマスク材とするフォトマスクを用いて露光を行った場合
触媒層が形成されたPETフィルムの表面に、フィルムをマスク材とするフォトマスクを被せた。
【0224】
前記フォトマスクのフィルムは、PETフィルムであり、表面に黒色のパターン形状を有する。前記フォトマスクは、黒色パターンである部分は光を遮断し(光の非照射部)、黒色パターンでない部分は光を透過する(光の照射部)。
【0225】
前記フォトマスクは、光を遮断する部分の幅が1mmのパターンを有する。
【0226】
前記フォトマスクを被せた触媒層付きPETフィルムに、高圧水銀ランプを用いて露光を行った。
【0227】
積算光量は、300mJ/cm2とした。
【0228】
触媒層の表面で、前記フォトマスクの黒色部分の下部は光の非照射部となり、前記フォトマスクの黒色でない部分の下部は光の照射部となる。
【0229】
露光の後、触媒層付きのPETフィルム(回路作製用基板)から、被せていた前記フォトマスクを取り除いた。
【0230】
(2-2)レーザー光を用いて露光を行った場合
触媒層が形成されたPETフィルムの表面に、レーザー光をパターン状に照射した。前記レーザー光の光源はUV-YAGを用いた。前記レーザー光の出力は50%、走査速度は3000mm/secとした。前記レーザー光の照射パターンは、光の非照射部となる部分の幅が0.1mmのパターンを有する。
【0231】
(3)パターン形状の無電解めっき層(導体回路)を形成する工程
光(UV光)処理された触媒層付きフィルムを、無電解Cuめっき液(奥野製薬社製OPCカッパーHFS)に40℃×20分浸漬した処、基材の全面に無電解銅めっき層が形成された。
【0232】
無電解Cu層の厚みは1.0μmとした。
【0233】
めっき層を形成した結果、得られたサンプル(PETフィルム)は、光の照射部と非照射部とのどちらにも導電層(無電解めっき層、導体回路)を有する。
【0234】
従来技術の触媒層では、本発明に比べると、従来技術の触媒層は絶縁性と成らず、導電層を形成し、良好に、パターン形状の無電解めっき層を形成する事が出来ない、と評価出来る。
【要約】
【課題】本発明は、新たに、パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物を提供する。
【解決手段】パターン形状の無電解めっき層を有するめっき物。
【選択図】なし