(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】往復移動機構
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
A61H7/00 323E
(21)【出願番号】P 2019224359
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】592009214
【氏名又は名称】大東電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田口 耕治
(72)【発明者】
【氏名】沼田 康一
(72)【発明者】
【氏名】清水 新策
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3176336(JP,U)
【文献】特開2000-262575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース体と、回転駆動力を発生する駆動部と、前記回転駆動力を往復移動に変換して、前記ケース体を一方側と他方側との間で往復移動させる往復移動変換部と、を有している往復移動機構において、
前記往復移動変換部は、前記回転駆動力を偏心回転に変換し、前記偏心回転を前記一方側と他方側との間での往復移動に変換する構成とされてい
て、
前記往復移動変換部は、前記ケース体に連結され、前記回転駆動力により回転する第1軸体と、前記第1軸体が取り付けられ、当該第1軸体の回転軸心周りに回転する回転部材と、前記回転部材に取り付けられ、前記第1軸体の回転軸心から外れた位置に設けられている第2軸体と、前記第2軸体を前記一方側と他方側を向く方向に対して交差する方向で往復移動させる第1スライダ部と、を有しており、
前記ケース体を前記一方側と他方側との間で往復移動させる第2スライダ部が設けられていて、前記第1軸体の回転と前記回転部材の偏心回転とを、前記第1スライダ部での前記第2軸体の往復移動と前記第2スライダ部での前記ケース体の往復移動に置き換え、
前記ケース体の側方には、軸心が前記一方側と他方側を向く方向に対して交差する方向を向き且つ外側に突出状の棒材が設けられ、該棒材の先端にはローラが取り付けられ、前記第2スライダ部は前記回転部材より前方向に設けられた所定の長溝を有し、前記長溝には前記ローラが前記一方側と他方側を向く方向に移動自在なように嵌まり込む
ことを特徴とする往復移動機構。
【請求項2】
前記回転駆動力が伝達されると、前記回転部材が前記第1軸体の回転軸心周りに回転し、
前記第2軸体は、前記第1軸体の周りを公転するように回転し、
前記第1スライダ部は、前記第2軸体を前記一方側と他方側を向く方向に対して交差する方向の間で往復移動させ、
前記回転部材は、前記第1スライダ部での前記第2軸体の往復移動により、当該第2軸体の軸心周りに偏心回転するようになり、
前記第1軸体は、前記回転部材が偏心回転することにより、前記一方側と他方側との間で往復移動し、
前記ケース体は、前記第1軸体を介して、前記一方側と他方側との間で往復移動する構成とされている
ことを特徴とする請求項
1に記載の往復移動機構。
【請求項3】
前記往復移動変換部の動作を駆動状態と非駆動状態とで切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項
1又は2に記載の往復移動機構。
【請求項4】
前記往復移動変換部の動作を駆動状態と非駆動状態とで切り替え可能とすべく、前記回転部材を回転又は停止させる切替手段を有している
ことを特徴とする請求項
3に記載の往復移動機構。
【請求項5】
前記切替手段は、前記駆動部が発生する前記回転駆動力を前記回転部材へ伝達又は非伝達とするクラッチ部材を有し、
前記クラッチ部材は、前記回転駆動力により回転する駆動軸が一方方向に回転した場合に前記第1軸体へ当該回転駆動力を伝達し、前記駆動軸が逆方向に回転した場合に前記第1軸体へ当該回転駆動力の伝達を規制する「一方向クラッチ」で構成されている
ことを特徴とする請求項
4に記載の往復移動機構。
【請求項6】
前記駆動部には、駆動モータが一つ備えられていることを特徴とする請求項1~
5のいずれかに記載の往復移動機構。
【請求項7】
前記回転部材の回転角度を検出し、その検出結果に基づいて、前記ケース体の位置を検出する位置検出部を有している
ことを特徴とする請求項
1~6のいずれかに記載の往復移動機構。
【請求項8】
前記回転部材の周縁であって、当該回転部材を覆うカバー体との間に、滑り止めを配備していることを特徴とする請求項
1~7のいずれかに記載の往復移動機構。
【請求項9】
前記往復移動変換部により施療子を移動させて当該施療子が所定の位置又は位相に来た際には、所定のマッサージ機構の動きを制限するように構成されている
ことを特徴とする請求項
1~7のいずれかに記載の往復移動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、マッサージ装置等の施療装置や、バランス運動等を付与する運動装置などを往復移動させる往復移動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1に示すように、仰向けに寝た使用者の首筋、肩部、背部、臀部、下肢などの施療部に対してマッサージ動作を付与することが可能なベッド型のマッサージ機がある。この特許文献1に示すベッド型のマッサージ機は、ベッド台に、ローラが複数設けられた台車枠が配備されていて、その台車枠がベッド台の長手方向に沿って移動する構成となっている。台車枠を長手方向に移動させると、台車枠内に設けられた各ローラが長手方向に移動することにより、ベッド台上に寝た状態の使用者の施療部に対してマッサージ動作を付与するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、特許文献1のマッサージ機は、ベッド台の長手方向に長尺の台車枠を備え、その台車枠内の長手方向に複数のローラ(マッサージ部)が設けられている(同文献の
図1や
図8など参照)。このベッド型のマッサージ機は、仰向けに寝た使用者の首筋、肩部、背部、臀部、下肢などの施療部全体に対してマッサージ動作を付与する構成である。つまり、特許文献1のベッド型のマッサージ機は、一部分の施療部だけに対してマッサージ動作を付与することが可能なものではない。
【0005】
しかしながら、近年、このようなベッド型のマッサージ機においては、十分なマッサージ効果を得るため、所望の施療部の範囲(例えば、首筋、肩部、背部の一部のみなど)において、マッサージ部を備えるマッサージ装置(施療装置)を長手方向に往復移動させながら、その施療部に対してマッサージを行いたいという要望が、使用者から挙がってきている。
【0006】
具体的には、例えば、使用者の首筋の上側から肩部の上側にかけての施療部に対して、マッサージ装置を長手方向に往復移動させながらマッサージを行うといったことが挙げられる。
また、所望の位置でマッサージ装置を停止させて、その部位に対してマッサージを行いたいなどの要望も、使用者から上がってきている。すなわち、部分的にマッサージをしたいという要望が上がっている。
【0007】
具体的には、例えば、使用者の首筋の長手方向中央あたりでマッサージ装置を停止させて、その停止させた位置に対応する首筋の施療部に対してマッサージを行うといったことが挙げられる。
つまり、特許文献1のベッド型のマッサージ機は、近年使用者から挙がってきている要望に応えるものとなっていない。すなわち、上記の要望に応えるためには、マッサージ装置の往復移動の駆動と停止を切り替えることができる構成を備えることが必要となる。
【0008】
ところで、運動装置においても、その運動装置を往復移動させたり停止させることを切り替えることで、より効果的なバランス運動を付与することができるようにしてほしいという要望も挙がってきている。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、施療装置や運動装置などの往復移動と停止を容易に切り替えることができる往復移動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明にかかる往復移動機構は、ケース体と、回転駆動力を発生する駆動部と、前記回転駆動力を往復移動に変換して、前記ケース体を一方側と他方側との間で往復移動させる
往復移動変換部と、を有している往復移動機構において、前記往復移動変換部は、前記回転駆動力を偏心回転に変換し、前記偏心回転を前記一方側と他方側との間での往復移動に変換する構成とされていることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記往復移動変換部は、前記ケース体に連結され、前記回転駆動力により回転する第1軸体と、前記第1軸体が取り付けられ、当該第1軸体の回転軸心周りに回転する回転部材と、前記回転部材に取り付けられ、前記第1軸体の回転軸心から外れた位置に設けられている第2軸体と、前記第2軸体を前記一方側と他方側を向く方向に対して交差する方向で往復移動させる第1スライダ部と、を有しているとよい。
【0011】
好ましくは、前記回転駆動力が伝達されると、前記回転部材が前記第1軸体の回転軸心周りに回転し、前記第2軸体は、前記第1軸体の周りを公転するように回転し、前記第1スライダ部は、前記第2軸体を前記一方側と他方側を向く方向に対して交差する方向の間で往復移動させ、前記回転部材は、前記第1スライダ部での前記第2軸体の往復移動により、当該第2軸体の軸心周りに偏心回転するようになり、前記第1軸体は、前記回転部材が偏心回転することにより、前記一方側と他方側との間で往復移動し、前記ケース体は、前記第1軸体を介して、前記一方側と他方側との間で往復移動する構成とされているとよい。
【0012】
好ましくは、前記ケース体を前記一方側と他方側との間で往復移動させる第2スライダ部が設けられていて、前記第1軸体の回転と前記回転部材の偏心回転とを、前記第1スライダ部での前記第2軸体の往復移動と前記第2スライダ部での前記ケース体の往復移動に置き換えるとよい。
好ましくは、前記往復移動変換部の動作を駆動状態と非駆動状態とで切り替え可能に構成されているとよい。
【0013】
好ましくは、前記往復移動変換部の動作を駆動状態と非駆動状態とで切り替え可能とすべく、前記回転部材を回転又は停止させる切替手段を有しているとよい。
好ましくは、前記切替手段は、前記駆動部が発生する前記回転駆動力を前記回転部材へ伝達又は非伝達とするクラッチ部材を有し、前記クラッチ部材は、前記回転駆動力により回転する駆動軸が一方方向に回転した場合に前記第1軸体へ当該回転駆動力を伝達し、前記駆動軸が逆方向に回転した場合に前記第1軸体へ当該回転駆動力の伝達を規制する「一方向クラッチ」で構成されているとよい。
【0014】
好ましくは、前記駆動部には、駆動モータが一つ備えられているとよい。
好ましくは、前記回転部材の回転角度を検出し、その検出結果に基づいて、前記ケース体の位置を検出する位置検出部を有しているとよい。
好ましくは、前記回転部材の周縁であって、当該回転部材を覆うカバー体との間に、滑り止めを配備しているとよい。
【0015】
好ましくは、前記往復移動変換部により施療子を移動させて当該施療子が所定の位置又は位相に来た際には、所定のマッサージ機構の動きを制限するように構成されているとよい。
なお、本発明にかかる往復移動機構の最も好ましい実施の形態は、ケース体と、回転駆動力を発生する駆動部と、前記回転駆動力を往復移動に変換して、前記ケース体を一方側と他方側との間で往復移動させる往復移動変換部と、を有している往復移動機構において、前記往復移動変換部は、前記回転駆動力を偏心回転に変換し、前記偏心回転を前記一方側と他方側との間での往復移動に変換する構成とされていて、前記往復移動変換部は、前記ケース体に連結され、前記回転駆動力により回転する第1軸体と、前記第1軸体が取り付けられ、当該第1軸体の回転軸心周りに回転する回転部材と、前記回転部材に取り付けられ、前記第1軸体の回転軸心から外れた位置に設けられている第2軸体と、前記第2軸体を前記一方側と他方側を向く方向に対して交差する方向で往復移動させる第1スライダ部と、を有しており、前記ケース体を前記一方側と他方側との間で往復移動させる第2スライダ部が設けられていて、前記第1軸体の回転と前記回転部材の偏心回転とを、前記第1スライダ部での前記第2軸体の往復移動と前記第2スライダ部での前記ケース体の往復移動に置き換え、前記ケース体の側方には、軸心が前記一方側と他方側を向く方向に対して交差する方向を向き且つ外側に突出状の棒材が設けられ、該棒材の先端にはローラが取り付けられ、前記第2スライダ部は前記回転部材より前方向に設けられた所定の長溝を有し、前記長溝には前記ローラが前記一方側と他方側を向く方向に移動自在なように嵌まり込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、施療装置や運動装置などの往復移動と停止を容易に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明にかかる往復移動機構を備える肩部マッサージ装置を内蔵したマッサージ機の概略を模式的に示した斜視図である。
【
図2】本発明の往復移動機構と肩部マッサージ装置(施療装置)の概略を模式的に示した斜視図である。
【
図3】本発明の往復移動機構の概略を模式的に示した分解図である。
【
図4】本発明の往復移動機構の動作を詳細に示した正面図である。
【
図5】本発明の往復移動機構による肩部マッサージ装置(ケース体)の往復移動の動きを詳細に示した側面図である。
【
図6】本発明の往復移動機構の構成を模式的に示した図である。
【
図7】枕体に内蔵される肩部マッサージ装置の概略を模式的に示した図である。
【
図8】背部体に内蔵される背部マッサージ装置の概略を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる往復移動機構5の実施形態を、図を参照して説明する。
なお、本発明の往復移動機構5の構成を説明するにあたって、本明細書ではベッド型のマッサージ機1内の肩部マッサージ装置33(施療装置)に備えられた往復移動機構5を例に挙げて説明する。以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。すなわち、本発明の往復移動機構5は、様々なマッサージ装置や運動装置に適用可能である。
【0019】
また、図面に関して、見やすくするため、構成部品の一部を省略したり、仮想線などを用いて描いている。また以降、マッサージ機1を説明する際の方向については、図面に示す通りである。
すなわち、マッサージ機1の長手方向において、枕体2側を上側(一方側)とし、下部体4側を下側(他方側)とする。またそのとき、使用者が床面Fから見上げた方向を、天井方向乃至は前方向とする。これは、マッサージ機1上に、仰向けに寝た使用者から見た方向と一致する。
【0020】
図1に、本発明にかかる往復移動機構5を備えた肩部マッサージ装置33を内蔵するマッサージ機1を示す。
図1に示すように、本実施形態のマッサージ機1は、床面Fやベッドなど平らな面上に敷設でき、例えば仰臥した使用者の首筋や肩部などの部位や、肩胛骨部から腰部にかけての背部、臀部、腿裏部などの下肢などの施療部に対して、マッサージ動作を付与することができるものである。
【0021】
本実施形態のマッサージ機1の左右方向の長さ(幅)は、使用者の肩幅よりやや大きいものである。また、このマッサージ機1の長手方向の長さ(全長)は、およそ使用者の頭部から下肢にかけての長さに相当するものである。本実施形態のマッサージ機1は、長手方向に三つに分割された分割体となっている。
すなわち、本実施形態のマッサージ機1は、仰向けに寝た使用者の頭部、首筋、肩部などが接する枕体2と、この枕体2の下側に接続されていて、使用者の肩胛骨部~腰部にかけての背部が接する背部体3と、この背部体3の下側に接続されていて、使用者の臀部や腿裏部などの下肢が接する下部体4と、を有している。
【0022】
枕体2には、使用者の首筋や肩部などの施療部に対して、施療子36を押し当てて掴み揉みマッサージ動作や叩きマッサージ動作などを行う肩部マッサージ装置33が収容されている。
肩部マッサージ装置33は、先端に施療子36を備えた肩部アーム部材34と、回転駆動力を出力する駆動部7と、出力された回転駆動力により回転する駆動軸9と、その駆動軸9の回転を揺動運動に変換して、肩部アーム部材34を揺動させる揺動変換部35と、を有している。なお、マッサージ機1の構成については、後ほど説明する。
【0023】
まず、本発明の往復移動機構5の構成及び動作について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図2~
図6に、本発明にかかる往復移動機構5の構成及び、その往復移動機構5によるケース体6(肩部マッサージ装置33)の往復移動の様子を示す。
図2~
図6に示すように、本発明の往復移動機構5は、枕体2内の肩部マッサージ装置33に備えられ、この肩部マッサージ装置33を一方側と他方側との間で、往復移動させる機構である。なお、本実施形態においては、一方側と他方側の方向を、上下方向(長手方向)としている。
【0024】
往復移動機構5は、少なくとも、肩部アーム部材34や揺動変換部35などを収容するケース体6と、回転駆動力を発生する駆動部7と、回転駆動力を往復移動に変換して、ケース体6を一方側と他方側との間で往復移動させる往復移動変換部8と、を有している。
図2に示すように、ケース体6は、枕体2内において、浮遊した状態で、上下方向(長手方向)に移動可能に備えられている。ケース体6は、矩形状の筐体であって、使用者の
首筋や肩部などの施療部に対してマッサージ動作を付与する肩部アーム部材34と、回転駆動力を出力する駆動部7と、回転駆動力により回転する駆動軸9と、その駆動軸9の回転を揺動運動に変換して、肩部アーム部材34を揺動させる揺動変換部35と、を収容する。
【0025】
駆動部7は、回転駆動力を出力する駆動モータ10と、回転駆動力を所定の速度に減速するギアケース11と、を有している。駆動部7には、駆動モータ10が一つ備えられている。このギアケース11は、ケース体6に設けられている。駆動部7は、駆動モータ10から出力した回転駆動力を、ギアケース11を介して駆動軸9へ伝達する。
駆動軸9は、軸心が左右方向を向き且つ、ケース体6の左端部から右端部に掛け渡されるように配備されている。駆動軸9の左端部と右端部には、揺動変換部35が取り付けられている。なお、本実施形態の駆動軸9は、正回転と逆回転する軸となっている。
【0026】
駆動軸9の長手方向中途部(本実施形態では、
図2において紙面に向かってやや右寄り)においては、駆動部7のギアケース11に対して貫通した状態で配備されている。駆動軸9の長手方向中央においては、往復移動変換部8へ回転駆動力を伝達するギアケース12に対して、貫通した状態で配備されている。
このギアケース12は、ケース体6に設けられている。すなわち、往復移動変換部8へ回転駆動力を伝達するギアケース12と、駆動部7のギアケース11は、ケース体6内において左右方向に並んで設けられている。
【0027】
また、駆動軸9の長手方向中央には、ウォームギア13が取り付けられている。そのウォームギア13は、往復移動変換部8へ回転駆動力を伝達するギアケース12内に格納され、駆動軸9の回転と共に回転する。ウォームギア13は、ギアケース12内のウォームホイール14と噛み合っている。そのウォームホイール14は、往復移動変換部8を構成する第1軸体15に取り付けられている。つまり、ウォームホイール14が回転すると第1軸体15も回転するため、回転駆動力は往復移動変換部8へ伝達されることとなる。
【0028】
図3~
図6などに示すように、往復移動変換部8は、駆動部7からの回転駆動力を偏心回転に変換し、その偏心回転を上下方向(長手方向)の往復移動に変換する構成とされている。
往復移動変換部8は、ケース体6に連結され、回転駆動力により回転する第1軸体15と、その第1軸体15に取り付けられ、当該第1軸体15の回転軸心周りに回転する回転部材16と、その回転部材16に取り付けられ、第1軸体15の回転軸心から外れた位置に設けられている第2軸体17と、その第2軸体17を一方側と他方側を向く方向に対して交差する方向において案内する第1スライダ部18と、を有している。
【0029】
第1軸体15は、軸心が前後方向(鉛直方向)を向き且つ、往復移動変換部8へ回転駆動力を伝達するギアケース12(ケース体6)に対して、貫通した状態で配備されている。この第1軸体15は、ケース体6から後側(床面F側)に向かって突出するように設けられる。
第1軸体15の前端部(天井側)には、ウォームホイール14が取り付けられている。一方で、第1軸体15の後端部(床面F側)には、回転部材16が取り付けられている。第1軸体15は、ウォームホイール14から伝達される回転駆動力により回転すると共に、回転部材16を回転させる。
【0030】
回転部材16は、ケース体6の下方に配備され、第1軸体15の回転軸心周りに回転する部材である。回転部材16は、なお、本実施形態においては、円盤状の部材で形成されている。
回転部材16(円盤部材)の中心には、前後方向(鉛直方向)に貫通した孔部20が設けられている。この孔部20が、回転部材16の回転軸心となる。つまり、回転部材16の回転軸心と、第1軸体15の回転軸心は、同一軸心となる。
【0031】
また、回転部材16の回転軸心から外れた位置に、前後方向(鉛直方向)に貫通した孔部21が設けられている。この孔部21には、第2軸体17が挿入される。
なお、回転部材16は、本実施形態のように円盤状の部材でもよいし、平板状の部材(例えば、多角形状の板材)であってもよいし、両端部に第1軸体15と第2軸体17を設けることができる棒状の部材(クランク形状となるロッド部材)であってもよい。
【0032】
第2軸体17は、回転部材16に取り付けられ、第1軸体15の回転軸心から外れた位置に設けられている。第2軸体17は、軸心が前後方向(鉛直方向)を向き且つ、回転部材16に対して貫通した状態で配備されている。
本実施形態においては、第2軸体17は、前端部(天井側)が孔部21に嵌入されることにより、回転部材16(円盤部材)に取り付けられている。つまり、第2軸体17は、回転部材16から後側(床面F側)に向かって突出するように設けられる。また、本実施形態においては、第2軸体17の後端部(床面F側)には、ベアリング22が取り付けられている。
【0033】
第2軸体17の軸心は、第1軸体15の軸心と同一の軸心とはなっていない。すなわち、第2軸体17の軸心は、第1軸体15の軸心と同じ方向を向くが、第1軸体15の軸心から外れた位置に設けられる。この構成により、第2軸体17は、回転部材16が回転すると、一定の距離をおいて第1軸体15の周りを公転するように回転する。
なお、第1軸体15と回転部材16と第2軸体17に関して、本実施形態では別々の部材として説明したが、一体形成し一つの部材としてもよい。
【0034】
第1スライダ部18は、回転部材16の下方であって、枕体2の後面(底面)に設けられている。第1スライダ部18は、第1軸体15が一方側と他方側との間(上下方向)で往復移動する方向に対して、交差する方向を向く長溝19を有している。この長溝19には、第2軸体17が摺動自在に嵌まり込むようになっている。つまり、第1スライダ部18は、長溝19内において、第2軸体17を往復運動させるものとなっている。
【0035】
なお、本実施形態においては、一方側と他方側を向く方向に対して交差する方向を、左右方向(幅方向)としている。
本実施形態の長溝19は、左右方向(幅方向)に長いものとなっている。また、本実施形態においては、長溝19には、第2軸体17の後端部に取り付けられているベアリング22が、左右方向に摺動自在に嵌まり込むようになっている。つまり、ベアリング22は、長溝19内に摺動自在に嵌まり込むスライダといえる。
【0036】
本実施形態の長溝19の幅(上下方向の長さ)は、ベアリング22の外径とほぼ同じものとなっている。一方で、長溝19の長さ(左右方向の長さ)は、ケース体6(肩部マッサージ装置33)の上下方向の移動範囲により決定される。
さて、第1軸体15と第2軸体17について着目すると、第2軸体17は第1軸体15の周りを周回するように回転する。一方で、第2軸体17と長溝19について着目すると、第2軸体17は長溝19内を左右方向に往復移動する。
【0037】
すなわち、第2軸体17が長溝19内を左右方向に往復移動することにより、その第2軸体17が上下方向へ往復移動することが規制される。回転部材16は、長溝19内を左右方向に往復移動する第2軸体17の回転軸心周りに偏心回転するようになる。
その偏心回転する回転部材16により、第1軸体15が上下方向に往復移動するようになる。この第1軸体15の往復移動により、ケース体6(肩部マッサージ装置33)が上下方向に往復移動する。
【0038】
また、往復移動変換部8は、ケース体6を上下方向に案内する第2スライダ部23を有している。第2スライダ部23は、ケース体6の左右外側であって、枕体2内の左右の側壁面にそれぞれ設けられている。その第2スライダ部23は、枕体2の底面より、所定の高さの位置に設けられている。
ところで、ケース体6の側方には、軸心が左右方向を向き且つ、外側に突出状の棒材24が設けられている。棒材24は、ケース体6の略四隅のそれぞれに設けられている。その棒材24の先端には、回転自在のローラ25が取り付けられている。
【0039】
本実施形態の第2スライダ部23は、上下方向に長い長溝26を有している。長溝26は、枕体2内の左側壁面と右側壁面に、それぞれ設けられている。この長溝26には、ケース体6の左右側方の棒材24に取り付けられたローラ25が上下方向に摺動自在に嵌まり込むようになっている。つまり、ローラ25は、長溝26内に摺動自在に嵌まり込むスライダといえる。
【0040】
長溝26の幅(鉛直方向の長さ)は、ローラ25の外径とほぼ同じものとなっている。一方で、長溝26の長さ(上下方向の長さ)は、ケース体6(肩部マッサージ装置33)の上下方向の移動範囲により決定される。
すなわち、ケース体6は、枕体2内において、上下方向に長い長溝26(第2スライダ部23)に、ケース体6の左右側方に設けられたローラ25が上下方向に摺動自在に嵌まり込むことにより、浮遊した状態で、上下方向に移動可能に備えられている。
【0041】
以上述べた本発明の往復移動機構5は、第1軸体15の回転と回転部材16の偏心回転とを、第1スライダ部18(長溝19)での第2軸体17の往復移動と第2スライダ部23(長溝26)でのケース体6の往復移動に置き換える。すなわち、本発明の往復移動機構5は、二つの回転運動を、二つのスライド運動に変換するスライダクランク機構であるといえる。
【0042】
さて、本発明の往復移動機構5は、往復移動変換部8の動作を駆動状態と非駆動状態とで切り替え可能に構成されている。すなわち、往復移動機構5は、ケース体6(肩部マッサージ装置33)の往復移動の駆動と停止を切り替え可能に構成とされている。
往復移動機構5は、往復移動変換部8の動作を駆動状態と非駆動状態とで切り替え可能とすべく、回転部材16を回転又は停止させる切替手段を有している。切替手段は、駆動部7が発生する回転駆動力を回転部材16へ伝達又は非伝達とするクラッチ部材27を有している。
【0043】
クラッチ部材27は、回転駆動力により回転する駆動軸9が一方方向に回転した場合に第1軸体15へ当該回転駆動力を伝達し、駆動軸9が逆方向に回転した場合に第1軸体15へ当該回転駆動力の伝達を規制する「一方向クラッチ」で構成されている。
本実施形態のクラッチ部材27は、駆動軸9の長手方向中央に取り付けられたウォームギア13の内部に設けられている。クラッチ部材27は、駆動軸9の回転方向によって、クラッチ部材27の内部に設けられたギアの噛み合いを切り替えることによって、ウォームギア13による第1軸体15への動力伝達を、伝達乃至は非伝達とする。
【0044】
例えば、駆動軸9の回転のうち、一方方向の回転(正回転)のときに、クラッチ部材27の内部に設けられたギアを噛み合った状態にして、駆動部7から出力された回転駆動力を、駆動軸9とウォームギア13を介して、第1軸体15へ伝達する。これにより、回転駆動力を回転部材16へ伝達とする。
すなわち、クラッチ部材27は、駆動軸9とウォームギア13の動力伝達を繋げることで、第1軸体15を介して回転駆動力を回転部材16へ伝達し、ケース体6(肩部マッサージ装置33)を上下方向へ往復移動させる。
【0045】
一方で、駆動軸9の回転を逆方向に回転させたとき、ウォームギア13の内部に設けられたギアを噛み合わない状態にして駆動軸9を空転させて、ウォームギア13の回転を停止することで、駆動部7から出力された回転駆動力を、第1軸体15へ伝達しないようにする。これにより、回転駆動力は回転部材16へ非伝達となる。
すなわち、クラッチ部材27は、駆動軸9とウォームギア13の動力伝達を切断することで、第1軸体15が回転しなくなることにより、回転駆動力が回転部材16へ非伝達となり、ケース体6(肩部マッサージ装置33)が上下方向へ往復移動することを停止する。
【0046】
また、本発明の往復移動機構5は、回転部材16の回転角度を検出し、その検出結果に基づいて、ケース体6(肩部マッサージ装置33)の位置を検出する位置検出部を有している。
位置検出部は、図示はしないが、例えば回転部材16上に、回転部材16の円弧に沿うように湾曲した側壁部を設けておき、その側壁部が所望の位置を通過したとき、光センサでその位置を検出することで、その回転部材16の回転角度を検出する。検出された回転部材16の回転角度に基づいて、ケース体6の上下方向の位置を検出する。なお、位置検出部としては、ロータリーエンコーダなどを採用するとよい。
【0047】
例えば、位置検出部は、側壁部の端部が光センサを通過したとき、回転部材16の回転角度が検出され、その検出結果に基づいて、ケース体6(肩部マッサージ装置33)が移
動範囲の一方端(上端)、又は、他方端(下端)に位置していると検出するとよい。
また、位置検出部は、回転部材16が所定の位置にきたとき、その回転角度を検出し、その検出結果に基づいて、ケース体6(肩部マッサージ装置33)の所定位置(例えば、上下方向の中間位置など)を検出するようにしてもよい。
【0048】
次いで、本発明の往復移動機構5の作動態様について、
図4、
図5などを参照しながら説明する。
図4、
図5の(A)に示す、ケース体6が往復移動可能範囲の上端に位置するところから、(B)~(D)を経て一往復して(A)の位置に戻る、一往復の動作について説明する。
【0049】
図4、
図5の(A)に示すように、ケース体6(肩部マッサージ装置33)が往復移動可能範囲の上端に位置しているとき、回転部材16(円盤部材)と第1軸体15は上側に位置している。このとき、第2軸体17は、第1軸体15より下側で且つ、長溝19内(第1スライダ部18)の左右方向中央に位置している。つまり、第2軸体17が第1軸体15より下方に位置することにより、平面視で、第1軸体15と第2軸体17は上下方向に一列に並ぶように配置される。
【0050】
ここで、駆動部7(駆動モータ10)から回転駆動力を出力する。出力された回転駆動力は、ギアケース11内に入力され、駆動軸9に伝達される(
図3参照)。駆動軸9は、一方方向に回転する(正回転する)。回転駆動力は、ギアケース12内で噛み合っているウォームギア13とウォームホイール14を介して、第1軸体15に伝達される。第1軸体15は、平面視で右方向に(半時計周り)回転する。
【0051】
図4、
図5の(B)に示すように、回転駆動力が伝達されると、回転部材16は第1軸体15の回転軸心周りに回転する。つまり、回転部材16は、平面視で右方向に(半時計周り)回転する。しかし、第2軸体17に取り付けられたベアリング22が長溝19内を左方向に移動することにより、回転部材16は下方に移動する。
なお、この第2軸体17は、第1軸体15の回転軸心周りに回転しているようにも見える。つまり、回転部材16は、第1軸体15の回転軸心周りに偏心回転するようになる。
【0052】
第2軸体17のベアリング22が長溝19内の左端に移動すると、回転部材16がさらに下方に移動することにより、第1軸体15がさらに下方に移動する。このとき、第2軸体17が第1軸体15の左側に位置することにより、平面視で、第1軸体15と第2軸体17は左右方向に一列に並ぶように配置される。
第1軸体15が下方へ移動することにより、ローラ25が長溝26(第2スライダ部23)に沿って下方へ移動し、ケース体6(肩部マッサージ装置33)が上下方向の中央に位置するようになる。
【0053】
そして、第2軸体17のベアリング22が長溝19内の左端に到達した後、その第2軸体17は右方向に移動するようになる。
図4、
図5の(C)に示すように、第2軸体17のベアリング22が長溝19内の左端から左右方向中央に移動すると、回転部材16がさらに下方に移動することにより、第1軸体15は往復移動可能範囲の下端に移動する。
【0054】
このとき、第2軸体17が第1軸体15より上方に位置することにより、平面視で、上下方向に一列に並ぶように配置される。第1軸体15が下端側へ移動することにより、ローラ25が長溝26に沿って下方へ移動し、ケース体6(肩部マッサージ装置33)が往復移動可能範囲の下端に位置する。
その後、第1軸体15の回転によって、第2軸体17はさらに右方向に移動し、ベアリング22が長溝19内の右方向に移動する。これにより、回転部材16が上方に移動し、第1軸体15が上方に移動する。ローラ25が長溝26に沿って上方へ移動し、ケース体6(肩部マッサージ装置33)が上方へ移動する(上昇に転じる)。
【0055】
図4、
図5の(D)に示すように、第2軸体17のベアリング22が長溝19内の右端に移動すると、回転部材16がさらに上方に移動することにより、第1軸体15がさらに上方に移動する。このとき、第2軸体17が第1軸体15の右側に位置することにより、平面視で、第1軸体15と第2軸体17は左右方向に一列に並ぶように配置される。
第1軸体15が上方へ移動することにより、ローラ25が長溝26に沿って上方へ移動し、ケース体6(肩部マッサージ装置33)が上下方向の中央に位置するようになる。
【0056】
そして、第2軸体17のベアリング22が長溝19内の右端に到達した後、その第2軸体17は左方向に移動するようになる。
第2軸体17のベアリング22が長溝19内の右端から左右方向中央に移動すると、回転部材16がさらに上方に移動することにより、第1軸体15がさらに上方に移動する。第1軸体15が上端側へ移動することにより、ローラ25が長溝26に沿って上方へ移動しケース体6(肩部マッサージ装置33)が往復移動可能範囲の上端(
図4、
図5に示す(A)の位置)に戻る。
【0057】
すなわち、駆動部7の回転駆動力が伝達されると、第1軸体15の回転により、回転部材16が第1軸体15の回転軸心周りに回転する。回転部材16に設けられた第2軸体17は、第1軸体15の周りを公転するように回転する。また、第2軸体17(ベアリング22)は、第1スライダ部18の長溝19内において、左右方向に往復移動する。回転部材16は、第1軸体15の回転軸心周りに回転することと、第2軸体17(ベアリング22)が長溝19内で左右方向に往復移動することにより、第2軸体17の軸心周りに偏心回転するようになる。
【0058】
第1軸体15は、回転部材16(円盤部材)が偏心回転することにより、上下方向間で往復移動する。その第1軸体15を介して、ローラ25が第2スライダ部23の長溝26に沿うことにより、ケース体6(肩部マッサージ装置33)は往復移動可能範囲の上端と下端間で往復移動する。
以上述べた本発明の往復移動機構5によれば、肩部マッサージ装置33(ケース体6)の往復移動と停止を容易に切り替えることができる構成を備えることで、使用者の様々な部位の施療部に対してマッサージを行うことができる。
【0059】
例えば、本発明の往復移動機構5を駆動させて、肩部マッサージ装置33(ケース体6)を上下方向に往復移動させながら、使用者の首筋の上側から肩部の上側にかけての施療部に対して、十分なマッサージ効果を付与することができる。
また、本発明の往復移動機構5を駆動させて、例えば使用者の首筋の長手方向中央あたりでマッサージ装置を停止させて、その停止させた位置に対応する首筋の施療部に対して、十分なマッサージ効果を付与することができる。
【0060】
さらには、背が低かったり、背が高かったりなど様々な体型の使用者が、上下方向に長いマッサージ機1を使用しても、本発明の往復移動機構5を駆動させてケース体6を上下方向に移動させることにより、使用者それぞれの肩部や首筋などの施療部に対する肩部マッサージ装置33の位置を容易に合わせることも可能となる。
また、本発明の往復移動機構5を運動装置に備えた場合には、その往復移動機構5を駆動させて運動装置をより大きく往復移動させたり停止させることにより、使用者に対してより効果的なバランス運動を付与することができる。
【0061】
ここで、本実施形態のマッサージ機1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態のマッサージ機1は、ベッド型であって、枕体2と背部体3と下部体4とを有している。
枕体2は、使用者の頭部や首筋などに沿うように、床面F上に長手方向を向いて寝かせるように設置されるものである。この枕体2は、幅が使用者の肩幅よりやや広く且つ、天井方向(鉛直方向)の厚みが幅方向(左右方向)に比して薄い板形状(プレート形状)に形成された部材である。
【0062】
また、枕体2は、内部が空洞となった筐体である。この枕体2には、使用者の首筋や肩部などの施療部に対してマッサージ動作を付与する肩部マッサージ装置33が収容されている。枕体2の幅方向の中央には、天井方向(前方向)に向かって開口する開口部28が形成されている。
開口部28には、肩部マッサージ装置33の肩部アーム部材34や施療子36が天井方向に突出するように配備される。なお、開口部28は、肩部アーム部材34や施療子36が使用者の頭部や首筋や肩部などの施療部に直接当たらないように、布状の表カバー体(
図示せず)などにより隙間なく覆われている。この枕体2の下側には、背部体3が配備されている。
【0063】
背部体3は、使用者の肩部下側~肩胛骨部~腰部にかけての背部に沿うように、床面F上に長手方向を向いて寝かせるように設置されるものである。また、背部体3は、床面F上において、枕体2の下側(他方側)に長手方向に沿って配備される。
背部体3は、幅が使用者の肩幅よりやや広く且つ、天井方向の厚みが幅方向に比して薄い板形状(プレート形状)に形成された部材である。また、背部体3は、内部が空洞となった筐体である。
【0064】
背部体3の幅方向の中央には、天井方向に向かって開口する開口部29が形成されている。この部体3には、使用者の肩胛骨部から腰部にかけての背部(施療部)に対してマッサージ動作を付与する背部マッサージ装置37が収容されている。
開口部29には、背部マッサージ装置37の背部アーム部材38や施療子42が天井方向に突出するように配備される。なお、開口部29は、背部アーム部材38や施療子42が使用者の背部の施療部に直接当たらないように、布状の表カバー体(図示せず)などにより隙間なく覆われている。また、本実施形態においては、背部体3の側方に各マッサージ装置33,37を駆動させる操作部30(操作スイッチ)が設けられている。
【0065】
枕体2の下端(他方端)と背部体3の上端(一方端)は、揺動支持部31を介して、折り曲げ自在に連結されている。この揺動支持部31は、左右両側に一対設けられていて、枕体2を背部体3に対して所定の方向に揺動させて所定の姿勢に切り替える構成を備えている。揺動支持部31の支持軸の軸心回りに枕体2を回転させることにより、枕体2を前方向(天井側)へ傾斜させたり、後方向(床面F側)へ揺動させることができる。
【0066】
なお、枕体2の傾斜角度を所定の角度に切り替えて、当該角度で係合することができる角度変更部(図示せず)が設けられていると好ましい。背部体3の下側には、下部体4が配備されている。
下部体4は、使用者の臀部や裏腿部などの下肢に沿うように、床面F上に長手方向を向いて寝かせるように設置されるものである。また、下部体4は、床面F上において、下部体4の下側(他方側)に長手方向に沿って配備される。
【0067】
この下部体4は、幅が使用者の下肢全体の幅よりやや広く且つ、天井方向の厚みが幅方向に比して薄い板形状(プレート形状)に形成された部材である。図示はしないが、下部体4に関し、例えば内部を空洞として、その内部に、使用者の臀部や腿裏部などの下肢(施療部)に対してマッサージ動作を付与する下部マッサージ装置を収容するとよい。
背部体3の下端(他方端)と下部体4の上端(一方端)は、連結部材32を介して、折り曲げ自在に連結されている。この連結部材32は、背部体3と下部体4の長手方向における位置を調整可能とするものである。連結部材32は、布材などの折りたたみ自在の材料等、可撓性を有し且つ長手方向に伸縮可能な部材で形成されているとよい。
【0068】
例えば、背が低い使用者の場合、連結部材32を短く折りたたんで、背部体3と下部体4を近づけておいて、背部に背部マッサージ装置37を合わせると共に、臀部に下部マッサージ装置を合わせるように使用する。このようにすると、背が低い使用者でも、本実施形態のマッサージ機1を使用することができる。
また、背が高い使用者の場合、連結部材32を長く伸ばして、背部体3と下部体4を離しておいて、背部に背部マッサージ装置37を合わせると共に、臀部に下部マッサージ装置を合わせるように使用することができる。このようにすると、背が高い使用者でも、本発明のマッサージ機1を使用することができる。
【0069】
このように、上下方向に伸縮可能な連結部材32を、背部体3と下部体4との間に設けておくことで、下部体4を任意の位置に設置することができるようになるので、マッサージ機1の長さを自在に変更することができ、様々な身長の使用者に合わせることができるようになる。
さて、肩部マッサージ装置33や背部マッサージ装置37などについては、様々なマッサージ装置を採用することができる。以下に、肩部マッサージ装置33及び背部マッサージ装置37の一例を挙げる。
【0070】
肩部マッサージ装置33(施療装置)は、使用者の首筋や肩部などの施療部に対して施療子36を押し当てて掴み揉みマッサージ動作や叩きマッサージ動作などを行うものである。この肩部マッサージ装置33は、ケース体6に収容されている。
図7に示すように、肩部マッサージ装置33は、長尺の板材で形成された肩部アーム部材34と、回転駆動力を出力する駆動部7と、出力された回転駆動力により回転する駆動軸9と、その回転軸の回転を揺動運動に変換して、肩部アーム部材34を揺動させる揺動変換部35と、を有している。肩部アーム部材34は、左右一対備えられている。
【0071】
例えば、
図7の例では、肩部アーム部材34は、長手方向中央が基端とされ、その基端から上方と下方の2方向に分かれてU字形状に突出した部材である。つまり、肩部アーム部材34は、天井方向であって、斜め上方と斜め下方のそれぞれに突出したような湾曲形状となっている。それら各肩部アーム部材34の先端には、施療子36が設けられている。
【0072】
揺動変換部35により回転駆動力が揺動運動に変換されることにより、肩部アーム部材34が揺動し、それに伴って施療子36が左右方向に近接離反を繰り返す。これにより、使用者の首筋や肩部などの施療部に対して掴み揉みマッサージや叩きマッサージなどが行われることとなる。
なお、このような肩部マッサージ装置33に関して、例えば、特開2018-029722号公報に記載の機構などを採用してもよい。
【0073】
背部マッサージ装置37は、使用者の肩部下側~肩胛骨部~腰部などの施療部に対して施療子42を押し当てて掴み揉みマッサージ動作や叩きマッサージ動作などを行うものである。
図8に示すように、背部マッサージ装置37は、長尺の板材で形成された背部アーム部材38と、回転駆動力を出力する駆動部39と、出力された回転駆動力により回転する回転軸40と、その回転軸40の回転を揺動運動に変換して、背部アーム部材38を揺動させる揺動変換部41と、を有している。背部アーム部材38は、左右一対備えられている。
【0074】
例えば、
図8の例では、背部アーム部材38は、先端側が天井方向に向かって突出した部材である。その背部アーム部材38の先端側には、施療子42が設けられている。
揺動変換部41により回転駆動力が揺動運動に変換されることにより、背部アーム部材38が揺動し、それに伴って施療子42が左右方向に近接離反を繰り返す。これにより、使用者の肩部下側~肩胛骨部~腰部などの施療部に対して掴み揉みマッサージや叩きマッサージなどが行われることとなる。
【0075】
このような背部マッサージ装置37に関して、例えば、特開2017-153733号公報に記載の機構や、特開2019-058463号公報に記載の機構などを採用してもよい。なお、本実施形態においては、背部マッサージ装置37を背部体3内に固定して収容されているが、背部体3の内部を長手方向に自在に移動可能に収容していても構わない。また、肩部マッサージ装置33と背部マッサージ装置37の駆動を協働させて、使用者にマッサージ動作を付与する制御部が設けられているとよい。
【0076】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
特に、今回開示された実施形態において、明示されていない事項、例えば、作動条件や操作条件、構成物の寸法、重量などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。例えば、マッサージ装置33,37に備えられている揉みアーム34,38の長さや、揉みアーム34,38の回転軸9,40に対する傾斜角度、左右にある揉みアーム34,38の離間距離などは、施療範囲を鑑み適宜変更可能である。
【0077】
本実施形態においては、使用者の施療部に対してマッサージを行うことができるベッド型のマッサージ機1を例に挙げて往復移動機構5を説明したが、本発明の往復移動機構5は、腰部をストレッチすることができる腰部運動機や、バランス運動を付与することができるバランス運動装置などの様々な装置に適用可能である。
本実施形態においては、ケース体6を上下方向に往復移動させる構成について説明したが、ケース体6を左右方向に往復移動させることもできる。すなわち、一方側と他方側の方向を、左右方向とし、一方側と他方側を向く方向に対して交差する方向を、上下方向とするとよい。
【0078】
具体的に、第1スライダ部18の長溝19を上下方向に長い溝とし、第2スライダ部23の長溝26を左右方向に長い溝とすることで、第2軸体17が第1スライダ部18の長溝19内を上下方向に往復移動することとなり、第1軸体15が左右方向に往復移動することで、ケース体6が第2スライダ部23の長溝26に沿って、左右方向に往復移動することとなる。
【0079】
ところで、本実施形態で説明した肩部マッサージ装置33と背部マッサージ装置37に関して、上記したマッサージ装置を例に挙げたが、膨張と収縮を繰り返すことで、使用者の施療部に対してマッサージ動作を付与することができるエアバッグ装置を採用することも可能である。
また、本発明の往復運動(
図7に示すような往復運動)を如く、よりスムーズに動作させるために、回転部材16の周縁にゴム製のOリング50のような滑り止めを配置することは、非常に好ましい。
【0080】
このOリング50は回転部材16をカバーするカバー体51の内周縁との間に挟まれ、回転部材16の回転に対して、所定の回転力、回転スピード以下の際に、抵抗力を与えるものとなっている。カバー体51は、上方が有底とされ且つ内側に回転部材16が回転自在に遊嵌される寸法となっている。
このOリング50の作用効果は、以下の通りである。
【0081】
例えば、
図4の(D)に示すように、第2軸体17のベアリング22が長溝19内の右側に移動すると、回転部材16が上方に移動することにより、第1軸体15も上方に移動する。その後、第2軸体17のベアリング22が長溝19内の右端に達し、その状況下で、施療子36、言い換えれば回転部材16に対して下向きの力が加わっていたとすると、クラッチ部材27(一方向クラッチ)が若干ではあるがフリーな状態となり、クラッチ部材27に回転が生じることになって、使用者の感覚からすれば、施療子36が一瞬下方へ意図せずに移動するようになる。
【0082】
かかる状況は、施療子36のスムーズな動きを阻害するもので避けるべく状況である。同様なこと(施療子36が一瞬上方向へ動くこと)は、
図4の(B)で起こりうる。
そこで、
図7に示すように、回転部材16の周縁にゴム製のOリング50のような滑り止めを入れ、回転部材16の回転に対して抵抗を与え、例えば、
図4の(B)や(D)のような場合になっても、施療子36が一瞬移動するような動作を防止することが可能となる。なお、回転部材16の周縁に設けられたゴム製のOリング50の、カバー体51に対する抵抗(滑り抵抗)は僅かであり、回転部材16の通常の回転には支障をきたすものとはなっていない。
【0083】
また、本発明の往復移動機構5を様々なマッサージ機に採用するにあたっては、当該往復移動機構5により施療子36(モミ玉に限らず様々な形態を有するマッサージ施術用の部材、例えば、回転して足裏などをマッサージする回転ローラなど)をある範囲で移動させた場合、その施療子36がある位置(ある位相)に来た際には、他のマッサージ機構の動きを制限するように制御することが好ましい。
【0084】
例えば、本発明の往復移動機構5を下肢用マッサージ機に適用し、具体的には、足裏を施療する(足裏をツボ押しする)施療子36を往復移動機構5により前後方向に往復移動させることが可能である。このとき、足の甲の部分はエアバッグにより押圧マッサージする機構が採用できる。
この場合、往復移動機構5により、当該往復移動機構5上に配備された施療子や回転ローラを最先端に移動させ、同時にエアバックを膨張させると、足先が過剰に挟み込まれることとなり、刺激が強すぎるものとなる可能性がある。その対策の一例として、足ツボローラが使用者の足の先端に来た際には、エアバッグによる押圧マッサージ機構を制限する(エアバッグを膨らませない)ように制御することが好ましい。
【符号の説明】
【0085】
1 マッサージ機
2 枕体
3 背部体
4 下部体
5 往復移動機構
6 ケース体
7 駆動部
8 往復移動変換部
9 駆動軸
10 駆動モータ
11 ギアケース
12 ギアケース
13 ウォームギア
14 ウォームホイール
15 第1軸体
16 回転部材(円盤部材)
17 第2軸体
18 第1スライダ部
19 長溝
20 孔部
21 孔部
22 ベアリング
23 第2スライダ部
24 棒材
25 ローラ
26 長溝
27 クラッチ部材
28 開口部
29 開口部
30 操作部
31 揺動支持部
32 連結部材
33 肩部マッサージ装置
34 肩部アーム部材
35 揺動変換部
36 施療子
37 背部マッサージ装置
38 背部アーム部材
39 駆動部
40 回転軸
41 揺動変換部
42 施療子
50 Oリング
51 カバー体