IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トーヨーエイテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-工作機械及び工具の交換方法 図1
  • 特許-工作機械及び工具の交換方法 図2
  • 特許-工作機械及び工具の交換方法 図3
  • 特許-工作機械及び工具の交換方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】工作機械及び工具の交換方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/157 20060101AFI20230802BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20230802BHJP
   B23Q 1/01 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
B23Q3/157 M
B23Q11/08 Z
B23Q1/01 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019007527
(22)【出願日】2019-01-21
(65)【公開番号】P2020116656
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年11月1日~11月6日JIMTOF2018で公開
(73)【特許権者】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 成玄
(72)【発明者】
【氏名】大西 宏征
(72)【発明者】
【氏名】青木 省二
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特公昭47-014871(JP,B1)
【文献】特公昭47-014870(JP,B1)
【文献】特開昭49-026876(JP,A)
【文献】特開2000-126968(JP,A)
【文献】特開2002-283166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/157
B24B 45/00
B23Q 11/08
B23Q 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドと、
上記ベッドに対してX軸方向及びZ軸方向にスライド移動可能な主軸台と、
自動工具交換装置と、
上記主軸台に設けられ、上記ベッドに対して水平に配置されて工具を回転可能に支持す
る主軸を備えた加工部と、
制御部とを備え、
上記X軸方向は、上記主軸の軸方向に垂直な水平方向であり、Z軸は、上記主軸の軸方向であり、
上記自動工具交換装置は、
上記主軸台とは独立して設けられ、箱型のケーシングで覆われた自動工具交換装置本
体と、
上記ケーシングの内部に設けられ、上記自動工具交換装置本体に対してX軸方向にス
ライド移動可能なマガジン台と、
上記マガジン台に設けられ、複数の工具を脱着可能に保持し、回転可能且つ該マガジ
ン台に対してZ軸方向にスライド移動可能なマガジンと、
上記自動工具交換装置本体に対し、上記主軸と平行なアーム回動軸を中心に回動可能
に設けられた1つのアームと、
上記アームの長手方向の異なる位置に設けられ、それぞれ工具を把持可能な第1ハン
ド及び第2ハンドとを有し、
上記制御部によって上記第1ハンド及び第2ハンドの一方が、上記主軸から第1工具
を掴んで取り外し、上記第1ハンド及び第2ハンドの他方が、上記第1工具とは別の第2
工具を上記第1工具が取り外された上記主軸に取り付けるように構成されており、
上記箱型のケーシングには、上記主軸台側に、上記制御部によって上記アームの回転動
作に合わせて開閉可能なシャッターが設けられている
ことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
工作機械の制御部によって、
複数の工具を主軸台側に開閉可能なシャッターを有するケーシング内のマガジンに準備
し、
上記マガジンが主軸の軸方向に垂直な水平方向であるX軸方向及び/又は上記主軸の軸方向であるZ軸方向に移動し、
上記ケーシング内のアームの第1ハンド及び第2ハンドの一方が、上記マガジンにある
第2工具を掴み、
上記シャッターを開き、
上記アームを回動させてアームの上記第1ハンド及び第2ハンドの他方で、ケーシング
外の主軸から第1工具を掴んで取り外し、
上記アームを上記X軸方向及びZ軸方向にスライド移動させずに、ケーシング外の主軸
台をX軸方向及び/又はZ軸方向にスライド移動させ、上記主軸を上記第1ハンド及び第
2ハンドの一方に近付け、
上記第1ハンド及び第2ハンドの一方が、上記第2工具を上記第1工具が取り外された
上記主軸に取り付け、
上記アームを回動させて、上記アームの上記第1ハンド及び第2ハンドの他方に掴んだ
第1工具を上記マガジンに戻し、
上記シャッターを閉じる
ことを特徴とする工具の交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ホルダーや砥石を交換する自動工具交換装置を有する工作機械及び工具の交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工具ホルダーや砥石を交換する自動工具交換装置として、2アーム方式、1アーム方式、マガジンダイレクト方式等の複数の方式が知られている(例えば、特許文献1~3)。例えば、これらの方式は、2アーム方式は工具交換時間が短く、1アーム方式は狭い空間に設置しやすく、マガジンダイレクト方式は安価である、というそれぞれの特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-351560号公報
【文献】特開平06-339831号公報
【文献】特開2012-148382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の2アーム方式は、費用が高く、アームを揺動させるための広い空間が必要であるという問題がある。1アーム方式は、サイクル時間が長いという問題がある。マガジンダイレクト方式は、マガジンの位置など機械の動作範囲に制限がかかるという問題がある。
【0005】
一方、横形の内面研削盤は、ドレッサ、インプロセスゲージ、ローダ等で機内の空間が狭く、また、切り粉、砥粒の飛散が多いため、今まで、上記2アーム方式、1アーム方式、マガジンダイレクト方式等は採用されていない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、短い工具交換時間で、通常よりも狭い空間において自動で工具を交換できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、1つのアームで2つの工具を掴めるようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、回動可能な1つのアームと、
上記アームの長手方向の異なる位置に設けられ、それぞれ工具を把持可能な第1ハンド及び第2ハンドとを有し、
上記第1ハンド及び第2ハンドの一方が、主軸から第1工具を掴んで取り外し、上記第1ハンド及び第2ハンドの他方が、上記第1工具とは別の第2工具を上記第1工具が取り外された上記主軸に取り付けるように構成されている。
【0009】
上記の構成によると、1つのアームに2つのハンドを設けたので、アームを何度も回動させなくても、主軸の工具を自動で交換できる。このため、狭い空間且つ短い工具交換時間で、自動で工具を交換できる。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、
上記主軸と上記アームを回動可能に支持するアーム回動軸とは平行である。
【0011】
上記の構成によると、特に機内の空間が狭く、切り粉、砥粒の飛散が多い横形の内面研削盤であっても、短い工具交換時間で、通常よりも狭い空間において自動で工具を交換できるというメリットがある。
【0012】
第3の発明では、
ベッドと、
上記ベッドに対してスライド移動可能な主軸台と、
自動工具交換装置と、
上記主軸台に設けられ、工具を回転可能に支持する主軸を備えた加工部とを備え、
上記自動工具交換装置は、
自動工具交換装置本体と、
上記自動工具交換装置本体に対してスライド移動可能なマガジン台と、
上記マガジン台に設けられ、複数の工具を脱着可能に保持し、回転可能且つ該マガジン台に対してスライド移動可能なマガジンと、
上記自動工具交換装置本体に回動可能に設けられた1つのアームと、
上記アームの長手方向の異なる位置に設けられ、それぞれ工具を把持可能な第1ハンド及び第2ハンドとを有し、
上記第1ハンド及び第2ハンドの一方が、主軸から第1工具を掴んで取り外し、上記第1ハンド及び第2ハンドの他方が、上記第1工具とは別の第2工具を上記第1工具が取り外された上記主軸に取り付けるように構成されている。
【0013】
上記の構成によると、工作機械に、1つのアームに2つのハンドを有する自動工具交換装置を設けたので、アームを何度も回動させなくても、主軸の工具を自動で交換できる。このため、狭い空間且つ短い工具交換時間で、自動で工具を交換できる。
【0014】
第4の発明では、第3の発明において、
上記主軸は、上記ベッドに対して水平に配置され、
上記主軸と上記アームを回動可能に支持するアーム回動軸とは平行である。
【0015】
上記の構成によると、特に機内の空間が狭く、切り粉、砥粒の飛散が多い横形の内面研削盤であっても、短い工具交換時間で、通常よりも狭い空間において自動で工具を交換できるというメリットがある。
【0016】
第5の発明では、
複数の工具をマガジンに準備し、
アームの第1ハンド及び第2ハンドの一方が、上記マガジンにある第2工具を掴み、
上記アームを回動させてアームの上記第1ハンド及び第2ハンドの他方で、主軸から第1工具を掴んで取り外し、
上記第1ハンド及び第2ハンドの一方が、上記第2工具を上記第1工具が取り外された上記主軸に取り付け、
上記アームを回動させて、上記アームの上記第1ハンド及び第2ハンドの他方に掴んだ第1工具を上記マガジンに戻す。
【0017】
上記の構成によると、1つのアームに2つのハンドを設けたので、アームを何度も回動させなくても、2つのハンドを有する1つのアームを利用することで、狭いスペースで、主軸の工具を極めて効率よく自動で交換できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、短い工具交換時間で、通常よりも狭い空間において自動で工具を交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る自動工具交換装置を有する内面研削盤を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る自動工具交換装置を有する内面研削盤を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る自動工具交換装置を有する内面研削盤を示す正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る内面研削盤を用いた工具交換方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1図3は、本発明の実施形態の自動工具交換装置10を含む内面研削盤1を示す。この内面研削盤1は、設置面に載置固定されるベッド2と、このベッド2に対してX軸方向及びZ軸方向にスライド移動可能な主軸台3とを備えている。自動工具交換装置10を含め内面研削盤1の全体がCPUなどの制御部30によって制御されるように構成されている。
【0022】
そして、内面研削盤1には、主軸台3に設けた工具50を自動で交換するための自動工具交換装置10が設けられている。自動工具交換装置10には、主軸台3とは独立して設けた自動工具交換装置本体4が設けられている。自動工具交換装置本体4は、例えば、図示しない箱型のケーシングで覆われており、主軸台3側に開閉可能なシャッターが設けられている。このケーシング内には、自動工具交換装置本体4に対してX軸方向にスライド移動可能なマガジン台5が設けられている。
【0023】
上記主軸台3には、工具50を回転可能に支持する主軸6aを備えた加工部6が設けられている。具体的には、工具50は、軸状のクイル8の先端に固定されており、そのクイル8が主軸用モータ6bの主軸6aに回転一体に保持されるようになっている。主軸6aは、ベッド2に対して水平に配置されている。そして、主軸台3が油圧駆動等により、ベッド2に対してX軸方向及びZ軸方向にそれぞれスライド移動可能となっていることから、結果として工具50がX軸方向及びZ軸方向にそれぞれスライド移動可能となっている。
【0024】
上記マガジン台5には、複数の工具50をクイル8と一体で脱着可能に保持し、回転可能な円板状のマガジン7が設けられている。マガジン7は、マガジン回転軸7a(F軸)を中心にマガジン用モータ7bによって回転可能に構成されている。そして、マガジン7は、マガジン支持部7cが油圧駆動等によりマガジン台5に対してZ軸方向にスライド移動可能なことから、結果としてマガジン回転軸7aを中心に回転移動可能且つX軸方向及びZ軸方向にスライド移動可能となっている。
【0025】
自動工具交換装置10は、自動工具交換装置本体4に回動可能に設けられた1つのアーム11と、このアーム11の長手方向の異なる位置に設けられ、それぞれ工具50をクイル8ごと把持可能な第1ハンド12及び第2ハンド13とを有する。アーム11は、アーム用モータ11bのアーム回転軸11a(I軸)を中心に回動可能に構成されている。そして、本実施形態では、主軸6aとアーム11を回動可能に支持するアーム回動軸11aとは平行である。
【0026】
第1ハンド12及び第2ハンド13は、例えばエアシリンダ11cを伸縮させて開閉することで工具50を把持及び解放可能なハンドロック式で構成されており、それらの一方が、主軸6aから第1工具50aを掴んで取り外し、他方が、第1工具50aとは別の第2工具50bを第1工具50aが取り外された主軸6aに取り付けるように構成されている。この動作については、詳しくは後述する。なお、詳細な説明は省略するが、各動作は、それぞれの動作に対応して設けたセンサによって所定の位置で動作を正確に行うように制御部30で制御されるように予めプログラムされている。
【0027】
-工具の交換方法-
次に、本実施形態に係る工具50の交換方法について説明する。
【0028】
まず準備段階として、使用予定の複数の工具50をクイル8ごとマガジン7に取り付けておく。初期段階では、主軸6aに研削作業が終わった第1工具50aが取り付けられているものとする。以下の作業は、全て制御部30によって予めプログラムされた制御手順に沿って自動で行われる。
【0029】
次いで、図4に示すように、研削加工中にステップS01において、アーム11の第2ハンド13によってマガジン7にあった第2工具50bを掴んで待機しておく。このため、この動作は、工具交換時間に含まれない。
【0030】
次いで、ステップS02でシャッターを開く。
【0031】
次いで、ステップS03において、アーム11を回動させて加工部6の位置まで移動させる。
【0032】
次いで、ステップS04において、アーム11の第1ハンド12で、主軸6aから第1工具50aを掴んで取り外す。
【0033】
次いで、ステップS05において、主軸台3をスライド移動させて主軸6aを第2ハンド13に近付け、第2工具50bを第1工具50aが取り外された主軸6aに取り付ける。
【0034】
次いで、ステップS06において、アーム11を回動させて、元にあった待機位置に戻し、シャッターを閉じる。加工機は、ここから、加工作業に入る。このため、工具交換時間が短くなる。
【0035】
次いで、ステップS07において、マガジン台5をスライド移動させてアーム11の第1ハンド12に掴んだ第1工具50aを取り外してマガジン7に回収する。
【0036】
次いで、ステップS08において、マガジン7をマガジン回転軸7aを中心に回転させた後、マガジン台5をスライド移動させて次に使用する第2工具50bを第2ハンド13に再び把持させてアーム11を待機位置に待機させ、終了する。この動作を工具50を交換する度に制御部30によって自動で行う。
【0037】
このように、本実施形態では、1つのアーム11に2つのハンド12,13を設けたので、アーム11を何度も回動させなくても、狭いスペースで、主軸の工具50を極めて効率よく自動で交換できる。
【0038】
また、本実施形態のように、機内の空間が狭く、切り粉、砥粒の飛散が多い横形の内面研削盤1であっても、短い工具交換時間で、通常よりも狭い空間において自動で工具50を交換できるという効果が顕著に発揮される。
【0039】
しかも、主軸6aにおける工具50の把持及び解放の工程において、アーム11側を動かすのではなく、主軸台3側をX軸方向及びZ軸方向に動かすようにしているので、従来よりある移動精度の高いクロスフィードを利用でき、部品点数が減ると共に、精密な位置制御を容易に行うことができる。
【0040】
したがって、本実施形態に係る自動工具交換装置10によると、短い工具交換時間で、通常よりも狭い空間において自動で工具50を交換できる。
【0041】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0042】
すなわち、上記実施形態では、内面研削盤1は、主軸6aが水平な、いわゆる横置き型内面研削盤であるが、主軸6aが鉛直ないわゆる立形内面研削盤であってもよい。立形内面研削盤では、第1ハンド12及び第2ハンド13は、バネクランプで構成してもよい。また、本実施形態では、内面研削盤1に自動工具交換装置10を設ける例を示したが、外面研削盤に自動工具交換装置10を設けてもよい。
【0043】
さらに、上記実施形態では、第2ハンド13に第2工具50bを把持させた状態で待機させているが、第1ハンド12に第2工具50bを把持させて待機させておき、第2ハンド13で主軸6aの第1工具50aを回収するように構成してもよい。
【0044】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 内面研削盤
2 ベッド
3 主軸台
4 自動工具交換装置本体
5 マガジン台
6 加工部
6a 主軸
6b 主軸用モータ
7 マガジン
7a マガジン回転軸
7b マガジン用モータ
8 クイル
10 自動工具交換装置
11 アーム
11a アーム回動軸
11b アーム用モータ
11c エアシリンダ
12 第1ハンド
13 第2ハンド
30 制御部
50 工具
50a 第1工具
50b 第2工具
図1
図2
図3
図4