(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】PC板支持装置およびトンネル覆工の施工方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
E21D11/40 B
(21)【出願番号】P 2019127449
(22)【出願日】2019-07-09
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】391023518
【氏名又は名称】一般社団法人日本建設機械施工協会
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】真下 英人
(72)【発明者】
【氏名】安井 成豊
(72)【発明者】
【氏名】寺戸 秀和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正憲
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 竜之介
(72)【発明者】
【氏名】末田 将大
(72)【発明者】
【氏名】夏目 岳洋
(72)【発明者】
【氏名】川井 貴史
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 大介
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】実公昭46-020589(JP,Y1)
【文献】特開2002-250200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内側に周方向にアーチ状に組まれる複数のPC板を支える複数の第一支え部材を有して前記トンネルの延長方向へ移動可能な第一支持装置と、
前記トンネルの内側に周方向にアーチ状に組まれる複数のPC板を支える複数の第二支え部材を有して、前記第一支え部材の前後の双方に前記第二支え部材を設置できる位置へ前記第一支持装置に干渉せずに前記トンネルの延長方向へ移動可能な第二支持装置とを備えた
ことを特徴とするPC板支持装置。
【請求項2】
並行に配置される一対のレールを有する第一走行ガイドを備え、
前記第一支持装置と前記第二支持装置は、前記第一走行ガイドにおける前記レール上を走行する
ことを特徴とする請求項1に記載のPC板支持装置。
【請求項3】
並行に配置される一対のレールを有する第一走行ガイドと、
前記第一走行ガイドの前記レール間に前記レールに並行に配置される一対のレールを有する第二走行ガイドとを備え、
前記第一支持装置は、前記第一走行ガイドにおけるレール上を走行し、
前記第二支持装置は、前記第二走行ガイドにおけるレール上を走行する
ことを特徴とする請求項1に記載のPC板支持装置。
【請求項4】
前記第一走行ガイドと前記第一支持装置との間に介装されて前記第一走行ガイドに対して前記第一支持装置を前記レールに沿って駆動する第一シリンダと、
前記第一走行ガイドあるいは前記第二走行ガイドと前記第二支持装置との間に介装されて前記第一走行ガイドあるいは第二走行ガイドに対して前記第二支持装置を前記レールに沿って駆動する第二シリンダと、
前記第一支持装置を上下動させ得る第一アウトリガーと、
前記第二支持装置を上下動させ得る第二アウトリガーとを備えた
ことを特徴とする請求項3に記載のPC板支持装置。
【請求項5】
前記第一支持装置は、前記トンネルの延長方向に並べて配置される一対の第一門型フレームと前記第一門型フレーム同士を連結する複数の第一梁材とを有して前記第一支え部材を保持する第一走行架台を有し、
前記第二支持装置は、前記トンネルの延長方向に並べて配置されて前記第一門型フレーム内を通過可能な一対の第二門型フレームと前記第二門型フレーム同士を連結する複数の第二梁材とを有して前記第二支え部材を保持する第二走行架台とを有し、前記第一走行架台の前記第一門型フレーム間を通して前記第一門型フレームの外側に突出して前記第二支え部材を保持する複数の支持架とを有する
ことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のPC板支持装置。
【請求項6】
前記第一門型フレームおよび前記第二門型フレームは、アーチ状である
ことを特徴とする請求項5に記載のPC板支持装置。
【請求項7】
前記第一門型フレームおよび前記第二門型フレームは、多角形状である
ことを特徴とする請求項5に記載のPC板支持装置。
【請求項8】
トンネルの内側に周方向に沿ってアーチ状に組み立てた複数のPC板でトンネル覆工を形成するトンネル覆工の施工方法であって、
前記トンネルの延長方向の一方を前方とし他方を後方として、
PC板が組み立てられる度にPC板を支持し
て、アーチ状に
列をなして組み立てられたPC板
の全部を支持し、
つづいて、前記支持されたPC板の列の前方に新た
な列のPC板をアーチ状に組み立てる際に、
前記新たな列のPC板が組み立てられる度に当該PC板を支持して、アーチ状に列をなして組み立てられた前記新たな列のPC板
の全部を支持し、
つづいて、前記新たな列の前方にさらに新たな列のPC板をアーチ状に組み立てる際に、前記さらに新たな列のPC板が組み立てられる度に、前記新たな列の後方の列のPC板の支持に代えて前記さらに新たな列のPC板を支持して、アーチ状に列をなして組み立てられた前記さらに新たな列のPC板の全部を支持する
ことを特徴とするトンネル覆工の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、PC板支持装置およびトンネル覆工の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル内壁の表面処理(ライニング)を行う工法には、トンネルの延長方向に連続して設置されるアーチ状に組み立てた複数の円弧状のPC(プレキャストコンクリート)板をトンネル覆工として用いる工法がある。
【0003】
このような工法では、PC板の長手方向の両端に設けられた継ぎ手によってアーチ状に複数のPC板を組み合わせてトンネルの側壁に固定する。順次、アーチ状に組み合わせたPC板をトンネルの延長方向に設置しつつ、トンネルの延長方向で隣り合うPC板同士を継ぎ手によって連結する。
【0004】
より具体的には、PC板を建て込む建込装置を利用してPC板をアーチ状に組み立てつつトンネル内にトンネル覆工を設置する。建込装置は、たとえば、アーチ状のガイド枠上を走行する複数の台車を備えている。建込装置は、まず、台車を利用してトンネルの右或いは左のいずれか一方の側壁に固定すべきPC板をトンネル内周面に沿って起こした状態で支えつつ、PC板を側壁に固定する。次に、建込装置は、側壁に一端が固定されたPC板を台車で支えた状態に維持したまま、側壁に固定されたPC板の隣に別の台車でPC板を配置してPC板同士を継ぎ手によって連結する。さらに、建込装置は、これら二枚のPC板を各台車で下支えしつつ、端のPC板の隣にさらに別の台車で新たなPC板を配置してPC板同士を継ぎ手によって連結する。このような工程を繰り返して、四枚のPC板が連結されると、建込装置で全部のPC板を各台車で支持しつつ、終端のPC板をトンネルの他方の側壁に固定すると、アーチ状に組み合わされた四つのPC板がアーチ状を保ったままトンネルに固定される(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような工法では、複数のPC板をアーチ状に組む必要があるため、トンネル径が大きくなると、それだけトンネル周方向に列をなしてアーチ状に組まれるPC板の数が多くなる。そして、PC板同士の連結部位には多少のガタがあるので、一つのアーチに含まれるPC板の数が多くなると、PC板をトンネルの側壁に固定してから建込装置の台車による支持を取り外すと、PC板が自重で狙った位置から下方へずれてしまう。
【0007】
このようにPC板の位置がずれてしまうと、既設済みのアーチを構成するPC板がその隣りで新たにアーチ状に組まれたPC板に対して位置がずれてしまうため、トンネルの延長方向で隣り合うPC板同士の連結に支障が出てPC板の組み立てが困難となってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、トンネルの周方向で多くのPC板を利用するトンネル覆工を支持できトンネル覆工の施工を可能とするPC板支持装置およびトンネル覆工の施工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明のPC板支持装置は、トンネルの内側に周方向にアーチ状に組まれる複数のPC板を支える複数の第一支え部材を有してトンネルの延長方向へ移動可能な第一支持装置と、トンネルの内側に周方向にアーチ状に組まれる複数のPC板を支える複数の第二支え部材を有して第一支え部材の前後の双方に第二支え部材を設置できる位置へ第一支持装置に干渉せずにトンネルの延長方向へ移動可能な第二支持装置とを備えて構成されている。このように構成されたPC板支持装置によれば、PC板が組み上がる度に第一支え部材或いは第二支え部材でPC板を支持でき、第一支持装置と第二支持装置が交互に前方へ移動しながら、PC板をアーチ状に組んだトンネル覆工を支持でき、PC板を順次支持してPC板を狙った位置に位置決めできる。
【0010】
また、PC板支持装置は、並行に配置される一対のレールを有する第一走行ガイドを備え、第一支持装置と第二支持装置が第一走行ガイドにおけるレール上を走行してもよい。このように構成されたPC板支持装置によれば、第一支持装置と第二支持装置が同一のレール上を走行するので、第一走行ガイドを基準に第一支持装置と第二支持装置を正しい位置に配置できるとともに、調整作業を行わずとも両者を同一方向に走行させ得る。
【0011】
そして、PC板支持装置は、並行に配置される一対のレールを有する第一走行ガイドと、第一走行ガイドの各レール間に挟まれてレールに並行に配置される一対のレールを有する第二走行ガイドとを備え、第一支持装置が第一走行ガイドにおけるレール上を走行し、第二支持装置が第二走行ガイドにおけるレール上を走行してもよい。このように構成されたPC板支持装置によれば、第一支持装置が第一走行ガイドのレールのみを走行し、第二支持装置が第二走行ガイドのレールのみを走行するので、第一支持装置と第二支持装置の設計自由度が向上し、製造コストも低減できる。
【0012】
さらに、PC板支持装置は、第一走行ガイドと第一支持装置との間に介装されて第一走行ガイドに対して第一支持装置をレールに沿って駆動する第一シリンダと、第一走行ガイドあるいは第二走行ガイドと第二支持装置との間に介装されて第一走行ガイドあるいは前記第二走行ガイドに対して第二支持装置をレールに沿って駆動する第二シリンダと、第一支持装置を上下動させ得る第一アウトリガーと、第二支持装置を上下動させ得る第二アウトリガーとを備えて構成されてもよい。このように構成されたPC板支持装置によれば、レール上で第一支持装置と第二支持装置をレールに沿って駆動できるだけでなく、第一支持装置と第二支持装置を浮かせてレールを前後方向に移動させてトンネル内で自走できる。
【0013】
また、第一支持装置がトンネルの延長方向に並べて配置される一対の第一門型フレームと第一門型フレーム同士を連結する複数の第一梁材とを有して第一支え部材を保持する第一走行架台を有し、第二支持装置がトンネルの延長方向に並べて配置されて第一門型フレーム内を通過可能な一対の第二門型フレームと第二門型フレーム同士を連結する複数の第二梁材とを有して第二支え部材を保持する第二走行架台と、第一走行架台の第一門型フレーム間を通して第一門型フレームの外側に突出して第二支え部材を保持する複数の支持架とを有してもよい。このように構成されたPC板支持装置によれば、内側に大きなスペースを確保できるので、最も狭くなる第二走行架台の内側スペースにトンネル内を往来する作業車両や作業員の通路を確保できる。
【0014】
さらに、PC板支持装置における第一門型フレームおよび第二門型フレームがアーチ状とされる場合には、第一支え部材の第一門型フレームへの取付および第二支え部材の第二門型フレームへの取付が容易となる。
【0015】
また、PC板支持装置は、多角形状の第一門型フレームおよび第二門型フレームを備えてもよい。このように構成されたPC板支持装置によれば、第一門型フレームおよび第二門型フレームを直線状の鋼材を連結して製造することができ、鋼材を円弧状に成型する必要がないので製造コストが安価となる。
【0016】
さらに、トンネルの内側に周方向に沿ってアーチ状に組み立てた複数のPC板でトンネル覆工を形成するトンネル覆工の施工方法は、トンネルの延長方向の一方を前方とし他方を後方として、PC板が組み立てられる度にPC板を支持して、アーチ状に列をなして組み立てられたPC板の全部を支持し、つづいて、支持されたPC板の列の前方に新たな列のPC板をアーチ状に組み立てる際に、新たな列のPC板が組み立てられる度にPC板を支持して、アーチ状に列をなして組み立てられた新たな列のPC板の全部を支持し、つづいて、新たな列の前方にさらに新たな列のPC板をアーチ状に組み立てる際に、さらに新たな列のPC板が組み立てられる度に、新たな列の後方の列のPC板の支持に代えてさらに新たな列のPC板を支持して、アーチ状に列をなして組み立てられたさらに新たな列のPC板の全部を支持する。このように構成されたトンネル覆工の施工方法によれば、PC板が組み上がる度にPC板を順次支持してPC板を狙った位置に位置決めでき、トンネルTの延長方向で隣り合うPC板Bの連結が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のPC板支持装置およびトンネル覆工の施工方法によれば、トンネルの周方向で多くのPC板を利用するトンネル覆工を支持できトンネル覆工の施工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第一の実施の形態におけるPC板支持装置の側面図である。
【
図2】第一の実施の形態におけるPC板支持装置の正面図である。
【
図3】本実施の形態におけるPC板支持装置の第一支持装置でPC板を支持する手順を説明する斜視図である。
【
図4】第一の実施の形態におけるPC板支持装置の第二支持装置でPC板を支持する手順を説明する斜視図である。
【
図5】第一の実施の形態におけるPC板支持装置の斜視図である。
【
図6】第一の実施の形態におけるPC板支持装置において、第一支持装置内に第二支持装置を配置した状態を示した側面図である。
【
図7】第一の実施の形態におけるPC板支持装置において、第一支持装置に対して第二支持装置を後方へ配置した状態を示した側面図である。
【
図8】第二の実施の形態におけるPC板支持装置において、第一支持装置内に第二支持装置を配置した状態を示した側面図である。
【
図9】第二の実施の形態におけるPC板支持装置の正面図である。
【
図10】第二の実施の形態におけるPC板支持装置において、第一支持装置に対して第二支持装置を前方に配置した状態を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第一の実施の形態>
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。第一の実施の形態におけるPC板支持装置1aは、
図1から
図3に示すように、トンネルTの内側に周方向にアーチ状に組まれる6個のPC板Bに対応して各PC板Bを支える6個の第一支え部材2を有してトンネルTの延長方向へ移動可能な第一支持装置S1と、トンネルTの内側に周方向にアーチ状に組まれる6個のPC板Bに対応して各PC板Bを支える6個の第二支え部材12を有してトンネルTの延長方向へ移動可能な第二支持装置S2とを備えて構成されている。なお、トンネルTの延長方向において、PC板支持装置1aから見てPC板Bを建て込む建込装置Eが配置されている方を前側とし、建込装置Eが配置されていない方を後側としている。
【0020】
建込装置Eは、
図1、
図3および
図4に示すように、トンネルTの延長方向に沿って走行可能な走行架台Rと、走行架台R上に設置されるトンネルTの内壁に沿うアーチ状のガイドGと、ガイドGに沿ってガイドGの周方向に移動可能な台車Dと、台車Dに設けられてPC板Bを保持してトンネルT内の設置位置に運搬可能な保持装置Hとを備えて構成されている。建込装置Eは、トンネルTの周方向に配置される6枚のPC板Bを一枚ずつ順次、設置位置に運搬して、周方向およびトンネルTの延長方向に隣り合うPC板Bを図示しない継ぎ手によって連結しつつ、トンネルTの周方向に6枚のPC板Bをアーチ状に組み立てていく。また、建込装置Eは、一列6枚のPC板Bをアーチ状に組み立てた後、トンネルTの延長方向で前方へ移動し、次の列のPC板Bをアーチ状に組み立てる作業を行う。
【0021】
第一支持装置S1は、
図1から
図5に示すように、トンネルTの延長方向に並べて配置される一対の第一門型フレーム3,4と、第一門型フレーム3,4同士を連結する6本の第一梁材5と、第一門型フレーム3,4を支持する走行台車6とを備えた第一走行架台R1と、第一走行架台R1に設けた6個の支持架15と、支持架15を介して第一走行架台R1によって保持される第一支え部材2とを備えている。
【0022】
第一門型フレーム3,4は、ともにアーチ状(円弧状)とされており、周方向に等間隔に配置される6本の第一梁材5によって連結されている。また、走行台車6は、第一梁材5に平行な一対の台車本体6aと、各台車本体6aのトンネルTの延長方向の両端から垂下される脚6bと、各脚6bに回転自在に取り付けられて第一走行ガイド7におけるレール7a上を走行する走行輪6cと、台車本体6aの各脚6bの隣に取り付けられた第一アウトリガー6dと、各台車本体6aの両端から上方に立ち上がって第一門型フレーム3,4に連結される支柱6eとを備えて構成されている。
【0023】
各台車本体6aの前側の各支柱6eは、前側の第一門型フレーム3の内周に連結されて第一門型フレーム3を支持しており、また、各台車本体6aの後側の各支柱6eは、後側の第一門型フレーム4の内周に連結されて、第一門型フレーム4を支持している。
【0024】
また、第一アウトリガー6dは、伸縮によって第一支持装置S1を上下動させる。各第一アウトリガー6dを伸長させて地面に接地させてからさらに伸長させると第一支持装置S1を持ち上げて走行輪6cをレール7aから浮かせ得る。このようにアウトリガー6dを伸長させて走行輪6cがレール7aから浮いた状態では、走行台車6の四隅の第一アウトリガー6dのみが設置して第一支持装置S1が走行不能となり、姿勢が安定して安全にPC板Bを支持できる。なお、第一アウトリガー6dを収縮させて地面から離間するまでは第一支持装置S1を下降させ得るとともに、第一アウトリガー6dが完全に地面から離間した状態では第一支持装置S1は第一走行ガイド7のレール7a上を走行できる状態に復帰する。
【0025】
つづいて、第一支え部材2は、各第一梁材5からトンネルTの内壁に向かう方向へ向けて設置される支持架15によって支持されており、支持架15に支持されて第一梁材5と平行配置されるテレスコピック型の油圧シリンダ2aと、油圧シリンダ2aの先端に支持架15と平行に取り付けられるテレスコピック型の油圧シリンダ2bと、油圧シリンダ2bの先端に取り付けられてPC板Bを抑える矩形のパッド2cとを備えている。油圧シリンダ2aは、図示しない油圧源からの圧油の供給によって伸縮駆動されてパッド2cをトンネルTの延長方向へ駆動でき、また、油圧シリンダ2bは、図示しない油圧源からの圧油の供給によって伸縮駆動されてパッド2cをトンネルTの内壁に向かう方向で遠近させ得る。パッド2cは、トンネルTの内壁に対面する面がPC板Bの内周面に沿う湾曲面となっており、PC板Bをガタなく支持することができる。
【0026】
なお、第一支え部材2の設置数は、アーチ状に組まれてトンネルTの周方向で列をなすPC板Bの数に対応した数とされているが、後述する第二の実施の形態のPC板支持装置1bのようにPC板Bの数から1を引いた数とされてもよい。この場合、第一支え部材2は、第一梁材5に設けられているので、第一梁材5を第一支え部材2の設置数以上の数だけ第一支持装置S1に設置すればよいが、第一支え部材2が第一梁材5ではなく第一門型フレーム3或いは第一門型フレーム4にのみ取り付けられている場合には、第一梁材5の設置数は第一支持装置S1の強度を確保できる限りにおいて任意である。
【0027】
第二支持装置S2は、
図1から
図5に示すように、トンネルTの延長方向に並べて配置される一対の第二門型フレーム8,9と、第二門型フレーム8,9同士を連結する6本の第二梁材10と、第二門型フレーム8,9を支持する走行台車11と備えた第二走行架台R2と、第二走行架台R2に設けた6個の支持架16と、支持架16を介して第二走行架台R2によって保持される第二支え部材12とを備えている。
【0028】
第二門型フレーム8,9は、ともにアーチ状(円弧状)とされており、外径が第一支持装置S1の第一門型フレーム3,4の内径よりも小径とされていて第一門型フレーム3,4の内側を移動可能とされており、周方向に等間隔に配置される6本の第二梁材10によって連結されている。また、走行台車11は、第二梁材10よりも長尺であって第二梁材10に平行な一対の台車本体11aと、各台車本体11aの中央付近と後端から垂下される脚11bと、各脚11bに回転自在に取り付けられて第一走行ガイド7におけるレール7a上を走行する走行輪11cと、台車本体11aの各脚11bの隣および台車本体11aの前端のそれぞれに取り付けられた第二アウトリガー11dと、各台車本体11aの中央付近と後端から上方に立ち上がって第二門型フレーム8,9に連結される支柱11eとを備えて構成されている。
【0029】
各台車本体11aの中央付近の各支柱11eは、前側の第二門型フレーム8の内周に連結されて第二門型フレーム8を支持しており、また、各台車本体11aの後側の各支柱11eは、後側の第二門型フレーム9の内周に連結されて、第二門型フレーム9を支持している。
【0030】
また、第二アウトリガー11dは、伸縮によって第二支持装置S2を上下動させる。各第二アウトリガー11dを伸長させて地面に接地させてからさらに伸長させると第二支持装置S2を持ち上げて走行輪11cをレール7aから浮かせ得る。このように第二アウトリガー11dを伸長させて走行輪11cがレール7aから浮いた状態では、走行台車11の6個の第二アウトリガー11dのみが設置して第二支持装置S2が走行不能となり、姿勢が安定して安全にPC板Bを支持できる。なお、第二アウトリガー11dを収縮させて地面から離間するまでは第二支持装置S2を下降させ得るとともに、第二アウトリガー11dが完全に地面から離間した状態では第二支持装置S2は第一走行ガイド7のレール7a上を走行できる状態に復帰する。
【0031】
つづいて、第二支え部材12は、前側の第二門型フレーム8と各第二梁材10にかけて取り付けられてトンネルTの内壁に向かう方向へ向けて突出する支持架16によって支持されており、支持架16に支持されて第二梁材10と平行配置されるテレスコピック型の油圧シリンダ12aと、油圧シリンダ12aの先端に支持架16と平行に取り付けられるテレスコピック型の油圧シリンダ12bと、油圧シリンダ12bの先端に取り付けられてPC板Bを抑える矩形のパッド12cとを備えている。油圧シリンダ12aは、図示しない油圧源からの圧油の供給によって伸縮駆動されてパッド12cをトンネルTの延長方向へ駆動でき、また、油圧シリンダ12bは、図示しない油圧源からの圧油の供給によって伸縮駆動されてパッド12cをトンネルTの内壁に向かう方向で遠近させ得る。パッド12cは、トンネルTの内壁に対面する面がPC板Bの内周面に沿う湾曲面となっており、PC板Bをガタなく支持することができる。
【0032】
第二走行架台R2における支持架16は、第一支持装置S1の第一梁材5を周方向で避ける位置に配置されており、第一門型フレーム3,4間を通して第一門型フレーム3,4の外周側へ突出している。そして、第二支え部材12を構成する油圧シリンダ12a,12bおよびパッド12cは、トンネルTの延長方向から見て第一門型フレーム3,4の外周側に配置されている。また、第一支え部材2におけるパッド2cと、第二支え部材12におけるパッド12cは、トンネルTの延長方向から見て、トンネルTの周方向に順番に等間隔に並べて配置されている。よって、第二支え部材12における油圧シリンダ12a,12bおよびパッド12cは、第一門型フレーム3,4、第一梁材5および第一支え部材2に干渉しないように配置されている。また、第二走行架台R2における支持架16が第一門型フレーム3,4間に配置されているので、第二支持装置S2は、支持架16が第一門型フレーム3,4間内でこれらに移動を規制される範囲内で第一支持装置S1に対してレール7aの長手方向へ相対移動できる。
図3に示すように、第一支持装置S1の左端から1番目の第一支え部材2のパッド2cと第二支持装置S2の左端から1番目の第二支え部材12のパッド12cは、アーチ状に組まれる6個のPC板Bの左から1番目のPC板Bに対応して、周方向でこのPC板Bに対向可能な位置に設置される。そして、左から2番目のパッド2c,12cは、左から2番目のPC板Bに対応して、周方向で2番目のPC板Bに対向可能な位置に設置される。つまり、左からN番目(N=1,2,3,4,5,6)のパッド2c,12cは、左からN番目のPC板Bに対応して、周方向でN番目のPC板Bに対向可能な位置に設置される。
【0033】
なお、第二支え部材12の設置数は、第一支え部材2と同様に、アーチ状に組まれてトンネルTの周方向で列をなすPC板Bの数に対応した数とされているが、後述する第二の実施の形態のPC板支持装置1bのようにPC板Bの数から1を引いた数とされてもよい。この場合、第二支え部材12は、第二門型フレーム8から第二梁材10にかけて設けられているので、第二梁材10を第二支え部材12の設置数以上の数だけ第二支持装置S2に設置すればよいが、第二支え部材12が第二梁材10ではなく第二門型フレーム8或いは第二門型フレーム9のみに取り付けられている場合には、第二梁材10の設置数は第二支持装置S2の強度を確保できる限りにおいて任意である。
【0034】
つづいて、第一走行ガイド7は、
図5に示すように、トンネルTの延長方向に向けて互いに並行に配置される一対のレール7a,7aと、レール7aが敷設されるベース7b,7bとを備えて構成されている。そして、各ベース7bの前方と後方には、それぞれレール7aの側方に突出するブラケット7c,7dが設けられている。
【0035】
トンネルTの延長後方から見て左側のレール7aには、第一支持装置S1の進行方向左側の走行輪6cと第二支持装置S2の進行方向左側の走行輪11cが乗っており、トンネルTの延長後方から見て右側のレール7aには、第一支持装置S1の進行方向右側の走行輪6cと第二支持装置S2の進行方向右側の走行輪11cが乗っている。
【0036】
第一支持装置S1は、第一門型フレーム3,4が左右のレール7a,7aに跨っており、走行台車6がレール7a,7a上を走行すると第一走行ガイド7によってガイドされてレール7a,7aの長手方向に移動できる。第二支持装置S2は、第二門型フレーム8,9が左右のレール7a,7aに跨っており、走行台車11がレール7a,7a上を走行すると第一走行ガイド7によってガイドされてレール7a,7aの長手方向に移動できる。
【0037】
また、本実施の形態では、前述したように、一つのレール7aを第一支持装置S1と第二支持装置S2の走行輪6c,11cが走行するようになっており、レール7a上には第一支持装置S1の前後の走行輪6c,6c間に第二支持装置S2の前側の走行輪11cが配置されている。そして、第一支持装置S1における第一門型フレーム3,4内を第二支持装置S2における第二門型フレーム8,9が通過できるとともに、第二支え部材12の支持架16が第一梁材5を周方向で避ける位置から第一門型フレーム3,4間を通して突出していて、第二支え部材12の油圧シリンダ12a,12bおよびパッド12cが第一門型フレーム3,4の外周側に配置されているので、第二支持装置S2は、第一支持装置S1に対して支持架16が第一門型フレーム3,4間で移動可能な範囲でレール7aに沿って相対移動できる。このように、第一支持装置S1と第二支持装置S2は、
図6に示す第二支持装置S2が第一支持装置S1内に入れ子式に入る位置から
図7に示す第二支持装置S2が第一支持装置S1の後端から後方へ突出する位置まで第一走行ガイド7上を移動できる。なお、
図6および
図7においては、図を理解しやすくするために、第一支持装置S1および第二支持装置S2を簡略化して示している。
【0038】
第一支持装置S1の第一走行ガイド7上での駆動には、第一シリンダ13(
図5参照)が利用されている。具体的には、第一支持装置S1の走行台車6における後側の脚6bとレール7aの前端の側部に設けられたブラケット7cとの間には、テレスコピック型の第一シリンダ13が介装されている。第一シリンダ13は、図示しない油圧源からの圧油の供給によって伸縮駆動する。そして、第一シリンダ13が収縮すると第一支持装置S1はレール7a上を前方へ移動し、第一シリンダ13が伸長すると第一支持装置S1がレール7a上を後方へ移動する。このように、第一シリンダ13の伸縮駆動によって、第一支持装置S1は、レール7aに沿ってトンネルTの前後へ移動する。
【0039】
同様に、第二支持装置S2の第一走行ガイド7上での駆動には、第二シリンダ14(
図5参照)が利用される。具体的には、第二支持装置S2の走行台車11における前側の脚11bとレール7aの後端の側部に設けられたブラケット7dとの間には、テレスコピック型の第二シリンダ14が介装されている。第二シリンダ14は、図示しない油圧源からの圧油の供給によって伸縮駆動する。そして、第二シリンダ14が収縮すると、第二支持装置S2はレール7a上を後方へ移動し、第二シリンダ14が伸長すると第二支持装置S2がレール7a上を前方へ移動する。このように、第二シリンダ14の伸縮駆動によって、第二支持装置S2は、レール7aに沿ってトンネルTの前後へ移動する。
【0040】
また、第一アウトリガー6dおよび第二アウトリガー11dを伸長させて第一支持装置S1および第二支持装置S2を第一走行ガイド7から離脱させ、第一シリンダ13を伸長させつつ第二シリンダ14を収縮させると第一支持装置S1および第二支持装置S2に対して第一走行ガイド7が前方へ移動する。第一アウトリガー6dおよび第二アウトリガー11dを伸長させて第一支持装置S1および第二支持装置S2を第一走行ガイド7から離脱させ、第一シリンダ13を収縮させつつ第二シリンダ14を伸長させると第一支持装置S1および第二支持装置S2に対して第一走行ガイド7が後方へ移動する。このように、第一アウトリガー6d、第二アウトリガー11d、第一シリンダ13および第二シリンダ14を利用して第一走行ガイド7をトンネルT内で前後方向へ移動させ得るので、PC板支持装置1aは、トンネルT内を自走できる。
【0041】
なお、本実施の形態では、第一支持装置S1の移動に第一シリンダ13を利用し、第二支持装置S2の移動に第二シリンダ14を利用しているが、第一シリンダ13および第二シリンダ14の代わりにモータを利用してもよい。たとえば、モータで走行輪6c,11cを駆動して第一支持装置S1および第二支持装置S2にレール7a上を走行させてもよいし、レール7aの延長方向に沿ってラックを設けておき、第一支持装置S1と第二支持装置S2にそれぞれモータを設けてラックに歯合するピニオンを駆動して第一支持装置S1および第二支持装置S2にレール7a上を走行させてもよい。
【0042】
このように構成されたPC板支持装置1aでPC板Bを支持しつつPC板Bをアーチ状に組み立てる手順について説明する。まず、
図1に示した初期配置に第一支持装置S1および第二支持装置S2を配置し、第一アウトリガー6dおよび第二アウトリガー11dを接地させて第一支持装置S1と第二支持装置S2とを地面に安定させる。そして、
図3に示すように、建込装置EでトンネルTの側壁Taに連結するPC板Bを既にアーチ状に組み立てが終わった列(後列)のPC板Bの隣であって、トンネルTの側壁Taに接続するPC板Bを運搬して、隣のPC板Bと側壁Taとに連結する。この建込装置EによるPC板Bの連結作業が終了すると、建込装置Eの台車Dを移動させる。つづいて、第一支持装置S1の
図3中の左端の第一支え部材2における油圧シリンダ2aを伸長させてPC板Bにパッド2cが対向する位置に位置決めし、油圧シリンダ2bを伸長させてパッド2cをPC板Bに当接させ、第一支え部材2でPC板Bを支持する。なお、
図3は、第一支持装置S1の第一支え部材2で左から3番目のPC板Bの支持が終了して、建込装置Eが左から4番目のPC板Bの組み立て作業を行っているところを図示している。
【0043】
建込装置Eは、側壁Taに連結済みのPC板BのトンネルTの周方向で隣に新たなPC板Bを運搬して、新たなPC板Bを側壁Taに連結されたPC板Bと後列の隣のPC板Bに連結する。この新たなPC板Bの連結が終了すると台車Dを移動させて、第一支持装置S1の
図3中で左から2番目の第一支え部材2のパッド2cで支持する。このように、建込装置Eで一つのPC板Bの組み立てが済むと、第一支え部材2の油圧シリンダ2a,2bを駆動してパッド2cで組立が終わったPC板Bを支持することを続けて、一列で6個のPC板Bをアーチ状に組んでトンネル覆工Lを構築する工程が終了すると、一列全てのPC板Bが第一支持装置S1の第一支え部材2によって支持される。
【0044】
このように第一支持装置S1による一列目のPC板Bの支持が終了すると、建込装置Eは、この一列目のPC板Bの列の前方に二列目のPC板Bを組み立てていく。まず、第一支持装置S1によって支持された列のPC板Bの前方にPC板Bを組み立てるに先立って、第二アウトリガー11dを収縮させて第二支持装置S2を
図3に示した位置から前方へ進ませて、
図4に示すように第二支え部材12における油圧シリンダ12aの伸長によってのパッド12cが新たに組まれるPC板Bに対向し得る位置まで移動させる。第二支持装置S2の移動後は、第二アウトリガー11dを接地させて第二支持装置S2を地面に安定させる。この状態では、第二支持装置S2が第一支持装置S1内に侵入する。
図4に示すように、建込装置EでトンネルTの側壁Taに連結するPC板Bを第一支持装置S1で支持された列のPC板Bの隣に運搬して、隣のPC板Bと側壁Taとに連結する。この建込装置EによるPC板Bの連結作業が終了すると、建込装置Eの台車Dを移動させる。つづいて、第二支持装置S2の
図4中の左端の第二支え部材12における油圧シリンダ12aを伸長させてPC板Bにパッド12cが対向する位置に位置決めし、油圧シリンダ12aを伸長させてパッド12cをPC板Bに当接させ、第二支え部材12でPC板Bを支持する。第二支え部材12の油圧シリンダ12aを伸長させてパッド12cを前進させると第二支持装置S2の重心が前方へ偏るが台車本体11aが第二門型フレーム8よりも前方へ突出していて、台車本体11aの前端に設けた第二アウトリガー11dが重量を支えるので第二支持装置S2の姿勢を安定させてPC板Bを支持できる。なお、
図4は、第二支持装置S2の第二支え部材12で左から3番目のPC板Bの支持が終了して、建込装置Eが左から4番目のPC板Bの組み立て作業を行っているところを図示している。
【0045】
建込装置Eは、側壁Taに連結済みのPC板BのトンネルTの周方向で隣に新たなPC板Bを運搬して、新たなPC板Bを側壁Taに連結されたPC板Bと後列の隣のPC板Bに連結する。この新たなPC板Bの連結が終了すると台車Dを移動させて、第二支持装置S2の
図4中で左から2番目の第二支え部材12のパッド12cで支持する。このように、建込装置Eで一つのPC板Bの組み立てが済むと、第二支え部材12の油圧シリンダ12a,12bを駆動してパッド12cで組立が終わったPC板Bを支持することを続けて、一列で6個のPC板Bをアーチ状に組んでトンネル覆工Lを構築する工程が終了すると、一列全てのPC板Bが第二支持装置S2の第二支え部材12によって支持される。
【0046】
第二支持装置S2による二列目のPC板Bの支持が終了すると、建込装置Eは、この二列目のPC板Bの列の前方に三列目のPC板Bを組み立てていく。三列目のPC板Bの組み立てに先立って、第一支持装置S1を
図4に示した位置から前方へ進ませて、第一アウトリガー6dを収縮させて第一支え部材2における油圧シリンダ2bの伸長によってのパッド2cが新たに組まれるPC板Bに対向し得る位置まで移動させる。第一支持装置S1の移動後は、第一アウトリガー6dを接地させて第一支持装置S1を地面に安定させる。なお、レール7aの長さの関係で、第一支持装置S1が三列目のPC板Bを支持できない場合、第一アウトリガー6dおよび第二アウトリガー11dを伸長させて第一支持装置S1と第二支持装置S2を第一走行ガイド7から浮かせて、第一シリンダ13および第二シリンダ14の駆動によってレール7a,7aを前方へ送り出した後、第一アウトリガー6dおよび第二アウトリガー11dを収縮させて第一支持装置S1と第二支持装置S2を第一走行ガイド7上に載置し、第一支持装置S1を所望の位置へ移動させる。
【0047】
そして、前述の手順で説明したように、建込装置EでPC板Bを搬送および組み立てを行いつつ、PC板Bが組み上がる度に第一支え部材2で組みあがったPC板Bを支持していく。このように、PC板が組み立てられる度にPC板を支持し、アーチ状に組み立てられたPC板の隣に新たにPC板をアーチ状に組み立てる際に、前列の全PC板を支持しつつ、新たな列のPC板を組み立てる。これを繰り返し行うことで、順次、組みあがったPC板Bの列を第一支持装置S1と第二支持装置S2で交互に支持していくことで、常に、最先端でアーチ状に組み上がった列の全てのPC板Bが必ず第一支持装置S1或いは第二支持装置S2によって支持される。そして、この支持された列のPC板Bの前方に建込装置EでPC板Bを組み立てていくので、アーチ状に組み上がったPC板Bでなるトンネル覆工Lは、第一支持装置S1或いは第二支持装置S2によって支持されて、狙い通りの位置に位置決めされるから、建込装置Eで次の列のPC板Bを組み立てていく際に容易にPC板BをトンネルTの延長方向に隣り合うPC板Bに連結できる。このように、第一支持装置S1から見れば、第二支持装置S2は、第一支え部材2の前後の双方に第二支え部材12を設置できる位置へ第一支持装置S1に干渉せずにトンネルTの延長方向へ移動可能となっている。これを第二支持装置S2から見れば、第一支持装置S1は、第二支え部材12の前後の双方に第一支え部材2を設置できる位置へ第二支持装置S2に干渉せずにトンネルTの延長方向へ移動可能となっていることになる。
【0048】
以上、本実施の形態のPC板支持装置1aは、トンネルTの内側に周方向にアーチ状に組まれる複数のPC板Bに対応して各PC板Bを支える複数の第一支え部材2を有してトンネルTの延長方向へ移動可能な第一支持装置S1と、トンネルTの内側に周方向にアーチ状に組まれる複数のPC板Bに対応して各PC板Bを支える複数の第二支え部材12を有して第一支え部材2の前後の双方に第二支え部材12を設置できる位置へ第一支持装置S1に干渉せずにトンネルTの延長方向へ移動可能な第二支持装置S2とを備えて構成されている。
【0049】
このように構成されたPC板支持装置1aによれば、PC板Bが組み上がる度に第一支え部材2或いは第二支え部材12でPC板Bを支持でき、第一支持装置S1と第二支持装置S2が交互に前方へ移動しながら、PC板Bをアーチ状に組んだトンネル覆工Lを支持できる。このように本実施の形態のPC板支持装置1aでは、PC板Bが組み上がる度にPC板Bを順次支持してPC板Bを狙った位置に位置決めできるから、トンネルTの延長方向で隣り合うPC板Bの連結が可能となる。以上より、PC板支持装置1aによれば、トンネルTの周方向で多くのPC板Bを利用するトンネル覆工Lを支持でき、トンネル覆工Lの施工が可能となる。
【0050】
さらに、トンネルTの内側に周方向に沿ってアーチ状に組み立てた複数のPC板Bでトンネル覆工Lを形成するトンネル覆工Lの施工方法は、PC板Bが組み立てられる度にPC板Bを支持し、アーチ状に組み立てられたPC板Bの隣に新たにPC板Bをアーチ状に組み立てる際に、前列の全PC板Bを支持しつつ、新たな列のPC板Bを組み立てる。このように構成されたトンネル覆工Lの施工方法によれば、PC板Bが組み上がる度にPC板Bを順次支持してPC板Bを狙った位置に位置決めできるから、トンネルTの延長方向で隣り合うPC板Bの連結が可能となり、トンネルTの周方向で多くのPC板Bを利用するトンネル覆工Lの施工が可能となる。
【0051】
また、本実施の形態のPC板支持装置1aは、並行に配置される一対のレール7a,7aを有する第一走行ガイド7を備え、第一支持装置S1と第二支持装置S2が第一走行ガイド7におけるレール7a,7a上を走行する。このように構成されたPC板支持装置1aによれば、第一支持装置S1と第二支持装置S2が同一のレール7a,7a上を走行するので、第一走行ガイド7を基準に第一支持装置S1と第二支持装置S2を正しい位置に配置できるとともに、調整作業を行わずとも両者を同一方向に走行させ得る。
【0052】
さらに、本実施の形態のPC板支持装置1aは、レール7aと第一支持装置S1との間に介装されてレール7aに対して第一支持装置S1をレール7aに沿って駆動する第一シリンダ13と、レール7aと第二支持装置S2との間に介装されてレール7aに対して第二支持装置S2をレール7aに沿って駆動する第二シリンダ14とを備えて構成されている。このように構成されたPC板支持装置1aによれば、レール7a上で第一支持装置S1と第二支持装置S2をレール7aに沿って駆動できるだけでなく、第一支持装置S1と第二支持装置S2を浮かせてレール7aを前後方向に移動させてトンネルT内で自走できる。
【0053】
また、本実施の形態のPC板支持装置1aでは、第一支持装置S1がトンネルTの延長方向に並べて配置される一対の第一門型フレーム3,4と第一門型フレーム3,4同士を連結する複数の第一梁材5とを有して第一支え部材2を保持する第一走行架台R1を有し、第二支持装置S2がトンネルTの延長方向に並べて配置されて第一門型フレーム3,4内を移動可能な一対の第二門型フレーム8,9と第二門型フレーム8,9同士を連結する複数の第二梁材10とを有して第二支え部材12を保持する第二走行架台R2と、第一走行架台R1の第一門型フレーム3,4間を通して第一門型フレーム3,4の外側に突出して第二支え部材12を保持する複数の支持架16とを有している。このように構成されたPC板支持装置1aでは、支持架16によって第二支え部材12を第一門型フレーム3,4の外周側に配置でき、第二支え部材12を第一門型フレーム3,4の内周側に配置して第二支持装置S2が第一支持装置S1内を通過する構造に比較して、第二門型フレーム8,9を大型化して第二走行架台R2の内側に大きくスぺースを確保できる。よって、このように構成されたPC板支持装置1aによれば、内側に大きなスペースを確保できるので、最も狭くなる第二走行架台R2の内側スペースにトンネルT内を往来する作業車両や作業員の通路を確保できる。
【0054】
さらに、本実施の形態のPC板支持装置1aは、第一門型フレーム3,4および第二門型フレーム8,9がアーチ状であるので、等しい長さの支持架15で第一支え部材2を第一門型フレーム3,4に取り付け、等しい長さの支持架16でっ第二支え部材12を第二門型フレーム8,9に取り付ければ、第一支え部材2および第二支え部材12をトンネルTの内壁面から等しい距離に配置できる。よって、このように構成されたPC板支持装置1aによれば、第一支え部材2の第一門型フレーム3,4への取付および第二支え部材12の第二門型フレーム8,9への取付が容易となる。
【0055】
<第二の実施の形態>
つづいて、第二の実施の形態のPC板支持装置1bについて説明する。第二の実施の形態のPC板支持装置1bは、
図8から
図10に示すように、トンネルTの内側に周方向にアーチ状に組まれる6個のPC板Bのうち終端のPC板Bを除く5個のPC板Bを支える5個の第一支え部材2を有してトンネルTの延長方向へ移動可能な第一支持装置S3と、トンネルTの内側に周方向にアーチ状に組まれる6個のPC板Bのうち終端のPC板Bを除く5個のPC板Bを支える5個の第二支え部材12を有してトンネルTの延長方向へ移動可能な第二支持装置S4とを備えて構成されている。なお、第二の実施の形態のPC板支持装置1bの説明にあたって、第一の実施の形態のPC板支持装置1aと同様の部材については説明が重複するので、同一の符号を付すのみとして詳細な説明について省略する。なお、
図8および
図10においては、図を理解しやすくするために、第一支持装置S3および第二支持装置S4を簡略化して示している。
【0056】
第一支持装置S3は、
図8および
図9に示すように、トンネルTの延長方向に並べて配置される一対の第一門型フレーム21,22と、第一門型フレーム21,22同士を連結する5本の第一梁材23と、第一門型フレーム21,22を支持する走行台車24とを備えた第一走行架台R3と、第一走行架台R3に設けた5個の支持架25と、支持架25を介して第一走行架台R3によって保持される第一支え部材2とを備えている。
【0057】
第一門型フレーム21,22は、ともに5本のH形鋼等の直線状の鋼材を多角形状の門型に組み合わせて形成されており、鋼材の連結部分の4箇所に加えて他の一箇所の合計五箇所の互いに対向する部分が周方向に平行配置される5本の第一梁材23によって連結されている。また、走行台車24は、第一門型フレーム21,22の各下端に連結される第一梁材23に平行な一対の台車本体24aと、各台車本体24aのトンネルTの延長方向の両端から垂下される脚24bと、各脚24bに回転自在に取り付けられて第一走行ガイド7におけるレール7a上を走行する走行輪24cと、台車本体24aの各脚24bの隣に取り付けられた第一アウトリガー24dとを備えて構成されている。なお、各第一アウトリガー24dの伸長によって、第一支持装置S3を走行不能として姿勢を安定させ得るとともに、各第一アウトリガー24dの収縮によって、第一支持装置S3が第一走行ガイド7上を走行可能な状態となるのは第一の実施の形態の第一支持装置S1と同様である。
【0058】
つづいて、第一支え部材2は、各第一梁材23からトンネルTの内壁に向けて設置される支持架25によって支持されている。具体的には、
図9に示すように、第一支え部材2は、トンネルTの右側のPC板Bから数えて5番目のPC板Bまでをそれぞれ支持できる位置に設置されている。トンネルT内には、周方向で6個のPC板Bがアーチ状に組み立てられるが、トンネルTの左側の側壁Taと右側から数えて5番目のPC板Bとに連結されるPC板Bについては、5番目のPC板Bを支持する第一支え部材2とトンネルTの左側の側壁Taとで支持されるのでPC板支持装置1bで支えずとも位置ずれが生じない。このように、トンネルT内でアーチ状に組み立てられて列をなすPC板Bのうち最後に組み立てられるPC板Bについては支持しなくてもよいので、本実施の形態のPC板支持装置1bのように列をなすPC板Bの設置数から1を引いた数の第一支え部材2を第一支持装置S1に設置すれば足りる。第一支え部材2の設置数は、アーチ状に組み立てられるPC板Bの設置数と同じにされてもよく、第一梁材23の設置数は、第一支え部材2の設置数以上とされればよいが、第一支え部材2が第一梁材23ではなく第一門型フレーム21或いは第一門型フレーム22にのみ取り付けられている場合には、第一梁材23の設置数は第一支持装置S3の強度を確保できる限りにおいて任意である。
【0059】
第二支持装置S4は、
図8および
図9に示すように、トンネルTの延長方向に並べて配置される一対の第二門型フレーム26,27と、第二門型フレーム26,27同士を連結する9本の第二梁材28と、第二門型フレーム26,27を支持する走行台車29と備えた第二走行架台R4と、第二走行架台R4に設けた5個の支持架30と、支持架30を介して第二走行架台R4によって保持される第二支え部材12とを備えている。
【0060】
第二門型フレーム26,27は、ともに5本のH形鋼等の直線状の鋼材を多角形状の門型に組み合わせて形成されており、第一支持装置S3の第一門型フレーム21,22の内側を移動可能とされており、鋼材の連結部分の4箇所に加えて他の5箇所の合計9箇所の互いに対向する部分が周方向に平行配置される9本の第二梁材28によって連結されている。また、走行台車29は、第二門型フレーム26,27の各下端に連結される第二梁材28に平行な一対の台車本体29aと、各台車本体29aのトンネルTの延長方向の両端から垂下される脚29bと、各脚29bに回転自在に取り付けられて第一走行ガイド7におけるレール7aの内側に設置される第二走行ガイド31におけるレール31a上を走行する走行輪29cと、台車本体29aの各脚29bの隣に取り付けられた第二アウトリガー29dとを備えて構成されている。なお、各第二アウトリガー29dの伸縮によって、第二支持装置S4を第二走行ガイド31上に載置および離間させることができ、第一の実施の形態の第二支持装置S2と同様に、各第二アウトリガー29dを昇降させて第二支持装置S4を走行不能として姿勢を安定させたり、第二支持装置S4が第二走行ガイド31上を走行できる状態とさせたりし得る。
【0061】
つづいて、第二支え部材12は、本実施の形態では、第二門型フレーム26,27の鋼材の連結部分の4箇所以外を連結する5個の第二梁材28からトンネルTの内壁に向けて設置される支持架30によって支持されている。具体的には、
図9に示すように、第二支え部材12は、トンネルTの右側のPC板Bから数えて5番目のPC板Bまでをそれぞれ支持できる位置に設置されている。トンネルTの右側のPC板Bから数えて6番目のPC板Bを支持しなくともよいのは、第一支持装置S3と同様である。なお、第二支え部材12の設置数は、アーチ状に組み立てられるPC板Bの設置数と同じにされてもよい。
【0062】
第二走行架台R4における支持架30は、第一支持装置S1の第一梁材23を周方向で避ける位置に配置されており、第一門型フレーム21,22間を通して第一門型フレーム21,22の外周側へ突出している。そして、第二支え部材12は、
図9に示すように、トンネルTの延長方向から見て第一門型フレーム21,22の外周側に配置されている。また、第一支え部材2と第二支え部材12は、トンネルTの延長方向から見て、5つのPC板Bのそれぞれに対応して支持できる位置に配置されている。よって、第二支え部材12は、第一門型フレーム21,22、第一梁材23および第一支え部材2に干渉しないように配置されている。また、第二走行架台R4における支持架30が第一門型フレーム21,22間に配置されているので、第二支持装置S4は、支持架30が第一門型フレーム21,22間内でこれらに移動を規制される範囲内で第一支持装置S3に対してレール31aの長手方向へ相対移動できる。
図9に示すように、左からN番目(N=1,2,3,4,5)の第一支え部材2および第二支え部材12は、左からN番目のPC板Bに対応して、周方向でN番目のPC板Bに対向可能な位置に設置される。なお、第一支え部材2は、第一支持装置S3における第一梁材23に設置される支持架25に支持される関係上、第二支え部材12を支持する支持架30が第一梁材23を避ける必要があるので、第二支持装置S4では第二門型フレーム26,27の鋼材の連結部同士を連結する第二梁材28以外に支持架30が設置される第二梁材28を5つ設けている。なお、第二支え部材12が第二門型フレーム26或いは第二門型フレーム27にのみ取り付けられている場合には、第二梁材28の設置数は第二支持装置S4の強度を確保できる限りにおいて任意である。
【0063】
つづいて、第一走行ガイド7は、第一の実施の形態と同様に、トンネルTの延長方向に向けて互いに並行に配置される一対のレール7a,7aと、レール7aが敷設されるベース7b,7bとを備えて構成されている。第二走行ガイド31は、第一走行ガイド7の各ベース7bにそれぞれレール7aに平行に敷設されたレール31aを備えて構成されている。第二走行ガイド31の各レール31aは、第一走行ガイド7のレール7a,7a間に対をなして配置されている。
【0064】
そして、第一支持装置S3の走行台車24の走行輪24cは、第一走行ガイド7のレール7aのみを走行し、第二支持装置S4の走行台車29の走行輪29cは、第二走行ガイド31のレール31aのみを走行する。第一支持装置S3の走行輪24cと第二支持装置S4の走行輪29cは互いに干渉せず別々のレール7a,31a上を走行する。よって、第一支持装置S3の走行輪24cの配置と第二支持装置S4の走行輪29cの配置とが互いに影響を与えないので、第一支持装置S3と第二支持装置S4の設計自由度が向上する。また、第二支持装置S4の設計自由度が向上するので、第一支持装置S3内を通過する第二支持装置S4における第二支え部材12を支持する支持架30を第二走行架台R4の後方等、第二支持装置S4の重心位置を中央となるように配置でき、支持架30の前後方向長さも短くできるようになる。以上より、第一の実施の形態の第二走行架台R2における台車本体11aを第二門型フレーム8よりも前方まで突出させて台車本体11aの前端に三つ目の第一アウトリガー11dを設置するような構造を採らずとも、第二支え部材12を前方へ伸長させてPC板Bを支持する場合の第二走行架台R4の姿勢を安定させ得る。
【0065】
このように、第一支持装置S3は、第一門型フレーム21,22が左右のレール7a,7aに跨っており、走行台車24がレール7a,7a上を走行すると第一走行ガイド7によってガイドされてレール7a,7aの長手方向に移動できる。第二支持装置S4は、第二門型フレーム26,27が第二走行ガイド31の左右のレール31a,31aに跨っており、走行台車29がレール31a,31a上を走行すると第二走行ガイド31によってガイドされてレール31a,31aの長手方向に移動できる。
【0066】
なお、図示はしないが、第一の実施の形態のPC板支持装置1aと同様に、第二の実施の形態のPC板支持装置1bにあっても、第一走行ガイド7のベース7bと第一支持装置S3との間にはテレスコピック型の油圧シリンダでなる第一シリンダが介装されており、第一走行ガイド7のベース7bと第二支持装置S4との間にはテレスコピック型の油圧シリンダでなる第二シリンダが介装されている。第一シリンダは、ベース7bを介してレール7aと第一支持装置S3との間に介装されてレール7aに対して第一支持装置S3をレール7aに沿って駆動する。第二シリンダは、ベース7bを介して第二走行ガイド31におけるレール31aと第二支持装置S4との間に介装されてレール31aに対して第二支持装置S4をレール31aに沿って駆動する。
【0067】
そして、第一アウトリガー24dおよび第二アウトリガー29dを伸長させて第一支持装置S3および第二支持装置S4を第一走行ガイド7および第二走行ガイド31から離脱させ、第一シリンダを伸長させつつ第二シリンダを収縮させると第一支持装置S3および第二支持装置S4に対して第一走行ガイド7および第二走行ガイド31が前方へ移動する。第一アウトリガー24dおよび第二アウトリガー29dを伸長させて第一支持装置S3および第二支持装置S4を第一走行ガイド7および第二走行ガイド31から離脱させ、第一シリンダを収縮させつつ第二シリンダを伸長させると第一支持装置S3および第二支持装置S4に対して第一走行ガイド7および第二走行ガイド31が後方へ移動する。このように、第一アウトリガー24d、第二アウトリガー29d、第一シリンダおよび第二シリンダを利用して第一走行ガイド7および第二走行ガイド31をトンネルT内で前後方向へ移動させ得るので、PC板支持装置1bは、トンネルT内を自走できる。
【0068】
また、本実施の形態では、前述したように、第一支持装置S3における第一門型フレーム21,22内を第二支持装置S4における第二門型フレーム26,27が通過できるとともに、第二支え部材12を支持する支持架30が第一梁材23を周方向で避ける位置から第一門型フレーム21,22間を通して突出していて、第二支え部材12が第一門型フレーム21,22の外周側に配置されているので、第二支持装置S4は、第一支持装置S3に対して支持架30が第一門型フレーム21,22間で移動可能な範囲でレール31aに沿って相対移動できる。このように、第一支持装置S1と第二支持装置S2は、
図8に示す第二支持装置S4が第一支持装置S3内に入れ子式に入る位置から
図10に示す第二支持装置S4の前方が第一支持装置S3の前方へ突出する位置まで第一走行ガイド7上および第二走行ガイド31上を移動できる。
【0069】
このように構成されたPC板支持装置1bでPC板Bを支持しつつPC板Bをアーチ状に組み立てる場合、第一の実施の形態のPC板支持装置1aと同様に、PC板Bが組み上げられる度に第一支え部材2或いは第二支え部材12で支持していき、第一支持装置S3と第二支持装置S4を交互に前進させつつPC板Bの列を支持する。組みあがったPC板Bを第一支持装置S3と第二支持装置S4で交互に支持していくことで、常に、最先端でアーチ状に組み上がった列の全てのPC板Bが必ず第一支持装置S3或いは第二支持装置S4によって支持される。そして、この支持された列のPC板Bの前方に建込装置EでPC板Bを組み立てていくので、アーチ状に組み上がったPC板Bでなるトンネル覆工Lは、第一支持装置S3或いは第二支持装置S4によって支持されて、狙い通りの位置に位置決めされるから、建込装置Eで次の列のPC板Bを組み立てていく際に容易にPC板BをトンネルTの延長方向に隣り合うPC板Bに連結できる。このように、第一支持装置S3から見れば、第二支持装置S4は、第一支え部材2の前後の双方に第二支え部材12を設置できる位置へ第一支持装置S3に干渉せずにトンネルTの延長方向へ移動可能となっている。これを第二支持装置S4から見れば、第一支持装置S3は、第二支え部材12の前後の双方に第一支え部材2を設置できる位置へ第二支持装置S4に干渉せずにトンネルTの延長方向へ移動可能となっていることになる。
【0070】
以上、本実施の形態のPC板支持装置1bは、トンネルTの内側に周方向にアーチ状に組まれる複数のPC板Bに対応して各PC板Bを支える複数の第一支え部材2を有してトンネルTの延長方向へ移動可能な第一支持装置S3と、トンネルTの内側に周方向にアーチ状に組まれる複数のPC板Bに対応して各PC板Bを支える複数の第二支え部材12を有して第一支え部材2の前後の双方に第二支え部材12を設置できる位置へ第一支持装置S3に干渉せずにトンネルTの延長方向へ移動可能な第二支持装置S4とを備えて構成されている。
【0071】
このように構成されたPC板支持装置1bによれば、PC板Bが組み上がる度に第一支え部材2或いは第二支え部材12でPC板Bを支持でき、第一支持装置S3と第二支持装置S4が交互に前方へ移動しながら、PC板Bをアーチ状に組んだトンネル覆工Lを支持できる。このように本実施の形態のPC板支持装置1bでは、PC板Bが組み上がる度にPC板Bを順次支持してPC板Bを狙った位置に位置決めできるから、トンネルTの延長方向で隣り合うPC板Bの連結が可能となる。以上より、PC板支持装置1bによれば、トンネルTの周方向で多くのPC板Bを利用するトンネル覆工Lを支持でき、トンネル覆工Lの施工が可能となる。
【0072】
また、本実施の形態のPC板支持装置1bは、並行に配置される一対のレール7a,7aを有する第一走行ガイド7と、第一走行ガイド7の各レール7a,7a間に挟まれてレール7a,7aに並行に配置される一対のレール31a,31aを有する第二走行ガイド31とを備え、第一支持装置S3が第一走行ガイド7におけるレール7a,7a上を走行し、第二支持装置S4が第二走行ガイド31におけるレール31a,31a上を走行する。このように構成されたPC板支持装置1bによれば、第一支持装置S3が第一走行ガイド7のレール7aのみを走行し、第二支持装置S4が第二走行ガイド31のレール31aのみを走行するので、第一支持装置S3と第二支持装置S4の設計自由度が向上し、台車本体29aを第二門型フレーム26よりも前方まで突出させてアウトリガーを設置するような構造を採らずとも第二支持装置S4姿勢を安定させ得るので製造コストも低減される。
【0073】
さらに、本実施の形態のPC板支持装置1bは、多角形状の第一門型フレーム21,22および第二門型フレーム26,27を備えている。このように構成されたPC板支持装置1bによれば、第一門型フレーム21,22および第二門型フレーム26,27を直線状の鋼材を連結して製造することができ、鋼材を円弧状に成型する必要がないので製造コストが安価となる。
【0074】
また、本実施の形態のPC板支持装置1bは、レール7aと第一支持装置S3との間に介装される第一シリンダ13と、レール31aと第二支持装置S4との間に介装される第二シリンダ14とを備えて構成されているので、レール7a,31a上で第一支持装置S1と第二支持装置S2を駆動できるとともにトンネルT内で自走できる。
【0075】
さらに、本実施の形態のPC板支持装置1bでは、第一支持装置S3がトンネルTの延長方向に並べて配置される一対の第一門型フレーム21,22と第一門型フレーム21,22同士を連結する複数の第一梁材23とを有して第一支え部材2を保持する第一走行架台R3を有し、第二支持装置S4がトンネルTの延長方向に並べて配置されて第一門型フレーム21,22内を通過可能な一対の第二門型フレーム26,27と第二門型フレーム26,27同士を連結する複数の第二梁材28とを有して第二支え部材12を保持する第二走行架台R4と、第一走行架台R3の第一門型フレーム21,22間を通して第一門型フレーム3,4の外側に突出して第二支え部材12を保持する複数の支持架30とを有している。このように構成されたPC板支持装置1bでは、支持架30によって第二支え部材12を第一門型フレーム21,22の外周側に配置でき、第二支え部材12を第一門型フレーム21,22の内周側に配置して第二支持装置S4が第一支持装置S3内を通過する構造に比較して、第二門型フレーム26,27を大型化して第二走行架台R4の内側に大きくスぺースを確保できる。よって、このように構成されたPC板支持装置1bによれば、内側に大きなスペースを確保できるので、最も狭くなる第二走行架台R4の内側スペースにトンネルT内を往来する作業車両や作業員の通路を確保できる。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱なく改造、変形及び変更ができるのは当然である。
【符号の説明】
【0077】
1a,1b・・・PC板支持装置、2・・・第一支え部材、3,4,21,22・・・第一門型フレーム、5,23・・・第一梁材、6d,24d・・・第一アウトリガー、7・・・第一走行ガイド、7a,31a・・・レール、8,9,26,27・・・第二門型フレーム、10,28・・・第二梁材、11d,29d・・・第二アウトリガー、12・・・第二支え部材、13・・・第一シリンダ,14・・・第二シリンダ、15,16,25,30・・・支持架、31・・・第二走行ガイド、B・・・PC板、R1・・・第一走行架台、R2・・・第二走行架台、S1,S3・・・第一支持装置、S2,S4・・・第二支持装置