IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-位置検出装置 図1
  • 特許-位置検出装置 図2
  • 特許-位置検出装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20230802BHJP
   G05B 19/19 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
G01D5/244 J
G05B19/19 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019108384
(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公開番号】P2020201136
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】大倉 拓磨
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-122689(JP,A)
【文献】特開平9-218054(JP,A)
【文献】特開平1-224622(JP,A)
【文献】特開2018-177005(JP,A)
【文献】特開2018-144512(JP,A)
【文献】特開2017-196991(JP,A)
【文献】特開2016-191702(JP,A)
【文献】国際公開第2008/105217(WO,A1)
【文献】特開2017-124710(JP,A)
【文献】特開2009-243992(JP,A)
【文献】特開2013-70502(JP,A)
【文献】特開2012-117947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
B62D 5/00-6/10
G05B 19/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の位置に対応し、前記検出対象を駆動する駆動軸の1回転につき1増減し、ゼロから上限値までの値を繰り返すカウント値と、前記駆動軸の1回転内の角度データと、を出力する検出器と、
前記カウント値がゼロと前記上限値との間で遷移するロールオーバがあった場合に、前記ロールオーバによる前記カウント値の変化量の積算値に相当する拡張データを記憶する拡張データ記憶部と、
前記検出器が出力する前記カウント値及び前記角度データと前記拡張データが示す前記積算値とを加算することにより前記検出対象の絶対位置を算出する位置演算部と、
前記カウント値の範囲を3以上に区分して画定されるカウント区画の中で前記検出器から受信した前記カウント値が含まれる前記カウント区画を記憶する区画記憶部と、
位置検出処理開始時に、前記区画記憶部が記憶している前記カウント区画と位置検出処理開始後の前記カウント値が含まれる前記カウント区画との隔離数に基づいて前記拡張データの適否を確認する確認処理部と、
を備え、
前記確認処理部は、前記隔離数が小さくなるよう前記拡張データに、前記ロールオーバ1回あたりの前記カウント値の変化量だけ加算又は減算する補正部を有する、位置検出装置。
【請求項2】
前記確認処理部は、前記隔離数が所定の閾値を超えるときに報知を行う報知部を有する、請求項1に記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械や産業用ロボット等の産業機械を制御する位置検出装置の中には、検出対象の位置に対応するカウント値を出力する検出器を用いて検出対象の絶対位置を検出し、検出した検出対象の絶対位置に基づいて産業機械を制御するものがある。(例えば、特許文献1参照)。このようなカウント値を出力する検出器は、検出対象の絶対位置を特定するため、絶対位置検出器と呼ばれる。絶対位置検出器は、検出できる位置、つまりカウント値に上限値が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-99156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される制御装置において、位置を検出する検出器は、回転数を計数するカウンタと、1回転内の回転位置を計数するカウンタとを有する。また、特許文献1の制御装置は、絶対位置の原点位置に対応する検出器の出力値(回転数データ)を記憶する基準データ記憶部を有しており、検出器の現在位置における出力値と原点位置における出力値との差分により絶対位置(例えば、機械座標)を算出する。
【0005】
検出器の種類によっても異なるが、検出器の回転数のカウント値には、上限値(データ長)が存在する。多くの絶対位置検出器において、カウント値は、上限値を超えるとゼロに戻る。つまり、一般的な絶対位置検出器のカウント値は、ゼロから上限値までの値を繰り返す。このため、検出対象が検出器の上限値を超える広い範囲に移動した場合においても、検出器から出力されるカウント値に基づいて絶対位置を検出できる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る位置検出装置は、検出対象の位置に対応し、ゼロから上限値までの値を繰り返すカウント値を出力する検出器と、前記カウント値がゼロと前記上限値との間で遷移するロールオーバがあった場合に、前記ロールオーバによる前記カウント値の変化量の積算値に相当する拡張データを記憶する拡張データ記憶部と、前記検出器が出力する前記カウント値と前記拡張データが示す前記積算値とを加算することにより前記検出対象の絶対位置を算出する位置演算部と、前記カウント値の範囲を3以上に区分して画定されるカウント区画の中で前記検出器から受信した前記カウント値が含まれる前記カウント区画を記憶する区画記憶部と、位置検出処理開始時に、前記区画記憶部が記憶している前記カウント区画と位置検出処理開始後の前記カウント値が含まれる前記カウント区画との隔離数に基づいて前記拡張データの適否を確認する確認処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、検出対象が検出器の上限値を超える広い範囲に移動した場合においても、検出器から出力されるカウント値に基づいて絶対位置を検出することができ、検出処理停止中に検出対象が検出器の検出範囲を超えた位置まで移動した場合にも正確な絶対位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る位置検出装置の構成を示すブロック図である。
図2図1の位置検出装置の検出器のカウント値と絶対位置との関係を示す図である。
図3図1の位置検出装置における絶対位置検出手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る位置検出装置について、添付の図面を参照しながら説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る位置検出装置1の構成を示すブロック図である。位置検出装置1は、直線駆動される検出対象Tの絶対位置を検出する。検出対象Tは、例えば工作機械において、送りねじによって駆動されるテーブル等とすることができる。
【0010】
位置検出装置1は、検出器2と、原点データ記憶部3と、拡張データ記憶部4と、位置演算部5と、区画記憶部6と、確認処理部7とを備える。位置検出装置1において、原点データ記憶部3、拡張データ記憶部4及び区画記憶部6は、位置検出装置1の検出動作を停止した場合にも、情報を保持することができる不揮発性メモリ等により構成される。原点データ記憶部3、拡張データ記憶部4及び区画記憶部6は、同一のメモリによって構成されてもよい。また、位置演算部5及び確認処理部7は、例えばCPU等の演算装置に適切なプログラムを実行させることにより実現することができ、物理的構造及びプログラム構造において明確に区分できるものでなくてもよい。なお、原点データ記憶部3、拡張データ記憶部4、位置演算部5、区画記憶部6及び確認処理部7は、例えば工作機械を制御する数値制御装置、ロボットを制御するロボット制御装置等の一部であってもよい。
【0011】
検出器2は、検出対象Tの位置に対応し、ゼロから上限値までの値を繰り返すカウント値を出力する。検出器2は、カウント値として検出対象Tを駆動する駆動軸の1回転につき1増減(正方向の回転時は1増加、負方向の回転時は1減少)する回転数カウント値を出力すると共に、駆動軸の1回転内の角度データを出力するよう構成されてもよい。具体例として、検出器2は、検出対象Tを駆動するボールねじ等を駆動する駆動軸、例えばモータの出力軸、モータの回転をボールねじ等に伝える伝動機構の回転軸などの回転量を検出するよう配設される公知の絶対値エンコーダとすることができる。
【0012】
検出器2が出力する回転数カウント値は、非負整数であり、所定の上限値に達するとゼロに遷移するロールオーバが発生する。また、回転数カウント値は、その値がゼロである位置から検出対象Tがさらに負方向に移動すると、その値がゼロから上限値に遷移する。また、検出器2が出力する角度データも、非負整数であり、駆動軸が1回転する毎にゼロと最大値との間で遷移するロールオーバが発生する。回転数カウント値は、角度データがロールオーバするときに増減する。
【0013】
検出器2の回転数カウント値の上限値としては、例えば4095(12ビットデータ)、65535(16ビットデータ)等が想定される。駆動軸の1回転当たりの検出対象Tの移動量は通常1mmから10mm程度となるため、検出器2の回転数カウント値がゼロから上限値まで増大すると、検出対象Tは数mから数百m移動すると考えられる。
【0014】
原点データ記憶部3は、検出対象Tを便宜上定められる原点に配置したときに検出器2が出力する回転数カウント値の値及び角度データの値を原点データとして記憶する。これにより、後述する位置演算部5が原点を基準とする検出対象Tの絶対位置を算出することが可能となる。
【0015】
拡張データ記憶部4は、検出器2から受信した回転数カウント値がロールオーバした場合に、ロールオーバによる回転数カウント値の変化量の積算値に相当する拡張データを記憶する。拡張データは、回転数カウント値が上限値からゼロに遷移する正方向のロールオーバが生じたときは「1」を、ゼロから上限値に遷移する負方向のロールオーバが生じたときは「-1」を加算するカウント値としてもよく。ロールオーバによる回転数カウント値の変化量(減少を正の値とすることが好ましい)を積算した値としてもよい。
【0016】
位置演算部5は、検出器2から受信した回転数カウント値及び角度データと拡張データ記憶部4に記憶されている拡張データが示すロールオーバによる回転数カウント値の変化量の積算値とを加算することにより検出対象Tの絶対位置を算出する。また、位置演算部5は、原点データ記憶部3に記憶されている原点データの値を減算することにより、検出対象Tの絶対位置を、工作機械等による検出対象Tの制御に用いられる座標系における位置に変換してもよい。
【0017】
区画記憶部6は、回転数カウント値の範囲(ゼロから上限値まで)を区分して画定される3以上のカウント区画の中で検出器2から受信した回転数カウント値が含まれるカウント区画を記憶する。カウント区画は、回転数カウント値の範囲をN等分して設定されることが、データ量の削減、演算負荷の軽減、確認処理部7の判断の正確性向上の観点で好ましい。カウント区画の数Nとしては、拡張データを補正するためには3以上とすることが必要であり、異常な検出対象Tの移動を検出するために4以上とすることが好ましい。また、データ量の削減の観点から、カウント区画の数Nは小さい方が好ましい。したがって、カウント区画の数Nは、3つ又は4つとすること好ましい。
【0018】
確認処理部7は、位置検出装置1の位置検出処理開始時には、区画記憶部6が位置検出処理開始前から記憶しているカウント区画と、位置検出処理開始後に検出器2から受信した回転数カウント値が含まれるカウント区画との隔離数に基づいて拡張データ記憶部4に記憶されている拡張データの適否を確認する。確認処理部7は、隔離数を算出する確認部71と、隔離数に応じて拡張データを適切な値に補正する補正部72と、拡張データの値が不適切と考えられる場合に報知を行う報知部73とを有する構成とすることができる。
【0019】
検出器2において、位置検出装置1が位置検出処理を停止している間に、回転数カウント値がロールオーバする位置を超えて検出対象Tが移動させられると、拡張データ記憶部4に記憶されている拡張データが不正確な値となってしまう。この場合、位置検出装置1の位置検出処理開始後に、位置演算部5が検出対象Tの絶対位置を正確に算出することができない。そこで、確認処理部7は、位置検出装置1が位置検出処理を開始したときに、拡張データ記憶部4に記憶されている拡張データの適否を判断する。
【0020】
図2に、検出器2のカウント値と検出対象Tの絶対位置との関係を示す。図2は、原点位置P0を基準に回転数カウント値の範囲を4つのカウント区画に区分した例である。原点位置から正方向のカウント区画をRa1,Ra2・・・Rai(iは正整数)とし、原点位置から正方向のカウント区画をRb1,Rb2・・・Rbj(jは正整数)とする。図示する例では、原点位置を基準として区分したため、カウント区画Rb6,Rb2,Ra3、Ra7は、回転数カウント値の上限値を含む領域と、ゼロを含む領域とに跨って画定されている。
【0021】
図2には、位置検出装置1が検出処理を停止する前の検出対象Tの絶対位置をPr、位置検出装置1が位置検出処理を開始したときの検出対象Tの絶対位置をPpで例示する。図示する例では、検出処理停止前の絶対位置Prの回転数カウント値がその上限に近い値であり、検出処理停止中にロールオーバ位置を超えて検出対象Tが移動させられた場合を示す。この場合、位置検出処理開始後の実際の絶対位置はPpであるが、検出処理停止中は拡張データ記憶部4の拡張データが更新されないため、そのまま位置演算部5に絶対位置を算出させると、絶対位置Pqに検出対象Tが存在すると判断される。
【0022】
確認部71は、検出処理停止前の回転数カウント値が属するカウント区画(図示する例ではRa2)を特定してこれを基準区画とする。また、補正部72は、位置検出制御開始後に受信した回転数カウント値が示す絶対位置Pqが属するカウント区画(図示する例ではRb2)を特定してこれを第1区画とする。さらに、確認部71は、第1区画から正方向にN区画目のカウント区画(図示する例ではRa3)を第2区画とし、第1区画から負方向にN区画目のカウント区画(図示する例ではRb6)を第3区画とする。そして、確認部71は、基準区画から第1区画、第2区画及び第3区画までの隔離数、つまり第1区画、第2区画及び第3区画が基準区画から幾つ目のカウント区画であるかをそれぞれ算出する(図示する例における隔離数は順に、3、1、7となる)。
【0023】
上述のように、回転数カウント値の範囲は、検出対象Tの移動距離に換算すると数mから数百mに相当するので、検出処理停止中に検出対象Tが多数のカウント区画に跨って移動することは考えにくい。このため、第1区画、第2区画及び第3区画の中で、隔離数が最も小さいものが、実際の検出対象Tが存在するカウント区画である蓋然性が高い。したがって、第2区画又は第3区画の隔離数が第1区画の隔離数よりも小さい場合には、拡張データ記憶部4に記憶されている拡張データの値が不適切であると判断することができる。
【0024】
確認部71は、上述のように、基準区画と第1区画、第2区画及び第3区画とのそれぞれの隔離数を算出する。隔離数は相対的な値であって、検出処理停止前のロールオーバの回数に左右されない。このため、確認部71は、位置検出制御開始時に拡張データ記憶部4に記憶されている拡張データを確認することなく、検出処理停止前にロールオーバがなかったものとして基準区画、第1区画、第2区画及び第3区画を特定してもよい。これによって、確認部71は、比較的簡単な計算によって、位置検出制御開始時に拡張データ記憶部4に記憶されている拡張データの適否を確認することができる。
【0025】
補正部72は、前記第1区画、第2区画及び第3区画の中で基準区画からの隔離数が最も小さいカウント区画(図示する例では第2区画R2b)を、実際の検出対象Tの絶対位置に対応するカウント区画と判断し、位置演算部5が算出する絶対位置のカウント区画がこれに合致するよう拡張データ記憶部4に記憶されている拡張データを補正する。
【0026】
報知部73は、隔離数が所定の閾値を超えるときに、拡張データを適切が不適切である可能が高い旨の報知を行う。上述のように、検出処理停止中に検出対象Tが大きく移動することは考えにくく、隔離数が閾値を超える場合、何らかの異常又は特殊な事情により人為的に検出対象Tが大きく移動させられたと考えられるため、その旨の報知を行うことでオペレータに確認を促したり、事後的に確認することを可能にする。
【0027】
報知部73に設定される隔離数の閾値は、拡張データを適切と判断するカウント区画を設けるために1以上とする必要があり、且つ隔離数の最大値であるN/2より小さい値とするために(N/2-1)以下とする必要がある。
【0028】
図3に、位置検出装置1における位置検出処理の手順を示す。この位置検出処理は、先ず、区画記憶部6にカウント区画データが記憶されているか否かを確認する工程(ステップS1:カウント区画データ確認工程)と、位置演算部5によって検出対象の絶対位置を算出する工程(ステップS2:絶対位置算出工程)と、区画記憶部6に記憶されているカウント区画データと検出器2から受信した回転数カウント値が属するカウント区画とが一致するか否かを確認する工程(ステップS3:カウント区画確認工程)と、第1区画、第2区画及び第3区画の隔離数を算出する工程(ステップS4:隔離数算出工程)と、第1区画、第2区画及び第3区画の隔離数の中の最小値を閾値と比較する工程(ステップS5:閾値比較工程)と、制御停止中の検出対象の移動が異常である旨を報知する工程(ステップS6:報知工程)と、第1区画の隔離数が最小であるか否かを確認する工程(ステップS7:第1区画確認工程)と、拡張データを補正する工程(ステップS8:拡張データ補正工程)と、を備える。
【0029】
(カウント区画データ確認工程)
ステップS1のカウント区画データ確認工程では、区画記憶部6にカウント区画データが記憶されているか否かを確認する。区画記憶部6にカウント区画データが記憶されていなければ、考慮すべき情報がないため、直接ステップS2に進むが、区画記憶部6にカウント区画データが記憶されている場合は、ステップS3に進む。
【0030】
(絶対位置算出工程)
ステップS2の絶対位置算出工程では、位置演算部5によって、検出器2から受信した回転数カウント値及び角度データと、拡張データ記憶部4が記憶している拡張データと、原点データ記憶部3に記憶されている原点データとに基づいて、検出対象Tの絶対位置を算出する。
【0031】
(カウント区画確認工程)
ステップS3のカウント区画確認工程では、区画記憶部6のカウント区画データと、現在の回転数カウント値が属するカウント区画とが一致するか否かを確認する。区画記憶部6のカウント区画データと現在の回転数カウント値が属するカウント区画とが一致する場合、制御停止中に検出対象Tが大きく移動させられていないと考えられるため、特段の処理を行わず、ステップS2に進んで検出対象Tの絶対位置を算出する。一方、区画記憶部6のカウント区画データと現在の回転数カウント値が属するカウント区画とが異なる場合、制御停止中に検出対象Tが有意に移動させられていると考えられるため、ステップS4以降の処理を行う。
【0032】
(隔離数算出工程)
ステップS4の隔離数算出工程では、確認部71により、基準区画(区画記憶部6が記憶しているカウント区画)、第1区画(現在の回転数カウント値が属するカウント区画)、第2区画(第1区画から正方向にN番目のカウント区画)及び第3区画(第1区画から負方向にN番目のカウント区画)を特定し、第1区画、第2区画及び第3区画の基準区画との隔離数をそれぞれ算出する。
【0033】
(閾値比較工程)
ステップS5の閾値比較工程では、第1区画、第2区画及び第3区画の隔離数の最小値を、予め設定される閾値と比較する。隔離数の最小値が閾値よりも大きい場合、制御停止中の検出対象Tの移動量が異常であると判断されるため、ステップS6の処理を行う。一方、離数の最小値が閾値以下である場合、制御停止中の検出対象Tの移動量が通常発生し得る範囲内であると判断されるため、ステップS7に進む。
【0034】
(報知工程)と
ステップS6の報知工程では、報知部73により、制御停止中の検出対象の移動が異常であることを示す信報知号を出力する。位置検出装置1は、報知部73が出力する信報知号を受信して視覚的情報又は聴覚情報によってオペレータに告知する報知装置を有してもよい。このような報知装置としては、機械音を発するブザー、警報音、音声メッセージ等を発するスピーカ、発光により告知する表示灯、画面に警告表示を行うディスプレイ等を用いることができる。
【0035】
本実施形態では、報知工程で報知信号を出力した後は、ステップS7に進むものとしたが、報知信号を出力し場合には処理を終了するようにしてもよい。
【0036】
(第1区画確認工程)
ステップS7の第1区画確認工程では、第1区画、第2区画及び第3区画の隔離数の大小関係を確認する。第1区画の隔離数が最小である場合、拡張データ記憶部4に記憶されている拡張データに誤りがないと考えられるため、そのままステップS2に進んで検出対象Tの絶対位置を算出する。一方、第2区画又は第3区画の隔離数が第1区画の隔離数よりも小さい場合、ステップS8に進む。
【0037】
(拡張データ補正工程)
ステップS8の拡張データ補正工程では、第2区画及び第3区画の隔離数が小さい方に対応する方向に、制御停止中に回転数カウント値がロールオーバしたと考えられるため、拡張データ記憶部に記憶されている拡張データの値に、第2区画及び第3区画の隔離数が小さい方に対応する方向に1回ロールオーバした場合の変化量を加算する補正を行う。拡張データを補正した後は、ステップS2に進んで、補正した拡張データを用いて検出対象の絶対位置を算出する。
【0038】
以上のように、位置検出装置1は、回転数カウント値のロールオーバによる変化量を積算した値に相当する拡張データを記憶する拡張データ記憶部4を備えるため、検出器2の上限値を超える広い範囲で、検出器2から出力される回転数カウント値に基づいて検出対象Tの絶対位置を検出することができる。
【0039】
また、位置検出装置1は、区画記憶部6と補正部72を有する確認処理部7を備えるため、位置検出処理停止中に検出対象Tが回転数カウント値がロールオーバする位置を超えて移動させられた場合にも拡張データを適切な値に補正することができるので、検出対象Tの絶対位置を正確に算出することができる。特に、区画記憶部6及び確認処理部7は、回転数カウント値の範囲を区分して画定される比較的少数のカウント区画に基づいて拡張データの適否を確認するので、取り扱うデータ量が少なくて済む。
【0040】
また、位置検出装置1は、確認処理部7がカウント区画の隔離数が過度に大きい場合に報知を行う報知部73を有するので、位置検出処理停止中の検出対象Tの移動量が大きいことを告知乃至記録して、トラブルを未然に防止又は事後的に検証することができる。
【0041】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0042】
本開示に係る位置検出装置において、拡張データ記憶部は、拡張データを、ロールオーバによる回転数カウント値の変化量の積算値と検出対象が原点に位置するときに検出器から出力される回転数カウント値の値との和として記憶してもよい。これにより、位置演算部における検出対象の絶対位置の算出が容易となる。
【0043】
本開示に係る位置検出装置において、確認処理部は、補正部又は報知部を有しないものであってもよい。また、確認処理部は、隔離数が閾値を超えて報知部による報知が行われる場合には補正部による拡張データの補正を行わないようにしてもよい。これにより、カウント値の受信が途絶したときの拡張データを保全して、隔離数が大きくなった原因を特定しやすくすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 位置検出装置
2 検出器
3 原点データ記憶部
4 拡張データ記憶部
5 位置演算部
6 区画記憶部
7 確認処理部
71 確認部
72 補正部
73 報知部
T 検出対象
図1
図2
図3