(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】勾配具
(51)【国際特許分類】
A63B 67/00 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
A63B67/00 A
(21)【出願番号】P 2020019830
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】李 根浩
(72)【発明者】
【氏名】長友 敏
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼畑 貴之
(72)【発明者】
【氏名】田村 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】帖佐 悦男
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-137414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0034984(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0018109(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 67/00 - 67/22
A63H 1/00 - 37/00
A63F 7/00
A63F 7/04 - 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球体が転動する傾斜面を有する傾斜部と、前記傾斜面を動円半径の異なるサイクロイド曲線に沿った複数の形状に変形できる調節部と、前記傾斜部を支持する支持部とを備えることを特徴とする勾配具。
【請求項2】
前記傾斜部は、可撓性を有する薄板であり、前記薄板を前記調節部に載置支持させることで前記傾斜面をサイクロイド曲線に沿った形状に変形可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の勾配具。
【請求項3】
前記支持部は、動円半径の異なる各サイクロイド曲線に沿った形状に沿って間隔を空けて複数の孔が形成された側板を少なくとも1つ備えており、前記調節部は、前記複数の孔に着脱可能に嵌入できる複数の支持棒であることを特徴とする請求項2に記載の勾配具。
【請求項4】
前記支持部は、動円半径の異なる各サイクロイド曲線に沿った形状に沿って凹溝が形成された側板を少なくとも1つ備えており、前記薄板は、前記凹溝に着脱可能に嵌入でき、前記調節部は、前記凹溝の下方側を区画する下壁であることを特徴とする請求項2に記載の勾配具。
【請求項5】
前記側板に設けられた複数の前記調節部に、複数の前記薄板が載置支持されていることを特徴とする請求項3または4に記載の勾配具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、勾配具に係り、特に重度脳性麻痺者等を対象とした競技スポーツであるボッチャに用いられる勾配具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボッチャは重度の脳性麻痺者や同程度の重度障がいが四肢にある者のためにヨーロッパで考案された競技スポーツであり、赤色または青色の持ち球6球を投球して白色のジャックボール(目標球)にいかに近づけるかを競う競技スポーツである。近年ではパラリンピックの正式競技として行われるほか、レクリエーションとしても、障がいの有無に関わらず老若男女楽しむことができる競技スポーツとして注目されている。
【0003】
ボッチャのパラリンピック等の国際大会では、障がいの種類と程度によってBC1~BC4の4クラスに区分されており、最も障がいの重いクラスのBC3では、選手が自己投球できないため競技アシスタントによるサポートを受けながら、勾配具(ランプ、ランプス)を用いて投球するようになっている。ルール上、勾配具は横に倒したときに2.5m×1mのエリア内に収まる寸法でなくてはならない等の制約が課されているほかは、勾配具は自由な構造を成していてもよい。
【0004】
一般的な勾配具において、スロープ(傾斜面)は、床面に対して傾斜する直線部と、該直線部及び床面を連結するように滑らかにカーブするエンド部と、によって構成されている。球(球体)はスロープ上の任意位置にてリリースされると、スロープ上で加速されながら転動し、直線部及びエンド部を経て、前方へ出射されるようになっている。ゲームの展開によっては、球を遠方に投球したり他の球に衝突させるために球の出射速度すなわち球威を上げる必要があり、勾配具の上部に上方に延びる延長部材を装着して該延長部材上から球をリリースすることで球威を上げることができる。
【0005】
延長部材を使用しない特許文献1の勾配具は、エアが充満された状態において断面円形状を成す空気収納袋が一対左右に並設され長手方向に延びてスロープとして構成されている。球は一対の空気収納袋の間の上面を転動するようになっている。この勾配具は塩化ビニルにて形成されており、スロープの形状の変形が可能であることから、球をリリースする高さを調整でき、球威を変えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-137414号公報(第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した延長部材を用いる勾配具は、延長部材の装着により球威を上げることができるものの、勾配具の構造が大きくなり扱いづらくなる上、エンド部から出射される球は鉛直方向にも速度成分を有しているため、エンド部を通過する際にはエネルギー損失が生じ十分に球威を上げられないものであった。加えて延長部材の装着の有無によって、エンド部におけるエネルギー損失が異なるため、球をリリースする高さによって球威を予測しづらくなり操作感が変わってしまうという問題があった。
【0008】
また、特許文献1の勾配具は、手動によりその形状を変形させるものであるため、正確かつ確実に勾配具を変形させるのが困難であり、球の所望の球威が得られる勾配具とするには熟練度を要していた。また、エンド部におけるエネルギー損失を防止するためエンド部を滑らかなカーブ状に形成するのは、スロープ形状の変形代に限度があることから困難であった。
【0009】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、簡易に所望の球威で球を出射できる勾配具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の勾配具は、
球体が転動する傾斜面を有する傾斜部と、前記傾斜面を動円半径の異なるサイクロイド曲線に沿った複数の形状に変形できる調節部と、前記傾斜部を支持する支持部とを備えることを特徴としている。
この特徴によれば、傾斜面を調節部によって動円半径の異なる各サイクロイド曲線に沿った形状に変形できることから、傾斜部の最上点の高さ位置が異なる傾斜面を簡易に形成できるとともに所望の球威で球を出射させることができる。
【0011】
前記傾斜部は、可撓性を有する薄板であり、前記薄板を前記調節部に載置支持させることで前記傾斜面をサイクロイド曲線に沿った形状に変形可能となっていることを特徴としている。
この特徴によれば、容易にサイクロイド曲線に沿った形状を成す傾斜面を構成することができる。
【0012】
前記支持部は、動円半径の異なる各サイクロイド曲線に沿った形状に沿って間隔を空けて複数の孔が形成された側板を少なくとも1つ備えており、前記調節部は、前記複数の孔に着脱可能に嵌入できる複数の支持棒であることを特徴としている。
この特徴によれば、複数の支持棒を特定の複数の孔に貫入させ、複数の支持棒上に傾斜面を載置支持させることで、傾斜面を所望のサイクロイド曲線に沿った形状に変形できる。
【0013】
前記支持部は、動円半径の異なる各サイクロイド曲線に沿った形状に沿って凹溝が形成された側板を少なくとも1つ備えており、前記薄板は、前記凹溝に着脱可能に嵌入でき、前記調節部は、前記凹溝の下方側を区画する下壁であることを特徴としている。
この特徴によれば、薄板を特定の凹溝に嵌入させ、下壁上に薄板を支持させることで、薄板を所望の各サイクロイド曲線に沿った形状に変形できる。
【0014】
前記側板に設けられた複数の前記調節部に、複数の前記薄板が載置支持されていることを特徴としている。
この特徴によれば、動円半径の小さなサイクロイド曲線に沿った形状に沿って載置支持された傾斜面を有する薄板を取り外すことで、動円半径の大きなサイクロイド曲線に沿った形状に沿って載置支持された傾斜面を有する薄板を使用できるため、使用する薄板の変更がスムーズにできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1における勾配具を示す斜視図である。
【
図3】後方に薄板を取り付けた場合の勾配具の側面断面図である。
【
図4】前方に薄板を取り付けた場合の勾配具の側面断面図である。
【
図5】前方及び後方に薄板を取り付けた場合の勾配具の側面断面図である。
【
図6】(a)は薄板の傾斜面に形成されたセット孔を示す拡大斜視図であり、(b)は薄板の傾斜面上に取り付けたセット片を示す拡大斜視図である。
【
図7】実施例1の変形例1における勾配具を示す斜視図である。
【
図8】実施例1の変形例2における一方の側板を示す斜視図である。
【
図9】本発明の実施例2における勾配具を示す斜視図である。
【
図10】本発明の実施例2における勾配具を一部破断して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る勾配具を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0017】
実施例1に係る勾配具につき、
図1から
図8を参照して説明する。以下、
図1の紙面右下側及び
図3の紙面右側を前方側とし、その前方側から見たときの上下左右方向を基準として説明する。
【0018】
図1,3に示されるように、勾配具1は、傾斜部としての薄板2と、該薄板2を支持する支持部としての左右一対の側板3,3と、該一対の側板3,3に架設された状態で薄板2を載置支持可能な調節部としての複数の支持棒4,4,…と、一対の側板3,3が立設するのを補助する補助具5と、によって主に構成されている。
【0019】
薄板2は、可撓性を有する軟質アクリル樹脂等により形成され、後述するサイクロイド曲線に沿った形状に変形可能な傾斜面21と、該傾斜面21の上端より後方に延びる平坦面22と、を備え、これら平坦面22及び傾斜面21上を球B(球体)が転動できるようになっている。また、平坦面22には、球Bよりも小径なセット孔23が形成されており、該セット孔23に球Bの下端部を嵌入させることで球Bをセットできるようになっている(
図1,3の二点鎖線参照)。尚、薄板2は透光性を有するため選手及び競技アシスタントの視認性を向上させることができるが、これに限らず薄板2は透光性を有さなくてもよい。
【0020】
ここで、サイクロイド曲線とは、媒介変数θを用いて式1のように表せる曲線であり、最速降下曲線とも呼ばれる。式1におけるaは動円半径であり、サイクロイド曲線の水平寸法及び鉛直寸法は動円半径aに比例する。以下、本実施例では、θが0~πラジアンの範囲について上下反転させた図形(水平寸法πa、鉛直寸法2a、長さ4a)のことをサイクロイド曲線という。
【0021】
【0022】
図2に示されるように、側板3には、最下点を揃えた動円半径aの異なる2つのサイクロイド曲線(図示省略)に沿って、上方から順に孔F1~F6及び孔R1~R11が形成されている。孔F1~F6は動円半径aの小さなサイクロイド曲線に沿っているため、動円半径aの大きなサイクロイド曲線に沿っている孔R1~R11よりも前方に位置しており、前記最下点近傍に形成された孔Xには両曲線が通過するようになっている。また、孔F1の後方の同じ高さ位置に孔F0が形成され、孔R1の後方の同じ高さ位置に孔R0が形成されている。尚、孔F0及び孔R0は1つに限らず前後に並ぶように複数あってもよい。さらに尚、孔F0~F6及び孔R0~R11の個数や、孔F0~F6の間隔及び孔R0~R11の間隔は、
図2で示す通りに限らず任意でよい。
【0023】
側板3の孔F0,F1の上方及び孔F1~F6,Xの前方に位置する壁部31の内側面は、転動する球Bが平坦面22及び傾斜面21から脱落するのを防止する機能を有する。同様に孔R0,R1の上方及び孔R1~R11,Xの前方に位置する壁部32の内側面は、転動する球Bが平坦面22及び傾斜面21から脱落するのを防止する機能を有する。また、壁部31の上下寸法が球Bの直径よりも小さいため、選手が球Bをリリースする際、前方に取り付けられた薄板2の平坦面22のセット孔23にセットされた球Bにアクセスしやすい。尚、壁部31の上下寸法は球Bの直径よりも大きくてもよい。さらに尚、側板3は、選手及び競技アシスタントの視認性を向上させるために透光性を有するアクリル樹脂によって形成されているが、これに限らず例えば加工しやすいように木材によって形成されていてもよい。
【0024】
本実施例において、支持棒4はピンによって構成されており(
図2参照)、側板3の孔F0~F6、孔R0~R11及び孔Xに着脱可能に嵌入できるようになっている。これらの孔に支持棒4を嵌入させることで左右一対の側板3,3間に架設させることができ、後述するように架設された複数の支持棒4,4,…の上に薄板2を載置支持させることができる。
【0025】
図2に示されるように、補助具5は上面視E字状を成しており、左右に延びる基部51と、基部51の左端から前方に延びる左脚部52と、基部51の左右中央から前方に延びる中央脚部53と、基部51の右端から前方に延びる右脚部54と、を備えている。また、補助具5は、左脚部52、中央脚部53及び基部51により区画される左溝55と、右脚部54、中央脚部53及び基部51により区画される右溝56と、が形成されている。左の側板3は左溝55に着脱可能に嵌入でき、右の側板3は右溝56に着脱可能に嵌入できるようになっているため、補助具5によって側板3,3が左右に傾倒するのを防止できる。また、中央脚部53が左右方向に所定幅を有することにより、左右一対の側板3,3が所定の離間寸法を有するため、正確かつ容易に支持棒4,4,…及び薄板2を取り付けることができる。尚、補助具5は勾配具1の必須の構成ではないため、なくてもよい。
【0026】
次いで、勾配具1の組付けについて、まず薄板2を後方に取り付ける場合を説明する。
図2を参照して、左右の側板3,3をそれぞれ補助具5の左溝55及び右溝56に嵌入させ、左右の側板3,3を所定の左右離間寸法を有した状態で立設させる。その後、一対の側板3,3の孔R0~R11,Xに複数の支持棒4,4,…を嵌入させる。側板3,3間に架設させた複数の支持棒4,4,…の上に薄板2を沿わせて変形させて載置支持させる。詳細には、薄板2の平坦面22を孔R0,R1に対応する支持棒4,4上に沿うように載置支持させ、薄板2の傾斜面21を孔R1~R11,Xに対応する支持棒4,4,…上に沿わせて動円半径aの大きなサイクロイド曲線となるように変形させて載置支持させる(
図3参照)。尚、以下、このように後方に取り付けられる薄板2を「後方の薄板2」ということがある。さらに尚、薄板2の裏面の左右両端に長手方向に亘ってマグネットシール(図示せず)を貼り、金属で形成された支持棒4を用いてこれらを磁気的に吸着させてもよく、この場合薄板2が支持棒4,4,…上を滑落することなく安定的に載置支持される。
【0027】
また、同一の薄板2を前方に取り付ける場合は、一対の側板3,3の孔F0~F6,Xに複数の支持棒4,4,…を嵌入させる。側板3,3間に架設させた複数の支持棒4,4,…の上に薄板2を沿わせて変形させて載置支持させる。詳細には、まず薄板2の平坦面22を孔F0,F1に対応する支持棒4,4上に沿うように載置支持させ、次いで薄板2の傾斜面21を孔F1~F6,Xに対応する支持棒4,4,…上に沿わせて動円半径aの小さなサイクロイド曲線となるように変形させて載置支持させる。このとき、サイクロイド曲線の長さは動円半径aが大きいほど長いため、薄板2の前端部が余剰分として床面Gに当接した状態で側板3よりも前方に延出する(
図4参照)。尚、薄板2が後方すなわち孔F0,F1に対応する支持棒4,4を基準に配置される例について説明したが、これに限らず側板3の前端部を基準に配置させて薄板2の後端部を余剰分としてもよい。さらに尚、以下、前述のように前方に取り付けられる薄板2を「前方の薄板2」ということがある。
【0028】
このように、孔Xに対応する支持棒4は、前方の薄板2及び後方の薄板2を載置支持するようになっている。尚、動円半径aの異なるサイクロイド曲線ごとの精度を良くするために側板3に孔Xを前後に形成しておいてもよいし、また孔Xは床面Gに近い位置に設けられることから孔Xを省略してもよい。
【0029】
図3,4に示されるように、勾配具1が組み付けられた状態では、サイクロイド曲線状を成す傾斜面21の前端部が床面に接するため、傾斜面21上を転動する球Bが落下衝撃を受けることなく球Bを前方へ滑らかに出射させることができる。また、傾斜面21を動円半径aの小さなサイクロイド曲線から動円半径aの大きなサイクロイド曲線に変形させると鉛直寸法が大きくなり、球Bをリリースする位置を高くできるため、球Bの球威を上げることができる。このように、ゲームの展開に合わせて、傾斜面21を動円半径aの異なるサイクロイド曲線に変形させることで、簡易に所望の球威で球Bを出射させることができる。
【0030】
尚、本実施例において、
図5に示されるように、互いに長さの異なる前方の薄板2と後方の薄板2とをそれぞれ使用してもよい。これによれば、各サイクロイド曲線の長さに過不足なく合った薄板2をそれぞれ使用できるため、薄板2を支持棒4,4,…に簡便かつ確実に載置支持させることができる。
【0031】
この場合、予め後方の薄板2を支持棒4,4,…に載置支持させた後、前方の薄板2を支持棒4,4,…に載置支持させてもよい。これによれば、前方の薄板2を取り外すことで、後方の薄板2を使用できるため、使用する薄板2の変更がスムーズにできる。尚、前方の薄板2が前端部において後方の薄板2上に重合されるが、薄板2の厚さは十分に薄いため当該重合による球Bの転動への影響は無視できる。
【0032】
図1,3,4において二点鎖線により示されるように、球Bは薄板2の平坦面22のセット孔23にセットできるようになっているため、薄板2の最上点から球Bを確実にリリースすることができ、高い球威が得られる。また、傾斜面21がサイクロイド曲線形状を成していることから、傾斜面21上を転動しエンド部から出射される球Bは、ほぼ水平方向にのみ進行することから、エンド部においてエネルギー損失が発生せず、後方の薄板2を使用する場合でも、エンド部におけるエネルギー損失がほぼなく球Bをリリースする高さから十分な球威を予想しやすく、操作感が変わることなく使用できる。尚、これに限らず、例えば
図6(a)に示されるように傾斜面21の上端部に形成されたセット孔23aに球Bをセットできるようにしてもよいし、
図6(b)に示されるように傾斜面21上に着脱可能に取り付け可能なセット片23bに球Bをセットできるようにしてもよい。
【0033】
以上説明したように、球Bが転動する傾斜面21を有する薄板2と、傾斜面21を動円半径aの異なるサイクロイド曲線に沿った2つの形状に変形できる支持棒4と、薄板2を支持する側板3とを備える勾配具1であることから、薄板2の最上点の高さ位置が異なる傾斜面21を簡易に形成できるとともに所望の球威で球Bを出射させることができる。
【0034】
また、薄板2は可撓性を有し、薄板2を支持棒4,4,…に載置支持させることで傾斜面21をサイクロイド曲線に沿った形状に変形可能となっているため、容易にサイクロイド曲線に沿った形状を成す傾斜面21を構成することができる。
【0035】
また、側板3には、動円半径aの異なる各サイクロイド曲線に沿った形状に沿って間隔を空けて孔F1~F6,X及び孔R1~R11,Xが形成されており、支持棒4,4,…は孔F1~F6,X及び孔R1~R11,Xに着脱可能に嵌入できることから、複数の支持棒4,4,…を孔F1~F6,Xまたは孔R1~R11,Xに貫入させ、複数の支持棒4,4,…上に傾斜面21を載置支持させることで、傾斜面21を所望のサイクロイド曲線に沿った形状に変形できる。
【0036】
実施例1の変形例1について説明する。なお、前記実施例に示される構成部分と同一のものについては、同一符号を付して重複する説明を省略する。
図7に示されるように、勾配具1aは、支持部としての支持三脚5aを備えており、該支持三脚5aは左右一対の側板3a,3aの後方下部に取り付けられており、支持棒4,4,…及び一対の側板3a,3aを介して薄板2を支持している。側板3aの後方下部は切り欠かれているため、勾配具1aを軽量化できる。
【0037】
実施例1の変形例2について説明する。なお、前記実施例に示される構成部分と同一のものについては、同一符号を付して重複する説明を省略する。
図8に示されるように、一方の側板3bには、本実施例の孔F0~F6、孔R0~R11及び孔X(
図2参照)に対応する位置に支持棒4,4,…が予め配置されている。詳しくは、孔F0~F6に対応する位置には右側に突出するように支持棒4,4,…が配置され、孔R0~R11に対応する位置には左側に突出するように支持棒4,4,…が配置され、孔Xに対応する位置には左右両側に突出するように支持棒4が配置されている。これによれば、一方の側板3bに対して、図示しない他方の側板3を右側から近接させると、他方の側板3の孔F0~F6,Xに支持棒4,4,…が嵌入可能となっており、他方の側板3を左側から近接させると、他方の側板3の孔R1~R11,Xに支持棒4,4,…が嵌入可能となっている。これによれば、支持棒4,4,…が一方の側板3bに予め配置されているため、一対の側板3b,3の組み付けをスムーズに行うことができ、薄板2を所望のサイクロイド曲線に沿った形状に素早く変形できる。
【実施例2】
【0038】
実施例2に係る勾配具につき、
図9,10を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。本実施例における勾配具101は、一対の側板103,103に最下点を揃えた動円半径aの異なる2つのサイクロイド曲線(図示省略)に沿ってそれぞれ凹溝104F,104R,104F,104Rが形成されている。詳細には、凹溝104F,104Fは、左右内方に向けて開口し、凹溝104F,104Fの後方上端部も上方に向けて開口しており、凹溝104F,104Fの下方側を区画する調節部としての下壁141F,141Fの後方上端部には、後方に向かう水平面142F,142Fが形成され、該水平面142F,142Fの上方は開口している。同様に、凹溝104R,104Rは、左右内方に向けて開口し、凹溝104R,104Rの後方上端部も上方に向けて開口しており、凹溝104R,104Rの下方側を区画する調節部としての下壁141R,141Rの後方上端部には、後方に向かう水平面142R,142Rが形成され、該水平面142R,142Rの上方は開口している。また、一対の側板103,103の前方では、それぞれ凹溝104F,104Rが合流しており、両者とも前端部で閉塞している。
【0039】
図10実線部を参照して、薄板2を凹溝104R,104Rに上方から挿入し、薄板2の傾斜面21を下壁141R,141Rに沿わせて動円半径aの大きなサイクロイド曲線に沿って変形させて載置支持させた後、薄板2の平坦面22を水平面142R,142Rに載置支持させることで、薄板2を一対の側板103,103の後方に取り付けることができる。同様に、
図10二重鎖線部を参照して、薄板2を凹溝104F,104Fに上方から挿入し、薄板2の傾斜面21を下壁141F,141Fに沿わせて動円半径aの小さなサイクロイド曲線に沿って変形させて載置支持させた後、薄板2の平坦面22を水平面142F,142Fに載置支持させることで、薄板2を一対の側板103,103の前方に取り付けることができる。これによれば、薄板2を凹溝104F,104Fまたは凹溝104R,104Rに嵌入させ、下壁141F,141Fまたは下壁141R,141R上に傾斜面21を支持させることで、傾斜面21を所望の各サイクロイド曲線に沿った形状に変形できる。
【0040】
尚、薄板2の一対の側板103,103の取り付けについて、凹溝104F,104Fまたは凹溝104R,104Rに薄板2を上方から挿入する例について説明したが、これに限らず、薄板2を左右一対の側板103,103で左右から挟持してもよい。
【0041】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0042】
例えば、薄板2の傾斜面21は、動円半径aの異なる2つのサイクロイド曲線に沿って変形させることができると説明したが、これに限らず、3つ以上のサイクロイド曲線に沿って変形させることができてもよい。
【0043】
また、動円半径aの異なるサイクロイド曲線状の傾斜面21を有する2つの薄板2が前後に配置可能な構造について説明したが、これに限らず、例えば2つの薄板2が左右に並設される構造にしてもよい。
【0044】
また、球Bが傾斜面21の最上点付近からリリースされる様態について説明したが、これに限らず、傾斜面21の任意の位置において球Bがリリースされてもよい。
【0045】
また、面の粗い薄板2を用いることで、摩擦抵抗により球Bの球威を意図的に小さくしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1,1a 勾配具
2 薄板(傾斜部)
3 側板(支持部)
3a,3b 側板
4 支持棒(調節部)
5a 支持三脚(支持部)
21 傾斜面
101 勾配具
103 側板
104F 凹溝
104R 凹溝
141F 下壁(調節部)
141R 下壁(調節部)
B 球(球体)
F0~F6 孔
G 床面
R0~R11 孔
X 孔