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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】戸
(51)【国際特許分類】
   E05B 1/00 20060101AFI20230802BHJP
   E06B 3/70 20060101ALI20230802BHJP
   E06B 3/36 20060101ALI20230802BHJP
   E05B 1/04 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
E05B1/00 311Z
E06B3/70 F
E06B3/36
E05B1/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018196559
(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2020063615
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-04-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】弁理士法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水名 裕太
(72)【発明者】
【氏名】谷内 智
(72)【発明者】
【氏名】牧野 里咲
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-152091(JP,U)
【文献】特開2005-180051(JP,A)
【文献】特開2007-082857(JP,A)
【文献】特開2003-003760(JP,A)
【文献】特開2017-190558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00
E06B 3/70
E06B 3/36
E05B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸本体と、エッジ材とを備え、
戸本体は、一枚戸であり、見込面の一側部において見付方向に突出した手掛部を戸本体の長手方向にわたって有し、
エッジ材は、戸本体の戸先側見込面に長手方向にわたって表面側見付面を覆わないように取り付けられるものであって、手掛部を覆う手掛被覆部と、見込面の他側部において手掛部よりも見付方向に突出し且つ平面視長方形状で中空部を備えた裏面側突出部を有していて、手掛部と裏面側突出部との間には指挿入空間を有し、指挿入空間の底壁が裏面側突出部の突出方向と直交しており、手掛被覆部には手掛部の先端を長手方向にわたってカバーする先端カバー部を有し、先端カバー部の見付面と戸本体の見付面が面一としてあることを特徴とする戸。
【請求項2】
戸本体と、エッジ材とを備え、
戸本体は、見込面の一側部において見付方向に突出した手掛部を戸本体の長手方向にわたって有し、
エッジ材は、戸本体の見込面に長手方向にわたって表面側見付面を覆わないように取り付けられるものであって、手掛部を覆う手掛被覆部と、手掛被覆部と別体形成してあり見込面の他側部において見付方向に突出し裏面側が見込面の他側部まで延びる裏面側突出部を有していて、手掛部と裏面側突出部との間には指挿入空間を有し、手掛部被覆には手掛部の先端を長手方向にわたってカバーする先端カバー部を有することを特徴とする戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示された、把手を取り付ける代わりに手指を差し込むための縦溝部を備えた折戸が知られているが、開き戸に縦溝部を設ける場合、戸本体の強度を保つためには縦溝部の見込寸法が小さくなり手指が差し込み難いため、操作性の優れるものが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-47592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記実情に鑑み、操作性に優れた戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の戸は、戸本体と、エッジ材とを備え、戸本体は、一枚戸であり、見込面の一側部において見付方向に突出した手掛部を戸本体の長手方向にわたって有し、エッジ材は、戸本体の戸先側見込面に長手方向にわたって表面側見付面を覆わないように取り付けられるものであって、手掛部を覆う手掛被覆部と、見込面の他側部において手掛部よりも見付方向に突出し且つ平面視長方形状で中空部を備えた裏面側突出部を有していて、手掛部と裏面側突出部との間には指挿入空間を有し、指挿入空間の底壁が裏面側突出部の突出方向と直交しており、手掛被覆部には手掛部の先端を長手方向にわたってカバーする先端カバー部を有し、先端カバー部の見付面と戸本体の見付面が面一としてあることを特徴とする。
また、本発明の戸は、戸本体と、エッジ材とを備え、戸本体は、見込面の一側部において見付方向に突出した手掛部を戸本体の長手方向にわたって有し、エッジ材は、戸本体の見込面に長手方向にわたって表面側見付面を覆わないように取り付けられるものであって、手掛部を覆う手掛被覆部と、手掛被覆部と別体形成してあり見込面の他側部において見付方向に突出し裏面側が見込面の他側部まで延びる裏面側突出部を有していて、手掛部と裏面側突出部との間には指挿入空間を有し、手掛部被覆には手掛部の先端を長手方向にわたってカバーする先端カバー部を有することを特徴としていてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の戸によれば、手掛被覆部と裏面側突出部を有するエッジ材を、戸本体とは別体として備えているため、戸本体の材質や加工方法等に関わらず、指挿入空間が形成可能であり、指挿入空間の見込径を十分長く設けることができ、強度が保たれると共に操作性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(a)は図2のA-A線断面図、(b)は図1(a)の要部拡大図である。
図2】戸の正面図である。
図3図2のB-B線断面図である。
図4】滑り止め部への指の掛かり方を説明するための操作の軌跡図である。
図5】滑り止め部への指の掛かり方を説明するための要部拡大図である。
図6】(a)は図2のCの拡大図、(b)はDの拡大図である。
図7】小口キャップの(a)は平面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明に係る戸は、戸本体1とエッジ材2を備え、例えば縦枠3a,3aと、縦枠3a,3aの上部の間に掛け渡される横枠3bとによって枠組みされた枠体に取り付けられる。戸は様々な場所に設置可能なものであるが、ここでは戸本体1の一方側端部が縦枠3aにヒンジ4を介して取り付けられており、このヒンジ4の鉛直軸回りの回動によって戸本体1の他方側端部が前後動自在である開き戸としてクローゼット等の開閉に用いる場合を示す。なお、以下において開き戸を操作する側を表面側としており、図2は表面側から見た正面図である。また、一方側及び他方側とは、図1に示す通りとする。
【0009】
戸本体1は、図1に示すように、他方側端部において、表面側見付面10aに手掛部11が設けられており、一方側端部は、表面側の角部が面取りされており、指を挟み難くなっている。戸本体1は、例えばLVL等の芯材の外周にMDF等の表面材を巻き付けて形成されたものであり、表面には化粧シートや各種塗装が施されていてもよい。手掛部11は、戸本体1の長手方向に亘って設けられており、戸本体1の他方側端部から他方側へと突出している。手掛部11の表面側は、戸本体1の表面側見付面10aを他方側へと延出させて設けられており、裏面側は先端部から基部に向かって肉厚となるように傾斜面11aが形成されているため、断面視すると他方側へ山型に突出した形状となっている。本実施形態のように開き戸とする場合は、図1及び図2に示すように、戸本体1の一方側端部が、縦枠3aに対しヒンジ4を介して回動自在に連結されており、表面側又は裏面側へ戸本体1の他方側端部を引く又は押すことで開閉される。ヒンジ4は、戸本体1の裏面側見付面10bの一方側端部に裏面側からネジ止めされている。そして図3に示すように、開き戸の閉状態において、上側の横枠3bの下面の、戸本体1の裏面側見付面の他方側上端部に当接する位置にはストッパー5が取り付けられており、戸を閉める際には、戸本体1の他方側端部が一方側端部よりも裏面側へと回動することがないので戸本体1はヒンジ4に過度な負荷がかかることなく回動自在である。また、ストッパー5は、開き戸の他方側上端部に当接する際の衝撃が低減されるよう、例えばゴム等の弾性素材で形成されたり、戸本体1と係合する構成をとったりするのが好ましい。
【0010】
エッジ材2は、図1(b)に示すように戸本体1の手掛部11と、裏面側見付面10bの他方側端部と、見込面10cとを覆うように戸本体1の長手方向全長に亘って取り付けられていて、裏面側突出部26と、手掛被覆部20とから構成されている。なお本実施例では、裏面側突出部26と手掛被覆部20は、例えばアルミニウム合金の押出形材等を用いて別体形成されている。
【0011】
手掛被覆部20は、手掛部11を裏面側および他方側から覆って保護するものであって、先端カバー部21と、滑り止め部22と、傾斜部23と、固定部24a、24b、24cと、係合凹部25とをそれぞれエッジ材2の長手方向に亘って備えている。なお、手掛被覆部20の下端は戸本体1の下端面よりも上方に位置しており、手掛被覆部20の上端は戸本体1の上端面よりも下方に位置している。先端カバー部21は、手掛被覆部20の表面側端部に位置し、手掛部11の先端を覆っている。先端カバー部21の表面側見付面21aと手掛部11の表面側見付面10aは面一である。先端カバー部21の表面側見付面21aは左右方向の寸法が小さくなるよう形成されているので、戸を閉じた状態で正面から視認される面積が小さく意匠性に優れる。先端カバー部21の裏面側には滑り止め部22が形成されている。滑り止め部22は、例えば表面に凹凸を設けたものや、滑りにくい材質のものを用いたり、滑り止め材を貼付又は塗布したものを用いたりしてもよく、本実施形態のように裏面側に突出する突部としてもよい。傾斜部23は、先端カバー部21と固定部24aの間に設けられ、手掛部11の傾斜面11aに沿うように形成されている。手掛被覆部20は、固定部24a、24bがそれぞれ、戸本体1の他方側見込面である固定壁12aと、戸本体1の裏面側見付面である固定壁12bにネジ止めされて取り付けられる。固定部24aは、傾斜部23の裏面側端部から、戸本体の固定壁12aに沿うようにして見込方向に延びている。固定部24bは手掛被覆部20の裏面側端部から、戸本体1の固定壁12bに沿うように一方側へと延出して設けられた略平板状の部材である。固定部24cは、固定部24aの裏面側端部よりもやや表面側から、他方側へと延出して設けられた略平板上の部材であって、後述する裏面側突出部26の固定部26bにネジ止めされる。係合凹部25は、小口キャップ6と係合されるために設けられた平面視長方形状の空間であって、固定部24bの表面側見付面にエッジ材2の長手方向に亘って設けられた平面視略長方形状の凹部であって、係合凹部25と戸本体1の固定壁12bとによって囲まれた略直方体状の空間の上下端に小口キャップ6が係合する。
【0012】
裏面側突出部26は、戸本体1の長手方向に亘って、手掛被覆部20の固定部24aの後端部から他方側へと突出して設けられていて、それぞれ略平板状の表面側見付壁26aと、固定部26bと、隔壁26cと、見付壁26dとを戸本体1の長手方向に亘って備えている。なお、裏面側突出部26の下端は戸本体1の下端面よりも上方に位置しており、裏面側突出部26の上端は戸本体1の上端面よりも下方に位置している。また、裏面側突出部26は、固定部26bの一方側部分が、手掛被覆部20の固定部24cにネジ止めされている。このため固定部24cは、固定部26bに沿うように設けられている。隔壁26cは、表面側見付壁26aと固定部26bそれぞれの中間部を連結するように見込方向に設けられており、隔壁26cと、表面側見付壁26aと、見付壁26dと、固定部26bとで囲まれた平面視長方形状の中空部26eがエッジ材の長手方向に亘って形成されている。指挿入空間Sは、手掛被覆部20の滑り止め部22と、傾斜部23と、固定部24aと、裏面側突出部26の表面側見付面26aとによって囲まれた空間である。固定部24aから先端カバー部21までの長さは、固定部24aから裏面側突出部26の他方側端部までの長さよりも短いので、指挿入空間Sに表面側から指を挿し込むことができる。
【0013】
図2および図3に示すように、戸本体1の他方側端部及びエッジ材2の上下端部には、小口キャップ6、6が取り付けられている。小口キャップ6は、平板状の基部6aと、基部6aに略垂直に突設された略平板状の係合片6b、6cとから構成されており、小口キャップ6をエッジ材2の手掛被覆部20及び裏面側突出部26の上下端にそれぞれ取り付けた際には、基部6aの端面6eが戸本体1の上端面及び下端面と略面一となる。係合片6b、6cは、それぞれ手掛被覆部20の係合凹部25と、中空部26e内の見付壁26dと係合するためのものである。係合片6bは、係合凹部25に挿入し易いよう先細り状に形成されている。係合片6cの他方側面には、見付壁26dに係合する平面視楔状の突起部6dが突設されている。突起部6dは、中空部26eに挿入しやすいよう先細り状に形成されている。
【0014】
次に、開き戸を開く操作の際の滑り止め部22への指の掛かり方を図4及び図5に基づいて説明する。図4は開き戸を閉じた状態から、操作者が表面側から戸本体1の手掛部11に指を掛け表面側へ戸を引くことによって開き戸が開くまでの軌跡を示している。図5(a)~(c)は図4のうち最初の状態と途中の状態及び最後の状態における要部を拡大して示しており、一点鎖線は滑り止め部22の突出方向と指先の挿入方向を示し、矢印は指が手掛部11を引く方向を示す。
まず、開き戸を閉じた状態で操作者が手掛部11に手を掛けた際には、滑り止め部22である突部は左右方向に対して略垂直方向の裏面側に向けて突出しており、指挿入空間Sは正面及び他方側に開口している。図5(a)に示すように、手掛部11に掛けた手を手前に引きながら戸を開いていくと、滑り止め部22の突出方向は左右方向となす角度が小さくなるように傾いていく。図5(b)のような戸を開く途中の状態において、使用者は指挿入空間Sの開口方向に向けて手掛部11を引くことになるため、指挿入空間Sの見込寸法が小さいと、手指を差し込み難いが、本発明の戸を用いた開き戸では、手掛被覆部20と裏面側突出部26を有するエッジ材2を備え、エッジ材2のみの構成によって指挿入空間Sの見込寸法を調整可能であるので、戸本体1の材質や加工方法等に関わらず、指挿入空間Sの見込径を十分長く設けることができ、手指を差し込み易く操作性に優れる。また、指挿入空間Sを有するのみでは手掛部11から指が滑りやすいが、本発明の戸を用いた開き戸では、図4及び図5に示すように、滑り止め部22が指挿入空間S内の指先の挿入方向と交差する方向に突出しているため、操作の最初から最後まで指先が滑り止め部22にしっかりと引っ掛かり、容易に戸を開けることができる。
【0015】
次いで、前述のように構成した戸による作用効果について述べる。戸は、手掛被覆部20と裏面側突出部26を有するエッジ材2を戸本体1とは別体として備えているため、戸本体の材質や加工方法等に関わらず、指挿入空間Sが形成可能となり、見込径を十分長く設けることができ、強度が保たれるとともに操作性に優れる。また、開き戸においては、仮に裏面側突出部を戸本体と一体形成して本発明の戸のような指挿入空間を形成しようとした場合、裏面側突出部の見込寸法が小さくなり、ストッパーと戸とが当接する際の裏面側突出部の強度不足が懸念される。該懸念に対しては、例えば戸本体1の材質を金属にするといった対策が考えられるが、戸本体1の加工手順が煩雑となることが予想される。本発明の戸を用いた場合は、ストッパー5には、エッジ材2が当接するため、戸本体1の材質や加工方法等に依らず、戸の耐久性に優れており、またエッジ材2は金属を押し出し形成したものを戸本体1にネジ止めすればよいので、加工性にも優れる。
【0016】
さらに、裏面側突出部26に平面視長方形状の中空部26eが十分に広く形成されているため、小口キャップの取り付けが容易であり、加えて小口キャップの納まりが良く、安定性に優れる。また、小口キャップ6の端面6dと、戸本体1の下端面とが略面一であるため、戸と床面との隙間を狭くでき、足挟み等を防止できる。
【0017】
また、エッジ材2は手掛被覆部20を、指挿入空間Sの見込面、言い換えれば戸本体1の固定壁12aと、固定壁12bとにネジ止めされているので、表面側から見た際にエッジ材2を固定するネジが目立たず、意匠性に優れる。加えて、手掛被覆部20は手掛部11を裏面側および他方側から覆っているため、戸を表面側から見た際に手掛被覆部20が目立たず扉面を広く見せることができるので、意匠性が損なわれることがない。
さらに、エッジ材2の手掛被覆部20と裏面側突出部26は別体形成されるので、それぞれ異なる塗装や化粧シートの巻き付けを施したり、異なる色の材質とする等、個々の装飾を容易に施すことができ、意匠性に優れる。
【0018】
そして、戸本体1の手掛部11は、エッジ材2によって保護されているので、戸の開け閉めが繰り返し行われることによる手掛部11の表面の摩耗や損傷を防ぐこともできる。また、手掛被覆部20の滑り止め部22は裏面側に向けて突出した突部であるので、突部に指が掛かることで指の滑りを防止することができる。さらに、エッジ材2を手掛部11の長手方向全長に設ければ、長手方向の任意の位置で操作可能となり、操作する者の身長に関わらず使い勝手に優れる。
【0019】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。例えば、戸は開き戸に限らず折戸や引戸等であってもよい。また、戸の取り付けられる枠体は下枠を有するものでもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 戸本体
11 手掛部
2 エッジ材
20 手掛被覆部
26 裏面側突出部
S 指挿入空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7