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  • 特許-鋳砂除去装置、及び鋳砂除去方法 図1
  • 特許-鋳砂除去装置、及び鋳砂除去方法 図2
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  • 特許-鋳砂除去装置、及び鋳砂除去方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】鋳砂除去装置、及び鋳砂除去方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 29/00 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
B22D29/00 A
B22D29/00 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019203005
(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公開番号】P2021074749
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】510155210
【氏名又は名称】アピュアン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】渡部 幸雄
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-50212(JP,A)
【文献】実開平2-11659(JP,U)
【文献】実公昭54-36094(JP,Y2)
【文献】特表平5-506407(JP,A)
【文献】特開2017-192949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳砂を含むワークが載置される基台と、
前記基台に載置されたワークに打撃力を繰り返し付与するワーク打撃力付与手段と、
を備え、
前記ワークに振動を与えて該ワークに含まれた鋳砂を除去する鋳砂除去装置であって、
前記基台は、あらかじめ定められた第一の方向に沿って移動自在とされており、
前記ワーク打撃力付与手段は、前記基台に載置されたワークに、前記第一の方向と異なる第二の方向に沿って繰り返し打撃力を付与する機能を有しており、
さらに、
前記第一の方向に移動する基台が衝突する基台衝突壁部と、
前記基台を前記基台衝突壁部に向かって繰り返し移動させて当該基台衝突壁部に当該基台を衝突させる基台衝突手段と、
を備え、
前記基台衝突手段が作動して前記基台が前記基台衝突壁部に繰り返し衝突する間、前記ワーク打撃力付与手段が前記ワークに打撃力を繰り返し付与する
ことを特徴とする鋳砂除去装置。
【請求項2】
前記基台は、所定の走行面に接する車輪部を有しており、前記車輪部が前記走行面を走行することで前記基台が前記第一の方向に沿って往復自在に移動してなる
請求項1に記載の鋳砂除去装置。
【請求項3】
鋳砂を含むワークが載置された基台を、あらかじめ定められた第一の方向に沿って移動させて、前記基台を所定の基台衝突壁部に繰り返し衝突させる間、
前記ワークに、前記第一の方向と異なる第二の方向に沿って繰り返し打撃力を付与する
ことを特徴とする鋳砂除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳砂を含むワークに振動を与えて鋳砂を除去する鋳砂除去装置、及び鋳砂除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳造されたワークから鋳砂を落とすために、上下動可能な支持部材上に載置したワークを打撃片で打撃し、これによりワークに振動を与えて鋳砂を除去するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-297057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成は、ワークに上下方向の振動しか与えることができない。特に、ワークが車両のエンジン部材等のように複雑な形状を有していると、凹んだ部分に鋳砂が滞留しやすく、問題となる。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、鋳砂を効率的に除去することのできる鋳砂除去装置、及び鋳砂除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、鋳砂を含むワークが載置される基台と、前記基台に載置されたワークに打撃力を繰り返し付与するワーク打撃力付与手段と、を備え、前記ワークに振動を与えて該ワークに含まれた鋳砂を除去する鋳砂除去装置であって、前記基台は、あらかじめ定められた第一の方向に沿って移動自在とされており、前記ワーク打撃力付与手段は、前記基台に載置されたワークに、前記第一の方向と異なる第二の方向に沿って繰り返し打撃力を付与する機能を有しており、さらに、前記第一の方向に移動する基台が衝突する基台衝突壁部と、前記基台を前記基台衝突壁部に向かって繰り返し移動させて当該基台衝突壁部に当該基台を衝突させる基台衝突手段と、を備え、前記基台衝突手段が作動して前記基台が前記基台衝突壁部に繰り返し衝突する間、前記ワーク打撃力付与手段が前記ワークに打撃力を繰り返し付与することを特徴とする鋳砂除去装置である。
【0007】
かかる構成にあっては、ワーク内に残留する鋳砂に対して、互いに異なる性質の振動が複数の方向から作用することとなるため、ワーク内の鋳砂が崩れ易くなる。特に、衝突によって付与される衝撃によってワーク内の固着した鋳砂を揺することができ、加えて、複数の方向から作用する振動によって、崩れた鋳砂が円を描くように複雑に飛散することになる。このため、単調に一方向から振動を付与する従来技術に比して鋳砂がワーク内の凹部から外へ排出されやすくなる。
【0008】
なお、前記基台は、所定の走行面に接する車輪部を有しており、前記車輪部が前記走行面を走行することで前記基台が前記第一の方向に沿って往復自在に移動してなる構成が望ましい。
【0009】
かかる構成とすることにより、簡素な構造で鋳砂除去装置を構成することができる。
【0010】
また、本発明は、鋳砂を含むワークが載置された基台を、あらかじめ定められた第一の方向に沿って移動させて、前記基台を所定の基台衝突壁部に繰り返し衝突させる間、前記ワークに、前記第一の方向と異なる第二の方向に沿って繰り返し打撃力を付与することを特徴とする鋳砂除去方法である。
【0011】
かかる構成とすることにより、ワーク内の鋳砂が上述のような挙動を示すため、鋳砂をワーク内から効率的に除去することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ワーク内の鋳砂を効率良く除去できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例にかかる鋳砂除去装置の説明図である。
図2】鋳砂除去装置の上部を示す説明図である。
図3】基台が基台衝突壁部へ衝突した状態を示す説明図である。
図4】ワーク内の鋳砂の挙動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を、以下の実施例に従って説明する。
【0015】
図1図2に示すように、鋳砂除去装置1は、枠体60を備えている。そして、枠体60の上部には、下方向(第二の方向)に繰り返し打撃力を加えるワーク打撃力付与手段としてのエアーハンマー70が配設されている。ここで、エアーハンマー70は左右方向に移動自在に枠体60に吊り下げされており、後述する基台50が移動する際に同期して左右方向へ移動する。
【0016】
また、エアーハンマー70の下方には、ワークWを支持する基台50が配置されている。以下、基台50について詳述する。
【0017】
基台50は、平板状の第一ベース板部20、第二ベース板部30、及びワーク載置台部40を備えている。
【0018】
ここで、第一ベース板部20の上部には、上下方向を弾縮方向とした第一コイルスプリング23が配設されている。そして、第一コイルスプリング23によって第二ベース板部30が支持されている。
【0019】
また、第二ベース板部30の上部には、上下方向を弾縮方向とした第二コイルスプリング31が配設されている。そして、第二コイルスプリング31によってワーク載置台部40が支持され、当該ワーク載置台部40の上に、鋳砂を含むワークWが載置される。
【0020】
また、第一ベース板部20の下部には、車輪部21が複数備えられており、この車輪部21が枠体60に設けられたレール部材10上を左右方向に走行可能となっている。
【0021】
レール部材10は、所定の走行面SLを構成しており、長手方向を左右方向(第一の方向)としている。なお、走行面SLは床面であったり、装置内に設けられたフレーム上であったりしてもよい。また例えば、鋳砂回収用の収容タンク(図示省略)を備えた台上であってもよい。
【0022】
なお、第一ベース板部20、車輪部21、第二ベース板部30、及びワーク載置台部40によって、本発明にかかる基台50が構成されている。
【0023】
また、枠体60内にはシリンダー80が設けられており、上述の基台50の一端部には、シリンダー80に収容されたピストン81の先端が接続されている。ここで、ピストン81は、レール部材10の長手方向に沿って左右方向に進退自在となっており、先端が基台50の連結部22に固結されている。なお、流体駆動によって繰り返し進退自在なシリンダー80により、本発明に係る基台衝突手段が構成される。
【0024】
さらに枠体60内における基台50の右方には、基台衝突壁部90が配されている。基台衝突壁部90は、例えばレール部材10が設置された設置面と連続しており、基台50が右方向へ移動した場合に第一ベース板部20の右端部と衝突可能な構成となっている。
【0025】
次に、鋳砂除去装置1の作動態様について説明する。
上述のように構成された鋳砂除去装置1は、ワーク載置台部40に載置されたワークWに対してエアーハンマー70が下向きの打撃力を与えてワークWを上下方向に振動させる。これにより、ワークW内に含まれる鋳砂の固まりが徐々に崩れ、鋳砂が小片や粉体となって外部へ排出される。
【0026】
また、ワークWがエアーハンマー70に打撃されると共に、ピストン81が右方向(基台衝突壁部90のある方向)へ伸び、基台50を基台衝突壁部90に向かって押し出す。そうすると、押し出された基台50の第一ベース板部20が、図3に示すように、基台衝突壁部90に衝突する。そして、かかる衝突により、得られた左右方向の衝撃力により、ワークW内に含まれる鋳砂の固まりが揺すられて崩れたり、鋳砂が小片や粉体となったりする。なお、基台50に配設された各スプリング23,31は、付与された打撃力に応じてワークWを微小に揺さぶる効果があり、これにより鋳砂が一層排出されやすくなる。
【0027】
なお、上述のピストン81が往復動することにより、基台50は、基台衝突壁部90から離れたり、再び右方向へ押し出されて基台衝突壁部90に衝突したりする。そして、このように基台50が基台衝突壁部90に繰り返し衝突する間、エアーハンマー70によりワークWに対して打撃力が繰り返し付与される。
【0028】
このようにして、上下方向の衝撃と左右方向の衝撃とを加えられたワークWにあっては、図4に示すように、内部の鋳砂Sが円を描くように飛散し、ワークWに形成された空間100に残留していた鋳砂Sが外部と連通する隙間部101から外部へ排出されやすくなる。このような鋳砂の挙動は、単に上下方向のみや左右方向のみに衝撃が与えただけでは生じないものであり、上記構成によれば鋳砂Sの排出効率が従来のものと比べて飛躍的に向上する。
【0029】
なお、基台50が左右方向に移動してもエアーハンマー70も同期して移動するため、エアーハンマー70の先端部は、ワークWに定められた打撃位置Pに繰り返し衝突することとなる。
【0030】
上記実施例において、各部の寸法形状は適宜自由に選択可能である。
また、基台50の移動方向とエアーハンマー70の打撃方向とは互いに異なっていればよく、実施例のものに限定されず、適宜、自由に設定できる。
また、エアーハンマー70に加えて、ワークWの下側から上向きに打撃力を付与するエアーハンマーを備えた構成としてもよい。
また、上記構成に加えて、ワークW内の鋳砂を直接研削する手段が備えられていてもよい。
また、基台50を移動させる移動手段の構成は特に限定されず、例えばプッシャーハンマーを使用してもよい。また、移動手段としては、例えばピストン81と同様のものを基台衝突壁部90側に配してもよいし、また例えば走行面SLやレール部材10が片側に傾斜しており、基台50が自重によって走行するする構成であっても構わない。
また、エアーハンマー70は基台50の移動と同期する構成であるが、ワークWの形状や基台50の移動距離に合わせて、枠体60に対して移動不可能に固定されていても構わない。
また、基台50の構成において、例えばコイルスプリングが1種ずつであってもよいし3種以上で構成されていても構わない。
また、エアーハンマー70は、従来の鋳砂除去装置に用いられる鋳砂落とし用の打撃装置が好適に適用可能であり、いわゆるシェーカーハンマーやストレートハンマーが使用可能である。また、このような種別の異なるハンマーを使用することで互いに異なる振動をワークWに与えることが可能となる。
また、ピストン81の移動速度は、適宜、調整可能であり、ワークWの種類によって鋳砂の除去に最適な条件を設定することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 鋳砂除去装置
21 車輪部
50 基台
60 枠体
70 エアーハンマー(ワーク打撃力付与手段)
80 シリンダー(基台衝突手段)
81 ピストン(基台衝突手段)
90 基台衝突壁部
S 鋳砂
SL 走行面
W ワーク

図1
図2
図3
図4