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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】避難テーブル
(51)【国際特許分類】
   A47B 13/00 20060101AFI20230802BHJP
   A47B 7/00 20060101ALI20230802BHJP
   A47B 13/02 20060101ALI20230802BHJP
   A47B 17/04 20060101ALI20230802BHJP
   A62B 99/00 20090101ALI20230802BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
A47B13/00 Z
A47B7/00 Z
A47B13/02
A47B17/04
A62B99/00 Z
E04H9/14 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022015343
(22)【出願日】2022-02-03
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】505009508
【氏名又は名称】有限会社ジロウコレクション
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 次郎
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-209408(JP,A)
【文献】特開平07-250713(JP,A)
【文献】特開2010-042213(JP,A)
【文献】登録実用新案第3184090(JP,U)
【文献】登録実用新案第3139581(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 13/00
A47B 7/00
A47B 13/02
A47B 17/04
A62B 99/00
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と該天板下部の四隅に配設され下方に延伸する脚部と、該脚部の下端に天板と対向して備えられる底板と、で構成され、
天板と底板と脚部との間隙に形成される四方向の側方空間全体を閉塞し得る四つの側面壁が、天板下面部又は底板上面部のいずれか一方もしくは両方に格納されており、
災害時に側方空間を側面壁で閉塞することで天板と底板との間に避難空間が形成されることを特徴とする避難テーブル。
【請求項2】
前記側面壁が対向して観音開き状に折り畳まれて格納されていることを特徴とする請求項1に記載の避難テーブル。
【請求項3】
外部へ向け点灯可能な誘導ライトが備えられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の避難テーブル。
【請求項4】
外部へ音声を出力可能なスピーカが備えられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の避難テーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内に設置され、災害時に避難者が緊急避難先として利用可能な避難テーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、日本は地震や台風といった自然災害が起きやすい地域であり、特に地震に関しては世界で起きている大地震の約20%が日本で起きている。また、近年の大型台風や線状降水帯によって引き起こされる、河川の氾濫や家屋浸水といった水害も年々増加の一途を辿っている。
これらの自然災害の中でも、地震は事前に察知することが困難であり、特に集合住宅や高層マンションといった戸外への避難に時間を要する場所において、突発的に発生する災害に対した備えが必要となってきている。
【0003】
上記問題を解決すべく、特開2014-4332号公報(特許文献1)や特開2014-210095号公報(特許文献2)に記載の技術提案がされている。具体的には、特許文献1において、テーブルの短手方向に対向する両側面に、けんどん式の収納箱が設けられ、非常時に開閉して物資を取出すことが可能な技術提案がなされている。また、特許文献2では、家具としてのデザイン性を備えつつ、防災用テーブルとして、天板の裏面や脚柱の内部等に物資を保管して非常時に備えるといった技術提案がされている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術提案では、短手方向に対向する両側面のみが閉塞されているため、長手方向からの飛散物がそのまま避難空間に侵入するといった問題と共に、床面との固定方法がネジ等にて直接床面に螺嵌する方法であるため、固定後のテーブル移動が難しく、床面に孔を開けること自体に忌避感が出るといった問題もあった。
【0005】
また、特許文献2に記載の技術提案では、テーブルの各側面に閉塞箇所が一切存在しないため、側面方向からの飛散物を防ぐことができないといった問題があった。また、対角に位置する脚柱同士を連結することによって垂直方向の負荷に耐え得る可能性は高くなるが、災害発生時に各脚柱に取付けることは困難であり、更に、連結部を常時各脚柱に取付けていた場合は、テーブルとして使用する際に邪魔になるといった問題もあった。
【0006】
本出願人は、以上のような従来の避難テーブルにおいて、災害発生時に避難者の身体を完全に防護することが困難であるといった問題に着目し、テーブルの下方へ避難した際に避難者を完全に防護可能な避難テーブルを提供できないものかという着想のもと、テーブルの側方空間を閉塞可能な防護壁が災害発生時に展開されることで、避難者を災害から完全に防護し得る避難テーブルを発明し、本発明にかかる「避難テーブル」の提案に至るものである。防護壁を展開
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-4332号公報
【文献】特開2014-210095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題に鑑み、災害発生時にテーブルの側方空間を防護壁の展開によって閉塞可能な避難テーブルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するため、本発明は、天板と該天板下部の四隅に配設され下方に延伸する脚部と、該脚部の下端に天板と対向して備えられる底板と、で構成され、天板と底板と脚部との間隙に形成される四方向の側方空間の全てを閉塞し得る四つの側面壁が、天板下面部又は底板上面部のいずれか一方もしくは両方に格納されており、災害時に側方空間を側面壁で閉塞することで天板と底板との間に避難空間が形成される手段を採る。
【0010】
また、本発明は、前記側面壁が対向して観音開き状に折り畳まれて格納されている手段を採る。
【0012】
またさらに、本発明は、外部へ向け点灯可能な誘導ライトが備えられている手段を採る。
【0013】
さらにまた、本発明は、外部へ音声を出力可能なスピーカが備えられている手段を採る。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる避難テーブルによれば、天板と底板の間隙に形成される側方空間を閉塞し得る側面壁が、天板下面部又は底板上面部のいずれか一方もしくは両方に格納されていることにより、避難者の側方空間から侵入し得る破損したガラス片等の飛散物から防護することが可能であり、避難者の安全に資する、といった優れた効果を奏する。
【0015】
また、本発明にかかる避難テーブルによれば、側面壁が対向して観音開き状に折り畳まれて格納されていることにより、災害発生時に避難者が避難空間を形成するにあたって、少ない手順で側面壁を展開可能である、といった優れた効果を奏する。
【0017】
またさらに、本発明にかかる避難テーブルによれば、避難空間側から開閉可能な収納部が形成されていることにより、避難者が避難空間を形成後、救助を待つにあたって必要な物資を、収納部内に収納し保存しておくことが可能である、といった優れた効果を奏する。
【0018】
さらにまた、本発明にかかる避難テーブルによれば、外部へ向け点灯可能な誘導ライトや、外部へ音声を出力可能なスピーカが備えられていることにより、災害発生により避難テーブルごと瓦礫に埋もれてしまった場合でも、付近の救助者に対して避難者の位置を伝達する光や音声を出力することが可能である、といった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明にかかる避難テーブルの実施形態を示す斜視説明図である。
図2】本発明にかかる避難テーブルの実施形態を示す斜視説明図である。
図3】本発明にかかる避難テーブルの実施形態を示す側方透過図である。
図4】本発明にかかる避難テーブルの実施形態を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明にかかる避難テーブル1は、災害発生時にテーブルの側方空間が防護壁の展開によって閉塞されることで、テーブルの下に避難した避難者を災害から完全に防護し得ることを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる避難テーブル1の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0021】
尚、本発明にかかる避難テーブル1は、以下に述べる実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる形状や寸法、材質等の範囲内で適宜変更することができる。
【0022】
図1は、本発明にかかる避難テーブル1の実施形態を示す斜視説明図であり、具体的には、側面壁40展開前の状態を示すものである。また、図2は、本発明にかかる避難テーブル1の実施形態を示す斜視説明図であり、具体的には、側面壁40展開後の状態を示すものである。さらに、図3は、本発明にかかる避難テーブル1の実施形態を示す側方透過図であり、天板10下面部に格納された側面壁40の形態(仕様)によって異なる展開手法の違いについて(a)乃至(c)に示している。またさらに、図4は、本発明にかかる避難テーブル1の実施形態を示す斜視説明図であり、脚部20の高さ調整機能を示すものである。
本発明にかかる避難テーブル1は、主に天板10と、脚部20と、底板30と、側面壁40とで構成されている。
【0023】
天板10は、平面視略長方形状の板状に形成されてなり、天板10の角部はR面取り加工され、通常時の使用に適した形状となっている。天板10の材質は、特に限定するものではないが、木材や鉄等の金属系素材を使用する態様が考え得る。この態様の場合、避難者の安全を確保するため、重力に従って落下する天井構造物等の負荷に耐えうる素材である必要がある。
また、天板10の形状は、長方形状の他にも、正方形状や、多角形状、円形などが考え得る。
【0024】
脚部20は、柱状の直方体にて、天板10下部の四隅の角部から底板30上面へ垂直に延伸するように配設されており、天板10と底板30が床面と平行になるよう天板10の四隅及び底板30上部に夫々直結される。脚部20の素材や大きさは特に指定はしないが、災害時に側方空間を閉塞する側面壁40を挟持すると共に、天板10への衝撃や負荷を分散させる役目があるため、金属系の素材が好適である。また、通常のテーブル形成時において採用される脚部20の長さは、75cm程度が一般的ではあるが、避難空間を形成するにあたって、避難者が膝を抱えて座ることが可能な高さ、おおよそ1m程度の高さが必要となるため、天板10から底板30までの高さは1m以上であることが望ましい。もしくは、図4に図示されるようなスクリュージャッキ21等により脚部20構造を延伸可能な構造を夫々の脚部20に内蔵し、避難空間内から取手42の回転等により脚部20を30cmから40cm程度延伸させることで、避難空間を垂直方向へ広げるといった態様も考え得る。
【0025】
底板30は、天板10から延伸した脚部20と締結され、天板10と対向し床面が底面の下部と接して備えられる。底板30の大きさや材質は、特に限定されるものではないが、底板30の大きさは天板10と同等もしくはそれ以上の大きさが好適である。この態様を採る場合、底面の各端部は1乃至複数箇所に面取り加工を施し、平時にテーブルを使用する時、底面の端部に足が引っかからないようにすることが望ましい。
また、床板30の底面部分に滑り止めを備え、避難テーブル1自体が遊動しにくい態様を採ることも考え得る。滑り止めの素材については特に限定はしないが、ゴム素材やセラミック素材等が好ましい。この態様であれば、強い衝撃が水平方向にかかった場合でも、避難テーブル1に備えた滑り止めの摩擦力により強い抵抗力を保ちつつ水平方向に移動、又は、避難テーブル1自体が回転し避難テーブル1にかかる衝撃を分散させることとなる。例えば、高層ビルにて地震が起きた場合、強い横揺れが避難者及び避難テーブル1へかかることとなるが、上記滑り止めにより避難テーブル1の遊動が抑えられるため、避難テーブル1内に避難した避難者への負担を低減させることが可能であると。
【0026】
側面壁40は、天板10と底板30の間隙に形成される側方空間を閉塞するものであり、例えば、図示のような長方形の板状である天板10が備えられた避難テーブル1であるならば、短手方向及び長手方向の側方空間を閉塞するものである。災害時に避難者が避難テーブル1の下方空間へ入り、夫々の側面壁40を展開させることにより避難空間を形成することが可能となる。この側面壁40は、天板10下面部又は底板30上面部のいずれか一方もしくは両方に格納され、避難者は、所定動作で側面壁40を展開させることとなる。例えば、天板10下部の所定位置にあるつまみをひねると、天板10に固定されていた側面壁40のロックが外れて下方へ垂れ下がり側面に展開可能となる態様や、底板30上面の所定位置に埋め込まれた取手42を引っ張ると、底板30と一体化していた側面壁40が持ち上がり側面に展開可能となるといった態様が考え得る。
【0027】
また、図示されてはいないが、側面壁40の展開時に、避難テーブル1に軸止されていない側面壁40下端部及び上端部が、脚部20の所定位置にて係留され、展開された側面壁40が脚部20の所定位置で固定される態様が望ましい。係留方法については、従来公知の機器を種々適用可能であり、固定箇所についても特に指定はないが、例えば、底板30に軸着された側面壁40の上方展開時に、天板10下部と側面壁40上部との間に形成される間隙を閉塞しうる、天板10下部から下方へ延伸し所定幅、長さを有するストッパーが備えられ、ストッパーの下端部が上方へ展開された側面壁40の外部側に当接した後、側面壁40と天板10又は脚部20とを係留する金具にて固定させる態様や、天板10に軸着された側面壁40にて、下方へと展開される側面壁40の下部所定位置に、脚部20の2側面と当接するように固着されたL字状金具が備わり、脚部20とL字状金具の当接後に、側面壁40と脚部20の所定箇所が係留金具にて固定される態様等が考え得る。この態様を採ることにより、側面壁40の展開時に、側面壁40の遊動を防ぎ、安全な避難空間の形成に資するといった優れた効果を奏する。
さらに、側面壁40には、避難テーブル1外部を視認可能な窓が一乃至複数箇所備えられた態様も好ましい。この態様を採ることにより、避難空間内から外部を確認可能となり周辺状況の確認や外部からの採光が可能となる。窓の素材や大きさ等は特に限定はしないが、強化ガラスや強化プラスチックといった外部からの衝撃に耐えうる素材を用いて、各側面壁40へ備えるといった態様が考え得る。
【0028】
側面壁40の収納・展開方法は特に限定するものではなく、例えば、図3(a)に図示されるように、既に天板10に格納されている側面壁40の所定箇所に、対向する別の側面壁40の下端部が固定され、側面壁40が側方視にて二段に重なった態様や、図3(b)に図示されるように、対向する側面壁40が観音開き状に展開できるよう天板10に夫々格納する態様や、図3(c)に図示されるように、側面壁40を水平方向に対して2枚に分割し、それを互い違いとなるよう蛇腹状に折り畳んで天板10へ格納する態様が考え得る。また、図示はされていないが、シャッター機構を利用して側面壁40の下端部に備わった取手42を下方に牽引することで、天板10に格納された側面壁40が引き出されて側面を閉塞できる態様なども考え得る。
【0029】
側面壁40展開後に形成される避難空間の上部にあたる天板10の底面は、クッション系素材によって防護されている。
このクッション系素材は、避難空間において避難者の頭部を保護するものであり、特に材料を限定するものではないが、クッション系素材として毛布を使用する態様も考え得る。この態様であれば、災害時に避難者の頭部を守るのと同時に、外気温の低い冬季における避難空間にて、寒さを凌ぐ防寒具としても利用可能である、といった優れた効果を奏する。
【0030】
また、側面壁40展開後に形成される避難空間上部にあたる底板30上面部も、天面下部と同様にクッション系素材によって防護されている。
このクッション系素材は、避難空間において避難者の下半身を保護するものであり、特に材料を限定するものではない。このクッション系素材により、縦方向の振動を軽減すると共に、避難空間における避難者の座位での活動や横臥になっての仮眠等、避難者の身体負担軽減に資することとなる。
【0031】
更に、側面壁40展開後の避難空間側にあたる内側面も、底板30上面部や天面下部と同様に、クッション系素材によって防護されている。
このクッション系素材は、避難空間において避難者の上半身等の側面を保護するものであり、特に材料を限定するものではない。このクッション系素材により、横方向の振動や衝撃を軽減すると共に、避難空間における避難者の座位での活動や側面壁40に寄り掛かった休憩等、避難者の身体負担軽減に資することとなる。
【0032】
側面壁40の展開時、完全密閉状態による窒息を防ぐため、側面壁40の下部と底板30上部もしくは側面壁40の上部と天板10下部の間に所定間隔の間隙を設ける態様が考え得る。この態様の場合、その間隙を埋める補助壁41を側面壁40展開後の避難空間側に備え、避難空間を密閉させる必要が発生した際に、避難空間内の避難者が補助壁41を間隙に嵌め込むといったことが可能となる。
【0033】
図示されていないが、展開後の側面壁40と、側面壁40に接触する天板10、底板30、脚部20、ストッパーの所定箇所には、夫々を連結可能な連結部が一乃至複数箇所備えられている態様が望ましい。例えば、側面壁40と脚部20が当接する部分に、避難空間側から開け締め可能なスライド錠を設け、側面壁40を展開した後に避難者が任意のタイミングでスライド錠をスライドさせることにより側面壁40及び脚部20間を締結するといった態様が考え得る。この態様であれば、側面壁40へ強い衝撃等が加わった際でも、天板10又は底板30と側面壁40が軸着された接続部分と、脚部20と側面壁40が連結された部分の二点で側面壁40を支持することが可能となり、衝撃に伴う側面壁40の破損を防ぐと共に、避難空間内の安全に資することとなる。
【0034】
図示されていないが、上端部が天板10下部略中心箇所に固定され、下端部が下方へ垂直に延伸し底板30上部接触箇所と固定される中央柱が備えられる態様も考え得る。中央柱の形状は特に限定されるものではなく、例えば、角が面取りされた四角柱や、把持部分に凹凸を付けた円柱といった形状が考え得る。また、上記脚部20同様、中央柱への高さ調整手段は当然に設けることとなる。
中央柱を備えることで、地震災害等による横からの衝撃時に、避難空間内の避難者が中央柱を把持して身体を固定することが可能となり、避難空間外に身体が投出されたり避難空間内の内壁に身体が衝突したりする可能性を低下させると共に、避難テーブル1外部から天板10上部へかかる荷重を分散させるといった優れた効果を奏する。
さらに、該中央柱の上端部及び下端部を取り外し可能とし、天板10下面部や底板30上面部、脚部20側面といった避難空間内から容易に取出せる位置に格納され、災害発生時に避難者が任意のタイミングで中央柱を取出し、設置する態様も考え得る。この態様を採る場合、中央柱の天板10及び底板30への接続・固定方法は特に限定されるものではなく、所定箇所に嵌め込む等の手段で接続・固定されることとなるが、横揺れの方向等による中央柱の脱落を防ぐため、天板10及び底板30への接続と共に自動的にロックが掛かり、容易に中央柱の固定箇所から脱落しないような態様が望ましい。この態様により、避難空間内の安全性がより増すと共に、避難者が中央柱を接続後に改めてロックを掛ける必要がなくなるといった優れた効果を奏する。
【0035】
上記中央柱側面には、水平方向からの衝撃を分散させる補助柱が格納されている態様も考え得る。例えば、長手方向に対向する二側面において、基端部が中央柱略中央部分に軸着されると共に、先端部が中央柱上部所定位置へ係留された態様であれば、補助柱の展開時は、夫々の先端部が対向する側面壁40の略中央部分と当接及び固定されることで、長手方向へかかる衝撃を分散させる効果が期待できる。また、短手方向も含めた四方向に補助柱を展開することで、水平方向に発生する衝撃を軽減させることが可能となり、建物の倒壊等にて様々な方向からの衝撃が発生した場合においても、避難者の安全に資することとなる。
【0036】
天板10下部所定位置や底板30上部所定位置、脚部20所定位置、中央柱所定位置といった避難空間から開閉可能な箇所に、収納部を設置する態様も好適である。収納物に収納される物としては、例えば、飲料水や保存食といった生活必需品や、防災ラジオ、救急箱、携帯用トイレといった長期間の避難生活において必要なもの等を収納するものである。収納部の設置数や広さは、特に限定されるものではなく、例えば、天板10下部の全面に設ける態様や、底板30上部の一部と脚部20の複数箇所に設ける態様、金属製の脚部内に空間を設け収納スペースを確保する態様等が考えられる。かかる態様を採ることにより、避難者が避難空間を形成後、避難者が救出されるまでの期間を避難空間内にて過ごすにあたって、無理のない避難生活を送ることが可能となる。
【0037】
避難テーブル1には、平時に充電しておき、災害時に避難者及び避難テーブル1の機能として充電された電気を利用可能な蓄電バッテリが備えられる態様が好適である(図示なし)。蓄電バッテリの種類や容量は特に限定するものではなく、電気の予想使用量や避難日数を踏まえ従来公知のバッテリ機器を使用することとなるが、例えば、リチウムイオン電池を使用する態様が考え得る。この態様の場合、天板10や底板30、脚部20等の所定位置に備えられ、避難テーブル1内に備えられた各電子機器への給電や、避難者が使用する通信機器の充電等に使用されることとなる。
【0038】
蓄電バッテリの使用時は、蓄電バッテリ自体からの放熱による周辺空気の温度上昇が考え得る。そのため、天板10や底板30、脚部20等の所定位置に備えられた蓄電バッテリの設置箇所に直結し、避難空間外より流入する外気と、蓄電バッテリにより温度が上昇した内気が蓄電バッテリの設置箇所を経由し、蓄電バッテリ周辺の空気交換が可能な排熱流路が形成される態様が望ましい。この態様により、蓄電バッテリの使用中に、避難空間内の温度上昇を防ぐことが可能となる。
【0039】
蓄電バッテリの使用時に、総蓄電量に対する残量が数値やメモリにて避難スペースから確認できる態様が好適である。この態様であれば、避難空間にて使用可能な総電気量が視覚的に確認できると共に、救助までの日数を踏まえた電気利用が可能になる、といった優れた効果を奏する。
【0040】
収納部には、蓄電バッテリと直結し、充電された電気を避難者が利用可能なコンセントが一口乃至複数内設される態様が好適である。また、避難空間から収納部を開閉し、直接コンセントと充電器を接続する、もしくは延長コードなどの手段を用い充電を行う態様が望ましい。
【0041】
蓄電バッテリが備えられた避難テーブル1には、天板10上部や天板10側面所定箇所にて外部に向けた発光手段として誘導ライト11を備える態様や、避難空間内の天板10上部所定箇所に室内灯を備えて手動もしくは自動にて点灯する態様が好適である。
例えば、側面壁40が避難者により1箇所又は数箇所もしくは全箇所に展開されたと同時に、誘導ライト11や室内灯が夫々自動で点灯する態様が考え得る。誘導ライト11を自動点灯させることで、避難テーブル1の位置を自動的に外部へ主張するため、外部からの救助を早める可能性を高めることができる。また、室内灯を自動点灯させることで、避難空間内の視界を即時的に確保することが可能となる。そして、誘導ライト11を備える場合、手動若しくは自動設定により発光時間を夜間のみに設定可能な態様であれば、消費電力を低下させることができるため、蓄電バッテリの出力を節約して長期使用に資することとなる。
さらに、また、図示していないが、天板10上部や天板10側面所定箇所に加え、側面壁40や床板30、脚部20等へ誘導ライト11を複数方向に備える態様も考え得る。この態様を採った場合、避難テーブル1がガレキにより埋まった場合や、避難テーブル1自体が回転した場合、一の誘導ライト11が故障した場合等においても、誘導ライトによる点灯を継続することが可能となる。
【0042】
蓄電バッテリが備えられた避難テーブル1には、避難空間外である外部に対し音声出力にて場所を特定させ得る外部スピーカ12が備わっている態様が望ましい。また、避難者の任意のタイミングで実行可能な、自動音声のみが連続して出力される態様も好適である。また、この態様の場合、自動音声の後に雑音に紛れない音域の音を出力することも考え得る。なお、人間が聞き取りやすい音の高さは2000Hz~4000Hzといわれているが、高い音は減衰しやすく遠くまで届きにくいため、聞き取りやすい音と遠くまで届く音を両立させる高音と低音の二種類を同時に鳴らせる態様が好ましい。この態様により、避難テーブル1が瓦礫等に埋もれてしまった場合でも、要救助者が存在することを外部に対して音声や機械音で伝えることが可能となり、避難テーブル1内の避難者が早期に救助される可能性を高めることとなる。また、図示していないが、外部スピーカ12を側面壁40や床板30、脚部20等の複数箇所に備える態様も考え得る。この態様を採った場合、避難テーブル1がガレキにより埋まった場合や、避難テーブル1自体が回転した場合、一の外部スピーカ12が故障した場合等においても、音声の発信を継続することが可能となる。
【0043】
前記外部スピーカ12には、避難空間内の避難者の音声が直接出力される機能や、外部スピーカ12に音声を転送可能なマイク及び外部からの音声を避難空間内に出力可能な内部スピーカが備わる態様も考え得る。この態様であれば、外部からの呼び掛けに対応可能であるのと同時に、避難者の身体状態等も併せて外部に伝えることも可能である。
【0044】
また、内部スピーカと併せて、避難テーブル1外部近傍の映像を撮影可能な外部カメラと、外部カメラの映像を避難空間の所定箇所に投影可能な内部モニタが夫々備えられている態様も考え得る。この態様の場合、外部の状況に応じ、避難者が避難空間を解除し外部へ救助を求めることや、付近の負傷者を収納部に収められた救急箱等で治療するといった柔軟な行動が可能となる。
【0045】
以上の構成要素により、本発明にかかる避難テーブル1は構成されている。本発明にかかる避難テーブル1は、主に屋内にて使用されるテーブルであり、災害発生時に避難テーブル1の天板10と底板30との間にある空間へ避難した避難者は、天板10下部又は底板30上部のいずれか一方もしくは両方に格納され、短手方向及び長手方向を閉塞する側面壁40を夫々展開し、避難空間を形成する。
また、避難空間にて救助を待つ避難者は、天板10下部所定位置や底板30上部所定位置、脚部20所定位置といった避難空間から開閉可能な箇所に設置された収納部の収納物を利用し、外部からの救助を待つこととなる。
更に、誘導ライト11や、音声出力が可能な外部スピーカ12が天板10上部所定箇所に夫々備えられることにより、避難テーブル1が瓦礫に埋もれてしまっていても外部の救助者からの発見が容易になりやすい目印となる。
【0046】
本発明にかかる避難テーブル1における実施形態の作用について以下に説明する。
本実施形態では、短手方向に展開可能な側面壁40A,Bが側面上部に観音開き状で格納され、長手方向に展開可能な側面壁40C,Dは天板10下部に観音開き状で格納されると共に側面壁40C,D展開時に出現する間隙を閉塞可能な補助壁41が備えられ、収納部50は側面壁40展開後の天板10下部及び側面壁40展開後の底板30上部に備えられ、天板10上面所定位置に備えられた避難テーブル1外部方向を照らす誘導ライト11と、天板10上部所定位置に備えられた外部スピーカ12と、天板10下部避難空間内所定箇所に備えられた室内灯13と、天板10下部近傍に設けられ避難テーブル1における電力消費を賄う蓄電バッテリ14及び排熱流路が、夫々備わった避難テーブル1を使用するといった態様となる。
【0047】
地震災害時、避難テーブル1の天板10下部と底板30上部の空間に避難者が避難し、天板10上部及び底板30上部に備えられた取手42を引くことにより側面壁40が展開可能となる。特に順序は指定しないが、例えば、天板10下部に備えられた取手42a,bを引っ張ることにより側面壁40A,Bが下方へ牽引可能となり、長手方向にて存する脚部20同士の間隙へ側面壁40A,Bを押し込む。更に、底板30上部に備えられた取手42c,dを引っ張ることにより側面壁40C,Dが上方へ牽引可能となり、短手方向にて存する脚部20同士の間隙へ側面壁40C,Dを押し込む態様となる。そして、側面壁40A,B展開時に発生する側面壁40下端部と底板30上面の間隙を閉塞する場合は、側面壁40A,Bに拘持された補助壁41を下方に展開することで、長手方向の側面が閉塞されることとなる。
また、側面壁40A,B,C,Dの展開と同時に、避難空間内に備えられている室内灯が点灯することにより避難者の視界を確保すると共に、天板10上部所定箇所に備えてある誘導ライト11が自動的に点灯し、避難テーブル1から離れた場所からでも発見が可能となる手段となる。
側面壁40A,B,C,D及び展開後の天板10上部と底板30上部の避難空間側内壁は、クッション素材にて構成されており、外部からの衝撃にて側面壁40や天板10、底板30に衝突した場合に負傷する可能性を低下させる。
【0048】
地震の振動が収まり、避難テーブル1外の安全が確保できる状態であれば、避難者は側面壁40を天板10下部又は底板30上部に格納後、避難テーブル1から出て屋外に退避し、最寄りの避難所へ避難する。しかし、地震による強い振動の継続や、家屋の崩落等により避難テーブル1からの脱出が困難な場合、避難者は避難空間内にて救助を待つこととなる。
避難空間内の天板10下部及び底板30上部には、避難者が開閉可能な収納部が備えられており、飲料水、保存食、救急箱、携帯用トイレ等の生活必需品と、蓄電バッテリから電力を供給されるスマートフォン等の電子機器を充電可能なコンセントや、防災ラジオが、強い振動で動かぬよう収納部の内壁に固定された状態で収納されている。そして、避難空間内に避難した避難者は、収納部内の物資を使用し外部からの救助を待つこととなる。
天板10下部近傍に設けられた蓄電バッテリは、コンセント、避難空間内の室内灯の他に、天板10上部に備えられている誘導ライト11及び外部スピーカ12の電源としても使用され、その充電残量はコンセント近傍にて表示されることとなる。
【0049】
避難テーブル1には、避難空間内から外部に対して救助を求める手段として、側面壁40の展開と同時に点灯している誘導ライト11、避難空間内に備えられたマイクにより避難者の音声が出力できる外部スピーカ12が夫々備わっている。外部スピーカ12は、マイクによる直接的な音声の他に、予め録音された音声や機械的に登録された音声を、手動もしくは時間や間隔を指定し自動で出力する機能を有し、付近を捜索している者に存在が伝わるよう使用することとなる。
【0050】
以上、本発明にかかる避難テーブル1の基本的構成態様、及び、作用について説明したが、本発明は、上記実施形態や図面に示す構成態様に限定するものではない。例えば天板10の形状を楕円形にする態様や、短手方向の側面壁40が予め設置してあり避難時は長手方向の避難壁のみを展開するといった態様も可能である。また、災害時において早急に側面壁を展開させる構造として、例えば、底板の所定箇所に板バネやコイルバネ等のスプリング材を設けた状態で係留金具にて固定させることで、該係留金具の開放と同時に側面壁がスプリング材の力で上方へ持ち上がるといった構造や、側面壁の基端部に電動モータを設け、避難空間内のスイッチ操作にて各側面壁を自動で展開させる構造を採ることで、安全な避難空間形成が可能な態様となる。さらに、避難テーブル1に使用される一部または全部の素材を難燃性にすることで、火災時における避難空間として使用可能となり、安全面において考慮した態様となる。
【0051】
以上の通り、本発明にかかる避難テーブル1によれば、地震などの災害時に避難できる空間を有する避難テーブル1であって、天板10下面部又は底板30上面部のいずれか一方もしくは両方に格納された側面壁40を、長手方向及び短手方向の側方空間に展開し避難空間を形成することにより、避難空間内の避難者を災害から守りつつ、誘導ライト11と外部スピーカ12により救助者へ避難者の位置特定を促し、更に避難者が救助されるまでの生活を補助する物品が収納部に収納されていることにより、避難者の命を守り抜くことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、風雨災害や土砂災害、その他あらゆる災害時の避難用として使用可能であって、企業にて使用される事務机や会議用テーブル、一般家庭にて使用されるベッドや椅子等の各種家具等への応用も可能な構成態様である。したがって、本発明にかかる「避難テーブル」の産業上の利用可能性は大であると思料する。
【符号の説明】
【0053】
1 避難テーブル
10 天板
11 誘導ライト
12 外部スピーカ
20 脚部
21 スクリュージャッキ
30 底板
40,40A,40B,40C,40D 側面壁
41 補助壁
42,42a,42b,42c,42d 取手


【要約】
【課題】災害発生時にテーブルの側方空間を防護壁の展開によって閉塞可能な避難テーブルを提供する
【解決手段】天板と該天板から下方に延伸する脚部と、該脚部の下端に天板と対向して備えられる底板と、で構成され、天板と底板の間隙に形成される側方空間を閉塞し得る側面壁が、天板下面部又は底板上面部のいずれか一方もしくは両方に格納されており、災害時に側方空間を側面壁で閉塞することで天板と底板との間に避難空間が形成される手段を採る。
【選択図】図1


図1
図2
図3
図4