(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】フランジ構造および同構造を有する熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/26 20060101AFI20230802BHJP
F28F 9/00 20060101ALI20230802BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20230802BHJP
F28D 9/02 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
F28F9/26
F28F9/00 331
F28F3/08 301Z
F28D9/02
(21)【出願番号】P 2019154170
(22)【出願日】2019-08-26
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋一
(72)【発明者】
【氏名】上里 孝次
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-349225(JP,A)
【文献】特開2012-167831(JP,A)
【文献】特開2010-060168(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0129164(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/26
F28F 9/00
F28F 3/08
F28D 9/02
F16L 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス加工によりプレートの一方の平面に環状溝(1)が形成され、その環状溝(1)の略溝底肉厚分、他方の平面に突出した環状凸部(2)を有する第1プレート(3)と、
プレス加工により前記環状凸部(2)に整合する環状凹部(5)がプレートの一方の平面に形成され、その反対側の面が平坦に形成された第2プレート(4)と、
を具備し、
前記第2プレート(4)の環状凹部(5)が前記第1プレート(3)の前記環状凸部(2)に被嵌して、第1プレート(3)と第2プレート(4)との平面間が一体に
ろう付接合され、
前記第1プレート(3)と前記第2プレート(4)は同じ材質の金属板で形成され、
前記第1プレート(3)の環状溝(1)にシールリング(6)が嵌着されると共に、環状溝(1)の内側に流体の流通口(7)が開口するフランジ構造。
【請求項2】
プレス加工によりプレートの一方の平面に環状溝(1)が形成され、その環状溝(1)の略溝底肉厚分、他方の平面に突出した環状凸部(2)を有する第1プレート(3)と、
プレス加工により前記環状凸部(2)に整合する略環状の凹部(5a)がプレートの一方の平面に形成され、その反対側の面が平坦に形成された第2プレート(4)と、
を具備し、
前記凹部(5a)を横断して長孔(7c)が第2プレート(4)に貫通され、
前記長孔(7c)を除いて、前記第2プレート(4)の凹部(5a)が前記第1プレート(3)の前記環状凸部(2)に被嵌して、第1プレート(3)と第2プレート(4)との平面間が一体に
ろう付接合され、
前記第1プレート(3)と前記第2プレート(4)は同じ材質の金属板で形成され、
前記第1プレート(3)の環状溝(1)にシールリング(6)が嵌着されると共に、環状溝(1)の内側に流体の流通口(7)が開口され、その流通口(7)と前記長孔(7c)とが連通されたフランジ構造。
【請求項3】
前記環状溝(1)の深さが、第1プレート(3)の厚さ以上に形成された請求項1または請求項2のいずれかに記載のフランジ構造。
【請求項4】
積層型の熱交換器(8)の端部に、請求項1~請求項3のいずれかに記載のフランジ構造を有する熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ構造に関するものであり、特に、オイルクーラ等の熱交換器に最適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
皿状のプレートを積層し、それらのプレート間にそれぞれ異なる流体を流通させる第1流路と第2流路とが形成される熱交換器の下端には、ケーシングに接続されるフランジが設けられている。
そのフランジは、
図6に示す如く、フランジ形成用のプレートを2枚重ねし、その平面に図示しないオイル孔を形成するとともに、そのオイル孔の孔縁部にシールリング溝を設け、対向するケーシングとの間を、ボルトを介して、液密に固定したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレートを2枚重ねして、フランジを形成し、オイル孔の孔縁にシールリング溝を形成する場合、シールリング溝の深さだけ、フランジの板厚が厚くなり、軽量化できない欠点があった。
そこで、本発明はプレートを2枚重ねした形状のフランジ構造において、強度が高く、且つ厚みの薄い軽量化したフランジ構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、プレス加工によりプレートの一方の平面に環状溝1が形成され、その環状溝1の略溝底肉厚分、他方の平面に突出した環状凸部2を有する第1プレート3と、
プレス加工により前記環状凸部2に整合する環状凹部5がプレートの一方の平面に形成され、その反対側の面が平坦に形成された第2プレート4と、
を具備し、
前記第2プレート4の環状凹部5が前記第1プレート3の前記環状凸部2に被嵌して、第1プレート3と第2プレート4との平面間が一体に接合され、
前記第1プレート3の環状溝1にシールリング6が嵌着されると共に、環状溝1の内側に流体の流通口7が開口するフランジ構造である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、プレス加工によりプレートの一方の平面に環状溝1が形成され、その環状溝1の略溝底肉厚分、他方の平面に突出した環状凸部2を有する第1プレート3と、
プレス加工により前記環状凸部2に整合する略環状の凹部5aがプレートの一方の平面に形成され、その反対側の面が平坦に形成された第2プレート4と、
を具備し、
前記凹部5aを横断して長孔7cが第2プレート4に貫通され、
前記長孔7cを除いて、前記第2プレート4の凹部5aが前記第1プレート3の前記環状凸部2に被嵌して、第1プレート3と第2プレート4との平面間が一体に接合され、
前記第1プレート3の環状溝1にシールリング6が嵌着されると共に、環状溝1の内側に流体の流通口7が開口され、その流通口7と前記長孔7cとが連通されたフランジ構造である。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、前記環状溝1の深さが、第1プレート3の厚さ以上に形成された請求項1または請求項2のいずれかに記載のフランジ構造である。
【0008】
請求項4に記載の本発明は、積層型の熱交換器8の端部に、請求項1~請求項3のいずれかに記載のフランジ構造を有する熱交換器である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明は、第1プレート3の一方の平面に環状溝1が形成され、その環状溝1の略溝底肉厚分、他方の平面に突出した環状凸部2を有し、環状凸部2に整合する環状凹部5が第2プレート4の一方の平面に形成され、その反対側の面が平坦に形成され、環状凹部5が環状凸部2に被嵌して、第1プレート3と第2プレート4との平面間が一体に接合されたものである。
この接合により、各プレートの厚みを比較的薄くしても、嵌着する環状凹部5と環状凸部2により全体の剛性を高めて、強度の高いフランジ構造となる。それと共に、第1プレート3の環状溝1を深く形成でき、そこに嵌着するシールリング6のシール効果を高めることができる。さらには、第1プレート3の両面がプレス加工により製作されて、軽量化される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、第1プレート3の環状凸部2に、第2プレート4の略環状の凹部5aが嵌着して、第1プレート3と第2プレート4との平面間が一体に接合されたものである。
この接合により、請求項1と同様に、各プレートの厚みを比較的薄くしても、嵌着する凹部5aと環状凸部2により全体の剛性を高めて、強度の高いフランジ構造となる。それと共に、プレス加工による製造容易なフランジ構造となり、その軽量化を行なえる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、プレス加工により、環状溝1の深さを第1プレート3の厚さ以上に形成したものである。これにより、フランジ構造の更なる薄肉化と剛性の強化を行なえる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、そのフランジ構造を積層型の熱交換器の端部に形成したものである。それにより、熱交換器の端部の開口を、対向する相手の平面に、シールリングを介して液密に接続し、流体を一方から他方に、確実に受け渡すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施例のフランジ構造を有する熱交換器を示す説明図。
【
図3】本発明の第2実施例のフランジ構造を有する熱交換器を示す説明図。
【
図4】同熱交換器の要部を示す説明図及び、同第2実施例のフランジ構造の分解斜視図。
【
図5】本発明の第3実施例のフランジ構造の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき、説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を示すフランジ構造、およびそれを有する熱交換器8の説明図であって、(A)は(C)のA-A矢視断面図、(B)は(A)のB部拡大図、(C)は同熱交換器8の斜視図、(D)は同熱交換器8の第1プレート3及び第2プレート4の底面図である。また、
図2は本発明のフランジ構造の要部横断面図である。
【0015】
熱交換器8の下端面には、
図1(A)、(B)、(D)に示す如く、第1プレート3と第2プレート4との接合体からなるフランジ構造を有している。
熱交換器8の最下端に配置されたフランジ構造の第1プレート3は、その左端に流通口7aが、その中間部に流通口7bが穿設される。そして、
図1(D)に記載のごとく、それらの口縁部を囲むように、第1プレート3の一方の平面に環状溝1が形成されている。その第1プレート3は、
図1(B)のごとく、その環状溝1の深さ分だけ、他方の平面に突出した環状凸部2を有する。
第1プレート3の環状溝1には、シールリング6が嵌着される。
【0016】
次に、第2プレート4には、第1プレート3の流通口7a、流通口7bに整合する流通口7が設けられる。そして、第2プレートの一方の平面には、第1プレート3の環状凸部2に整合する環状凹部5が形成されている。第2プレート4の他方の平面は、平坦に形成されている。
そして、第2プレート4の環状凹部5が第1プレート3の環状凸部2に被嵌されている。第1プレート3と第2プレート4との平面間は、ろう付により、一体に接合されている。このような第1プレート3及び第2プレート4は、金属板をプレス加工することにより形成することができる。
この例では、環状凸部2と環状凹部5との間に僅かな隙間が形成されているが、この隙間は存在しなくともよい。
【0017】
このようにしてなるフランジ構造の上部には、
図1(A)、(C)に記載のごとく、熱交換器8のコアを配置することができる。
この例の熱交換器8は、皿状の第1エレメント11と第2エレメント12とが交互に積層されてコアが形成され、第1エレメント11と第2エレメント12との間には、1枚おきに異なる流体が流通する第1流路と、第2流路が形成される。
そのコアの上端にトッププレート10が配置され、下端にボトムプレート9が配置される。トッププレート10には、天板13が被嵌されている。その天板13には、図において左側に、連絡路15が膨出している。
このような熱交換器8は、各プレートを積層して、全体を高温の炉内で、一体にろう付接合される。熱交換器の各プレートは、同じ材質の金属板で形成できる。金属板の材質としては、例えば、アルミニウム、アルミニウムの合金、ステンレスなどを用いることができる。
【0018】
図1(A)に記載のごとく、同図の左端部に第1流体16(例えば、オイル)の入口となる流通口7aが配置されている。また、中間部には、第1流体16の出口となる流通口7bが開口している。そして、環状溝1にシールリング6が取付けられる。プレート積層方向の中間位置には、仕切20が配置されている。
第1プレート3の下面側は、図示しないエンジンのケーシングの表面に固定され、一対のシールリング6により、ケーシングとの間が液密に接合される。
【0019】
流通口7aから第1流体16(例として、オイル)が流入し、各第1流路を2パスで流通する。即ち、流通口7aから流入した第1流体16は、仕切20の下側の流路を通り、
図1(A)の右端部の連通孔をUターンし、仕切20の上面側の連通孔に導かれる。次いで、連絡路15を介して流通口7bから図示しないエンジンに還流する。
また、
図1(C)において、一対のパイプ14の一方から第2流体17(例として、冷却水)が流入し、それがコアの各第2流路を通り、他方のパイプ14から流出する。そしてコア内で第2流体17と第1流体16との間に熱交換が行われる。
【0020】
次に、
図3は、本発明のフランジ構造およびそれを有する熱交換器8の第2実施例であり、
図3(A)は(C)のA-A矢視断面図、(B)は(A)のB部拡大図、(C)は第2実施例のフランジを用いた熱交換器8の斜視図、(D)は同フランジ構造の底面図である。そして、
図4は同第2実施例の要部を示す説明図であって、
図4(A)はその要部拡大図、
図4(B)は同第2実施例のフランジ構造の分解斜視図である。
【0021】
この第2実施例では、
図3(D)、
図4(A)、(B)に示す如く、第1プレート3の流通口7a、7bは、両者とも第1プレート3の環状溝1の内側に配置されている。そして、第1プレート3には、環状溝1の深さ分、突出する環状凸部2が形成される。環状溝1には、
図4(B)に示す如く、1つのシールリング6が嵌着する。
第2プレート4には、第1プレート3の環状凸部2を被嵌する略環状の凹部5aが形成されると共に、その凹部5aを横断する長孔7cが形成されている。第1プレート3の流通口7aと第2プレート4の長孔7cとが連通する。
この例においては、
図4(B)に示す如く、第2プレート4の凹部5aを長孔7cが横断するため、その分だけ略環状の凹部5aが部分的に欠設される。そして、長孔7cを除いた分だけ、凹部5aが第1プレート3の環状凸部2に被嵌される。
【0022】
前記第1実施例では、第1流体16が2パスに流通したが、この第2実施例では第1流体16が、
図3(A)に示す如く、1パスで流通する。
第1流体16は、第1プレート3の流通口7aから流入し、第2プレート4の長孔7cから熱交換器8の各第1流路に供給される。
この例でも、第1プレート3と第2プレート4とが接合され、且つ環状凸部2と略環状の凹部5aとの組合せにより、フランジ構造の剛性が高まる。それと共に、環状溝1の深さを深くして、シール性を確保しつつ、フランジ構造の軽量化を図ることができる。
【0023】
図5は、本発明のフランジ構造の他の実施例であり、この例では、第1プレート3の環状溝1の深さが、第1プレート3の厚みより深く形成され、その溝の深さの分、突出する環状凸部2が形成されている。そして、その凸部2に整合する環状凹部5が第2プレートに形成され、環状凹部5が環状凸部2に被嵌し、対向面がろう付接合されている。
図5の例は、第2実施例にも適用させることができる。この場合、その第1プレート3の環状凸部2は、第2プレート4に形成された略環状の凹部5aに被嵌される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、熱交換器用のフランジ構造として有益なものである。
ただし、上述したフランジ構造を適用する対象は、熱交換器以外のものであっても良い。
【符号の説明】
【0025】
1 環状溝
2 環状凸部
3 第1プレート
4 第2プレート
5 環状凹部
5a 凹部
6 シールリング
7 流通口
7a 流通口
7b 流通口
7c 長孔
8 熱交換器
【0026】
9 ボトムプレート
10 トッププレート
11 第1エレメント
12 第2エレメント
13 天板
14 冷却水パイプ
15 連絡路
16 第1流体(オイル)
17 第2流体(冷却水)
19 ボルト孔
20 仕切