IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本製鋼所の特許一覧 ▶ 株式会社 サン・テクトロの特許一覧

<>
  • 特許-充電装置 図1
  • 特許-充電装置 図2
  • 特許-充電装置 図3
  • 特許-充電装置 図4
  • 特許-充電装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】充電装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
H02M3/28 U
H02M3/28 J
H02M3/28 Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019114341
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021002902
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】303044642
【氏名又は名称】株式会社 サン・テクトロ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】阿曽 良之
(72)【発明者】
【氏名】光平 國昭
(72)【発明者】
【氏名】藤井 章伸
(72)【発明者】
【氏名】藤原 利彦
【審査官】町田 舞
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-167974(JP,A)
【文献】特開2004-266951(JP,A)
【文献】特開2006-101680(JP,A)
【文献】特開2010-252610(JP,A)
【文献】特開平03-074094(JP,A)
【文献】特開平10-052039(JP,A)
【文献】特開昭63-092263(JP,A)
【文献】特開平06-310295(JP,A)
【文献】特開昭63-257461(JP,A)
【文献】特開2010-218856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
H02M 7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランド電圧と所定の電圧との間で出力電圧が可変であり、かつ、一定の電流を出力する定電流DC/DCコンバータと、
前記所定の電圧を出力する複数の定電圧DC/DCコンバータと、を備え、
前記定電流DC/DCコンバータ及び前記複数の定電圧DC/DCコンバータがカスケード接続され
前記定電流DC/DCコンバータ及び前記複数の定電圧DC/DCコンバータは、一次側インダクタと二次側インダクタとが物理的に離隔して設けられた昇圧トランスで昇圧した電圧を出力し、
前記定電流DC/DCコンバータによってコンデンサを定電流充電し、前記定電流DC/DCコンバータの出力電圧が前記所定の電圧に到達した場合に前記定電流充電を停止する第1のステップと、
前記第1のステップの後に、前記複数の定電圧DC/DCコンバータのうちで、既に動作している定電圧DC/DCコンバータ以外の1つの定電圧DC/DCコンバータを動作させて、前記既に動作している定電圧DC/DCコンバータのそれぞれが出力する前記所定の電圧と、前記1つの定電圧DC/DCコンバータが出力する前記所定の電圧と、を加算した電圧を前記コンデンサに出力する第2のステップと、により、前記コンデンサを充電し、
前記コンデンサの充電電圧が目標電圧に到達するまで、前記第1のステップ及び第2のステップを繰り返す、
充電装置。
【請求項2】
前記定電流DC/DCコンバータ及び前記定電圧DC/DCコンバータは、
スイッチング回路と、
共振コンデンサと、
前記一次側インダクタが前記共振コンデンサを介して前記スイッチング回路と接続されるトランスと、
前記トランスの前記二次側インダクタに誘導される電圧を整流した電圧を出力する整流器と、
前記スイッチング回路のスイッチングを制御する制御回路と、を備える、
請求項1に記載の充電装置。
【請求項3】
前記定電圧DC/DCコンバータの前記整流器は、前記所定の電圧を出力し、
前記定電流DC/DCコンバータは、前記スイッチング回路に入力する電圧を調整可能なチョッパ回路を更に備え、
前記定電流DC/DCコンバータでは、前記チョッパ回路と前記スイッチング回路のスイッチングを制御することで、前記整流器から出力される電流が前記一定の電流となるように前記整流器が出力する前記電圧を制御する、
請求項2に記載の充電装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記スイッチング回路のスイッチングの周波数が、前記トランスの漏れ磁束により生じた漏れインダクタンスと前記共振コンデンサとの共振周波数とほぼ一致するように、前記スイッチング回路のスイッチングを制御する、
請求項2又は3に記載の充電装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記漏れインダクタンスと前記共振コンデンサとの共振により流れる電流がゼロ付近となるタイミングで、前記スイッチング回路のスイッチングを行う、
請求項4に記載の充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧で動作する装置用の電源として、コンデンサを高電圧蓄電器として用いることが知られている。こうした電源用コンデンサを充電する方法が提案されている。
【0003】
コンデンサの充電方法として、電流を制御しながらコンデンサを充電する手法が知られている。例えば、出力する直流電流を制限しながらコンデンサを充電することでコンデンサの充電電圧を高精度に制御する充電装置(引用文献1)が提案されている。他にも、一定の電圧でコンデンサを充電する手法(定電圧充電)、一定の電流でコンデンサを充電する手法(定電流充電)、及び、定電圧充電と定電流充電とを組み合わせた手法などの各種の充電方法が知られている。
【0004】
スイッチングレギュレータなどで構成されたDC-DCコンバータから出力された交流電圧を昇圧トランスで昇圧し、整流器で整流した直流電圧によってコンデンサを充電する手法も提案されている(特許文献2)。こうしたトランスを用いた構成は、絶縁型DC/DCコンバータとして知られている。この手法では、2つのインバータ回路が設けられており、1つめの初期充電用インバータで負荷コンデンサの目標電圧より少し低い初期充電電圧まで充電を行う。その後、初期充電用インバータを停止し、微調整インバータを動作させ、負荷コンデンサ10の電圧を初期充電電圧から目標電圧まで、初期充電時より緩やかに充電する。
【0005】
また、絶縁型DC/DCコンバータの前段にチョッパ回路を設け、チョッパ回路で変圧した電圧をインバータ回路に入力する手法が知られている(特許文献3)。この構成では、昇圧チョッパ回路が主蓄電池の電圧を昇圧して、間欠放電用蓄電池を充電する。インバータ回路は間欠放電用蓄電池の直流交流に変換して、トランスからなる昇圧変圧器に出力する。昇圧変圧器はインバータ回路からの交流を高電圧の交流に昇圧して高圧整流回路に出力する。高圧整流回路は高電圧の交流を直流に変換して、直流電圧を出力する。よって、チョッパ回路で昇圧した電圧で間欠放電用蓄電池を充電することで、間欠放電時の電圧低下及び電源装置の大型化を抑制することができる。
【0006】
他にも、高圧電源又はコンデンサの充電装置が、様々に提案されている(特許文献4~6、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開昭60-111344号公報
【文献】特開平10-52039号公報
【文献】特開昭63-92263号公報
【文献】特開平10-117478号公報
【文献】特開2010-218856号公報
【文献】特開2011-36063号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】川村 一裕、他2名、「LLC電流共振電源の回路技術」、富士電機技報 第87巻第4号、2014年12月30日発行、富士電機株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、高電圧で用いる装置への電源供給を行う場合には、主電源と装置側との絶縁を確保するため、トランスによって変圧を行う絶縁型DC/DCコンバータを有する構成が用いられる。トランスによって高効率で変圧を行うには、磁束の漏れを小さくして電力を一次側から二次側に伝達するために、一次側巻線と二次側巻線とを重ねて巻くなど、巻線をなるべく密に巻くこととなる。
【0010】
しかし、例えば10kV以上の高圧でコンデンサを充電する場合には、一次側巻線と二次側巻線とを密に巻いてしまうと、両者の絶縁が難しくなってしまうという問題が生じる。また、高圧、高周波トランスにおいて二次側巻線の数を多くすると線間の電圧が高くなり、線間の静電容量を通じて流れるリーク電流が増大して、各線が加熱するなどの問題が発生する。
【0011】
本発明は上記の事情に鑑みて成されたものであり、絶縁破壊を防止しつつ負荷コンデンサを充電する充電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様である充電装置は、グランド電圧と所定の電圧との間で出力電圧が可変であり、かつ、一定の電流を出力する定電流DC/DCコンバータと、前記所定の電圧を出力する複数の定電圧DC/DCコンバータと、を有し、前記定電流DC/DCコンバータ及び前記複数の定電圧DC/DCコンバータをカスケード接続することで得られる電圧によってコンデンサを充電し、前記定電流DC/DCコンバータ及び前記複数の定電圧DC/DCコンバータは、一次側インダクタと二次側インダクタとが物理的に離隔して設けられた昇圧トランスで昇圧した電圧を出力するものである。これにより、コンデンサを充電するときに、定電流DC/DCコンバータ及び定電圧DC/DCコンバータでの絶縁破壊を防止すると共に、二次側巻線のリーク電流を防止して高能率の変換装置を構成することができる。
【0013】
本発明の第2の態様である充電装置は、上記の充電装置であって、前記定電流DC/DCコンバータ及び前記定電圧DC/DCコンバータは、スイッチング回路と、共振コンデンサと、前記一次側インダクタが前記共振コンデンサを介して前記スイッチング回路と接続されるトランスと、前記トランスの前記二次側インダクタに誘導される電圧を整流した電圧を出力する整流器と、前記スイッチング回路のスイッチングを制御する制御回路と、を有することが望ましい。これにより、絶縁破壊を防止できる定電流DC/DCコンバータ及び定電圧DC/DCコンバータを構成できる。
【0014】
本発明の第3の態様である充電装置は、上記の充電装置であって、前記定電圧DC/DCコンバータの前記整流器は、前記所定の電圧を出力し、前記定電流DC/DCコンバータは、前記スイッチング回路に入力する電圧を調整可能なチョッパ回路を更に有し、前記定電流DC/DCコンバータでは、前記チョッパ回路と前記スイッチング回路のスイッチングを制御することで、前記整流器から出力される電流が前記一定の電流となるように前記整流器が出力する前記電圧を制御することが望ましい。これにより、定電流DC/DCコンバータ及び定電圧DC/DCコンバータの動作を実現することができる。
【0015】
本発明の第4の態様である充電装置は、上記の充電装置であって、前記制御回路は、前記スイッチング回路のスイッチングの周波数が、前記トランスの漏れ磁束により生じた漏れインダクタンスと前記共振コンデンサとの共振周波数とほぼ一致するように、前記スイッチング回路のスイッチングを制御することが望ましい。これにより、漏れインダクタンスの影響を相殺することができる。
【0016】
本発明の第5の態様である充電装置は、上記の充電装置であって、前記制御回路は、前記漏れインダクタンスと前記共振コンデンサとの共振により流れる電流がゼロ付近でのタイミングで、前記スイッチング回路のスイッチングを行うことが望ましい。これにより、スイッチングに起因する損失を防止できる。
【0017】
本発明の第6の態様である充電装置は、上記の充電装置であって、前記定電流DC/DCコンバータによって前記コンデンサを定電流充電し、前記定電流DC/DCコンバータの出力電圧が前記所定の電圧に到達した場合に前記定電流充電を停止するステップと、前記複数の定電圧DC/DCコンバータのうちの1つを動作させて、前記1つの定電圧DC/DCコンバータから前記所定の電圧を出力するステップと、によって前記コンデンサを充電する、ことが望ましい。これにより、コンデンサの充電電圧を向上させることができる。
【0018】
本発明の第7の態様である充電装置は、上記の充電装置であって、2つの前記ステップを反復して行うことで、前記コンデンサを充電することが望ましい。これにより、コンデンサの充電電圧を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、絶縁破壊を防止しつつ負荷コンデンサを充電する充電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態1にかかる充電装置100の回路構成を模式的に示す図である。
図2】定電流DC/DCコンバータCCの構成を模式的に示す図である。
図3】定電圧DC/DCコンバータCVの構成を模式的に示す図である。
図4】実施の形態1にかかる充電装置100の充電動作を示すフローチャートである。
図5】コンデンサの充電電圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0022】
実施の形態1
実施の形態1にかかる充電装置について説明する。図1に、実施の形態1にかかる充電装置100の回路構成を模式的に示す。充電装置100は、直流電源20から電源の供給を受けて、高電圧蓄電器として設けられた高圧大容量コンデンサであるコンデンサCを急速充電するものとして構成される。充電されたコンデンサCは、外部の装置と接続され、高電圧電源を提供する。
【0023】
充電装置100は、1つの定電流DC/DCコンバータCC、複数の定電圧DC/DCコンバータCV1~CVN及び電圧測定回路30を有する。定電流DC/DCコンバータCCと定電圧DC/DCコンバータCV1~CVNとは、共通線CLにカスケード接続されている。但し、Nは、2以上の整数である。充電装置100の電源端子STは直流電源20の正極PEと接続され、充電装置100のグランド端子GTは直流電源20の負極NE、すなわちグランドと接続される。電圧測定回路30は、コンデンサCに出力される電圧(すなわち、充電電圧)を測定可能に構成され、測定結果DETを定電流DC/DCコンバータCCへ出力する。
【0024】
定電流DC/DCコンバータCCの構成について説明する。図2に、定電流DC/DCコンバータCCの構成を模式的に示す。定電流DC/DCコンバータCCは、電流共振型DC/DCコンバータ1、制御回路2、降圧チョッパ回路3、電流センサS1及びS2を有する。
【0025】
降圧チョッパ回路3は、トランジスタT31及びT32、平滑コンデンサC1及びインダクタLを有する。ここでは、トランジスタT31及びT32が絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)であるものとして説明する。なお、トランジスタT31及びT32はIGBTに限られるものではなく、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などの他のトランジスタを用いてもよい。
【0026】
トランジスタT31及びT32は、高電圧側から低電圧側に電流を流すように極性が揃えられて、電源端子STとグランド端子GTとの間に縦続接続される。具体的には、トランジスタT31のコレクタは電源端子STと接続され、エミッタはトランジスタT32のコレクタと接続される。トランジスタT32のエミッタはグランド端子GTと接続される。また、トランジスタT31のエミッタ及びトランジスタT32のコレクタは、インダクタLの一方の端部LT1と接続される。また、トランジスタT31のコレクタとトランジスタT32のエミッタとの間には、平滑コンデンサC1が接続される。
【0027】
トランジスタT31及びT32のゲートは制御回路2と接続される。これにより、トランジスタT31及びT32のオン/オフ(スイッチング)は制御回路2によって制御される。
【0028】
なお、以下では、トランジスタには還流ダイオード(フリーホイーリングダイオード)が逆並列で接続されるものとする。すなわち、還流ダイオードのアノードはトランジスタのエミッタと接続され、カソードはトランジスタのコレクタと接続される。これにより、トランジスタをオフにしたときに生じる逆流電流を、還流ダイオードを介して流すことができるので、逆流電流によるトランジスタの故障を回避することができる。
【0029】
次に、電流共振型DC/DCコンバータ1は、高周波インバータ回路11、高周波トランス12、共振コンデンサCr、平滑コンデンサC2、整流器R1及びR2を有する。
【0030】
高周波インバータ回路11(スイッチング回路とも称する)は、トランジスタT1~T4を有するフルブリッジ型インバータとして構成される。高周波トランス12は、一次側インダクタL1と二次側インダクタL2及びL3とが設けられた昇圧トランスとして構成される。ここでは、トランジスタT1~T4がIGBTであるものとして説明する。なお、トランジスタT1~T4はIGBTに限られるものではなく、例えばMOSFETなどの他のトランジスタを用いてもよい。
【0031】
トランジスタT1及びT2は、高電圧側から低電圧側に電流を流すように極性がそろえられて、降圧チョッパ回路3のインダクタLの端部LT2とグランド端子GTとの間に縦続接続される。具体的には、トランジスタT1のコレクタはインダクタLの端部LT2と接続され、エミッタはトランジスタT4のコレクタと接続される。トランジスタT4のエミッタはグランド端子GTと接続される。
【0032】
トランジスタT3及びT4は、高電圧側から低電圧側に電流を流すように極性がそろえられて、降圧チョッパ回路3のインダクタLの端部LT2とグランド端子GTとの間に縦続接続される。具体的には、トランジスタT3のコレクタはインダクタLの端部LT2と接続され、エミッタはトランジスタT4のコレクタと接続される。トランジスタT4のエミッタはグランド端子GTと接続される。
【0033】
トランジスタT1~T4のゲートは制御回路2と接続される。これにより、トランジスタT1~T4のオン/オフ(スイッチング)は制御回路2によって制御される。
【0034】
降圧チョッパ回路3から高周波インバータ回路11に入力されるバンク電圧を平滑化するため、トランジスタT1及びT3のコレクタとトランジスタT2及びT4のエミッタとの間に、平滑コンデンサC2が接続されている。
【0035】
トランジスタT1のエミッタ及びトランジスタT2のコレクタは、共振コンデンサCrの一端と接続される。共振コンデンサCrの他端は、高周波トランス12の一次側インダクタL1の一端と接続される。高周波トランス12の一次側インダクタL1の他端は、トランジスタT3のエミッタ及びトランジスタT4のコレクタと接続される。
【0036】
本実施の形態では、一次側インダクタL1と、二次側インダクタL2及びL3とは、離隔して配置されており、漏れ磁束が生じる。この漏れ磁束によって、漏れインダクタンスLrが生じる。図2では、共振コンデンサCrと一次側インダクタL1との間に、漏れインダクタンスLrを表示している。
【0037】
二次側インダクタL2には整流器R1が接続され、二次側インダクタL2に誘導により生じた交流電圧を整流した直流電圧を、共通線CLに出力する。二次側インダクタL3には整流器R2が接続され、2次側インダクタL3に誘導により生じた交流電圧を整流した直流電圧を、共通線CLに出力する。
【0038】
整流器R1の出力と整流器R2の出力との間には、共通線CLに出力する電圧を平滑化するため、平滑コンデンサC3が接続されている。
【0039】
次いで、制御回路2について説明する。制御回路2は、降圧チョッパ回路3の端部LT2と接続されている。これにより、高周波インバータ回路11に入力されるバンク電圧をモニタすることができる。また、降圧チョッパ回路3の端部LT2と高周波インバータ回路11との間には、電流センサS1が設けられ、高周波インバータ回路11に供給される電流を計測し、計測結果を制御回路2へ出力する。さらに、高周波トランス12の一次側インダクタL1に流れる電流を計測するために電流センサS2が設けられ、計測結果は制御回路2へ出力される。
【0040】
なお、後述するように、制御回路2は、定電圧DC/DCコンバータCV1~CVNの動作を制御するため、定電圧DC/DCコンバータCV1~CVNの制御回路に制御信号CONを出力可能に構成される。
【0041】
次いで、定電圧DC/DCコンバータCV1~CVNの構成について説明する。定電圧DC/DCコンバータCV1~CVNは、同じ回路構成を有する定電圧DC/DCコンバータCVとして構成される。図3に、定電圧DC/DCコンバータCVの構成を模式的に示す。
【0042】
定電圧DC/DCコンバータCVは、定電流DC/DCコンバータ1から降圧チョッパ回路3及び電流センサS1を除去し、かつ、制御回路2を制御回路4に置換した構成を有する。高周波インバータ回路11のトランジスタT1及びT3のコレクタは電源端子STと接続される。これにより、直流電源20から出力される電源電圧が、高周波インバータ回路11に入力されるバンク電圧となる。
【0043】
制御回路4は、高周波インバータ回路11のトランジスタT1~T4のゲートと接続され、トランジスタT1~T4のオン/オフ(スイッチング)を制御する。また、電流センサS2は、高周波トランス12の一次側インダクタL1に流れる電流を測定し、計測結果を制御回路4へ出力する。制御回路4は、一定の電圧V1が共通線CLに出力されるように、高周波インバータ回路11のスイッチングを制御する。
【0044】
制御回路4は、定電流DC/DCコンバータCCの制御回路2から制御信号CONを受け取る。これにより、定電流DC/DCコンバータCCの制御回路2は、定電圧DC/DCコンバータCV1~CVNのそれぞれの動作の停止及び開始を制御することが可能である。
【0045】
ここで、定電流DC/DCコンバータCC及び定電圧DC/DCコンバータCV1~CVNにおける高周波インバータ回路11のスイッチングについて説明する。上述のように、本構成では、高周波トランス12の一次側インダクタL1と二次側インダクタL2及びL3とは、物理的に離隔して設けられているので、漏れ磁束に起因する漏れインダクタンスLrが存在する。
【0046】
そこで、本構成では、漏れインダクタンスLrの影響を相殺するため、漏れインダクタンスLrと共振コンデンサCrとの共振周波数Fにて高周波インバータ回路11のスイッチングを行う。このときの50%交番電流を通電させる共振周波数Fは、以下の式で表される。
【数1】
【0047】
漏れインダクタンスLrと共振コンデンサCrとで構成される共振回路に流れる電流がゼロになるタイミングとスイッチングのタイミングとは、電流センサS2によって電流を監視している制御回路2及び4によって同期させることが可能である。
【0048】
この場合、共振によって漏れインダクタンスLrと共振コンデンサCrとの合成インピーダンスがゼロとなり、漏れインダクタンスLrの影響をキャンセルすることができる。また、高周波インバータ回路11でのスイッチングは共振回路に流れる電流がゼロのときに行われるので、スイッチングによる損失を抑制することもできる。
【0049】
したがって、高周波インバータ回路11のスイッチング損失を抑制しつつ、高周波トランス12のインダクタの配置に起因する漏れインダクタンスの影響を打ち消すことが可能となる。
【0050】
上述では、共振回路に流れる電流がゼロのときにスイッチングが行われると説明したが、これは共振回路に流れる電流が厳密にゼロとなることを意味するものではない。すなわち、スイッチング損失を抑制できる程度まで共振回路に流れる電流が減少している状態において、換言すれば電流がゼロ付近ないしはゼロ近傍においてもスイッチングが行われることを含むものとする。
【0051】
次に、充電装置100の動作について説明する。図4に、実施の形態1にかかる充電装置100の充電動作を示す。本構成では、充電対象のコンデンサCが未充電の状態において、充電装置100がコンデンサCの充電を開始する。
【0052】
ステップST1
まず、定電流DC/DCコンバータCCが動作を開始し、コンデンサCに一定の電流を出力する(定電流充電)。コンデンサCの充電が進むと、コンデンサCの両端間の電圧が上昇する。これにともない、定電流DC/DCコンバータCCの出力電圧は0から上昇してゆく。
【0053】
ステップST2
定電流DC/DCコンバータCCの出力電圧を監視し、所定の電圧(最大出力電圧)V1に到達したかを判定する。定電流DC/DCコンバータCCの出力電圧の監視は、定電流DC/DCコンバータCCが自律的に行ってもよいし、電圧測定回路30を用いて行ってもよい。
【0054】
ステップST3
定電流DC/DCコンバータCCの出力電圧が最大出力電圧であるV1に到達した場合、定電流DC/DCコンバータCCの動作を停止する。
【0055】
ステップST4
その後、定電圧DC/DCコンバータCV1~CVNのうちの1つの動作を開始する。これにより、動作を開始した定電圧DC/DCコンバータから電圧V1が出力される。
【0056】
ステップST5
電圧測定回路30は、コンデンサCの充電電圧(共通線CLの電圧)が目標電圧VTに達したかを監視する。コンデンサCの充電電圧(共通線CLの電圧)が目標電圧VTよりも小さい場合には、ステップST1に戻る。
【0057】
ステップST6
コンデンサCの充電電圧(共通線CLの電圧)が目標電圧VT以上であれば、コンデンサCは十分に充電されているので、充電装置100による充電動作を停止する。
【0058】
上述の手順では、コンデンサCの充電電圧が目標電圧VTになるまでの間、ステップST1~ST5が繰り返される。これにより、定電流DC/DCコンバータCCの出力電圧がV1に到達するごとに、電圧V1を出力する(すなわち、動作状態の)定電圧DC/DCコンバータの数が1つ増えることとなる。よって、定電圧DC/DCコンバータCV1~CVNが全て動作状態となった場合には、コンデンサCの充電電圧を最大で(N+1)×V1まで上昇させることが可能となる。
【0059】
なお、このようにステップST1~ST5を繰り返して(反復して)コンデンサCを充電する場合、定電流DC/DCコンバータCCと定電圧DC/DCコンバータCV1~CVNはカスケード接続されているので、充電電流は定電流DC/DCコンバータCCの出力電流と等しくなる。
【0060】
図5に、コンデンサCの充電電圧を示す。図5の横軸は、電圧V1を出力している定電圧DC/DCコンバータの数を示している。このように、電圧V1を出力している定電圧DC/DCコンバータCVが多くなるにつれてコンデンサCの充電電圧は上昇し、N個全てのDC/DCコンバータCV1~CVNが電圧V1を出力している場合には、コンデンサCの充電電圧が(N+1)×V1となることが理解できる。
【0061】
例えば、電圧V1を2,800V程度とした場合、N=3とすると、コンデンサCの充電電圧を11,200V程度とすることが可能となる。
【0062】
以上、本構成によれば、コンデンサを高い充電電圧で充電するときに、定電流DC/DCコンバータCC及び定電圧DC/DCコンバータCV1~CVNのそれぞれが出力する電圧を抑制することができ、これらでの絶縁破壊を防止することができる。
【0063】
また、定電流DC/DCコンバータCC及び定電圧DC/DCコンバータCV1~CVNは、一次側インダクタと二次側インダクタとが物理的に離隔しているため、絶縁破壊耐性を向上させることができる。
【0064】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、降圧チョッパ回路及び高周波インバータ回路の構成は、上述の例に限られない。上述の定電流DC/DCコンバータ及び定電圧DC/DCコンバータと同様の機能を実現できるならば、他の回路構成を有する降圧チョッパ回路及び高周波インバータ回路を用いてもよい。
【0065】
また、高周波トランスの構成も、上述の例に限られるものではない。一次側インダクタと二次側インダクタとが物理的に離隔して配置されている他の構成のトランスを適宜用いてもよい。また、一次側インダクタと二次側インダクタとが物理的に離隔して配置されているトランスを用いている限り、定電流DC/DCコンバータ及び定電圧DC/DCコンバータを適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 電流共振型DC/DCコンバータ
2 制御回路
3 降圧チョッパ回路
4 制御回路
11 高周波インバータ回路
12 高周波トランス
20 直流電源
50 電圧測定回路
100 充電装置
C コンデンサ
CC 定電流DC/DCコンバータ
CL 共通線
CON 制御信号
Cr 共振コンデンサ
CV、CV1~CVN 定電圧DC/DCコンバータ
GT グランド端子
LT1、LT2 端部
NE 負極
PE 正極
R1、R2 整流器
S1、S2 電流センサ
C1~C3 平滑コンデンサ
ST 電源端子
T1~T4、 T31、T32 トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5