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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】真空断熱体の製造方法、及び真空断熱体
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/065 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
F16L59/065
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019113617
(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公開番号】P2020204390
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓樹
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-57503(JP,A)
【文献】特開平2-192580(JP,A)
【文献】特開平9-72488(JP,A)
【文献】特開2000-283385(JP,A)
【文献】特開2010-169255(JP,A)
【文献】特表2016-507704(JP,A)
【文献】特開2018-178046(JP,A)
【文献】特開平10-195220(JP,A)
【文献】登録実用新案第3040504(JP,U)
【文献】実開昭53-48406(JP,U)
【文献】実開昭48-44709(JP,U)
【文献】特開2009-36358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
781℃の炎に対して20分以上耐える耐熱性を有し、第1金属板と第2金属板との内部に中空部が形成されると共に、前記第1金属板と前記第2金属板との一方である一方の金属板の前記中空部側に接続された第3金属板を有する中空体を用意する第1工程と、
前記第1工程において用意された前記中空体の前記中空部に前記耐熱性を有する無機の発泡剤を導入して発泡させ連続気泡を有する発泡体を形成のうえ、又は、前記耐熱性を有すると共に連続気泡を有した無機の発泡体を導入のうえ、前記第3金属板と前記一方の金属板との間に第2中空部を形成して押圧することで当該発泡体を固化させる第2工程と、
前記第2工程において発泡体が固化された後に、又は、前記第2工程における発泡体の固化中に、前記中空部を真空引きする第3工程と、
を有することを特徴とする真空断熱体の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程では、板厚0.1mm以上2.0mm以下となる積層された複数枚の金属板を加工して前記中空部を有した前記中空体を製造して用意する
ことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱体の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程では、前記複数枚の金属板を前記発泡剤の少なくとも一部の発泡温度より200℃低い温度以上となる高温環境下で加工して前記中空部を有した前記中空体を製造して用意し、
前記第2工程では、前記高温環境下のままの状態で、前記中空部に発泡剤を導入させる
ことを特徴とする請求項2に記載の真空断熱体の製造方法。
【請求項4】
前記第2工程では、発泡時に連続気泡を形成する発泡剤又は連続気泡を有した発泡体と、781℃の耐熱温度以上の温度で流動化する融着材とが導入され、
前記第1工程では、前記複数枚の金属板を前記融着材の流動化温度より200℃低い温度以上となる高温環境下で加工して前記中空部を有した前記中空体を製造して用意する
ことを特徴とする請求項2に記載の真空断熱体の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程では、発泡時に連続気泡を形成する発泡剤と、発泡時に独立気泡を形成する発泡剤との混合物が導入される
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の真空断熱体の製造方法。
【請求項6】
前記第2工程では、発泡剤と共に、発泡剤の発泡温度で発泡しない耐熱性を有する接着剤が導入される
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の真空断熱体の製造方法。
【請求項7】
781℃の耐熱温度以上の溶融温度で溶融する表面処理材料を、前記第2工程において発泡体が固化された後に前記溶融温度以上を維持している前記中空体の外表面の少なくとも一部に施す第4工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の真空断熱体の製造方法。
【請求項8】
前記第2工程では、発泡剤又は発泡体の導入にあたり前記中空部が真空引きされている
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の真空断熱体の製造方法。
【請求項9】
781℃の炎に対して20分以上耐える耐熱性を有し、第1金属板と第2金属板との内部に中空部が形成され、且つ、前記第1金属板と前記第2金属板との一方である一方の金属板の前記中空部側に接続された第3金属板を有し、前記一方の金属板と前記第3金属板との間に第2中空部が形成された中空体と、
前記中空体のうち前記第2中空部外且つ前記中空部内に行き渡り、連続気泡を形成して発泡固化された前記耐熱性を有する無機の発泡体と、を備え、
前記中空部が真空引きされている
ことを特徴とする真空断熱体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱体の製造方法、及び真空断熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グラスファイバーをコア材としアルミ層を含む樹脂フィルムでコア材をパックした建築用の真空断熱パネルが知られている(例えば特許文献1参照)。この真空断熱パネルは、冷蔵庫用技術を転用したものであり、形状が定まらず(形状安定性がなく)、耐火性を有したものではない。さらに、樹脂フィルムが大気中の窒素や水素の侵入を許してしまうことから、真空度が低下していき断熱性についても問題がある。
【0003】
また、グラスファイバーをコア材としステンレス薄板でパックした真空断熱パネルも知られている(例えば特許文献2参照)。この真空断熱パネルは、ステンレス薄板を用いていることから真空を維持して断熱性を確保できるものの、形状安定性が不充分であると共に、コア材がグラスファイバー(400℃以上で収縮)であることから耐火性も不充分である。
【0004】
一方で、内槽及び内槽を覆う外槽を有する二重構造のLNGタンクの内外槽間にコア材としてパーライト粉末を充填したものが提案されている(例えば特許文献3参照)。このタンクは、タンクの二重構造自体で耐火性や形状安定性を有しており、また断熱性も高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭58-127085号公報
【文献】特開2010-281387号公報
【文献】特開平2-256999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献3に記載のタンクを特許文献1,2に記載の真空断熱パネルに適用した場合には、タンク壁のような分厚い構造を採用することが困難となり、耐火性、形状安定性、及び断熱性を確保できなくなる。特に、特許文献3においてパーライト粉末は固化されておらず粉末状態のままである。このため、真空断熱パネル内にパーライト粉末をコア材として用いる場合には、パーライト粉末が崩れ下がり、形状安定性を有しているといえなくなる。
【0007】
なお、上記問題は真空断熱パネルに限らず、真空断熱パネルと同程度の大きさ等を有するパネル状ではない真空断熱体についても共通するものである。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、耐火性、形状安定性、及び断熱性を確保することができる真空断熱体の製造方法及び真空断熱体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る真空断熱体の製造方法は、781℃の炎に対して20分以上耐える耐熱性を有し、第1金属板と第2金属板との内部に中空部が形成されると共に、前記第1金属板と前記第2金属板との一方である一方の金属板の前記中空部側に接続された第3金属板を有する中空体を用意する第1工程と、前記第1工程において用意された前記中空体の前記中空部に前記耐熱性を有する無機の発泡剤を導入して発泡させ連続気泡を有する発泡体を形成のうえ、又は、前記耐熱性を有すると共に連続気泡を有した無機の発泡体を導入のうえ、前記第3金属板と前記一方の金属板との間に第2中空部を形成して押圧することで当該発泡体を固化させる第2工程と、前記第2工程において発泡体が固化された後に、又は、前記第2工程における発泡体の固化中に、前記中空部を真空引きする第3工程と、を有する
【0010】
なお、上記製造方法は、発泡剤及び発泡体の双方を導入する場合を含む概念である。このため、上記製造方法は、一部が予備発泡済み(すなわち一部が発泡体)である発泡剤を導入して残部を中空部内で発泡させて連続気泡を有する発泡体を形成することを含むものである。さらに、上記製造方法は、2種の異なる発泡剤を導入する場合には、一物質の発泡剤が発泡済みであり、他物質が中空部内で発泡する場合を含むこととなる。
【0011】
本発明に係る真空断熱体は、781℃の炎に対して20分以上耐える耐熱性を有し、第1金属板と第2金属板との内部に中空部が形成され、且つ、前記第1金属板と前記第2金属板との一方である一方の金属板の前記中空部側に接続された第3金属板を有し、前記一方の金属板と前記第3金属板との間に第2中空部が形成された中空体と、前記中空体のうち前記第2中空部外且つ前記中空部内に行き渡り、連続気泡を形成して発泡固化された前記耐熱性を有する無機の発泡体と、を備え、前記中空部が真空引きされている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐火性、形状安定性、及び断熱性を確保することができる真空断熱体の製造方法及び真空断熱体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る真空断熱体の一例を示す断面図である。
図2】第1実施形態に係る真空断熱パネルの製造方法を示す工程図であり、(a)は準備工程を示し、(b)は中空体製造工程を示し、(c)は発泡剤導入工程を示し、(d)は真空固化工程を示し、(e)は塗装工程を示している。
図3】第2実施形態に係る真空断熱パネルの一例を示す断面図である。
図4】第2実施形態に係る真空断熱パネルの製造方法を示す工程図であり、(a)は準備工程を示し、(b)は中空体製造工程を示し、(c)は発泡剤導入工程を示し、(d)は真空固化工程を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係る真空断熱体の一例を示す断面図である。なお、図1においてはパネル状となった真空断熱パネルを真空断熱体の一例として説明するが、真空断熱体はパネル状のものに限られるものではなく、円柱形状等、他の形状のものであってもよい。
【0016】
図1に示す例に係る真空断熱パネル(真空断熱体)1は、中空体10と、無機の発泡体20とを備えて構成されている。
【0017】
中空体10は、複数枚(2枚)の金属板11,12を加工して内部に中空部Hを形成したものである。各金属板11,12は、それぞれが凹部を形成するように加工されている。中空体10は、各金属板11,12の凹部同士が合致するように組み合わされ、且つ、凹部以外の箇所が接合部13を介して一体化(外周封着)されることで、中空部Hが形成されている。接合部13は、シーム溶接や拡散接合により形成されている。
【0018】
ここで、金属板11,12は、781℃の炎に対して20分以上耐える耐熱性、好ましくは843℃の炎に対して30分以上耐える耐熱性、さらに好ましくは902℃の炎に対して45分以上耐える耐熱性(溶解しない耐熱性)を有するものであり、例えばステンレスにより構成されている。また、金属板11,12は、板厚が0.1mm以上2.0mm以下となっており、好ましくは0.1mm以上0.5mm以下となっている。ここで、真空断熱パネル1を建築用に使用する場合、施工時や使用時の安全に必要な突き刺し強度等を考慮すると0.1mm厚が少なくとも必要と考えられるからである。また、建材としての取り扱いや建物耐荷重の制限から2.0mm厚以下、より好ましくは0.5mm厚以下であることが必要と考えられるからである。
【0019】
発泡体20は、連続気泡を形成して発泡固化されたものである。この発泡体20は、無機物から構成されており、本実施形態では厚みが例えば数cm程度以上となっている。このような発泡体20は、中空体10と同様に781℃の炎に対して20分以上耐える耐熱性、好ましくは843℃の炎に対して30分以上耐える耐熱性、さらに好ましくは902℃の炎に対して45分以上耐える耐熱性(燃焼収縮せずアウトガスを発生させない耐熱性)を有するものであり、例えば発泡ガラス、パーライト粉末、バーミキュライト、ヒュームドシリカ、珪藻土、及びケイ酸カルシウム等によって構成されている。発泡体20は、中空部H内において発泡させられて、中空部H内の隅々まで行き渡っていることが好ましい。加えて、発泡体20は、押圧等の手段により固化されており、この押圧によって中空部H内の隅々まで行き渡るようにされてもよい。
【0020】
なお、真空断熱パネル1を建築用(例えば要求寿命50年程度)に使用する場合、発泡体20は、50年間分解劣化せず更にアウトガスを発生しないものを採用することが好ましい。また、発泡体20は、建築用としても重量制限から、比重が0.7以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下のものが採用される。
【0021】
さらに、第1実施形態に係る真空断熱パネル1は中空部Hが真空引きされている。ここで、中空部H内の発泡体20は連続気泡を形成しているため、真空引きによって連続気泡内が真空化され断熱性を発揮するようになっている。
【0022】
図2は、第1実施形態に係る真空断熱パネル1の製造方法を示す工程図であり、(a)は準備工程を示し、(b)は中空体製造工程を示し、(c)は発泡剤導入工程を示し、(d)は真空固化工程を示し、(e)は塗装工程を示している。
【0023】
まず、図2(a)に示す準備工程において、板厚0.1mm以上2.0mm以下のステンレス等の金属板11,12が用意され、シーム溶接や拡散接合により接合部13が形成される。これにより、接合部13を介して金属板11,12が一体化した平板状の積層体Sが得られる。
【0024】
次の中空体製造工程において、平板状の積層体Sが金型(不図示)内に投入される。金型内は加熱されており、図1に示した発泡体20を得るための発泡剤の発泡温度近辺(特に発泡剤が2種以上の混合物である場合には少なくとも一成分の発泡温度近辺)、且つ、金属板11,12の融点未満の高温環境下(例えば800℃以上1000℃以下)とされている。ここで発泡温度近辺とは、発泡温度より200℃低い温度以上を指す。このような高温環境下において、金属板11,12の間(隙間)にアルゴンガス等が送り込まれる。このようなガス圧の印加により、金属板11,12の内部空間が拡張していき、図2(b)に示す中空部Hを有した中空体10が得られる(第1工程)。なお、金型は、図2(b)に示す形状の中空体10が得られるような型構造とされている。また、ガス圧は、アルゴン等のガスが送り込まれ続けることで印加されてもよいし、アルゴン等のガスを所定量送り込んだ後に中空部Hを密閉することで印加されるようにしてもよい。
【0025】
次に、発泡剤導入工程において、上記高温環境下のまま上記耐熱性を有する発泡剤(一部が発泡済みのものを含む)が中空部Hに導入される(第2工程)。発泡剤は適切なものが選択されており、中空部Hへの導入後、高温環境により連続気泡を形成するように発泡して発泡体20となる(一部発泡済みの場合には残部が高温環境により連続気泡を形成するように発泡して全体として発泡体20が形成される)。発泡体20は中空部H内で発泡することにより中空部Hの隅々まで行き渡る。この結果、図2(c)に示す中間体Iが製造される。なお、発泡剤導入工程において、金型内の温度が発泡剤の発泡温度に達していない場合には発泡温度まで昇温させられる。さらに、発泡剤の導入にあたっては、中空部Hが真空引きされ、真空状態を利用して発泡剤が中空部Hに引き込まれるようにすることが好ましい。これにより、中空部H内の隅々まで発泡剤を導入させ易くすることができるためである。加えて、発泡剤に代えて連続気泡を形成した発泡済みの発泡体20を導入するようにしてもよい。
【0026】
次いで、図2(d)に示す真空固化工程において、例えば発泡体20を圧縮するように金属板11,12の外側からプレスが行われる(第2工程)。プレスが充分に行われて発泡体20が固化した後に、真空引きが行われて連続気泡内が真空化される(第3工程)。なお、真空引きは、例えば図2(b)の中間体製造工程においてガスを送り込むために使用されたガス導入孔(不図示)や、図2(c)に示す発泡剤導入工程において発泡剤を導入するために使用された発泡剤導入孔(不図示)を利用して行われる。また、真空引き後、ガス封入孔(真空引き孔)等は適宜の手段によって封止される。
【0027】
次に、図2(e)に示す塗装工程において、高温状態にある金属板11,12の外表面の少なくとも一部に、琺瑯付けのための釉薬の粉末(耐熱温度以上の溶融温度で融着する表面処理材料)が吹き付けられる。釉薬はおよそ900℃(溶融温度)で溶融して金属板11,12の外表面に融着し、その後冷却することで強固な耐熱性塗膜となる。このため、塗装工程では、発泡体20の固化後、金属板11,12の外表面が900℃以上となっている状態において吹き付けを行って釉薬を融着させる(第4工程)。これにより、冷却した金属板11,12に吹き付け等を行った後に、金属板11,12ごと炉に入れて再加熱する手間を省略するようにしている。
【0028】
ここで、上記では発泡体20の固化後に真空引きが行われているが、真空引きは発泡体20の固化中に行われることが好ましい。例えば外力を付与して発泡体20を固化させる場合、外力によって一部の連続気泡が分断されて独立気泡となってしまう。独立気泡については真空引きにより気泡内部を真空化できない。よって、固化中の連続気泡状態であるときに真空引きを行うことで、後に一部の連続気泡が独立気泡化したとしても、その独立気泡についても真空化させることができ、断熱性を高めることができる。
【0029】
さらに、上記では金属板11,12の外側からプレスを行うことで発泡体20を固化させているが、これに限らず、以下の3つの方法により固化されてもよい。
【0030】
第1の方法は、発泡剤導入工程において、発泡剤として発泡時に連続気泡を形成するもの(例えば真珠岩粉末(発泡後にパーライト粉末となる粉末))と発泡時に独立気泡を形成するもの(例えば粉末ガラスと発泡助剤との混合物)との混合物を導入することである。ここで、独立気泡を形成する発泡剤は、連続気泡を形成する発泡剤よりも発泡温度での粘性が高い。すなわち、この粘性が高い発泡剤により粘着状態にし、そのまま冷却固化させて固化させることとなる。
【0031】
第2の方法は、発泡剤導入工程において、発泡剤と共に発泡剤の発泡温度で発泡しない耐熱性を有する接着剤(例えば東亜合成株式会社製アロンセラミック(登録商標)等の無機耐熱性接着剤)を導入することである。すなわち、接着剤の接着力を利用して発泡体20を固化させることとなる。
【0032】
第3の方法は、発泡剤導入工程において、発泡時に連続気泡を形成する発泡剤又は連続気泡を有した発泡体20と共に、耐熱温度(上記耐熱性に関する温度)以上の温度で流動化する例えば粉末ガラス等の熱可塑性材料(融着材)を導入することである。この場合、未発泡、又は一部発泡済みの発泡剤が中空部H内に導入されて発泡済み状態となった後、又は、全量発泡済みの発泡体20が中空部H内に導入された後、更に昇温して熱可塑性材料を流動化させ、その後冷却することで発泡体20同士を結び付けて固化させることになる。
【0033】
このようにして、第1実施形態に係る真空断熱パネル1の製造方法によれば、中空体10及び発泡体20は781℃の炎に対して20分以上耐える耐熱性を有することから、耐火性に優れた真空断熱パネル1とすることができる。また、中空部Hに無機の発泡剤を導入して発泡して発泡体20を形成のうえ固化させることで、又は、発泡体20を導入して固化させることで、安定した形状とすることができる。加えて、連続気泡を形成するように発泡剤を発泡させてから、又は連続気泡を有した発泡体20を導入して真空引きすることで、気泡内を真空部として断熱性を発揮させることができる。従って、耐火性、形状安定性、及び断熱性を確保することができる真空断熱パネル1の製造方法を提供することができる。
【0034】
また、板厚0.1mm以上2.0mm以下となる積層された複数枚の金属板11,12を加工して中空体10を得るため、その板厚によって形状安定性を向上させることができる。
【0035】
また、複数枚の金属板11,12を高温環境下で加工して中空部Hを有した中空体10を用意(製造)し、この高温環境下のままの状態で中空部Hに発泡剤を導入させるため、高温環境下という金属の破断伸びが向上する状況で金属板11,12を加工することで中空体10を作成し易く、また、その高温環境下のまま発泡剤を導入するため、そのまま発泡剤を発泡させることができ、真空断熱パネル1のスムーズな製造に寄与することができる。
【0036】
また、複数枚の金属板11,12を高温環境下で加工して中空部Hを有した中空体10を用意(製造)し、発泡剤や発泡体20と耐熱温度以上で流動化する融着材とを導入する場合には、導入後に融着材を流動化させ、その後冷却させていくことで、融着材をバインダーとして発泡体20同士を結び付けた状態で冷却固化させて形状安定性を高めることができる。
【0037】
また、発泡体20に外力を付与して固化させる場合には、例えばプレスによる押圧によって固化させてより高い形状安定性を発揮させることができる。
【0038】
また、発泡時に連続気泡を形成する発泡剤と、発泡時に独立気泡を形成する発泡剤との混合物が導入される場合には、断熱性を発揮させるために導入される連続気泡を形成する発泡剤のほか、この発泡剤よりも粘着性が高い独立気泡を形成する発泡剤も導入されるため、粘着性の高い発泡剤により形状安定性を高めることができる。
【0039】
また、発泡剤と共に、発泡剤の発泡温度で発泡しない耐熱性を有する接着剤が導入される場合には、接着剤の接着力を利用して形状安定性を高めることができる。
【0040】
また、発泡体20が固化された後の融着温度以上を維持する中空体10の外表面の少なくとも一部に、耐熱温度以上の融着温度で融着する表面処理材料を吹き付けるため、中空体10が融着温度以上を維持しているうちに吹き付けを行って琺瑯等の表面処理を行うことができ、中空体10の冷却後に表面処理を行う場合と比較して手間を省略することができる。また、表面処理材料は耐熱温度以上で融着することから、耐熱塗装を施すことができる。
【0041】
また、発泡剤や発泡体20を中空部Hに導入するにあたり中空部Hが真空引きされている場合には、真空を利用して発泡剤や発泡体20を引き込むことができ、中空部Hの隅々まで発泡剤や発泡体20を行き渡らせることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る真空断熱パネル1によれば、中空体10及び発泡体20は781℃の炎に対して20分以上耐える耐熱性を有することから、耐火性に優れた真空断熱パネル1とすることができる。また、中空体10の中空部Hに発泡体20が行き渡っており、しかも固化されているから、安定した形状とすることができる。加えて、発泡体20は連続気泡を形成して発泡しており、中空部Hが真空引きされていることから、連続気泡内を真空部として断熱性を発揮させることができる。従って、耐火性、形状安定性、及び断熱性を確保することができる真空断熱パネル1を提供することができる。
【0043】
なお、上記第1の方法において、連続気泡を形成する発泡剤(例えば真珠岩粉末)の発泡温度に対して、独立気泡を形成する発泡剤(例えば粉末ガラスと発泡助剤との発泡ガラス)の発泡温度は適宜調整してよい。例えばガラス種や発泡助剤の選定、混合比等により発泡温度を合わせて工程を簡素化したり、低めにして発泡ガラスが先に発泡した後に真珠岩粉末を発泡させてガラスの独立気泡を破壊させたりすることができる。
【0044】
また、第3の方法においても連続気泡を形成する発泡剤の発泡温度に対して熱可塑性材料(融着材)の流動化温度は適宜調整してよい。例えば発泡温度と流動化温度と一致させて工程を簡素化したり、流動化温度を発泡温度よりも高めにして発泡剤(例えば真珠岩粉末)が発泡するときには固体粉末状態であって発泡を妨げず、更に昇温してから流動化し粘着性を発揮するようにすることができる。
【0045】
次に、本発明に係る第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る中空ガラス及びその製造方法は第1実施形態のものと同様であるが、一部構成及び方法が異なっている。以下、第1実施形態との相違点について説明する。
【0046】
図3は、第2実施形態に係る真空断熱パネル(真空断熱体)2の一例を示す断面図である。図3に示すように、第2実施形態に係る真空断熱パネル2は、2枚の金属板11,12が接合部13を介して外周封着される点が第1実施形態と同じであるが、更に第3の金属板14を備えている点が第1実施形態のものと異なっている。
【0047】
第3の金属板14は、一方の金属板12の内側部分に接合部15を介して一体化されている。接合部15は、真空断熱パネル2の長手方向に沿ってスポット的に複数箇所に形成されている。この接合部15についてもシーム溶接や拡散接合によって形成されている。さらに、第3の金属板14は例えば断面視して波状となっており一方の金属板12との間に第2中空部H2を形成している。この第2中空部H2は、真空引きされてもよいし、ガスが封入等されていてもよい。さらに、第2中空部H2は潜熱蓄熱材等が投入されてもよい。
【0048】
図4は、第2実施形態に係る真空断熱パネル2の製造方法を示す工程図であり、(a)は準備工程を示し、(b)は中空体製造工程を示し、(c)は発泡剤導入工程を示し、(d)は真空固化工程を示している。なお、図4においては塗装工程の図示を省略する。
【0049】
まず、図4(a)に示す準備工程において、金属板11,12,14が用意され、シーム溶接や拡散接合により接合部13,15が形成される。これにより、平板状の積層体Sが得られる。
【0050】
次に、図4(b)に示す中空体製造工程において中空体10が製造される(第1工程)。この工程は図2(b)を参照して説明したものと同様である。その後、図4(c)に示す発泡剤導入工程において中間体Iが製造される。この工程についても図2(c)を参照して説明したものと同様である。
【0051】
次いで、第2実施形態に係る真空固化工程においては、一方の金属板12と第3の金属板14との隙間にアルゴンガス等が送り込まれる。この結果、金属板12,14の隙間にガス圧が印加されて内部空間が拡張していき、図4(d)に示す第2中空部H2が形成される。この第2中空部H2の形成によって発泡体20が押圧され、発泡体20が固化されることとなる(第2工程)。さらに、中空部H内において仮に発泡体20が行き渡っていない部分があったとしても、この押圧によって行き渡らせるようにすることができる。そして、発泡体20が固化した後、又は固化中に中空部Hに対して真空引きが行われて連続気泡内が真空化される(第3工程)。真空引き後、中空部Hは適宜の手段によって封止される。なお、真空引きはある程度冷却後に第2中空部H2に対して行われてもよい。
【0052】
このようにして、第2実施形態に係る真空断熱パネル2の製造方法によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
さらに、第2実施形態によれば、第2中空部H2を形成することで、中空部H内の発泡体20を押圧固化させるため、より一層中空部H内の隅々まで発泡体20を行き渡らせることができる。
【0054】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で実施形態同士の技術や、適宜公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。
【0055】
例えば、上記実施形態において中空体10は複数の金属板11,12,14から構成されているが、これに限らず、耐熱性を有していれば、ガラス材などの他の素材によって形成されていてもよい。さらに、金属板11,12,14は2枚又は3枚に限らず、4枚以上であってもよい。
【0056】
さらに、上記実施形態において中空体10は、複数の金属板11,12,14に対してガス圧を印加することで製造されているが、これに限らず、例えば深絞り加工された金属板を組み合わせる等して中空体10が形成されてもよい。
【0057】
加えて、上記実施形態においては3つの発泡体20の固化方法のいずれか1つが行われる例を説明したが、これに限らず、2つ以上が行われてもよい。
【0058】
また、発泡剤は全量が未発泡状態で中空部Hに導入される場合に限らず、一部が発泡状態とされて中空部Hに導入されてもよいし、又は全量が発泡済みの発泡体20の状態で中空部Hに導入されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1,2:真空断熱パネル(真空断熱体)
10 :中空体
11,12,14 :金属板
13,15 :接合部
20 :発泡体
H :中空部
H2 :第2中空部
I :中間体
S :積層体
図1
図2
図3
図4