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特許7324115物質弁別装置、PCCT装置および物質弁別方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】物質弁別装置、PCCT装置および物質弁別方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
A61B6/03 373
A61B6/03 350F
A61B6/03 350P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019187946
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021061989
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 進一
(72)【発明者】
【氏名】横井 一磨
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勲
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 史人
(72)【発明者】
【氏名】寺本 冬彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大雅
【審査官】佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-237081(JP,A)
【文献】特開2010-125334(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073399(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/144065(WO,A1)
【文献】Nathaniel R Fredette et al.,Multi-step material decomposition for sperctral computed tomography,Physics in Medicine and Biology,2019年07月11日,Vol. 64,145001
【文献】Paulo R. S. Mendonca et al.,A Flexible Method for Multi-Material Decomposition of Dual-Energy CT Images,IEEE Transactions on Medical Imaging,2013年09月16日,Vol. 33, No. 1,pp. 99-116
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00- 6/14
G01N 23/00-23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体内の物質を弁別する物質弁別装置であって、
三つ以上の物質の内のいずれかの物質を他の二つの物質に弁別することにより予め生成される補正データを記憶するデータ記憶部と、
複数のエネルギーレベルに分けられた前記被写体の放射線データが入力されるデータ入力部と、
異なるエネルギーレベルの放射線データと前記補正データとを用いて、前記三つ以上の物質の内の二つの物質に弁別する二物質弁別を繰り返すことによって前記被写体内を前記三つ以上の物質に弁別する弁別処理部を備えることを特徴とする物質弁別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物質弁別装置であって、
弁別される物質数がNであるとき、前記弁別処理部が繰り返す二物質弁別の回数がN-1以上であることを特徴とする物質弁別装置。
【請求項3】
請求項1に記載の物質弁別装置であって、
前記放射線データは前記被写体の投影データであることを特徴とする物質弁別装置。
【請求項4】
請求項3に記載の物質弁別装置であって、
前記補正データはエネルギーレベル毎及び放射線検出器の検出素子毎に取得されることを特徴とする物質弁別装置。
【請求項5】
請求項1に記載の物質弁別装置であって、
前記放射線データは前記被写体の画像データであることを特徴とする物質弁別装置。
【請求項6】
請求項5に記載の物質弁別装置であって、
前記補正データはエネルギーレベル毎に取得されることを特徴とする物質弁別装置。
【請求項7】
請求項1に記載の物質弁別装置を備えることを特徴とするPCCT装置。
【請求項8】
被写体内の物質を弁別する物質弁別方法であって、
三つ以上の物質の内のいずれかの物質を他の二つの物質に弁別することにより予め生成される補正データを記憶するデータ記憶ステップと、
複数のエネルギーレベルに分けられた前記被写体の放射線データが入力されるデータ入力ステップと、
異なるエネルギーレベルの放射線データと前記補正データとを用いて、前記三つ以上の物質の内の二つの物質に弁別する二物質弁別を繰り返すことによって前記被写体内を前記三つ以上の物質に弁別する弁別処理ステップを備えることを特徴とする物質弁別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光子計数型検出器等によって取得される複数のエネルギーレベルに分けられた放射線データを用いて被写体内の物質を弁別する物質弁別装置および物質弁別方法に関し、特に物質を弁別するときの演算量の低減に係る。
【背景技術】
【0002】
フォトンカウンティング(Photon Counting)方式を採用する検出器である光子計数型検出器を備えるPCCT(Photon Counting Computed Tomography)装置の開発が進められている。光子計数型検出器は、検出器に入射する放射線光子のエネルギーを計測できるので、PCCT装置は従来のCT装置よりも多くの情報を含んだ医用画像を提示できる。例えば複数のエネルギーレベルに分けられた画像であるエネルギーレベル画像や、複数の物質に弁別された画像である物質弁別画像が提示可能である。なお、物質弁別画像は診断に有用であるものの、弁別される物質数が多くなるにつれて画像ノイズが増加する。
【0003】
特許文献1には、弁別される物質数が多くなっても画像ノイズの増加を抑制するために、第一の物質と第二の物質に弁別された画像ノイズの少ない画像に、三つの物質に弁別された画像から得られる第三の物質の分布である画像を重畳することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2018-515160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1では、三つ以上の物質に弁別するときの演算量に対する配慮がなされていない。弁別される物質数が三つ以上である場合、二つの物質に弁別するときに比べて演算量が著しく増大するので、物質弁別画像の提示に長時間を要し診断を妨げかねない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、複数のエネルギーレベルに分けられた放射線データを用いて三つ以上の物質に弁別するときの演算量を低減可能な物質弁別装置および物質弁別方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、被写体内の物質を弁別する物質弁別装置であって、三つ以上の物質の内のいずれかの物質を他の二つの物質に弁別することにより予め生成される補正データを記憶するデータ記憶部と、複数のエネルギーレベルに分けられた前記被写体の放射線データが入力されるデータ入力部と、異なるエネルギーレベルの放射線データと前記補正データとを用いて、前記三つ以上の物質の内の二つの物質に弁別する二物質弁別を繰り返すことによって前記被写体内を前記三つ以上の物質に弁別する弁別処理部を備えることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、被写体内の物質を弁別する物質弁別方法であって、三つ以上の物質の内のいずれかの物質を他の二つの物質に弁別することにより予め生成される補正データを記憶するデータ記憶ステップと、複数のエネルギーレベルに分けられた前記被写体の放射線データが入力されるデータ入力ステップと、異なるエネルギーレベルの放射線データと前記補正データとを用いて、前記三つ以上の物質の内の二つの物質に弁別する二物質弁別を繰り返すことによって前記被写体内を前記三つ以上の物質に弁別する弁別処理ステップを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のエネルギーレベルに分けられた放射線データを用いて三つ以上の物質に弁別するときの演算量を低減可能な物質弁別装置および物質弁別方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】物質弁別装置の全体構成を示す図である。
図2】医用画像撮影装置の一例であるPCCT装置の全体構成を示す図である。
図3】複数のエネルギーレベルに分けられたX線の一例を示す図である。
図4】実施例1の機能ブロックの一例を示す図である。
図5】実施例1の補正データを作成する処理の流れの一例を示す図である。
図6】実施例1の補正データの作成に用いる計測物質の一例を示す図である。
図7】実施例1の補正データの一例を示す図である。
図8】実施例1の物質弁別の処理の流れの一例を示す図である。
図9】実施例2の補正データを作成する処理の流れの一例を示す図である。
図10】実施例2の補正データの作成に用いる計測ファントムの一例を示す図である。
図11】実施例2の補正データの一例を示す図である。
図12】実施例2の物質弁別の処理の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明に係る物質弁別装置及び物質弁別方法の実施例について説明する。なお、以下の説明及び添付図面では、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、放射線がX線である例について述べる。
【実施例1】
【0012】
図1は物質弁別装置1のハードウェア構成を示す図である。物質弁別装置1は、CPU(Central Processing Unit)2、メモリ3、記憶装置4、ネットワークアダプタ5がシステムバス6によって信号送受可能に接続されて構成される。また物質弁別装置1は、ネットワーク9を介して医用画像撮影装置10や医用画像データベース11と信号送受可能に接続されるとともに、表示装置7と入力装置8が接続される。ここで、「信号送受可能に」とは、電気的、光学的に有線、無線を問わずに、相互にあるいは一方から他方へ信号送受可能な状態を示す。
【0013】
CPU2は、各構成要素の動作を制御する装置である。CPU2は、記憶装置4に格納されるプログラムやプログラム実行に必要なデータをメモリ3にロードして実行し、複数のエネルギーレベルに分けられたX線データから物質を弁別する。メモリ3は、CPU2が実行するプログラムや演算処理の途中経過を記憶するものである。記憶装置4は、CPU2が実行するプログラムやプログラム実行に必要なデータを格納する装置であり、具体的にはHHD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid state Drive)等である。ネットワークアダプタ5は、物質弁別装置1をLAN、電話回線、インターネット等のネットワーク9に接続するためのものである。CPU2が扱う各種データはLAN(Local Area Network)等のネットワーク9を介して物質弁別装置1の外部と送受信されても良い。
【0014】
表示装置7は、物質弁別装置1の処理結果等を表示する装置であり、具体的には液晶ディスプレイ等である。入力装置8は、操作者が物質弁別装置1に対して操作指示を行う操作デバイスであり、具体的にはキーボードやマウス、タッチパネル等である。マウスはトラックパッドやトラックボール等の他のポインティングデバイスであっても良い。
【0015】
医用画像撮影装置10は、被写体の断層画像等の医用画像を取得する装置である。医用画像撮影装置10は、例えば複数のエネルギーレベルに分けられたX線データを取得するPCCT(Photon Counting Computed Tomography)装置であり、図2を用いて後述する。医用画像データベース11は、医用画像撮影装置10によって取得された複数のエネルギーレベルに分けられたX線データ等を記憶するデータベースシステムである。
【0016】
図2を用いて医用画像撮影装置10の一例であるPCCT装置100の全体構成を説明する。PCCT装置100は、入出力部200と撮影部300と統括制御部400を備える。
【0017】
入出力部200は、入力装置210とモニタ220を有する。入力装置210は操作者が撮影条件等を入力するときに用いられる装置であり、例えばマウスやキーボードである。モニタ220は入力された撮影条件等が出力される表示装置であり、タッチパネル機能を有する場合は入力装置210としても用いられる。
【0018】
撮影部300は、被写体101の投影データを様々な投影角度で取得するために、X線源310、X線検出器320、ガントリ330、テーブル102、および撮影制御部340を備える。なお取得される投影データは、複数のエネルギーレベルに分けられる。
【0019】
X線源310はX線を被写体101に照射する装置である。X線源310と被写体101との間にはコリメータ311が備えられる。コリメータ311は、被写体101に照射されるX線のz方向の長さを調節する装置である。
【0020】
X線検出器320は被写体101で散乱せずに透過したX線である直接線を検出する装置であり、複数の検出素子321を有する。検出素子321は、X線源310のX線発生点から等距離、例えば1000mmの距離に1000個配置される。検出素子321はX線を検出する素子であり、一つの素子に入射するX線の量に応じた電気信号を出力する。検出素子321はxy面に配列され、例えば0.5mm角のサイズを有する。検出素子321は、シンチレータ素子とフォトダイオード素子を組み合わせた間接型検出素子でも良いし、CdTeに代表される半導体検出素子であっても良い。間接型検出素子では、入射するX線によってシンチレータ素子が蛍光を発し、その蛍光がフォトダイオード素子で電気信号に変換される。
【0021】
検出素子321は、入射するX線を図3に示すように、複数のエネルギーレベルに分けて検出する。図3には、T1~T2、T2~T3、T3~T4、T4~T5、T5~の五つのエネルギーレベルに分けられて検出されるX線が、Bin1、Bin2、Bin3、Bin4、Bin5として示される。なお、複数のエネルギーレベルに分けられて検出されたX線から、様々な組み合わせのエネルギーレベルのX線が算出されても良い。例えば、Bin1、Bin2、Bin3、Bin4、Bin5のX線強度から、Bin1+Bin2のX線強度とBin3+Bin4+Bin5のX線強度とが算出されても良い。
【0022】
図2の説明に戻る。ガントリ330の中央には、被写体101が載置されるテーブル102を配置するための円形の開口部331が設けられる。開口部331の直径は例えば700mmである。ガントリ330内には、X線源310とX線検出器320を搭載し、X線源310とX線検出器320を被写体101の周りで回転させる回転板332が備えられる。テーブル102は、ガントリ330に対する被写体101の位置を調整するためにz方向に移動する。
【0023】
撮影制御部340は、X線制御部341、ガントリ制御部342、テーブル制御部343、検出器制御部344を有する。X線制御部341はX線源310に印加される電圧等を制御する。ガントリ制御部342は、回転板332の回転を制御し、例えば1.0s/回で回転板332を回転させる。検出器制御部344は、X線検出器320によるX線の検出を制御し、例えば0.4度/回でX線検出器320にX線を検出させる。テーブル制御部343は、テーブル102の移動を制御する。
【0024】
統括制御部400は、CPU401、メモリ402、記憶装置403を有し、X線制御部341、ガントリ制御部342、テーブル制御部343、検出器制御部344を制御するともに、X線検出器320によって取得された投影データ等に様々な処理を施す。例えば、入力装置210にて設定された撮影条件に従って取得された投影データから断層画像を再構成する処理を統括制御部400が実行する。断層画像はエネルギーレベル毎に再構成されても良い。また再構成された断層画像や再構成処理に用いられた投影データは、モニタ220に表示されたり、記憶装置403に格納されたりし、エネルギーレベル毎に扱われても良い。
【0025】
なお統括制御部400は、物質弁別装置1としても機能させられる。その際、CPU401はCPU2に、メモリ402はメモリ3に、記憶装置403は記憶装置4にそれぞれ対応する。
【0026】
図4を用いて本実施例の要部について説明する。なおこれらの要部は、専用のハードウェアで構成されても良いし、CPU2上で動作するソフトウェアで構成されても良い。以降の説明では本実施例の要部がソフトウェアで構成された場合について説明する。本実施例の要部の説明に先立ち、複数のエネルギーレベルに分けられた投影データから三つの物質を弁別するときに用いられる式について説明する。
【0027】
複数のエネルギーレベルに分けられた投影データP(E)は、物質A、物質B、物質Cの線減弱係数μ(E)、μ(E)、μ(E)を用いることにより次式で表される。
【0028】
P(E)=-μ(E)x-μ(E)x-μ(E)x … (1)
ここで、EはX線のエネルギー、x、x、xは投影線上での各物質の長さである。
【0029】
物質弁別とは投影データP(E)から各物質の長さx、x、xを求めることである。物質弁別される物質数の増加にともない、物質数に応じたエネルギーレベル数の投影データが必要になり、三つ以上の物質を一度に弁別するときの演算量は著しく増大する。そこで本実施例では演算量を低減するために、二つの物質に弁別する処理である二物質弁別を繰り返すことによって三つ以上の物質に弁別する。二物質弁別の演算量は、一度に三つ以上の物質に弁別するときの演算量よりも少なく、二物質弁別が繰り返されてもトータルの演算量を低減できる。以降で、物質A、物質B、物質Cの三つの物質に弁別する場合を例として、二物質弁別に用いられる式を導出する。
【0030】
まず、式(1)に係数α(E)を導入してμ(E)xの項を書き換えることにより、二物質弁別の形式の次式を得る。
【0031】
P(E)=-μ(E)(x+(α(E)μ(E)/μ(E))x
-μ(E)(x+((1-α(E))μ(E)/ μ(E))x) … (2)
式(2)と同様に、式(1)に係数β(E)を導入してμ(E)xの項を、係数γ(E) を導入してμ(E)xの項を書き換えることにより次式を得る。
【0032】
P(E)=-μ(E)(x+(β(E)μ(E)/μ(E))x
-μ(E)(x+((1-β(E))μ(E)/ μ(E))x) … (3)
P(E)=-μ(E)(x+(γ(E)μ(E)/μ(E))x
-μ(E)(x+((1-γ(E))μ(E)/ μ(E))x) … (4)
一方、投影データP(E)から物質Aと物質Bを弁別する場合、投影線上での物質A、物質Bの長さをXAB-A、XAB-Bとすると次式が成り立つ。
【0033】
P(E)=-μ(E)XAB-A-μ(E)XAB-B … (5)
式(5)と同様に、投影データP(E)から物質Bと物質Cを弁別する場合や、物質Cと物質Aを弁別する場合、次式が成り立つ。なおXBC-B、XBC-Cは物質Bと物質Cに弁別するときの投影線上での物質B、物質Cの長さ、XCA-C、XCA-Aは物質Cと物質Aに弁別するときの投影線上での物質C、物質Aの長さである。
【0034】
P(E)=-μ(E)XBC-B-μ(E)XBC-C … (6)
P(E)=-μ(E)XCA-C-μ(E)XCA-A … (7)
そして、式(2)と式(5)、式(3)と式(6)、式(4)と式(7)の各項を対比することにより次式が得られる。
【0035】
AB-A=x+(α(E)μ(E)/μ(E))x … (8)
AB-B=x+((1-α(E))μ(E)/ μ(E))x … (9)
BC-B=x+(β(E)μ(E)/μ(E))x … (10)
BC-C=x+((1-β(E))μ(E)/ μ(E))x … (11)
CA-C=x+(γ(E)μ(E)/μ(E))x)… (12)
CA-A= x+((1-γ(E))μ(E)/ μ(E))x … (13)
ここで、物質C単体の投影データP(E)を異なるエネルギーレベルEとEにおいて計測した投影データP(E)とP(E)を、式(5)に代入することにより得られる次の連立方程式を解くことにより、XAB-AとXAB-Bが算出される。
【0036】
(E)=-μ(E) XAB-A-μ(E)XAB-B … (14)
(E)=-μ(E) XAB-A-μ(E)XAB-B … (15)
なおμ(E)とμ(E)には、既知の長さの物質A、物質Bに対する投影データP(E)、P(E)を用いて算出した値や、NIST(National Institute of Standards and Technology)に公開される理論値が用いられる。なお、エネルギーレベルがT1~T2のような範囲である場合、中央値(T1+T2)/2における線減弱係数や、T1~T2でのエネルギースペクトルから求められる平均値における線減弱係数が用いられる。
【0037】
また長さxが既知の物質C単体の投影データP(E)が計測される場合、式(14)、式(15)の連立方程式から算出されるXAB-Aとx=0を式(8)に代入することにより、α(E)が求められる。求められたα(E)は補正データとして記憶装置4に格納される。なお式(9)においても、投影データP(E)から算出されるXAB-Bとx=0を代入することにより、α(E)が求められる。
【0038】
そしてα(E)と同様に、長さxが既知の物質B単体の投影データP(E)や長さxが既知の物質A単体の投影データP(E)と、式(10)~式(13)を用いることにより、β(E)やγ(E)が求められ、補正データとして記憶装置4に格納される。
【0039】
α(E)、β(E)、γ(E)が定められた式(8)~式(13)は、被写体101の投影データP(E)の二物質弁別の結果が代入されることにより、被写体101内を三つの物質に弁別する処理に使用できる。例えばXAB-Aが式(8)に、XAB-Bが式(9)に、XCA-Cが式(12)にそれぞれ代入されることよって長さx、x、xに関する連立方程式が得られ、連立方程式から長さx、x、xが求められることにより被写体101内が三つの物質に弁別される。なお、x、x、xに関する連立方程式において、いずれかのエネルギーレベルを他と異なるエネルギーレベルとする。例えば、式(8)と式(9)ではエネルギーレベルEとし、式(12)ではエネルギーレベルEとする。
【0040】
図4の説明に戻る。本実施例は、データ入力部411、弁別処理部412を備える。また記憶装置4には、PCCT装置100で取得された複数のエネルギーレベルに分けられた投影データや補正データα(E)、β(E)、γ(E)が記憶される。以下、各構成部について説明する。
【0041】
データ入力部411には、被写体101から得られる複数のエネルギーレベルに分けられた投影データが入力される。データ入力部411は、複数のエネルギーレベルに分けられた投影データをPCCT装置100から取得しても良いし、記憶装置4や医用画像データベース11等に格納される投影データを読み出しても良い。データ入力部411に入力された被写体101の投影データは弁別処理部412に送信される。
【0042】
弁別処理部412は、データ入力部411から受信した被写体101の投影データと記憶装置4に記憶される補正データとを用いて、二つの物質に弁別する処理を繰り返すことによって被写体101内を三つ以上の物質に弁別する。弁別処理部412が使用する補正データは、厚さと材質が既知の単一物質を用いて予め作成される。
【0043】
図5を用いて、本実施例の補正データを作成する処理の流れの一例について説明する。なお、図5では、三つの物質の弁別に用いられる補正データを作成する場合について説明する。
【0044】
(S501)
材質及び厚さが既知の三つの物質、例えばアルミニウム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリルの投影データがPCCT装置100によって計測される。これらの物質以外にも、水やカルシウム等の人体構成物質や、ヨード造影剤やインプラントに用いられるチタン等の人体内に入れられる物質が計測されても良い。さらにkエッジイメージングを行うために、金等の造影剤が計測されても良い。なお計測される物質が液体である場合、液体を封入する密閉容器が用いられるので、密閉容器の影響が補正されることが好ましい。
【0045】
図6に、投影データが計測される物質である計測物質103の一例を示す。計測物質103は、例えば厚さ5cmの平板であり、開口部331内に配置される。平板の厚さは物質毎に変更されても良い。X線源310とX線検出器320との間には、計測物質103以外は配置されないことが好ましい。計測物質103が開口部331内に配置された状態で回転板332を回転させずに、複数のエネルギーレベルに分けられた投影データが計測される。計測物質103が平板である場合、各検出素子321の投影線上の長さは、投影線と平板とがなす角度に応じて異なるので、各検出素子321において適宜補正される。
【0046】
また各検出素子321の投影線上の長さが等しくなるように、湾曲させた形状の計測物質103が用いられても良い。さらに、計算機上の仮想の計測物質を用いたモンテカルロシミュレーションによって、材質と厚さが既知である単一物質の投影データが取得されても良い。モンテカルロシミュレーションを用いる場合、計測物質として水のような液体を単体で扱うことができる。
【0047】
(S502)
物質弁別装置1はS501で計測された投影データを、計測された物質以外の二つの物質に弁別し、補正データを作成する。具体的な手順を、アルミニウムの投影データPアルミニウム(E)をPTFEとアクリルに弁別する場合について説明する。なお式(1)~式(15)において、物質AをPTEF、物質Bをアクリル、物質Cをアルミニウムとする。
【0048】
まず既知の厚さのアルミニウム単体について計測された複数のエネルギーレベルの投影データPアルミニウム(E)とPアルミニウム(E)を式(5)に代入して、式(14)と式(15)のような連立方程式を得る。次に得られた連立方程式から、Pアルミニウム(E)をPTFEとアクリルに弁別したときの長さXPTFEアクリル-PTFEとXPTFEアクリル-アクリルをそれぞれ算出する。なおμPTFE(E)やμアクリル(E)は、別途計測されるPTFE単体やアクリル単体の投影データPPTFE(E)やPアクリル(E)から算出される。そして算出されたXPTFEアクリル-PTFE、xPTFE=0、アルミニウム単体の厚さを式(8)に代入することにより、α(E)が求められ、補正データとして記憶装置4に格納される。なおμアルミニウム(E)はPアルミニウム(E)から算出される。
【0049】
そして、アルミニウム単体の投影データPアルミニウム(E)から補正データα(E)が求められる場合と同様に、PTFE単体の投影データPPTFE(E)から補正データβ(E)が、アクリル単体の投影データPアクリル(E)から補正データγ(E)が各々求められる。補正データα(E)、β(E)、γ(E)は、エネルギーレベル毎及び検出素子321毎に求められ、図7に示すテーブルのように格納される。
【0050】
以上の処理の流れによって、三つの物質の内のいずれかの物質を他の二つの物質に弁別することにより、三つの物質に弁別するときに用いられる補正データが生成される。なお弁別される物質数は、図5にて説明した三つに限定されず四つ以上に拡張可能であり、その数に応じて補正データの数も拡張される。
【0051】
図8を用いて、被写体101の投影データから三つの物質を弁別する本実施例の処理の流れの一例について説明する。
【0052】
(S801)
PCCT装置100の統括制御部400は、被写体101を撮影するための条件である撮影条件を受け付ける。撮影条件は、操作者によって入力装置210から入力され、例えば、X線源310の管電流と管電圧、コリメータ311の開き幅、被写体101の体軸方向における撮影範囲、回転板332の回転速度等が含まれる。また、予め登録された複数の撮影条件の中の一つが選択されることによって、撮影条件が設定されても良い。
【0053】
(S802)
統括制御部400が、S801にて設定された撮影条件に従って、X線制御部341、ガントリ制御部342、テーブル制御部343、検出器制御部344を制御することによって、被写体101の撮影が実行される。具体的な撮影手順について説明する。
【0054】
まず被写体101がテーブル102上に載置される。その後、統括制御部400がテーブル制御部343にテーブル102の移動を指示することにより、ガントリ330の撮影位置に被写体101が配置される。被写体101の配置が完了した後、統括制御部400がガントリ制御部342に回転板332の回転を指示することにより、X線源310とX線検出器320が被写体101の周りを回転し始める。
【0055】
回転板332が定速回転に達すると、統括制御部400がX線制御部341にX線源310からのX線照射を指示するとともに、検出器制御部344にX線検出器320によるX線検出を指示する。X線検出器320によって検出された検出データは複数のエネルギーレベルに分けられて記憶装置403に格納される。さらに、統括制御部400がテーブル制御部343にテーブル102の移動を指示することによって、S801にて設定された撮影範囲において、様々な投影角度からの投影データが取得される。
【0056】
撮影範囲の撮影が終了すると、統括制御部400はX線源310からのX線照射とX線検出器320によるX線検出を停止させるとともに、テーブル102を所定の位置に戻す。
【0057】
以上の撮影手順により、被写体101の投影データが様々な投影角度から複数のエネルギーレベルに分けられて取得され、記憶装置4に格納される。なお、記憶装置4や医用画像データベース11に格納された投影データを用いて物質弁別がなされる場合は、S801とS802の処理は実行されなくても良い。
【0058】
(S803)
データ入力部411に、複数のエネルギーレベルに分けられて取得された投影データが入力される。データ入力部411に入力される被写体101の投影データP被写体(E)は、S802にて取得されたデータでも良いし、予め記憶装置4等に格納されたデータでも良い。データ入力部411は、入力された投影データP被写体(E)を弁別処理部412に送信する。
【0059】
弁別処理部412は、投影データP被写体(E)に対して二物質弁別を複数回実施し、二物質弁別によって得られたデータを用いて、三つの物質の投影線上の各長さの算出、すなわち三物質弁別を実行する。具体的な手順を、三つの物質がアルミニウム、PTFE、アクリルである場合を例として説明する。なお式(1)~式(15)において、物質AをPTEF、物質Bをアクリル、物質Cをアルミニウムとする。
【0060】
まず式(5)~(7)の中の少なくとも二つを用いて投影データP被写体(E)に対して二物質弁別を少なくとも二回実行する。例えば、P被写体(E)に対して、式(5)を用いてPTFEとアクリルに弁別したときの各長さXPTFEアクリル-PTFEとXPTFEアクリル-アクリルを算出し、式(7)を用いてアルミニウムとPTFEに弁別したときの長さXアルミニウムPTFE-アルミニウムとXアルミニウムPTFE-PTFEを算出する。
【0061】
次に式(8)にXPTFEアクリル-PTFEと補正データα(E)を、式(9)にXPTFEアクリル-アクリルと補正データα(E)を、式(12)にXアルミニウムPTFE-アルミニウムと補正データγ(E)を、それぞれ代入することによって、長さxPTFE、xアクリル、xアルミニウムに関する連立方程式を得る。補正データα(E)、γ(E)は記憶装置4から読み出され、連立方程式に含まれるμPTFE(E)、μアクリル(E)、μアルミニウム(E)は、補正データの作成時に取得されたPPTFE(E)、Pアクリル(E)、Pアルミニウム(E)から算出されても良いし、理論値が用いられても良い。ただし、連立方程式の中の少なくとも一つの式は、他の式とは異なるエネルギーレベルが用いられる。
【0062】
そして得られた連立方程式から長さxPTFE、xアクリル、xアルミニウムが求められることよって、三物質弁別がなされる。
【0063】
以上の手順が実行されることにより、投影角度毎の各投影データがPTFE、アクリル、アルミニウムの三つの物質に弁別される。弁別された結果である物質毎の投影データは、記憶装置4に格納される。
【0064】
なお、P被写体(E)に対する二物質弁別として、式(6)を用いたアクリルとアルミニウムとの弁別が実行されても良い。式(6)が用いられた場合は、Xアクリルアルミニウム-アクリルとXアクリルアルミニウム-アルミニウムが算出されるので、三物質弁別のための連立方程式には式(10)と式(11)の少なくとも一方が用いられる。
【0065】
(S804)
物質弁別装置1またはPCCT装置100の統括制御部400は、S803にて弁別された物質毎の投影データを用いて物質毎の断層画像を再構成する。再構成には、FeldKamp法や逐次近似再構成法が用いられる。再構成された物質毎の断層画像は、表示装置7等に表示され、被写体101の診断等に用いられる。また物質毎の断層画像は、互いに重畳されて表示されても良い。
【0066】
以上説明した処理の流れにより、複数のエネルギーレベルに分けられて取得された被写体101の投影データから、三つの物質に弁別した物質毎の投影データを得ることができる。なお本実施例の処理の流れでは、比較的演算量が少ない二物質弁別が用いられるので、三つの物質に弁別するときの演算量を低減できる。その結果、三物質弁別に要する演算時間を従来の約三分の一に短縮できた。
【0067】
なお弁別される物質数は、図8にて説明した三つに限定されず四つ以上に拡張可能であり、その数に応じて連立方程式の数も拡張される。また弁別される物質数をNとするときS803にて実行される二物質弁別の回数はN-1回以上であれば良い。二物質弁別の回数を制限することにより演算量をさらに低減できる。
【実施例2】
【0068】
実施例1では被写体101の投影データを三つ以上の物質に弁別することについて説明した。本実施例では、被写体101の画像データを三つ以上の物質に弁別することについて説明する。なお、実施例1と同じ機能を有する構成物については同じ符号を付与して説明を省略する。
【0069】
図9を用いて、本実施例の補正データを作成する処理の流れの一例について説明する。なお、図9では、三つの物質の弁別に用いられる補正データを作成する場合について説明する。
【0070】
(S901)
材質及び大きさが既知の三つの物質、例えばアルミニウム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリルの投影データがPCCT装置100によって計測される。これらの物質以外にも、水やカルシウム等の人体構成物質や、ヨード造影剤やインプラントに用いられるチタン等の人体内に入れられる物質が計測されても良い。さらにkエッジイメージングを行うために、金等の造影剤が計測されても良い。
【0071】
図10に、投影データが計測される物質のファントムである計測ファントム104の一例を示す。計測ファントム104は、例えば直径5cmの円柱形状のファントムであり、開口部331の中心に配置される。円柱の直径は物質毎に変更されても良い。X線源310とX線検出器320との間には、計測ファントム104以外は配置されないことが好ましい。計測ファントム104が開口部331の中心に配置された状態で回転板332を回転させながら、複数のエネルギーレベルに分けられた投影データが計測される。
【0072】
また、計算機上の仮想の計測ファントムを用いたモンテカルロシミュレーションによって、材質と大きさが既知である単一物質の投影データが取得されても良い。モンテカルロシミュレーションを用いる場合、計測ファントムとして水のような液体を単体で扱うことができる。
【0073】
(S902)
物質弁別装置1またはPCCT装置100の統括制御部400は、S901にて取得された投影データを用いて物質毎の断層画像を再構成する。再構成には、FeldKamp法や逐次近似再構成法が用いられる。
【0074】
(S903)
物質弁別装置1はS902で再構成された断層画像の画素値を、S901で計測された物質以外の二つの物質に弁別し、補正データを作成する。断層画像の画素値pについては、式(1)の代わりとして次式が成り立つ。
【0075】
(p+1000)μ(E)/1000
=μ(E)p+μ(E)p+μ(E)p … (16)
ここでμ(E)は水の線減弱係数、μ(E)、μ(E)、μ(E)は物質A、物質B、物質Cの線減弱係数、p、p、pは物質A、物質B、物質Cの断層画像の画素値である。
【0076】
式(1)と式(16)の対比から、P(E)を(p+1000)μ(E)/1000に、x、x、xをp、p、pに各々読み替えることにより、投影データの場合と同様に、式(5)~式(13)を用いて補正データα(E)、β(E)、γ(E)が求められる。補正データα(E)、β(E)、γ(E)はエネルギーレベル毎に求められ、図11に示すテーブルのように格納される。
【0077】
以上の処理の流れによって、三つの物質の内のいずれかの物質を他の二つの物質に弁別することにより、三つの物質に弁別するときに用いられる補正データが生成される。なお弁別される物質数は、図9にて説明した三つに限定されず四つ以上に拡張可能であり、その数に応じて補正データの数も拡張される。
【0078】
図12を用いて、被写体101の画像データから三つの物質を弁別する本実施例の処理の流れの一例について説明する。
【0079】
(S1201)
PCCT装置100の統括制御部400は、被写体101を撮影するための条件である撮影条件を、S801と同様に、受け付ける。
【0080】
(S1202)
統括制御部400が、S1201にて設定された撮影条件に従って、X線制御部341、ガントリ制御部342、テーブル制御部343、検出器制御部344を制御することによって、S802と同様に、被写体101の撮影が実行される。本ステップにより、複数のエネルギーレベルに分けられた被写体101の投影データが取得される。
【0081】
(S1203)
物質弁別装置1またはPCCT装置100の統括制御部400は、S1202にて取得された投影データを用いて被写体101の断層画像をエネルギーレベル毎に再構成する。再構成には、FeldKamp法や逐次近似再構成法が用いられる。
【0082】
(S1204)
データ入力部411に、エネルギーレベル毎に再構成された被写体101の断層画像が入力される。データ入力部411に入力される被写体101の断層画像は、S1203にて再構成された画像でも良いし、予め記憶装置4等に格納された画像でも良い。データ入力部411は、入力された被写体101の断層画像を弁別処理部412に送信する。
【0083】
弁別処理部412は、被写体101の断層画像の画素値に対して二物質弁別を複数回実施し、二物質弁別によって得られた画素値を用いて、三つの物質の画素値の算出、すなわち三物質弁別を実行する。式(1)と式(16)の対比から、P(E)を(p+1000)μ(E)/1000に、x、x、xをp、p、pに各々読み替えることにより、投影データの場合と同様の手順で三物質弁別できるので、詳細な説明を省略する。
【0084】
以上説明した処理の流れにより、複数のエネルギーレベルに分けられて取得された被写体101の断層画像から、三つの物質に弁別した物質毎の断層画像を得ることができる。なお本実施例の処理の流れでは、比較的演算量が少ない二物質弁別が用いられるので、三つの物質に弁別するときの演算量を低減できる。なお弁別される物質数は、図12にて説明した三つに限定されず四つ以上に拡張可能であり、その数に応じて連立方程式の数も拡張される。
【0085】
また投影データの物質弁別をする実施例1ではパイルアップやチャージシェアリングによるX線検出器320の非線形応答を物質弁別とともに逐次演算によって補正する必要があるのに対し、本実施例では非線形応答の補正と物質弁別を分離可能である。そのため、画像データの物質弁別をする本実施例は実施例1に比べて、物質弁別画像の提示に要する時間を短縮できる。
【0086】
以上、本発明の物質弁別装置及び物質弁別方法の実施例について説明した。なお、本発明の物質弁別装置及び物質弁別方法は上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、上記実施例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0087】
1:物質弁別装置、2:CPU、3:メモリ、4:記憶装置、5:ネットワークアダプタ、6:システムバス、7:表示装置、8:入力装置、10:医用画像撮影装置、11:医用画像データベース、100:PCCT装置、101:被写体、102:テーブル、103:計測物質、104:計測ファントム、200:入出力部、210:入力装置、220:モニタ、300:撮影部、310:X線源、311:コリメータ、320:X線検出器、321:検出素子、330:ガントリ、331:開口部、332:回転板、340:撮影制御部、341:X線制御部、342:ガントリ制御部、343:テーブル制御部、344:検出器制御部、400:統括制御部、401:CPU、402:メモリ、403:記憶装置、411:データ入力部、412:弁別処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12