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特許7324186硬化性表面保護コーティング組成物、その調製のための方法、およびその金属基材への適用および得られるコーティングされた金属基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】硬化性表面保護コーティング組成物、その調製のための方法、およびその金属基材への適用および得られるコーティングされた金属基材
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/04 20060101AFI20230802BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20230802BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20230802BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230802BHJP
   C09D 183/08 20060101ALI20230802BHJP
   C09D 183/06 20060101ALI20230802BHJP
   C09D 183/07 20060101ALI20230802BHJP
   C08G 77/04 20060101ALI20230802BHJP
   C08G 77/48 20060101ALI20230802BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230802BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20230802BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20230802BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D5/08
C09D5/00 D
C09D7/61
C09D183/08
C09D183/06
C09D183/07
C08G77/04
C08G77/48
C09D7/63
B05D5/00 B
B05D7/14 Z
B05D7/24 302Y
【請求項の数】 41
(21)【出願番号】P 2020505160
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 US2018044559
(87)【国際公開番号】W WO2019027991
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】15/664,023
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18165148.0
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(72)【発明者】
【氏名】ジャナ,ラジュクマル
(72)【発明者】
【氏名】ヒルガース,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ラマクリシュナン,インドゥマシ
(72)【発明者】
【氏名】ムルゲサン,カーシケヤン
(72)【発明者】
【氏名】ハートレブ,ヴィプケ
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-111336(JP,A)
【文献】特開平06-049412(JP,A)
【文献】特表2011-521108(JP,A)
【文献】国際公開第2010/082566(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/042278(WO,A1)
【文献】特開昭62-32157(JP,A)
【文献】特開2003-138211(JP,A)
【文献】特開昭55-94971(JP,A)
【文献】特表2013-509485(JP,A)
【文献】特開昭56-65046(JP,A)
【文献】特開2000-144051(JP,A)
【文献】特開2001-192615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
C08G 77/00- 77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング形成組成物であって、
(i)式AおよびB
(X-RSi(R(OR4-(a+b) 式A
(RO)Si-R-Si(OR 式B
またはその加水分解および縮合生成物からなる群から選択される少なくとも1つのアルコキシシラン:
ここで
Xは有機官能基であり;
各Rは、1つ以上のヘテロ原子を任意にて含む、1から12個の炭素原子の直鎖、分岐または環状の二価有機基であり;
各Rは独立して、1つまたは複数のハロゲン原子を任意にて含む1から16個の炭素原子のアルキル、アリール、アルカリールまたはアラルキル基であり;
各Rは独立して、1から12個の炭素原子のアルキル基であり;
下付き文字aは0または1であり、下付き文字bは0、1または2であり、そしてa+bは0、1または2であり;そして
下付き文字aが0または1であり、下付き文字bが0、1または2であり、そしてa+bが2である場合の式Aのアルコキシシランの量は、コーティング形成組成物の0から25重量パーセントであり、
a+bが0である場合の式Aのアルコキシシランの量は、コーティング形成組成物の0から15重量パーセントであり、
下付き文字aが0または1であり、下付き文字bが0または1であり、そしてa+bが1である場合の式Aのアルコキシシランと、式Bのアルコキシシランの合計量は、コーティング形成組成物の8から40重量パーセントであり、そして
ここで式AおよびBのアルコキシシランの総量は、コーティング形成組成物の50重量パーセントを超えず;
(ii)アルミナとシリカの混合物、または、アルミナで修飾されたシリカから選択される、少なくとも1つの粒子形態の金属酸化物、ここで金属酸化物の量はコーティング形成組成物の5から50重量パーセントであり;
(iii)少なくとも1つの水混和性有機溶媒;
(iv)少なくとも1つの酸加水分解触媒;
(v)水、ならびに
(vi)任意で、少なくとも1つの縮合触媒を含み、
25℃で3.0から7.0cStksの範囲内の粘度を有するコーティング形成組成物。
【請求項2】
式AおよびBのアルコキシシランの総量が、コーティング形成組成物の45重量パーセントを超えない、請求項1に記載のコーティング形成組成物。
【請求項3】
式AおよびBのアルコキシシランの総量が、コーティング形成組成物の40重量パーセントを超えない、請求項1に記載のコーティング形成組成物。
【請求項4】
式Aのアルコキシシランにおいて、aは1であり、そして有機官能基Xは、メルカプト、アシルオキシ、グリシドキシ、エポキシ、エポキシシクロヘキシル、エポキシシクロヘキシルエチル、ヒドロキシ、エピスルフィド、アクリレート、メタクリレート、ウレイド、チオウレイド、ビニル、アリル、-NHCOORまたは-NHCOSR基、ここでRは、1から12個の炭素原子を含む一価のヒドロカルビル基であり、チオカルバメート、ジチオカルバメート、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、トリスルフィド、テトラスルフィド、ペンタスルフィド、ヘキサスルフィド、ポリスルフィド、キサンテート、トリチオカーボネート、ジチオカーボネート、またはイソシアヌラート基、または別の-Si(OR)基であり、ここでRは前に定義した通りである、請求項1から3のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項5】
式Bのアルコキシシランにおいて、Rは、O、SおよびNRからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む二価炭化水素基であり、ここでRは、水素または1個から4個の炭素原子のアルキル基である、請求項1から4のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項6】
少なくとも1つのアルコキシシラン(i)は、下付き文字aが0または1であり、下付き文字bが0または1であり、そしてa+bが1である式Aのトリアルコキシシラン、式Bのトリアルコキシシラン、ならびに式AおよびBのトリアルコキシシランの混合物からなる群の少なくとも1つのメンバーから選択される、請求項1から5のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項7】
下付き文字aが0または1であり、下付き文字bが0、1または2であり、そしてa+bが2である式Aのジアルコキシシラン、下付き文字aおよびbの各々が0である式Aのテトラアルコキシシラン、ならびに式Aのジアルコキシシランおよびテトラアルコキシシランの混合物からなる群の少なくとも1つのメンバーから選択される、少なくとも1つのアルコキシシラン(i)を含む請求項1から6のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項8】
式Aのトリアルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリブトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-ペンチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、および3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーであり、そして式Bのトリアルコキシシランは、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミンおよびビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミンからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項1から7のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項9】
金属酸化物(ii)は、シリカ、アルミナ、チタニア、セリア、酸化スズ、ジルコニア、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化鉄、酸化鉄および/またはジルコニアをドープしたチタニア、および希土類酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの金属酸化物のコロイド懸濁液である、請求項1から8のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項10】
金属酸化物(ii)は、アルミナとシリカの混合物から選択され、ここで前記混合物は、1:99から99:1のアルミナとシリカの重量比(Al/SiO)を有する、請求項1からのいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項11】
アルミナとシリカの混合物は、5:95から90:10のアルミナとシリカの重量比(Al/SiO)を有する、請求項10に記載のコーティング形成組成物。
【請求項12】
アルミナとシリカの混合物は、5:95から75:25のアルミナとシリカの重量比(Al/SiO)を有する、請求項10に記載のコーティング形成組成物。
【請求項13】
水混和性溶媒(iii)は、アルコール、グリコール、グリコールエーテルおよびケトンからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項1から12のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの酸加水分解触媒(iv)は、硫酸、塩酸、酢酸、プロパン酸、2-メチルプロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、2-エチルヘキサン酸、ヘプタン酸(エナント酸)、ヘキサン酸、オクタン酸(カプリル酸)、オレイン酸、リノール酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキシル酢酸、シクロヘキセンカルボン酸、安息香酸、ベンゼン酢酸、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、2-ブテン二酸(マレイン酸)、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソアノイック酸、バーサティック酸、およびアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーであり、そしてここでコーティング形成組成物は、Rが水素、1から8個の炭素原子を含むアルキル基、および6から20個の炭素原子を含む芳香族基からなる群から選択される、式[(CN][OC(O)-Rのテトラブチルアンモニウムカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1つの縮合触媒(vi)も含む、請求項1から13のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項15】
縮合触媒(vi)は、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート、テトラ-n-ブチルアンモニウムホルメート、テトラ-n-ブチルアンモニウムベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-p-エチルベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウムプロピオネート、およびTBD-アセテート(1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デス-5-エン(TBD))からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項1から14のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項16】
25℃で4.0から5.5cStksの範囲内の粘度を有する、請求項1から15のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項17】
a)アルコキシシラン(i)と酸加水分解触媒(iv)の混合物を冷却すること;
b)ステップ(a)の冷却された混合物に金属酸化物(ii)と水(vi)を添加すること;
c)ステップ(b)から得られた混合物に水混和性溶媒(iii)とさらなる酸加水分解触媒(iv)を添加すること;
d)ステップ(c)から得られた混合物を、25℃で3.0から7.0cStksの範囲内の粘度を有する硬化性コーティング形成組成物を提供するよう測定された期間で高められた温度の条件下でエージングすること;ならびに
e)任意にて、先行するいずれかのステップで、そのステップの間に、またはそのステップ後に縮合触媒(vi)を添加すること、を含む、請求項1から11および13から16のいずれかに記載のコーティング形成組成物の製造方法。
【請求項18】
a)金属酸化物(ii)と酸加水分解触媒(iv)の混合物を-20℃から15℃の温度に冷却すること、
b)ステップ(b)の冷却された混合物にアルコキシシラン(i)を添加すること、
c)ステップc)で得られた混合物を室温(25℃)になるようにすること、
d)ステップd)で得られた混合物に、少なくとも1つの水混和性有機溶媒(iii)、および任意に縮合触媒(vi)および任意に1つ以上の他の任意の成分(vii)を加えて、25℃で3.0から7.0cStksの範囲内の粘度を有する組成物を得ること、を含む、請求項1から8または10から16のいずれかに記載のコーティング形成組成物の製造方法。
【請求項19】
ステップ(a)が、-10℃から10℃の温度に冷却する、請求項18に記載のコーティング形成組成物の製造方法。
【請求項20】
ステップ(a)が、0℃から10℃の温度に冷却する、請求項18に記載のコーティング形成組成物の製造方法。
【請求項21】
金属酸化物(ii)が、アルミナで修飾されたシリカから選択される、請求項18に記載のコーティング形成組成物の製造方法。
【請求項22】
25℃で4.0から5.5cStksの粘度を有する、請求項17から21のいずれかに記載のコーティング形成組成物の製造方法。
【請求項23】
アルコキシシラン(i)は、下付き文字aが0または1であり、下付き文字bが0または1であり、そしてa+bが1である式Aのトリアルコキシシラン、式Bのトリアルコキシシラン、および式AおよびBのトリアルコキシシランの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項17から22のいずれかに記載のコーティング形成組成物の製造方法。
【請求項24】
アルコキシシラン(i)は、下付き文字aが0または1であり、下付き文字bが0、1または2であり、そしてa+bが2である式Aのジアルコキシシラン、下付き文字aおよびbの各々が0である式Aのテトラアルコキシシラン、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項17から22のいずれかに記載のコーティング形成組成物の製造方法。
【請求項25】
式Aのトリアルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリブトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-ペンチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、および3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーであり、そして式Bのトリアルコキシシランは、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミンおよびビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミンからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項17から22のいずれかに記載のコーティング形成組成物の製造方法。
【請求項26】
金属酸化物(ii)は、シリカ、アルミナ、チタニア、セリア、酸化スズ、ジルコニア、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化鉄、酸化鉄および/またはジルコニアがドープされたチタニアおよび希土類酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの金属酸化物の水性コロイド懸濁液から選択される少なくとも1つのメンバーであり、ここで水混和性溶媒(iii)は、アルコール、グリコール、グリコールエーテルおよびケトンからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーであり、ここで酸加水分解触媒(iv)は、硫酸、塩酸、酢酸、プロパン酸、2-メチルプロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、2-エチルヘキサン酸、ヘプタン酸(エナント酸)、ヘキサン酸、オクタン酸(カプリル酸)、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキシル酢酸、シクロヘキセンカルボン酸、安息香酸、ベンゼン酢酸、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、2-ブテン二酸(マレイン酸)、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソアノイック酸、バーサティック酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソアノイック酸およびアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1つ以上のメンバーであり、そしてここでコーティング形成組成物は、Rが水素、1から8個の炭素原子を含むアルキル基、および6から20個の炭素原子を含む芳香族基からなる群から選択される、式[(CN][OC(O)-Rのテトラブチルアンモニウムカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1つの縮合触媒(vi)も含む、請求項17に記載のコーティング形成組成物の製造方法。
【請求項27】
金属酸化物(ii)は、アルミナで修飾されたシリカから選択され、ここで水混和性溶媒(iii)は、アルコール、グリコール、グリコールエーテルおよびケトンからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーであり、ここで酸加水分解触媒(iv)は、硫酸、塩酸、酢酸、プロパン酸、2-メチルプロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、2-エチルヘキサン酸、ヘプタン酸(エナント酸)、ヘキサン酸、オクタン酸(カプリル酸)、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキシル酢酸、シクロヘキセンカルボン酸、安息香酸、ベンゼン酢酸、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、2-ブテン二酸(マレイン酸)、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソアノイック酸、バーサティック酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソアノイック酸およびアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーであり、そしてここでコーティング形成組成物は、Rが水素、1から8個の炭素原子を含むアルキル基、および6から20個の炭素原子を含む芳香族基からなる群から選択される、式[(CN][OC(O)-Rのテトラブチルアンモニウムカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1つの縮合触媒(vi)も含む、請求項18から21のいずれかに記載のコーティング形成組成物の製造方法。
【請求項28】
ステップ(a)において、混合物は-20℃から15℃の温度に冷却される、請求項17に記載のコーティング形成組成物の製造方法。
【請求項29】
ステップ(a)において、混合物は、酸加水分解触媒(iv)の総量の10から50重量パーセントを含み、酸加水分解触媒(iv)の残部がステップ(c)で添加される、請求項17に記載のコーティング形成組成物の製造方法。
【請求項30】
ステップ(e)において、ステップ(d)から得られた混合物は、20℃から100℃の温度で1から60日間エージングされる、請求項17に記載のコーティング形成組成物の製造方法。
【請求項31】
コーティング形成組成物は、式(A)から選択される少なくとも1つのアルコキシシランおよび式(B)から選択される少なくとも1つのアルコキシシラン、またはそれらの加水分解および縮合生成物を含み、ここでRおよびRは前記定義通りである、請求項1に記載のコーティング形成組成物。
【請求項32】
金属表面にコーティングして耐腐食性および/または耐摩耗性をそこに付与する方法であって、請求項1から16及び31のいずれかに記載のコーティング形成組成物を、耐腐食性および/または耐摩耗性が望まれる金属の非コーティング表面またはプレコーティング表面に適用すること、および適用されたコーティング形成組成物を硬化させて、その上に耐腐食性および/または耐摩耗性コーティングをもたらすことを含む方法。
【請求項33】
コーティング形成組成物は、陽極酸化アルミニウム、バルクアルミニウム、マグネシウム、鋼、銅、青銅またはそれらの合金の表面、金属化表面または少なくとも1つの保護層を有する金属に適用される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
金属の表面をコーティングして耐腐食性および/または耐摩耗性をそこに付与する方法であって、請求項17から27のいずれかに記載のプロセスによって得られたコーティング形成組成物を、耐腐食性および/または耐摩耗性が望まれる金属の非コーティング表面またはプレコーティング表面に適用すること、および適用されたコーティング形成組成物を硬化させて、その上に耐腐食性および/または耐摩耗性コーティングをもたらすことを含む方法。
【請求項35】
コーティング形成組成物は、陽極酸化アルミニウム、バルクアルミニウム、マグネシウム、鋼、銅、青銅またはそれらの合金の表面、金属化表面または少なくとも1つの保護層を有する金属部分に適用される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
金属表面にコーティングして耐腐食性および/または耐摩耗性をそこに付与する方法であって、請求項1から16及び31のいずれかに記載のコーティング形成組成物を、耐腐食性および/または耐摩耗性が望まれる金属の非コーティング表面またはプレコーティング表面に適用すること、および適用されたコーティング形成組成物を硬化させて、その上に耐腐食性および/または耐摩耗性コーティングをもたらすことを含む金属のコーティング表面の製造方法。
【請求項37】
請求項1から16のいずれかに記載のコーティング形成組成物でコーティングされた金属基材。
【請求項38】
金属は、陽極酸化アルミニウム、バルクアルミニウム、マグネシウム、鋼、銅、青銅、またはこれらの合金の表面、金属化表面または少なくとも1つの保護層を有する金属を有する、請求項37に記載のコーティングされた金属基材。
【請求項39】
コーティング形成組成物は、式(A)から選択される少なくとも1つのアルコキシシランおよび式(B)から選択される少なくとも1つのアルコキシシラン、またはそれらの加水分解および縮合生成物を含み、ここでRおよびRは前記定義通りである、請求項37に記載のコーティングされた金属基材。
【請求項40】
コーティング形成組成物を、耐腐食性および/または耐摩耗性が望まれる金属の非コーティング表面またはプレコーティング表面に適用すること、および適用されたコーティング形成組成物を硬化させて、その上に耐腐食性および/または耐摩耗性コーティングをもたらすこと含む、請求項37から39のいずれかに記載のコーティングされた金属基材を製造する方法。
【請求項41】
コーティング形成組成物は、陽極酸化アルミニウム、バルクアルミニウム、マグネシウム、鋼、銅、青銅またはそれらの合金の表面、金属化表面または少なくとも1つの保護層を有する金属に適用される、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護コーティング組成物、例えば、化成および不動態化コーティングの分野、より具体的にはアルコキシシランに由来する硬化性コーティング組成物、およびそれを用いた金属基材のコーティングのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐腐食性および/または耐摩耗性を付与する目的で、さまざまな種類の表面に適用するために、長年にわたって多くの表面保護コーティング組成物が開発されてきている。例えば、塗装前に金属表面を調製するために、クロムおよび重金属リン酸塩化成コーティングが使用されてきている。しかしながら、クロムの毒性および小川、河川、その他の水路に産業廃棄物として排出されるクロム酸塩、リン酸塩、その他の重金属の汚染影響に関する高まる懸念が、そのような金属コーティング組成物の代替品を求めることを推し進めている。
【0003】
非クロム、非リン酸塩および非重金属系の金属コーティング組成物を開発するこれらの努力から生じた表面保護コーティング組成物の1つのタイプは、アルコキシシランに由来している。アルコキシシランに由来する硬化性コーティング組成物は、金属産業において高いレベルの関心を寄せ続けており、一部の配合物は広く商業的に受け入れられているが、未硬化の組成物の貯蔵安定性、および硬化組成物の接着性、柔軟性、耐腐食性、耐摩耗性/耐擦過性、光学透明特性など、金属の製造業者および加工業者にとって依然として重要なそれら特性の1つ以上の改善の余地がかなり残っている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様によれば、金属、金属合金、金属化部分、1つ以上の保護層を有する金属または金属化部分のうちの1つなどの基材の表面を保護する適用のための硬化性表面保護コーティング形成組成物が提供され、該コーティング形成組成物は、
(i)式AおよびBからなる群から選択される少なくとも1つのアルコキシシラン:
(X-RSi(R(OR4-(a+b) 式A
(RO)Si-R-Si(OR 式B
ここで
Xは有機官能基、より具体的にはメルカプト、アシルオキシ、グリシドキシ、エポキシ、エポキシシクロヘキシル、エポキシシクロヘキシルエチル、ヒドロキシ、エピスルフィド、アクリレート、メタクリレート、ウレイド、チオウレイド、ビニル、アリル、-NHCOORまたは-NHCOSR基、ここでRは、1から約12個の炭素原子、より具体的には1から約8個の炭素原子を含む一価のヒドロカルビル基であり、チオカルバメート、ジチオカルバメート、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、トリスルフィド、テトラスルフィド、ペンタスルフィド、ヘキサスルフィド、ポリスルフィド、キサンテート、トリチオカーボネート、ジチオカーボネートまたはイソシアヌラート基、または別の-Si(OR)基であり、ここでRは以下に定義の通りであり;
各Rは、1から約12個の炭素原子、より具体的には1から約10個の炭素原子、最も具体的には1から約8個の炭素原子の直鎖、分岐または環状の二価有機基、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、シクロヘキシレン、アリーレン、アラルキレンまたはアルカリーレン基の非限定的な例などの二価炭化水素基であって、O、S、NR、ここでRは水素または1から4個の炭素原子のアルキル基である、の非限定的な例などの1つ以上のヘテロ原子を任意に含むものであり;
各Rは、独立して、1から約16個の炭素原子、より具体的には1から約12個の炭素原子、さらにより具体的には1から4個の炭素原子のアルキル、アリール、アルカリールまたはアラルキル基であって、1つ以上のハロゲン原子、より具体的にはフッ素原子を任意に含むものであり、
各Rは、独立して、1から約12個の炭素原子、より具体的には1から約8個の炭素原子、さらにより具体的には1から4個の炭素原子のアルキル基であり;
下付き文字aは0または1であり、下付き文字bは0、1または2であり、そしてa+bは0、1または2であり;そして、
下付き文字aが0または1であり、下付き文字bが0、1または2であり、そしてa+bが2である場合の式Aのアルコキシシランの量は、コーティング形成組成物の0から約8重量パーセントであり;
a+bが0である場合の式Aのアルコキシシランの量は、コーティング形成組成物の0から約15重量パーセントであり、
下付き文字aが0または1であり、下付き文字bが0または1であり、そしてa+bが1である式Aのアルコキシシランと、式Bのアルコキシシランとの合計量が約8から約40重量パーセントであり、そして
式AおよびBのアルコキシシランの総量は、コーティング形成組成物の約50、好ましくは約45、より好ましくは約40重量パーセントを超えず;
(ii)少なくとも1つの粒子形態の金属酸化物、ここで金属酸化物の量は、コーティング形成組成物の約5から約50重量パーセントであり;
(iii)少なくとも1つの水混和性有機溶媒;
(iv)少なくとも1つの酸加水分解触媒;
(v)水;ならびに
(vi)任意で、少なくとも1つの縮合触媒を含み、
ここでコーティング形成組成物は、25℃で約3.0から約7.0cStks、より具体的には約4.0から約5.5cStks、さらにより具体的には約4.5から約5.0cStksの範囲内の粘度を有する。
【0005】
本発明において、粘度は、DIN53015標準「Viscometry- Measurement ofViscosity by Means of the Rolling Ball Viscometer by Hoeppler」に従って、Haake DC10温度制御ユニットおよびボールセット800-0182、特に、直径が15.598mm、重量が4.4282g、密度が2.229g/cmであるボールNo.2を備えたHoeppler FallingBall Viscometer Model 356-001を使用して、25℃で測定される。
【0006】
本発明の一実施形態では、式AおよびBからなる群から選択される少なくとも1つのアルコキシシラン(i)は、その加水分解および縮合生成物でもあり得る。
そのような生成物は、式AおよびBからなる群から選択されるアルコキシシラン(i)のオリゴマーなどである。それらは、式AおよびBからなる群から選択されるアルコキシシラン(i)の加水分解および縮合によって調製される。すなわち、アルコキシシリル基は水と反応し、対応するアルコールを遊離し、その後、得られたヒドロキシシリル基はSi-O-Si(シロキサン基)の形成にて縮合する。得られる加水分解および縮合生成物またはオリゴマーは、例えば、2から30個のシロキシ単位、好ましくは2から10個のシロキシ単位、および残りのアルコキシ基を含む直鎖または環状ポリシロキサンであり得る。
アルコキシシラン(i)の量に関する条件、つまり
下付き文字aが0または1であり、下付き文字bが0、1または2であり、そしてa+bが2である場合の式Aのアルコキシシランの量は、コーティング形成組成物の0から約25重量パーセントであり、
a+bが0である場合の式Aのアルコキシシランの量は、コーティング形成組成物の0から約15重量パーセントであり、
下付き文字aが0または1であり、下付き文字bが0または1であり、そしてa+bが1である場合の式Aのアルコキシシラン、および式Bのアルコキシシランの合計量は、コーティング形成組成物の約8から約40重量パーセントであり、そして
式AおよびBのアルコキシシランの総量は、コーティング形成組成物の約50、好ましくは約45、より好ましくは約40重量パーセントを超えず、
式AおよびBのアルコキシシランに由来する対応するオリゴマーにも適用されること、が理解される。
そのようなオリゴマーの特定の好ましい例には、特にオリゴマーのグリシドキシプロピルトリメトキシシランが含まれる。
【0007】
さらに本発明によれば、上記の硬化性表面保護コーティング形成組成物を形成するための
a)アルコキシシラン(i)と酸加水分解触媒(iv)の一部との混合物を冷却すること;
b)ステップ(a)の冷却された混合物に金属酸化物(ii)と水(v)とを添加すること;
c)ステップ(b)から得られた混合物に水混和性有機溶媒(iii)および酸加水分解触媒(iv)の残りを添加すること;
d)ステップ(c)から得られた混合物を、25℃で約3.0から約7.0cStks、より具体的には約4.0から約5.5cStks、さらにより具体的には約4.5から約5.0cStksの範囲内の粘度を有する硬化性コーティング形成組成物を提供するのに有効な期間にて高められた温度の条件下でエージングすること;ならびに
e)任意にて、前述のいずれかのステップで、そのステップの間、またはそのステップ後に縮合触媒(vi)を添加すること、を含むプロセスも提供される。
金属酸化物(ii)が、シリカ、アルミナ、チタニア、セリア、酸化スズ、ジルコニア、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化鉄、酸化鉄および/またはジルコニアをドープしたチタニアおよび希土類酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの金属酸化物のコロイド懸濁液である場合、または金属酸化物(ii)が、アルミナおよびシリカの混合物から選択される場合、このプロセスは特に好ましい。
【0008】
さらに本発明の別の実施形態によれば、前述の硬化性表面保護コーティング形成組成物を形成するためのプロセスも提供され、該プロセスは
a)金属酸化物(ii)および酸加水分解触媒(iv)の混合物を、好ましくは約-20℃から約15℃、好ましくは約-10℃から約10℃、より好ましくは約0から約10℃の温度に冷却すること、
b)ステップ(b)の冷却された混合物にアルコキシシラン(i)(またはその混合物)を添加すること、
c)ステップc)で得られた混合物を室温(約25℃)に(好ましくはたとえば一晩で室温に到達させること、またはより少なく好ましくは熱を供給することのいずれかにより)温めさせること、
d)ステップd)で得られた混合物に少なくとも1つの水混和性有機溶媒(iii)、および任意に縮合触媒(vi)および任意に1つ以上の他の任意の成分(vii)を添加して、25℃で約3.0から約7.0cStksの範囲内の粘度を有する組成物を得ること、を含む。このプロセスは、金属酸化物(ii)がアルミナで修飾されたシリカから選択される場合に特に好ましい。例えば、Levasil(登録商標)100S/45 (現在: Levasil CS45-58P) (AkzoNobel)およびLevasil(登録商標)200S/30 (現在: Levasil CS30-516P) (AkzoNobel)などのアルミナ粒子で修飾されたシリカおよび酢酸(iv)の混合物がフラスコで攪拌される。アルコキシシラン(i)を20から50分以内に滴下する間に、混合物を0から10℃に冷却する。溶液が室温になる間に、混合物は撹拌される。次の日に、アルコールなどの溶媒(iii)、触媒(vi)、および流動添加剤(vii)が添加される。混合物全体を少なくとも15分間撹拌して、コーティング形成組成物を得る。
【0009】
本発明のさらに別の態様によれば、表面保護コーティング、すなわち、コーティングされていない金属またはプレコーティングされた金属の表面に耐腐食性および/または耐摩耗性を付与するコーティングを有する金属は、
f)前述のコーティング形成組成物のコーティングを、金属のコーティングされていない表面またはプレコーティングされた表面に適用すること、
g)コーティング形成組成物の適用されたコーティングから少なくともいくらかの溶媒(iii)を除去すること、ならびに
h)コーティング形成組成物の溶媒を失ったコーティングを硬化させて、金属表面上に耐腐食性および/または耐摩耗性のコーティングを提供することをさらに含むコーティングプロセスによって得られる。
【0010】
本発明の硬化性コーティング形成組成物は、優れた貯蔵安定性を有し、そしてそれから得られる硬化表面保護コーティングは、高レベルの耐腐食性および耐摩耗性、金属表面への付着、柔軟性(金属の屈曲による亀裂またはひび割れに対する耐性)、ならびに酸および/またはアルカリへの耐性などの1つまたは複数の機能的に有利な特性を示す傾向がある。さらに、本明細書の硬化コーティングの一般的に優れた光学的透明性により、下にある基材表面の審美的に魅力的な品質を良好な効果で示すことが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書および特許請求の範囲において、以下の用語および表現は、以下に示される意味を有すると理解されるべきである。
【0012】
単数形「a」、「an」、および「the」は複数形を含み、特定の数値への言及は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、少なくともその特定の値を含む。
【0013】
実施例または別段の指示がある場合を除き、本明細書および特許請求の範囲に記載されている材料の量、反応条件、持続時間、材料の定量化された特性などを表すすべての数値は、「約」という用語により全ての例において修飾されているものと理解されるべきである。
【0014】
本明細書で説明されるすべての方法は、本明細書で特に指示がない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行され得る。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図しており、特に請求されない限り、本発明の範囲の限定をもたらすものではない。
【0015】
明細書中のいかなる言葉も、請求されていない要素が本発明の実施に不可欠であることを示すと解釈されるべきではない。
【0016】
本明細書で使用されるとき、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、「によって特徴付けられる(characterized by)」という用語およびそれらの文法的同等物は、追加の、列挙されない要素または方法のステップを除外しない包括的または制限のない用語であるが、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consistingessentially of)」というより制限的な用語もまた含むことが理解されるであろう 。
【0017】
特に示さない限り、組成パーセントは重量パーセントで与えられる。
【0018】
本明細書に記載の任意の数値範囲は、その範囲内のすべての部分範囲、およびそのような範囲または部分範囲のさまざまな終点の任意の組み合わせを含むことが理解されよう。
【0019】
構造的、組成的および/または機能的に関連する化合物、材料または物質の群に属するものとして、明示的または暗示的に本明細書に開示および/または特許請求の範囲に記載されている化合物、材料または物質には、その群の個々の代表およびそれらのすべての組合せが含まれることがさらに理解されよう。
【0020】
「コーティング形成組成物」という表現は、それ自体が実用的または有用なコーティング組成物ではないが、本明細書で詳細に説明する処理後、金属表面に適用する高品質で効果的な熱硬化性表面保護コーティングを形成する組成物を意味すると理解されるべきである。
【0021】
本明細書で使用される「金属」という用語は、金属自体、金属合金、金属化部分、および1つまたは複数の非金属保護層を有する金属または金属化部分に適用されると理解されるべきである。
【0022】
「加水分解縮合」とは、コーティング組成物形成混合物中の1つまたは複数のシランが最初に加水分解され、続いて加水分解生成物とそれ自体または混合物の他の加水分解および/または非加水分解成分との縮合反応が続くことを意味する。
【0023】
A.コーティング形成組成物の成分
アルコキシシラン(i)
コーティング形成組成物中に存在するアルコキシシラン(i)は、上記の式Aの1つ以上のジアルコキシシラン、トリアルコキシシランおよび/またはテトラアルコキシシランおよび/または式Bの1つ以上のトリアルコキシシラン、但し少なくとも1つのそのようなトリアルコキシシランがそこに含まれるとき、であり得る。
【0024】
式Aのジアルコキシシランの例には、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、3-シアノプロピルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジ(p-トリル)ジメトキシシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(ヘキサメチレンアミノ)ジメトキシシラン、ビス(トリメチルシリルメチル)ジメトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシランなど、およびそれらの混合物が含まれる。
【0025】
上で説明したように、ジアルコキシシランを含むアルコキシシランには、その加水分解および縮合生成物(オリゴマー)も含まれる。
【0026】
式Aのトリアルコキシシランの例には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリブトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-ペンチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、それらのオリゴマーおよび混合物が含まれる。これらのうち、メチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびグリシドキシプロピルトリメトキシシランが特に有利である。
【0027】
上記で説明したように、トリアルコキシシランを含むアルコキシシランは、その加水分解および縮合生成物(オリゴマー)も含む。
【0028】
式Aのテトラアルコキシシラン(すなわち、テトラアルキルオルトシリケート)の例には、テトラメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、テトラプロポキシシランなど、およびそれらの混合物が含まれる。
【0029】
式Bのトリアルコキシシランの例には、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミンなど、およびそれらの混合物が含まれる。
【0030】
金属酸化物(ii)
金属酸化物成分(ii)は、一般に、粒子の形態、例えば、約5nmから約500nm、より具体的には約10から約200nm、さらにより具体的には約10から約60nmの平均粒子サイズの範囲のほぼ球形または等軸粒子の形態で提供される。平均粒子サイズは、特にフルMie理論を使用した低角度レーザー光散乱(LALLS)、特に、Malvern InstrumentsのMastersizer 2000または3000を使用して測定される。
【0031】
金属酸化物(ii)は、その水性コロイド分散液、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、セリア、酸化スズ、ジルコニア、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化鉄、酸化鉄および/またはジルコニアがドープされたチタニア、希土類酸化物、ならびにそれらの混合物および複合酸化物などの金属酸化物の水性コロイド分散液として有利に提供される。あるいは、粉末形態の金属酸化物(ii)をコーティング組成物内に分散させてもよい。
【0032】
好ましい金属酸化物(ii)は水性コロイドシリカである。本発明で有利に利用できるコロイドシリカの水性分散液には、約20から約150nm、好ましくは約5から約30nmの範囲の平均粒子サイズを有するものが含まれる。そのような分散液は、当技術分野で知られており、市販のものには、例えば、Ludox(登録商標)(Sigma Aldrich)、Snowtex(登録商標)(Nissan Chemical)、およびBindzil(登録商標)(AkzoNobel)、Nalco(登録商標)コロイドシリカ(Nalco Chemical Company)、Levasil(登録商標)(AkzoNobel)が含まれる。そのような分散液は、酸性および塩基性ヒドロゾルの形で入手できる。
【0033】
酸性および塩基性コロイドシリカの両方を、本発明のコーティング形成組成物に組み込むことができる。低いアルカリ含有量を有するコロイドシリカは、より安定したコーティング組成物を提供することができ、したがって好ましい場合がある。特に好ましいコロイドシリカには、Nalco(登録商標)1034A (Nalco Chemical Company)およびSnowtex(登録商標)O40、SnowtexST-033、およびSnowtex(登録商標)OL-40(Nissan Chemical)、Ludox(登録商標)AS40およびLudox(登録商標)HS 40(Sigma-Aldrich)、Levasil 200/30およびLevasil(登録商標)200 S/30(現在 Levasil CS30-516P) (AkzoNobel)、およびCab-O-Sperse(登録商標)A205 (Cabot Corporation)が含まれる。
【0034】
金属酸化物(ii)が段落[0030]から[0033]で定義された通りの場合、式AおよびBのアルコキシシランの総量は、コーティング形成組成物の約40重量パーセントを超えないことが好ましい。
【0035】
本発明によるコーティング形成組成物の実施形態では、金属酸化物(ii)は、アルミナとシリカの混合物から選択される。好ましくは、前記混合物について、アルミナ対シリカの重量比(Al/SiO)は、約1:99から約99:1、好ましくは約5:95から約90:10、より好ましくは約5:95から約75:25である。そのような混合物は、好ましくは、アルミナとシリカの水性コロイド分散液を混合することにより調製される。アルミナとシリカの混合物の使用により、アルミニウム表面への良好な接着性、非常に高い耐摩耗性、良好な腐食保護、耐熱性、耐酸性および耐アルカリ性がもたらされる。
【0036】
本発明によるコーティング形成組成物の実施形態において、金属酸化物(ii)は、アルミナで修飾されたシリカから選択される。一実施形態では、そのようなアルミナで修飾されたシリカは、表面がアルミナで修飾されたシリカであってもよい。したがって、そのようなアルミナで修飾されたシリカは、Al-SiO-コアシェル粒子と呼ばれることもある。また、この実施形態では、金属酸化物(ii)は、水性コロイド分散液として有利に提供され得る。そのようなアルミナで修飾されたシリカまたはAl-SiO-コアシェル粒子の使用は、自動車の外装、例えばルーフレールとトリムパーツの陽極酸化アルミニウム部品を保護するのに特に役立ち、そして高pHまたは低pHの液体に起因する高い耐腐食性、高い耐引掻性、および高い耐熱性を提供する。本発明によるコーティング形成組成物におけるそのようなアルミナで修飾されたシリカの使用は、長期の高酸性環境条件下で高い耐引掻性を提供する。アルミナで修飾されたシリカの例には、例えば、約85m/g(Levasil(登録商標)100S/45)および約160m/g(Levasil(登録商標)200S/30)の表面積を有する、約30nmの平均粒子サイズを有するAlで表面修飾されたシリカ粒子を含む、Levasil(登録商標)100S/45(現在: Levasil CS45-58P)分散液(水中45%)、約17nmの平均粒子サイズを有するAlで表面修飾されたシリカ粒子を含むLevasil(登録商標)200S/30 (現在: Levasil CS30-516P)分散液(水中30%)などのLevasilタイプが含まれる。
【0037】
アルミナで修飾されたシリカを使用する特定の実施形態では、異なる平均粒子サイズを有するアルミナで修飾された少なくとも2つのシリカを含む混合物を使用することができる。例えば、より小さい粒子サイズ(例えば、10から25nm)のアルミナで修飾されたシリカの重量比が、より大きい粒子サイズ(例えば、26から40nm)のアルミナで修飾されたシリカの量よりも大きく、好ましくは小/大の比は約10:1から約1:2、好ましくは約10:1から約2:1である、異なる平均粒子サイズを有するアルミナで修飾された2つのシリカの混合物を使用することができる。この方法は、特に高い耐引掻性を提供する。
【0038】
本明細書のコーティング形成組成物に組み込まれる金属酸化物(ii)の量は、一般に、組成物の重量に基づき約5から約50、より具体的には約10から約40、さらにより具体的には約10から約30重量パーセントに異なり得る。
【0039】
水混和性有機溶媒(iii)
本発明のコーティング形成組成物に組み込むことができる水混和性溶媒(iii)の例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、メトキシプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールブチルエーテル、およびそれらの組み合わせなどのアルコールである。アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノプロピルエーテル、および2-ブトキシエタノールなどの他の水混和性有機溶媒も利用できる。典型的には、これらの溶媒は水と組み合わせて使用され、後者はその水(v)の一部または全部を提供する金属酸化物(ii)および/またはコーティング組成物の他の成分に関連する水と一緒に使用される。
【0040】
コーティング形成組成物中に存在する水混和性溶媒(iii)の総量は、例えば、その総重量に基づいて約10から約80、より具体的には約10から約65、より具体的には約10から約60、さらにより具体的には、約10から約50重量パーセントなど、大きく異なり得る。コーティング形成組成物が金属酸化物(ii)としてアルミナで修飾されたシリカを含む場合、コーティング形成組成物中に存在する水混和性溶媒(iii)の総量は、例えば、その総重量に基づいて約40から約70、より具体的には約50から約65重量パーセントに大きく異なり得る。
【0041】
酸加水分解触媒(iv)
アルコキシシランの加水分解にこれまで使用されてきた酸性加水分解触媒のいずれも、本明細書のコーティング形成組成物に組み込むことができる。例示的な酸加水分解触媒(iv)には、硫酸、塩酸、酢酸、プロパン酸、2-メチルプロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、2-エチルヘキサン酸、ヘプタン酸(エナント酸)、ヘキサン酸、オクタン酸(カプリル酸)、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキシル酢酸、シクロヘキセンカルボン酸、安息香酸、ベンゼン酢酸、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、2-ブテン二酸(マレイン酸)、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソアノイック酸(isoanoic acid)、バーサティック酸(versatic acid)、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソアノイック酸、アミノ酸およびそれらの混合物が含まれる。酸加水分解触媒は、希釈せずに、または水溶液の形で使用できる。
【0042】
酸加水分解触媒(iv)は、本発明のコーティング形成組成物中に、ほとんどの場合、コーティング形成組成物の総重量に基づいて、約0.1から約5、より具体的には約0.5から約4.5、そしてより具体的には約2から約4重量パーセントの範囲であり得る、少なくとも触媒有効量にて存在することになる。特定の実施形態では、例えば、コーティング形成組成物が金属酸化物(ii)としてアルミナで修飾されたシリカを含む場合、酸加水分解触媒(iv)の量はまた、コーティング形成組成物の総重量に基づいて約0.1から約2重量パーセントの範囲であり得る。
【0043】
水(v)
本明細書のコーティング形成組成物の水成分は、有利には脱イオン(DI)水である。コーティング組成物形成混合物中に存在する全水の一部または全部を、混合物の1つまたは複数の他の成分の一部、例えば金属酸化物(ii)の水性コロイド分散液、水混和性溶媒(iii)、酸加水分解触媒(iv)任意の縮合触媒(vi)および/または以下に記載されるような他の任意の成分(vii)として添加してもよい。
【0044】
水(v)の総量は、コーティング形成組成物の総重量に基づいて、例えば、約5から約40、より具体的には約5から約30、さらにより具体的には約5から約15重量パーセントなど、広範囲に変化する範囲内であり得る。
【0045】
任意の縮合触媒(vi)
任意の縮合触媒(vi)は、本明細書のコーティング形成組成物の部分的または完全に加水分解されたシラン成分(a)および(b)の縮合を触媒し、したがって硬化触媒として機能する。
【0046】
コーティング形成組成物は、任意の縮合触媒(vi)の非存在下で硬化できるが、効率的な硬化には、より強い条件、例えば、高められた温度の適用(熱硬化)および/または長くされた硬化時間が必要になる場合があり、その両方ともコストおよび/または生産性の観点から望ましくことがあり得る。より経済的なコーティングプロセスを提供することに加えて、任意の縮合触媒(vi)の使用は一般に、コーティング形成組成物の改善された貯蔵寿命をもたらす。
【0047】
本明細書のコーティング形成組成物中に任意に存在してもよい縮合触媒(vi)の例は、式[(CN][OC(O)-Rのテトラブチルアンモニウムカルボキシレートであり、ここでRは、水素、1から約8個の炭素原子を含むアルキル基、および約6から約20個の炭素原子を含む芳香族基からなる群から選択される。好ましい実施形態では、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたはイソブチルなどの約1から4個の炭素原子を含む基である。より活性なタイプの縮合触媒(v)、例えば鉱酸およびアルカリ金属水酸化物と比較して、前述のテトラブチルアンモニウムカルボキシレートは、それらの触媒作用がやや穏やかであり、それらを含むコーティング形成組成物の貯蔵寿命を最適化する傾向がある。上記式の例示的なテトラブチルアンモニウムカルボキシレート縮合触媒は、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート(TBAA)、テトラブチルアンモニウムホルメート、テトラ-n-ブチルアンモニウムベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-p-エチルベンゾエートおよびテトラ-n-ブチルアンモニウムプロピオネートである。本発明の有効性および適合性に関して、好ましい縮合触媒は、テトラブチルアンモニウムカルボキシレート、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート(TBAA)、テトラ-n-ブチルアンモニウムホルメート、テトラ-n-ブチルアンモニウムベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-p-エチルベンゾエート、そしてテトラ-n-ブチルアンモニウムプロピオネート、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムベンゾエート、テトラヘキシルアンモニウムアセテート、ジメチルアニリウムホルメート、ジメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムカルボキシレート、テトラメチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート、ベンジルトリメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムアセテート、テトライソプロピルアンモニウムアセテート、トリエタノール-メチルアンモニウムアセテート、ジエタノールジメチルアンモニウムアセテート、モノエタノールトリメチルアンモニウムアセテート、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、TBDアセテート(1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デス-5-エン(TBD))、ならびにそれらの2つ以上の組み合わせである。
【0048】
上記テトラブチルアンモニウムカボキシレート縮合触媒のうち、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテートおよびテトラ-n-ブチルアンモニウムホルメートが一般に好ましく、そしてテトラ-n-ブチルアンモニウムアセテートがより好ましい。
【0049】
利用される場合、縮合触媒(vi)は、本明細書のコーティング形成組成物中に少なくとも触媒有効量、例えばその総重量に基づいて約0.0001から約1重量パーセントで存在することができる。
【0050】
その他の任意の成分(vii)
1つ以上の他の任意の成分(vii)は、本明細書のコーティング形成組成物に含めるのに適している。
【0051】
例えば、コーティング形成組成物は、レベリング剤または流動添加剤として機能する1つまたは複数の界面活性剤も含むことができる。適切な界面活性剤の例には、Fluorad(登録商標)(3M)などのフッ素化界面活性剤、Silwet(登録商標)およびCoatOSil(登録商標)(Momentive PerformanceMaterials, Inc.)などのシリコーンポリエーテル、およびBYK-302(BYK Chemie USA)などのポリエーテル変性シリコーンなどのシリコーン表面添加剤が含まれる。本明細書のコーティング組成物は、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ジベンジルレゾルシノールなどの紫外線吸収剤も含むことができる。好ましい紫外線吸収剤は、シランと共縮合できるものであり、その具体的な例としては、4-[ガンマ-(トリメトキシシリル)プロポキシル]-2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-[ガンマ-(トリエトキシシリル)プロポキシル]-2-ヒドロキシベンゾフェノンおよび4,6-ジベンゾイル-2-(3-トリエトキシシリルプロピル)レゾルシノールが含まれる。シランと共縮合することができる好ましい紫外線吸収剤が使用される場合、本明細書の熱硬化性コーティング組成物を金属の表面に適用する前に完全に混合することにより、紫外線吸収剤が他の反応種と共縮合することが重要である。紫外線吸収剤を共縮合することにより、風化中の環境への遊離紫外線吸収剤の浸出によって引き起こされ得るコーティング性能の低下を防ぐ。
【0052】
本明細書のコーティング形成組成物はまた、ヒンダードフェノールなどの1つ以上の酸化防止剤(例:Irganox(登録商標)1010(CibaSpecialty Chemicals)、メチレングリーン、メチレンブルーなどの染料)、二酸化チタン、リン酸亜鉛、重晶石、アルミニウムフレークなどのフィラー、およびジブチルフタレートなどの可塑剤を含むことができる。
【0053】
B.コーティング形成組成物の形成
本発明の熱硬化性コーティング組成物の形成において、アルコキシシラン(i)と酸加水分解触媒(iv)の一部の混合物を冷却すること、その後の酸加水分解触媒(iv)の残りの部分を添加すること、および高められた温度および時間の所定の条件下で得られた混合物をエージングすることは、約3.0から約7.0cStks、別の実施形態ではより具体的には約4.0から約5.5cStks、さらに別の実施形態ではより具体的には約4.5から約5.0cStksの範囲の粘度を有する熱硬化性組成物をもたらす。
冷却は、例えば、氷浴、氷/NaCl混合物、またはドライアイス/イソプロパノール混合物を使用して行うことができる。より具体的には、アルコキシシラン(i)と酸加水分解触媒(iv)をガラス瓶に入れ、そして外部温度計で温度をモニターしながら混合物を冷却するために氷浴に入れる。アルコキシシラン(i)および酸加水分解触媒(iv)の混合物の冷却は、約-20℃から約15℃、好ましくは約-10℃から約10℃、より好ましくは約0℃から約10℃の温度まで行うことが好ましい。
【0054】
本明細書の熱硬化性コーティング組成物を形成するプロセスの第1の段階では、式Aおよび/またはBのトリアルコキシシラン、任意の式Aのジアルコキシシランおよび/またはテトラアルコキシシラン、および酸加水分解触媒(iv)の総量の約10から約40パーセントの混合物を、約-20℃から約15℃、好ましくは約-10℃から約10℃の温度範囲内に冷却する。冷却状態にある間に、金属酸化物(ii)、例えば水性コロイドシリカが混合物にゆっくりと加えられる。
【0055】
金属酸化物(ii)の添加後、約2から約10日間、より具体的には約5から約8日間にわたって一定に攪拌しながら、冷却された混合物の温度は、周囲温度または周囲温度付近、例えば約20℃から約30℃まで上昇させた。この連続撹拌期間中、混合物のアルコキシシラン成分(i)は、初期レベルの加水分解を受け、そして得られた加水分解物の縮合が続く。
【0056】
金属酸化物(ii)がアルミナで修飾されたシリカから選択される場合、これらの配合物を数時間/一晩、例えば約2から約10時間冷却することが好ましい。
【0057】
本明細書の熱硬化性コーティング組成物を形成するプロセスの第2の段階では、水混和性溶媒(iii)および残りの酸加水分解触媒(iv)を、現在の周囲温度の反応媒体に、例えば約5から約24、より具体的には約8から約15時間の期間をかけて連続攪拌下で加えられ、その間に、シランおよび/または部分加水分解物のさらなる加水分解およびこうして形成されたその加水分解物の縮合が起こる。
【0058】
金属酸化物(ii)がアルミナで修飾されたシリカから選択される場合、酸加水分解触媒(iv)の全量を最初に直接添加することが好ましく、そのためこの時点での酸加水分解触媒(iv)の添加はない。
【0059】
第1の段階で酸加水分解触媒(iv)の一部を添加し、第2の段階で残りの酸加水分解触媒(iv)を添加すると、上述した粘度の範囲内の硬化性コーティング組成物が得られる。加水分解および縮合反応の速度は、酸加水分解触媒(iv)の濃度および反応混合物のpHに依存する。反応混合物の最終pHは、有利には約2から約7、より具体的には約4から約6に維持される。酸加水分解触媒(iv)は、各段階でpHを維持するために2つの段階で添加される。酸加水分解触媒(iv)の最初の部分は、金属酸化物微粒子(ii)の凝集と沈殿を防ぐように、例えば滴下により添加され、それによりアルコキシシラン成分(i)が加水分解を受け、金属酸化物粒子(ii)を官能化させる。金属酸化物微粒子(ii)のシラン化により、混合物のpHはほぼ中性になる。
【0060】
金属酸化物(ii)がアルミナで修飾されたシリカから選択される場合、通常、追加のpH調整なしで約3から約4、例えば約3.5から約3.8などのpH範囲が達成される。
【0061】
酸加水分解触媒(iv)は、混合物の最終pHを維持するために第2の段階で添加されてもよく、そしてシラノールの縮合が制御され、ゲル形成が抑制され、それにより比較的長い貯蔵寿命、例えば約15日以上、より具体的には約20日以上、さらにより具体的には約30日以上の周囲温度下での貯蔵後、その総重量の約5重量%未満、好ましくは約2重量%未満、より好ましくは約1重量%未満のゲルを含むコーティング形成組成物が得られる。特定の実施形態では、約0から約15℃、好ましくは約5から約10℃の範囲の温度での保管が適切であり得る。
【0062】
利用される場合、任意の縮合触媒(vi)は、硬化性コーティング組成物を調製するステップ(a)-(d)のいずれかにて、いずれかの間またはいずれかの後に少なくとも触媒有効量で添加され得る。任意の縮合触媒(v)の量は、コーティング形成組成物の総重量に基づいて、例えば約0.01から約0.5重量%、より具体的には約0.05から約0.2重量%など大きく異なり得る。
【0063】
残留シラノールの最適量は、以下でさらに詳しく説明するように、エージング中に縮合反応を加速することにより得られる。望ましい粘度レベルが得られると、硬化性コーティング組成物を所望の基材に適用して、その上に均一で透明で硬質のコーティングを生成することができる(以下の表5に記載の1kgの荷重でのスチールウール耐摩耗性試験)。
【0064】
この追加の加水分解期間に続いて、任意の縮合触媒(v)および1つまたは複数の他の任意の成分(vii)を、有利にはさらなる期間、例えば約1から約24時間の期間にて連続攪拌下にて、反応混合物に添加することができる。得られた反応混合物は、現在エージングの準備ができている。
【0065】
前述のコーティング組成物形成混合物のエージングは、約3.0から約7.0cStksの上記範囲内の粘度をもたらすことが実験的に測定されている期間にわたって高められた温度で実施される。
【0066】
金属酸化物(ii)がアルミナで修飾されたシリカから選択される場合、エージングは通常必要とされない。
【0067】
そのような粘度を達成すると、良から優良の硬化コーティング特性を備えた硬化性コーティング組成物が得られる。粘度が低いと、コーティングフィルムの硬度の低下や、コーティングの継続的暴露で発生する後硬化がもたらされ得る。粘度が高いと、硬化中およびその後の暴露条件でコーティングフィルムに亀裂がもたらされ得る。
【0068】
多くのコーティング組成物形成混合物について、約3.0から約7.0cStksの範囲内の粘度は、エアオーブン、例えば約30分間から約1日の間の約25から約100℃の温度、より具体的には約30分から約5日の間の約25から約75℃の温度、さらにより具体的には約3から約10日間の約25から約50℃の温度でコーティング形成混合物を加熱することにより達成することができる。ヒドロキシル含有加水分解性シランは、等量未満の水が加水分解性シリル基と反応する場合、部分的に加水分解される。加水分解パーセントが約1から約94パーセントの範囲にある場合、シランは部分的に加水分解されていると認められる。加水分解パーセントが約95から約100パーセントの範囲にある場合、ヒドロキシル含有加水分解性シランは実質的に完全に加水分解されていると認められる。部分的に加水分解されたヒドロキシル含有加水分解性シランは、水溶液中での安定性が優れており、なぜならR-O-Si基は、シラノール縮合の重合反応を停止し、ヒドロキシル含有加水分解性シランに由来する低い平均分子量のオリゴマー組成物を維持するからである。より低い平均分子量のオリゴマー組成物は、金属基材上により均一に吸着し、より良い接着をもたらす。
【0069】
C.コーティング適用と硬化手順
【0070】
追加の溶媒のさらなる添加の有無にかかわらず、本発明のコーティング形成組成物は、典型的には、約10から約50、より具体的には約15から約40、さらにより具体的には約20から約30重量パーセントの固形分を有する。コーティング組成物のpHは、しばしば約3から約7、より具体的には約4から約6の範囲内になることになる。
【0071】
金属酸化物(ii)がアルミナで修飾されたシリカから選択される場合、コーティング組成物のpHは、しばしば約3から約4、例えば約3.5から約3.8の範囲内になることになる。
【0072】
硬化性コーティング組成物は、プライマーを使用してまたは使用せずに、好ましくはプライマーを使用せずに、金属基材上にコーティングすることができる。
【0073】
適切な金属には、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、マグネシウム、銅、青銅、これらの各金属の合金などが含まれ、ここで陽極酸化アルミニウムは、その固有の耐腐食性と強度対重量比のために特に望ましい基材である。
【0074】
コーティング形成組成物は、スプレー、ブラッシングおよびフローコーティングなどの任意の従来の技法または他の既知の技法を使用して、金属表面または他の基材に適用することができる。ディップコーティングも可能である。濡性の、すなわち新たに適用されたコーティングの厚さは、かなり広い範囲、例えば約10から約150、より具体的には約20から約100、さらにより具体的には約40から約80ミクロンにわたって変化させることができる。乾燥時にそのような厚さの適用されたままのコーティングは、一般に、それぞれ約3から30、より具体的には約5から約20、さらに具体的には約10から約15ミクロンの範囲の厚さを有する硬化コーティングを提供することになる。
【0075】
金属酸化物(ii)がアルミナで修飾されたシリカから選択される場合、典型的には約2から約10ミクロン、好ましくは約3から約7ミクロンの乾燥コーティング厚(DFT)が調整される。
【0076】
コーティングが乾燥すると、溶媒(iii)およびその他の揮発性物質が蒸発し、短時間の経過、例えば15から30分程度で、適用されたコーティングは、接触にて不粘着になり、その結果、コーティング層/フィルムは、操作上の必要条件が当技術分野で周知である従来のまたは他の既知の熱硬化手順を有利に利用して硬化する準備ができていると認めることができる。例えば、熱加速硬化は、約30から約90分の期間にわたって約80から約200℃の温度状況内で実行され、基材金属上に硬化した光学的に透明な硬質保護コーティングを提供することができる。
【0077】
本発明のコーティング形成組成物から得られる硬化コーティングは、金属表面と直接接触してもよく、そこで唯一のコーティングとして機能してもよく、1つ以上の他のコーティングに重ねてもよく、および/またはそれ自体がその上に重ねて1つ以上の他のコーティングを有してもよい。硬化コーティング組成物は、その金属基材に耐腐食性および/または耐摩耗性を付与することに加えて、審美的コーティングとして機能することもあり得、その場合、金属基材上の唯一または最外コーティングを構成することになる。
【0078】
既知のアルコキシシラン系のコーティング形成組成物に対する本発明のコーティング形成組成物の利点は、出発成分とその量の特定の組み合わせ、およびコーティング形成組成物が得られる独特のプロセス、特にその個別の冷却、加水分解触媒の分割添加およびエージングステップに起因すると考えられている、本発明における並外れた貯蔵安定性だけではなく、そのさまざまな金属および金属化表面の任意の適用、および硬化コーティングの信頼性の高い均一な特性にもある。
【0079】
前に示したように、本発明の硬化コーティング組成物は、高レベルのその金属基材への接着性、耐腐食性、柔軟性(亀裂およびひび割れに対する耐性)、耐摩耗性/耐擦過性および光学的透明度を含む顕著な特性を示し、そして後者は、硬化コーティング組成物が装飾コーティングとしてさらに機能することになる、特に求められている特性である。
【実施例
【0080】
比較例1
比較例1は、Burger等の米国特許第6,695,904号に従って調製され、そして長さ15cm、幅4cm、厚さ4mmの陽極酸化アルミニウムパネルに適用された硬化性コーティング形成組成物を示す。
【0081】
メチルトリメトキシシラン62.0g、テトラエトキシシラン18.1g、および水性コロイドシリカ23.13g(40重量%懸濁液)の混合物を調製し、酸加水分解触媒として37重量%の硫酸1.3gmを-5℃で滴下した。混合物を20℃で1時間連続して攪拌して、コーティング組成物を得た。数時間以内に、反応混合物はゲル化した。しかしながら、1時間後、23℃の温度と40%RHで陽極酸化アルミニウム基材上に混合物を約10-15ミクロンの均一な厚さにフローコートする試みが行われた。フローコーティングの揮発性物質を25分間のフラッシュオフタイムで蒸発させた後、コーティングは130℃で1時間硬化した。
【0082】
得られた硬化コーティングは不透明であり、広範な亀裂を示し、下にある陽極酸化アルミニウム表面への接着があったとしてもほとんどないことを示す層間剥離をしていた。
【0083】
50℃で24時間エージングしたコーティング組成物のサンプルは完全にゲル化し、約23℃で保持したコーティング組成物のサンプルは24から48時間以内に完全にゲル化した。その不安定性のため、コーティング組成物の粘度は測定できなかった。
【0084】
例1-15(金属酸化物(ii)としてコロイドシリカを使用)
例1-15は、本発明のコーティング形成組成物の調製、ならびに長さ15cm、幅4cm、厚さ4mmの陽極酸化アルミニウムパネル、および長さ15cm、幅10cm、厚さ1mmのステンレス鋼パネル上の硬化コーティングとしてのそれらの性能を説明する。
【0085】
例1-15の硬化性コーティング形成組成物の出発成分を以下の表1に記す。
【表1】
【0086】
例1-15の硬化性コーティング形成組成物を形成するために使用される一般的な手順を、以下の表2に記載する。
【表2】
【0087】
表1に記された出発材料および表2に記載された一般的な調製手順を使用して、例1-15の硬化性コーティング形成組成物は、以下の表3に示される混合物から調製された。
【表3】

【表4】

【表5】
【0088】
以下の表4に示される例1、3および15のコーティング形成組成物の粘度は、DIN53015標準「Viscometry- Measurement ofViscosity by Means of the Rolling Ball Viscometer by Hoeppler」に従って、Haake DC10温度制御ユニットおよびボールセット800-0182、特に、直径が15.598mm、重量が4.4282g、密度が2.229g/cmであるボールNo.2を備えたHoeppler FallingBall Viscometer Model 356-001を使用して、25℃で測定した。
【表6】
【0089】
例1-15の硬化性コーティング形成組成物を陽極酸化アルミニウムおよびステンレス鋼パネルに適用し、そしてその上のコーティングを硬化するための一般的な手順は次のとおりであった。
コーティング手順
約10ミクロンの厚さを有するコーティング層の適用は、任意の適切な手段、例えば、ディップ、フローまたはスプレーコーティングによって実行され得る。ディップコーティングは、陽極酸化アルミニウムパネルにコーティング形成組成物の約10ミクロン厚の層を適用するために使用され、フローコーティングは、この厚さのコーティングをステンレス鋼パネルに適用するために使用された。
硬化手順
陽極酸化アルミニウムおよびステンレス鋼の基材にコーティングを適用した後、揮発物は約23℃で蒸発し、約25分以内に不粘着コーティング層が形成された。次に、コーティングされたパネルを130℃の熱風オーブンで45-60分間焼いて、金属表面に完全に硬化した透明なハードコートを生成した。
【0090】
コーティングされた金属パネルの試験は、以下の表5に記載されているように実施された。
【表7】
【0091】
コーティング性能データは、以下の表6-9に示されている。
【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

例16から25(金属酸化物(ii)としてシリカとアルミナ粒子の混合物を使用)
【表12】

【表13】
【0092】
コーティング配合物は、以下の手順のいずれかによって調製された。
コーティング配合物のワンポット手順:
ガラス瓶に酢酸およびトリアルコキシシランを入れた。氷浴で反応混合物を0℃に冷却した後、シリカナノ粒子と水の混合物を、シランと酢酸の冷却された混合物に滴下し、温度を10℃未満に維持した。次に混合物を約1-2時間撹拌させた。アルミナナノ粒子分散液を混合物に添加し、12-14時間撹拌させ、そして溶液の温度はゆっくりと室温まで上昇した。次に、アルコールと残りの酢酸を加え、TBAA触媒と流動添加剤を加えた後、約12時間攪拌した。この後配合物は、金属表面にコーティングする前に、熱風オーブンにて50℃で5日間エージングされた。
【0093】
コーティング配合物のツーポット手順:
この方法では、アルコキシシランを異なるナノ粒子と別々に反応させることにより、コーティング溶液を調製できる。この方法は、配合物中にナノ粒子が沈殿する傾向がある組成物のワンポット手順よりも優れた選択肢となり得る。また一方で、この方法は一般に、2つの異なるナノ粒子の任意の比率を有するコーティング組成物に使用することができる。この方法では、ガラス瓶に酢酸とトリアルコキシシランを入れた。反応混合物を氷浴で0℃に冷却した後、シリカナノ粒子と水の混合物を、シランと酢酸の冷却された混合物に滴下し、温度を10℃未満に維持した。次に、混合物を約16時間撹拌させて、その間に溶液の温度がゆっくりと室温に上昇した。別のガラス瓶で、アルコキシシランの一部(好ましくはシランとナノ粒子の重量比1:1)とナノ粒子(アルミナ)を一緒に混合し、室温で約16時間撹拌し続けた。この後、両方の溶液を室温で共に混合し、1-2時間撹拌し続けた。次に、アルコールと残りの酢酸を加え、TBAA触媒と流動添加剤を加えた後、約12時間攪拌した。この後、金属表面にコーティングする前に、配合物は熱風オーブンにて50℃で約5日間エージングされた。
【0094】
金属表面のコーティングの一般的な手順:
コーティング組成物は、陽極酸化アルミニウム表面に直接適用された、熱硬化単層光学透明性保護コーティングである。約10ミクロン程度の薄さの薄層コーティングの適用は、ディップ/フロー/スプレーコーティングによって達成された。アルミニウム基材にコーティングした後、周囲条件(約20-25℃、40±10%RH)で揮発性物質が蒸発し、25-30分以内に不粘着コーティング層が形成される。溶剤で洗い流した後、コーティングされたパネルを130-200℃の熱風オーブンで30-60分間焼いて、金属表面に完全に硬化した透明なハードコートを得た。
【0095】
試験方法(例16-25)
コーティング外観:本試験は、目視検査によって行われる。合格するには、コーティングは滑らかで、光沢があり、光学的に透明で、コーティングの欠陥がないものでなければならない。
【0096】
初期接着:標準手順ASTMD 3359に従って、クロスハッチ接着試験を行う。許容されるためには、すべてのコーティングが5Bに合格しなければならない。
【0097】
クロックメーター耐摩耗性試験:本試験は、AATCC Crockmeter CM-5計器により、5cm×5cm(Atlas製)の緑色の布を使用して、10サイクル(1サイクル=前後に擦る);距離:100mm;力:9N(自動的に適用)で行われる。本試験に合格するには、試験後に表面に目に見える擦傷が付いてはいけない。
【0098】
耐熱性:コーティングされたパネルは、160℃の熱風オーブンに24時間維持される。合格するためには、接着損失、層間剥離、または亀裂があってはいけない。
【0099】
耐塩酸試験:コーティングされたパネルは、pH1.0の塩酸(HCl)酸溶液に10分間浸漬される。暴露後、パネルを溶液から取り出し、DI水で洗浄し、周囲条件で乾燥させる。合格するためには、コーティングフィルムの軟化、接着損失、層間剥離、亀裂または腐食があってはいけない。
【0100】
耐アルカリ性試験:コーティングされたパネルは、pH13.5の水酸化ナトリウム緩衝液に10分間浸される。緩衝液は、適切な重量の水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム十水和物、塩化ナトリウム、および脱イオン水を混合することにより調製される。暴露後、パネルを溶液から取り出し、DI水で洗浄し、周囲条件で乾燥させる。合格するためには、コーティングフィルムの軟化、接着損失、層間剥離、亀裂または腐食があってはいけない。
【0101】
耐硫酸試験:コーティングされたパネルは、pH2.1のHSO溶液に5日間浸漬される。暴露後、パネルを溶液から取り出し、DI水で洗浄し、周囲条件で乾燥させる。合格するためには、コーティングフィルムの軟化、接着損失、層間剥離、亀裂または腐食があってはいけない。
【0102】
耐腐食性試験-ケステルニッヒ試験(酸性雨シミュレーション):本試験は、3サイクルまでDIN50017に従って行われる。本試験に合格するために、コーティングは、軟化、層間剥離、接着損失、視覚的外観の変化、またはその他のコーティング欠陥を示さないものとする。
【表14】
【0103】
耐腐食性試験:ケステルニッヒ試験(酸性雨シミュレーション)
例19、23、24および25は、ケステルニッヒ試験を受け、すべて試験に合格した。
【0104】
これらの試験から明らかなように、シリカおよびアルミナ粒子を含む例16-25の本発明の組成物はすべて、接着性、摩耗およびpH耐性試験(HClおよびNaOH緩衝液)などの良好なコーティング特性を提供する。特に、これらの例は、耐擦傷性、耐硫酸性を含むpH耐性試験、およびケステルニッヒ試験に関しても非常に良好な結果を提供する。
例26から30(金属酸化物(ii)としてのAl-SiO-コアシェル粒子)
【表15】

【表16】
【0105】
コーティング組成物の調製
コアシェル粒子Levasil 100S/45およびLevasil 200S / 30と酢酸の混合物は、フラスコ内で攪拌される。混合物を0-10℃に冷却し、一方でシランを20-50分以内に滴下する。溶液が室温になるまで混合物を撹拌する。翌日、アルコール、触媒、流動添加剤が添加される。混合物全体を少なくとも15分間撹拌する。
【0106】
コーティング手順
調製後、透明コーティング組成物は、2μmから8μmの層厚で陽極酸化アルミニウムに直接適用された。コーティング組成物の適用は、ディップ/フローまたはスプレーコーティングによって達成された。陽極酸化アルミニウム基材をコーティングした後、溶剤の洗い流しを2-20分行い、粘着性のないコーティング層を得た。コーティングされた基材は、130℃から200℃の熱風オーブンで30分から2時間硬化されて完全な硬化を得る。
【0107】
表15:例26-30の試験結果
以下の試験と試験手順は、陽極酸化アルミニウム部品で実行されている。
【0108】
DIN50018-2,0Sから移行したSOラボ試験:40℃の水浴に入れた5L瓶に0.67重量%SO溶液。コーティングされたサンプルは、下部がこの溶液に入れられ、一方で上部がSO雰囲気を受ける。試験仕様によれば、コーティングは5日後に光学的に変化してはいけない。
【0109】
TL182に基づく耐アルカリ性:23℃から35℃の温度範囲で、同一成分で以下の一連の試験を行っても外観に変化なし。
a)1kgの荷重で10回の二重摩擦
b)pH1溶液(0.1モル塩酸)への10分の浸漬
c)水でのすすぎと乾燥
d)40℃で1時間エージングした後、冷却せずに一連の試験を続行
e)pH13.5溶液への10分浸漬(苛性ソーダ12.7g、リン酸ナトリウム十二水和物4.64g、塩化ナトリウム0.33g;すべて1リットルの水に溶解)
【0110】
DINEN ISO 9227に基づく48時間の塩水噴霧試験(CASS試験)
【0111】
以下の表は、異なるコーティング組成物からの結果を要約している。
【表17】
【0112】
本発明は、その特定の実施形態を参照して上で説明されたが、本明細書に開示された本発明の概念から逸脱することなく、多くの変更、修正、および変形を行うことができることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲内にあるすべてのそのような変更、修正、および変形を包含することが意図されている。