(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/51 20060101AFI20230802BHJP
A61F 13/512 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
A61F13/51
A61F13/512 300
(21)【出願番号】P 2018206043
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-09-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼間 一晃
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-120584(JP,A)
【文献】国際公開第2011/118473(WO,A1)
【文献】特開2005-348937(JP,A)
【文献】特開2011-239835(JP,A)
【文献】特開2005-312526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/51
A61F 13/512
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌側に設けたトップシートと、前記トップシートの裏側に設けた吸収要素と、前記トップシートと前記吸収要素の間に設けた中間シートと、を有する吸収性物品であって、
前記中間シートは、裏側から肌側へ向かって突出する複数の凸部と、隣り合う前記凸部の間に形成された凹部を有し、
前記凸部は、間隔を空けて千鳥状に配列されており、
前記凹部は、全ての隣り合う前記凸部の間を通るように亀甲状に連続しており、
前記中間シート
における少なくとも前記凹部
の交差部のそれぞれに、前記中間シートを厚み方向に貫通する
中間孔が形成されて、前記凸部の周囲に6個以上の前記
中間孔が前記凸部を取り囲んで設けられており、
前記中間孔の面積が0.3mm
2
~1.0mm
2
であり、
前記凸部の縁から前記
中間孔の縁までの距離が0~2mmであり、
平面視における前記凸部の直径が0.5mm~5mmであり、
前記凸部の高さが1~2mmであり、
前記中間シートは不織布からなり、
前記中間シートの前記凹部において、前記
中間孔の周縁部は、前記周縁部でない部分よりも繊維密度が高い、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記
中間孔は、前記中間シートの繊維間にピンが挿入されて繊維が押し広げられることにより形成されたピン挿入タイプの貫通孔である請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記トップシートの目付が10~18g/m
2であり、
前記トップシートの繊度が1.8~3.0dtexであり、
前記トップシートの厚みが0.1~0.3mmである、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記トップシートは親水剤を含み、
前記親水剤は前記トップシートを構成する繊維の外側に付着しており、
着用者の排泄液とともに、前記トップシートに付着した前記親水剤の一部が流れ落ちる構成とされ、
前記トップシートは、人工尿の滴下試験において、第1回目の計測結果が10点以下であり、第2回目の計測結果が5点以下であり、かつ第3回目の計測結果が5点以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記トップシートに、前記トップシートを厚み方向に貫通する
トップ孔が形成されており、
前記トップシートの前記
トップ孔が形成された位置と前記中間シートの凹部の位置が、平面視で重なっている請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記トップシートに形成された前記
トップ孔の直径が、前記中間シートに形成された前記
中間孔の直径よりも大きく、
平面視で、前記トップシートに形成された前記
トップ孔と、前記中間シートに形成された前記
中間孔が、少なくとも一部で重なっている、
請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記トップシートに形成された前記
トップ孔の数が、前記中間シートに形成された前記
中間孔の数よりも多く、
平面視で、前記トップシートに形成された前記
トップ孔と、前記中間シートに形成された前記
中間孔が、少なくとも一部で重なっている、
請求項5または6に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トップシートと吸収要素の間に中間シートを有する吸収性物品に関する。特に、中間シートが、裏側から肌側へ向かって突出する複数の凸部と、隣り合う凸部の間に形成された凹部を有し、中間シートの凹部に、中間シートを厚み方向に貫通する貫通孔が形成された吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肌側に設けたトップシートと、裏側に設けた吸収要素との間に、中間シートを設けた吸収性物品が製造、販売されている。この中間シートは、排泄液を平面方向へ拡散する機能を有する。それとともに、吸収要素に吸収された排泄液が、体圧などの影響を受けて、トップシートへ逆戻りすることを防ぐ機能も有する。
【0003】
本発明に関する特許文献としては、例えば下記特許文献1~3に記載されたものが存在する。
特許文献1の吸収体製品は、多数の山部と、隣接する山部間に形成された谷部を有するようにひだ状に成形された孔あきの疎水性表面シートと、この表面シートの谷部にのみ接触するように表面シートの下面に接合された親水性層とを備えている
【0004】
特許文献2の吸収性物品は、液透過性表面層と、液不透過性裏面層と、それらの間に介在する吸液コアと、液透過性表面層と吸液コアとの間に介在する液濾過層とを有しており、前記液透過性表面層は不織布からなるシートであり、このシートの一部又は全部が多列の畝部と溝部が交互に組み合わされており、溝部に間隔をおいて多数の開孔部が設けられている。
【0005】
特許文献3の吸収性物品は、尿等を速やかに吸収体へ浸透させるために、表面材と吸収体の間にトランスファーシートを敷設したものであり、このトランスファーシートにひだが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-231815号公報
【文献】特開平09-299402号公報
【文献】特開2002-291796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の中間シートは、吸収要素から表面シートへの逆戻りを防ぐために、嵩高の不織布を用いている。嵩高の不織布を用いると、仮に吸収要素から肌側へ排泄液が移動したとしても、中間シートの内部にその排泄液を留め置くことができる可能性が高まり、その結果、排泄液が表面シートまで逆戻りしにくくなる。
【0008】
しかし、中間シートに嵩高の不織布を用いると、排泄時に排泄液が表面シートから吸収要素へ移動する過程で、嵩高の中間シートが排泄液の吸収要素への速やかな移動を阻害してしまうという問題がある。さらに、排泄時に排泄液が表面シートから吸収要素へ移動する過程で、中間シートの内部に留め置かれる排泄液の量が増えるため、吸収性物品に体圧などがかかった際に、中間シートの内部に保持された排泄液が表面シートへ逆戻りする可能性が高まるという問題もある。
【0009】
他方、中間シートに嵩の低い不織布を用いると、吸収要素から肌側へ排泄液が移動した際に、中間シートの内部にその排泄液を留め置くことができる可能性が低く、逆戻りが発生しやすいという問題がある。また、中間シートの嵩が低いと、表面シートと吸収要素の間の厚み方向の距離が短くなるため、この点からも逆戻りが発生しやすいという問題がある。
【0010】
前記特許文献1の吸収体製品は、山部と谷部を有するようにひだ状に成形された穴あきの疎水性表面シートに関するものであり、いわゆる中間シートに関するものではない。また、前記特許文献2の吸収性物品は、液透過性表面層(不織布からなるシート)において、このシートに畝部と溝部を形成するとともに、溝部に多数の開孔部を設けたものであり、いわゆる中間シートに関するものではない。すなわち、前記特許文献1や2は、表面シートに関するものであり、中間シートの前記課題の解決を図るものでなく、その作用効果も含め、本発明とは根本的に異なる。
【0011】
前記特許文献3の吸収性物品は、ひだ状のトランスファーシートに関するものであるが、尿などの排泄液を吸収要素へ速やかに移行させるという本発明の課題を解決するものではない。
【0012】
そこで、本発明の課題は、排泄時に尿などの排泄液を速やかに吸収要素へ到達させるとともに、吸収要素が吸収した排泄液が表面シートへ逆戻りすることを防ぐ吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決したテープタイプ使い捨ておむつの各種態様は以下のとおりである。
<第1の態様>
肌側に設けたトップシートと、前記トップシートの裏側に設けた吸収要素と、前記トップシートと前記吸収要素の間に設けた中間シートと、を有する吸収性物品であって、
前記中間シートは、裏側から肌側へ向かって突出する複数の凸部と、隣り合う前記凸部の間に形成された凹部を有し、
前記中間シートの前記凹部に、前記中間シートを厚み方向に貫通する貫通孔(中間孔)が形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【0014】
(作用効果)
中間シートに凸部と凹部を設けることにより、トップシートと吸収要素の間の厚み方向の距離が広がる。その結果、中間シートに凸部や凹部がない場合と比べて、吸収要素が保持する排泄液がトップシートへ逆戻りする可能性を低減することができる。
【0015】
また、中間シートの凹部に、厚み方向に貫通する貫通孔を形成することにより、排泄時に排泄液を速やかに吸収要素へ到達させることができる。トップシートから中間シートへ移動する排泄液は、中間シートの凹部に集まるが、この凹部に貫通孔が形成されていることにより、凹部に集まった排泄液が速やかに吸収要素へ移行する。
【0016】
<第2の態様>
前記中間シートの前記凹部において、前記貫通孔の周縁部が、前記周縁部でない部分よりも繊維密度が高い前記第1の態様に記載の吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
中間シートに対して体圧などがかかった際(例えば、吸収性物品の股間部が着用者の両足で挟み込まれた際)、貫通孔の周縁部の繊維密度が高いことにより、当該周縁部の剛性が高くなるため、凸部の形状が崩れにくくなる。すなわち、貫通孔の周縁部が硬くない場合、体圧によって凸部の形状が崩れる傾向があるが、貫通孔の周縁部が硬い場合、この周縁部が体圧に抗するため、結果として凸部の形状の維持を図ることができる。貫通孔の周縁部を硬くするためには、例えば中間シートに棒状の鋼材を挿し込むと、貫通孔の周囲にばりが生じて硬くなる。その他、例えば棒状の鋼材を加熱しながら差し込むことによって、貫通孔の周縁部を硬くしてもよい。
【0018】
<第3の態様>
前記トップシートの目付が10~18g/m2であり、
前記トップシートの繊度が1.8~3.0dtexであり、
前記トップシートの厚みが0.1~0.3mmである、
前記第1または第2の態様に記載の吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
トップシートのうち、中間シートの凸部と接している部分では、接点があるため、トップシートの排泄液が中間シートへ移動しやすい。しかし、トップシートのうち、中間シートの凸部と接していない部分では、排泄液が中間シートへ移動しづらく、トップシートに排泄液が滞留(液持ち)するため、トップシートが湿った状態(乾いていない状態)になり、着用者が不快感を覚えるおそれがある。中間シートの凹部に排泄液が溜まりやすいため、特にトップシートが湿った状態になりやすい部位は、平面視で、前記中間シートの凹部と重なる部位である。
【0020】
トップシートの目付は10~18g/m2にすることが好ましく、13~15g/m2にすることがより好ましい。それとともに、トップシートの厚さを0.1~0.3mmにすることが好ましく、0.2~0.3mmにすることがより好ましい。それとともに、トップシートを構成する繊維の繊度を1.8~3.0dtexにすることが好ましく、2.0~2.5dtexにすることがより好ましい。
【0021】
トップシートの目付が18g/m2よりも大きく、トップシートの厚さが0.3mmよりも厚く、トップシートを構成する繊維の繊度が3.0dtexよりも高いと、トップシートが排泄液を保持しやすく、トップシートからさらさら感が失われてしまうという問題がある。したがって、トップシートの目付を18g/m2以下とし、トップシートの厚さを0.3mm以下とし、トップシートを構成する繊維の繊度を3.0dtex以下とすることにより、前述の問題、すなわちトップシートが湿った状態(乾いていない状態)になり、着用者が不快感を覚えるというという問題を解決することができる。
【0022】
他方、トップシートの目付が10g/m2に満たない場合や、トップシートの厚みが0.1mmより薄い場合は、トップシートの資材強度が弱くなり、使用中に破れてしまったり、地合いムラにより排泄液が肌面側に戻ってきやすくなるという別の問題がある。
【0023】
また、トップシートを構成する繊維の繊度が1.8dtexよりも細い場合は、トップシートから裏面側に排泄液が透過しにくいという別の問題がある。
【0024】
したがって、トップシートの目付を10g/m2以上とし、トップシートの厚さを0.1mm以上とし、トップシートを構成する繊維の繊度を1.8dtex以上とすることにより、前述の各問題を解決することもできる。
【0025】
<第4の態様>
前記トップシートは、人工尿の滴下試験において、第1回目の計測結果が10点以下であり、第2回目の計測結果が5点以下であり、かつ第3回目の計測結果が5点以下である前記第1~第3のいずれかの態様に記載の吸収性物品。
【0026】
(作用効果)
前記第3の態様に記載した問題を解決するために、着用者がトップシートに排泄した際、その排泄液とともに、トップシートに含まれる親水剤の少なくとも一部が吸収要素へ流れ落ちてしまうようにすることが好ましい。このような態様にすることで、2回目以降の排泄時においては、トップシートに含まれる親水剤の量が少なくなっているため(トップシートが親水性から疎水性へ移行しているため)、トップシートが液持ちしにくく、トップシートのさらさら感が担保されやすい。
【0027】
このような条件を満たすトップシートを選定する際には、以下の人工尿の滴下試験を行い、第1回目の計測結果が10点以下、第2回目の計測結果が5点以下、かつ第3回目の計測結果が5点以下となるトップシートを吸収性物品に用いると良い。なぜならば、着用者が複数回排泄した場合に、トップシートから親水剤が流れ落ちやすいため、トップシートが液持ちしにくいからである。なお、人工尿の滴下試験に用いるトップシートの層の数や層の厚み、トップシートの繊維の素材、製造方法などの条件は、実際に吸収性物品に搭載するトップシートとすべて同一のものにする。
【0028】
人工尿の滴下試験は、下記(1)~(4)の手順に従って行う。
<人工尿の滴下試験>
(1)ろ紙を10枚重ねた上に前記トップシートを置き、前記トップシートの上に10個の穴が開いた金属製の治具を置く。
(2)前記金属製の治具の10個の穴に、マイクロピペットを用いて、それぞれ1mLずつ人工尿を滴下し、滴下した後、2秒以内に、前記トップシートが前記人工尿を吸収したか否かを確認し、吸収された穴を1点、吸収されていない穴を0点とカウントし、10個の穴の合計点数を第1回目の計測結果として記録する。
(3)前記(2)で人工尿を滴下してから3分間経過後、前記金属製の治具の10個の穴に、マイクロピペットを用いて、それぞれ1mLずつ人工尿を滴下し、滴下した後、2秒以内に、前記トップシートが前記人工尿を吸収したか否かを確認し、吸収された穴を1点、吸収されていない穴を0点とカウントし、10個の穴の合計点数を第2回目の計測結果として記録する。
(4)前記(3)で人工尿を滴下してから3分間経過後、前記金属製の治具の10個の穴に、ガラスピペットを用いて、それぞれ500μLずつ人工尿を滴下し、滴下した後、2秒以内に、前記トップシートが前記人工尿を吸収したか否かを確認し、吸収された穴を1点、吸収されていない穴を0点とカウントし、10個の穴の合計点数を第3回目の計測結果として記録する。
【0029】
前記人工尿の滴下試験に用いる人工尿は、尿素を2wt%、塩化ナトリウムを0.8wt%、塩化カルシウム二水和物を0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物を0.08wt%、イオン交換水を97.09wt%混合したものである。
【0030】
前記人工尿の滴下試験に用いる金属製の治具は、幅210mm、長さ50mm、厚さ5mmの長方形であり、各穴は直径15mmの円形であり、幅方向および長さ方向に4mmの間隔を空けながら等間隔に設けられており、重さが400gである。
【0031】
<第5の態様>
前記トップシートに、前記トップシートを厚み方向に貫通する貫通孔(トップ孔)が形成されており、
前記トップシートの前記貫通孔(トップ孔)が形成された位置と前記中間シートの凹部の位置が、平面視で重なっている前記第1~第4のいずれかの態様に記載の吸収性物品。
【0032】
(作用効果)
前記第3の態様に記載した問題を解決するために、トップシートに貫通孔を設け、トップシートの肌側から裏側へ排泄液を透過しやすくすることが好ましい。その結果、トップシートが排泄液を保持しにくくなり、トップシートのドライ感を担保することができる。なお、中間シートの凹部と平面視で重なる部位はトップシートが中間シートと接していないため、トップシートが特に湿った状態になりやすい。そこで、トップシートの貫通孔を形成する位置と中間シートの凹部の位置を、平面視で重ならせることで、トップシートが湿った状態になることを効果的に防止できる。
【0033】
<第6の態様>
前記トップシートに形成された前記貫通孔(トップ孔)の直径が、前記中間シートに形成された前記貫通孔(中間孔)の直径よりも大きく、
平面視で、前記トップシートに形成された前記貫通孔(トップ孔)と、前記中間シートに形成された前記貫通孔(中間孔)が、少なくとも一部で重なっている、
前記第5の態様に記載の吸収性物品。
【0034】
(作用効果)
平面視で、トップシートに形成された貫通孔(トップ孔)と、中間シートに形成された貫通孔(中間孔)が、少なくとも一部で重なっていると、排泄液を吸収要素まで速やかに到達させることができる。ただし、実際の吸収性物品の製造において、平面視で、トップ孔と中間孔の位置が重なるように位置合わせすることは困難である。そこで、トップ孔の直径を中間孔の直径よりも大きくして、この位置合わせを容易にすることが好ましい。なお、中間孔の直径をトップ孔の直径よりも大きくする態様も考えることができる。しかし、中間シートには凸部が設けられているため、中間孔の直径を大きくすることに対しては、制約がある。そこで、トップ孔の直径を大きくするようにすることが好ましい。
【0035】
トップ孔の直径は中間孔の直径の2倍~4倍の大きさにすることが好ましく、2.5倍~3.5倍の大きさにすることがより好ましい。2倍よりも小さいと、平面視で、トップ孔と中間孔が重なっているものの数が少なくなったり、トップ孔と中間孔の重なり部分の面積が小さくなったりするため、排泄液を吸収要素まで速やかに到達させるという効果を得づらい(当然のことながら、重なっている個数が多く、重なっている部分の面積が大きいほど、前述の効果が出やすい。以下、同様。)。4倍よりも大きいと、開孔部の形成及び保持が困難になるという問題がある。
【0036】
例えば、中間孔の直径が0.3~1mmである場合、トップ孔の直径を0.6~4mmにすることが好ましい。
なお、平面視において、トップ孔(および/または中間孔)の形状が円形でない場合、例えば楕円形や、四角形などの多角形状である場合は、投影円相当径(トップ孔(および/または中間孔)の投影面積に等しい円の直径)をいう。
また、トップ孔の直径は、トップシートの任意の箇所(100mm×100mmの正方形)の範囲内に設けられたすべてのトップ孔の直径の平均値をいう。同様に、中間孔の直径は、中間シートの任意の箇所(100mm×100mmの正方形)の範囲内に設けられたすべての中間孔の直径の平均値をいう。このとき、トップシートの前記正方形の位置と中間シートの前記正方形の位置は、平面視で完全に重なるようにする。なお、トップシートや中間シートにおける前記任意の箇所として、着用者の排泄口と当接する部分を選択することが好ましい。
排泄液を吸収要素全体で吸収させるようにするため、トップ孔を設ける位置は、トップシートの縦方向及び横方向に均等にすることが好ましい。同様の理由により、中間孔を設ける位置も、中間シートの縦方向及び横方向に均等にすることが好ましい。
【0037】
<第7の態様>
前記トップシートに形成された前記貫通孔(トップ孔)の数が、前記中間シートに形成された前記貫通孔(中間孔)の数よりも多く、
平面視で、前記トップシートに形成された前記貫通孔(トップ孔)と、前記中間シートに形成された前記貫通孔(中間孔)が、少なくとも一部で重なっている、
前記第5または6の態様に記載の吸収性物品。
【0038】
(作用効果)
平面視で、トップシートに形成された貫通孔(トップ孔)と、中間シートに形成された貫通孔(中間孔)が、少なくとも一部で重なっていると、排泄液を吸収要素まで速やかに到達させることができる。ただし、実際の吸収性物品の製造において、平面視で、トップ孔と中間孔の位置が重なるように位置合わせすることは困難である。そこで、トップ孔の数を中間孔の数よりも多くして、この位置合わせを容易にすることが好ましい。なお、中間孔の数をトップ孔の数よりも多くする態様も考えることができる。しかし、中間シートには凸部が設けられているため、中間孔の数を多くすることに対しては、制約がある。そこで、トップ孔の数を多くするようにすることが好ましい。
【0039】
トップ孔の数は中間孔の数の2倍~4倍にすることが好ましく、2.5倍~3.5倍にすることがより好ましい。2倍よりも少ないと、平面視で、トップ孔と中間孔が重なっているものの数が少なくなったり、トップ孔と中間孔の重なり部分の面積が小さくなったりするため、排泄液を吸収要素まで速やかに到達させるという効果を得づらい。4倍よりも多いと、開孔部の形成及び保持が困難になったり、強度が弱くなったりするという問題がある。
【0040】
例えば、中間孔の数が9~12個/cm2である場合、トップ孔の数を27~36個/cm2にすることが好ましい。
また、トップ孔の数は、トップシートの任意の箇所(100mm×100mmの正方形)の範囲内に設けられたトップ孔の数をいう。同様に、中間孔の数は、中間シートの任意の箇所(100mm×100mmの正方形)の範囲内に設けられた中間孔の数をいう。このとき、トップシートの前記正方形の位置と中間シートの前記正方形の位置は、平面視で完全に重なるようにする。なお、トップシートや中間シートにおける前記任意の箇所として、着用者の排泄口と当接する部分を選択することが好ましい。
なお、排泄液を吸収要素全体で吸収させるようにするため、トップ孔を設ける位置は、トップシートの縦方向及び横方向に均等にすることが好ましい。同様の理由により、中間孔を設ける位置も、中間シートの縦方向及び横方向に均等にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、排泄時に尿などの排泄液を速やかに吸収要素へ到達させることができる。それとともに、吸収要素が吸収した排泄液が表面シートへ逆戻りすることを防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】テープタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【
図2】テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【
図3】
図1の6-6線断面図である。なお、トップシートの一部分の断面を拡大して示している。
【
図5】(a)
図1の8-8線断面図、及び(b)
図1の9-9線断面図である。
【
図7】
図6の2-2線断面図である。中間シートのほかに、トップシートと包装シートも示す。
【
図8】(a)他の形態の中間シートの平面図である。(b)
図8の(a)の中間シートに重ねるトップシートの平面図である。
【
図9】
図8の3-3線断面図である。トップシートと中間シートのほかに、包装シートも示す。
【
図11】(a)金属製の治具の平面図である。(b)金属製の治具の斜視図である。
【
図14】トップ孔の直径が中間孔の直径よりも大きい場合を示した平面図である。(a)中間孔がトップ孔と完全に重り合った態様、(b)中間孔がトップ孔と一部分で重なり合った態様である。
【
図15】トップ孔の数が中間孔の数よりも多い場合を示した平面図である。(a)中間孔がトップ孔と完全に重なり合った態様、(b)中間孔がトップ孔と一部分で重なり合った態様である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1~
図5は、吸収性物品として、テープタイプ使い捨ておむつを例示しており、図中の符号Xは連結テープを除いたおむつの全幅を示しており、符号Lはおむつの全長を示している。また、図示していないが、トップシート30、中間シート40、包装シート58、吸収体56、液不透過性シート11および外装不織布12の間は、それぞれホットメルト接着剤によって接着されている。ホットメルト接着剤は、スロット塗布、連続線状又は点線状のビード塗布、スパイラル状、Z状等のスプレー塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)等、公知の手法により塗布することができる。これに代えて又はこれとともに、弾性部材の固定部分では、ホットメルト接着剤を弾性部材の外周面に塗布し、弾性部材を隣接部材に固定することができる。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
【0044】
このテープタイプ使い捨ておむつは、前後方向LDの中央より前側に延びる腹側部分Fと、前後方向LDの中央より後側に延びる背側部分Bとを有している。また、このテープタイプ使い捨ておむつは、股間部を含む範囲に内蔵された吸収体56と、吸収体56の表側を覆う液透過性のトップシート30と、吸収体56の裏側を覆う液不透過性シート11と、液不透過性シートの裏側を覆い、製品外面を構成する外装不織布12とを有するものである。
【0045】
以下、各部の素材及び特徴部分について順に説明する。
(吸収体)
吸収体56は、排泄液を吸収し、保持する部分であり、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100~300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30~120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1~16dtex、好ましくは1~10dtex、さらに好ましくは1~5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、2.54cm当たり5~75個、好ましくは10~50個、さらに好ましくは15~50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いることができる。
【0046】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子としては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用できる。高吸収性ポリマー粒子の粒径は特に限定されないが、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)、及びこのふるい分けでふるい下に落下する粒子について180μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)を行ったときに、500μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下で、180μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0047】
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0048】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0049】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0050】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50~350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0051】
(包装シート)
高吸収性ポリマー粒子の抜け出しを防止するため、あるいは吸収体56の形状維持性を高めるために、吸収体56は包装シート58で包んでなる吸収要素50として内蔵させることができる。包装シート58としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。
【0052】
この包装シート58は、
図3に示すように、一枚で吸収体56の全体を包む構造とするほか、上下2枚等の複数枚のシートで吸収体56の全体を包むようにしてもよい。包装シート58は省略することもできる。
【0053】
包装シート58の目付は、16g/m2以上にすることが好ましく、20g/m2以上にすることがより好ましい。包装シート58を厚目付にすることで、吸収体56が保持する排泄物や酸が逆戻りして、着用者の肌に付着し、肌に負担がかかることを防ぐことができる。
【0054】
(トップシート)
トップシート30は液透過性を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0055】
トップシート30は、前後方向では製品前端から後端まで延び、幅方向WDでは吸収体56よりも側方に延びているが、例えば後述する起き上がりギャザー60の起点が吸収体56の側縁よりも幅方向中央側に位置する場合等、必要に応じて、トップシート30の幅を吸収体56の全幅より短くする等、適宜の変形が可能である。
【0056】
トップシート30には、トップシート30の肌側の面から裏側の面に貫通する貫通孔78を設けることが好ましい。以下の説明において、このトップシート30に設ける貫通孔78のことをトップ孔78という。このトップ孔78を設けることにより、トップシート30に排泄された排泄液を速やかに中間シート40に移動させることができる。
【0057】
後述するように、中間シート40には、裏側から肌側へ向かって突出する複数の凸部99と、隣り合う前記凸部99、99の間に形成された凹部88を有し、この凹部88に、中間シート40を厚み方向に貫通する中間孔77が形成されている。なお、以下の説明において、中間シート40に設ける貫通孔77のことを中間孔77という。そして、トップシート30と中間シート40の凸部99が、ホットメルト接着剤Hなどによって連結されている。
【0058】
トップシート30に排泄された排泄液は、主に、トップシート30と中間シート40の凸部99との接触部位(
図7の例では、ホットメルト接着Hがされた部位)を通って、中間シート40へ流れる。そのため、トップシート30のうち、中間シート40と接触していない部分においては、排泄液が中間シート40へ移動しづらく、トップシート30の内部に排泄液を保持してしまったり、トップシート30の肌側の表面上に排泄液を留めてしまったりする可能性がある。そこで、トップシート30のうち、中間シート40と接触していない部分に、トップ孔78を形成することで、トップシート30が排泄液を保持することを防いだり、トップシート30の肌側の表面の上に排泄液が溜まったりすることを防ぐことができる。
【0059】
また、中間シート40においては、凹部88に排泄液が溜まりやすい。着用者が排泄液を大量に排泄した場合、一時的に中間シート40の凹部88に沢山の排泄液が溜まり、その凹部88に溜まった排泄液がトップシート30と接触する可能性がある。トップシート30のうち、前記接触の可能性がある部位は、平面視で、中間シート40の凹部88と重なる部位である。そこで、トップシート30のうち、中間シート40の凹部88と重なる位置に、前記トップ孔78を設けることで、トップシート30から中間シート40への排泄液の移動を促し、トップシート30に接触した排泄液がそのままトップシート30の繊維内に保持されることを抑止している。
【0060】
トップシート30に設けたトップ孔78と中間シート40の凹部88との関係を示す断面図を
図9に示す。
図9の例では、平面視において、トップ孔78と中間孔77の位置を一致させている。これらの2つの
貫通孔77、78の位置を一致させることで、トップシート30に排泄された排泄液をこれらの
貫通孔77、78を通じて、速やかに吸収要素50へ伝達することができる利点がある。しかし、このような態様に限られるものではなく、平面視において、トップ孔78の一部分と中間孔77の一部分が重なる形態にしてもよい。そのほか、平面視で、トップ孔78と中間孔77を重ねずに、凹部88のうち、中間孔77のない部分と、トップ孔78が重なるようにしてもよい。
【0061】
また、トップ孔78を設ける他の利点として、トップシート30と着用者の肌との接触面積が減るため、通気性が良くなり、着用者の装着感が向上するという効果もある。
【0062】
トップシート30における排泄液の透過性を高める観点と、トップシート30と着用者の肌との接触面積を減らす観点からは、トップ孔78を複数設けることが好ましい。同様の2つの観点から、1個のトップ孔78の面積は、大きい方が好ましい。トップ孔78の数を増やしたり、1個当たりのトップ孔78の面積を大きくすると、排泄された排泄液を速やかに吸収要素まで届けることができるという利点があるが、反対に、トップ孔78の数が多すぎたり、1個のトップ孔78の面積が大きすぎると、中間シート40や吸収要素50からの逆戻りが発生しやすいという問題がある。そこで、このようなメリットとデメリットを考慮すると、トップ孔78の数は、トップシート30の100mm2当たり2個~100個設けることが好ましく、8個~64個設けることがより好ましい。また、トップ孔78の1個当たりの平均面積は、0.3mm2~15mm2にすることが好ましく、1.5mm2~8mm2にすることがより好ましい。したがって、トップシート30の表面の100mm2の範囲に設けられた複数のトップ孔78の総面積は、平均して、0.6mm2~1500mm2にすることが好ましく、12mm2~512mm2にすることがより好ましい。
【0063】
トップシート30のトップ孔78は、例えば、以下のような方法によって設けることができる。
加温された凸ロールと凹ロールの間にトップシート30の不織布を通し、トップ孔78を設ける。ロールの温度は、凸ロールが100~110℃、凹ロールが110~120℃であると好ましい。
【0064】
前述のとおり、トップシート30を構成する不織布は合成繊維からなることが多い。そのため、綿などの自然素材で構成する場合は別として、疎水性の性質を備えることが多い。トップシート30の不織布が疎水性であると、トップシート30が排泄液をはじき、トップシート30の肌側の表面に水滴状の塊ができて、トップシート30から中間シート40へ排泄液が浸透しない。そのため、トップシート30が疎水性の性質を有する場合は、トップシート30の繊維に親水剤を含ませることが好ましい。同様理由により、トップシート30だけではなく、中間シート40および包装シート58のどちらか一方に、もしくは中間シート40および包装シート58の両方にも、親水剤を含ませることが好ましい。
【0065】
トップシート30に含ませる親水剤は、排尿した時に、その一部が吸収要素50へ流れ落ちるようにすることが好ましい。親水剤が流れ落ちることにより、トップシート30の性質が親水性から疎水性へ移行する。トップシート30が親水性であると、トップシート30の内部に排泄液が貯まりやすいため、逆戻りの可能性があるが、トップシート30を疎水性へ傾けることにより、このような逆戻りの可能性を低減することができる。なお、トップシート30が疎水性に傾きすぎると、繰り返し排泄した時に、排泄液がトップシート30を透過しないという問題がある。そのため、このような問題が生じない程度に、トップシート30に親水剤が残るようにすることが好ましい。
【0066】
以上のような親水剤を含むトップシート30の製造方法としては、例えば、おむつ加工機で、おむつ製造時にインラインでスプレー塗布する方法でトップシート30に固定してもよい。そのほか、トップシート30を製造する工程において、延伸~乾燥工程の間で、親水剤を付与するなど、他の方法を用いてもよい。なお、トップシート30を構成する繊維に親水剤を塗り込むと、繊維から親水剤が流れ落ちにくくなるので、あまり好ましくない。
【0067】
以上のようにして製造したトップシート30は、トップシート30を構成する繊維の外面に親水剤が付着した状態になる。それとともに、トップシート30を構成する複数の繊維間の間隙に親水剤が充填された状態にしてもよい。さらに、トップシート30が疎水性に大きく傾くことを防ぐため、トップシート30を構成する繊維自体の内部に親水剤の一部を浸透させた状態にすると、複数回の排泄によっても親水剤が完全に流れ落ちにくくなるため、好適である。
【0068】
また、前記の用途に用いる親水剤としては、特に限定なく用いることができるが、例えば各種の界面活性剤(アニオン性、カチオン性、両性イオン性及びノニオン性)が典型的なものとして挙げられる。具体的には、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエーテル-ポリエステルブロック共重合体、ポリエーテル変性シリコーン、エチレンオキサイド付加多価アルコールの脂肪酸エステル等を用いることができる。
【0069】
親水剤を含むトップシート30に対して、以下の人工尿の滴下試験を行い、第1回目の計測結果が10点以下、第2回目の計測結果が5点以下、かつ第3回目の計測結果が5点以上であるトップシート30を吸収性物品に搭載すると良い。
[人工尿の滴下試験方法]
(1)ろ紙を10枚重ねた上に、親水剤を含むトップシート30を置き、前記トップシート30の上に10個の穴が開いた金属製の治具70を置く。なお、本試験は、繰り返し排泄した際に、トップシート30に含まれる親水剤が、流れ落ちにくいものであるか否かを確認するものであるため、この試験に用いるトップシート30に水溶性の酸を含ませる必要はない。
(2)(第1回目の計測)
マイクロピペットを用いて、1個の穴ごとにそれぞれ1mLの人工尿(下記の着色料を添加したもの)を滴下する(すなわち10個の穴に対して合計10mLの人工尿を滴下する)。人工尿を滴下した後、2秒以内に、前記不織布が人工尿を吸収したか否かを確認する。不織布の上に人工尿が残っている時(通常、不織布の上に人工尿が球状になって載っている状態の時)は、不織布が人工尿を吸収していないと記録する。他方、不織布の上に人工尿が残っていない時は、不織布が人工尿を吸収していると記録する。10個の穴のそれぞれについて、この記録作業を行う。すなわち、2秒以内に、不織布を透過した箇所が10か所中何か所であったかを記録する。そして、吸収された穴を1点、吸収されていない穴を0点とカウントし、10個の穴の合計点数を記録する。
(3)(第2回目の計測)
前記(2)で人工尿(下記の着色料を添加したもの)を滴下した後、3分間経過するのを待ち、3分間経過後に、再び、マイクロピペットを用いて、1個の穴ごとにそれぞれ1mLの人工尿を滴下する。そして、前記(2)と同様の要領で、合計点数を記録する。
(4)(第3回目の計測)
前記(3)で人工尿(下記の着色料を添加したもの)を滴下した後、3分間経過するのを待ち、6分間経過後に、ガラスピペットを用いて、1個の穴ごとにそれぞれ500μLの人工尿を滴下する。そして、前記(2)と同様の要領で、合計点数を記録する。
(5)前記(2)~(4)の記録結果において、第1回目の計測結果が10点以下、かつ第2回目の計測結果が5点以下、かつ第3回目の計測結果が5点以下となったトップシート30を吸収性物品に搭載すると良い。複数回の排尿があった場合に、親水剤が流れ落ちやすいと判断できるからである。
(ろ紙)
前記試験に用いるろ紙としては、ADVENTEC社のFILTER PAPER250mm×250mm正方形を用いる。
(金属製の治具)
前記金属製の治具70としては、以下のものを用いる。
幅210mm、長さ50mm、厚み5mmの長方形であり、直径15mmの穴71が、幅方向及び長さ方向に4mmの間隔を空けながら、等間隔に10個空いている。重さは400gである。
(人工尿)
前記試験に用いる人工尿としては、以下のものを用いる。
尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したもの
(着色料)
キリヤ社の食用青色1号(Brilliant Blue FCF)(荷姿:紛体)約5gを、上記の人工尿約300mlに溶解して調整する。
(ピペット)
前記人工尿の滴下試験に用いるマイクロピペットとしては、例えば、Biohit Proline Pipette 100~1000μl(型番:720050)を用いることができる。また、前記人工尿の滴下試験に用いるガラスピペットとしては、例えばマルエム KOMA5 5ml(型番:0801-04)を用いることができる。
【0070】
以上のように、トップシート30にトップ孔78を設けることにより、以下のような効果を奏する。すなわち、トップシート30が排泄液を速やかに表面(肌側の面)から裏面に通過させることができる。トップシート30の透過性が悪いと、トップシート30の表面(肌側の面)上に排泄液が堆積するため、排泄液が着用者の肌に接触する時間が長くなり、着用者が不快感を感じやすい。本発明では、トップ孔78を設けて透過性を高めることで、排泄物が着用者の肌に接触する時間を短くし、着用者の不快感を軽減することが可能である。
【0071】
また、トップシート30の表面に排泄物が堆積している時間が長くなると、着用者の動作や、トップシート30を構成する繊維の浸透作用により、排泄物がトップシート30の広範囲に広がる(拡散する)。その結果、排泄物が透過した後に、トップシート30に残存する排泄物の表面積が大きくなり、その広範囲に残存する排泄物が肌と接触するため、着用者の肌に負担がかかりやすい。本発明は、トップシート30にトップ孔78を設けて透過性を高めたため、トップシート30に残存する排泄物の表面積を小さくなり、排泄物が着用者の肌に接触する面積を小さくすることができる。その結果、着用者の肌への負担が軽減される。
【0072】
トップシート30の目付は10~18g/m2にすることが好ましく、13~15g/m2にすることがより好ましい。それとともに、トップシート30の厚さを0.1~0.3mmにすることが好ましく、0.2~0.3mmにすることがより好ましい。それとともに、トップシート30を構成する繊維の繊度を1.8~3.0dtexにすることが好ましく、2.0~2.5dtexにすることがより好ましい。
【0073】
トップシート30の目付が18g/m2よりも大きく、トップシート30の厚さが0.3mmよりも厚く、トップシート30を構成する繊維の繊度が3.0dtexよりも高いと、トップシート30が排泄液を保持しやすく、トップシート30からさらさら感が失われてしまうという問題がある。したがって、トップシート30の目付を18g/m2以下とし、トップシート30の厚さを0.3mm以下とし、トップシート30を構成する繊維の繊度を3.0dtex以下とすることにより、前述の問題、すなわちトップシート30が湿った状態(乾いていない状態)になり、着用者が不快感を覚えるというという問題を解決することができる。
【0074】
他方、トップシート30の目付が10g/m2に満たない場合や、トップシート30の厚みが0.1mmより薄い場合は、トップシート30の資材強度が弱くなり、使用中に破れてしまったり、地合いムラにより排泄液が肌面側に戻ってきやすくなるという別の問題がある。
【0075】
また、トップシート30を構成する繊維の繊度が1.8dtexよりも細い場合は、トップシート30から裏面側に排泄液が透過しにくいという別の問題がある。
【0076】
したがって、トップシート30の目付を10g/m2以上とし、トップシート30の厚さを0.1mm以上とし、トップシート30を構成する繊維の繊度を1.8dtex以上とすることにより、前述の各問題を解決することもできる。
【0077】
以上では、トップシート30の目付、繊度、素材自身の厚みについて、それぞれ好ましい値を示した。トップシート30の目付、繊度、素材自身の厚みのすべてを好ましい値にすると、前述の各効果が顕著に表れるため好適であるが、目付、繊度、素材自身の厚みの少なくともいずれか一つを好ましい値にして、任意の好ましい効果を得るようにしてもよい。
【0078】
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体56へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体56へ移行させて吸収体56による吸収性能を高め、吸収した液の吸収体56からの「逆戻り」現象を防止するためのものである。
【0079】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド不織布又はクレープ紙を例示できる。特にスパンボンド不織布が嵩が少なく好ましい。
【0080】
図示例の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。また、中間シート40は、おむつの全長にわたり設けてもよいが、図示例のように排泄位置を含む中間部分にのみ設けてもよい。
【0081】
中間シート40の目付は、任意に決めることができるが、15~30g/m2にすることが好ましく、20~28g/m2にすることがより好ましい。一般的な中間シート40の目付は25~45g/m2であるため、好ましいとした前述の目付は比較的低いことになる。中間シート40の目付が低い値になると、中間シート40内に保持される排泄液の量が少なくなる。そのため、一般的な中間シート40を用いた場合と比べて、中間シート40が液持ち(排泄液を保持すること)しづらくなり、例え中間シート40の内部にある排泄液が逆戻りしたとしても、その逆戻りする量が一般的な中間シート40よりも少ないという利点がある。なお、中間シート40の目付が15g/m2に満たない場合は、トップシート30と吸収体56の間の距離が短くなるため、吸収体56内の排泄液が着用者の肌に逆戻りしやすいという問題がある。他方、中間シート40の目付が30g/m2よりも大きいと、中間シート40が排泄液を保持しやすくなり、中間シート40内の排泄液が逆戻りした時に、その量が多くなってしまうという問題がある。
【0082】
中間シート40の繊度は任意に定めることができるが、2~4dtexにすることが好ましく、2~3dtexにすることがより好ましい。中間シート40の素材自身の厚み(中間シート40に凹凸を設ける前における厚み。以下同じ)は任意に定めることができるが、0.1~1mmにすることが好ましく、0.3~0.6mmにすることがより好ましい。中間シート40の密度は任意に定めることができるが、15000~300000g/m3にすることが好ましく、20000~280000g/m3にすることがより好ましい。
【0083】
中間シート40の繊度が2dtexよりも小さく、素材自身の厚みが0.1mmよりも薄く、密度が15000g/cm3よりも低いと、繊維間に保持される排泄液が増えてしまうという問題がある。中間シート40の繊度が4dtexよりも大きく、素材自身の厚みが1mmよりも厚く、密度が300000g/m3よりも高いと、排泄液が透過しにくくなるという問題がある。
【0084】
以上に述べたように、吸収性物品に着用者の体圧がかかると、中間シート40が保持する排泄液や吸収体56が保持する排泄液が、トップシート30の肌側の表面に移動する現象、すなわち、いわゆる逆戻り現象が発生するおそれがある。中間シート40に焦点を当てて考えた場合、中間シート40の目付、繊度、素材自身の厚みおよび密度の少なくともいずれか一つを好ましい値にして(すべて好ましい値にすると、効果がより高くなる)、中間シート40内部に保持される排泄液の量を少なくすればよい。中間シート40内の排泄液の量が少なくなれば、仮に中間シート40の内部にある排泄液が逆戻りしたとしても、その逆戻りする量が一般的な中間シート40よりも少ないという利点があるからである。
【0085】
しかし、吸収体56に焦点を当てて考えた場合、中間シート40の目付、繊度、素材自身の厚みおよび密度を前述の好ましい値にすると、かえって逆戻りしやすくなるおそれがある。例えば、中間シート40の素材自身の厚みを薄くした場合、トップシート30と吸収要素50(ひいては吸収体56)との間の距離が短くなる。そのため、中間シート40の素材自身の厚みが厚い場合と比べて、吸収性物品に体圧がかかった際に、吸収体56が保持していた排泄液が、トップシート30へ逆戻りしやすくなってしまう。
【0086】
そこで本発明においては、中間シート40を、裏側から肌側へ向かって突出する複数の凸部99と、隣り合う前記凸部99の間に形成された凹部88を有するシートにすることが好ましい。中間シート40に凸部99と凹部88を設けることにより、トップシート30と吸収要素50(ひいては吸収体56)との間の厚み方向の距離を広げることができる。その結果、中間シート40に凸部99や凹部88を設けない場合と比べて、吸収体56が保持する排泄液がトップシート30へ逆戻りする可能性を低減することができる。
【0087】
凸部99の形状は特に限定されない。
図6~
図10においては、平面視で円形を描くドーム形状の凸部99を例示しているが、平面視で楕円形や多角形(三角形、四角形その他の多角形)を描くドーム形状にしても良い。肌側へ突出する形状もドーム型に限定されるものではなく、筒状などの任意の形態にしてもよい。
【0088】
平面視における凸部99の直径は、0.5~5mmにすることが好ましく、2~3mmにすることがより好ましい。凸部99の直径が0.5mmよりも短いと、凸部99が尖りすぎるため、トップシート30と中間シート40の固定がうまくいかないという問題がある。反対に、凸部99の直径が5mmよりも長いと、凸部99全体が大きくなりすぎるため、体圧などがかかった際に、凸部99の形状の維持が難しくなるという問題がある。なお、平面視において、凸部99の形状が円形でない場合、例えば楕円形の場合や、四角形などの多角形状である場合は、投影円相当径(凸部99の投影面積に等しい円の直径)をいう。凸部99の直径は、中間シート40の任意の箇所(100mm×100mmの正方形)の範囲内に設けられたすべての凸部99の直径の平均値をいう。なお、中間シートにおける前記任意の箇所として、着用者の排泄口と当接する部分を選択することが好ましい。
以上の点は、貫通孔77、78においても同様である。なお、貫通孔77、78が厚み方向に径が異なる孔の場合には最小の部分の投影円相当径をいう。このことは貫通孔77、78の役割として液を透過することが求められており、最小部分が律速となるためである。
【0089】
複数の凸部99間の距離は任意に決定することができる。例えば、
図7の態様において、隣接する凸部99、99の頂点h1、h1間の距離L1を2~10mmにすることが好ましく、3~5mmにすることがより好ましい。距離L1が2mmよりも短い場合、後述する中間孔77を開ける際の加工適性が低くなるという問題がある。反対に、距離L1が10mmよりも長い場合、凸部99がつぶれやすくなるという問題がある。
【0090】
また、
図7の態様のように、隣接する凸部99、99の間に、2つ以上の中間孔77を設ける場合は、それらの隣接する中間孔77、77の間の距離L2(中間孔77の中心から隣接する中間孔77の中心までの距離)を1~5mmにすることが好ましく、2~4mmにすることがより好ましい。距離L2が1mmよりも短い場合、中間孔77を開ける加工適性が低くなるという問題、ないしは密度が高く剛度のある周縁部がほぼ連続していることとなるため着用者が硬さを感じてしまうという問題がある。反対に、距離L2が5mmよりも長い場合、凸部がつぶれやすいという問題がある。
【0091】
また、
図7の態様のように、隣接する凸部99、99の間に、2つ以上の中間孔77を設ける場合は、それらの隣接する中間孔77、77の間に挟まれる凹部88の距離L3を0.5~4mmにすることが好ましく、0.5~3mmにすることがより好ましい。距離L3が0.5mmよりも短い場合、中間孔77を開ける加工適性が低くなるという問題、ないしは密度が高く剛度のある周縁部がほぼ連続していることとなるため、着用者が硬さを感じてしまうという問題がある。反対に、距離L3が4mmよりも長い場合、凸部99がつぶれやすくなるという問題がある。
【0092】
さらに、
図7や
図9の態様のように、隣接する凸部99、99の間に、中間孔77を設ける場合は、凸部99の縁から中間孔77の縁までの距離L4を0~2mmにすることが好ましく、0~1mmにすることがより好ましい。距離L4が2mmよりも短い場合、凸部99がつぶれやすくなるという問題がある。
【0093】
また、中間シート40の凸部99の高さhは、1~2mmが好ましく、1~1.5mmがより好ましい。ここで、凸部99の高さhとは、
図7に示すように、中間シート40の肌側の表面における凸部99の頂点h1と、その頂点h1から垂線を下ろし、中間シート40の裏側の表面における凹部88の底面h3と同じ高さで交わる点h2との間の距離をいう。凸部99の高さが1mm未満であると、トップシート30と吸収要素50との間の厚み方向の距離が十分でないため、吸収要素50が保持する排泄液がトップシート30へ逆戻りしやすいという問題がある。凸部99の高さが2mmよりも高いと、中間シート40に体圧などがかかった際に、凸部99の形状が崩れてしまいやすいという問題がある。
【0094】
以上のように、中間シート40に凸部99と凹部88を設けることにより、トップシート30と中間シート40の間に空間98が形成されるとともに、中間シート40と吸収要素50の包装シート58との間に空間97が形成される。これらの空間を形成することによって、吸収要素50からトップシート30への逆戻りを防ぐことができる。
【0095】
中間シート40に凸部99と凹部88を設けると、トップシート30から中間シート40へ到達した排泄液は、凹部88に液だまりする可能性がある。より詳しくは、トップシート30と中間シート40の間の空間98に液だまりする可能性がある。そこで、中間シート40の凹部88に、厚み方向に貫通する中間孔77(以下、中間孔77という)を形成することにより、排泄時における液だまりの発生を抑制し、排泄液を速やかに吸収要素50へ到達させることを可能にしている。
【0096】
中間シート40における排泄液の透過性を高める観点からは、中間孔77を複数設けることが好ましい。同様の観点からは、1個の中間孔77の面積は、大きい方が好ましい。中間孔77の数を増やしたり、1個当たりの中間孔77の面積を大きくすると、排泄された排泄液を速やかに吸収要素まで届けることができるという利点があるが、反対に、中間孔77の数が多すぎたり、1個の中間孔77の面積が大きすぎると吸収要素50からの逆戻りが発生しやすいという問題がある。そこで、このようなメリットとデメリットを考慮すると、中間孔77の数は、中間シート40の100mm2当たり1個~25個設けることが好ましく、4個~16個設けることがより好ましい。また、中間孔77の1個当たりの平均面積は、0.3mm2~1.0mm2にすることが好ましく、0.4mm2~0.5mm2にすることがより好ましい。したがって、中間孔77の表面の100mm2の範囲に設けられた複数の中間孔77の総面積は、平均して、0.3mm2~25mm2にすることが好ましく、1.6mm2~8mm2にすることがより好ましい。
【0097】
中間シート40の中間孔77は、例えば、以下のような方法によって設けることができる。
加温された凸ロールと凹ロールの間に中間シート40の不織布を通し、中間孔77を設ける。ロールの温度は、凸ロールが100~110℃、凹ロールが110~120℃であると好ましい。同様の方法により、中間シート40に凸部99と凹部88を設けるようにすることが好ましい。凸部99および凹部88と、中間孔77は、別々のタイミングで設けてもよいが、同時に設けた方が製造時間を短縮化することができる。すなわち、加温された凸ロールと凹ロールの間に中間シート40の不織布を通して凸部99と凹部88を形成した後、凹凸が形成された中間シート40を加温された別の凸ロールと凹ロールの間に通して、中間孔77を形成することもできるが、製造時間が長くなるとともに、凸ロールと凹ロールの数が増えて、製造設備の費用が高くなる。そこで、加温された1セットの凸ロールと凹ロールの間に中間シート40の不織布を通して、凸部99、凹部88、中間孔77を同時に形成し、製造時間の短縮と、製造設備費の低下を図ることが好適である。
【0098】
なお、中間シート40の凹部88に設けた中間孔77の周縁部77Rが、中間シート40の凹部88の前記周縁部77Rでない部分77Nよりも繊維密度が高い方が好ましい。中間シート40に体圧などがかかった際に、中間孔77の周縁部77Rの繊維密度が高いことにより、凸部99の周りの剛度が高くなり、凸部99の形状が崩れにくくなるからである。中間孔77の周縁部77Rが繊維密度が高くない場合、体圧によって凸部99の形状が崩れてしまう傾向があるが、中間孔77の周縁部77Rが繊維密度が高い場合は、この周縁部77Rが体圧に抗するため、結果として凸部99の形状の維持を図ることができる。なお、中間孔77の周縁部77Rと周縁部77Rでない領域を
図6に示した。硬くなった周縁部77Rは、中間孔77の縁から径方向に0.01~0.1mmの距離を取った部分に形成される。硬くした周縁部77Rの繊維密度の高さは、例えば1.5~3程度にすることが好ましい。
【0099】
中間孔77の周縁部77Rを前記周縁部77Rでない部分77Nよりも繊維密度を高くするため、例えば中間孔77を形成する際に、中間シート40に凸ロールの凸状の鋼材を挿し込むようにするとよい。中間孔77をこのように形成することにより、
図12に示すように、中間孔77の周囲に突出部(ばり)14eが生じて硬くなる。
【0100】
中間孔77の断面形状は特に限定されない。例えば、中間孔77は、
図12(d)に示すように周縁が繊維の切断端により形成されている打ち抜きタイプの孔であっても、
図12(a)~(c)に示すように、中間孔77の周縁に繊維の切断端がほとんど無く、ピンが繊維間に挿入されて押し広げられて形成されたピン挿入タイプの中間孔77(縁部の繊維密度が高い)であってもよい。打ち抜きタイプの孔は、
図12(d)に示すように、中間孔77の径が厚み方向中間に向かうにつれて小さくなるものであっても、厚み方向一方側に向かうにつれて小さくなるものであってもよい。なお、中間孔77の径は、孔の重心を通りかつ伸縮方向と直交する方向の寸法(したがって、円の場合は直径となり、楕円の場合は長径となる)を意味する。さらに、中間孔77の径が厚み方向に減少することには、中間孔77の径が不織布層の厚み方向の全体にわたり減少し続けるもののほか、厚み方向の中間で中間孔77の径の減少がほぼなくなるものも含まれる。
【0101】
ピン挿入タイプの中間孔77は、中間孔77の径がピン挿入側から反対側に向かうにつれて小さくなるものである。このようなピン挿入タイプの孔には、
図12(a)(c)に示すように、ピン挿入側と反対側における中間孔77の縁部に繊維がピン挿入側と反対側に押し出された突出部(
ばり)14eが形成され、ピン挿入側には突出部14eが形成されないものと、
図12(b)に示すように、ピン挿入側と反対側における中間孔77の縁部に繊維がピン挿入側と反対側に押し出された突出部14eが形成されるとともに、これよりも低い突出部14eがピン挿入側に形成されるものとが含まれる。さらに、前者のタイプの孔14には、
図12(a)に示すように突出部14eの突出高さがほぼ均一であるものと、
図12(c)に示すように突出部14eが、突出高さが最も高い対向部分と、これと直交する方向に対向する対向部分であって突出高さが最も低い対向部分とを有するものとが含まれる。突出部14eは孔の周方向に連続して筒状になっていることが望ましいが、一部又は全部の中間孔77の突出部14eが、中間孔77の周方向の一部のみに形成されていてもよい。突出部の高さ(光学顕微鏡を用いて測定される圧力を加えない状態での見かけの高さ)は0.2~1.2mm程度であることが好ましい。なお、突出部14eの形成により、
図12(b)のように、肌側にも突出部14eが形成されることもあるが、この肌側に形成された突出部14eは、中間シート40の凸部99とは異なるものである。また、前記凸部99の高さhの測定などにあたっては、この突出部14eはないものとして計測する。
【0102】
中間シート40に対し、凸部99、凹部88、中間孔77を形成する場所は特に限定されない。
図6の態様では、1個の凸部99の周囲に6個の中間孔77を設けており、
図8の態様では、1個の凸部99の周囲に4個の中間孔77を設けており、
図10の態様では、1個の凸部99の周囲に8個の中間孔77を設けている。各中間孔77の周縁部77Rが硬くなっている場合、中間孔77の数が増えるほど剛性が高まり、凸部99の形状が崩れにくくなるという利点がある。反対に、各中間孔77の周縁部77Rが硬くなっていない場合、中間孔77の数が増えるほど剛性が弱まり、凸部99の形状が崩れやすくなるという不利益がある。中間孔77の数は、中間孔77の周縁部77Rが硬くなっているか否かと、凸部99の形状をどれほど保持したいかにより、任意に決定すればよい。また、
図6や
図8のように、複数の凸部99を直線状に設けるよりも、
図10のように曲線状に設けた方が、外圧がかかった場合に、凸部99の形状が崩れにくいという利点がある。なお、
図8において、ジグザグ状に横方向に隣接する凸部99間の角度Pは、90度にすることができる。この角度Pは任意に定めることができ、45~120度にすることが好ましく、60~100度にすることがより好ましい。
【0103】
また、平面視で、トップシート30に形成されたトップ孔78と、中間シート40に形成された中間孔77が、少なくとも一部で重なっていると、トップシート30に排泄された排泄液を吸収要素50まで速やかに到達させることができる。
【0104】
しかし、実際の吸収性物品の製造において、平面視で、トップ孔78と中間孔77の位置が重なるように位置合わせすることは困難である。そこで、トップ孔78の直径を中間孔77の直径よりも大きくして、この位置合わせを容易にすることが好ましい。
【0105】
図14は、トップ孔78の直径を中間孔77の直径よりも長くした態様を例示した平面図である。トップ孔78の直径を大きくすることにより、平面視で、トップ孔78と中間孔77が重なり合った部分79(重畳部分)を形成しやすくなる。
図14(a)は、中間孔77がトップ孔78と完全に重畳した態様を示し、
図14(b)は、中間孔77の一部分がトップ孔78の一部分と重畳した態様を示す。
【0106】
なお、
図14では、トップ孔78の直径は、中間孔77の直径の3倍としている。トップ孔78の直径は、中間孔77の直径の2倍~4倍の長さにすることが好ましく、2.5倍~3.5倍の長さにすることがより好ましい。
また、
図14では、図面の縦横に隣接するトップ孔78、78の中心点間の距離を全て同じ長さにしているが、任意の異なる長さにしても良い。同様に、
図14では、図面の縦横に隣接する中間孔77、77の中心点間の距離を全て同じ長さにしているが、任意の異なる長さにしても良い。
【0107】
なお、中間孔77の直径をトップ孔78の直径よりも大きくする態様も考えることができる。しかし、中間シート40には凸部99が設けられているため、中間孔77の直径を大きくすることに対しては、制約がある。そこで、トップ孔78の直径を大きくするようにする形態が好ましい。
【0108】
平面視で、トップシート30に形成されたトップ孔78と、中間シート40に形成された中間孔77を重ねるために、トップ孔78の数を中間孔77の数よりも多くして、この位置合わせを容易にすることも好ましい態様である。
【0109】
図15は、トップ孔78の数を中間孔77の数よりも多くした態様を例示した平面図である。トップ孔78の数を多くすることにより、平面視で、トップ孔78と中間孔77が重なり合った部分79(重畳部分)を形成しやすくなる。
図15(b)は、中間孔77がトップ孔78と完全に重畳した態様を示し、
図15(b)は、中間孔77の一部分がトップ孔78の一部分と重畳した態様を示す。
【0110】
なお、
図15では、トップ孔78の数は、中間孔77の数の2倍としている。トップ孔78の数は、中間孔77の数の2倍~4倍にすることが好ましく、2.5倍~3.5倍にすることがより好ましい。
また、
図15では、図面の縦横に隣接するトップ孔78、78の中心点間の距離を全て同じ長さにしているが、任意の異なる長さにしても良い。同様に、
図15では、図面の縦横に隣接する中間孔77、77の中心点間の距離を全て同じ長さにしているが、任意の異なる長さにしても良い。
【0111】
なお、中間孔77の数をトップ孔78の数よりも多くする態様も考えることができるが、中間シート40には凸部99が設けられているため、中間孔77の数を多くすることに対しては、制約がある。そこで、トップ孔78の数を多くするようにすることが好ましい。
【0112】
前述の説明において、「平面視で、トップシート30に形成されたトップ孔78と、中間シート40に形成された中間孔77が、少なくとも一部で重なっている」とは、複数設けたトップ孔78と、複数設けた中間孔77のうち、少なくとも1個以上の孔が、平面視で重なっていることをいう。ここで、「1個以上の孔が、平面視で重なっている」とは、トップ孔78と中間孔77の位置が、平面視で完全に一致している場合のほか、トップ孔78の一部分と中間孔77の一部分が、平面視で重なっている場合を含む。
【0113】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11は、特に限定されるものではないが、透湿性を有するもが好ましい。液不透過性シート11としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを好適に用いることができる。また、液不透過性シート11としては、不織布を基材として防水性を高めたものも用いることができる。
【0114】
液不透過性シート11は、前後方向LD及び幅方向WDにおいて吸収体56と同じか又はより広範囲にわたり延びていることが望ましいが、他の遮水手段が存在する場合等、必要に応じて、前後方向LD及び幅方向WDにおいて吸収体56の端部を覆わない構造とすることもできる。
【0115】
(外装不織布)
外装不織布12は液不透過性シート11の裏側全体を覆い、製品外面を布のような外観とするものである。外装不織布12としては特に限定されず、素材繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10~50g/m2、特に15~30g/m2のものが望ましい。
【0116】
(起き上がりギャザー)
トップシート30上を伝わって横方向に移動する排泄物を阻止し、いわゆる横漏れを防止するために、表面の幅方向WDの両側には、装着者の肌側に立ち上がる起き上がりギャザー60が設けられていると好ましい。もちろん、起き上がりギャザー60は省略することもできる。
【0117】
起き上がりギャザー60を採用する場合、その構造は特に限定されず、公知のあらゆる構造を採用できる。図示例の起き上がりギャザー60は、実質的に幅方向WDに連続するギャザーシート62と、このギャザーシート62に前後方向LDに沿って伸長状態で固定された細長状のギャザー弾性部材63とにより構成されている。このギャザーシート62としては撥水性不織布を用いることができ、またギャザー弾性部材63としては糸ゴム等を用いることができる。弾性部材は、
図1及び
図2に示すように各複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0118】
ギャザーシート62の内面は、トップシート30の側部上に幅方向WDの接合始端を有し、この接合始端から幅方向外側の部分は各サイドフラップ部SFの内面、つまり図示例では液不透過性シート11の側部及びその幅方向外側に位置する外装不織布12の側部にホットメルト接着剤などにより接合されている。
【0119】
脚周りにおいては、起き上がりギャザー60の接合始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が弾性部材63の収縮力により立ち上がり、身体表面に密着するようになる。
【0120】
(エンドフラップ部、サイドフラップ部)
図示例のテープタイプ使い捨ておむつは、吸収体56の前側及び後側にそれぞれ延出する、吸収体56を有しない一対のエンドフラップ部EFと、吸収体56の両方の側縁よりも側方にそれぞれ延出する、吸収体56を有しない一対のサイドフラップ部SFとを有している。サイドフラップ部SFは、図示例のように、吸収体56を有する部分から連続する素材(外装不織布12等)からなるものであっても、他の素材を取り付けて形成してもよい。
【0121】
(平面ギャザー)
各サイドフラップ部SFには、糸ゴム等の細長状弾性部材からなるサイド弾性部材64が前後方向LDに沿って伸長された状態で固定されており、これにより各サイドフラップ部SFの脚周り部分が平面ギャザーとして構成されている。脚周り弾性部材64は、図示例のように、ギャザーシート62の接合部分のうち接合始端近傍の幅方向外側において、ギャザーシート62と液不透過性シート11との間に設けるほか、サイドフラップ部SFにおける液不透過性シート11と外装不織布12との間に設けることもできる。脚周り弾性部材64は、図示例のように各側で複数本設ける他、各側に1本のみ設けることもできる。
【0122】
平面ギャザーは、サイド弾性部材64の収縮力が作用する部分(図中ではサイド弾性部材64が図示された部分)である。よって、平面ギャザーの部位にのみサイド弾性部材64が存在する形態の他、平面ギャザーよりも前側、後側又はその両側にわたりサイド弾性部材64が存在しているが、平面ギャザーの部位以外ではサイド弾性部材が一か所又は多数個所で細かく切断されていたり、サイド弾性部材64を挟むシートに固定されていなかったり、あるいはその両方であったりすることにより、平面ギャザー以外の部位に収縮力が作用せず(実質的には、弾性部材を設けないことに等しい)に、平面ギャザーの部位にのみサイド弾性部材64の収縮力が作用する構造も含まれる。
【0123】
(連結テープ)
背側部分Bにおけるサイドフラップ部SFには、腹側部分Fの外面に対して着脱可能に連結される連結テープ13がそれぞれ設けられている。使い捨ておむつ10の装着に際しては、連結テープ13を腰の両側から腹側部分Fの外面に回して、連結テープ13の連結部13Aを腹側部分F外面の適所に連結する。
【0124】
連結テープ13の構造は特に限定されないが、図示例では、サイドフラップ部SFに固定された基端部13Cと、この基端部13Cから幅方向WD外側へ延在する延在部13Bを有する。延在部13Bは、シート基材と、このシート基材における幅方向中間部に設けられた、腹側外面と連結する連結部13Aを有し、この連結部13Aより先端側が摘み部13Dとなっている。
【0125】
連結部13Aとしては、メカニカルファスナー(面ファスナー)のフック材(雄材)を設ける他、粘着剤層を設けてもよい。フック材は、その連結面に多数の係合突起を有するものであり、係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。
【0126】
基端部13Cから延在部13Bまでを形成するシート基材としては、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材を用いることができるが、繊度1.0~3.5dtex、目付け20~100g/m2、厚み1mm以下のスパンボンド不織布、エアスルー不織布、又はスパンレース不織布が好ましい。
【0127】
(ターゲットシート)
腹側部分Fにおける連結テープ13の連結箇所には、ターゲット部を設けることが好ましい。ターゲット部は、図示例のように、連結を容易にするためのターゲットシート20を腹側部分Fの外面に貼り付けることにより設けることができる。ターゲットシート20は、連結部13Aがフック材の場合、フック材の係合突起が絡まるようなループ糸がプラスチックフィルムや不織布からなるシート基材の表面に多数設けられたものを用いることができ、また粘着材層の場合には粘着性に富むような表面が平滑なプラスチックフィルムからなるシート基材の表面に剥離処理を施したものを用いることができる。また、腹側部分Fにおける連結テープ13の連結箇所が不織布からなる場合、例えば図示例のように外装不織布12を有する場合には、ターゲットシート20を省略し、フック材を外装不織布12の繊維に絡ませて連結することもできる。この場合、目印としてのターゲットシート20を外装不織布12と液不透過性シート11との間に設ける他、外装不織布12や液不透過性シート11の外面に目印を印刷してもよい。
【0128】
(ウイング部分)
本テープタイプ使い捨ておむつは、
図1、
図2に示すように、腹側部分Fの前後方向LDの中間から背側部分Bの前後方向LDの中間まで延びる股間部Mを有している。また、腹側部分F及び背側部分Bは、股間部Mよりも幅方向WD外側に延び出たウイング部分WPを有している。腹側部分Fのウイング部分の下縁70は、股間部Mの側縁の前端から前方に向かうにつれて斜め外側に位置するように延びており、背側部分Bのウイング部分の下縁75は、股間部Mの側縁の後端から後方に向かうにつれて斜め外側に位置するように延びている。ウイング部分WPの側縁は図示例では直線状となっているが、これに限定されず、公知の他の形状を採用することもできる。股間部Mの前後方向LDの寸法は適宜定めることができるが、股間部Mの最小幅M
Xの1.2~1.4倍程度とすることができる。乳幼児用途の場合、股間部Mの前後方向LDの寸法M
Yは10~30cm程度である。
【0129】
[実験例1]
(1)実施例1
実施例1の試験片91は、目付24g/m
2のスパンボンド不織布であって、複数の凸部99と凹部88を備え、凹部88に中間孔77を有するシートである。このシートの凸部99と凹部88と中間孔77の位置関係は、
図6と同様である。このシートは、凸部99、凹部88および中間孔77は、平面視で全て円形であり、凸部99の直径は2.25mmであり、中間孔77の直径は0.3mmである。凸部99の高さhは1.5mmである。隣接する凸部99の間の距離L1は3.9mmであり、隣接する凸部99、99の間の凹部88には、2個の中間孔77が設けられている。隣接する中間孔77の距離L2は2.25mmであり、隣接する中間孔77の間に位置する凹部88の距離L3は1.65mmである。
【0130】
実験は、25℃の実験室で行い、中間シート40としての前記試験片91に対して、注入筒90を用いて、人口尿を50ccを注入した(第1回目の注入)。この注入筒90は、内部が空洞になった円筒であって、外径が25mm(内径が23mm)であり、中心軸の長さが100mmである。試験片91は、横幅100mm、奥行100mm、厚さ5mmのアクリル製の台座92に載置した。人工尿AUは、尿素を2wt%、塩化ナトリウムを0.8wt%、塩化カルシウム二水和物を0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物を0.08wt%、イオン交換水を97.09wt%混合したものである。人口尿AUを注入する際、前記台座92に荷重がかかるようにするため、横幅100mm、奥行100mmであって、中心に直径25mmの穴が開いた錘93を用いて、中間シート40の上に2kg/10cm2の荷重を加えた。この荷重は、着用者の体圧がかかっていることを想定したものである。
【0131】
人口尿AUの注入を開始してから、前記シート91の表面に人口尿AUが見えなくなるまでの時間を計測し、これを第1回目の人工尿AUの吸収速度とした。前記第1回目の注入を終えてから、1800秒後に、第1回目と同じ場所に、前記人口尿AUの注入を行った(第2回目の注入)。人口尿AUの注入量は、第1回目と同じである。そして、人口尿AUの注入を開始してから、前記シート91の表面に人口尿AUが見えなくなるまでの時間を計測し、これを第2回目の人工尿AUの吸収速度とした。そしてさらに、前記第2回目の注入を終えてから、1800秒後に、第2回目と同じ場所に、前記人口尿AUの注入を行った(第3回目の注入)。人口尿AUの注入量は、第1回目や第2回目と同じである。そして、人口尿AUの注入を開始してから、前記シート91の表面に人口尿AUが見えなくなるまでの時間を計測し、これを第3回目の人工尿AUの吸収速度とした。
【0132】
第3回目の人工尿AUの注入を終えてから、1200秒後に、逆戻り試験を行った。具体的には、横幅100mm、奥行100mmの錘(錘93とは異なる錘である。図示しない。)を用いて、台座92に5kgの荷重を600秒加えた後、前記シート91にろ紙を30枚重ね、同様の錘を用いて、再び5kg/10cm2の荷重を20秒間加えた。そして、試験前のろ紙の重さと、試験後のろ紙の重さの差から、人口尿の逆戻り量を算出した。
【0133】
(2)実施例2
前記実施例1と同様の試験を行った。実施例2の試験片91は、目付が22g/m
2のスパンボンド不織布であって、複数の凸部99と凹部88を備え、凹部88に中間孔77を有する。このシート91の凸部99と凹部88と中間孔77の位置関係は、
図8と同様である。このシート91の凸部99、凹部88および中間孔77は、平面視で全て円形であり、凸部99の直径は3.24mmであり、中間孔77の直径は0.5mmである。また凸部99の高さhは1.5mmである。また、隣接する凸部99の間の距離L1は4.24mmであり、隣接する凸部99、99の間の凹部88には、1個の中間孔77が設けられている。隣接する中間孔77の距離L2が4.24mmである以外は、全て実施例1と同様である。
【0134】
(3)比較例1
前記実施例1と同様の試験を行った。比較例1の試験片91は、目付が20g/m2のスパンボンド不織布であり、凸部99と凹部88が形成されていない以外は、全て実施例1と同様である。
【0135】
(4)比較例2
前記実施例1と同様の試験を行った。比較例2の試験片91は、目付が30g/m2のスパンボンド不織布であり、凸部99と凹部88と中間孔77が形成されていない以外は、全て実施例1と同様である。
【0136】
【0137】
(考察)
凸部99と凹部88を設けた実施例1や実施例2は、それらを設けていない比較例1や比較例2よりも、人口尿AUの逆戻り量が少なかった。また、中間孔77を設けていない比較例2と比べて、中間孔77を設けた実施例1、実施例2、比較例1は、人口尿AUの吸収速度が速いことが分かった。
【0138】
(排泄液)
本発明における排泄液としては、尿、排便(特に軟便)、経血等を例示することができる。
【0139】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
【0140】
・「曲線」とは、直線を含まない意味である。
【0141】
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0142】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
【0143】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0144】
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディー圧縮試験機)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
【0145】
・「吸水量」は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
【0146】
・「吸水速度」は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
【0147】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行う。
【0148】
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、上記例のようなテープタイプ使い捨ておむつのほか、テープタイプ使い捨ておむつ、パッドタイプ使い捨ておむつ、ナプキンなどの吸収性物品に適用できるものである。特に、前記各使い捨ておむつへの適用が好適である。
【符号の説明】
【0150】
11…液不透過性シート、12…外装不織布、13…連結テープ、13A…連結部、13B…延在部、13C…基端部、20…ターゲットシート、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…起き上がりギャザー、62…ギャザーシート、64…サイド弾性部材、70…金属製の治具、71…孔、77…中間孔(中間シートの貫通孔)、78…トップ孔(トップシートの貫通孔)、79…重畳部分(平面視で、トップ孔と中間孔が重なった部分)、88…凹部、90…注入筒、91…試験片(シート)、92…台座、93…錘、97…中間シートと包装シートの間の空間、98…トップシートと中間シートの間の空間、99…凸部、h…中間シートと包装シートの間の厚み、B…背側部分、F…腹側部分、H…接着部位、LD…前後方向、M…股間部、SF…サイドフラップ部、WD…幅方向、WP…ウイング部分、AU…人口尿