(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】加工基板構造物を使用して実現された電力デバイスおよびRFデバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20230802BHJP
H01L 27/12 20060101ALI20230802BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20230802BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230802BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
H01L27/12 B
H01L21/20
H01L29/78 301B
H01L29/78 301X
(21)【出願番号】P 2020524897
(86)(22)【出願日】2018-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018059181
(87)【国際公開番号】W WO2019090212
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-11-02
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518137335
【氏名又は名称】クロミス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【氏名又は名称】穐場 仁
(72)【発明者】
【氏名】オドノブリュードフ,ウラジミール
(72)【発明者】
【氏名】バセリ,セム
(72)【発明者】
【氏名】アクタス,オズギュル
(72)【発明者】
【氏名】ファーレンズ,シャリ
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0309676(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0288055(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0121310(US,A1)
【文献】特開2016-054215(JP,A)
【文献】特開2015-111663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/12
H01L 21/02
H01L 21/20
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶セラミックコアと、
前記多結晶セラミックコアに結合し
、前記多結晶セラミックコアを包む第1の付着層と、
前記第1の付着層に結合した導電層と、
前記導電層
および前記第1の付着層に結合した第2の付着層
であって、前記導電層および前記第1の付着層を包む第2の付着層と、
前記第2の付着層に結合したバリア層と
を備える支持構造物と、
前記支持構造物に結合したバッファ層と、
前記バッファ層に結合したコンタクト層と、
前記コンタクト層に結合した電界効果トランジスタ(FET)と
を備え
、
前記導電層は、前記第1の付着層の下半分または裏面にのみ形成されている、電子デバイス。
【請求項2】
前記FETは、フィンFETを含む、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記FETは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を含む、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記支持構造物は、
前記バリア層に結合した結合層と、
前記結合層に結合した実質的に単結晶のシリコン層と
をさらに備え、
前記バッファ層は、前記実質的に単結晶のシリコン層に結合したエピタキシャルIII-V層を含む、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記エピタキシャルIII-V層は、エピタキシャル窒化ガリウム層を含む、請求項4に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記エピタキシャル窒化ガリウム層は、約5μm以上の厚さを有する、請求項5に記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記多結晶セラミックコアは、窒化アルミニウムを含む、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記第1の付着層は、前記多結晶セラミックコアを包む第1のテトラエチルオルトシリケート(TEOS)層を含み、
前記導電層は
、ポリシリコン層を含み、
前記第2の付着層は、前記ポリシリコン層を包む第2のTEOS層を含み、
前記バリア層は、前記第2のTEOS層を包む窒化シリコン層を含む、請求項7に記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記第1のTEOS層は、約1000Åの厚さを有し、
前記ポリシリコン層は、約3000Åの厚さを有し、
前記第2のTEOS層は、約1000Åの厚さを有し、
前記窒化シリコン層は、約4000Åの厚さを有する、請求項8に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2017年11月6日に出願された米国特許仮出願第62/582,090号および2018年11月2日に出願された米国特許出願第16/179,351号の利益を主張し、これらの出願の内容は、その全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
[0002]窒化ガリウム系のデバイスは、典型的には、サファイア基板上にエピタキシャル成長によって形成される。基板とエピタキシャル層とが異なる材料で構成されているため、サファイア基板上での窒化ガリウム系のデバイスの成長は、ヘテロエピタキシャル成長プロセスである。ヘテロエピタキシャル成長プロセスゆえに、エピタキシャル成長によって形成された材料が、均一性の低下や、エピタキシャル層の電子的特性および機械的特性に関する指標の低下など、さまざまな悪影響を示す可能性がある。したがって、エピタキシャル成長プロセスおよび基板構造物に関して改善された方法およびシステムが、技術的に必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0003]本発明は、広くには、設計された(engineered)基板構造物上に実現されたデバイスに関する。より具体的には、本発明は、エピタキシャル成長プロセスにおける使用に適した方法およびシステムに関する。あくまでも一例として、本発明は、エピタキシャル成長に適した基板構造物であって、この基板構造物上で成長するエピタキシャル層に実質的に一致した熱膨張係数(CTE)を特徴とする基板構造物を提供するための方法およびシステムに適用されている。これらの基板は、電力デバイスおよびRFデバイスなどの幅広くさまざまな電子デバイスの製造における使用に適する。これらの方法および技術は、さまざまな半導体処理作業に適用可能である。
【0004】
[0004]本発明の一実施形態によれば、電子デバイスが提供される。電子デバイスは、多結晶セラミックコアと、多結晶セラミックコアに結合した第1の付着層と、第1の付着層に結合した導電層と、導電層に結合した第2の付着層と、第2の付着層に結合したバリア層とを備える支持構造物を含む。電子デバイスは、支持構造物に結合したバッファ層と、バッファ層に結合したコンタクト層と、コンタクト層に結合したFETとをさらに含む。
【0005】
[0005]本発明の一実施形態によれば、基板が提供される。基板は、多結晶セラミックコアと、多結晶セラミックコアに結合した第1の付着層と、第1の付着層に結合した導電層と、導電層に結合した第2の付着層と、第2の付着層に結合したバリア層とを備える支持構造物を含む。基板は、支持構造物に結合した酸化シリコン層と、酸化シリコン層に結合した実質的に単結晶のシリコン層と、実質的に単結晶のシリコン層に結合したエピタキシャルIII-V層とをさらに含む。
【0006】
[0006]本発明の別の実施形態によれば、基板の製造方法が提供される。この方法は、多結晶セラミックコアを用意し、多結晶セラミックコアを第1の付着シェルで包み、第1の付着シェルを導電性シェルで包み、導電性シェルを第2の付着シェルで包み、第2の付着シェルをバリアシェルで包むことによって、支持構造物を形成することを含む。この方法は、支持構造物に結合層を接合すること、結合層に実質的に単結晶のシリコン層を接合すること、実質的に単結晶のシリコン層上のエピタキシャル成長によってエピタキシャルシリコン層を形成すること、およびエピタキシャルシリコン層上のエピタキシャル成長によってエピタキシャルIII-V層を形成することをさらに含む。
【0007】
[0007]本発明の特定の実施形態によれば、加工基板構造物が提供される。加工基板構造物は、支持構造物と、支持構造物に結合した結合層と、結合層に結合した実質的に単結晶のシリコン層と、実質的に単結晶のシリコン層に結合したエピタキシャル単結晶シリコン層とを含む。支持構造物は、多結晶セラミックコアと、多結晶セラミックコアに結合した第1の付着層と、第1の付着層に結合した導電層と、導電層に結合した第2の付着層と、第2の付着層に結合したバリアシェルとを含む。
【0008】
[0008]本発明のいくつかの実施形態によれば、音響共振器が支持構造物を含む。支持構造物は、多結晶セラミックコアと、多結晶セラミックコアに結合した第1の付着層と、第1の付着層に結合した導電層と、導電層に結合した第2の付着層と、第2の付着層に結合したバリア層とを含む。支持構造物は、空洞を定める。音響共振器は、支持構造物の一部分に機械的に結合したIII-V層をさらに含む。III-V層の一部分は、支持構造物によって定められたキャビティの上方に独立している。音響共振器は、III-V層の第1の表面に結合した第1の電極と、III-V層の独立している部分において第1の表面の反対側のIII-V層の第2の表面に結合した第2の電極とをさらに含む。
【0009】
[0009]本発明により、従来からの技術と比べて多くの利点が達成される。例えば、本発明の実施形態は、光学、電子、および光電子の用途における使用に適した窒化ガリウム系のエピタキシャル層にCTEが一致した加工基板構造物を提供する。加工基板構造物の構成要素として利用される包囲層は、基板の中央部分に存在する不純物の拡散が、加工基板を利用する半導体プロセス環境に到達することを阻止する。熱膨張係数、格子不整合、熱安定性、および形状制御などの基板材料に関する主要な特性が、窒化ガリウム系のエピタキシャル層およびデバイス層ならびに種々のデバイスアーキテクチャおよび性能目標との調和を改善(例えば、最適化)するために、独立して設計される。基板材料層が従来からの半導体製造プロセスに一緒に統合されるため、プロセス統合が単純になる。本発明のこれらの実施形態および他の実施形態が、その多数の利点および特徴とともに、下記の説明および添付の図面との連動において、さらに詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態による加工基板構造物を説明する簡単な概略図である。
【
図2A】本発明の実施形態による設計された構造物について、種の濃度を深さの関数として示すSIMSプロファイルである。
【
図2B】本発明の実施形態によるアニール後の設計された構造物について、種の濃度を深さの関数として示すSIMSプロファイルである。
【
図2C】本発明の実施形態によるアニール後の窒化シリコン層を有する設計された構造物について、種の濃度を深さの関数として示すSIMSプロファイルである。
【
図3】本発明の別の実施形態による加工基板構造物を説明する簡単な概略図である。
【
図4】本発明のさらに別の実施形態による加工基板構造物を説明する簡単な概略図である。
【
図5】本発明の実施形態による加工基板の製造方法を説明する簡単なフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態によるRFおよび電力用途のためのエピタキシャル加工基板構造物を示す簡単な概略図である。
【
図7】本発明の実施形態による加工基板構造物上のIII-Vエピタキシャル層を説明する簡単な概略図である。
【
図8】本発明の別の実施形態による加工基板の製造方法を説明する簡単なフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態による加工基板を使用して製造された準垂直アーキテクチャを有するフィンFETの簡単な概略図である。
【
図10】本発明の実施形態による加工基板を使用して製造されたフィンFETの加工基板からの取り外し後を示す簡単な概略図である。
【
図11】本発明の実施形態による加工基板を使用して製造された準垂直アーキテクチャを有する側壁MOSトランジスタの簡単な概略図である。
【
図12】本発明の実施形態による加工基板を使用して製造された準垂直アーキテクチャを有する側壁MOSトランジスタの加工基板からの取り外し後の簡単な概略図である。
【
図13】本発明の実施形態による加工基板を使用して製造されたMOSトランジスタの簡単な概略図である。
【
図14A】本発明の実施形態による加工基板を使用して製造された音響共振器を説明する簡単な概略図である。
【
図14B】本発明の別の実施形態による加工基板を使用して製造された音響共振器を説明する簡単な概略図である。
【
図15】本発明の実施形態による加工基板を使用して製造されたマイクロLEDディスプレイの加工基板からの取り外し後を示す簡単な概略図である。
【
図16A】本発明の実施形態による加工基板を使用して製造されたMEMSデバイスを説明する簡単な概略図である。
【
図16B】本発明の別の実施形態による加工基板を使用して製造されたMEMSデバイスを説明する簡単な概略図である。
【
図16C】本発明の実施形態による加工基板を使用して製造されたMEMSデバイスの加工基板からの取り外し後を示す簡単な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0031]本発明の実施形態は、加工基板構造物に関する。より具体的には、本発明は、エピタキシャル成長プロセスにおける使用に適した方法およびシステムに関する。あくまでも一例として、本発明は、エピタキシャル成長に適した基板構造物であって、この基板構造物上で成長するエピタキシャル層に実質的に一致した熱膨張係数(CTE)を特徴とする基板構造物を提供するための方法およびシステムに適用されている。これらの方法および技術は、さまざまな半導体処理作業に適用可能である。
【0012】
[0032]
図1は、本発明の実施形態による加工基板構造物を説明する簡単な概略図である。
図1に示される加工基板100は、さまざまな電子および光学の用途に適する。加工基板は、この加工基板100上で成長するエピタキシャル材料の熱膨張係数(CTE)に実質的に一致するCTEを有することができるコア110を含む。エピタキシャル材料130は、加工基板の要素としては必要でないが、典型的には加工基板上で成長するため、随意であるとして示されている。
【0013】
[0033]窒化ガリウム(GaN)系の材料(GaN系の層を含むエピタキシャル層)の成長を含む用途の場合、コア110は、多結晶セラミック材料であってよく、例えば酸化イットリウムなどの結合材料を含むことができる多結晶窒化アルミニウム(AlN)であってよい。多結晶窒化ガリウム(GaN)、多結晶窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、多結晶炭化シリコン(SiC)、多結晶酸化亜鉛(ZnO)、多結晶三酸化ガリウム(Ga2O3)、など、他の材料もコア110に利用することができる。
【0014】
[0034]コアの厚さは、100~1,500μm程度であってよく、例えば725μmであってよい。コア110は、シェルまたは包囲シェルと呼ぶことができる第1の付着層112に包まれる。一実施形態において、第1の付着層112は、厚さが約1,000Å程度であり、例えば800Åであるテトラエチルオルトシリケート(TEOS)層を備える。他の実施形態において、第1の付着層の厚さは、例えば100Åから2,000Åまで、さまざまである。いくつかの実施形態においては付着層にTEOSが利用されるが、本発明の実施形態によれば、後に堆積させられる層と下方の層または材料(例えば、セラミック、とくには多結晶セラミック)との間の付着をもたらす他の材料も、利用可能である。例えば、SiO2または他の酸化シリコン(SixOy)は、セラミック材料に良好に付着し、後の導電性材料などの堆積に適した表面を提供する。第1の付着層112は、LPCVDプロセスを使用して形成されてよく、いくつかの実施形態においては、コア110を完全に取り囲んで、完全に包まれたコアを形成する。第1の付着層112は、後続の層が加工基板構造物の要素を形成すべく付着する表面を提供する。
【0015】
[0035]包囲の第1の付着層を形成するためのLPCVDプロセス、炉に基づくプロセス、などの使用に加えて、CVDプロセスまたは同様の堆積プロセスなどの他の半導体プロセスを、本発明の実施形態に従って利用することができる。一例として、コアの一部分をコーティングする堆積プロセスを利用することができ、コアを裏返して、コアのさらなる部分をコーティングするために堆積プロセスを繰り返すことができる。したがって、いくつかの実施形態においては、完全に包まれた構造物をもたらすためにLPCVD技術が利用されるが、他の膜形成技術も、個々の用途に応じて利用することが可能である。
【0016】
[0036]付着層112を取り囲む導電層114が形成される。一実施形態において、導電層114は、第1の付着層112を囲んで形成されるポリシリコン(すなわち、多結晶シリコン)のシェルであり、何故ならば、ポリシリコンはセラミック材料に対して良好な付着を示さない可能性があるからである。導電層がポリシリコンである実施形態において、ポリシリコン層の厚さは、500~5,000Å程度であってよく、例えば2,500Å、2,750Å、3,000Å、3,250Å、3,500Å、などであってよい。いくつかの実施形態においては、ポリシリコン層を、LPCVDプロセスを使用して形成することができ、第1の付着層112(例えば、TEOS層)を完全に囲むシェルとして形成することにより、完全に包まれた第1の付着層を形成することができる。他の実施形態においては、以下で論じられるように、導電性材料を、例えば基板構造物の下半分など、付着層の一部分上に形成することができる。いくつかの実施形態においては、導電性材料を完全な包囲層として形成し、その後に基板構造の片側において除去することができる。
【0017】
[0037]一実施形態において、導電層114は、例えばp型ポリシリコン層をもたらすようにホウ素でドープされるなど、高導電性材料をもたらすようにドープされたポリシリコン層であってよい。いくつかの実施形態において、ホウ素によるドープは、高い導電率をもたらすために1×1019cm-3~1×1020cm-3のレベルである。さまざまなドーパント濃度の他のドーパント(例えば、1×1016cm-3~5×1018cm-3の範囲のドーパント濃度のリン、ヒ素、ビスマス、など)を利用して、導電層における使用に適したn型またはp型のいずれかの半導体材料をもたらすことができる。当業者であれば、多数の変種、改良、および代案を認識できるであろう。
【0018】
[0038]導電層114の存在は、例えば静電チャック(ESC)を備えたツールなどの半導体処理ツールへの加工基板の静電チャックにおいて有用である。導電層114は、半導体処理ツールでの処理後の迅速なチャック解除を可能にする。したがって、本発明の実施形態は、従来からのシリコンウェーハにおいて利用されるやり方で処理することができる基板構造物を提供する。当業者であれば、多数の変種、改良、および代案を認識できるであろう。
【0019】
[0039]第2の付着層116(例えば、厚さが約1,000Å程度であり、例えば800ÅであるTEOS層)116が、導電層114を取り囲んで形成される。第2の付着層116は、LPCVDプロセス、CVDプロセス、またはスピンオン誘電体の堆積などの任意の他の適切な堆積プロセスを使用して形成可能であり、いくつかの実施形態においては導電層114を完全に取り囲み、完全に包まれた構造物を形成する。
【0020】
[0040]例えば窒化シリコン層であるバリア層118が、第2の付着層116を取り囲んで形成される。一実施形態において、バリア層118は、厚さが約1,000Å~5,000Å程度の窒化シリコン層118である。バリア層118は、LPCVDプロセスを使用して形成されてよく、いくつかの実施形態においては、第2の付着層116を完全に取り囲んで、完全に包まれた構造物を形成する。窒化シリコン層に加えて、SiCN、SiON、AlN、SiC、などを含むアモルファス材料をバリア層として利用することが可能である。いくつかの実施例において、バリア層118は、バリア層を形成すべく重ねられるいくつかのサブ層を含む。したがって、バリア層という用語は、単一の層または単一の材料を示すことを意図しておらず、複合の様相で重ねられた1つ以上の材料を包含するように意図される。当業者であれば、多数の変種、改良、および代案を認識できるであろう。
【0021】
[0041]いくつかの実施形態において、例えば窒化シリコン層であるバリア層118は、例えば高温(例えば、1,000℃)のエピタキシャル成長プロセスの最中に、例えば酸化イットリウム(すなわち、イットリア)、酸素、金属不純物、他の微量元素、などのコア110内に存在する元素が、加工基板が存在し得る半導体処理チャンバの環境へと拡散し、さらには/あるいは放出されることを防止する。本明細書に記載の包囲層を利用することで、非クリーンルーム環境用として設計された多結晶AlNなどのセラミック材料を、半導体のプロセスフローおよびクリーンルーム環境において利用することができる。
【0022】
[0042]
図2Aは、本発明の実施形態による設計された構造物について、種の濃度を深さの関数として示す二次イオン質量分析(SIMS)プロファイルである。この設計された構造物は、バリア層118を含んでいない。
図2Aを参照すると、セラミックコアに存在するいくつかの種(例えば、イットリウム、カルシウム、およびアルミニウム)は、設計された層120/122において無視できる濃度まで低下する。カルシウム、イットリウム、およびアルミニウムの濃度は、それぞれ3桁、4桁、および6桁低下している。
【0023】
[0043]
図2Bは、本発明の実施形態によるアニール後のバリア層を持たない設計された構造物について、種の濃度を深さの関数として示すSIMSプロファイルである。上述のように、半導体処理作業において、本発明の実施形態によってもたらされた加工基板構造物は、例えばGaN系の層のエピタキシャル成長の際に、数時間にわたって高温(約1,100℃)に曝される可能性がある。
【0024】
[0044]
図2Bに示されるプロファイルにおいて、加工基板構造物は、4時間の期間にわたって1,100℃でアニールされている。
図2Bによって示されるように、堆積時のままのサンプル中に当初は低濃度で存在していたカルシウム、イットリウム、およびアルミニウムが、設計された層へと拡散し、他の元素と同様の濃度に達している。
【0025】
[0045]
図2Cは、本発明の実施形態によるアニール後のバリア層を有する設計された構造物について、種の濃度を深さの関数として示すSIMSプロファイルである。加工基板構造物に拡散バリア層118(例えば、窒化シリコン層)を取り入れることで、アニーリングプロセスの際に、拡散バリア層が存在しない場合に生じていたカルシウム、イットリウム、およびアルミニウムの設計された層への拡散が防止される。
図2Cに示されるように、セラミックコア中に存在するカルシウム、イットリウム、およびアルミニウムは、アニール後の設計された層において低い濃度のままである。このように、バリア層118(例えば、窒化シリコン層)の使用は、これらの元素が拡散バリアを通って拡散することを防止することにより、加工基板の周囲の環境への放出を防止する。同様に、バルクのセラミック材料内に含まれ得る他の不純物も、バリア層によって閉じ込められる。
【0026】
[0046]典型的には、コア110を形成するために利用されるセラミック材料は、1,800℃の範囲の温度で焼成される。このプロセスにより、セラミック材料に存在する不純物のかなりの量が、追い出されると予想される。これらの不純物として、焼結剤としてのイットリアの使用に起因するイットリウム、カルシウム、ならびに他の元素および化合物を挙げることができる。続いて、800℃~1,100℃の範囲のはるかに低い温度で行われるエピタキシャル成長プロセスにおいて、これらの不純物のその後の拡散はわずかであると予想される。しかしながら、従来の予想に反して、本発明の発明者は、セラミック材料の焼成温度よりもはるかに低い温度でのエピタキシャル成長プロセスにおいてさえも、加工基板の層を通って元素のかなりの拡散が生じ得ると判断した。したがって、本発明の実施形態は、バリア層118(例えば、窒化シリコン層)を取り入れることで、多結晶セラミック材料(例えば、AlN)からの背景元素が設計された層120/122および随意によるGaN層130などのエピタキシャル層へと拡散することを防止する。下方の層および材料を包む窒化シリコン層118は、所望のバリア層機能を提供する。
【0027】
[0047]
図2Bに示されるように、当初にコア110内に存在するイットリウムなどの元素は、第1のTEOS層112、ポリシリコン層114、および第2のTEOS層116を通って、これらの層に拡散する。しかしながら、窒化シリコン層118の存在が、
図2Cに示されるように、これらの元素が窒化シリコン層を通って拡散することを防止することにより、加工基板の周囲の環境へのこれらの元素の放出を防止する。
【0028】
[0048]再び
図1を参照すると、結合層120(例えば、酸化シリコン層)が、例えばバリア層の上面など、バリア層118の一部分に堆積させられ、後に実質的に単結晶シリコン層122を結合させる際に使用される。結合層120は、いくつかの実施形態においては、厚さが約1.5μmであってよい。
【0029】
[0049]実質的に単結晶の層122は、エピタキシャル材料130の形成のためのエピタキシャル成長プロセスにおける成長層としての使用に適する。いくつかの実施形態において、エピタキシャル材料130は、光電子デバイス、RFデバイス、電力デバイス、などで利用される複数の層のうちの1つとして利用することができる厚さが2μm~10μmのGaN層を含む。一実施形態において、実質的に単結晶の層122は、層転写プロセスを使用して酸化シリコン層118に取り付けられる実質的に単結晶のシリコン層を含む。
【0030】
[0050]
図3は、本発明の実施形態による加工基板構造物を説明する簡単な概略図である。
図3に示される加工基板300は、さまざまな電子および光学の用途に適する。加工基板は、この加工基板300上で成長するエピタキシャル材料130の熱膨張係数(CTE)に実質的に一致するCTEを有することができるコア110を含む。エピタキシャル材料130は、加工基板構造物の要素としては必要でないが、典型的には加工基板構造物上で成長するため、随意であるとして示されている。
【0031】
[0051]窒化ガリウム(GaN)系の材料(GaN系の層を含むエピタキシャル層)の成長を含む用途の場合、コア110は、多結晶セラミック材料であってよく、例えば多結晶窒化アルミニウム(AlN)であってよい。コアの厚さは、100~1,500μm程度であってよく、例えば725μmであってよい。コア110は、シェルまたは包囲シェルと呼ぶことができる第1の付着層112に包まれる。この実施例において、第1の付着層112はコアを完全に包んでいるが、これは、
図4に関してさらに詳しく論じられるように、本発明において必須ではない。
【0032】
[0052]一実施形態において、第1の付着層112は、厚さが約1,000Å程度のテトラエチルオルトシリケート(TEOS)層を備える。他の実施形態において、第1の付着層の厚さは、例えば100Åから2,000Åまで、さまざまである。いくつかの実施形態においては付着層にTEOSが利用されるが、本発明の実施形態によれば、後に堆積させられる層と下方の層または材料との間の付着をもたらす他の材料も、利用可能である。例えば、SiO2、SiON、などが、セラミック材料に良好に付着し、後の導電性材料などの堆積に適した表面を提供する。第1の付着層112は、LPCVDプロセスを使用して形成されてよく、いくつかの実施形態においては、コア110を完全に取り囲んで、完全に包まれたコアを形成する。付着層は、後続の層が加工基板構造物の要素を形成すべく付着する表面を提供する。
【0033】
[0053]包囲の付着層を形成するためのLPCVDプロセス、炉に基づくプロセス、などの使用に加えて、他の半導体プロセスを、本発明の実施形態に従って利用することができる。一例として、例えばCVD、PECVD、など、コアの一部分をコーティングする堆積プロセスを利用することができ、コアを裏返して、コアのさらなる部分をコーティングするために堆積プロセスを繰り返すことができる。
【0034】
[0054]導電層314が、第1の付着層112の少なくとも一部分に形成される。一実施形態において、導電層314は、コア/付着層構造物の下部(例えば、下半分または裏側)上に堆積プロセスによって形成されるポリシリコン(すなわち、多結晶シリコン)を含む。導電層がポリシリコンである実施形態において、ポリシリコン層の厚さは、数千オングストローム程度であってよく、例えば3,000Åであってよい。いくつかの実施形態においては、ポリシリコン層を、LPCVDプロセスを使用して形成することができる。
【0035】
[0055]一実施形態において、導電層314は、高導電性材料をもたらすようにドープされたポリシリコン層であってよく、例えば、導電層314は、p型ポリシリコン層をもたらすようにホウ素でドープされてよい。いくつかの実施形態において、ホウ素によるドープは、高い導電率をもたらすために約1×1019cm-3~1×1020cm-3の範囲のレベルである。導電層の存在は、例えば静電チャック(ESC)を備えたツールなどの半導体処理ツールへの加工基板の静電チャックにおいて有用である。導電層314は、処理後の迅速なチャック解除を可能にする。したがって、本発明の実施形態は、従来からのシリコンウェーハにおいて利用されるやり方で処理することができる基板構造物を提供する。当業者であれば、多数の変種、改良、および代案を認識できるであろう。
【0036】
[0056]第2の付着層316(例えば、第2のTEOS層)が、導電層314(例えば、ポリシリコン層)を囲んで形成される。第2の付着層316は、厚さが約1,000Å程度である。第2の付着層316は、LPCVDプロセスを使用して形成されてよく、いくつかの実施形態においては、導電層314および第1の付着層112を完全に取り囲んで、完全に包まれた構造物を形成する。他の実施形態において、第2の付着層316は、導電層314を部分的にだけ囲み、例えば、導電層314の上面に整列してよい平面317によって示される位置で終わる。この例においては、導電層314の上面が、バリア層118の一部分に接触する。当業者であれば、多数の変種、改良、および代案を認識できるであろう。
【0037】
[0057]バリア層118(例えば、窒化シリコン層)が、第2の付着層316を取り囲んで形成される。バリア層118は、いくつかの実施形態において、厚さが約1,000Å~5,000Å程度である。いくつかの実施形態において、バリア層118は、LPCVDプロセスを使用して形成されてよく、第2の付着層316を完全に取り囲んで、完全に包まれた構造物を形成する。
【0038】
[0058]いくつかの実施形態において、窒化シリコンバリア層の使用は、例えば高温(例えば、1,000℃)のエピタキシャル成長プロセスの最中に、例えば酸化イットリウム(すなわち、イットリア)、酸素、金属不純物、他の微量元素、などのコア110内に存在する元素が、加工基板が存在し得る半導体処理チャンバの環境へと拡散し、さらには/あるいは放出されることを防止する。本明細書に記載の包囲層を利用することで、非クリーンルーム環境用として設計された多結晶AlNなどのセラミック材料を、半導体のプロセスフローおよびクリーンルーム環境において利用することができる。
【0039】
[0059]
図4は、本発明の別の実施形態による加工基板構造物を説明する簡単な概略図である。
図4に示される実施形態においては、第1の付着層412が、コア110の少なくとも一部分の上に形成されるが、コア110を包まない。この実施例において、第1の付着層412は、以下でさらに充分に説明されるように、後に形成される導電層414の付着を強化するために、コア110の下面(コア110の裏側)に形成される。付着層412は、
図4においてはコア110の下面にのみ示されているが、コアの他の部分に付着層材料が堆積しても、加工基板構造物の性能に悪影響が及ぶことはなく、そのような材料がさまざまな実施形態において存在してよいことを、理解できるであろう。当業者であれば、多数の変種、改良、および代案を認識できるであろう。
【0040】
[0060]導電層414は、第1の付着層412およびコア110を包んでおらず、むしろ第1の付着層412に実質的に整列している。導電層414は、第1の付着層412の底部または裏面に沿って側面の一部分にまで延びるものとして図示されているが、本発明において、必ずしも垂直な側面に沿って延びる必要はない。したがって、いくつかの実施形態は、基板構造物の片側をマスキングするなど、基板構造物の片側への堆積を利用することができる。導電層414を、第1の付着層412の片側、例えば底部/裏側の一部分に形成することができる。導電層414は、加工基板構造物の片側に電気伝導をもたらし、これはRFおよび大電力の用途において好都合であり得る。導電層は、
図1の導電層114に関して説明したようなドープされたポリシリコンを含むことができる。
【0041】
[0061]コア110の一部分、第1の付着層412の一部分、および導電層414は、下方の材料に対するバリア層418の付着を強化するために、第2の付着層416で覆われる。バリア層418は、上述のように、下方の層からの拡散を防止するための包囲構造を形成する。
【0042】
[0062]半導体に基づく導電層に加えて、他の実施形態において、導電層414は、例えば500Åのチタンなどの金属層である。
【0043】
[0063]再び
図4を参照すると、実施例に応じて、1つ以上の層を除去することができる。例えば、層412および414を除去して、単一の付着シェル416およびバリア層418だけを残すことができる。別の実施形態においては、層414のみを除去することができる。この実施形態において、層412は、層418の上に堆積させられる層120によって引き起こされる応力およびウェーハの反りをバランスさせることもできる。コア110の上側に絶縁層(例えば、コア110と層120との間の絶縁層のみ)を備える基板構造物の構成は、高絶縁性の基板が望ましい電力/RFの用途にとって有益であると考えられる。
【0044】
[0064]別の実施形態においては、バリア層418がコア110を直接包み、その後に導電層414および後続の付着層416が続いてもよい。この実施形態においては、層120を、上側から付着層416へと直接堆積させることができる。さらに別の実施形態においては、付着層416をコア110上に堆積させ、その後にバリア層418を続け、次いで導電層414および別の付着層412を続けることができる。
【0045】
[0065]いくつかの実施形態を、層に関して議論してきたが、層という用語は、層が対象の層を形成すべく重ねられたいくつかのサブ層を含んでもよいように理解されるべきである。したがって、層という用語は、単一の材料からなる単一の層を示すことを意図しておらず、むしろ所望の構造物を形成するために複合の様相で重ねられた1つ以上の材料を包含するように意図される。当業者であれば、多数の変種、改良、および代案を認識できるであろう。
【0046】
[0066]
図5は、本発明の実施形態による加工基板の製造方法を説明する簡単なフローチャートである。この方法を利用して基板を製造し、基板のCTEを基板上に成長させられるエピタキシャル層のうちの1つ以上に一致させることができる。方法500は、多結晶セラミックコアを用意すること(510)と、多結晶セラミックコアをシェル(例えば、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)シェル)を形成する第1の付着層で包むこと(512)と、第1の付着層を導電性シェル(例えば、ポリシリコンシェル)で包むこと(514)とによって、支持構造物を形成することを含む。第1の付着層を、TEOSの単一層として形成することができる。導電性シェルを、ポリシリコンの単一層として形成することができる。
【0047】
[0067]この方法は、導電性シェルを第2の付着層(例えば、第2のTEOSシェル)で包むこと(516)と、第2の付着層をバリア層シェルで包むこと(518)とをさらに含む。第2の付着層を、TEOSの単一層として形成することができる。バリア層シェルを、窒化シリコンの単一層として形成することができる。
【0048】
[0068]ひとたびプロセス510~518によって支持構造物が形成されると、この方法は、結合層(例えば、酸化シリコン層)を支持構造物に接合すること(520)と、例えば実質的に単結晶のシリコン層などの実質的に単結晶の層を酸化シリコン層に接合すること(522)とをさらに含む。本発明の実施形態によれば、SiC、サファイア、GaN、AlN、SiGe、Ge、ダイヤモンド、Ga2O3、ZnO、などの他の実質的に単結晶の層を使用することができる。結合層の接合は、本明細書に記載されるように、結合材料の堆積およびその後の平坦化プロセスを含むことができる。以下で説明される実施形態において、実質的に単結晶の層(例えば、実質的に単結晶のシリコン層)の結合層への接合は、層がシリコンウェーハから転写される単結晶シリコン層である層転写プロセスを利用する。
【0049】
[0069]
図1を参照すると、結合層120を、厚い(例えば、厚さ4μmの)酸化物層を堆積させ、その後に化学機械研磨(CMP)プロセスによって酸化物を約1.5μmの厚さまで薄くすることによって、形成することができる。厚い初期の酸化物は、多結晶コアの製造後に存在し、
図1に示される包囲層が形成されるときに存在し続ける可能性がある支持構造物上に存在するボイドおよび表面特徴を埋める役割を果たす。CMPプロセスは、ボイド、粒子、または他の特徴の存在しない実質的に平坦な表面をもたらし、次いで、この表面を、ウェーハ転写プロセスにおいて、実質的に単結晶の層122(例えば、実質的に単結晶のシリコン層)を結合層120に結合させるために使用することができる。結合層120が、必ずしも原子的に平坦な表面を特徴とする必要はないが、実質的に単結晶の層(例えば、実質的に単結晶のシリコン層)の結合を所望の信頼性でサポートする実質的に平坦な平面をもたらすべきであることを、理解できるであろう。
【0050】
[0070]層転写プロセスを使用して、実質的に単結晶のシリコン層122を結合層120に接合することができる。いくつかの実施形態においては、シリコンウェーハ(例えば、シリコン(111)ウェーハ)が劈開面を形成するために注入される。ウェーハの接合後に、シリコン基板を単結晶シリコン層のうちの劈開面の下方の部分と共に除去することで、
図1に示される剥離した単結晶シリコン層122を得ることができる。実質的に単結晶の層122の厚さは、さまざまな用途の仕様を満たすようにさまざまであってよい。さらに、実質的に単結晶の層122の結晶方位は、用途の仕様を満たすようにさまざまであってよい。さらに、実質的な単結晶の層122のドープのレベルおよびプロファイルは、個々の用途の仕様を満たすようにさまざまであってよい。
【0051】
[0071]
図5に示される方法は、実質的に単結晶の層を平滑化すること(524)をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、実質的に単結晶の層122の厚さおよび表面粗さを、高品質のエピタキシャル成長のために修正することができる。デバイスの用途が異なると、実質的に単結晶の層122の厚さおよび表面の平滑性に関する仕様がわずかに異なる可能性がある。劈開プロセスは、注入後のイオンプロファイルのピークにおいてバルクの単結晶シリコンウェーハから実質的に単結晶の層122を剥離させる。劈開後に、実質的に単結晶の層122を、窒化ガリウムなどの他の材料のエピタキシャル成長のための成長表面として利用される前に、いくつかの態様において調整または修正することができる。
図5に関して説明したプロセスが、プロセス524に関連して論じたとおりの平滑化を含むプロセスを含むことができるが、実質的に単結晶の層を厚くすること、および/または薄くすることも含んでよいことを、理解できるであろう。
【0052】
[0072]第1に、転写された実質的に単結晶の層122は、少量の残留水素濃度を含む可能性があり、注入からのいくらかの結晶損傷を有する可能性がある。したがって、転写された実質的に単結晶の層122のうちの結晶格子が損傷している薄い一部分を除去することが、有益であり得る。いくつかの実施形態においては、注入の深さを、実質的に単結晶の層122の所望の最終的な厚さよりも大きくなるように調整することができる。この追加の厚さは、転写された実質的に単結晶の層のうちの損傷している薄い一部分を除去し、所望の最終的な厚さの損傷を受けていない部分を残すことを可能にする。
【0053】
[0073]第2に、実質的に単結晶の層122の全体の厚さを調整することが望まれる可能性がある。一般に、実質的に単結晶の層122を、後の1つ以上のエピタキシャル層の成長のために高品質の格子テンプレートをもたらすために充分に厚くし、しかしながらきわめて素直であるように充分に薄くすることが、望ましいかもしれない。実質的に単結晶の層122は、実質的に単結晶の層122が比較的薄く、したがってその物理的特性が、あまり制約されず、結晶欠陥をあまり生じることなく周囲の材料の物理的特性を模倣できる場合に、「素直」であると言える。実質的に単結晶の層122の素直さは、実質的に単結晶の層122の厚さに反比例し得る。素直さが大であるほど、テンプレート上で成長するエピタキシャル層の欠陥密度を低くでき、より厚いエピタキシャル層の成長を可能にできる。いくつかの実施形態においては、実質的に単結晶の層122の厚さを、剥離後のシリコン層上へのシリコンのエピタキシャル成長によって増やすことができる。
【0054】
[0074]第3に、実質的に単結晶の層122の平滑性を改善することが有益であり得る。層の平滑性は、総水素量、同時に注入された種の存在、および水素に基づく劈開面を形成するために使用されるアニーリング条件に関係し得る。層転写(すなわち、劈開ステップ)から生じる初期の粗さを、以下で論じられるように、熱酸化および酸化物の除去によって軽減することができる。
【0055】
[0075]いくつかの実施形態においては、損傷した層の除去および実質的に単結晶の層122の最終的な厚さの調整を、剥離後のシリコン層の上部の熱酸化、およびその後のフッ化水素(HF)酸による酸化物層の除去によって達成することができる。例えば、例えば0.53μmなど、0.3μm~0.8μmの範囲の初期厚さを有する剥離後のシリコン層を熱酸化させて、厚さ約420nmの二酸化シリコン層を生じさせることができる。成長した熱酸化物を除去した後に、転写された層内の残りのシリコンの厚さは、約30nm~35nmになり得る。熱酸化の際に、注入された水素が表面に向かって移動することができる。したがって、後の酸化物層の除去によって、或る程度の損傷を取り除くことができる。また、熱酸化は、典型的には、1000℃以上の温度で行われる。この高い温度も、格子の損傷を修復し得る。
【0056】
[0076]熱酸化の際に実質的に単結晶の層の上部に形成される酸化シリコン層を、HF酸エッチングを使用して除去することができる。HF酸による酸化シリコンとシリコンとの間(SiO2:Si)のエッチング選択性を、HF溶液の温度および濃度ならびに酸化シリコンの化学量論および密度を調整することによって調整することができる。エッチング選択性とは、或る材料の別の材料と比べたエッチング速度を指す。(SiO2:Si)の場合、HF溶液の選択性は、約10:1~約100:1の範囲であり得る。高いエッチング選択性は、表面粗さを同様の倍数で初期の表面粗さから減少させることができる。しかしながら、結果として得られる実質的に単結晶の層122の表面粗さは、依然として所望の表面粗さよりも大きい可能性がある。例えば、バルクのSi(111)表面は、さらなる処理の前に2μm×2μmの原子間力顕微鏡(AFM)スキャンによって測定すると、0.1nm未満の二乗平均平方根(RMS)表面粗さを有し得る。いくつかの実施形態において、Si(111)上の窒化ガリウム材料のエピタキシャル成長にとって望ましい表面粗さは、例えば、30μm×30μmのAFMスキャン領域について、1nm未満、0.5nm未満、または0.2nm未満であり得る。
【0057】
[0077]熱酸化および酸化物層の除去後の実質的に単結晶の層122の表面粗さが所望の表面粗さを超える場合、追加の表面平滑化を実行することができる。シリコンの表面を平滑化するいくつかの方法が存在する。そのような方法として、水素アニーリング、レーザトリミング、プラズマスムージング、タッチポリッシュ(例えば、化学機械研磨またはCMP)を挙げることができる。これらの方法は、高アスペクト比の表面のピークを優先的に攻撃することができる。したがって、表面の高アスペクト比の特徴は、低アスペクト比の特徴よりも迅速に除去され、結果としてより平滑な表面がもたらされる。
【0058】
[0078]
図5に示した具体的な工程が、本発明の実施形態による加工基板の特定の製造方法を提示していることを、理解すべきである。他の一連の工程も、別の実施形態に従って実行可能である。例えば、本発明の別の実施形態は、上述の工程を別の順序で実行することができる。さらに、
図5に示した個々の工程は、個々の工程に見合った種々の順序で実行されてよい複数の部分工程を含むことができる。さらに、個々の用途に応じて、さらなる工程を追加または削除することができる。当業者であれば、多数の変種、改良、および代案を認識できるであろう。
【0059】
[0079]
図6は、本発明の実施形態によるRFおよび電力用途のためのエピタキシャル加工基板構造物を示す簡単な概略図である。いくつかのLEDの用途においては、加工基板構造物が、高品質のGaN層の成長を可能にする成長基板を提供し、後に加工基板構造物は除去される。しかしながら、RFおよび電力デバイスの用途の場合、加工基板構造物は、完成したデバイスの一部を形成し、したがって加工基板構造物または加工基板構造物の要素の電気的、熱的、およびその他の特性が、個々の用途にとって重要である。
【0060】
[0080]
図1を参照すると、単結晶シリコン層122は、典型的には、注入および剥離の技術を使用してシリコンドナーウェーハから分離された剥離層である。典型的な注入物は、水素およびホウ素である。電力およびRFデバイスの用途においては、加工基板構造物の層および材料の電気的特性が重要である。例えば、一部のデバイスアーキテクチャは、抵抗が10
3オーム-cmを上回る高絶縁性のシリコン層を利用して、基板および境界層を通過する漏れを低減または解消する。他の用途は、デバイスのソースを他の要素へと接続するために、所定の厚さ(例えば、1μm)の導電性シリコン層を含む設計を利用している。このように、これらの用途においては、単結晶シリコン層の寸法および特性の制御が望ましい。層転写の際に注入および剥離の技術が使用される設計においては、例えば水素またはホウ素などの残留注入原子がシリコン層に存在して、電気的特性を変化させる。さらに、例えば導電性に影響し得る注入量、ならびに注入プロファイルの半値全幅(FWHM)、表面粗さ、および劈開面の位置精度、および層の厚さに影響し得る注入深さの調整を使用して、薄いシリコン層の厚さ、導電率、およびその他の特性を制御することは、困難である可能性がある。
【0061】
[0081]本発明の実施形態によれば、加工基板構造物におけるシリコンエピタキシが、個々のデバイス設計にふさわしい単結晶シリコン層の所望の特性を達成するために利用される。
【0062】
[0082]
図6を参照すると、エピタキシャル加工基板構造物600は、加工基板構造物610と、その上に形成されたシリコンエピタキシャル層620とを含む。加工基板構造物610は、
図1、
図3、および
図4に示した加工基板構造物と同様であってよい。典型的には、実質的に単結晶のシリコン層122は、層転写後に0.5μm程度である。一部のプロセスにおいては、単結晶シリコン層122の厚さを約0.3μmに減らすために、表面調整プロセスを利用することができる。例えば信頼性の高いオーミックコンタクトの形成に使用すべく単結晶シリコン層の厚さを約1μmに増やすために、エピタキシャルプロセスが、層転写プロセスによって形成された実質的に単結晶のシリコン層122上にエピタキシャル単結晶シリコン層620を成長させるために使用される。CVD、ALD、MBE、などを含むさまざまなエピタキシャル成長プロセスを使用して、エピタキシャル単結晶シリコン層620を成長させることができる。エピタキシャル単結晶シリコン層620の厚さは、例えば0.1μm~10μmの間など、約0.1μm~約20μmの範囲であってよい。
【0063】
[0083]
図7は、本発明の実施形態による加工基板構造物上のIII-Vエピタキシャル層を説明する簡単な概略図である。
図7に示される構造を、以下で説明されるように、二重エピタキシャル構造と呼ぶことができる。
図7に示されるように、エピタキシャル単結晶シリコン層620を含む加工基板構造物710の上に、III-Vエピタキシャル層720が形成される。一実施形態において、III-Vエピタキシャル層は、窒化ガリウム(GaN)を含む。
【0064】
[0084]III-Vエピタキシャル層720の所望の厚さは、所望の機能に応じて、大いにさまざまであってよい。いくつかの実施形態において、III-Vエピタキシャル層720の厚さは、0.5μm~100μmの間でさまざまであってよく、例えば5μmを超える厚さであってよい。III-Vエピタキシャル層720上に製作されるデバイスの結果としての絶縁破壊電圧は、III-Vエピタキシャル層720の厚さに応じてさまざまであってよい。いくつかの実施形態においては、少なくとも100V、300V、600V、1.2kV、1.7kV、3.3kV、5.5kV、13kV、または20kVの絶縁破壊電圧がもたらされる。
【0065】
[0085]複数のサブ層を含むことができるIII-Vエピタキシャル層720の各部分の間の導電性をもたらすために、この例においてはIII-Vエピタキシャル層720の上面からエピタキシャル単結晶シリコン層620へと通過する一式のビア724が形成される。ビア724を、III-Vエピタキシャル層720から絶縁されるように、絶縁層(図示せず)で裏打ちしてもよい。一例として、これらのビアを、ビアを介してオーミックコンタクトを提供することによってダイオードまたはトランジスタの電極を下方のシリコン層に接続することで、デバイス内の電荷の蓄積を緩和するために使用することができる。
【0066】
[0086]III-Vエピタキシャル層を単結晶シリコン層122の上に成長させたならば、例えばウェーハの全体にわたって確実に、5μmのGaNを貫いてエッチングを行い、0.3μmのシリコン層においてエッチングを終わらせるなど、単結晶シリコン層122においてビアのエッチングを終了させることが困難であるため、ビアを介してそのようなオーミックコンタクトを形成することが困難であると考えられる。本発明の実施形態を利用することで、厚さ数ミクロンの単結晶シリコン層をもたらすことが可能であり、これは、注入および剥離のプロセスを用いるならば、大きな注入深さを達成するために高い注入エネルギが必要になるため、困難である。次いで、これらの厚いシリコン層は、幅広くさまざまなデバイスの設計を可能にする図示のビアなどの適用を可能にする。
【0067】
[0087]単結晶シリコン層122上に単結晶シリコン層620をエピタキシャル成長させることによってシリコン「層」の厚さを増加させるだけでなく、単結晶シリコン層122の元の特性について、導電性および結晶化度などの変更を含む他の調整を行うことができる。例えば、III-V層または他の材料の追加のエピタキシャル成長の前に10μm程度のシリコン層が望まれる場合、そのような厚い層を、本発明の実施形態に従って成長させることができる。
【0068】
[0088]注入プロセスが、例えば残留ホウ素/水素原子がシリコンの電気的特性に影響を与える可能性があるなど、単結晶シリコン層122の特性に影響を与える可能性があるため、本発明の実施形態は、単結晶シリコン層620のエピタキシャル成長に先立って、単結晶シリコン層122の一部を除去する。例えば、単結晶シリコン層122を、厚さが0.1μm以下の層を形成するように薄くすることにより、残留ホウ素/水素原子の大部分またはすべてを除去することができる。次いで、単結晶シリコン層620のその後の成長を使用して、単結晶材料に、層転写プロセスを使用して形成された層の対応する特性とは実質的に無関係な電気的特性および/または他の特性がもたらされる。
【0069】
[0089]加工基板構造物に結合した単結晶シリコン材料の厚さの増加に加えて、エピタキシャル単結晶シリコン層620の導電率などの電気的特性は、単結晶シリコン層122の特性と違ってもよい。成長の最中のエピタキシャル単結晶シリコン層620のドーピングは、ホウ素をドーピングすることによってp型シリコンを生み出し、リンをドーピングすることによってn型シリコンを生み出すことができる。ドープされていないシリコンを成長させて、絶縁領域を有するデバイスにおいて使用される高抵抗シリコンをもたらすことができる。絶縁層は、とくにはRFデバイスにおいて有用である。
【0070】
[0090]エピタキシャル単結晶シリコン層620の格子定数を、単結晶シリコン層122の格子定数から変化して歪んだエピタキシャル材料を生じるように、成長の最中に調整することが可能である。シリコンに加えて、他の元素をエピタキシャル成長させて、シリコンゲルマニウムなどを含む歪んだ層などの層をもたらすことができる。例えば、バッファ層を、単結晶シリコン層122の上、エピタキシャル単結晶シリコン層620の上、または層の間に成長させて、後続のエピタキシャル成長を強化することができる。これらのバッファ層は、歪んだIII-V層、シリコンゲルマニウムの歪んだ層、などを含むことができる。さらに、バッファ層および他のエピタキシャル層を、モル分率、ドーパント、極性、などにおいて段階的にすることができる。当業者であれば、多数の変種、改良、および代案を認識できるであろう。
【0071】
[0091]いくつかの実施形態において、単結晶シリコン層122またはエピタキシャル単結晶シリコン層620に存在するひずみは、III-Vエピタキシャル層などの後続のエピタキシャル層の成長の最中に緩和され得る。
【0072】
[0092]
図8は、本発明の別の実施形態による加工基板の製造方法を説明する簡単なフローチャートである。この方法は、多結晶セラミックコアを用意すること(810)と、多結晶セラミックコアの少なくとも一部分に結合した第1の付着層を形成すること(812)とによって、支持構造物を形成することを含む。第1の付着層は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)層を含むことができる。さらに、この方法は、第1の付着層に結合した導電層を形成すること(814)を含む。導電層は、ポリシリコン層であってよい。第1の付着層を、TEOSの単一層として形成することができる。導電層を、ポリシリコンの単一層として形成することができる。
【0073】
[0093]さらに、この方法は、導電層の少なくとも一部分に結合した第2の付着層を形成すること(816)と、バリアシェルを形成すること(818)とを含む。第2の付着層を、TEOSの単一層として形成することができる。バリアシェルを、窒化シリコンの単一層またはバリアシェルを形成する一連のサブ層として形成することができる。
【0074】
[0094]ひとたびプロセス810~818によって支持構造物が形成されると、この方法は、結合層(例えば、酸化シリコン層)を支持構造物に接合すること(820)と、実質的に単結晶のシリコン層または実質的に単結晶の層を酸化シリコン層に接合すること(822)とをさらに含む。結合層の接合は、本明細書に記載されるように、結合材料の堆積およびその後の平坦化プロセスを含むことができる。
【0075】
[0095]層転写プロセスを使用して、実質的に単結晶のシリコン層122を結合層120に接合することができる。いくつかの実施形態においては、シリコンウェーハ(例えば、シリコン(111)ウェーハ)が劈開面を形成するために注入される。ウェーハの結合後に、シリコン基板を壁開面に沿って単結晶シリコン層の一部分と共に除去することで、
図1に示される剥離した単結晶シリコン層122を得ることができる。実質的に単結晶のシリコン層122の厚さは、さまざまな用途の仕様を満たすようにさまざまであってよい。さらに、実質的に単結晶の層122の結晶方位は、用途の仕様を満たすようにさまざまであってよい。さらに、実質的な単結晶の層122のドープのレベルおよびプロファイルは、個々の用途の仕様を満たすようにさまざまであってよい。いくつかの実施形態においては、上述のように、実質的に単結晶のシリコン層122を平滑化することができる。
【0076】
[0096]さらに、
図8に示される方法は、実質的に単結晶のシリコン層上のエピタキシャル成長によってエピタキシャルシリコン層を形成すること(824)と、エピタキシャルシリコン層上のエピタキシャル成長によってエピタキシャルIII-V層を形成すること(826)とを含むことができる。いくつかの実施形態において、エピタキシャルIII-V層は、窒化ガリウム(GaN)を含むことができる。
【0077】
[0097]
図8に示した具体的な工程が、本発明の別の実施形態による加工基板の特定の製造方法を提示していることを、理解すべきである。他の一連の工程も、別の実施形態に従って実行可能である。例えば、本発明の別の実施形態は、上述の工程を別の順序で実行することができる。さらに、
図8に示した個々の工程は、個々の工程に見合った種々の順序で実行されてよい複数の部分工程を含むことができる。さらに、個々の用途に応じて、さらなる工程を追加または削除することができる。当業者であれば、多数の変種、改良、および代案を認識できるであろう。
【0078】
[0098]本発明の実施形態によれば、電力デバイスおよびRFデバイスを含むさまざまな電子デバイスを、
図1、
図3、および
図4に示した加工基板などの本明細書に記載の加工基板を使用して製造することができる。あくまでも例示として提供される種々の電子デバイスが、以下の図を参照してさらに詳細に示される。本明細書において説明されるとおり、成長するエピタキシャル層に熱的に調和した(すなわち、CTEを一致させた)加工基板を使用することで、高品質の層を、従来からの技術を用いたのでは利用できない厚さで成長させることができる。したがって、高出力の電子デバイス、高出力のRFデバイス、などの製造における使用に適したGaNおよびAlGaNなどのIII-Nエピタキシャル層を、成長させることが可能である。いくつかの実施形態において、エピタキシャルIII-N(例えば、GaN)層は、約5μmを超える厚さを有することができる。いくつかの他の実施形態において、エピタキシャルIII-N層は、約10μmを超える厚さを有することができる。
【0079】
[0099]
図9が、本発明の実施形態による加工基板902を使用して製造された準垂直アーキテクチャを有するフィンFETの簡単な概略図である。加工基板902は、
図1、
図3、および
図4に示した加工基板構造物と同様であってよい。
図9に示されるように、バッファ層910を、加工基板902とコンタクト層920との間に配置することができる。バッファ層910は、厚さが例えば1μm~20μmの範囲にあってよく、ドープされても、ドープされなくてもよい。コンタクト層920は、例えば1~3×10
18cm
-3のレベルでのn型のドーピングなど、高濃度にドープされたGaN系の層である。コンタクト層920の厚さは、いくつかの実施形態において、1μm~5μmの範囲であってよい。
【0080】
[0100]ドリフト層930が、コンタクト層920に電気的に接続され、低濃度のドーピング(例えば、1~10×1016cm-3)を有するn型GaN層またはGaN系の層であってよく、厚さが1μm~15μmの範囲であってよい。FETは、低ドーピング密度(例えば、1~10×1016cm-3)のn型GaN材料を含むことができ、厚さが1μm~3μmの範囲であってよいチャネル領域950を含む。チャネル領域950は、1つ以上の側面において絶縁層960によって囲まれ、この実施形態においては、電気接点または電極が金属材料によってもたらされ、ソース980、ゲート970、およびドレイン940の各コンタクトが形成される。
【0081】
[0101]
図10が、本発明の実施形態による加工基板を使用して製造されたフィンFETの加工基板からの取り外し後を示す簡単な概略図である。加工基板は、
図1、
図3、および
図4に示した加工基板構造物と同様であってよい。
図10に示されるように、バッファ層1010を、FETのドレイン1040に電気的に接続することができる。バッファ層1010は、厚さが例えば1μm~20μmの範囲にあってよく、例えば1~3×10
18cm
-3のドーピング密度を有するn型GaNなど、ドープされていてよい。ドリフト層1030が、バッファ層1010に電気的に接続され、低濃度のドーピング(例えば、1~10×10
16cm
-3)を有するn型GaN層またはGaN系の層であってよく、厚さが1μm~15μmの範囲であってよい。FETは、低ドーピング密度(例えば、1~10×10
16cm
-3)のn型GaN材料を含むことができ、厚さが1μm~3μmの範囲であってよいチャネル領域1050を含む。チャネル領域1050は、1つ以上の側面において絶縁層1060によって囲まれ、この実施形態においては、電気接点または電極が金属材料によってもたらされ、ソース1080およびゲート1070の各コンタクトが形成される。
【0082】
[0102]
図9および
図10に示される構造を比較すると、
図10に示される構造は、ドリフト層930を通るエッチングのプロセスの排除、デバイス面積の減少、および熱抵抗の低減など、
図9に示される構造と比較していくつかの利点を提供する。
図10に示される構造が、基板902を除去するための処理作業を実行することに、注意すべきである。したがって、各々の構造は、製造設備の能力などの用途および製造プロセスの関数である利点を有する。
【0083】
[0103]
図11が、本発明の実施形態による加工基板1102を使用して製造された準垂直アーキテクチャを有する側壁金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の簡単な概略図である。
図11に示されるように、この構造は、図中に「...」で示されているように対称的かつ周期的であってよい。MOSトランジスタは、加工基板1102とコンタクト層1120との間に配置されてよいバッファ層1110を含む。加工基板1102は、
図1、
図3、および
図4に示した加工基板構造物と同様であってよい。バッファ層1110は、厚さが例えば1μm~20μmの範囲にあってよく、ドープされても、ドープされなくてもよい。コンタクト層1120は、例えば1~3×10
18cm
-3のレベルでのn型ドーピングなど、高濃度にドープされたGaN系の層であってよい。コンタクト層1120の厚さは、いくつかの実施形態において、1μm~5μmの範囲であってよい。ドレイン電極1140を、コンタクト層1120上に形成することができる。
【0084】
[0104]ドリフト層1130が、コンタクト層1120に電気的に接続され、低濃度のドーピング(例えば、1~10×1016cm-3)を有するn型GaN層またはGaN系の層であってよく、厚さは1μm~15μmの範囲であってよい。MOSトランジスタは、中程度のドーピング密度(例えば、1~10×1017cm-3)のp型GaNまたはGaN系の材料であってよく、厚さが1μm~3μmの範囲であってよいバリア層1150を含む。導電性バックコンタクト1152を、バリア層1150に結合させることができる。さらに、MOSトランジスタは、中程度のドーピング密度(例えば、1~10×1017cm-3)のn型GaN材料を含むことができ、厚さが0.1μm~3μmの範囲であってよいソースコンタクト層1180を含む。ソース電極1182を、ソースコンタクト層1180上に形成することができる。ゲート金属1170は、さまざまな厚さの金属層の積層であってよい。積層1170の最下層は、最下層の仕事関数が構造物のしきい値電圧に影響するがゆえに、デバイスの性能に影響を及ぼす。他の可能な選択肢の中でもとりわけ、積層1170の最下層は、ニッケル、プラチナ、金、パラジウム、チタン、アルミニウム、高度にドープされたシリコン、またはチタン、タングステン、タンタルのシリサイド、あるいはこれらの組み合わせであってよい。ゲート誘電体1160の材料および堆積の詳細は、所望の機能を保証するように選択される。ゲート誘電体1160を、スパッタリング、原子層堆積、蒸発、あるいはさまざまな種類の化学または原子蒸着など、種々の方法によって堆積させることができる。酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化ガリウム、またはこれらの層の積層など、いくつかのさまざまな誘電体を、20Å~2000Åの範囲の総厚さにて使用することができる。この実施形態において、ソース電極1182およびバックコンタクト1152は、金属材料を使用して形成される。
【0085】
[0105]
図12が、本発明の実施形態による加工基板を使用して製造された準垂直アーキテクチャを有する側壁MOSトランジスタの加工基板からの取り外し後の簡単な概略図である。加工基板は、
図1、
図3、および
図4に示した加工基板構造物と同様であってよい。
図12に示されるように、この構造は、図中に「...」で示されているように対称的かつ周期的であってよい。
図12に示されるように、バッファ層1210を、MOSトランジスタのドレイン1240に電気的に接続することができる。バッファ層1210は、厚さが例えば1μm~20μmの範囲にあってよく、例えば1~3×10
18cm
-3のドーピング密度を有するn型GaNなど、ドープされていてよい。ドリフト層1230が、バッファ層1210に電気的に接続され、低濃度のドーピング(例えば、1~10×10
16cm
-3)を有するn型GaN層またはGaN系の層であってよく、厚さが1μm~15μmの範囲であってよい。
【0086】
[0106]MOSトランジスタは、中程度のドーピング密度(例えば、1~10×1017cm-3)のp型GaNまたはGaN系の材料であってよく、厚さが1μm~3μmの範囲であってよいバリア層1250を含む。さらに、MOSトランジスタは、中程度のドーピング密度(例えば、1~10×1017cm-3)のn型GaN材料を含むことができ、厚さが0.1μm~3μmの範囲であってよいソースコンタクト層1280を含む。ゲート金属1270は、さまざまな厚さの金属層の積層であってよい。積層1270の最下層は、最下層の仕事関数が構造物のしきい値電圧に影響するがゆえに、デバイスの性能に影響を及ぼす。他の可能な選択肢の中でもとりわけ、積層1270の最下層は、ニッケル、プラチナ、金、パラジウム、チタン、アルミニウム、高度にドープされたシリコン、またはチタン、タングステン、タンタルのシリサイド、あるいはこれらの組み合わせであってよい。ゲート誘電体1260の材料および堆積の詳細は、所望の機能を保証するように選択される。ゲート誘電体1260を、スパッタリング、原子層堆積、蒸発、あるいはさまざまな種類の化学または原子蒸着など、種々の方法によって堆積させることができる。酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化ガリウム、またはこれらの層の積層など、いくつかのさまざまな誘電体を、20Å~2000Åの範囲の総厚さにて使用することができる。この実施形態において、ソース電極1282およびバックコンタクト1252は、金属材料を使用して形成される。
【0087】
[0107]
図11および
図12に示される構造を比較すると、
図12に示される構造は、ドリフト層1110を通るエッチングのプロセスの排除、デバイス面積の減少、および熱抵抗の低減など、
図11に示される構造と比較していくつかの利点を提供する。
図10に示される構造が、基板1102を除去するための処理作業を実行することに、注意すべきである。したがって、各々の構造は、製造設備の能力などの用途および製造プロセスの関数である利点を有する。
【0088】
[0108]
図13は、本発明の実施形態による加工基板1302を使用して製造されたMOSトランジスタの簡単な概略図である。加工基板1302は、
図1、
図3、および
図4に示した加工基板構造物と同様であってよい。MOSトランジスタは、加工基板1302とコンタクト層1320との間に配置されてよいバッファ層1310を含む。バッファ層1310は、厚さが例えば1μm~20μmの範囲にあってよく、ドープされていても、ドープされていなくてもよい。一実施形態では、バッファ層1310は、絶縁性のGaNを使用して製造される。コンタクト層1320は、例えば1~10×10
17cm
-3のレベルでのp型ドーピングなど、中程度にドープされたGaN系の層であってよい。コンタクト層1320の厚さは、いくつかの実施形態において、0.1μm~3μmの範囲であってよい。
【0089】
[0109]コンタクト層1320内の領域1390が、ソース/ゲート/ドレイン領域1380、1370、および1340の間にn型GaNをもたらすように注入される。これらの注入領域1390は、0.2~0.4μmの深さであってよく、1~10×10
17cm
-3程度のドーピング密度を有することができる。絶縁層1360が、ゲート領域1370をコンタクト層1320から電気的に分離する。この実施形態において、ソース1380、ゲート1370、およびドレイン1340の各コンタクトは、金属材料を使用して形成される。
図13に示されるバックコンタクト1350は、ゲート1370の下方の電位を固定し、デバイスが明確に定義されたしきい値電圧および電流-電圧特性を有することを保証する役割を果たす。
【0090】
[0110]
図14Aは、本発明の実施形態による加工基板1402を使用して製造された音響共振器を説明する簡単な概略図である。加工基板1402は、
図1、
図3、および
図4に示した加工基板構造物と同様であってよい。本発明の実施形態は、音響共振器に限定されず、他の音響デバイスも、本発明の範囲に含まれる。
図14Aに示されるとおり、加工基板1402は、音響共振器を形成するために使用されるIII-N層1410(例えば、GaN層、AlGaN層、など)に機械的支持を提供する。加工基板1402をパターン加工して、III-N層が自由に運動することができる領域を提供する開口部1430を形成することができる。図示の実施形態において、III-N層1410は、厚さが0.2μ~3μmである。金属電極1420が、III-N層1410に接触して形成されている。
【0091】
[0111]
図14Bは、本発明の別の実施形態による加工基板1402を使用して製造された音響共振器を説明する簡単な概略図である。いくつかの実施形態においては加工基板1402の全体を除去することができるが、これは本発明において必須ではなく、他の実施形態においては、
図14Bに示されるように、加工基板1402にキャビティ1440(または、複数のキャビティ)が形成され、共振器構造を、1つ以上のキャビティ1440の上方に浮かせて配置することができる。これらの実施形態は、共振器構造以外の制御および電子機器を含むデバイスを支持するための追加の機械的支持および支持構造を提供する。さらに、加工基板1402の一部分の存在は、例えばキャビティの上方のシリコン共振器の場合に、パッケージング工程を単純化することができる。当業者であれば、多数の変種、改良、および代案を認識できるであろう。
【0092】
[0112]
図15は、本発明の実施形態による加工基板を使用して製造されたマイクロLEDディスプレイの加工基板からの取り外し後を示す簡単な概略図である。加工基板は、
図1、
図3、および
図4に示した加工基板構造物と同様であってよい。
図15に示されるように、加工基板は、バッファ層1530および必要であれば他の構造を成長させるために使用され、その後に除去されている。導電性のバックコンタクトとして機能するバッファ層1530は、この実施形態においては電流シンクおよびヒートシンクの両方の機能を提供するめっきされた銅層1510上に支持される。バッファ層1530は、0.5μm~5μmの厚さであってよく、1~30×10
17cm
-3程度のドーピング密度を有することができる。
【0093】
[0113]GaN-LED(G-L)1590が、赤色(R)LED1580および緑色(G)LED1570と共にバッファ層1530に転写可能であり、緑色LED1570とバッファ層1530との間の金属層1572および赤色LED1580とバッファ層1530との間の金属層1582と共に図示されている。いくつかの実施形態において、G-L1590は、RGB用途のための青色LEDであるが、G-L1590は、個々の用途によるより短い波長の照明を提供するために、他の色へと調整されたスペクトルを有することもできる。いくつかの実施形態において、金属層1572および1582は、LED1570および1580への電気的接触を提供するだけでなく、背後ミラーとしても機能する。マイクロLEDディスプレイのセルは、転写されたシリコン集積回路(Si-IC)、GaNスイッチ、などを含むことができる転写された「ドライバ/アドレシング」ブロック1540を含むことができる。「ドライバ/アドレシング」ブロック1540の間の金属層1542が、「ドライバ/アドレシング」ブロック1540への電気的接触をもたらすことができる。さらに、セルは、外部制御集積回路(IC)に接続された「信号および電源線」1550、ならびにセル間接続(分かりやすくする目的で図示されていない)を含むことができる。「信号および電源線」1550を、絶縁層1552によってバッファ層1530から電気的に絶縁することができる。
【0094】
[0114]
図16Aは、本発明の実施形態による加工基板1602を使用して製造されたMEMSデバイスを説明する簡単な概略図である。加工基板1602は、
図1、
図3、および
図4に示した加工基板構造物と同様であってよい。当業者にとって明らかであるように、加工基板1602を使用して高品質の厚いGaN系の層を成長させる能力は、きわめて広範かつ多様な範囲のデバイスを含むMEMS分野において多くの可能性を切り開く。
図16Aに示されるように、加工基板1602は、ギャップ1620を含むGaN膜1610によって代表されるMEMS構造に機械的支持を提供する。このデバイスを製造するために、本明細書に記載のGaN層のいずれかであってよいGaN膜を、加工基板1602上で成長させる。GaN膜は、III-N材料のさまざまな組み合わせを含む多層構造であってよい。次いで、加工基板1602をパターン加工して、GaN膜1610の領域をもたらす開口部1630を形成することができる。次に、GaN膜をエッチングなどによって処理し、これらに限られるわけではないが片持ち梁、共振器、櫛型コンデンサ、圧電アクチュエータ、などの所望のMEMS構造を形成することができる。
【0095】
[0115]
図16Bは、本発明の別の実施形態による加工基板1602を使用して製造されたMEMSデバイスを説明する簡単な概略図である。
図16Bに示される実施形態においては、加工基板1602の全体が除去されるのではなく、加工基板1602内に1つ以上のキャビティ1640が形成されるように一部分のみが除去され、共振器構造を1つ以上のキャビティ1640の上方に浮かせて位置させることができる。当業者であれば、多数の変種、改良、および代案を認識できるであろう。
【0096】
[0116]
図16Cは、本発明の実施形態による加工基板1602を使用して製造されたMEMSデバイスの加工基板1602からの取り外し後を示す簡単な概略図である。この実施形態において、GaN膜は、加工基板1602から分離され、開口部1650上にGaN膜1610をもたらす開口部1650を有するパターン加工されたキャリア基板1604へと転写されている。
【0097】
[0117]図には示されていないが、本発明の実施形態は、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)構造の形成に適用可能である。これらのMMIC構造は、加工基板上で高周波(RF)GaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)を平面コンデンサ、インダクタ、および抵抗器と統合する。共平面導波路構造を形成するために、絶縁性の加工基板および絶縁バッファを使用するアーキテクチャを含む種々さまざまなアーキテクチャが、本発明の範囲に含まれる。他の実施形態においては、接地された共平面導波路構造を形成するために導電層を備えた絶縁性の加工基板を使用するアーキテクチャが実施される。当業者であれば、多数の変種、改良、および代案を認識できるであろう。
【0098】
[0118]また、本明細書に記載の例および実施形態が、あくまでも説明の目的のためのものにすぎず、それらに照らした種々の改良または変更が、当業者に対して示唆され、本出願の技術的思想および範囲ならびに添付の特許請求の範囲の技術的範囲に包含されることを、理解すべきである。