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  • 特許-機能性布及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】機能性布及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
C08J5/18 CFF
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021097812
(22)【出願日】2021-06-11
(65)【公開番号】P2022189301
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】511088427
【氏名又は名称】聚紡股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔡 秋雄
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-067814(JP,A)
【文献】特開2020-085980(JP,A)
【文献】特開昭55-089371(JP,A)
【文献】特表平07-504459(JP,A)
【文献】特開平02-147662(JP,A)
【文献】特表2009-516766(JP,A)
【文献】特開2011-144270(JP,A)
【文献】特開平08-053596(JP,A)
【文献】特開平10-067860(JP,A)
【文献】特開2005-170996(JP,A)
【文献】特開2015-113468(JP,A)
【文献】特開平06-073365(JP,A)
【文献】特開平06-313053(JP,A)
【文献】特開2018-115320(JP,A)
【文献】特開昭53-106743(JP,A)
【文献】特開昭60-141710(JP,A)
【文献】特開昭61-152878(JP,A)
【文献】特開昭62-053340(JP,A)
【文献】特開平05-156043(JP,A)
【文献】特開平06-263979(JP,A)
【文献】特開平11-256030(JP,A)
【文献】特表2002-527560(JP,A)
【文献】特開2003-026867(JP,A)
【文献】特開2004-155824(JP,A)
【文献】特開2009-298954(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0062993(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104371171(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104109371(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0061172(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
C08J 3/00 - 3/28
C08J 99/00
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5~50wt%のプラスチック光学成形材料と48~95wt%のポリウレタン樹脂とを含む機能性布の製造方法であって、
前記プラスチック光学成形材料と溶媒とを混合し、50~100℃の温度で加熱処理を行うことにより、高分子溶液を得ることと、
ポリウレタン樹脂と前記高分子溶液とを混合することで、粘度が1,500~3,000センチポアズであるペースト状材料を形成することと、
前記ペースト状材料をキャリアに塗布することにより、前記ペースト状材料からフィルム状材料を形成することと、
前記フィルム状材料から前記溶媒を除去することで、前記フィルム状材料から機能性布を形成することとを含み、
前記プラスチック光学成形材料は、プラスチック光学成形材料の原材料から生じた、切れ端、もしくは捨てられたプラスチック光学成形材料の成形体であると共に、シクロオレフィンポリマー(cycloolefin polymer,COP)であり、
前記機能性布は、無孔質防水透湿性フィルムであると共に、5,000~20,000mmHOの耐水度、50,000~150,000g/m/dayの透湿度、50~350kg/cmの引張強度(tensile strength)を有し、且つ
(1)フェノール黄変試験はレベル4を達成する、(2)少なくとも60時間のQUV(ASTM G154)試験に合格する、(3)温度70℃で相対湿度95%との測定条件である、少なくとも4週間の耐加水分解性試験(Jungle Test)に合格する、(4)世界リサイクル基準(GRS)及びリサイクル原料基準(RCS)のうちの少なくとも1つに合格する、との測定基準を満たす、ことを特徴とする機能性布の製造方法。
【請求項2】
前記溶媒は、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide,DMF)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone,MEK)、トルエン(toluene,TOL)、イソプロパノール(isopropanol,IPA)、及び酢酸エチル(ethyl acetate,EAC)からなる群の少なくとも1つから選択される、 請求項1に記載の機能性布の製造方法。
【請求項3】
紫外線吸収剤及び抗菌剤を前記ペースト状材料に混合することにより、成形後の前記機能性布が前記紫外線吸収剤及び前記抗菌剤を含むことをさらに含み、
前記機能性布において、前記紫外線吸収剤の重量百分率は0.1~5.0wt%であり、前記抗菌剤の重量百分率は、0.2~8.0wt%であり、
前記紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン(Benzophenone)、ベンゾトリアゾール(Benzotriazole)、トリアジン系(Triazine)、ホルムアミジン系(Formamidine)、マロン酸エステル系(Malonate)、及びベンゾキサジン(Benzoxazine)のうちの少なくとも1つであり、
前記抗菌剤は、銀イオン抗菌剤、亜鉛イオン抗菌剤のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の機能性布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性布に関し、特に、機能性布及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防水透湿フィルムは、様々な製造工程や条件の改良により、より優れた防水透湿性を得て、各種の紡績製品や機能性布に応用することができる。しかしながら、従来の防水透湿フィルムは、耐加水分解性試験(Jungle Test)に対して、温度70℃で相対湿度95%である測定条件において、2週間しか達成できなく、QUV(ASTM G154)試験に対して、30時間しか達成できない。防水透湿フィルムにプラスチックリサイクル材料を添加しても、その引張強度が顕著に向上しない。
【0003】
そこで、本発明者は、上述した問題が改善可能であることに鑑みて、鋭意研究を行い学理を併せて運用した結果、設計が合理的で且つ前記問題を効果的に改善することができる方法として本発明に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、先行技術における問題を効果的に改良する、機能性布及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態において、5~50wt%のプラスチック光学成形材料と、48~95wt%のポリウレタン樹脂とを含む機能性布の製造方法であって、プラスチック光学成形材料と溶媒とを混合し、50~100℃の温度で加熱処理を行うことにより、高分子溶液を得ることと、ポリウレタン樹脂と前記高分子溶液とを混合することで、粘度が1,000~4,000センチポアズであるペースト状材料を形成することと、前記ペースト状材料をキャリアに塗布することにより、前記ペースト状材料からフィルム状材料を形成することと、前記フィルム状材料から前記溶媒を除去することで、フィルム状材料から機能性布を形成することとを含む、機能性布の製造方法を提供する。
【0006】
本発明の又一実施形態において、48~95wt%のマトリックスであるポリウレタン樹脂と、前記マトリックスであるポリウレタン樹脂に分散する、5~50wt%のプラスチック光学成形材料を含み、且つ(1)フェノール黄変試験はレベル4を達成する、(2)少なくとも60時間のQUV(ASTM G154)試験に合格し、且つ布の外観が異常なしで割れ目もない、(3)温度70℃で相対湿度95%との測定条件である、少なくとも4週間の耐加水分解性試験(Jungle Test)に合格する、(4)世界リサイクル基準(GRS)及びリサイクル原料基準(RCS)のうちの少なくとも1つに合格する、との測定基準を満たす機能性布を提供する。
【発明の効果】
【0007】
上述したように、本願に係る機能性布及びその製造方法は、プラスチック光学成形材料を予めに前記溶媒に溶解して、プラスチック光学成形材料とポリウレタン樹脂とを混合することで、濃度均一且つ特定の粘度を有するペースト状材料を得ることにより、プラスチック光学成形材料とポリウレタン樹脂との間の相溶性及び分散均一性を効果的に向上させ、最終に成形された機能性布は、ある程度の防水透湿性を維持することができる。
【0008】
なお、本発明の実施形態におけるプラスチック光学成形材料は、リサイクルプラスチック光学成形材料を使用してもよいので、機能性布の製造コストを低減した上で、廃棄物リサイクル及び環境保護・省エネなどの目的を達成できる(機能性布は、世界リサイクル基準GRS及び/またはリサイクル原料基準RCSに合格する)。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る機能性布の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特徴及び技術内容をより一層理解できるように、以下の本発明に係る詳細な説明と図面を参照するが、提供される説明と図面は、ただ参照と説明のためのものであり、本発明を制限することはない。
【0011】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明に係る実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行又は適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。
【0012】
理解すべきことは、本明細書では、「第1」、「第2」、「第3」といった用語を用いて各種の素子又は信号を叙述することがあるが、これらの素子又は信号は、これらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は主に、1つの素子ともう1つの素子、又は1つの信号ともう1つの信号を区別するためのものである。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0013】
[機能性布の製造方法]
図1に示すように、本発明の実施形態は、機能性布の製造方法を提供する。前記機能性布の製造方法は、工程S110、工程S120、工程S130、工程S140及び工程S150を含む。説明すべきことは、本実施形態における各工程の順番や操作方式はニーズに応じて調整することは可能であり、これに制限されるものではない。
【0014】
工程S110において、プラスチック光学成形材料(plastic optical molding materials)と溶媒とを混合することにより、高分子溶液を得る。適量のプラスチック光学成形材料を溶媒に均一分散・溶解するために、前記プラスチック光学成形材料及び溶媒に対して好ましい使用量を有すると共に、混合する温度条件に対しても好ましい温度範囲を有する。具体的に、本実施形態の工程S110において、5~50重量部のプラスチック光学成形材料と48~95重量部の溶媒とを混合し、且つ前記プラスチック光学成形材料と溶媒とを含む混合物を、50~100℃の温度で加熱処理及び撹拌処理を行うことで、前記プラスチック光学成形材料を溶媒に均一に分散・溶解させ、前記高分子溶液を形成する。好ましくは、前記プラスチック光学成形材料の使用量は、8~50重量部であり、且つ前記溶媒の使用量は、48~90重量部であるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0015】
プラスチック光学成形材料として、前記プラスチック光学成形材料は、シクロオレフィンポリマー(cycloolefin polymer,COP)、シクロオレフィン共重合体(cycloolefin copolymer,COC)、ポリメタクリル酸メチル(poly(methyl methacrylate),PMMA)、ポリカーボネート(polycarbonate,PC)、及びポリスチレン(polystyrene,PS)のうちの少なくとも一種である。好ましくは、前記プラスチック光学成形材料は、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、及びポリカーボネートのうちの少なくとも一種であり、特に好ましくは、前記プラスチック光学成形材料は、シクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィン共重合体のうちの少なくとも一種であるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0016】
物理化学特性について、前記プラスチック光学成形材料の屈折率は、1.45~1.60であり、好ましくは1.48~1.55である。前記プラスチック光学成形材料のアッベ数(abbe number)は、30~60であり、好ましくは、50~60の範囲である。前記プラスチック光学成形材料の可視光透過率は、85%以上であり、好ましくは88%以上である。前記プラスチック光学成形材料の熱膨張係数は、50~70であり、好ましくは60~70のである。また、本願の一つ実施態様において、前記プラスチック光学成形材料は光学レンズの製造に適用するプラスチック材料であるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0017】
注目すべきことは、前記プラスチック光学成形材料は、例えば、リサイクルプラスチック光学成形材料であってもよい。詳しく説明すると、前記リサイクルプラスチック光学成形材料は例えば、プラスチック光学成形材料の原材料から生じた、不合格の製品、エッジ切れ端、切れ端、もしくは捨てられたプラスチック光学成形材料の成形体が挙げられる。
【0018】
溶媒について、前記プラスチック光学成形材料を均一に溶解させ、且つプラスチック光学成形材料と後述するポリウレタン樹脂との相溶性及び分散均一性を向上させるために、本実施態様において、好ましくは、前記溶媒は、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide,DMF)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone,MEK)、トルエン(toluene,TOL)、イソプロパノール(isopropanol,IPA)、及び酢酸エチル(ethyl acetate,EAC)からなる群の少なくとも1つから選択されるが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、前記溶媒は、プラスチック光学成形材料を溶解させると共に、プラスチック光学成形材料とポリウレタン樹脂との相溶性及び分散均一性を向上させることができれば、本発明の技術思想を満たして、本発明の保護範囲に含まれる。
【0019】
工程S120において、ポリウレタン樹脂(polyurethane)と、前記高分子溶液とを撹拌して混合を行うことにより、ペースト状材料を形成する。
【0020】
前記ペースト状材料をこの後の工程(例えば工程S130)においてより容易に加工するために、前記ペースト状材料の粘度は、好ましくは1,000~4,000センチポアズ(cP)であり、より好ましくは1,500~3,000センチポアズである。前記ペースト状材料の粘度の調整は、ポリウレタン樹脂と高分子溶液との混合比率や、増粘剤の適量添加により達成できる。
【0021】
最終に成形された機能性布の特性を向上させるために、前記機能性布の製造方法は、ケイ素含有添加剤を前記ペースト状材料に混合することにより、成形後の前記機能性布が前記ケイ素含有添加剤を含む、工程S130をさらに含んでもよい。
【0022】
本発明の一つの実施形態において、最終に成形された機能性布表面の平坦性を向上させるために、前記ケイ素含有添加剤は、分子構造の中にアルコキシシリル基(alkoxysilane)を有する有機ケイ素含有添加剤であってもよく、また、前記有機ケイ素含有添加剤は、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリエーテルポリエステル変性有機シロキサン、及びアルキル変性有機シロキサンのうちの少なくとも1つから選択されることができる。
【0023】
前記ケイ素含有添加剤として、前記挙げられたものの中の1種でもよく、それらの2種以上の組み合わせであってもよく、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、前記ケイ素含有添加剤は、フィルム表面の平坦性を向上させるためのポリジメチルシロキサンと、フィルムの耐接着性を向上させるためのシリカを同時に使用することができる。なお、前記ケイ素含有添加剤をいかにも組み合わせても、前記ケイ素含有添加剤の重量百分率は、好ましくは最終に成形された機能性布において0.01~5wt%である。本発明の一つの実施形態において、最終に成形された機能性布の紫外線耐性を向上させるために、前記機能性布の製造方法は、紫外線吸収剤を前記ペースト状材料に混合することにより、成形後の前記機能性布が前記紫外線吸収剤を含む、工程S130をさらに含んでもよい。
【0024】
前記紫外線吸収剤の重量百分率は、好ましくは最終に成形された機能性布において0.01~5.0wt%である。前記紫外線吸収剤は、好ましくは、ベンゾフェノン(Benzophenone)、ベンゾトリアゾール(Benzotriazole)、トリアジン系(Triazine)、ホルムアミジン系(Formamidine)、マロン酸エステル系(Malonate)、及びベンゾキサジン(Benzoxazine)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0025】
前記紫外線吸収剤は、ポリウレタン樹脂とプラスチック光学成形材料とを混合した高分子混合物に添加することは好適である。すなわち、前記紫外線吸収剤が高分子混合物と良好な相溶性及び分散性を有することにより、機能性布は良好な紫外線耐性を得る。他の紫外線吸収剤を使用すると、機能性布は良好な紫外線耐性を得られないことがある。
【0026】
本発明の一つの実施形態において、最終に成形された機能性布の特性を向上させるために、前記機能性布の製造方法は、抗菌剤を前記ペースト状材料に混合することにより、成形後の前記機能性布が前記抗菌剤を含む、工程S130をさらに含んでもよい。
【0027】
前記抗菌剤の重量百分率は、好ましくは最終に成形された機能性布において0.2~8.0wt%である。前記抗菌剤は、抗菌性を持つ金属イオンなどの無機物と無機キャリアとの複合体であり、例えば、銀イオン抗菌剤、亜鉛イオン抗菌剤などが挙げられる。それによって、前記機能性布は、2.0以上の抗菌活性値(FTTS-FA-027、AATCC-100、JIS-L1902、ASTM-E2149、或いはISO-20743などの繊維製品の抗菌性試験方法)を有する。
【0028】
工程S140において、前記ペースト状材料をキャリアに塗布することにより、前記ペースト状材料からフィルム状材料を形成する。前記ペースト状材料は例えば、スクレーパー、スプレー、またはローラーコーティングなどの方法でキャリアに塗布することができる。なお、前記ペースト状材料のキャリアへの塗布量は、好ましくは、毎平方メートルあたりのキャリアで15~60グラム(更に好ましくは、15~50グラム)のペースト状材料を有し、また、前記キャリアは、好ましくは、紙及び布のうちの少なくとも1つである。
【0029】
説明すべきことは、前記フィルム状材料は、ペースト状材料をキャリアに塗布することにより形成されたものであることから、前記フィルム状材料の組成は、ペースト状材料と同一である。より詳しく説明すると、前記フィルム状材料の組成は、プラスチック光学成形材料と、ポリウレタン樹脂と、溶媒とを含み、場合によって、ケイ素含有添加剤、紫外線吸収剤、または抗菌剤をさらに含むこともある。
【0030】
最終に成形された機能性布において、前記各成分(マトリックスであるポリウレタン樹脂、プラスチック光学成形材料、及び添加剤(例えば、ケイ素含有添加剤、紫外線吸収剤、抗菌剤など)を含む)の総合重量百分率は、100wt%である。
【0031】
本実施形態において、好ましくは、前記ペースト状材料をキャリアに塗布する工程の前に、脱泡処理工程をさらに含むが、本発明はこれに制限されるものではない。前記脱泡処理工程において、真空脱泡機や脱泡剤を用いて前記ペースト状材料に脱泡処理を行うことにより、前記ペースト状材料から泡を除去する。それによって、泡が機能性布の防水透湿性や他の物理化学特性に影響を及ばず、前記機能性布の歩留まりを向上させることができる。
【0032】
工程S150において、前記フィルム状材料から溶媒を除去することで、前記フィルム状材料から前記機能性布を形成する。
【0033】
前記機能性布において、前記プラスチック光学成形材料の重量百分率は、好ましくは、5~50wt%であり、より好ましくは8~50wt%であり、前記ポリウレタン樹脂の重量百分率は、好ましくは48~95wt%であり、より好ましくは48~90wt%であり、また、前記溶媒の残留濃度は、好ましくは、50~400ppm、より好ましくは100~300ppmである。
【0034】
前記機能性布は、無孔質防水透湿性フィルム(non-porous membrane exhibiting waterproof and breathable)であると共に、その耐水度は、5,000~20,000mmHOであり、好ましくは10,000~20,000mmHOであり、その透湿度は、50,000~150,000g/m/dayであり、好ましくは60,000~130,000g/m/dayであり、その引張強度(tensile strength)は、50~350kg/cmであり、好ましくは60~350kg/cmであり、より好ましくは120~350kg/cmである。注目すべきことは、本発明の機能性布は、無孔質防水透湿性フィルムに制限されるものでなく、本発明のもう一つの実施形態において、機能性布は有孔質防水透湿性フィルムであってもよい。
【0035】
上述した構成により、前記機能性布は、以下の測定基準を満たす。(1)フェノール黄変試験はレベル4を達成する、(2)少なくとも60時間のQUV(ASTM G154)試験に合格し、且つ布の外観が異常なしで割れ目もない、(3)温度70℃で相対湿度95%との測定条件である、少なくとも4週間の耐加水分解性試験(Jungle Test)に合格する、(4)世界リサイクル基準(GRS)及びリサイクル原料基準(RCS)の中の少なくとも1つに合格する。
【0036】
更に言うと、工程S150におけるフィルム状材料から溶媒を除去する方法は例えば、ドライ加工工程で溶媒を除去することが挙げられる。
【0037】
[ドライ加工工程]
ドライ加工工程は、乾燥機により前記フィルム状材料を所定の温度(例えば、60~180℃)で乾燥を行うことにより、前記フィルム状材料から溶媒を除去し、前記フィルム状材料から防水透湿性を持つ機能性布を形成することと、前記機能性布とキャリアとを分離させ、最終的な製品の応用として有利となることとを含む。本実施形態において、ドライ加工工程で形成された機能性布は無孔質フィルムであるが、本発明はこれに制限されるものではなく、有孔質フィルムであってもよい。
【0038】
[機能性布]
本発明の一実施形態は、機能性布を提供し、前記機能性布は前記機能性布の製造方法で製造されることができるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0039】
前記機能性布は、マトリックスであるポリウレタン樹脂と前記マトリックスであるポリウレタン樹脂に分散するプラスチック光学成形材料とを含む。前記機能性布において、前記マトリックスであるポリウレタン樹脂の重量百分率は、48~95wt%(好ましくは、48~90wt%)であり、また、前記プラスチック光学成形材料の重量百分率は、5~50wt%(好ましくは、8~50wt%)である。
【0040】
前記機能性布は、マトリックスであるポリウレタン樹脂及びプラスチック光学成形材料に残留する溶媒を含むとともに、前記溶媒の残留濃度は、50~400ppmである。
【0041】
前記機能性布は、前記マトリックスであるポリウレタン樹脂及びシクロオレフィン高分子材料に分散するケイ素含有添加剤、紫外線吸収剤及び抗菌剤をさらに含む。前記機能性布において、前記ケイ素含有添加剤の重量百分率は、0.01~5wt%であり、前記紫外線吸収剤の重量百分率は、0.1~5.0wt%であり、また、前記抗菌剤の重量百分率は、0.2~8.0wt%である。
【0042】
前記機能性布は、無孔質防水透湿性フィルムであると共に、その耐水度は、5,000~20,000mmHOであり、その透湿度は、50,000~150,000g/m/dayであり、その引張強度(tensile strength)は、50~350kg/cmである。
【0043】
なお、機能性布は、以下の測定基準を満たす。(1)フェノール黄変試験はレベル4を達成する、(2)少なくとも60時間のQUV(ASTM G154)試験に合格し、且つ布の外観が異常なしで割れ目もない、(3)温度70℃で相対湿度95%との測定条件である、少なくとも4週間の耐加水分解性試験(Jungle Test)に合格する、(4)世界リサイクル基準(GRS)及びリサイクル原料基準(RCS)の中の少なくとも1つに合格する。
【0044】
注目すべきことは、本実施形態の機能性布は、様々な紡績製品や機能性布の製造に特に好適である。
【0045】
[実験データ及び測定結果]
以下、実施例1~4及び比較例1~3により、本発明の内容を詳しく説明するが、以下の実施例は、本発明を理解するためのものであり、本発明はこれに制限されるものではない。
【0046】
実施例1:プラスチック光学成形材料(実施例1においてシクロオレフィンポリマーを使用する)30gと溶媒(実施例1においてジメチルホルムアミドを使用する)70gとを予めに溶解・混合することにより、高分子溶液を得た。ポリウレタン樹脂材料100gと、前記高分子溶液8gと、有機溶剤(DMF/MEK)66gとを混合し、1,500rpmの回転数で6分間撹拌することにより、粘度が約2,300センチポアズであるペースト状材料を形成した。紫外線吸収剤(EVERSORB13/EVERSORB83)2.2g及び抗菌剤(Ultra Fresh KW-48)4gを、前記ペースト状材料に混合した。前記ペースト状材料をキャリアに塗布することにより、厚さが20μmであるフィルム状材料を形成した。前記フィルム状材料を連続式多段乾燥装置に入れて、150℃の温度で乾燥を行うことにより、前記フィルム状材料から機能性布を形成した。
【0047】
実施例2:プラスチック光学成形材料(実施例2においてシクロオレフィンポリマーを使用する)30gと溶媒(実施例2においてジメチルホルムアミドを使用する)70gとを予めに溶解・混合することにより、高分子溶液を得た。ポリウレタン樹脂材料100gと、前記高分子溶液40gと、有機溶剤(DMF/MEK)66gとを混合し、1,500rpmの回転数で8分間撹拌することにより、粘度が約2,400センチポアズであるペースト状材料を形成した。紫外線吸収剤(EVERSORB13/EVERSORB83)2.2g及び抗菌剤(Ultra Fresh KW-48)4gを、前記ペースト状材料に混合した。前記ペースト状材料をキャリアに塗布することにより、厚さが20μmであるフィルム状材料を形成した。前記フィルム状材料を連続式多段乾燥装置に入れて、150℃の温度で乾燥を行うことにより、前記フィルム状材料から機能性布を形成した。
【0048】
実施例3:プラスチック光学成形材料(実施例3においてシクロオレフィンポリマーを使用する)30gと溶媒(実施例3においてジメチルホルムアミドを使用する)70gとを予めに溶解・混合することにより、高分子溶液を得た。ポリウレタン樹脂材料100gと、前記高分子溶液69gと、有機溶剤(DMF/MEK)66gとを混合し、1,500rpmの回転数で10分間撹拌することにより、粘度が約2,100センチポアズであるペースト状材料を形成した。紫外線吸収剤(EVERSORB13/EVERSORB83)2.2g及び抗菌剤(Ultra Fresh KW-48)4gを、前記ペースト状材料に混合した。前記ペースト状材料をキャリアに塗布することにより、厚さが20μmであるフィルム状材料を形成した。前記フィルム状材料を連続式多段乾燥装置に入れて、150℃の温度で乾燥を行うことにより、前記フィルム状材料から機能性布を形成した。
【0049】
実施例4:プラスチック光学成形材料(実施例4においてポリメタクリル酸メチルを使用する)30gと溶媒(実施例4においてジメチルホルムアミドを使用する)70gとを予めに溶解・混合することにより、高分子溶液を得た。ポリウレタン樹脂材料100gと、前記高分子溶液40gと、有機溶剤(DMF/MEK)66gとを混合し、1,500rpmの回転数で8分間撹拌することにより、粘度が約2,200センチポアズであるペースト状材料を形成した。紫外線吸収剤(EVERSORB13/EVERSORB83)2.2g及び抗菌剤(Ultra Fresh KW-48)4gを、前記ペースト状材料に混合した。前記ペースト状材料をキャリアに塗布することにより、厚さが20μmであるフィルム状材料を形成した。前記フィルム状材料を連続式多段乾燥装置に入れて、150℃の温度で乾燥を行うことにより、前記フィルム状材料から機能性布を形成した。
【0050】
比較例1:ポリウレタン樹脂材料100gと、有機溶剤(DMF/MEK)66gとを混合し、1,500rpmの回転数で6分間撹拌することにより、粘度が約2,600センチポアズであるペースト状材料を形成した。前記ペースト状材料をキャリアに塗布することにより、厚さが20μmであるフィルム状材料を形成した。前記フィルム状材料を連続式多段乾燥装置に入れて、150℃の温度で乾燥を行うことにより、前記フィルム状材料から機能性布を形成した。
【0051】
比較例2:ポリウレタン樹脂材料100gと、有機溶剤(DMF/MEK)66gと、紫外線吸収剤(EVERSORB13/EVERSORB83)2.2gとを混合し、1,500rpmの回転数で6分間撹拌することにより、粘度が約2,600センチポアズであるペースト状材料を形成した。前記ペースト状材料をキャリアに塗布することにより、厚さが20μmであるフィルム状材料を形成した。前記フィルム状材料を連続式多段乾燥装置に入れて、150℃の温度で乾燥を行うことにより、前記フィルム状材料から機能性布を形成した。
【0052】
比較例3:ポリウレタン樹脂材料100gと、有機溶剤(DMF/MEK)66gと、紫外線吸収剤(EVERSORB13/EVERSORB83)2.2gと、抗菌剤(Ultra Fresh KW-48)4gとを混合し、1,500rpmの回転数で6分間撹拌することにより、粘度が約2,500センチポアズであるペースト状材料を形成した。前記ペースト状材料をキャリアに塗布することにより、厚さが20μmであるフィルム状材料を形成した。前記フィルム状材料を連続式多段乾燥装置に入れて、150℃の温度で乾燥を行うことにより、前記フィルム状材料から機能性布を形成した。
【0053】
次に、実施例1~4及び比較例1~3に係る機能性布に対して、物理化学特性の測定を行うことにより、それらの機能性布の物理化学特性、例えば、耐水度、透湿度、引張強度、フェノール黄変試験、QUV試験及び耐加水分解性試験を測定した。それらの測定方法は、以下にて説明すると共に、測定結果を表1にまとめる。
【0054】
耐水度の測定方法(JIS L1092):ドライ加工で製造された機能性布(無孔質フィルム)の耐水度は、高水圧法(JIS L1092)で測定した値(mmHO)である。
【0055】
透湿度の測定方法(JIS L1099B1):ドライ加工で製造された機能性布(無孔質フィルム)の透湿度は、酢酸カリウム法(JIS L1099B1)で測定した値(g/mday)である。
【0056】
引張強度(tensile strengt)の測定方法:前記機能性布に対して、降伏現象が発生した後に、続いて応力を印加する。前記機能性布の引張強度は、印加した応力の向上に沿って向上する。前記印加した応力は最大値となるときの応力は、前記機能性布の最大引張強度(ultimate tensile strength,UTS)である。最大引張強度(σUTS)は、下式に示すように定義されることができる。
【数1】
【0057】
その中、Pmaxは機能性布の最大引張強度のときの荷重であり、Aは機能性布の元断面積である。
【0058】
フェノール黄変試験(phenolic yellowing)は、ISO105-X18を基準にして測定を行う。
【0059】
QUV試験は、ASTM G154との国際規格試験方法を基準にして測定を行う。
【0060】
耐加水分解性試験(Jungle Test)方法は、サンプルを温度70℃で相対湿度95%のオーブンに入れて、測定を行ったサンプルの外観を観察した。
【0061】
[表1 実施例の実験条件及び測定結果]
【表1】
【0062】
前記測定結果によると、実施例1~4の機能性布は、5,000~20,000mmHOの耐水度と、50,000~150,000g/m/dayの透湿度と、50~350kg/cmの引張強度(tensile strength)を有する。一方、比較例1~3の機能性布は、物理化学特性の表現は相対的に不良である。
【0063】
なお、実施例1~4に係る機能性布は、以下の測定基準を満たす。(1)フェノール黄変試験はれレベル4を達成する、(2)少なくとも60時間のQUV(ASTM G154)試験に合格し、且つ布の外観が異常なしで割れ目もない、(3)温度70℃で相対湿度95%との測定条件である、少なくとも4週間の耐加水分解性試験(Jungle Test)に合格する、(4)世界リサイクル基準(GRS)及びリサイクル原料基準(RCS)の中の少なくとも1つに合格する。
【0064】
[実施形態による有利な効果]
上述したように、本願に係る機能性布及びその製造方法は、プラスチック光学成形材料を予めに前記溶媒に溶解して、プラスチック光学成形材料とポリウレタン樹脂とを混合することで、濃度均一且つ特定の粘度を有するペースト状材料を得ることにより、プラスチック光学成形材料とポリウレタン樹脂との間の相溶性及び分散均一性を効果的に向上させ、最終に成形された機能性布は、ある程度の防水透湿性を維持しながら、優れた引張強度を有することができ、当該材料の応用の向上が見込める。
【0065】
なお、本発明の実施形態におけるプラスチック光学成形材料は、リサイクルプラスチックシクロオレフィンポリマーを使用してもよいので、機能性布の製造コストを低減した上で、廃棄物リサイクル及び環境保護・省エネなどの目的を達成できる。
【0066】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
図1