(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】レーザ発振器
(51)【国際特許分類】
H01S 5/042 20060101AFI20230802BHJP
H01S 3/0933 20060101ALI20230802BHJP
H01S 3/0941 20060101ALI20230802BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20230802BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20230802BHJP
【FI】
H01S5/042 630
H01S3/0933
H01S3/0941
H02M7/12 Q
B23K26/00 Q
(21)【出願番号】P 2019186741
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】田中 康之
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00649667(EP,A2)
【文献】特開2019-145650(JP,A)
【文献】特開昭64-023589(JP,A)
【文献】特開2017-103413(JP,A)
【文献】特開2005-236030(JP,A)
【文献】国際公開第2014/184905(WO,A1)
【文献】特開2019-195004(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0001002(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0092802(US,A1)
【文献】J. Doval-Gandoy et al.,High voltage power supply for rotary die laser cutting system,2002 IEEE 33rd Annual IEEE Power Electronics Specialists Conference. Proceedings (Cat. No.02CH37289),2002年06月,Year: 2002 | Volume: 3,DOI: 10.1109/PSEC.2002.1022335
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01S 3/00 - 3/30
H02M 7/00 - 7/40
B23K 26/00 - 26/70
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出力
し、ワークを加工するレーザ発振器であって、
筐体と、
前記筐体内に配置され、電源に接続されて所定の消費電力の第1の機器に電力を供給するトランスと、
前記筐体内に配置され、力率を1に近付ける力率改善回路を有するとともに、前記電源に接続されて前記第1の機器よりも相対的に高い消費電力の第2の機器に電力を供給する力率改善ユニットと、
を備えるレーザ発振器。
【請求項2】
前記第1の機器は、除湿器、制御電源、安全回路、接触器コイル、又はファンモータの少なくとも何れかである請求項1に記載のレーザ発振器。
【請求項3】
前記第2の機器は、発振用ファイバ、前記発振用ファイバに励起光を入射するためのレーザダイオード、又は前記レーザダイオードに電力を供給するレーザダイオード電源の少なくとも何れかである請求項1又は2に記載のレーザ発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を用いてワークを加工するレーザ加工機が知られている。レーザ加工機には、ワークに照射するレーザ光を生成するためのレーザ発振器が設けられる。この種の技術が記載されているものとして例えば特許文献1がある。特許文献1には、励起光を供給する発光部(キャビティユニット)と、キャビティユニットに電流を供給し、複数個の発光素子の発光を制御するための電源ユニットと、を有するレーザ発振器が記載されている。
【0003】
レーザ発振器には、各国の電源事情に応じて異なる電源電圧が配電盤等から供給される。例えば、日本国では200V、欧州では400V、米国では480V、中国では380Vである。各国の電源電圧に対応するために、電圧を変換するトランスが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トランスはレーザ発振器に内蔵されるか、あるいは別置されるが、レーザ発振器のレーザ光の出力強度を高くすると、トランスを多数設けたり、トランスを大型化したりする必要がある。トランスは比較的安価であるが、レーザ発振器に大型のトランスや多数のトランスが収容されると、レーザ発振器が大型化するという課題があった。
【0006】
本発明は、製造コストが抑えられ、より小型化したレーザ発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、レーザ光を出力するレーザ発振器であって、筐体と、前記筐体内に配置され、電源に接続されて所定の消費電力の第1の機器に電力を供給するトランスと、前記筐体内に配置され、力率を1に近付ける力率改善回路を有するとともに、前記電源に接続されて前記第1の機器よりも相対的に高い消費電力の第2の機器に電力を供給する力率改善ユニットと、を備えるレーザ発振器に関する。
【発明の効果】
【0008】
一態様によれば、製造コストが抑えられ、より小型化したレーザ発振器を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーザ発振器の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るレーザ発振器の力率改善ユニットを示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るレーザ発振器の具体的な構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は一実施形態に係るレーザ発振器1の電気的な構成を示すブロック図、
図2は一実施形態に係るレーザ発振器の力率改善ユニットを示す概略図である。
【0011】
図1に示すように、一実施形態に係るレーザ発振器1は、筐体10と、所定の消費電力の第1の機器20と、第1の機器20よりも消費電力の高い第2の機器30と、ビームコンバイナ11と、レーザ加工ヘッド12と、トランス40と、力率改善ユニット50と、を備える。レーザ発振器1は、交流電源である電源2から配電盤3を介して供給される電力によって作動し、レーザ光を照射する。
【0012】
図1に示すように、筐体10には、第1の機器20と、第2の機器30と、ビームコンバイナ11と、トランス40と、力率改善ユニット50と、が収容される。
【0013】
第1の機器20は、レーザ発振器1を構成する機器のうち、相対的に消費電力が低い機器である。レーザ発振器1は、第1の機器20として、除湿運転を行う除湿機21、制御電源22、安全回路23、接触器コイル24、24Vの電源ユニット25、ファンモータ26を備える。
【0014】
第2の機器30は、第1の機器20よりも相対的に消費電力が高い機器である。第2の機器30は、主にレーザ光の出力に直接的に寄与する機器であり、例えば、LD電源ユニット31,32(レーザダイオード電源)と、レーザキャビティユニット33,34と、レーザキャビティユニット33,34に含まれるレーザダイオード33a,34aと、発振用ファイバ35と、を含む。
【0015】
次に、第2の機器30のそれぞれの構成について説明する。
【0016】
LD電源ユニット31,32は、スイッチング回路(図示省略)、平滑回路(図示省略)、制御回路(図示省略)等を有する。スイッチング回路は、スイッチング用トランジスタ及びダイオードを有する。このスイッチング回路は、制御回路からの制御信号に応じてスイッチング用トランジスタをオンオフし、ダイオードと協働して充電電流を生成する。平滑回路は、インダクタンス素子及び容量素子を有する。この平滑回路は、充電電流から容量素子の両端に直流電圧を生成し、レーザキャビティユニット33,34に出力する。
【0017】
レーザキャビティユニット33は、レーザ発振器1のレーザ光源であるレーザダイオード33aを有し、LD電源ユニット31から供給される電圧に応じたレーザ光を生成する。具体的には、LD電源ユニット31から電力がレーザダイオード33aに供給されると、レーザダイオード33aが発振用ファイバ35に励起光を入射する。
【0018】
レーザキャビティユニット34は、レーザ発振器1のレーザ光源であるレーザダイオード34aを有し、LD電源ユニット32から供給される電圧に応じたレーザ光を生成する。具体的には、LD電源ユニット32から電力がレーザダイオード34aに供給されると、レーザダイオード34aが発振用ファイバ35に励起光を入射する。
【0019】
発振用ファイバ35は、レーザキャビティユニット33,34のそれぞれと、ビームコンバイナ11と、レーザ加工ヘッド12との間に接続され、レーザ光を伝搬する。レーザキャビティユニット33、34から発振された励起光を発振用ファイバ35によりビームコンバイナ11に伝搬される。
【0020】
ビームコンバイナ11は、レーザキャビティユニット33,34において生成されたレーザ光を合成してレーザ加工ヘッド12へ入力する。レーザ加工ヘッド12は、ワークに対してレーザ光を照射する。
【0021】
次に、トランス40について説明する。トランス40は、配電盤3の電源2に接続される。トランス40は、電源2から供給される交流電圧を昇圧又は降圧し、消費電力が低い第1の機器20に供給する。除湿機21、制御電源22等の第1の機器20は、消費電力が低いため、小型のトランス40を用いることができる。このため、トランス40は、小型であり、筐体10に収容される。
【0022】
次に、力率改善ユニット50について説明する。力率改善ユニット50は、配電盤3を介して電源2に接続される。力率改善ユニット50は、電源2から供給される交流電圧を調整して、第2の機器30であるLD電源ユニット31,32、レーザキャビティユニット33,34、発振用ファイバ35に電力を供給する。力率改善ユニット50は、力率改善回路53を有し、筐体10に収容される。本実施形態に係る力率改善ユニット50は、AC380V~AC480Vの範囲の異なる電源電圧に対応可能に構成される。また、力率改善ユニット50は、結線方式についても、複数の結線方法に対応可能に構成される。例えば、スター結線からデルタ結線に切り替え可能である。
【0023】
力率改善ユニット50は、特定の値の交流電圧が入力可能で、且つ内部で昇圧又は降圧して直流電圧を出力する整流回路である。例えば、
図2に示すように、力率改善ユニット50は、6個のダイオード51と、容量素子52と、力率改善回路(PFC(Power Factor Correction))53と、等を有する。力率改善回路53は、力率を1に近付ける回路である。なお、力率改善ユニット50における力率改善回路53以外の構成は、一般的な整流回路の構成であって周知であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0024】
次に、一実施形態に係るレーザ発振器1の使用例について説明する。
図3は、配電盤3に接続された本実施形態に係るレーザ発振器1の具体的な構成の一例を示す概略図である。なお、
図3において、制御電源22、ビームコンバイナ11の図示を省略している。
【0025】
レーザ発振器1の電力源となる電源2は、電源電圧がAC380VからAC480Vの三相交流電源である。電源2の結線方式は、三相3線式のスター結線である。レーザ発振器1には、配電盤3を介して電源2のU相、V相、及びW相の3本のケーブルが接続され、交流電圧が供給される。交流電圧は、U相、V相、W相から筐体10内に入り、接触器及び分岐ブレーカを介して主にAC400Vの入力電圧として力率改善ユニット50に供給される。
【0026】
レーザ発振器1の力率改善ユニット50は、第1力率改善ユニット50a、第2力率改善ユニット50bの2個設けられる。第1力率改善ユニット50aは、LD電源ユニット31に接続され、力率を1に近づけるとともに直流電圧をLD電源ユニット31に供給する。第2力率改善ユニット50bは、LD電源ユニット32に接続され、力率を1に近づけるとともに直流電圧をLD電源ユニット32に供給する。
【0027】
レーザキャビティユニット33には、LD電源ユニット31からのDC380Vの電圧が供給され、レーザダイオード33aがレーザ光を生成し、発振用ファイバ35に励起光を入射する。レーザキャビティユニット34には、LD電源ユニット32からのDC380Vの電圧が供給され、レーザダイオード34aがレーザ光を生成し、発振用ファイバ35に励起光を入射する。
【0028】
トランス40には、電源2のU相及びV相の2本のケーブルから単相のAC400Vの交流電圧が供給される。トランス40は、AC400VからAC200Vに電圧を降圧し、二次側にある除湿機21、制御電源22、安全回路23、接触器コイル24、24Vの電源ユニット25、ファンモータ26にAC200Vの電圧を供給する。本実施形態では、各第1の機器20の入力可能な電圧がAC200Vとなり、その仕様が共通化されている。これにより、異なる出力電圧のトランス40を用いずにより容易に各第1の機器20に電力を供給できる。
【0029】
以上説明した本開示の一実施形態に係るレーザ発振器1によれば、以下のような効果を奏する。
【0030】
本開示の一実施形態に係るレーザ発振器1では、筐体10にトランス40と力率改善ユニット50を収容し、電力を供給するトランス40と力率改善ユニット50をレーザ発振器1の電気機器の消費電力によって使い分けている。これにより、レーザ発振器1全体の製造コストの上昇を抑えつつ、レーザ発振器1の小型化が実現できる。
【0031】
具体的には、力率改善ユニット50を使用せずに第2の機器30に電力を供給すると、第2の機器30の消費電力が高いため、動力入力部等のレーザ発振器1の電気部品の容量が大きくなる。本実施形態に係るレーザ発振器1では、力率改善ユニット50が力率を改善し、LD電源ユニット31,32に流れる無効電流が減少するので、消費電力が高い第2の機器30への効率的な電力の供給が可能となり、レーザ発振器1全体の小型化が可能となる。また、力率改善ユニット50は、冷却できるので、トランス40よりも小型化できるうえに発熱の発生も抑制できるため、筐体10の構造がシンプルなレーザ発振器1に内蔵できる。
【0032】
また、トランス40を消費電力が高い第2の機器30に対して用いると、供給する電力量が大きくなるため、トランス40を大型化させる必要があるとともに、トランス40の発熱量が増加する。本実施形態に係るレーザ発振器1では、トランス40が電力を供給する第1の機器20の消費電力が小さいため、トランス40の小型化が可能となり、発熱も抑えられる。また、トランス40は、力率改善ユニット50と比較して安価であるため、レーザ発振器1の電気機器の消費電力によってトランス40と力率改善ユニット50を使い分けることにより、レーザ発振器1の製造コストを抑えることができる。
【0033】
さらに、本開示の一実施形態に係るレーザ発振器1は、力率改善ユニット50が異なる電源電圧及び結線方法に対応可能であり、トランス40が電力を供給する第1の機器20の入力可能な電圧の仕様が共通化している。これにより、電源2から供給される入力電圧に対応したトランス40を選択すれば、各国の異なる電源電圧及び結線方法に対応することが可能となる。
【0034】
以上、本開示に関する一実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0035】
上記実施形態では、第1力率改善ユニット50a、第2力率改善ユニット50bは、LD電源ユニット31,32とは異なるユニットとして設けられているが、一体化したユニットとしてもよい。具体的には、第1力率改善ユニット50aをLD電源ユニット31に内蔵させ、第2力率改善ユニット50bをLD電源ユニット32に内蔵させてもよい。
【0036】
上記実施形態では、各第1の機器20に入力可能な電圧の仕様を共通化したが、第1の機器20に入力可能な電圧の設計は特に制限されず、それぞれ異なる電圧としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 レーザ発振器
2 電源
10 筐体
20 第1の機器
30 第2の機器
40 トランス
50 力率改善ユニット
53 力率改善回路