(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】アルカリ金属除去方法及びアルカリ金属除去装置
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20230802BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20230802BHJP
C04B 7/38 20060101ALI20230802BHJP
B09B 101/30 20220101ALN20230802BHJP
B09B 101/77 20220101ALN20230802BHJP
【FI】
B09B3/40 ZAB
B09B3/70
C04B7/38
B09B101:30
B09B101:77
(21)【出願番号】P 2020049311
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 慶展
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 淳一
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 秀幸
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-104482(JP,A)
【文献】特開2004-059754(JP,A)
【文献】特開2004-155872(JP,A)
【文献】特開2017-122550(JP,A)
【文献】特開2013-013843(JP,A)
【文献】特開2000-300953(JP,A)
【文献】特開2020-157230(JP,A)
【文献】特開2002-274900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00-5/00
C04B 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス灰からアルカリ金属を除去する方法であって、
前記バイオマス灰を予熱する予熱処理工程と、
塩素含有廃棄物を熱分解して塩素を多量に含む塩素含有ガスを得る熱分解工程と、
予熱された前記バイオマス灰を前記塩素含有ガスの中で加熱してアルカリ金属塩化物を生成させる塩化焙焼工程と、
前記塩化焙焼工程で生成された前記アルカリ金属塩化物を水に溶解させて除去する水洗処理工程と、
前記予熱処理工程で排気された燃焼排ガスにガス処理剤を散布するガス処理剤散布工程と、
前記ガス処理剤が散布された前記燃焼排ガスを固気分離し、固気分離された固相を前記熱分解工程に供給する固気分離工程とを備え
、
前記予熱処理工程での熱源には、前記塩化焙焼工程から排出された燃焼排ガスを用いることを特徴とするアルカリ金属除去方法。
【請求項2】
前記予熱処理工程は、前記バイオマス灰を400℃以上の温度に予熱する工程であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ金属除去方法。
【請求項3】
前記バイオマス灰の大きさが、5mm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアルカリ金属除去方法。
【請求項4】
前記熱分解工程で得られた前記塩素含有ガスの全量を、前記塩化焙焼工程における燃焼バーナに燃焼ガスとして供給することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のアルカリ金属除去方法。
【請求項5】
前記塩素含有廃棄物は、自動車シュレッダーダストを含むことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のアルカリ金属除去方法。
【請求項6】
バイオマス灰からアルカリ金属を除去するための装置であって、
前記バイオマス灰を供給するためのバイオマス灰供給装置と、
前記バイオマス灰供給装置から供給された前記バイオマス灰を予熱するための予熱装置と、
塩素含有廃棄物を熱分解して塩素を多量に含む塩素含有ガスを生成するための熱分解装置と、
予熱された前記バイオマス灰と前記塩素含有ガスとを同時に加熱して塩化焙焼を生じさせるための塩化焙焼装置と、
塩化焙焼が生じたバイオマス灰を水洗する水洗装置と、
前記水洗装置から排出されたスラリーを固液分離してバイオマス灰のケーキを回収するための固液分離装置と、
前記予熱装置からの燃焼排ガスにガス処理剤を散布するためのガス処理剤散布装置と、
前記ガス処理剤が散布された前記燃焼排ガスを固気分離し、固気分離された固相を前記熱分解装置に供給するための固気分離装置とを備え
、
前記予熱装置での熱源には、前記塩化焙焼装置から排出された燃焼排ガスを用いることを特徴とするアルカリ金属除去装置。
【請求項7】
前記塩化焙焼装置がロータリーキルンであることを特徴とする請求項6に記載のアルカリ金属除去装置。
【請求項8】
前記予熱装置がサイクロンであることを特徴とする請求項7に記載のアルカリ金属除去装置。
【請求項9】
前記固液分離装置で回収された前記バイオマス灰のケーキをセメント製造設備に輸送するための第1の輸送装置を備えることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のアルカリ金属除去装置。
【請求項10】
前記熱分解装置で発生した前記塩素含有廃棄物の熱分解での残渣を、セメント製造設備に輸送するための第2の輸送装置を備えることを特徴とする請求項7~請求項9のいずれか1項に記載のアルカリ金属除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質バイオマスの燃焼灰をセメント原料等として有効利用するために、プラスチック等の塩素含有物とガラス片等の難燃物が混在してなる廃棄物を使用して、木質バイオマスの燃焼灰からアルカリ金属を除去するためのアルカリ金属除去方法及びアルカリ金属除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹木の幹や枝、切削チップ、おが粉、樹皮、木質ペレット、PKS(palm kernel shell)、建築廃材等の木質バイオマスについては、発電用ボイラ等の燃料とする技術開発に並行して、木質バイオマスの燃焼で発生する燃焼灰の飛灰(以後、「バイオマス灰」と称する場合がある。)の有効利用技術についても開発が進められている。
【0003】
バイオマス灰は、例えば石炭灰やごみ焼却灰等と比較するとアルカリ金属、特にカリウムの含有量が多いことが特徴である。そのため、例えば、多量に発生する石炭灰やごみ焼却灰の有効利用を可能にしているセメント原料化技術をバイオマス灰に適用する場合、セメントがアルカリ金属成分を忌避成分とするためにバイオマス灰からアルカリ金属を除去することが必要となる。さらに、木質バイオマス灰の飛灰からアルカリ金属が除去できれば、石炭灰(フライアッシュ)がそうであるように、木質バイオマス灰の飛灰をコンクリート混和材やセメント混合材とする用途開発等も可能になる。
【0004】
バイオマス灰の様なアルカリ金属を含有する粉末からアルカリ金属成分を除去する技術として、例えば、下記特許文献1には、平均粒径が20μm以下のアルカリ金属含有ガラス廃棄物の粉末と平均粒径が20mm以下の塩素含有樹脂廃棄物とを外熱式ロータリーキルンで350~400℃で熱処理した後、該熱処理物を水中に投入する、塩素含有樹脂廃棄物とアルカリ金属含有ガラス廃棄物の資源化方法が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、塩素含有廃棄物を200~800℃に加熱して塩素含有ガスを生成する熱分解工程と、該塩素含有ガスにアルカリ金属化合物とカルシウム化合物を添加し、これを400~1000℃に加熱又は保温して塩化アルカリ金属を含む生成物を生成する塩素置換工程とを含むことを特徴とする、廃棄物処理方法及びセメント原料製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-268000号公報
【文献】特開2004-59754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1及び前記特許文献2に記載される方法からは、バイオマス灰に含まれるアルカリ金属を、塩素含有廃棄物に含まれる塩素を用いて除去できる可能性が示唆される。
【0008】
しかしながら、バイオマス灰は数μm~数mmまでの広い粒度分布を有しており、又、含有するアルカリ金属量もバイオマス原料の種類やボイラの運転方法などで異なるため、それら特性値にばらつきの大きいバイオマス灰を、溶融させずに加熱して、脱アルカリ反応を生じさせるには検討の余地がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、バイオマス灰からアルカリ金属を安定的且つ効率的に除去して、セメント原料等として有効利用するための、アルカリ金属除去方法及びアルカリ金属除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のアルカリ金属除去方法は、バイオマス灰からアルカリ金属を除去する方法であって、前記バイオマス灰を予熱する予熱処理工程と、塩素含有廃棄物を熱分解して塩素を多量に含む塩素含有ガスを得る熱分解工程と、予熱された前記バイオマス灰を前記塩素含有ガスの中で加熱してアルカリ金属塩化物を生成させる塩化焙焼工程と、前記塩化焙焼工程で生成された前記アルカリ金属塩化物を水に溶解させて除去する水洗処理工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
これによれば、予熱処理工程によって温度を上げたバイオマス灰を塩化焙焼工程に提供できることによって、塩化焙焼工程における加熱環境が安定すると共に、塩化焙焼を生じる温度環境を長時間形成することができるので、バイオマス灰が含有するアルカリ金属と塩素含有ガス中の塩素を反応させて、アルカリ金属塩化物を安定して効率よく生成させることができる。このアルカリ金属塩化物を水に溶解させて除去することで、バイオマス灰からアルカリ金属を安定的且つ効率的に除去できる。
【0012】
また、本発明のアルカリ金属除去方法では、前記予熱処理工程は、前記バイオマス灰を400℃以上の温度に予熱する工程であることを特徴とする。
【0013】
これによれば、塩化焙焼工程におけるバイオマス灰の温度を塩化焙焼が生じる650℃~1000℃の温度域に安定化させることが迅速に容易となり、バイオマス灰中のアルカリ金属と塩素含有廃棄物由来の塩素とが反応する状態を簡便に得ることができる。この予熱温度が400℃未満の場合、バイオマス灰の温度が塩化焙焼の反応を生じる温度域に存する時間が短くなると共に、塩化焙焼工程におけるバイオマス灰の昇温の程度が大きくなるために温度環境に不安定さが生じてしまい、塩化焙焼が不安定になる。
【0014】
さらに、本発明のアルカリ金属除去方法では、前記バイオマス灰の大きさが、5mm以下であることを特徴とする。
【0015】
バイオマス灰の大きさが5mmよりも大きい場合、塩化焙焼工程における塩化焙焼の反応速度が低下する場合がある。なお、このバイオマス灰の大きさとは、篩いの目開きの大きさであって、大きさが5mm以下とは目開き5mmの篩いを通過することを言う。
【0016】
さらに、本発明のアルカリ金属除去方法では、前記熱分解工程で得られた前記塩素含有ガスの全量を、前記塩化焙焼工程における燃焼バーナに燃焼ガスとして供給することを特徴とする。
【0017】
これによれば、熱分解工程で発生して塩素含有ガスに含有されているタール、一酸化炭素、ダイオキシン類等が、650℃~1000℃の温度で燃焼されて無害化される。
【0018】
さらに、本発明のアルカリ金属除去方法では、前記塩素含有廃棄物は、自動車シュレッダーダスト(以後、「ASR」と称する。)を含むことを特徴とする。
【0019】
これによれば、プラスチック、ガラス、ゴム等の多種の小片部材の混在物であるASRを、セメント製造における代替原燃料として有効に利用することができる。
【0020】
本発明のアルカリ金属除去装置は、バイオマス灰からアルカリ金属を除去するための装置であって、前記バイオマス灰を供給するためのバイオマス灰供給装置と、前記バイオマス灰供給装置から供給された前記バイオマス灰を予熱するための予熱装置と、塩素含有廃棄物を熱分解して塩素を多量に含む塩素含有ガスを生成するための熱分解装置と、予熱された前記バイオマス灰と前記塩素含有ガスとを同時に加熱して塩化焙焼を生じさせるための塩化焙焼装置と、塩化焙焼が生じたバイオマス灰を水洗する水洗装置と、前記水洗装置から排出されたスラリーを固液分離してバイオマス灰のケーキを回収するための固液分離装置とを備えることを特徴とする。
【0021】
すなわち、本発明のアルカリ金属除去装置は、塩化焙焼装置において、予熱されたバイオマス灰と、塩素含有廃棄物を熱分解して生成させた塩素含有ガスとを一緒に加熱することで、バイオマス灰のアルカリ金属をアルカリ金属塩化物に効率的に変化させ、水洗装置でかかるアルカリ金属塩化物を溶解した後、固液分離装置でアルカリ金属が溶解している液相を分離することによって、バイオマス灰からアルカリ金属を安定的且つ効率的に除去できる。
【0022】
さらに、本発明のアルカリ金属除去装置は、前記予熱装置からの燃焼排ガスにガス処理剤を散布するためのガス処理剤散布装置と、前記ガス処理剤が散布された前記燃焼排ガスを固気分離し、固気分離された固相を前記熱分解装置に供給するための固気分離装置とを備えていてもよい。
【0023】
したがって、本発明のアルカリ金属除去装置は、燃焼排ガス中の塩化水素ガスを無害化し、回収された塩素成分をアルカリ金属除去のための塩素源として利用することができる。
【0024】
さらに、本発明のアルカリ金属除去装置では、前記塩化焙焼装置がロータリーキルンであることを特徴とする。
【0025】
したがって、塩化焙焼装置内のバイオマス灰は良好に撹拌されながら焼成雰囲気中の塩素と反応できるので、バイオマス灰中のアルカリ金属をアルカリ金属塩化物に効率的に変化させることが可能である。ここで、前記ロータリーキルンの燃焼方式は、熱分解装置からのタール、一酸化炭素、ダイオキシン類等を燃焼ガスとして用いて無害化する観点から内燃式が好ましい。
【0026】
さらに、本発明のアルカリ金属除去装置では、前記予熱装置がサイクロンであることを特徴とする。
【0027】
したがって、本発明のアルカリ金属除去装置は、前記ロータリーキルンからの燃焼排ガスをバイオマス灰の予熱用熱源として有効に活用することができる。なお、予熱装置を構成するサイクロンの基数は限定されず、一段式でも多段式であってもよい。
【0028】
さらに、本発明のアルカリ金属除去装置は、前記固液分離装置で回収された前記バイオマス灰のケーキをセメント製造設備に輸送するための第1の輸送装置を備えていてもよい。
【0029】
したがって、本発明のアルカリ金属除去装置は、アルカリ金属を除去したバイオマス灰をセメントの原料として利用することができる。
【0030】
さらに、本発明のアルカリ金属除去装置は、前記熱分解装置で発生した前記塩素含有廃棄物の熱分解での残渣を、セメント製造設備に輸送するための第2の輸送装置を備えていてもよい。
【0031】
したがって、本発明のアルカリ金属除去装置は、塩素を除去した塩素含有廃棄物をセメントの原燃料として利用することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明によれば、バイオマス灰が含有するアルカリ金属を、塩素含有廃棄物の塩素を用いて効率的に除去できるアルカリ金属除去方法及びアルカリ金属除去装置を提供することができ、バイオマス灰をセメント原料等として有効利用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明に係るアルカリ金属除去方法の一実施形態の手順を示すフロー図である。
【
図2】
図1に示す実施形態における、アルカリ金属除去装置を表わす全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明が適用されるバイオマス灰は、アルカリ金属(Na,K)を塩化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩ガラスとして含有し、R2O換算(R2O=Na2O+0.658×K2O)で3質量%~50質量%程度含んでいる。
【0035】
本発明のアルカリ金属除去方法によれば、バイオマス灰に含まれるアルカリ金属成分の濃度を、上記R2O換算で1.0質量%以下、より典型的には0.8質量%以下にまで低減することができるので、バイオマス灰をセメント原料等として有効利用することが可能となる。なお、バイオマス灰中のアルカリ金属の濃度は、周知の方法で測定することができ、例えば、JIS R 5204「セメントの蛍光X線分析方法」に準拠した方法などが好ましく例示される。
【0036】
塩素含有廃棄物として利用が可能とされる自動車シュレッダーダスト(ASR)とは、使用済みの自動車からエンジンなどの部品を取り外し、破砕(シュレッディング)して有用金属を回収した残渣であり、プラスチック、ガラス、ゴム等の小破片が混在している。
【0037】
以下、本発明についてより具体的に図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、これら図面で説明する態様に限定されるものではない。
【0038】
図1は、本発明に係るアルカリ金属除去方法の手順を模式的に示すフローチャートである。また、
図2は、
図1に示すアルカリ金属除去方法を実施する装置(以下、「アルカリ金属除去装置」と称する。)の一例を模式的に示す全体構成図である。なお、
図2において、バイオマス灰等の固体の流れを矢印付きの実線で示し、空気又は排ガスの流れを矢印付き破線で示している。
【0039】
図1に示されるアルカリ金属除去方法は、粉末のバイオマス灰BA1を予熱する予熱処理工程ST1と、塩素含有廃棄物PLを熱分解して塩素を多量に含む塩素含有ガスG1を得る熱分解工程ST2と、予熱されたバイオマス灰BA2を塩素含有ガスG1の中で加熱してバイオマス灰BA2が含有するアルカリ金属をアルカリ金属塩化物に変化させる塩化焙焼工程ST3と、塩化焙焼工程ST3で生成されたアルカリ金属塩化物を水に溶解させて除去する水洗処理工程ST4とを備えるものである。以下、
図1に示す各工程での処理内容につき、適宜
図2を参照しながら詳述する。
【0040】
予熱処理工程ST1においては、受け入れたバイオマス灰BA1の温度が500℃~700℃となるように予熱する。この予熱処理を効率的に行うために、予熱処理するバイオマス灰BA1の粒径は、必要に応じて5mm以下、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下に事前に粉砕するのがよい。なお、バイオマス灰の粒径とは、バイオマス灰が通過する篩い目の大きさの最小値を指す。
【0041】
この予熱処理工程ST1での熱源には、次工程の塩化焙焼工程ST3から排出された燃焼排ガスG2の顕熱を用いる。この燃焼排ガスG2の温度は、
図2のサイクロン3bの入り口部において好ましくは800℃以上、より好ましくは900℃以上である。燃焼排ガスG2の温度がこの温度であると、熱交換によってバイオマス灰BA2の温度を500℃~700℃に予熱することができる。
【0042】
500℃以上に予熱されたバイオマス灰BA2は、塩化焙焼工程ST3に送られる。
【0043】
熱分解工程ST2においては、受け入れたASR等の塩素含有廃棄物PLをガス化して、塩素含有ガスG1を得る。この塩素含有廃棄物PLのガス化では、酸素濃度が3体積%以下、好ましくは1体積%以下の焼成雰囲気下で、塩素含有廃棄物PLを200℃~800℃に、好ましくは350℃~700℃に加熱して、塩素含有廃棄物PLに含まれる塩素を塩化水素(HCl)ガスとして放出させる。
【0044】
熱分解工程ST2で熱分解される塩素含有廃棄物PLは、塩素を1.2質量%以上含有するものを有効に利用することができる。ここで、塩素含有廃棄物PL中の塩素の濃度は、周知の方法で測定することができ、例えば、JIS K 7229「塩素含有樹脂中の塩素の定量方法」、又は、簡易的にはJIS R 5204「セメントの蛍光X線分析方法」に準拠した方法などが好ましく例示される。
【0045】
熱分解工程ST2に供される塩素含有廃棄物PLの大きさは、熱分解反応を効率的に行う観点から、50mm以下、好ましくは30mm以下、より好ましくは10mm以下である。なお、塩素含有廃棄物の大きさとは、塩素含有廃棄物が通過する篩い目の大きさの最小値を指す。
【0046】
熱分解工程ST2で発生した塩化水素ガスは、その他のガス成分と共に塩素含有ガスG1として、温度を保持したまま塩化焙焼工程ST3に送られる。この塩素含有ガスG1中の塩素濃度は、好ましくは500ppm~1000ppm、より好ましくは500ppm~800ppmである。なお、塩素含有ガス中の塩素濃度とは、JIS K 0107「排ガス中の塩化水素分析方法」に準拠して測定した値である。
【0047】
熱分解工程ST2で発生した塩化水素ガスは、その他のガス成分と共に塩素含有ガスG1として、温度が低下しないようにして塩化焙焼工程ST3に送られる。そして、塩化焙焼工程ST3では、大気A1を用いた内燃バーナ51(燃焼バーナに相当)の補助ガスとして塩素含有ガスG1を用いる。
【0048】
これによって、塩素含有ガスG1の温度を上げると同時に、塩素含有ガスG1が含有していたタール、一酸化炭素、ダイオキシン類等を燃焼して無害化する。
【0049】
予熱処理工程ST1及び熱分解工程ST2に続く塩化焙焼工程ST3においては、バイオマス灰BA2と塩素含有ガスG1を一緒に加熱して、バイオマス灰BA2が含有するアルカリ金属と塩素含有ガスG1中の塩素を反応させて、アルカリ金属塩化物を生成させる(塩化焙焼)。この際、生成したアルカリ金属塩化物は、多くがバイオマス灰に付着して存在する。
【0050】
塩化焙焼工程ST3におけるバイオマス灰BA2と塩素含有ガスG1の割合は、単位時間中に塩化焙焼工程ST3に供せられるバイオマス灰BA2中のアルカリ金属成分のモル量(A)と、単位時間中に塩化焙焼工程ST3に供せられる塩素含有ガスG1中の塩素のモル量(B)との比A:Bが、1:1.5~1:5、好ましくは1:2~1:5となるように、設定される。この比A:Bが1:1.5よりも小さい場合、塩素量が少ないために塩化焙焼工程ST3に供給されたバイオマス灰BA2中のアルカリ金属成分の全てが塩素と反応できない場合がある。また、前記比A:Bが1:5よりも大きい場合、ガス中の塩素量が多くなって設備の腐食の進行が早まる場合がある。
【0051】
この塩化焙焼工程ST3における加熱温度は、バイオマス灰BA2中のアルカリ金属と塩素含有ガスG1中の塩素によるアルカリ金属塩化物の生成反応を効率的に行いつつ、バイオマス灰BA2を溶融させない観点から、650℃~1000℃が好ましく、700℃~950℃がより好ましく、750℃~950℃が特に好ましい。ここで、加熱温度が650℃未満であるとアルカリ金属の塩化焙焼の反応が不十分となって、アルカリ金属塩化物が生成しないか、生成効率が低くなる場合がある。また、加熱温度が1000℃を超えると、バイオマス灰BA2の部分的な溶融や大径化が生じてしまうために、塩化焙焼の反応効率が低下する。
【0052】
塩化焙焼工程ST3における加熱時間は、加熱温度に応じて15分間~2時間の範囲内で設定すればよい。この加熱時間は、バイオマス灰BA2中のアルカリ金属と塩素含有ガスG1中の塩素とを十分に反応させる観点からは、加熱温度が高い場合には短く、加熱温度が低い場合には長くする必要がある。具体的には、加熱温度が650℃の場合は1時間以上2時間以下、加熱温度が1000℃の場合は15分間以上40分間以下である。
【0053】
塩化焙焼工程ST3における焼成雰囲気は、特に制限されず、酸化雰囲気でも還元雰囲気でもよいが、簡便性の観点からは大気がよい。
【0054】
続く水洗処理工程ST4は、塩化焙焼工程ST3から供給されたバイオマス灰BA3と水W1を混合して、作成したスラリーS1を撹拌して、バイオマス灰BA3中のアルカリ金属塩化物をスラリーS1の液相中に溶解した後に、かかるスラリーS1を固液分離して、アルカリ金属が除去されたバイオマス灰からなる脱水ケーキBA4を得る工程である。
【0055】
水洗処理工程ST4で用いられる溶媒及びケーキ洗浄水としては、工水(真水)が好ましい。塩化カリウム(KCl)と塩化ナトリウム(NaCl)は共に水への溶解度は非常に高く、また水温を変えても溶解度は大きく変わらないことから、溶媒として用いる水W1は、常温の水を、バイオマス灰BA3の質量の3倍量以上、好ましくは4倍量以上、より好ましくは5倍量以上の量を用いればよい。
【0056】
また、固液分離の際にケーキ洗浄水として用いる水も、常温の水を、バイオマス灰BA3の質量の3倍量以上、好ましくは4倍量以上、より好ましくは5倍量以上の量を用いればよい。
【0057】
水洗処理工程ST4におけるスラリーS1の撹拌時間は、10分以上が好ましく、15分以上がより好ましく、20分以上が特に好ましい。通常、アルカリ金属塩化物は水に非常に溶けやすいので、スラリーS1の撹拌に特段の条件は必要とならない。
【0058】
水洗処理工程ST4で得られる脱水ケーキBA4は、アルカリ金属成分の濃度が1.0質量%以下、より典型的には0.8質量%以下にまで低減されるので、セメント原料等に有効に利用することができる。
【0059】
次に、本発明のアルカリ金属除去装置を説明する。
【0060】
この実施形態に係るアルカリ金属除去装置1は、バイオマス灰BA1を供給するためのバイオマス灰供給装置2、バイオマス灰供給装置2から供給されたバイオマス灰BA1を予熱するための予熱装置3、塩素含有廃棄物PLを熱分解するための熱分解装置4、予熱されたバイオマス灰BA2と塩素含有ガスG1を同時に加熱する塩化焙焼装置5、塩化焙焼装置5から排出されたバイオマス灰BA3を水洗するための水洗装置6、水洗装置6から排出されたスラリーS1を固液分離して脱水ケーキBA4を回収するための固液分離装置7、予熱装置3からの燃焼排ガスG3にガス処理剤を散布するためのガス処理剤散布装置8、及びガス処理剤散布装置8からの燃焼排ガスG4中の塩素成分を塩化物P1として分離回収した後に熱分解装置4へ供給するための固気分離装置9を備える。
【0061】
バイオマス灰供給装置2は、受入れたバイオマス灰BA1を予熱装置3へ供給するために備えられる。なお、バイオマス灰供給装置2には、受入れたバイオマス灰BA1の貯槽が付設されていてもよい。また、バイオマス灰供給装置2には、バイオマス灰BA1を乾燥するための置場や乾燥装置が付設されていてもよく、さらには、大径のバイオマス灰BA1を粉砕するための粉砕装置が付設されていてもよい。これらの乾燥装置等は、受入れたバイオマス灰BA1の状態に応じて適宜に使用するようにしてもよい。
【0062】
バイオマス灰供給装置2は、バイオマス灰BA1を定量的に排出できるものであれば特に限定されず、ロスインウエイト方式のホッパや、定量フィーダ又はロータリフィーダが付設されたホッパ等が好適に使用できる。
【0063】
予熱装置3は、バイオマス灰BA1を予熱するために備えられる。
図2に示す予熱装置3は、サイクロン3aとサイクロン3bの2つのサイクロンから構成される多段式サイクロン型の予熱装置である。この予熱装置3では、バイオマス灰供給装置2から上段側のサイクロン3aに供給されたバイオマス灰BA1は、重力によって下段側のサイクロン3bさらには塩化焙焼装置5に向かって降下する際に、下方から上昇する高温の燃焼排ガスG2との間にそれぞれのサイクロン内で熱交換を行って予熱され、500℃~700℃の温度を有するバイオマス灰BA2となって塩化焙焼装置5に送られる。
【0064】
熱分解装置4は、受入れた塩素含有廃棄物PLを熱分解するために備えられる。なお、熱分解装置4には、受入れた塩素含有廃棄物PLの貯槽が付設されていてもよい。さらに、かかる貯槽の上流側に、受入れた塩素含有廃棄物PLから粗大物を除去するための分級装置や、異物を除去するための磁選機や、粗大物を所定の粒度にするための粉砕分級装置が付設されていてもよい。これらの分級装置等は、受入れた塩素含有廃棄物PLの状態に応じて適宜に使用するようにしてもよい。
【0065】
図2に示す熱分解装置4は、流動層ガス化炉である。流動層ガス化炉内に投入された塩素含有廃棄物PLは、流動層ガス化炉の流動媒体と共に流動しながら、流動媒体の熱によって熱分解され、塩素含有ガスG1及び熱分解残渣P2となる。
【0066】
流動層ガス化炉の底部の複数のガス供給口から供給される熱分解ガスA2は、好ましくは、酸素を含まないか又は酸素の含有率の小さい可燃性ガスや水蒸気等であり、例えば、熱分解装置4から発生する可燃性ガスの一部を回収したガス(回収ガス)や、メタンガス等の可燃性ガスが挙げられる。
【0067】
流動層ガス化炉内は、熱分解ガスA2と塩素含有廃棄物PLが熱分解されて生成したガスが混合してなる塩素含有ガスG1によって満たされている。この塩素含有ガスG1は、ガス流路を経由して塩化焙焼装置5に導かれる。なお、塩素含有ガスG1は塩化水素等の腐食性成分を高濃度に含むため、塩素含有ガスG1のガス流路はステンレス等の耐食性に優れた素材を使用するのが望ましく、また、塩素含有ガスG1を保温するための保温材で被覆されているのが望ましい。
【0068】
熱分解装置4には、ガス流量調整バルブ等のガス流量調整装置が付設されて塩化焙焼装置5への塩素含有ガスG1の供給量を調整することが可能になっている。したがって、このガス流量調整装置を制御することで、塩化焙焼装置5に供給される塩素量を適切に管理することが可能になる。
【0069】
塩素含有廃棄物PLが熱分解して生じる熱分解残渣P2は、流動媒体と共に回収され、分級等によって流動媒体を分離した後に不図示の第2の輸送装置によりセメント製造設備に輸送することで、セメント製造における原燃料として利用できる。
【0070】
塩化焙焼装置5において、バイオマス灰BA2と塩素含有ガスG1は一緒に加熱されることによって、バイオマス灰BA2内のアルカリ金属と塩素含有ガスG1内の塩素が反応してアルカリ金属塩化物が生成する。
【0071】
塩化焙焼装置5におけるアルカリ金属塩化物の生成反応を効率的に生じさせるために、バイオマス灰BA2と塩素含有ガスG1は十分に混合された状態で加熱されることが望ましく、そのため、
図2に示す実施形態では、塩化焙焼装置5として内燃式ロータリーキルンを用いている。焼成室が回転運動するロータリーキルンであれば、バイオマス灰BA2と塩素含有ガスG1との混合を物理的に且つ連続的に行いながら、加熱処理を行うことが可能である。
【0072】
なお、塩化焙焼装置5は、バイオマス灰BA2と塩素含有ガスG1を650℃~1000℃で加熱できるものであれば特に限定されず、固定炉、ストーカ炉、ロータリーキルン、流動床炉、竪型炉、多段炉等の加熱炉が使用できる。なかでも、上記の物理的撹拌が行えるという観点からは、ロータリーキルンが好ましい。
【0073】
さらに、内燃式のロータリーキルンであれば、塩素含有ガスG1が含んでいるタール、一酸化炭素及びダイオキシン類等の有害成分を、内燃バーナ51の火炎で直接的に燃焼して無害化できるという観点から、より好ましい。この際、塩素含有ガスG1は、大気A1と共に、ロータリーキルンの内燃バーナ51の燃焼ガスとして使われるのが、有害成分を完全に燃焼する観点からさらに好ましい。
【0074】
塩化焙焼装置5内では、バイオマス灰BA2の流れに対して、塩素含有ガスG1が向流する方向に流れる。これによって、バイオマス灰BA2と塩素含有ガスG1は十分に接触することが可能になる。なお、塩素含有ガスG1の流れは、送気ファンF1、F2及び吸気ファンF3によって形成される。
【0075】
塩化焙焼装置5からは、アルカリ金属が塩化物に変化したバイオマス灰BA3が排出されて、水洗装置6に送られる。
【0076】
水洗装置6では、バイオマス灰BA3と水W1を混合してスラリーS1を生成した後、スラリーS1の撹拌を継続して、バイオマス灰BA3中のアルカリ金属塩化物を液相に溶解させる。
【0077】
水洗装置6には、バイオマス灰BA3の供給ホッパ61と水W1の供給装置62が付設され、また、バイオマス灰BA3と水W1の混合、及び、その混合によって生成されたスラリーS1を攪拌するためのスラリー攪拌装置63が付設されている。なお、供給ホッパ61の上流側に、受入れた加熱処理物BA3中の大径物を適当な大きさに粉砕するための粉砕装置が付設されていてもよい。この粉砕装置は、加熱装置5から供給された加熱処理物BA3の状態に応じて適宜に使用するようにしてもよい。
【0078】
スラリー攪拌装置63としては、例えば、一般的なパドル型やスクリュー型のものを用いればよく、
図2に示す実施形態では撹拌翼を備えている。
【0079】
アルカリ金属塩化物が液相に溶解した後のスラリーS1は、固液分離装置7に送られる。ここで、固液分離装置7へのスラリーS1の輸送には、スラリー用渦巻きポンプ、ピストンポンプ、ホースポンプ、及び、モーノポンプ等の通常のスラリー液用輸送装置(不図示)を用いればよい。
【0080】
固液分離装置7としては、フィルタープレス、加圧葉状ろ過装置、スクリュープレス、ベルトプレス、ベルトフィルター等の通常のろ過装置等を用いればよく、
図2に示す実施形態では、フィルタープレスを用いている。
【0081】
固液分離装置7は、輸送されたスラリーS1を、脱水ケーキBA4(固相)と、アルカリ金属を含む排水W2(液相)とに分離し、アルカリ金属が有効に減じられた脱水ケーキBA4は不図示の第1の輸送装置によりセメント製造設備に輸送される。
【0082】
また、塩化焙焼装置5からは、燃焼排ガスG2が排出される。この燃焼排ガスG2は、高温であると共に、塩素含有ガスG1の一部を含んでいる。
【0083】
そこで、この燃焼排ガスG2の顕熱を予熱装置3での熱源として用いるため、塩化焙焼装置5の排気口はサイクロン3bに連接されている。燃焼排ガスG2の温度は、サイクロン3bの入り口部において好ましくは800℃以上、より好ましくは900℃以上である。燃焼排ガスG2の温度がこの温度であると、熱交換によってバイオマス灰BA2の温度を500℃~700℃に予熱することができる。
【0084】
また、予熱装置3から排気された燃焼排ガスG3中の塩素(塩化水素)を無害化するために、ガス処理剤散布装置8が、燃焼排ガスG3へガス処理剤を散布するために備えられる。
【0085】
ガス処理剤としては、塩化水素ガスを中和して無害化する観点から、生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH)2)及び重曹(NaHCO3)のいずれかが好ましく、中和して得られた塩化物P1を熱分解装置4における塩素源として活用する観点からは生石灰や消石灰がより好ましく、反応効率やハンドリングの観点からは消石灰がさらに好ましい。
【0086】
ガス処理剤はハンドリングの観点から粉体が好ましく、かかるガス処理剤の大きさは、反応効率と、燃焼排ガスG3との良好な混合状態を形成する観点から、平均粒径は200μm以下が好ましい。ここで、ガス処理剤の平均粒径とは、エタノールを分散媒としたレーザー回折粒度分布測定装置による測定値である。
【0087】
ガス処理剤を含む燃焼排ガスG4は固気分離装置9に到達し、例えば固気分離装置9がバグフィルタである場合には、ろ布表面において塩化水素ガスとガス処理剤を由来とする塩化物P1(固体)が生成する。
【0088】
固気分離装置9では、塩化水素ガスが除去された後の燃焼排ガスG5が系外に排気され、上記塩化物P1は分離回収された後に熱分解装置4に輸送される。
【実施例】
【0089】
以下、本発明についてさらに詳細に説明するために具体的な試験例を示すが、本発明はこれら試験例の態様に限定されるものではない。
【0090】
バイオマス灰BA1として、バイオマス発電プラント(循環流動層ボイラ)の排ガス集塵機(バグフィルタ)で捕集された飛灰を用いた。表1には、アルカリ金属については酸分解試料のICP発光分光分析法による分析で、その他の化学成分にはペレット試料の蛍光X線分析法による分析で得られた、バイオマス灰BA1の化学組成を示す。なお、表1のR2Oは、本組成物中の全アルカリ金属成分量として「R2O=Na2O+0.658×K2O」の値を示す。
【0091】
また、表1に示すバイオマス灰BA1のレーザー回折・散乱法に基づく粒度分布を測定したところ、D10値が3.6μm、D50値が21.3μm、D90値が83.5μmであった。なお、例えば、D10値とは、体積基準の粒度分布において累積10%での粒径を意味する。
【0092】
【0093】
上記のバイオマス灰BA1に、そのバイオマス灰BA1中のアルカリ金属成分の含有量R
2O(BA1)(mol)に対して塩素含有ガスG1中の塩素含有量Cl(G1)(mol)が、R
2O(BA1):Cl(G1)=1:2となる量の、塩素含有ガスG1(温度:850℃±50℃)を通流させた後、
図2に示すアルカリ金属除去装置1を用い、予熱処理工程有無における脱水ケーキBA4のアルカリ金属成分の含有量を比較した。結果を表2に示す。
【0094】
なお、予熱処理工程有無のそれぞれの試験において、塩化焙焼工程と水洗処理工程は以下の同一の条件とした。
加熱処理に用いるロータリーキルンの加熱部の温度:950℃±25℃
加熱処理時間:20分間(ロータリーキルンの回転数は両試験で同じ。)
水洗処理でのバイオマス灰BA3:水W1=1:4
水洗処理での撹拌時間:10分間
また、予熱処理工程有無による相違点であるところのバイオマス灰BA2の温度は、予熱処理工程無しが25℃に対して、予熱処理工程有りが600℃であった。
【0095】
【0096】
表2から分かるとおり、予熱処理工程が有る場合が、バイオマス灰のアルカリ金属含有量が少ない。これは、塩化焙焼工程に送られるバイオマス灰が予熱されていたことによって、塩化焙焼工程でアルカリ金属が塩化物に変化する反応が生じる温度域に素早く達すると共に、その温度域が長時間継続することによるものと考えられる。
【0097】
1 アルカリ金属除去装置
2 バイオマス灰供給装置
3 予熱装置
3a、3b サイクロン
4 熱分解装置
5 塩化焙焼装置
51 内燃バーナ
6 水洗装置
61 バイオマス灰BA3の供給ホッパ
62 水W1の供給装置
63 スラリー攪拌装置
7 固液分離装置
8 ガス処理剤散布装置
9 固気分離装置
A1 大気
A2 熱分解ガス
BA1、BA2、BA3 バイオマス灰
BA4 バイオマス灰の脱水ケーキ
PL 塩素含有廃棄物
F1、F2、F3 ファン
G1 塩素含有ガス
G2、G3、G4、G5 燃焼排ガス
P1 塩化物
P2 熱分解残渣
S1 スラリー
W1 水
W2 排水