(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】駆動システム
(51)【国際特許分類】
B60L 9/18 20060101AFI20230802BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20230802BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20230802BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230802BHJP
B60W 20/50 20160101ALN20230802BHJP
【FI】
B60L9/18 J
B60L3/00 J
H02P27/06
H02J7/00 P
B60W20/50
(21)【出願番号】P 2018188669
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】岡本 亮太郎
(72)【発明者】
【氏名】脇本 亨
(72)【発明者】
【氏名】作石 翼
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/100835(WO,A1)
【文献】特開2017-022843(JP,A)
【文献】特開2018-093608(JP,A)
【文献】特開2010-200527(JP,A)
【文献】特開2009-095232(JP,A)
【文献】特開2016-140204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
H02P 27/06
H02J 7/00
B60W 10/00-20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置(40)を有する車両に適用される駆動システム(70)であって、
回転電機(10)と、
前記回転電機に接続されるインバータ(20)と、
前記蓄電装置の電源電圧(Vbat)を変圧させて、前記インバータに出力するコンバータ(30)と、
前記インバータ及び前記コンバータを制御する制御部(60)と
、
前記コンバータの温度(Tc)を取得する温度取得部と、を備え、
前記制御部は、
前記温度取得部により取得された温度が閾値温度(Ttg1)よりも高くなる場合に、前記インバータの温度上昇を抑制するとともに、前記コンバータの温度上昇を許容する前記インバータ及び前記コンバータの制御モードである第1モード
から、前記インバータの温度上昇を許容するとともに、前記コンバータの温度上昇を抑制する前記インバータ及び前記コンバータの制御モードである第2モード
に切り替える駆動システム。
【請求項2】
前記コンバータは、リアクトル(32)と、前記リアクトルに流れる電流量(Qi)を調整する調整スイッチ(SCH,SCL)と、を有し、
前記制御部は、前記第2モードにおいて、前記第1モードよりも前記電流量の変動量が小さくなるように前記調整スイッチを制御する請求項1に記載の駆動システム。
【請求項3】
前記コンバータは、前記電源電圧を降圧させて、前記インバータに出力する降圧型のコンバータであり、
前記制御部は、前記電源電圧に対する前記インバータへの出力電圧(Vout)の降圧比をRvとして、0.5≦Rv≦1.0の範囲において、前記第2モードの降圧比を前記第1モードの降圧比よりも大きく設定する請求項2に記載の駆動システム。
【請求項4】
前記インバータは、直列接続された上アームスイッチ(SIH)及び下アームスイッチ(SIL)を備え、
前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記第2モードよりも所定期間当たりの前記上、下アームスイッチのスイッチング回数が少なくなるように前記上、下アームスイッチを制御する請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記インバータに対して、前記第1モードにおいて矩形制御を実施し、前記第2モードにおいてパルス幅変調制御を実施する請求項4に記載の駆動システム。
【請求項6】
前記閾値温度は、第1閾値温度(Ttg1)であり、
前記制御部は、前記温度取得部により取得された温度が前記第1閾値温度よりも低い第2閾値温度(Ttg2)未満となる場合に、前記第2モードから前記第1モードに切り替える請求項
1から請求項5までのいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項7】
前記温度取得部は、第1温度取得部であり、
前記インバータの温度(Ti)を取得する第2温度取得部を備え、
前記制御部は、前記第2温度取得部により取得された温度がインバータ用閾値温度(Ttg3)よりも高くなる場合に、前記第2モードから前記第1モードに切り替える請求項
1から請求項6までのいずれか一項に記載の駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行用のエンジンとモータとを備えるハイブリット車が知られている(例えば、特許文献1)。このようなハイブリット車では、コンバータやインバータを介して、車両に備えられた蓄電装置からモータに電力を供給する。コンバータの発熱量は、車速が低いほど小さいことから、モータへの電力供給が可能なコンバータの上限温度である閾値温度を、低速走行時において高速走行時よりも高く設定する。これにより、低速走行時において、比較的高い温度までモータへ電力供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のように閾値温度を設定したとしても、コンバータの温度が閾値温度よりも高くなる場合には、モータ等の回転電機へ電力供給することができない。このような課題は、コンバータに限られず、インバータにも共通の課題である。コンバータとインバータとの一方の温度が閾値温度よりも高くなる場合でも、回転電機への電力供給を継続することができる技術が望まれている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンバータとインバータとの一方の温度が閾値温度よりも高くなる場合でも、回転電機へ電力供給することができる駆動システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、蓄電装置を有する車両に適用される駆動システムであって、回転電機と、前記回転電機に接続されるインバータと、前記蓄電装置の電源電圧を変圧させて、前記インバータに出力するコンバータと、前記インバータ及び前記コンバータを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記インバータの温度上昇を抑制するとともに、前記コンバータの温度上昇を許容する前記インバータ及び前記コンバータの制御モードである第1モードと、前記インバータの温度上昇を許容するとともに、前記コンバータの温度上昇を抑制する前記インバータ及び前記コンバータの制御モードである第2モードと、を切り替える。
【0007】
本発明の駆動システムでは、インバータ及びコンバータが、第1モードと第2モードとに切り替えられる。第1モードでは、インバータの温度上昇が抑制されるとともに、コンバータの温度上昇が許容される。また、第2モードでは、インバータの温度上昇が許容されるとともに、コンバータの温度上昇が抑制される。そのため、第1モードにおいてコンバータの温度が閾値温度よりも高くなる場合には、インバータ及びコンバータが第2モードに切り替えられる。これにより、コンバータの温度上昇を抑制しつつ、回転電機への電力供給を継続することができる。
【0008】
また、第2モードにおいてインバータの温度が閾値温度よりも高くなる場合には、インバータ及びコンバータが第1モードに切り替えられる。これにより、インバータの温度上昇を抑制しつつ、回転電機への電力供給を継続することができる。
【0009】
さらに、第2モードでは、コンバータの温度上昇が抑制されるため、インバータ及びコンバータが第1モードから第2モードに切り替えられ、その後再び第1モードに切り替えられる際には、コンバータの温度は閾値温度よりも十分に低下している。そのため、第1モードに切り替えられた後において、回転電機への電力供給を好適に継続することができる。インバータ及びコンバータが第2モードから第1モードに切り替えられ、その後再び第2モードに切り替えられる際におけるインバータの温度についても同様である。
【0010】
この結果、インバータとコンバータとの一方の温度が閾値温度よりも高くなる場合でも、回転電機への電力供給を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る駆動システムの全体構成図。
【
図2】第1実施形態に係るモード制御処理のフローチャート。
【
図3】第1モードにおいてコンバータの平滑リアクトルに流れる電流量の推移を示すタイムチャート。
【
図4】第2モードにおいてコンバータの平滑リアクトルに流れる電流量の推移を示すタイムチャート。
【
図5】コンバータの降圧比と平滑リアクトルの発熱量との関係を示す図。
【
図6】コンバータの温度とインバータの温度との推移を示すタイムチャート。
【
図7】第2実施形態に係る駆動システムの全体構成図。
【
図8】第2実施形態に係るモード制御処理のフローチャート。
【
図9】第3実施形態に係る駆動システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る駆動システムを具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の駆動システム70は、車両に搭載されている。
【0013】
図1に示すように、駆動システム70は、回転電機10と、インバータ20と、コンバータ30と、蓄電装置としての直流電源40と、回転電機10を制御対象とする制御部60とを備えている。本実施形態において、回転電機10は、星形結線された3相の巻線11を備えている。回転電機10のロータは、車両の駆動輪と動力伝達が可能なように接続されている。回転電機10は、例えば同期機である。
【0014】
回転電機10は、インバータ20及びコンバータ30を介して、直流電源40に接続されている。本実施形態において、直流電源40は、充放電可能な蓄電池である。
【0015】
インバータ20は、U,V,W相それぞれについて、上アームスイッチSIHと下アームスイッチSILとの直列接続体を備えている。本実施形態では、各スイッチSIH,SILとして、ユニポーラ素子であってかつSiCのNチャネルMOSFETが用いられている。上アームスイッチSIHは、ボディダイオードとしての上アームダイオードDIHを有し、下アームスイッチSILは、ボディダイオードとしての下アームダイオードDILを有している。
【0016】
インバータ20は、回転電機10及びコンバータ30に接続されている。具体的には、各相において、上アームスイッチSIHのソースと下アームスイッチSILのドレインとの接続点には、回転電機10の巻線11の第1端が接続されている。各相の巻線11の第2端は、中性点で接続されている。
【0017】
コンバータ30は、直流電源40の電源電圧Vbatを降圧(変圧)させて、インバータ20に出力する降圧型のDC-DCコンバータである。コンバータ30は、上アーム変圧スイッチSCHと下アーム変圧スイッチSCLとの直列接続体31と、平滑リアクトル32と、第1平滑コンデンサ33とを備えている。本実施形態では、各変圧スイッチSCH,SCLとして、ユニポーラ素子であってかつSiCのNチャネルMOSFETが用いられている。上アーム変圧スイッチSCHは、ボディダイオードとしての上アーム変圧ダイオードDCHを有し、下アーム変圧スイッチSCLは、ボディダイオードとしての下アーム変圧ダイオードDCLを有している。
【0018】
上アーム変圧スイッチSCHのドレインには、直流電源40の正極端子が接続されているとともに、第1平滑コンデンサ33の高電圧側端子が接続されている。上アーム変圧スイッチSCHのソースと下アーム変圧スイッチSCLのドレインとの接続点には、平滑リアクトル32の第1端が接続されている。平滑リアクトル32の第2端には、インバータ20の各相における上アームスイッチSIHのドレインが接続されている。下アーム変圧スイッチSCLのソースには、直流電源40の負極端子、第1平滑コンデンサ33の低電圧側端子、及びインバータ20の各相における下アームスイッチSIHのソースが接続されている。
【0019】
駆動システム70は、相電流検出部23と、電源電圧検出部24と、温度検出部25と、第2平滑コンデンサ26と、を備えている。相電流検出部23は、回転電機10に流れる各相電流のうち、少なくとも2相分の電流を検出する。電源電圧検出部24は、第1平滑コンデンサ33の端子電圧を電源電圧Vbatとして検出する。温度検出部25は、コンバータ30の温度Tcを検出する。具体的には、温度検出部25は、コンバータ30の平滑リアクトル32の温度Tcを検出する。各検出部23~25の検出値は、制御部60に入力される。第2平滑コンデンサ26は、インバータ20とコンバータ30との間に設けられている。
【0020】
制御部60は、取得した検出値に基づき、回転電機10の制御量をその指令値に制御すべく、インバータ20及びコンバータ30を制御する。制御量は、例えばトルクである。制御部60は、インバータ20の制御において、デッドタイムを挟みつつ上,下アームスイッチSIH,SILを交互にオン状態とすべく、上,下アームスイッチSIH,SILそれぞれに対応する駆動信号SIGを、上,下アームスイッチSIH,SILに出力する。駆動信号SIGは、スイッチのオン状態への切り替えを指示するオン指令と、オフ状態への切り替えを指示するオフ指令とのいずれかをとる。なお、本実施形態において、オン状態が「閉状態」に相当し、オフ状態が「開状態」に相当する。
【0021】
また、制御部60は、コンバータ30の制御において、上,下アーム変圧スイッチSCH,SCLそれぞれに対応する駆動信号SCGを、上,下アーム変圧スイッチSCH,SCLに出力する。直流電源40を放電する場合において、上,下アーム変圧スイッチSCH,SCLをオン状態とする期間は、電源電圧Vbatに対するインバータ20への出力電圧Voutの比(以下、降圧比)Rvに応じて設定される。コンバータ30の降圧比Rvは、(式1)のように表される。
【0022】
Rv=Vout/Vbat・・・(式1)
なお、制御部60が提供する機能は、例えば、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実施するコンピュータ、ハードウェア、又はそれらの組み合わせによって提供することができる。
【0023】
ところで、コンバータ30では、上,下アーム変圧スイッチSCH,SCLの状態を切り替えることにより、平滑リアクトル32に流れる電流量Qiが変動する。つまり、上,下アーム変圧スイッチSCH,SCLは、平滑リアクトル32に流れる電流量Qiを調整する調整スイッチであるということができる。平滑リアクトル32に流れる電流量Qiが変動すると、つまり平滑リアクトル32に流れる電流に交流成分が発生すると平滑リアクトル32が発熱し、コンバータ30の温度Tcが上昇する。
【0024】
コンバータ30の温度Tcが上昇し、コンバータ30の温度Tcが許容限界温度を超える高温状態となると、コンバータ30が使用不能状態となる。従来、駆動システム70では、コンバータ30の温度Tcが、許容限界温度よりも低い温度に設定された閾値温度よりも高くなる場合に、回転電機10への電力供給を停止し、コンバータ30の温度Tcが許容限界温度を超えないようにしていた。
【0025】
また、インバータ20では、上,下アームスイッチSIH,SILの状態を切り替えることにより、上,下アームスイッチSIH,SILにスイッチング損失が発生する。上,下アームスイッチSIH,SILにスイッチング損失が発生すると、上,下アームスイッチSIH,SILが発熱し、インバータ20の温度Tiが上昇する。
【0026】
インバータ20の温度Tiが上昇し、インバータ20の温度Tiが許容限界温度を超える高温状態となると、インバータ20が使用不能状態となる。従来、駆動システム70では、インバータ20の温度Tiが、許容限界温度よりも低い温度に設定された閾値温度よりも高くなる場合に、回転電機10への電力供給を停止し、インバータ20の温度Tiが許容限界温度を超えないようにしていた。
【0027】
つまり、従来、インバータ20とコンバータ30との少なくとも一方の温度Ti,Tcが、閾値温度よりも高くなる場合には、回転電機10へ電力供給することができなかった。例えばハイブリット車では、車両の燃費向上のために、回転電機10の使用頻度の増加が望まれている。そのため、インバータ20とコンバータ30との一方の温度Ti,Tcが閾値温度よりも高くなる場合でも、回転電機10へ電力供給することができる技術が望まれている。
【0028】
本実施形態の駆動システム70では、第1モードと第2モードとを切り替えるモード制御処理を実施する。第1モードは、インバータ20の温度上昇を抑制するとともに、コンバータ30の温度上昇を許容するインバータ20及びコンバータ30の制御モードである。また、第2モードは、インバータ20の温度上昇を許容するとともに、コンバータ30の温度上昇を抑制するインバータ20及びコンバータ30の制御モードである。第1モードと第2モードとを切り替えることにより、インバータ20及びコンバータ30の過度な温度上昇を抑制しつつ、回転電機10への電力供給を継続することができる。
【0029】
図2に本実施形態のモード制御処理のフローチャートを示す。モード制御処理は、直流電源40から回転電機10に電力供給する際に、コンバータ30の温度Tcに基づいて、第1モードと第2モードとを切り替える処理である。モード制御処理は、直流電源40から回転電機10への電力供給時に、制御部60により実施される。
【0030】
モード制御処理を開始すると、まずステップS10において、コンバータ30の温度Tcを取得する。コンバータ30の温度Tcは、温度検出部25を用いて取得される。続くステップS12において、ステップS10で取得した温度Tcが、コンバータ30の閾値電圧である第1閾値温度Ttg1よりも高いかを判定する。
【0031】
ステップS12で否定判定すると、ステップS14において、コンバータ30の上,下アーム変圧スイッチSCH,SCLを降圧制御する。降圧制御では、回転電機10への電力供給中に、上,下アーム変圧スイッチSCH,SCLのオン状態とオフ状態とを切り替え、これにより直流電源40の電源電圧Vbatを出力電圧Voutに降圧させて、インバータ20に出力させる。
【0032】
続くステップS16において、インバータ20を矩形制御する(
図3(e)参照)。矩形制御では、電気角1周期においてデットタイムを挟みつつ上,下アームスイッチSIH,SILをそれぞれ1回ずつオン状態とし、各相の上,下アームスイッチSIH,SILのスイッチングパターンが120°ずつずれるように制御する。
【0033】
以下、コンバータ30を降圧制御し、インバータ20を矩形制御するモードを、第1モードという。ステップS14,S16でインバータ20とコンバータ30とを第1モードに切り替えると、ステップS18において、第1モードに制御されたインバータ20とコンバータ30とを介して、規定期間に亘って、直流電源40から回転電機10に電力供給させる。
【0034】
ステップS20において、車両停止等により回転電機10への電力供給が終了したかを判定する。ステップS20で肯定判定すると、ステップS42において、インバータ20の上,下アームスイッチSIH,SIL及びコンバータ30の上,下アーム変圧スイッチSCH,SCLをオフ状態に制御し、モード制御処理を終了する。
【0035】
一方、ステップS20で否定判定すると、ステップS22において、コンバータ30の温度Tcを取得する。続くステップS24において、ステップS22で取得した温度Tcが第1閾値温度Ttg1よりも高いかを判定する。ステップS24で否定判定すると、ステップS18に戻る。
【0036】
一方、ステップS12又はステップS24で肯定判定すると、ステップS28において、コンバータ30の上アーム変圧スイッチSCHをオン状態に制御するとともに、下アーム変圧スイッチSCLをオフ状態に制御する。
【0037】
続くステップS30において、インバータ20をパルス幅変調制御(以下、PWM制御)する(
図4(e)参照)。PWM制御では、回転電機10への出力電圧の目標値である目標電圧Vmot(
図1参照)と、三角波信号等のキャリア信号との大小比較に基づいて、上,下アームスイッチSIH,SILの状態を制御する。PWM制御では、比較的高いキャリア信号の周波数に応じて、上,下アームスイッチSIH,SILの状態が切り替えられる。そのため、PWM制御は、矩形制御と比較して、電気角1周期当たりのスイッチング回数が多く、矩形制御は、PWM制御と比較して、電気角1周期当たりのスイッチング回数が少ない。そのため、第1モードでは、第2モードよりも電気角1周期当たりのスイッチング回数が少なくなるように、上,下アームスイッチSIH,SILが制御される。なお、本実施形態において、電気角1周期が「所定期間」に相当する。
【0038】
以下、コンバータ30の上アーム変圧スイッチSCHをオン状態に制御するとともに、下アーム変圧スイッチSCLをオフ状態に制御し、インバータ20をPWM制御するモードを、第2モードという。制御部60は、ステップS10又はステップS22で取得された温度Tcが第1閾値温度Ttg1よりも高い場合に、ステップS28,S30でインバータ20とコンバータ30とを第1モードから第2モードに切り替える。続くステップS32において、第2モードに制御されたインバータ20とコンバータ30とを介して、規定期間に亘って、直流電源40から回転電機10に電力供給させる。
【0039】
ステップS34において、回転電機10への電力供給が終了したかを判定する。ステップS34で肯定判定すると、ステップS42に進む。一方、ステップS34で否定判定すると、ステップS36において、コンバータ30の温度Tcを取得する。続くステップS38において、ステップS36で取得した温度Tcが、第1閾値温度Ttg1よりも低い温度に設定された第2閾値温度Ttg2未満となるかを判定する。なお、本実施形態において、ステップS10,S22,S36の処理が「温度取得部」に相当する。
【0040】
ステップS38で否定判定すると、ステップS34に戻る。一方、ステップS38で肯定判定すると、ステップS14に進む。つまり、制御部60は、ステップS36で取得された温度Tcが第2閾値温度Ttg2未満となる場合に、ステップS14,S16でインバータ20とコンバータ30とを第2モードから第1モードに切り替える。
【0041】
続いて、
図3,4に、モード制御処理の各モードにおいてコンバータ30の平滑リアクトル32に流れる電流量Qiの推移を示す。ここで、
図3,4において、(a)は、コンバータ30の上アーム変圧スイッチSCHの状態の推移を示し、(b)は、コンバータ30の下アーム変圧スイッチSCLの状態の推移を示す。また、(c)は、平滑リアクトル32に印加される印加電圧Vrec(
図1参照)の推移を示し、(d)は、電流量Qiの推移を示す。また、(e)は、インバータ20の各上アームスイッチSIH及び各下アームスイッチSILの状態の推移す。なお、(e)において、「上」は各相の上アームスイッチSIHを示し、「下」は各相の下アームスイッチSIHを示す。
【0042】
図3(a),(b)に示すように、第1モードでは、コンバータ30が降圧制御され、上,下アーム変圧スイッチSCH,SCLのオン状態とオフ状態とが切り替られる。なお、直流電源40を充電する場合におけるスイッチング周期をTaとすると、上アーム変圧スイッチSCHをオン状態とするオン期間Tonは、コンバータ30の降圧比Rvを用いて(式2)のように表される。
【0043】
Ton=Rv×Ta・・・(式2)
これにより、
図3(c)に示すように、印加電圧Vrecは、電源電圧Vbatと接地電圧との間で変動する。この結果、
図3(d)に示すように、電流量Qiは、最大電流量Qimaxと最小電流量Qiminとの間で変動する。電流量Qiが変動すると、平滑リアクトル32が発熱し、コンバータ30の温度Tcが上昇する。
【0044】
図5に、コンバータ30の降圧比Rvと平滑リアクトル32の発熱量Precとの関係を示す。
図5に示すように、発熱量Precは、降圧比RvがRv=0.0の場合にゼロとなり、降圧比Rvが0.0≦Rv≦0.5の範囲で、降圧比Rvが大きくなるほど大きくなる。また、発熱量Precは、降圧比RvがRv=0.5の場合に最大となり、降圧比Rvが0.5≦Rv≦1.0の範囲で、降圧比Rvが大きくなるほど小さくなり、降圧比RvがRv=1.0の場合にゼロとなる。
【0045】
本実施形態では、第1モードにおいて、降圧比Rvが0.5≦Rv<1.0の範囲内の値に設定されている。そのため、発熱量Precはゼロではなく、この発熱量Precによりコンバータ30の温度Tcが上昇する。
【0046】
また、
図3(e)に示すように、第1モードでは、インバータ20が矩形制御される。矩形制御は、PWM制御と比較して、電気角1周期当たりのスイッチング回数が少ないため、スイッチング損失による上,下アームスイッチSIH,SILの発熱が抑制され、インバータ20の温度Tiの上昇が抑制される。つまり、第1モードでは、インバータ20の温度上昇が抑制されるとともに、コンバータ30の温度上昇が許容される。
【0047】
一方、
図4(a),(b)に示すように、第2モードでは、コンバータ30の上アーム変圧スイッチSCHがオン状態に制御され、下アーム変圧スイッチSCLがオフ状態に制御される。そのため、
図4(c),(d)に示すように、印加電圧Vrecは電源電圧Vbatに維持され、電流量Qiの変動が抑制される。つまり、第2モードは、第1モードよりも電流量Qiの変動が小さくなるように上,下アーム変圧スイッチSCH,SCLを制御するモードであるということができる。この結果、平滑リアクトル32の発熱が抑制され、コンバータ30の温度Tcの上昇が抑制される。
【0048】
具体的には、本実施形態では、第2モードにおいて、降圧比RvがRv=1.0に設定されている。つまり、0.5≦Rv≦1.0の範囲において、第2モードの降圧比Rvが第1モードの降圧比Rvよりも大きく設定される。そのため、発熱量Precはゼロであり、コンバータ30の温度Tcの上昇が抑制される。
【0049】
また、
図4(e)に示すように、第2モードでは、インバータ20がPWM制御される。PWM制御は、矩形制御と比較して、電気角1周期当たりのスイッチング回数が多いため、スイッチング損失による上,下アームスイッチSIH,SILの発熱が多く、インバータ20の温度Tiが上昇する。つまり、第2モードでは、インバータ20の温度上昇が許容されるとともに、コンバータ30の温度上昇が抑制される。
【0050】
上述したように、第1モードでは、インバータ20の温度上昇が抑制されるとともに、コンバータ30の温度上昇が許容され、第2モードでは、インバータ20の温度上昇が許容されるとともに、コンバータ30の温度上昇が抑制される。本発明者らは、この点に着目した。すなわち、第1モードと第2モードとを切り替えることにより、駆動システム70内におけるインバータ20やコンバータ30等の各部位の局所的な温度上昇を制御することができ、インバータ20及びコンバータ30の過度な温度上昇を抑制しつつ、回転電機10への電力供給を継続することができることを見出した。
【0051】
図6に、モード制御処理におけるコンバータ30の温度Tcとインバータ20の温度Tiとの推移を示す。ここで、
図6(a)は、コンバータ30の温度Tcの推移を示し、
図6(b)は、インバータ20の温度Tiの状態の推移を示し、
図6(c)は、回転電機10への電力供給状態の推移を示す。
【0052】
なお、
図6には、本実施形態の駆動システム70における各種値の推移を示すグラフF1(実線)と、比較例における各種値の推移を示すグラフF2(破線)と、が示されている。本実施形態の駆動システム70と比較例とは、本実施形態の駆動システム70では第1モードと第2モードとが切り替えられ、比較例では第1モードのみが実施される点で異なる。
【0053】
図6に示すように、比較例では、第1モードのみが実施されるため、インバータ20の温度Tiに比べてコンバータ30の温度Tcが上昇しやすい。そして、時刻t11において、コンバータ30の温度Tcが第1閾値温度Ttg1よりも高くなる場合には、コンバータ30の温度Tcが許容限界温度を超えないようにするため、回転電機10への電力供給を停止させる必要があった。
【0054】
一方、本実施形態の駆動システム70では、第1モードの実施中に、コンバータ30の温度Tcが第1閾値温度Ttg1よりも高くなる場合には、第2モードに切り替える。第2モードでは、コンバータ30の温度上昇が抑制される。そのため、第2モードに切り替えることで、コンバータ30の温度Tcが許容限界温度を超えないようにしつつ、回転電機10への電力供給を継続させることができる。
【0055】
第2モードでは、コンバータ30の温度Tcが低下するとともに、インバータ20の温度Tiが上昇する。そして、時刻t12において、コンバータ30の温度Tcが第2閾値温度Ttg2未満となるとともに、インバータ20の温度Tiがインバータ20の閾値電圧である第3閾値温度Ttg3よりも高くなる。本実施形態の駆動システム70では、第2モードの実施中に、コンバータ30の温度Tcが第2閾値温度Ttg2未満となる場合に、つまりインバータ20の温度Tiがインバータ用閾値温度としての第3閾値温度Ttg3よりも高くなる場合に、第1モードに切り替える。第1モードでは、インバータ20の温度上昇が抑制される。そのため、第1モードに切り替えることで、インバータ20の温度Tiが許容限界温度を超えないようにしつつ、回転電機10への電力供給を継続させることができる。以降、時刻t13等において、第1モードと第2モードとの切り替えが繰り返され、回転電機10への電力供給が継続される。
【0056】
なお、本実施形態の駆動システム70では、インバータ20の温度Tiが第3閾値温度Ttg3未満であり、かつ、コンバータ30の温度Tcが第1閾値温度Ttg1よりも低い場合には、第1モードを実施する(
図2のステップS12参照)。第1モードは、第2モードよりもコンバータ30の降圧比Rvが小さく設定されているため、第2モードに比べて電力変換効率が高い。そのため、インバータ20の温度Tiが第3閾値温度Ttg3未満であり、かつ、コンバータ30の温度Tcが第1閾値温度Ttg1よりも低い場合に、第1モードを実施することで、コンバータ30駆動システム70の電力変換効率を向上させることができる。
【0057】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0058】
・本実施形態の駆動システム70では、第1モードと第2モードとを切り替えるモード制御処理を実施する。第1モードは、インバータ20の温度上昇を抑制するとともに、コンバータ30の温度上昇を許容するモードである。また、第2モードは、インバータ20の温度上昇を許容するとともに、コンバータ30の温度上昇を抑制するモードである。そのため、第1モードにおいてコンバータ30の温度Tcが閾値温度よりも高くなる場合には、第2モードに切り替える。これにより、コンバータ30の温度上昇を抑制しつつ、回転電機10への電力供給を継続することができる。
【0059】
・また、第2モードにおいてインバータ20の温度Tiが閾値温度よりも高くなる場合には、第1モードに切り替える。これにより、インバータ20の温度上昇を抑制しつつ、回転電機10へ電力供給を継続することができる。
【0060】
・さらに、第2モードでは、コンバータ30の温度上昇が抑制されるため、インバータ20及びコンバータ30が第1モードから第2モードに切り替えられ、その後再び第1モードに切り替えられる際には、コンバータ30の温度Tcは閾値温度よりも十分に低下している。そのため、第1モードに切り替えられた後において、回転電機への電力供給を好適に継続することができる。インバータ20及びコンバータ30が第2モードから第1モードに切り替えられ、その後再び第2モードに切り替えられる際におけるインバータ20の温度Tiについても同様である。
【0061】
・この結果、インバータ20とコンバータ30との一方の温度Ti,Tcが閾値温度よりも高くなる場合でも、回転電機10へ電力供給することができる。
【0062】
・コンバータ30では、第2モードにおいて、第1モードよりも平滑リアクトル32に流れる電流量Qiの変動量が小さくなるように、上,下アーム変圧スイッチSCH,SCLが制御される。これにより、第2モードにおいて、コンバータ30の温度上昇を抑制することができ、回転電機10への電力供給を継続させることが可能となる。
【0063】
・具体的には、コンバータ30の降圧比をRvとして、第1モード及び第2モードの降圧比Rvが、0.5≦Rv≦1.0の範囲に設定されている。そのため、第1モード及び第2モードの降圧比Rvが、0≦Rv<0.5の範囲に設定される場合に比べて、コンバータ30の電力変換効率を向上させることができるとともに、降圧比Rvが大きくなるほど発熱量Precが小さくなるようにすることができる(
図5参照)。
【0064】
・本実施形態では、0.5≦Rv≦1.0の範囲において、第2モードの降圧比Rvが第1モードの降圧比Rvよりも大きく設定されており、詳細には、第2モードの降圧比RvがRv=1.0に設定されている。これにより、第2モードにおいて、第1モードよりも発熱量Precを小さくすることができ、コンバータ30の温度上昇を好適に抑制することができる。
【0065】
・インバータ20では、第1モードにおいて、第2モードよりも電気角1周期当たりのスイッチング回数が少なくなるように上,下アームスイッチSIH,SILが制御される。これにより、第1モードにおいて、インバータ20の温度上昇を抑制することができ、回転電機10への電力供給を継続させることが可能となる。
【0066】
・具体的には、インバータ20は、第1モードにおいて矩形制御され、第2モードにおいてPWM制御される。第1モードにおいて、第2モードよりも上,下アームスイッチSIH,SILの電気角1周期当たりのスイッチング回数を少なくすることができ、インバータ20の温度上昇を好適に抑制することができる。
【0067】
・第1モードと第2モードとは、コンバータ30の温度Tcに基づいて切り替えられる。具体的には、コンバータ30の温度Tcが第1閾値温度Ttg1よりも高くなる場合に、第1モードから第2モードに切り替える。これにより、コンバータ30の過度な温度上昇を抑制することができる。
【0068】
・また、コンバータ30の温度Tcが第2閾値温度Ttg2未満となる場合に、第2モードから第1モードに切り替える。第2モードでは、コンバータ30の温度Tcが低下するとともにインバータ20の温度Tiが上昇する。そして、コンバータ30の温度Tcとインバータ20の温度Tiとの間には、コンバータ30の温度低下が大きいほど、インバータ20の温度上昇が大きくなる関係を有する。そのため、コンバータ30の温度Tcが第2閾値温度Ttg2未満となる場合に、第2モードから第1モードに切り替えることで、コンバータ30の過度な温度上昇を抑制することができる。さらに、インバータ20の温度Tiを取得しないことから、コンバータ30の温度Tcを検出する温度検出部が不要である。そのため、駆動システム70の構成を簡略化することができる。
【0069】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、駆動システム70に、インバータ20の温度Tiを検出するインバータ温度検出部27が備えられている点で異なる。
図7において、先の
図1に示した内容と同一の内容については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。なお、本実施形態において、インバータ温度検出部27が「第2温度検出部」に相当する。
【0070】
図8に、本実施形態のモード制御処理を示す。なお、
図8において、先の
図2に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0071】
本実施形態のモード制御処理では、ステップS34で肯定判定すると、ステップS50において、インバータ20の温度Tiを取得する。具体的には、インバータ温度検出部27を用いて、インバータ20の上,下アームスイッチSIH,SILの温度Tiを取得する。インバータ20の温度Tiは、インバータ温度検出部27を用いて取得される。続くステップS52において、ステップS50で取得した温度Tiが第3閾値温度Ttg3よりも高いかを判定する。なお、本実施形態において、ステップS10,S22の処理が「第1温度取得部」に相当し、ステップS50の処理が「第2温度取得部」に相当する。
【0072】
ステップS52で否定判定すると、ステップS34に戻る。一方、ステップS52で肯定判定すると、ステップS14に進む。つまり、制御部60は、ステップS50で取得された温度Tcが第3閾値温度Ttg3よりも高くなる場合に、ステップS52でインバータ20とコンバータ30とを第1モードから第2モードに切り替える。
【0073】
・以上説明した本実施形態によれば、インバータ20の温度Tiが第3閾値温度Ttg3よりも高くなる場合に、第1モードから第2モードに切り替える。これにより、インバータ20の温度Tiを用いて、インバータ20の過度な温度上昇を好適に抑制することができる。
【0074】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、コンバータ30が、昇降圧型のDC-DCコンバータである点で異なる。
図9において、先の
図1に示した内容と同一の内容については、便宜上、同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
本実施形態のコンバータ30は、上アーム変圧スイッチSCHと下アーム変圧スイッチSCLとの直列接続体35を備えている。直列接続体35の構造は、直列接続体31の構造と同一であり、説明を省略する。以下、直列接続体31における上,下アーム変圧スイッチSCH,SCLを、第1上アーム変圧スイッチSCH1及び第1下アーム変圧スイッチSCL1と呼び、直列接続体35における上,下アーム変圧スイッチSCH,SCLを、第1上アーム変圧スイッチSCH1及び第1下アーム変圧スイッチSCL1と呼ぶ。
【0076】
第2上アーム変圧スイッチSCH2のドレインには、インバータ20の各相における上アームスイッチSIHのドレインが接続されている。第2上アーム変圧スイッチSCH2のソースと第2下アーム変圧スイッチSCL2のドレインとの接続点には、平滑リアクトル32の第2端が接続されている。第2下アーム変圧スイッチSCL2のソースには、直流電源40の負極端子、第1平滑コンデンサ33の低電圧側端子、及びインバータ20の各相における下アームスイッチSIHのソースが接続されている。
【0077】
本実施形態のモード制御処理では、第1モードか第2モードかによらず、第2上アーム変圧スイッチSCH2をオン状態に制御するとともに、第2下アーム変圧スイッチSCL2をオフ状態に制御する。これにより、回転電機10への電力供給時に、直流電源40からの供給電力は、平滑リアクトル32及び第2上アーム変圧スイッチSCH2を介して回転電機10へ供給される。
【0078】
・以上説明した本実施形態によれば、コンバータ30は昇降圧型のDC-DCコンバータであるが、回転電機10への電力供給時に、第2上アーム変圧スイッチSCH2をオン状態に制御するとともに、第2下アーム変圧スイッチSCL2をオフ状態に制御する。つまり、回転電機10への電力供給時に、コンバータ30を昇圧制御しない。
【0079】
・コンバータ30が昇圧制御されると、第2上,下アーム変圧スイッチSCH2,SCL2の状態を切り替えることにより、平滑リアクトル32に流れる電流量Qiが変動する。この結果、コンバータ30の温度Tcが上昇する。また、コンバータ30が昇圧制御されると、インバータ20への出力電圧Voutが上昇する。この結果、インバータ20はPWM制御されることとなり、インバータ20の温度Tcが上昇する。つまり、コンバータ30が昇圧制御されると、インバータ20の温度Tiとコンバータ30の温度Tcとが共に上昇し、回転電機10への電力供給を継続させることができない。
【0080】
・本実施形態によれば、回転電機10への電力供給時に、コンバータ30を昇圧制御しないので、インバータ20の温度Tiとコンバータ30の温度Tcとが共に上昇することが抑制される。これにより、回転電機10への電力供給を好適に継続させることができる。
【0081】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0082】
・上記各実施形態では、第1モードにおいて、インバータ20が矩形制御される例を示したが、これに限られない。例えば、矩形制御に代えて過変調制御されてもよければ、所定条件により矩形制御と過変調制御とが切り替えて実施されてもよい。ここで、過変調制御は、回転電機10への出力電圧の最大値が直流電源40の電源電圧Vbatの2/π倍となるように、複数のキャリア周期にわたって上,下アームスイッチSIH,SILをオンにし続ける制御である。
【0083】
・上記各実施形態では、第2モードにおいて、インバータ20がPWM制御される例を示したが、これに限られない。例えば、PWM制御に代えて過変調制御されてもよければ、所定条件によりPWM制御と過変調制御とが切り替えて実施されてもよい。
【0084】
・上記各実施形態では、第2モードにおいて、コンバータ30の降圧比RvがRv=1.0に設定される例、つまり、上アーム変圧スイッチSCHがオン状態に制御され、下アーム変圧スイッチSCHがオフ状態に制御される例を示したが、これに限られない。
【0085】
・第2モードの降圧比RvがRv≠1.0である場合、コンバータ30の平滑リアクトル32に流れる電流量Qiは変動する。この場合において、第2モードの降圧比Rvが0.5≦Rv≦1.0の範囲において、第1モードの降圧比Rvよりも大きく設定されていれば、平滑リアクトル32の発熱量Precを、第1モードに比べて抑制することができる(
図5参照)。そのため、第2モードにおいて、コンバータ30の温度上昇を抑制することができる。
【0086】
・上記各実施形態では、インバータ20とコンバータ30とを第2モードから第1モードに切り替える際に、インバータ20の温度Tiとコンバータ30の温度Tcとの一方を取得する例を示したが、インバータ20の温度Tiとコンバータ30の温度Tcとの両方を取得してもよい。例えばインバータ20の温度Tiとコンバータ30の温度Tcとの両方を取得し、インバータ20の温度Tiが第3閾値温度Ttg3よりも高い第1条件と、コンバータ30の温度Tcが第2閾値温度Ttg2未満となる第2条件との少なくとも一方が満たされた場合に、インバータ20とコンバータ30とを第2モードから第1モードに切り替えてもよい。
【0087】
・インバータ20やコンバータ30が備えるスイッチとしては、MOSFETに限らず、例えばIGBTであってもよい。この場合、IGBTにフリーホイールダイオードが逆並列に接続されていればよい。
【0088】
・インバータ20としては、3相のものに限らず、相数分の上,下アームスイッチSIH,SILの直列接続体を備える2相のインバータ、又は4相以上のインバータであってもよい。例えば、2相の場合、互いに直列接続された1組目の上,下アームスイッチSIH,SILの接続点と、互いに直列接続された2組目の上,下アームスイッチSIH,SILの接続点とが、誘導性負荷(例えば巻線)を介して接続されることとなる。
【符号の説明】
【0089】
10…回転電機、20…インバータ、30…コンバータ、40…直流電源、60…制御部、70…制御システム。