(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】測定用気密ボックス、気密装置、測定システムおよび測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/20008 20180101AFI20230802BHJP
G01N 23/207 20180101ALI20230802BHJP
G01N 23/20025 20180101ALI20230802BHJP
【FI】
G01N23/20008
G01N23/207
G01N23/20025
(21)【出願番号】P 2019215183
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-03-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】100101867
【氏名又は名称】山本 寿武
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】小沢 豪志
(72)【発明者】
【氏名】小澤 哲也
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-014569(JP,A)
【文献】特開2014-086250(JP,A)
【文献】特開2001-153760(JP,A)
【文献】特開2016-223959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に設置された測定装置により測定される試料を内部に配置するための測定用気密ボックスであって、
内部が中空で、且つグローブボックスに連結するための連結部を有する筐体と、
試料の装填部を有する試料台と、
前記筐体に設けられ、前記試料台に装填した試料を前記測定装置により外部から測定するための測定用窓と、を備え、
前記筐体の連結部を、外部に併設したグローブボックスに連結することで、当該筐体の内部がグローブボックスの内部に連通するとともに、これら筐体およびグローブボックスの各内部が気密状態となる構成とし、
さらに、前記筐体内に設置され、前記試料台を搬送するための搬送ステージを含み、
前記搬送ステージは、前記筐体に連結したグローブボックスの内部まで前記試料台の搬送軌道を延ばした構成であることを特徴とする測定用気密ボックス。
【請求項2】
前記筐体の内部に前記測定装置の測定位置が設定されるとともに、
前記試料台に装填した試料を前記測定位置に位置決めする試料位置調整機構を備えたことを特徴とする請求項
1に記載の測定用気密ボックス。
【請求項3】
前記筐体の内部に連通する配管を備え、
前記配管を、少なくとも真空吸引ポンプ又は不活性ガス供給源のいずれかに接続する構成としたことを特徴とする請求項
1又は2に記載の測定用気密ボックス。
【請求項4】
請求項
1乃至3のいずれか一項に記載の測定用気密ボックスと、この測定用気密ボックスの前記筐体に連結されたグローブボックスと、を備え、
これら連通した筐体およびグローブボックスの各内部が気密状態を形成する構成としたことを特徴とする気密装置。
【請求項5】
前記グローブボックスは、前記筐体の内部と連通する開口部を閉塞し、当該グローブボックスの内部を前記筐体の内部から仕切って気密状態とする閉塞部材を備えたことを特徴とする請求項
4に記載の気密装置。
【請求項6】
前記測定装置と、請求項
4又は5に記載の気密装置と、を備え、前記試料台に装填された試料を、前記測定用窓を通して前記測定装置により測定する構成としたことを特徴とする測定システム。
【請求項7】
前記測定装置と、気密装置とを含む測定システムであって、
前記気密装置は、請求項
2に記載の測定用気密ボックスと、この測定用気密ボックスの前記筐体に連結されたグローブボックスと、を備え、これら連通した筐体およびグローブボックスの各内部が気密状態を形成する構成であり、
且つ、前記測定装置は、前記試料位置調整機構を制御するための制御信号を出力するための制御部を備え、
前記試料台に装填された試料を、前記測定用窓を通して前記測定装置により測定する構成としたことを特徴とする測定システム。
【請求項8】
前記測定装置がゴニオメータを備えたX線分析装置であって、
前記ゴニオメータに前記測定用気密ボックスを固定して位置決めする位置決め部材を備えたことを特徴とする請求項
6又は7に記載の測定システム。
【請求項9】
内部が中空で、且つグローブボックスに連結するための連結部を有する筐体と、試料の装填部を有する試料台と、前記筐体に設けられ、前記試料台に装填した試料を
測定装置により外部から測定するための測定用窓と、を備え、前記筐体の連結部を、外部に併設したグローブボックスに連結することで、当該筐体の内部がグローブボックスの内部に連通するとともに、これら筐体およびグローブボックスの各内部が気密状態となる構成の測定用気密ボックスと組み合わせて用いられ、
前記測定用気密ボックスに設けてある前記試料台に装填された試料を、前記測定用窓を通して測定する測定装置であって、
開閉扉を備え、当該開閉扉の内側に測定位置が設定してあり、
前記開閉扉は、前記筐体の一部を挿通して前記測定位置と対向する位置へ前記測定用窓を配置するための切欠口を備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項10】
前記開閉扉に形成した切欠口は、中間部にフランジが形成された前記筐体の一部を挿通するとともに、前記フランジの外形よりも小さく形成してあり、
前記開閉扉の内側近傍に、前記フランジの配置部を設けたことを特徴とする請求項
9に記載の測定装置。
【請求項11】
前記開閉扉が閉じており、且つ前記フランジが前記配置部に配置された状態にあることを検出するセンサを設けたことを特徴とする請求項
10に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、嫌気性を有する試料等の測定に好適な測定用気密ボックスと、この測定用気密ボックスをグローブボックスに連結した構成の気密装置と、この気密装置を備えた測定システムと、当該測定用気密ボックスとの組み合わせに適した測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の成分(酸素、窒素、水分等)と化学反応しやすい嫌気性物質を試料とする場合には、大気に触れることのない密閉空間に試料を配置して測定分析を実行する必要がある。また、測定者にとって危険で取扱いの際に注意が求められるような物質を試料とする場合にも、当該試料を密閉空間に配置し、外部への飛散や漏洩を防止した状態で測定分析を実行する必要がある。
特許文献1は、この種の測定分析を実現可能とするX線回折装置一体型雰囲気制御グローブボックス装置を開示している。
【0003】
同文献1に開示された従来装置は、X線回折装置(二軸回折計11)とグローブボックス(3)とを、仲介チャンバー(9)を介して連結し、X線回折装置の試料台(30)を仲介チャンバー(9)内に配置するとともに、グローブボックス(3)の内部空間から仲介チャンバー(9)内の試料台(30)へ、グローブ(3b)を使って手作業で試料をセットすることができる構成となっている。
仲介チャンバー(9)内は、例えば、グローブボックスを介して、不活性ガスが循環する雰囲気が形成され、この内部に試料を配置したまま、X線回折装置による測定を実施することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された従来装置は、X線回折装置と仲介チャンバーとを一体化して、X線回折装置の試料台の周囲を仲介チャンバーで被覆する構成であるため、X線回折装置に固定された試料台に対して、グローブボックスの内部から試料の装填などの作業を実施する必要があるので、作業性に課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、大気に触れることなく嫌気性試料の測定を容易に実現できる測定用気密ボックス、気密装置および測定システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る測定用気密ボックスは、外部に設置された測定装置により測定される試料を内部に配置するための測定用気密ボックスであって、内部が中空で、且つグローブボックスに連結するための連結部を有する筐体と、試料の装填部を有する試料台と、筐体に設けられ、試料台に装填した試料を測定装置により外部から測定するための測定用窓と、を備え、筐体の連結部を、外部に併設したグローブボックスに連結することで、当該筐体の内部がグローブボックスの内部に連通するとともに、これら筐体およびグローブボックスの各内部が気密状態となる構成としたことを特徴とする。
【0008】
上述した構成の測定用気密ボックスによれば、測定装置と組み合わせて、大気に触れることなく嫌気性試料の測定を容易に実現することが可能となる。
【0009】
ここで、本発明に係る測定用気密ボックスは、筐体内に設置され、試料台を搬送するための搬送ステージを含み、当該搬送ステージが、筐体に連結したグローブボックスの内部まで試料台の搬送軌道を延ばした構成としてもよい。
筐体内に、試料台を搬送する搬送ステージを備えることで、作業者が筐体の内部に手を深く挿入しなくとも、筐体内に試料を配置することができ、作業性の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明に係る測定用気密ボックスは、筐体の内部に測定装置の測定位置が設定される。そこで、本発明に係る測定用気密ボックスは、試料台に装填した試料を測定位置に位置決めする試料位置調整機構を備えた構成とすることが好ましい。
このような試料位置調整機構を備えることで、測定装置の測定位置に対し試料を正確に位置決めして、高精度な測定を実現することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る測定用気密ボックスは、筐体の内部に連通する配管を備え、この配管を、少なくとも真空吸引ポンプ又は不活性ガス供給源のいずれかに接続する構成とすることができる。
これより、筐体の内部を速やかに真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気とすることが可能となる。
【0012】
また、測定装置がX線分析装置であって、測定用窓を通してX線を入出射する構成とした本発明に係る測定用気密ボックスにあっては、X線を遮蔽する材料で筐体を形成し、例えば、測定用気密ボックス内の散乱X線を外部に漏洩させない構成とすることが好ましい。なお、測定用窓は、X線を透過する材料で形成する。
さらに、筐体内から前記グローブボックス内へのX線の侵入を遮蔽するX線遮蔽部材を備えた構成とすることが好ましい。
このX線遮蔽部材を備えることで、X線分析装置による測定と併行して、グローブボックス内での作業が実行可能となり、作業の効率化を図ることができる。
【0013】
また、本発明に係る気密装置は、上述した構成の測定用気密ボックスと、この測定用気密ボックスの筐体に連結されたグローブボックスと、を備え、これら連通した筐体およびグローブボックスの各内部が気密状態を形成する構成としたことを特徴とする。
かかる構成の気密装置も、測定用気密ボックスが筐体内に試料台を備えているため、測定装置と一体化することなく、各種の測定装置を用いた測定に利用することができ、汎用性が高い。
【0014】
ここで、グローブボックスは、筐体の内部と連通する開口部を閉塞し、当該グローブボックスの内部を筐体の内部から仕切って気密状態とする閉塞部材を備えた構成とすることができる。
この閉塞部材により、グローブボックスの内部を筐体の内部から仕切ることで、グローブボックスや測定用気密ボックスのメンテナンスを行う際などに、それら各ボックスの内部で独立して行うべき作業環境を整えることが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る測定システムは、測定装置と、上述した構成の気密装置と、を備え、試料台に装填された試料を、測定用窓を通して測定装置により測定する構成としたことを特徴とする。
かかる構成の測定システムよれば、気密装置が筐体内に試料台を備えているため、適宜選択した測定装置を気密装置と組み合わせて、各種の測定を実施することができる。
【0016】
また、本発明に係る測定システムは、測定装置が、試料位置調整機構を制御するための制御信号を出力するための制御部を備え、試料台に装填された試料を、測定用窓を通して測定装置により測定する構成とすることもできる。
【0017】
また、本発明に係る測定システムは、測定装置としてゴニオメータを備えたX線分析装置が適用され、当該ゴニオメータに測定用気密ボックスを固定して位置決めする位置決め部材を備えた構成とすることもできる。
この位置決め部材によって、X線分析装置の測定位置に対して、測定用気密ボックス内に設けた試料台を、いっそう高精度に位置決めすることが可能となる。
【0018】
次に、本発明に係る測定装置は、上述した測定用気密ボックスに設けてある試料台に装填された試料を、測定用窓を通して測定する測定装置であって、開閉扉を備え、当該開閉扉の内側に測定位置が設定してあり、開閉扉は、筐体の一部を挿通して測定位置と対向する位置へ測定用窓を配置するための切欠口を備えたことを特徴とする。
このような切欠口を開閉扉に設けることにより、簡単な構造で、測定位置と対向する位置へ測定用気密ボックスの測定用窓を配置することができる。
【0019】
ここで、開閉扉に形成した切欠口は、中間部にフランジが形成された筐体の一部を挿通するとともに、フランジの外形よりも小さく形成してあり、且つ、開閉扉の内側近傍に、フランジの配置部を設けた構成とすることが好ましい。
このフランジによって開閉扉の内側と外側とを仕切ることができる。
【0020】
さらに、上述した測定装置は、開閉扉が閉じており、且つフランジが配置部に配置された状態にあることを検出するセンサを設けた構成とすることが好ましい。
このセンサにより、開閉扉の閉塞状態と、フランジにより切欠口が仕切られた状態を確認することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、嫌気性試料に対する所望の測定を大気に触れることなく容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る測定システムの概略構造を示す一部断面正面図である。
【
図2】測定装置をX線回折装置とした本発明の実施形態に係る測定システムの外観を示す斜視図である。
【
図3】
図2と同じく、測定装置をX線回折装置とした本発明の実施形態に係る測定システムの外観を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図4】グローブボックスの側壁に連結した測定用気密ボックスの外観を示す斜視図である。
【
図5】(a)は測定用気密ボックスを構成する筐体の外観を示す斜視図、(b)は筐体の二分割構造を示す斜視図である。
【
図6】筐体に設けた測定用窓を示す側面断面図である。
【
図8】(a)(b)は測定位置への試料位置調整機構を説明するための正面図である。
【
図9】(a)はX線回折装置のゴニオメータに筐体の先端部を固定した構造を示す斜視図、(b)は当該先端部の固定構造を拡大して示す正面図である。
【
図10】(a)(b)はX線回折装置の開閉扉と筐体の中間フランジとの間に設けたX線遮蔽構造を説明するために測定装置と測定用気密ボックスの外観を俯瞰して示す斜視図である。
【
図11】(a)は開閉扉に形成した切欠口を裏面側から見た斜視図、(b)はX線遮蔽構造を開閉扉の裏面側から見た斜視図である。
【
図12】グローブボックスと測定用気密ボックスの筐体とに接続した配管と、グローブボックスの開口部を閉塞する閉塞部材とを示す斜視図である。
【
図13】(a)は本発明の他の実施形態を示す斜視図、(b)は同じく正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
〔概略構造〕
図1は本発明の実施形態に係る測定システムの概略構造を示す一部断面正面図である。まず
図1を参照して、本発明の実施形態に係る測定システムの概略構造を説明する。
測定システムは、測定装置10、グローブボックス20、測定用気密ボックス30の組み合わせで構成してある。また、グローブボックス20と測定用気密ボックス30の組み合わせは、気密装置を構成する。
【0024】
測定装置10は、大気に設置されたエネルギー源(入射側の光源)から測定用気密ボックス30内の計測対象である試料に電磁波を照射し、試料から放出される光子を測定用気密ボックス30の外部の大気に設置された検出器で検出して分析が行える機器であって、測定目的に応じて任意にX線、紫外線、可視光線、テラヘルツ波などを用いる非破壊検査機が選択できる。例えば、試料を構成する物質や結晶構造または試料の内外部の形態分析を求める場合は、X線の波長を用いた、X線回折装置、蛍光X線装置、X線CT装置を、測定装置10として適用することができる。
【0025】
グローブボックス(GB)20は、周知のとおり、密閉構造をした内部空間を有し、この内部空間内で外気と遮断された状態で各種の作業を行うことのできる理化学装置である。グローブボックス20の正面には、内部空間内へ挿入できるゴム手袋が装備されており、作業者はこのゴム手袋を両手に装着して、グローブボックス20内にある試料や用具等を操作できるようになっている。
【0026】
グローブボックス20には、アンティチャンバ21(パスボックス)と称する物品挿入・取り出し用の補助ボックスが併設されており、このアンティチャンバ21を経由して、試料や用具等をグローブボックス20内に挿入する。また作業後は、アンティチャンバ21を経由して、グローブボックス20内にある試料や用具等を外部へ取り出すことができる。
【0027】
測定用気密ボックス30は、内部が中空の筐体31を備えている。筐体31は横方向に長尺な形状としてあり、一方の側端面31a(
図1の右端面)が開口している。この開口した側端面31aは、外部に併設したグローブボックス20の側壁に連結してある。グローブボックス20は、筐体31が連結される側壁部分に開口部20aが設けてあり、この開口部20aを筐体31における側端面31aの開口と合わせることで、筐体31の内部がグローブボックス20の内部と連通するように構成してある。
ここで、筐体31の内部は、側端面31aの開口以外は隙間のない構造としてあり、したがって相互に連結された筐体31とグローブボックス20は、内部が気密状態を形成している。
【0028】
なお、筐体31をグローブボックス20に連結する手法は、既知の連結手段を適宜選択して利用することができる。例えば、筐体31の側端縁にフランジを設け、このフランジにパッキンを介してグローブボックス20の側壁に密着させ、ボルト・ナット等の締結具を用いて固定することで連結構造が構築される。
【0029】
筐体31の内部には、試料台34と搬送ステージ35が設けてある。試料台34は、搬送ステージ35に搭載してある。搬送ステージ35は、試料台34を筐体31の軸方向(
図1の左右方向)へ搬送するための搬送手段である。搬送ステージ35は、例えば、既存のスライダ機構を利用して構成することができる。
ここで、搬送ステージ35は、試料台34をグローブボックス20の内部まで搬送できる構成となっている。このように、試料台34の搬送軌道をグローブボックス20の内部まで延ばすことで、グローブボックス20の内部で試料台34に試料を装填して、そのまま筐体31の内部へと試料台34を容易に搬送することができ、作業性が向上する。
【0030】
試料台34には、試料の装填部が設けてあり、その装填部に試料が装填される。試料台34への試料の装填作業は、上述したとおりグローブボックス20の内部で行われる。
【0031】
また、筐体31には測定用窓40が設けてある。測定用窓40は、試料台34に装填した試料を、測定装置10により筐体31の外部から測定するための構成部である。測定用窓40の形成位置は、組み合わされる測定装置10により、筐体31の内部に配置した試料を測定できるように調整される。
【0032】
また、測定用窓40は窓部材により閉塞して、筐体31内の気密状態を保持する構成としてある。窓部材に適用する材料は、組み合わされる測定装置10に応じて選択される。例えば、ベリリウム、窒化ケイ素、グラッシーカーボン、Ge(ゲルマニウム)、Si(シリコン)、ダイヤモンド、サファイア、CaF2(フッ化カルシウム)、ZnSe(セレン化亜鉛)、ZnS(硫化亜鉛)、カルコゲナイドガラス、クォーツなどの材料を窓部材に用いることで、X線、紫外線、可視光線、テラヘルツ波を用いる測定装置10での分析が可能になる。
また、複数の測定装置10に共通する波長の材料を窓部材に用いることで、複数の測定装置10で測定可能な測定用気密ボックス30を構成することもできる。
【0033】
測定用窓40の形成位置と関連して、筐体31の内部にはあらかじめ測定位置Aが設定してある。この筐体31の内部に設定した測定位置Aは、測定用気密ボックス30を測定装置10と組み合わせて測定システムを構築する際に、測定装置10に設定されている測定位置(図示せず)と合致するように位置調整される。
【0034】
また、測定に際しては、試料台34に装填した試料が、筐体31の内部に設定した測定位置Aに位置決めされる。この位置決めを実行するために、測定用気密ボックス30には、試料位置調整機構41が設けてある。試料位置調整機構41には、試料を移動調整して測定位置Aに合わせることができる各種の移動機構を適用することができる。
例えば、筐体31の軸方向への位置決めは、搬送ステージ35にストッパ42を設けておき、試料台34に装填した試料が測定位置Aに到達したとき、ストッパ42により搬送ステージ35の移動を停止させる構成をもって実現することができる。また、高さ方向の位置決めは、試料台34に昇降機構43を組み込み、この昇降機構43の駆動をもって試料の高さ位置を調整することで実現できる。
なお、前後方向(
図1の紙面垂直方向)は、あらかじめ測定位置Aに合わせて、試料台34と搬送ステージ35の前後位置を調整しておけばよい。また、必要に応じて、試料台34に前後駆動機構を組み込むこともできる。
【0035】
ここで、試料台34に組み込んだ昇降機構43は、測定装置10に搭載された制御部50からの制御信号によって制御されて駆動し、試料台34に装填された試料を測定位置Aに位置決めする。
【0036】
既述した測定用窓40は、筐体31の内部に設定した測定位置Aに配置された試料を、測定装置10が当該測定用窓40を通して測定できる部位に形成してある。
【0037】
また、グローブボックス20と、測定用気密ボックス30の筐体31には、それぞれ配管60が接続してある。これらの配管60は、バルブ61の切り替えによって、真空吸引ポンプ62と不活性ガス供給源63のいずれか一方に接続できる構成となっている。このように、本実施形態の測定システム(および気密装置)は、グローブボックス20のみならず、測定用気密ボックス30の筐体31にも配管60を接続することで、筐体31の内部を直接真空引きし、筐体31の内部へ直接不活性ガスを供給することができるので、速やかに筐体31の内部をグローブボックス20の内部と同じ雰囲気にすることができる。
【0038】
なお、グローブボックス20には、開口部20aを閉塞するための閉塞部材22が備えられている。この閉塞部材22は、例えば、グローブボックス20の内部側から手動操作をもって、開口部20aを閉塞する位置に移動して固定できる構成となっている。
この閉塞部材22により、グローブボックス20の内部を筐体31の内部から仕切ることで、グローブボックス20や測定用気密ボックス30のメンテナンスを行う際などに、各ボックス20,30内で独立して行うべき作業環境を整えることが可能となる。例えば、グローブボックス20内の雰囲気を維持したまま、グローブボックス20内でのメンテナンス作業が可能となる。また、グローブボックス20内の雰囲気を維持したまま、測定用気密ボックス30のメンテナンスを独立して行うことが可能となる。
【0039】
〔具体的構成例〕
次に、測定装置をX線回折装置とした本発明の実施形態に係る測定システムの具体的構成例について、
図2~
図12を参照して詳細に説明する。
図2は測定装置をX線回折装置とした本実施形態に係る測定システムの外観を示す斜視図、
図3(a)は同じく平面図、
図3(b)は同じく正面図である。
なお、先に示した
図1の概略構造と同一部分又は相当する部分には、同一符号を付してある。
【0040】
測定システムは、測定装置としてのX線回折装置10、グローブボックス20、測定用気密ボックス30の組み合わせで構成してある。
X線回折装置10は非破壊・非接触で材料の結晶性、結晶構造、結晶方位の情報を与え、未知物質の同定もできることから材料研究においてよく用いられる装置である。一般に、X線回折装置10は、X線を発生させるX線源、角度を正確に計測するゴニオメータ、X線強度を測定するX線検出器、これらを制御し、計数値の演算を行うデータ処理システムなどから構成される。
【0041】
一般に、ゴニオメータには、X線源の位置を固定し、X線検出器を角度2θ回転するときに、同時に試料を角度θ回転させるθ-2θ型と、X線源とX線検出器が、水平配置された試料に対して同じ角度を保って動作するθ-θ型とがある。
本実施形態では、流動性の高い試料への対応が必要で、しかも気密ボックス内に試料を装填する試料台34が設置されることから、水平配置された試料に対するθ-θ型のゴニオメータを採用するX線回折装置10を測定装置とした構成で説明する。
【0042】
これらの構成要素は、X線遮蔽カバー11の内部に収納配置されており、測定中はX線を外部に漏洩させない安全対策が施されている。
また、図に示すX線遮蔽カバー11には、正面に開閉扉12が設けられており、本実施形態ではこの開閉扉12を貫通するようにして、測定用気密ボックス30の筐体31の一部を、X線遮蔽カバー11の内部に挿入してある。そして、筐体31に設定した測定位置Aを、X線回折装置10に設定された測定位置に位置決めして固定する。
【0043】
図4はグローブボックスの側壁に連結した測定用気密ボックスの外観を示す斜視図である。図に示したようなグローブボックス20と測定用気密ボックス30との組み合わせで、本実施形態の気密装置が構築される。
【0044】
測定用気密ボックス30は、筐体31と、搬送ステージ35と、試料台34とを備えている。筐体31は、グローブボックス20の側壁に連結され、筐体31の内部がグローブボックス20の内部と連通している。筐体31は、X線を遮蔽する材料で形成してあり、測定用窓40以外からX線が筐体31の内部へ侵入することはない。搬送ステージ35は、試料台34を筐体31の軸方向に搬送し、さらにその搬送経路をグローブボックス20の内部にまで延ばしている。
【0045】
図5(a)は測定用気密ボックスを構成する筐体の外観を示す斜視図、
図5(b)は筐体の二分割構造を示す斜視図である。
筐体31は、内部が中空で、横方向に長尺な形状としてあり、一方の側端面31aを開口してある。この開口の周縁である筐体31の側端縁には、フランジ(側端フランジ32)が形成してある。筐体31は、この側端フランジ32を図示しないパッキンを介してグローブボックス20の側壁に当接させ、ボルト・ナット等の締結具を用いて固定することで連結構造が構築される(
図4参照)。
【0046】
図5(b)に示すように、筐体31は、軸方向の中間部で二分割してあり、その中間部よりも基端部側の筐体要素(筐体基端部31A)は、グローブボックス20の側壁に連結したままで、中間部よりも先端部側の筐体要素(筐体先端部31B)を着脱自在としてある。すなわち、筐体基端部31Aと筐体先端部31Bの接合部には、それぞれフランジ(中間フランジ33)が形成してあり、これら各中間フランジ33を図示しないパッキンを介して当接させ、ボルト・ナット等の締結具を用いて締結することで、一体化した筐体31が構成される。
また、締結具を取り外すだけで、容易に筐体先端部31Bを筐体基端部31Aから分離することができる。このように筐体先端部31Bを取り外すことで、筐体31の内部に設けた試料台34や搬送ステージ35のメンテナンスや調整、あるいは試料台34の構成変更などの作業を容易且つ速やかに実行することが可能となる。
【0047】
図6は筐体に設けた測定用窓を示す側面断面図である。
測定用窓40は、入射側測定用窓40aと、出射側測定用窓40bとで構成してある。
筐体31の内部には測定位置Aがあらかじめ設定してあり、この測定位置Aに試料台34に装填した試料を位置決めする。入射側測定用窓40aは、このように試料を位置決めした状態で、X線源13からのX線を入射して試料の表面に照射することができる部位に設けてある。また、出射側測定用窓40bは、同様に試料を位置決めした状態で、試料から反射してきた回折X線を外部に設けたX線検出器14に向けて出射させることができる部位に設けてある。
測定用窓40は、大気を遮断するがX線は透過する特性を有する材料(例えば、ベリリウム)の窓部材で閉塞してある。
なお、測定用窓40は、例えば、正面上部から上面を抜けて裏面上部まで連続する線状に形成することもできる。
【0048】
図7は搬送ステージの外観を示す正面図である。
搬送ステージ35は、筐体31の床面に固定した案内レール36に沿って、スライダ37が摺動して、試料台34をグローブボックス20の内部まで搬送できる構成となっている。試料台34は、スライダ37の上面に搭載してある。
【0049】
スライダ37には、グローブボックス20側の端部に操作用取手38が設けてある。作業者は、グローブボックス20の内部からこの操作用取手38を把持して、スライダ37を容易に移動させることができる。なお、図には示されていないが、スライダ37は、中間スライダと上部スライダで構成され、上部スライダを筐体31の先端部方向へ移動させる過程で、中間スライダが上部スライダに係合してこれと一体に移動する。これにより、試料台34を、筐体31から引き出してグローブボックス20の内部まで移動させることが可能となる。
なお、測定用気密ボックス30に搬送ステージ35を駆動するための駆動モータを搭載し、測定装置(X線回折装置)10に設けた制御部50(
図1参照)からの制御信号によりこの駆動モータを制御して、搬送ステージ35を移動させる構成とすることもできる。
【0050】
また、搬送ステージ35のスライダ37には、試料台34よりもグローブボックス20寄りの位置に、X線遮蔽部材44が設けてある。このX線遮蔽部材44は、X線を遮蔽することができる材料で板状に形成され、筐体31の横断面に沿って配置してある。このX遮蔽部材44により、筐体31の内部空間は仕切られている。したがって、X線回折測定に際して試料台34の周辺に生じる散乱X線は、筐体31とX線遮蔽部材44によって遮蔽され、グローブボックス20側への漏洩を防止することができる。
【0051】
図8(a)(b)は測定位置への試料位置調整機構を説明するための正面図である。
既述した概略構造と同様に、筐体31の内部にはあらかじめ測定位置Aが設定してある。
そして、この筐体31の内部で且つ先端近くの床面には、ストッパ42が固定して設けてある。このストッパ42は、搬送ステージ35により筐体31の内部を先端方向へ移動してきた試料台34が当接して、その移動を規制する。ストッパ42は、試料台34が当接したとき、その試料台34に装填した試料が筐体31に設定した測定位置Aと同じ軸方向位置へ位置決めされるように、設置位置が調整してある。
また、試料台34には、試料の高さ位置を調整する昇降機構43が組み込んである。筐体31に設けた測定位置Aへの高さ方向の位置調整は、この昇降機構43によって行われる。これらストッパ42と昇降機構43とにより、試料台34に装填した試料を測定位置Aに位置決めする試料位置調整機構41が構成される。
【0052】
図9(a)はX線回折装置のゴニオメータに筐体の先端部を固定した構造を示す斜視図、(b)は当該先端部の固定構造を拡大して示す正面図である。
筐体31の内部に設定した測定位置Aは、測定用気密ボックス30をX線回折装置10と組み合わせて測定システムを構築する際に、X線回折装置10に設定されている測定位置(図示せず)と合致するように位置調整される。ところが、X線回折装置10と測定用気密ボックス30とをそれぞれ独立して配置した場合、軸方向に延びる筐体31は、内部に試料台34を搭載することもあり、先端部が下方に撓みやすく、筐体31の内部に設定した測定位置Aが、X線回折装置10に設定された測定位置からずれてしまうおそれがある。
【0053】
そこで、本実施形態では、
図9(a)(b)に示すように、X線回折装置10のゴニオメータ15に筐体31の先端部を、位置決め部材16により固定することで、ゴニオメータ15に対して測定用気密ボックス30の筐体31を位置決めする構成としてある。
具体的には、ストッパ42に搬送ステージ35を当接させた状態で、X線回折装置10に設定された測定位置に、筐体31の内部に設定した測定位置Aを合わせるようにして、位置決め部材16を用いて筐体31の先端部をゴニオメータ15に固定する。
これにより、筐体31の先端部の撓みが防止されて、安定した測定位置への試料の位置決めが可能となる。また、位置決め部材16を取り外すことで、X線回折装置(測定装置)10と気密装置(測定用気密ボックス30およびグローブボックス20で構成)とを容易に分離することができるため、それぞれを単体の装置として使用することも可能である。
【0054】
図10および
図11はX線回折装置の開閉扉と筐体の中間フランジ33との間に設けたX線遮蔽構造を説明するための図で、
図10(a)(b)はX線回折装置と測定用気密ボックスの外観を俯瞰する斜視図、
図11(a)は開閉扉に形成した切欠口を裏面側から見た斜視図、
図11(b)はX線遮蔽構造を開閉扉の裏面側(すなわち、X線遮蔽カバーの内部側)から見た斜視図である。
【0055】
X線遮蔽カバー11の正面に設けた開閉扉12には、
図10(a)(b)および
図11(a)に示すように、X線遮蔽カバー11の内部に筐体31の一部を挿入するための切欠口17,17にが形成してある。これらの切欠口17,17は、開閉扉12が閉塞した状態で合わさって一つの閉じた切欠口17を形成する(
図10(b)参照)。
【0056】
測定用気密ボックス30の筐体31は、
図5に示した筐体先端部31Bが、この切欠口17からX線遮蔽カバー11の内部に挿入配置される。ここで、
図11(b)に示すように、筐体31の中間フランジ33は、開閉扉12の裏面側から切欠口17の周縁を覆うように配置してある。これにより、X線遮蔽カバー11で覆われたX線回折装置10の内部空間から、切欠口17を通してのX線の外部漏洩を防止することができる。すなわち、筐体31の中間フランジ33は、切欠口17に対するX線遮蔽構造を構成している。
【0057】
さらに、
図11(b)に示すように、開閉扉12に閉塞確認センサ18が設置してあり、この閉塞確認センサ18が開閉扉12の閉塞状態を検知する。また、開閉扉12と中間フランジ33との相互間に、X線遮蔽確認センサ19が設置してあり、このX線遮蔽確認センサ19により、切欠口17の周縁部が筐体31の中間フランジ33により裏面側から覆われていることを検知する。
これら各近接センサ18,19からの検知信号に基づいて、開閉扉12が開いたままの状態や、筐体31が配置されていない状態でのX線回折装置10の作動を未然に防止することができる。
なお、開閉扉12と中間フランジ33との相互間に設けたセンサ(X線遮蔽確認センサ19)によって、開閉扉12の閉塞状態を併せて検知する構成とすることもできる。この場合は、開閉扉12の相互間に設けたセンサ(閉塞確認センサ18)は省略してもよい。
【0058】
図12は、グローブボックスと測定用気密ボックスの筐体とに接続した配管と、グローブボックスの開口部を閉塞する閉塞部材とを示す斜視図である。同図に示すように、具体的構成例においても、グローブボックス20と、測定用気密ボックス30の筐体31には、それぞれ配管60が接続してある。これらの配管60は、図示しないバルブの切り替えによって、真空吸引ポンプと不活性ガス供給源のいずれか一方に接続できる構成となっている。
また、グローブボックス20の開口部20aには、閉塞部材22が着脱自在となっている。
【0059】
このようにグローブボックス20と筐体31のそれぞれに配管60を接続することで、測定用気密ボックス30のメンテナンスに際して、グローブボックス20の開口部20aを閉塞部材22で閉塞した状態としても、測定用気密ボックス30の内部を、グローブボックス20の内部と同じ雰囲気にすることができる。
また、測定用気密ボックス30に対して配管60を接続することで、ムラなく迅速に測定用気密ボックス30の内部を、グローブボックス20の内部と同じ雰囲気にすることが可能となる。
【0060】
〔測定手順〕
上述した具体的構成の測定システムは、次の手順をもって、大気を遮断した雰囲気下で嫌気性を有する試料の測定を実行することができる。
グローブボックス20と筐体31の内部は、真空雰囲気や不活性ガス雰囲気など、所要の雰囲気に形成される。すなわち、グローブボックス20に接続された筐体31の内部は、真空吸引ポンプで短時間に強制排気することができる。また、真空吸引ポンプで強制排気後に、不活性ガスをパージ封入して、所要の雰囲気を形成することが可能である。
【0061】
また、筐体31内の試料台34をストッパ42に当接させた状態で、X線回折装置10を作動して、半割と称する試料装填部の高さ調整動作を実行する。この動作により、試料装填部は筐体31内の測定位置Aに高さ調整される。
【0062】
その後に、グローブボックス20に併設したアンティチャンバ21を経由して、測定対象の試料と必要な用具類等をグローブボックス20の内部に挿入する。
次いで、作業者は、グローブボックス20に設けられたゴム手袋をはめて、グローブボックス20内の試料を外部から操作して、X線回折測定の前処理を実行する。そして、筐体31の内部に設置してある試料台34をグローブボックス20の内部まで移動させて、試料を試料台34に装填する。続いて、試料台34を筐体31の内部に向けて移動させ、ストッパ42に当接したところで停止させる。既述したようにすでに高さ調整は済ませているので、この試料台34をストッパ42に当接した位置に停止させることで、試料が測定位置Aに配置される。
【0063】
その後に、X線回折装置10を作動させて筐体31内の試料に対するX線回折測定を実行する。測定終了後は、筐体31内の試料台34を再びグローブボックス20の内部まで移動させ、試料台34から測定済みの試料を取り外す。そして、必要な後処理をグローブボックス20内で済ませた後に、アンティチャンバ21を経由して当該試料を外部へ取り出す。
【0064】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施や応用実施が可能なことは勿論である。
例えば、既存のグローブボックスを利用して本発明に係る測定用気密ボックスを構成することもできる。その場合は、既存のグローブボックスに連結部を設け、筐体31の連結部と連結すればよい。
【0065】
また、測定装置のエネルギー源(入射側の光源)、検出器は大気に設置することが可能であることから、汎用の既存装置のそれらユニットを利用して、本発明の気密装置と組み合わせ、本発明に係る測定システムを構築することもできる。
その場合は、既存装置に備わっている試料台(試料を測定位置に配置するための構成要素)は、取り外しておく。試料台は、測定用気密ボックスの内部に備えられたものを使用する。
また、既存のX線回折装置にX線遮蔽用の開閉扉が設けられている場合は、その開閉扉に、既述した切欠口17に相当する切欠口を形成し、測定用気密ボックスの筐体の一部をこの切欠口から開閉扉の内側に挿入する。
【0066】
試料台に装填した試料を測定位置へ位置決めするための試料位置調整機構は、上下方向(Z方向)の位置調整に限らず、筐体の軸方向(Y方向)および前後又は横方向(X方向)にも位置調整ができるXYZテーブルを試料台に組み込んで構成してもよい。
【0067】
図1や
図12では、グローブボックス20と測定用気密ボックス30の筐体31とに分岐した配管60を接続して、真空吸引装置や不活性ガス供給源に連通した構成を示したが、これに限定されず、次のように配管を構成することも可能である。
例えば、グローブボックス20と測定用気密ボックス30の筐体31とに、それぞれ独立して配管を接続し、個別に真空吸引装置や不活性ガス供給源へ連通する構成とすることもできる。
また、真空吸引装置や不活性ガス供給源へ連通する配管は、必要に応じて、グローブボックス20や測定用気密ボックス30の筐体31における複数個所に接続してもよい。
さらに、グローブボックス20や測定用気密ボックス30の筐体31に限らず、例えば、グローブボックス20に付設されるアンティチャンバ21(パスボックス)にも、真空吸引装置や不活性ガス供給源に連通する配管を接続することができる。
【0068】
また、
図13(a)(b)に示すように、ゴニオメータ15の軸部に測定用気密ボックス30の筐体31が通過可能な大きさの挿通孔15aを設け、この挿通孔15aを通して、測定用気密ボックス30の筐体31を、ゴニオメータ15の背面側から差し込み、X線遮蔽カバー11の内部空間にその一部を配置した構成とすることもできる。この構成によれば、開閉扉12に切欠口を設ける必要がなくなるので、切欠口に対するX線遮蔽構造も不要となり、さらに、X線回折装置10の正面側からの作業がやり易くなる利点がある。
【符号の説明】
【0069】
10:測定装置,X線回折装置
11:X線遮蔽カバー
12:開閉扉
13:X線源
14:X線検出器
15:ゴニオメータ
15a:挿通孔
16:位置決め部材
17:切欠口
18:閉塞確認センサ
19:X線遮蔽確認センサ
20:グローブボックス
20a:開口部
21:アンティチャンバ
22:閉塞部材
30:測定用気密ボックス
31:筐体
31A:筐体基端部
31B:筐体先端部
31a:側端面
32:側端フランジ
33:中間フランジ
34:試料台
35:搬送ステージ
36:案内レール
37:スライダ
38:操作用取手
40:測定用窓、
40a:入射側測定用窓
40b:出射側測定用窓
41:試料位置調整機構
42:ストッパ
43:昇降機構
44:X線遮蔽部材
50:制御部
60:配管
61:バルブ
62:真空吸引ポンプ
63:不活性ガス供給源
A:筐体の内部に設定した測定位置