(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】自動給餌装置
(51)【国際特許分類】
A01K 61/80 20170101AFI20230802BHJP
【FI】
A01K61/80
(21)【出願番号】P 2019103956
(22)【出願日】2019-06-03
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】308030570
【氏名又は名称】株式会社エム・アイ・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】中村 康行
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-021865(JP,U)
【文献】特開昭49-069482(JP,A)
【文献】特開昭54-085995(JP,A)
【文献】実開平04-120457(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体に備わる自動給餌装置であって、
餌を収容する収容容器から餌を吸引する吸引部と、
前記吸引部に接続して、餌を放出する放出管路と、
前記放出管路に空気圧を付与して、餌を放出管路から放出させる空気圧付与部と、を備え、
前記放出管路は、湾曲形状を有しており、前記放出管路の前記湾曲形状
が形成する曲線方向、前記空気圧の
進行方向および前記餌が前記放出管路内部を押し出される
進行方向は、略一致している自動給餌装置。
【請求項2】
前記収容容器は、前記船体の床に装着されるもしくは船倉に備わる、請求項1記載の自動給餌装置。
【請求項3】
前記吸引部は、前記収容容器内部に挿入可能であり、挿入されることで、収容容器内部の餌を吸引可能である、請求項1または2記載の自動給餌装置。
【請求項4】
前記餌は、魚介類である、請求項1から3のいずれか記載の自動給餌装置。
【請求項5】
前記放出管路は、前記餌を放出する放出口を有しており、
前記放出口は、前記船体の縁から外部に露出する、請求項1から4のいずれか記載の自動給餌装置。
【請求項6】
前記吸引部から前記放出口までは、前記船体の床もしくは船倉に備わる前記収容容器から、前記船体の縁までに到達する、請求項5記載の自動給餌装置。
【請求項7】
前記放出管路の前記湾曲形状
が形成する曲線方向、前記空気圧の
進行方向および前記餌が前記放出管路内部を押し出される
進行方向は、略一致していることで、前記空気圧付与部により付与された空気圧で押し出される前記餌は、前記放出管路内部において目詰まりしにくい、請求項1から6のいずれか記載の自動給餌装置。
【請求項8】
前記吸引部、前記放出管路および前記空気圧付与部は、前記船体に取り付けられている、請求項1から7のいずれか記載の自動給餌装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか記載の自動給餌装置と、
前記自動給餌装置を取り付ける船体と、
前記船体の床もしくは船倉に設けられる餌の収容容器と、を備え、
前記自動給餌装置の前記吸引部は、前記収容容器に接続し、
前記自動給餌装置の前記放出口は、前記船体の縁から露出している、自動給餌機能付き船。
【請求項10】
前記自動給餌機能付き船は、海洋、湖沼、河川に設けられた魚介類の養殖施設もしくは蓄養施設において使用される、請求項9記載の自動給餌機能付き船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に漁業において餌を与える自動給餌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国をはじめとして多くの国で、魚介類が食用されている。我が国は周囲を海に囲まれた島国であるという地理的特性から、歴史的に魚介類を多く食してきた歴史がある。肉食が普及した現在においても、我が国においては、魚介類やこれの加工食品が多く食されている。加えて、近年では、我が国以外の国においても、和食ブームや健康ブームの結果、魚介類などの多くの水産資源が食用に供されている状況がある。
【0003】
このような状況において、過去のように天然の魚介類を捕獲するだけでは、必要となる魚介類の量が不足するようになってきている。魚介類の種類によっては、その不測の度合いは顕著になっている。このため、魚介類の養殖や蓄養が盛んになってきている。養殖や蓄養によって、不足する水産資源を補うことが、人口増加や魚介類の食用増加への対策となるからである。
【0004】
魚介類の養殖や蓄養においては、例えば、海洋や河川にいけすや囲いを作り、その中で魚介類を育てることが行われる。あるいは、専用の施設が建築されて、専用施設で魚介類を育てることが行われる。このような魚介類の養殖や蓄養においては、育成対象の魚介類に餌を与えることが必要である。
【0005】
このような魚介類への給餌では、例えば、容器に入った餌を作業者が手作業でいけすや囲いに撒いて魚介類に与えることが行われる。あるいは、海洋や河川などに構築された大型のいけすなどであれば、船でいけす内部を航行して、船から餌を撒くなどでの給餌が行われることもある。
【0006】
いずれの場合でも、作業者による人力作業であって負担が大きい問題がある。
【0007】
このため、自動で餌を放出して撒く自動給餌機が用いられることがある。このような自動給餌機についての技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、筐体内に餌を収納するホッパーと、ホッパーの底面に設けられた撹拌羽根と、前記撹拌羽根を回転させるモータと、餌をホッパー外に排出させるための排出口と、撹拌羽根の回転により排出口を開口させる仕切板と、前記排出口から排出された餌が流入する排出経路と、前記排出経路に送風する送風機とを有し、ホッパー内の餌を撹拌羽根の回転により開口した排出口より排出経路に流入させて、送風機からの送風で筐体外に排出する給餌運転を行う給餌装置において、給餌運転前に、音や振動の発生により養魚を集合させる集合運転を行うことを特徴とする自動給餌装置を、開示する。
【0010】
特許文献1をはじめとする先行技術は、水中に餌を撒くことで、養殖や蓄養の対象となる魚介類への給餌を行う。
【0011】
しかしながら、養殖や蓄養の対象となる魚介類にとっては、配合飼料よりも実際に餌としている小型の魚介類を餌とすることのほうがよいことが多い。特に、カツオ、マグロ、ブリなどのような大型魚類の場合には、小型の魚介類(アジ、イワシ、サバなど)を、餌として与えるほうが好ましい。このとき、このような餌は、水中に沈められるよりも、水面から与えられるほうがよい。水面に撒かれることで、餌用の魚介類の活きがよく見えて、育成対象の魚類がしっかりと食べるようになるからである。
【0012】
また、水面に餌用の魚介類がまかれることで、育成対象の魚類はこれに飛びつくようにして食べる。これにより、育成対象の魚類の運動量や餌に対する意識が高まり、より高品質の魚類の育成が可能となる。
【0013】
これらの理由で、特許文献1のような従来技術では、養殖や蓄養での育成での給餌のレベルが不十分であるとの問題があった。
【0014】
また、これに対応して、空気圧などを利用して水面に餌を放出する給餌機が用いられることがある。しかしながら、放出対象となる餌は、小型の魚介類である。これらの魚介類を大量に放出する必要がある。このため、放出の際に目詰まりしたり、逆流したりする問題がある。
【0015】
また、放出する給餌装置は、このような目詰まりなどの問題もあって、作業者が給餌機につきっきりになって操作やトラブル対応しながら給餌を実施する必要がある問題がある。
【0016】
また、目詰まりや逆流などを生じさせることを低減させるために、給餌機の放出部分の管路を短くせざるを得ない。このようになると、船の縁から餌を放出するためには、船の縁に近づけるように給餌機を設置する必要がある。このようになると、放出部分の管路の根元が、船体の床面より高くなってしまう。これにより、放出部分の根元に餌を人力で供給する必要があり、この点でも、作業における負担が大きい問題がある。
【0017】
本発明は上記の課題に鑑み、船に設置して船の本体に設けられた餌の収容部と接続して餌を吸い上げて放出して水面に撒くことができる、自動給餌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の自動給餌装置は、船体に備わる自動給餌装置であって、
餌を収容する収容容器から餌を吸引する吸引部と、
前記吸引部に接続して、餌を放出する放出管路と、
前記放出管路に空気圧を付与して、餌を放出管路から放出させる空気圧付与部と、を備え、
放出管路は、湾曲形状を有しており、前記放出管路の前記湾曲形状が形成する曲線方向、前記空気圧の進行方向および前記餌が前記放出管路内部を押し出される進行方向は、略一致している。
【発明の効果】
【0019】
本発明の自動給餌装置は、放出管路の構造の特徴により、餌の目詰まりや逆流を起こすことなく、餌を水面に放出することができる。このため、給餌作業中において、作業者の人力作業の負荷を軽減でき、効率的な養殖や蓄養事業を実現できる。
【0020】
また、船の船倉に設けられた餌の収容容器に放出管路を直接接続させた上で、船の縁に放出管路の放出口を設置できる構造を有する。この構造により、水上いけすなどで船を横付けなどで停止させて、育成対象の魚類に対して、直接餌を撒くことができる。このとき、放出管路に人力で餌を供給する手間を削減できるので、給餌に係る作業負担の軽減ができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態1における自動給餌装置の模式図である。
【
図2】本発明の実施の形態1における自動給餌装置の模式図である。
【
図3】本発明の実施の形態1における自動給餌装置の一部の写真である。
【
図4】本発明の実施の形態1における自動給餌装置の一部の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1の発明に係る自動給餌装置は、船体に備わる自動給餌装置であって、
餌を収容する収容容器から餌を吸引する吸引部と、
吸引部に接続して、餌を放出する放出管路と、
放出管路に空気圧を付与して、餌を放出管路から放出させる空気圧付与部と、を備え、
放出管路は、湾曲形状を有しており、放出管路の湾曲形状、空気圧の進行ベクトルおよび餌が放出管路内部を押し出される進行ベクトルは、略一致している
【0023】
この構成により、吸引した餌をスムーズに移動させて放出することができる。
【0024】
本発明の第2の発明に係る自動給餌装置では、第1の発明に加えて、収容容器は、船体の床に装着されるもしくは船倉に備わる。
【0025】
この構成により、船体を有効活用した餌の収容容器を利用できる。
【0026】
本発明の第3の発明に係る自動給餌装置では、第1または第2の発明に加えて、吸引部は、収容容器内部に挿入可能であり、挿入されることで、収容容器内部の餌を吸引可能である。
【0027】
この構成により、収容容器からの餌の吸引と放出を実現できる。
【0028】
本発明の第4の発明に係る自動給餌装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、餌は、魚介類である。
【0029】
この構成により、大型の魚介類への餌の供給ができる。
【0030】
本発明の第5の発明に係る自動給餌装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、放出管路は、餌を放出する放出口を有しており、
放出口は、船体の縁から外部に露出する。
【0031】
この構成により、船体の外へ確実に餌を放出できる。
【0032】
本発明の第6の発明に係る自動給餌装置では、第5の発明に加えて、吸引部から放出口までは、船体の床もしくは船倉に備わる収容容器から、船体の縁までに到達する。
【0033】
この構成により、船倉からの餌の外部への放出を実現できる。これにより、作業者が余分な作業を強いられることを低減できる。
【0034】
本発明の第7の発明に係る自動給餌装置では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、放出管路の湾曲形状、空気圧の進行ベクトルおよび餌が放出管路内部を押し出される進行ベクトルは、略一致していることで、空気圧付与部により付与された空気圧で押し出される餌は、放出管路内部において目詰まりしにくい。
【0035】
この構成により、収容容器での目詰まりなどが防止されて、餌の放出をスムーズにするために、作業者が放出管路への送り込みを補助するなどの余分な作業を強いられることを低減できる。また、目詰まりによる修理対応なども低減でき、全体としての効率化が図られる。
【0036】
本発明の第8の発明に係る自動給餌装置では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、吸引部、放出管路および空気圧付与部は、船体に取り付けられている。
【0037】
この構成により、船体から直接餌を撒くことができる。
【0038】
本発明の第9の発明に係る自動給餌機能付き船は、第1から8のいずれかの自動給餌装置と、
自動給餌装置を取り付ける船体と、
船体の床もしくは船倉に設けられる餌の収容容器と、を備え、
自動給餌装置の吸引部は、収容容器に接続し、
自動給餌装置の放出口は、船体の縁から露出している。
【0039】
この構成により、養殖施設などで航行しながら餌を撒くことができる。
【0040】
本発明の第10の発明に係る自動給餌機能付き船では、海洋、湖沼、河川に設けられた魚介類の養殖施設もしくは蓄養施設において使用される。
【0041】
この構成により、養殖施設や蓄養施設などで船から直接的に餌を与えていくことができる。
【0042】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0043】
(実施の形態1)
【0044】
(全体概要)
図1は、本発明の実施の形態1における自動給餌装置の模式図である。
図1は、自動給餌装置1が、船体100に装着されている状態が示されている。また、
図1は、自動給餌装置1を側面から見た状態を示しており、内部構成も見えるようにして示している。
【0045】
自動給餌装置1は、吸引部3、放出管路5、空気圧付与部4を備える。自動給餌装置1は、養殖や蓄養などを行う魚介類に餌200を放出する。
図1では、餌200を示している。符号200がついているものと同じ形状の要素は、餌である。
【0046】
吸引部3は、餌200を収容している収容容器2から餌200を吸引する。例えば、空気吸引機構を有しており、収容容器2に収容されている餌200を吸い上げる。収容容器2は、放出管路5と接続している。吸引部3は、吸引した餌200を放出管路5に送り出せる。
【0047】
放出管路5は、吸引部3に接続して、収容容器2からの餌200を外部に放出する。
図1のように、船体100に自動給餌装置1が装着される場合には、放出管路5の放出口51が、船体100の縁101の上に出ている。放出管路5は、餌200を放出口51から放出する。放出によって、養殖や蓄養されている魚介類に、餌200を供給できる。
図1のように、放出口51が船体100の縁101の上に出ていることで、放出管路5から船体100の外部に餌200を確実に放出できる。
【0048】
例えば、海洋に設けられた養殖場などで、自動給餌装置1が使用される。船体100に自動給餌装置1が装着されて、船体100が、養殖場の中を航行する。この航行に合わせて、自動給餌装置1は、船体100から直接的に、養殖場に餌200を放出できる。養殖場で養殖されている魚介類が、ブリやマグロなどの大型魚類である場合には、餌200は、イワシやアジなどの小型の魚類である。すなわち、イワシやアジなどの小型魚類が、餌200として、放出管路5の放出口51から養殖場に撒かれるようになる。
【0049】
空気圧付与部4は、放出管路5に空気圧を付与する。吸引部3の吸引と空気圧付与部4の空気圧の付与が相まって、収容容器2から餌200が放出管路5に供給される。更に、放出管路5に供給された餌200が付与される空気圧によって、放出管路5内部を進む。進むことで、放出管路5の根元から供給された餌200は、放出口51から外部に放出されるようになる。
【0050】
ここで、放出管路5は、
図1に示されるように湾曲形状を有している。湾曲形状は、完全な曲線に対応する円弧形状でもよいし、単数または複数の屈曲部により形成される形状でもよい。また、円弧部分と直線部分とが混在する形状でもよい。
【0051】
この湾曲形状、空気圧付与部4が付与する空気圧の進行ベクトルおよび餌200が放出管路5内部を押し出される進行ベクトルとは、略一致している。すなわち、湾曲形状が形成する湾曲曲線は、付与される空気圧の進行ベクトルと餌200が押し出されて移動する進行ベクトルと略一致する。
【0052】
この略一致により、吸引部3によって吸引された餌200は、放出管路5内部を詰まることなくスムーズに移動できる。このスムーズな移動によって、放出管路5の放出口51から、確実に餌200は、船体100の外部に放出される。特に、餌200を収容する収容容器2は、船体100の床に設けられることが多い。そこの位置から船体100の縁101までの高さに上げつつ、外部に放出することが、自動給餌装置1には求められる。上述のような放出管路5の湾曲形状と進行方向などとの略一致により、餌200は、スムーズに目詰まりせずに移動できる。この結果、船体100の床から縁101までの高さと距離を、スムーズに移動できる。この移動の結果、吸引された餌200は、放出口51から外部に確実に放出される。
【0053】
このように、放出管路5の湾曲形状が、空気圧付与部4が付与する空気圧の進行ベクトルおよび餌200が放出管路5内部を押し出される進行ベクトルとは、略一致していることで、餌200は、船体100の縁101まで到達した上で、そのまま外部に放出されるようになる。海洋などの設けられた養殖場などで、餌200を自動的に供給することに適している。従来技術のように、放出管路5内部で餌200が目詰まりすることを低減でき、あるいは、目詰まりしないように放出管路5の長さを短くするなどの必要を削減できる。
【0054】
図2は、本発明の実施の形態1における自動給餌装置の模式図である。船体とは切り離した状態で示している。
【0055】
図1と同じく、自動給餌装置1は、吸引部3、空気圧付与部4、放出管路5を備える。
【0056】
また、収容容器2に餌200が収容されており、吸引部3がこれを吸引して放出管路5から餌200が放出される。このとき、収容容器2は、放出管路5から見て下方(例えば、船体100の床)に設けられていてもよいし、放出管路5の上方に設けられてもよい。後者の場合には、上方から餌200が供給されて、放出管路5から放出される。
【0057】
次に、各部の詳細やバリエーションについて説明する。
【0058】
(収容容器)
収容容器2は、給餌する餌200を収容する。この収容容器2に収容されている餌200が、自動給餌装置1によって放出されて養殖などの魚介類に供給される。
【0059】
収容容器2は、船体100の床に装着されることも好適である。あるいは、収容容器2は、船体100の船倉に装着されることも好適である。後者の場合には、船体100に備わる船倉の一部が、そのまま収容容器2として活用されてもよい。一般的な船体100には、船倉が備わっていることが多い。この船倉を、そのまま収容容器2として活用すればよい。
【0060】
収容容器2は、餌200を収容する。この収容容器2と放出管路5が接続することで、放出管路5からの餌200の放出が可能となる。
【0061】
また、自動給餌装置1により餌が供給される作業時間においては、収容容器2に、新たな餌200が供給され続けることも好適である。供給され続けることで、長時間にわたって、餌200を与えることができるからである。
【0062】
あるいは、収容容器2が、複数の区画に分割されており、放出管路5が、接続される区画を変えながら餌200の放出を続けることも好適である。このように複数の区画に分割されている収容容器2からの餌200の吸引により、吸引での不具合の発生を低減することができるからである。
【0063】
(吸引部)
吸引部3は、収容容器2に収容されている餌200を放出管路5に向けて吸引する。吸引された餌200は、放出管路5に供給される。
【0064】
ここで、吸引部3は、空気圧吸引などの機構を用いて、餌200を吸引すればよい。餌200は、魚介類である。上述したように例えば、大型魚類に給餌する場合には、イワシやアジなどの小型の魚類である。あるいは、イカなどのような魚介類であってもよい。もちろん、このような生餌ではなく、合成された餌であってもよい。
【0065】
餌200となる魚介類は、大きさや形状が不均一である。また、表面に粘性があったりすることもある。このため、吸引部3による吸引では、吸引が難しくなったり、放出管路5との関係で目詰まりを起こしたりすることもありえる。
【0066】
しかし、上述したように、放出管路5の湾曲形状が、空気圧付与部4による空気圧の進行ベクトルと餌200の進行ベクトルと略一致している。これにより、吸引されて放出管路5を移動する餌200は、スムーズに移動できる。このスムーズな移動と相まって、吸引部3による吸引が滞ることが低減される。
【0067】
吸引部3は、放出管路5と接続されている。すなわち、吸引部3は、放出管路5の一部であって、放出管路5の根元に設けられてもよい。この吸引部3は、収容容器2内部に挿入可能である。挿入されることで、収容容器2内の餌200を吸引可能である。この吸引によって、餌200は、放出管路5に送り出される。
【0068】
また、吸引部3は、空気圧付与部4と一体となった構造を有してもよい。このとき、吸引部3と空気圧付与部4とは、別の要素として、それぞれ吸引と空気圧付与とを独立して行ってもよい。あるいは、吸引部3と空気圧付与部4とが同じ要素によって実現されてもよい。すなわち、同じ要素として収容容器2から餌200を吸引することで、合わせて放出管路5に餌200を供給できる。このとき、吸引圧力は、そのまま放出管路5内部を餌200が移動する空気圧となる。この空気圧によって、餌200は、放出管路5から放出される。
【0069】
このように、吸引部3による吸引がそのまま空気圧付与部4による空気圧付与になることでもよい。逆に言えば、空気圧付与部4による空気圧付与が、餌200の吸引につながることでもよい。このように、吸引部3と空気圧付与部4とは、別個の構成であると共に別要素(独立して機能を発揮する要素)でもよいし、一体の構成であると共に別要素(独立して機能を発揮する要素)でもよいし、一体の構成であると共に同一要素(一体で機能を発揮する要素)でもよい。
【0070】
(放出管路)
放出管路5は、吸引部3で吸引されて送り込まれた餌200を放出する。このとき、自動給餌装置1が船体100に取り付けられている場合には、放出管路5は船体100の外部に餌200を放出する。自動給餌装置1が他の装置などに装着されている場合には、この装置の外部に餌200を放出する。
【0071】
自動給餌装置1は、特に、海洋や河川などに設けられた養殖場や蓄養施設での餌200の供給に用いられる。あるいは、専用の施設として設けられた養殖場や蓄養施設での餌200の供給に用いられる。このとき、養殖対象は魚介類であり、餌200は、この魚介類が食用とするものである。上述したように、養殖対象がマグロやブリなどの大型の魚介類である場合には、餌200は、イワシやアジなどの小型の魚介類である。
【0072】
収容容器2にこれらの小型の魚介類が収容されており、吸引部3がこれを吸いあげて、放出管路5が、これらを放出する。このとき、空気圧付与部4が、放出管路5に空気圧を付与するので、この空気圧によって放出管路5内部を餌200が移動する。この移動の結果、放出管路5から餌200が放出される。
【0073】
ここで、放出管路5の先端に放出口51が備わっている。放出管路5は、この放出口51から餌200を放出する。
図1のように、船体100に自動給餌装置1が備わっている場合には、放出口51は、船体100の縁101から外部に露出している。
図1は、これを示している。この態様によって、放出口51は、船体100の縁101から外部に餌200を放出できる。
【0074】
ここで、放出管路5は、湾曲形状を有している。円弧形状で湾曲していてもよいし、屈曲部が備わることで、全体として湾曲していることでもよい。この湾曲形状は、空気圧付与部4による空気圧の進行ベクトルおよび餌200が放出管路5内部を押し出される進行ベクトルは、略一致している。この略一致により、空気圧の付与は、湾曲形状に沿った進行方向を持っている。このため、餌200も、スムーズかつ目詰まりなどを起こすことなく、放出管路5を移動する。
【0075】
上述のように、吸引部3による吸引と空気圧付与部4による空気圧付与部は、同一要素として行われることもある。この場合には、吸引によって空気圧付与されるベクトルと、餌200の放出管路5内部の移動とは、同じベクトルを持つ。この同じベクトルによって、餌200は、スムーズに移動できる。
【0076】
このスムーズな移動によって、船体100の床や船倉に設けられる収容容器2から船体100の縁101の高さまで、餌200が到達して放出される。放出管路5は、船体100の床や船倉の収容容器2から船体100の縁101まで到達する長さと高さを持っている。すなわち、吸引部3から放出口51までは、船体100の床もしくは船倉にそなわる収容容器2から、船体100の縁101までに到達する。
【0077】
このような経路を持つ放出管路5であっても、空気圧の進行ベクトルと放出管路5の湾曲形状のベクトルが一致していることで、餌200を確実に吸い上げて放出できる。この結果、自動給餌装置1が船体100に装着される場合でも、自動給餌装置1は、船体100の外部に直接的に餌200を放出できる。餌200を直接的に放出できれば、養殖場などにそのまま餌200を与えることができる。
【0078】
放出管路5の湾曲形状、空気圧の進行ベクトルおよび餌200が放出管路5内部を押し出される進行ベクトルは、略一致している。この略一致により、空気圧付与部4により付与された空気圧で押し出される餌200は、放出管路5内部において目詰まりしにくい状態である。この目詰まりしにくいことで、スムーズに餌200を撒くことができる。
【0079】
放出口51は、例えば先端が広がっている形状を有していることでもよい。先端が広がっている形状で、餌200の放出がより容易となるからである。また、放出の際に、広がりを持って放出されるので、給餌対象に対して、万遍なく餌200を与えることができる。
【0080】
放出管路5は、空気圧の進行ベクトルと餌200の移動する進行ベクトルとに略一致するように湾曲形状を有している。このとき、船体100の床や船倉に収容容器2が設けられやすい事情から、湾曲形状は、船体100の内壁に沿った形態であることもよい。このような形態であることで、船体100の外部に、確実に餌200を放出することができる。
【0081】
以上のように、実施の形態1における自動給餌装置1は、収容容器2の餌200を、確実に吸い上げて放出することができる。このとき、餌200が、魚介類のように吸引や放出の際に引っ掛かりなどが生じやすいものであっても、確実に放出することができる。自動的な餌200の供給によって、養殖場や蓄養場での作業が効率化される。
【0082】
また、収容容器2から放出口51までの餌200の移動や放出がスムーズであるので、収容容器2で餌200が吸い上げ困難にならないように、作業者が余分な作業をしなければならなくなることも低減する。これも相まって、養殖などでの作業効率が向上する。
【0083】
また、
図3、
図4は、本発明の実施の形態1における自動給餌装置の一部の写真である。
図3は、船倉に設けられている収容容器2から餌200を吸いあげる部分を示している。船体100の船倉に収容容器2が設けられ、この収容容器2に餌200が収容されている。吸引部3がこれを吸い上げて、放出管路から外部に餌200が放出される。
【0084】
図4は、船体100が海洋の養殖施設で使用される状態を示している。このように船体100が、海洋や湖沼などに設けられた養殖施設に横付けされるなどして、餌200を撒くことができる。
【0085】
(実施の形態2)
【0086】
実施の形態1で説明した自動給餌装置1は、船体100に装着されることも好適である。
【0087】
自動給餌装置1は、海洋、湖沼、河川などに設けられた魚介類の養殖施設もしくは蓄養施設において使用される。このため、自動給餌装置1が船体100に装着された上で使用されることが好ましい。陸上から餌200を与えるだけでなく、養殖施設や蓄養施設を移動しながら、養殖対象の魚介類にまんべんなく餌200を与えることができるからである。
【0088】
このため、自動給餌装置1が装着された自動給餌機能付き船として使用されてもよい。
【0089】
自動給餌機能付き船は、実施の形態1で説明した自動給餌装置1と、これを取り付ける船体100と、船体100の床もしくは船倉に設けられる収容容器2を備える。自動給餌装置1の吸引部3は、収容容器2に接続している。また、自動給餌装置1の放出口51は、船体100の縁101から露出している。
【0090】
このような構造を有する自動給餌機構付き船は、養殖施設や蓄養施設を航行しながら、餌200を撒くことができる。これにより、養殖施設や蓄養施設での魚介類への餌200の供給が、容易かつ確実に行える。特に、船体100の縁101から、外部に餌200を確実に放出できるので、餌200を確実に与えることができる。
【0091】
ここで、吸引部3、空気圧付与部4および放出管路5は、船体100に取り付けられている。これにより、自動給餌機能付き船を実現することができる。
【0092】
ここで、船体100に取り付けられる例を示したが、他の駆動装置に取り付けられて、養殖施設や蓄養施設で利用されることでもよい。
【0093】
実施の形態1で説明したように、吸引から放出に至る空気圧の進行ベクトルと、放出管路5の湾曲形状が略一致している。結果として、空気圧の進行ベクトルによる餌200の進行ベクトルも一致する。こうして、放出管路5内部を、スムーズに餌200が移動できるので、目詰まりすることなく次々と餌200を放出できる。
【0094】
以上のように、海洋や湖沼に設けられた養殖施設などで、船から直接的に餌を撒いて与えることができる。
【0095】
以上、実施の形態1~2で説明された自動給餌装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0096】
1 自動給餌装置
2 収容容器
3 吸引部
4 空気圧付与部
5 放出管路
51 放出口
100 船体
101 縁
200 餌