(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】僧帽弁腱索修復のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
A61F2/24
(21)【出願番号】P 2020548744
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(86)【国際出願番号】 US2019021480
(87)【国際公開番号】W WO2019177909
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-02-28
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519236022
【氏名又は名称】パイプライン メディカル テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パーセル キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】グリズウォルド エリック
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ ゴードン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ファム トゥルン ホ
(72)【発明者】
【氏名】マクダニエル スティーヴン
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-523256(JP,A)
【文献】米国特許第09877833(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0256269(US,A1)
【文献】特開2015-128591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁尖アンカー展開システムであって、
近位端と遠位端とを有するカテーテルと、
前記カテーテルの遠位端に配置された弁尖コネクタと、
前記弁尖コネクタを通って侵入可能な針と、
を備え、
前記針は、予め装填された、放射状に拡大可能な弁尖アンカーを内部に有すると共に、前記カテーテルを通って近位方向に延在する縫合糸を有
し、
前記放射状に拡大可能な弁尖アンカーは、前記針内における軸方向に伸張した構造から、弁尖に対して軸方向に短縮しかつ半径方向に拡大した構造へと拡大可能であり、
前記放射状に拡大可能な弁尖アンカーは、軸方向に短縮しかつ半径方向に拡大した前記構造において複数の積み重なったパネルを形成する複数の横断方向のひだを有するプレジェットを備え、
前記プレジェットは2つのシートを備え、当該2つのシートの間に弁尖アンカー縫合糸の遠位部分が取り付けられている、ことを特徴とする弁尖アンカー展開システム。
【請求項2】
前記弁尖コネクタは、弁尖を穿孔するための鋭利な先端を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の弁尖アンカー展開システム。
【請求項3】
前記弁尖コネクタは螺旋状組織アンカーを有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の弁尖アンカー展開システム。
【請求項4】
前記放射状に拡大可能な弁尖アンカーを前記針から押し出すためのプッシュワイヤーをさらに備える、ことを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の弁尖アンカー展開システム。
【請求項5】
前記軸方向に短縮しかつ半径方向に拡大した構造への変換は、弁尖アンカー縫合糸の近位方向への後退により行われる、ことを特徴とする請求項
1に記載の弁尖アンカー展開システム。
【請求項6】
前
記プレジェットは、縮小した断面形態を形成するように当
該プレジェットの長手方向軸の周りで折り畳まれるように構成された2つの羽を有する、ことを特徴とする請求項
1に記載の弁尖アンカー展開システム。
【請求項7】
前記弁尖アンカー縫合糸の遠位部分は、前記2つのシートの間で平坦になっている、ことを特徴とする請求項
1に記載の弁尖アンカー展開システム。
【請求項8】
前
記プレジェットはePTFEからなる、ことを特徴とする請求項
1又は
7に記載の弁尖アンカー展開システム。
【請求項9】
前記2つのシートは、複数の開口を有し、前記弁尖アンカー縫合糸は、当該複数の開口を通ってスライド可能に延びている、ことを特徴とする請求項
1に記載の弁尖アンカー展開システム。
【請求項10】
前記針は、螺旋状弁尖アンカーに対して軸方向に移動可能である、ことを特徴とする請求項3に記載の弁尖アンカー展開システム。
【請求項11】
前記カテーテルを通って伸びる弁尖アンカー展開サブアセンブリをさらに備え、
前記弁尖アンカー展開サブアセンブリは、遠位端および中心内腔を有する細長い管を有する、ことを特徴とする請求項1~1
0のいずれか一項に記載の弁尖アンカー展開システム。
【請求項12】
前記針は、前記細長い管の前記中心内腔を通って軸方向に移動可能である、ことを特徴とする請求項1
1に記載の弁尖アンカー展開システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年3月12日に出願した米国仮出願第62/641,612号の35 U.S.C.119条(e)に基づく利益を主張するものであり、その全てはあらゆる目的のために本明細書中に参照として組み込まれる。本願はまた、2017年12月29日に出願された米国特許出願第15/858,671号の一部継続出願であり、これは2017年6月29日に出願された米国特許出願第15/638,176号、現在は米国特許第9,877,833号の一部継続出願であり、2016年12月30日に出願された米国仮出願第62/441,031号に対する優先権を主張するものであり、これらの各出願の全ては、あらゆる目的のために本明細書中に参照として組み込まれる。本願と共に提出された出願データシートにおいて特定される外国又は国内の優先権主張を伴う全ての出願は、37 CFR 1.57条に基づき本明細書中に参照として組み込まれる。
【0002】
本開示は、僧帽弁修復または僧帽弁置換に関し、より一般的には、僧帽弁逆流の状態から僧帽弁の適切な機能を回復するために僧帽弁腱索の再形成、修復および/または置換のための方法および方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
心臓には4つの心臓弁があり、血液が心臓の4つの部屋を一方向に通過できるようになっている。4つの弁は三尖弁、僧帽弁、肺弁および大動脈弁である。4つの部屋は左右の心房(上部の部屋)と左右の心室(下部の部屋)である。
【0004】
僧帽弁は前尖と後尖と呼ばれる2つの弁尖で形成され、心臓のポンピングにより弁尖にかかる圧力に応じて開閉する。僧帽弁に関しては、いくつかの問題が発生または発生しうる。このような問題には僧帽弁逆流(MR)があり、僧帽弁尖が適切に閉鎖しないために僧帽弁に漏れが生じることがある。重度の僧帽弁逆流は心機能に悪影響を及ぼし、患者のQOLおよび寿命を損なう可能性がある。
【0005】
僧帽弁逆流を是正するために、いくつかの技術が開発されている。これらには、病気および基礎にある病因に応じて、心臓移植、弁置換または弁修復、腱索短縮または腱索置換、弁輪形成術としても知られる僧帽弁輪修復が含まれる。
【0006】
腱索の置換または修復に関連して、ある種の外科的アプローチおよび経心尖アプローチ(Trans Apical Approach)が提案されている。しかしながら、これらの努力にもかかわらず、MRを減少または除去するために、腱索置換または腱索修復のための経血管アプローチの必要性が残されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、経血管的人工腱索の移植方法を含み、本方法は、カテーテルを左心房内に進入させ、僧帽弁を通って左心室内に進入させるステップと、カテーテルから左心室の壁内に心室アンカーを展開し、心室アンカーに装着されてカテーテルを介して近位側に伸びる心室縫合糸を残すステップと、カテーテルを介し、心房側から僧帽弁尖の上面を通って弁尖アンカーを進め、弁尖を通して近位側に延びる弁尖縫合糸で弁尖の下(心室)側に対して弁尖アンカーを配置するステップと、弁尖縫合糸を弁尖の頂上から心室縫合糸に固定して弁尖の左心房方向への移動範囲を制限するステップと、を含む。
【0008】
本開示の別の態様は、近位端および遠位端を有するカテーテルと、カテーテルの遠位端に配置された弁尖アンカーと、弁尖アンカーを通して前進可能な針とを含み、針は、予め装填され、カテーテルを通して近位側に伸びる縫合糸を有する放射状に拡大可能な弁尖アンカーを解放可能に運ぶ、弁尖アンカー展開システムである。
【0009】
本発明の別の態様によれば、経血管的人工腱索の移植方法が提供される。この方法は、カテーテルを左心房内に進入させ、僧帽弁を通って左心室内に進入させるステップと、カテーテルから左心室の壁内に心室アンカーを展開し、心室アンカーに装着されてカテーテルを介して近位側に伸びる心室縫合糸を残すステップと、心房側から弁尖アンカーカテーテルを僧帽弁尖に固定し、弁尖アンカーカテーテルを弁尖に固定した状態で、僧帽弁尖を通してカテーテルから弁尖アンカーを進め、僧帽弁尖を、カテーテルを通って近位側に延びる弁尖縫合糸に固定し、弁尖縫合糸を心室縫合部に固定して弁尖の左心房方向への移動範囲を制限する、ステップとを含む。
【0010】
僧帽弁尖を固定するためにカテーテルから僧帽弁尖を通して弁尖アンカーを進めるステップは、僧帽弁尖の上面を通して弁尖アンカーを予め装填した針を進めるステップを含むことができる。僧帽弁尖に弁尖アンカーカテーテルを固定するステップは、弁尖コネクタを使用することを含むことができる。弁尖コネクタは、螺旋状のアンカーまたは組織フックを含んでいてもよい。
【0011】
本発明の別の態様によれば、僧帽弁尖に弁尖アンカーを固定する方法が提供される。この方法は、カテーテルを左心房内に進めるステップと、心房側から、カテーテルに連結された弁尖コネクタを弁尖の心房側から僧帽弁尖に固定するステップと、および弁尖コネクタを僧帽弁尖に固定した後、僧帽弁尖を弁尖縫合糸に固定するために弁尖アンカーを僧帽弁尖を通して進めるステップとを含む。
【0012】
僧帽弁尖を弁尖縫合糸に固定するために弁尖アンカーを僧帽弁尖を通して進めるステップは、弁尖アンカーを予め装填した針を心房側から僧帽弁尖を通して進めるステップを含むことができる。針は、弁尖コネクタから進めることもできる。弁尖コネクタは、螺旋状のアンカーを含んでいてもよい。
【0013】
本発明の別の態様によれば、弁尖アンカー展開システムが提供される。このシステムは、近位端および遠位端を有するカテーテルと、カテーテルの遠位端に配置された弁尖コネクタと、弁尖コネクタを通って前進可能な針を含み、この針は、そこに予め装填され、カテーテルを通して近位側に延びる縫合糸を有する放射状に拡大可能な弁尖アンカーを含む。弁尖コネクタは、螺旋状のアンカーを含んでいてもよい。
【0014】
本発明の別の態様によれば、新生腱索展開システムが提供される。このシステムは、近位端および遠位端を有するカテーテルと、カテーテルを通して近位側に伸びる心室縫合糸を有し、カテーテルを通して伸長可能な螺旋状心室アンカーサブアセンブリと、カテーテルを通して伸びる弁尖アンカー展開サブアセンブリとを有するシステムであって、弁尖アンカー展開サブアセンブリは、その内部に放射状に拡大可能な弁尖アンカーと、カテーテルを通して近位側に伸びる弁尖縫合糸とを有する。
【0015】
放射状に拡大可能な弁尖アンカーは、プレジェット(pledget)を含むことができる。このプレジェットは、縫合糸の近位への収縮により、細長いストリップ形状から放射状に拡大した軸方向に後退した形状に変換可能であり得る。放射状に拡大可能な弁尖アンカーは、2枚の材料シートの間に配置された弁尖縫合糸を含むことができる。放射状に拡大可能な弁尖アンカーは、弁尖を穿孔するための鋭利な先端を有する針内に運ばれ得る。弁尖アンカー展開サブアセンブリは、遠位端および中心内腔を有する細長い管、および遠位端上の弁尖コネクタを含むことができる。弁尖コネクタは、螺旋状弁尖アンカーを含むことができる。針は、螺旋状弁尖アンカーに対して軸方向に移動することができる。システムは、さらに、カテーテルを通して前進可能であり、心室縫合糸を弁尖縫合糸に接続するように構成された縫合糸ロックサブアセンブリを含むことができる。
【0016】
本発明の別の態様によれば、弁尖アンカーデリバリーサブシステムが提供される。このサブシステムは、近位端、遠位端および中心内腔を有する細長い可撓性管状体と、中心内腔を通して軸方向に移動可能に前進可能な展開針と、展開針内に運ばれる弁尖アンカーと、管状体の遠位端によって運ばれる弁尖コネクタとを含む。弁尖アンカーは、螺旋状要素を含むことができる。展開ニードルは、螺旋要素を通して軸方向に伸長可能であってもよい。
【0017】
本発明の別の態様によれば、組織アンカーが提供される。組織アンカーは、ハブと、ハブから近位側に伸びる縫合糸と、ハブから遠位側に伸びる螺旋状アンカーと、螺旋状アンカーを通して、螺旋状アンカーの遠位端を越えて同心円状に伸びるコアワイヤとを含む。
【0018】
組織アンカーはさらに、ハブから近位側に延びる縫合糸アンカーガイドを含むことができる。組織アンカーはさらに、ハブから近位側に伸びる約10cm以下の長さを有する管状スリーブを含むことができる。組織アンカーはさらに、スリーブによって運ばれる放射線不透過性マーカーを含むことができる。組織アンカーはさらに、コアワイヤによって軸方向に移動可動に運ばれる放射線不透過性マーカーを含むことができる。組織アンカーはさらに、コアワイヤによって運ばれるバネを含むことができる。組織アンカーはさらに、螺旋状アンカーの遠位端上の組織穿孔点、および組織との係合状態からの螺旋状アンカーの回転に抵抗するように構成された螺旋状アンカー上の棘を含んでいてもよい。
【0019】
本発明の別の態様によれば、動的深度インジケータを有する組織アンカーが提供される。この組織アンカーは、ハブと、ハブから遠位側に伸びる組織アンカーと、ハブから遠位側に伸びるコアワイヤと、ハブによって移動可能に運ばれる放射線不透過性マーカーと、放射線不透過性マーカーを遠位方向に付勢するスプリングとを含み、放射線不透過性マーカーは、組織アンカーが組織内に進むことに対応して、組織アンカーに対して近位側に進む。
【0020】
本発明の別の態様によれば、血管内縫合糸ロックが提供される。縫合糸ロックは、そこを通して延びる縫合糸経路を有する本体と、縫合糸経路の断面寸法を減少させるためのハウジング内の可動壁と、ハウジング上の回転可能な結合部と、結合部の回転に応じて可動壁を前進させるための駆動機構とを含む。
【0021】
縫合糸ロックはさらに、縫合糸経路に露出した摩擦増強面を含むことができる。摩擦増強面は、可動壁上にあってもよい。縫合糸ロックは、角度付き表面を有し、ハウジング内を軸方向に移動可能なプッシュウェッジを含むことができる。結合部の回転は、可動壁を横方向に前進させて縫合糸経路の断面寸法を変化させるプッシュウェッジを軸方向に前進させることができる。可動壁は、第1の側の縫合糸把持面と第2の側の傾斜面を含むことができ、傾斜面は、プッシュウェッジ上の角度付き表面と滑り接触するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本開示の前述の特徴および他の特徴は、添付の図面と併せて、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるであろう。これらの図は、開示に従っていくつかの実施形態のみを描いており、範囲を限定しているとは考えられないことを理解するべきである。
【0023】
【
図1】
図1は、僧帽弁への経頭的アプローチを介した心室アンカーの配置を示している。
【
図2C】
図2Cは、心室アンカー展開ツールの遠位端上の心室アンカーの斜視図である。
【
図2D】
図2Dは、心室アンカー展開ツールの近位端の斜視図である。
【
図2E】
図2Eは、心室アンカーおよび心室アンカー展開ツールの遠位端の部分分解斜視図である。
【
図3】
図3は、僧帽弁の弁尖と結合するように配置されたカテーテルの展開端を示している。
【
図4】
図4は、螺旋状の弁尖アンカーによって捕らえられた弁尖と、心房から心室へと弁尖を横切る針を示している。
【
図5】
図5は、針から心室内に展開したプレジェット型の弁尖アンカーを示している。
【
図6A】
図6Aは、弁尖の心室側に対してプレジェットを折り畳むための弁尖縫合糸上の近位牽引を示している。
【
図6B】
図6Bは、プレジェット型弁尖アンカーの詳細を示す。
【
図6C】
図6Cは、プレジェット型弁尖アンカーの詳細を示す。
【
図6D】
図6Dは、プレジェット型弁尖アンカーの詳細を示す。
【
図7】
図7は、展開された弁尖アンカーおよび縫合糸、ならびに縫合ロックの緊張および付着のための準備が整った展開された心室アンカーおよび縫合糸を示す。
【
図8】
図8は、弁尖アンカーデリバリーサブシステムの遠位端の斜視図を示す。
【
図9】
図9は、弁尖アンカーデリバリーサブシステムの近位端の斜視図を示す。
【
図10】
図10は、弁尖アンカーデリバリーサブシステムの遠位端の分解図を示す。
【
図11】
図11は、縫合糸ロックデリバリーサブシステムを介して、弁尖アンカー縫合糸および心室アンカー縫合糸を超えて縫合糸ロックを進め、弁尖アンカーを心室アンカーに接続する様子を示す。
【
図12】
図12は、張力が調節され、縫合糸末端が切断された後にロック位置にされた縫合糸ロックを示す。
【
図13】
図13は、縫合糸ロックデリバリーサブシステムの遠位端の斜視図を示す。
【
図14】
図14は、縫合糸ロックデリバリーサブシステムの近位端の斜視図を示す。
【
図15】
図15は、縫合糸ロックデリバリーサブシステムの遠位端の部分分解図を示す。
【
図16】
図16は、縫合糸切断アセンブリの遠位端の斜視図を示す。
【
図17】
図17は、切断される前に縫合糸を保持するために切断ヘッドがまだ前進していない構成における縫合糸ロックデリバリーサブシステムの切断アセンブリ部の側面図を示す。
【
図18】
図18は、縫合糸を切断するために切断ヘッドが進められた構成における縫合糸ロックデリバリーサブシステムの切断アセンブリ部の側面図を示す。
【
図19】
図19は、縫合糸ロックと、縫合糸ロックに結合するように構成されたトルク駆動部の遠位端の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
2017年12月29日に出願された米国特許出願15/858,671(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、経血管的人工腱索移植のためのシステムおよび方法を開示する。1つの態様は、カテーテルを左心房内に進入させ、僧帽弁を通って左心室内に進入させ、カテーテルから心室アンカーを展開し、左心室の壁内に留置し、心室アンカーに付着し、カテーテルを通して近位側に伸びる心室縫合を残し、僧帽弁尖をカテーテルを通して近位側に伸びる弁尖縫合糸に固定するために、弁尖アンカーを僧帽弁尖に進入させ、弁尖縫合糸を弁尖端の上面に伸展させ、弁尖縫合を心室縫合糸に固定して、弁尖の左心房方向への移動範囲を制限することを含む。特定の態様については、本明細書でさらに展開される。
【0025】
僧帽弁へのアプローチは、左心房へのアクセスを提供する標準的な経中隔アプローチによって達成することができる。このアクセスにより、最初のステップは、弁尖捕捉カテーテルを、逆流を最も良く補正するように決定された位置で僧帽弁の弁尖に固定することができる。上心房表面から弁尖の表面を検査することは、僧帽弁腱索を追加するための最適な位置に関して、有利に即時のフィードバックを提供することができる。本発明の別の実施では、まず心室アンカーを展開し、続いて弁尖アンカーを展開する。
【0026】
図1を参照すると、螺旋状アンカー32のような心室アンカーが左心室24の心尖部20付近に展開されている。以下の図において、螺旋状アンカー32は心尖部20付近に配置されているが、アンカー32は、心尖部の薄い組織からオフセットされた位置に取り付けることもでき、あるいは、2つの乳頭筋の間など、心室の一般的により厚い隣接壁に埋め込むこともできる。これにより、移植された新生腱索構成物(縫合糸、任意の新生乳頭筋、および/または螺旋状アンカー)を、本来の腱索の元の経路と実質的に平行または同心円状の軸に沿って整列される。特定の実施形態では、移植された新生腱索構成物は、本来の腱索の元の経路および/または本来の腱索の経路に隣接する経路と平行な線から5度、10度、または15度以内の縦軸に沿って整列される。さらに、螺旋状アンカーが図示されている一方で、アンカーは、心臓の組織を係合するための異なる構造を有することができ、したがって、組織を係合するために公知の様々なピアス、フックまたは放射状に拡張可能な構造を含む螺旋状構造の代わりに他の組織アンカー構造を使用することができる。
【0027】
図2Aおよび2Bを参照すると、本発明による心室アンカーとしての使用に適した組織アンカーの1つの実施例が示されている。アンカーアセンブリ50は、主に本願の腱索修復用途の文脈で説明されるが、アンカーは、軟部組織または骨アンカーが所望され得る広範な他の用途のいずれにおいても利用され得る。
【0028】
アンカーアセンブリ50は、一般に、ステンレススチール又はニチノールのような種々の材料のいずれかを含み得るコイル54を含む。コイル54は、近位端56と遠位端58との間に螺旋状に延びている。遠位端58は、鋭利な先端59を備え、また、コイルの逆回転および組織からの剥離に抵抗するように構成された保持棘61を運ぶ。コイル54の近位端56は、以下にさらに詳しく論じるハブ57によって運ばれる(ハブに取り付けられるか、またはハブと一体的に形成される)。
【0029】
ハブ57から遠位、およびコイル54内に延びるのは、鋭利な組織に突き刺される遠位端64を有する細長いコアワイヤ62である。遠位端64は、コイル54の遠位端58の遠位側に位置している。これにより、鋭利な遠位端64は、接触時、およびコイル54の回転を開始する前に、標的組織内にコイル54を埋め込むために組織を穿孔することができる。アンカーの回転に先立って先端64をエンゲージさせることにより、アンカーを横方向の動きに対して安定化させ、アンカー50を組織に対して一か所に留置し、これにより、当業者が理解するように、所望の標的部位からアンカーが「ぶれる」ことなく、コイル54を回転させて組織にエンゲージすることができる。コアワイヤ62の近位端は、例えば、はんだ付け、ろう付け、接着剤、および/または、ハブ57の側壁または他の表面の開口部に挿し込むなどの機械的干渉手段など、様々な方法でハブに取り付けることができる。
【0030】
放射線不透過性の深さマーカー66は、開口部68を備え、コアワイヤ62上で軸方向に可動な状態で運ばれる。放射状に外向きに伸びる突起または輪状突出部のような遠位ストップ70は、コアワイヤ62によって運ばれ、鋭利な遠位端64と近位側に間隔があけられており、マーカー66が遠位チップ64の組織固定機能を害しないように、ストップ70の遠位側にコアワイヤ誘導セグメント72を提供する。ストップ70は、マーカー66の遠位移動を制限するように機能する。マーカー66は、コアワイヤ62を受け入れるための中央開口を有する円形ディスクのような環状構造であってもよい。
【0031】
コイルスプリング71は、コアワイヤ62上に同心円状に運ばれ、放射線不透過性マーカー66を遠位方向に付勢する。従って、放射線不透過性マーカー66は、ストップ70の近位側面に対して位置に保持される。使用時には、マーカー66は標的付着部位の組織の表面に乗る。螺旋状コイルアンカー54が回転して組織内に遠位側に進むにつれて、マーカー66は組織表面とともにコアワイヤ62上に近位側に乗り、組織アンカーが完全に埋め込まれてマーカー66がハブの近位側に後退するまでコイルスプリング71を圧縮する。これは、マーカー66とハブ57または他の放射線不透過性マーカーのような基準との間の変化する距離を観察することによって、組織内へのコイルの進行およびコイル54を標的組織内に埋め込む完全に嵌合した終点の蛍光透視可視化を可能にする。
【0032】
ハブ57は、本明細書の他の箇所で考察されるように、回転駆動部との係合のための近位コネクタを含む。一実施形態では、コネクタは、駆動部の遠位端上の相補的表面構造と取り外し可能に係合するための六角形の開口部のような開口部を備える。縫合糸74は、アンカーアセンブリ50、例えば、ハブ57、コイル54またはコアワイヤ62に固定される。図示の実施形態では、縫合糸74は、ハブの側壁の1つまたは2つの開口部を通って、中央のハブ内腔を横切って挿入されるクロスピン76に取り付けられる。縫合糸は、ハブ57から離れた位置に1つまたは2つ以上の放射線不透過性マーカー82を付加的に運搬することができ、回転駆動部の近位コネクタおよび中央内腔を通して近位側に延びることができる。
【0033】
管状スリーブ78のような縫合糸ロックガイドは、ハブ57から少なくとも約2mmまたは4mmまたは8mm近位側に延びるが、一般的には所望の性能に応じて約5cmまたは2cm以下である。ガイドスリーブ78は、ePTFEのような柔軟な材料を含んでいてもよい。好適には、放射線不透過性マーカーバンド80は、スリーブ78の近位端によって担持され、縫合糸74上でマーカー82から軸方向に離れて配置され、縫合糸74上で遠位側に進められる際の縫合糸ロックの透視可視化を容易にする。マーカーバンド80は、バンドをスリーブの上に置き、スリーブをその上に反転させてリングを包み込むことによって、ePTFEスリーブの内層と外層との間に位置してもよい。
【0034】
縫合糸ロックガイドは、展開カテーテルからの離脱後、縫合糸ロックの向きを維持するために、図示したようなスリーブ、またはハブから近位側に延び、縫合糸ロック内の内腔内に受容されるアライメントピンのような様々な構造のいずれかを含んでいてもよい。縫合糸の張力は、展開カテーテルによって縫合糸ロックが適所に保持されている間に最適化されるので、カテーテルからの解放後の縫合糸ロックの向きのあらゆる変化は、弁尖上の張力に影響したり、インプラントの治療価値に潜在的に負の影響を及ぼしたりし得る。縫合糸ロックガイドは、心室アンカーと弁尖アンカーとの間の最大距離をカテーテルからの展開前と展開後の両方で一定に維持するのに役立つ。このようにして、(収縮期の)弁尖縫合糸の最大張力は、カテーテルの離脱の前後のいずれにおいても、縫合糸ロックがロックされた後は変化しない。
【0035】
螺旋状アンカーアセンブリ50は、心室アンカーデリバリーサブシステム300によって送達され得る。
図2C~2Eは、心室アンカーデリバリーサブシステム300およびその部品の様々な図を示す。
図2Cは、サブシステム300の遠位端の斜視図を示す。
図2Dは、サブシステム300の近位端の斜視図を示す。
図2Eは、サブシステム300の遠位端の部分分解図を示す。
【0036】
サブシステム300は、デリバリーカテーテル100を通して送達され得る。デリバリーカテーテル100は、心房経中隔穿刺などの従来の技術を介して左心房にアクセスすることができる。デリバリーカテーテル100は、種々のサブシステムが配置され、デリバリーカテーテル100から除去される間、処置全体にわたって実質的に一定の位置に維持され得る。例えば、デリバリーカテーテル100の遠位端は左心房に配置される。他の実施形態では、デリバリーカテーテル100の遠位端は、処置の間全体にわたって左心室内に配置されてもよい。
【0037】
図2C~2Eに示すように、心室アンカーデリバリーサブシステム300は、外鞘304、駆動部(シャフト307およびヘッド306を含む)、アンカーハブ308、およびアンカー302を含み得る。アンカーは螺旋状アンカー302であってもよく、駆動ヘッド306は螺旋状アンカー302を回転させるように構成することができる。螺旋状アンカー302は、アンカーハブ308の外径上に受容されるように構成された内径を含むことができる。螺旋状アンカー302は、締まりばめ又は他の摩擦係合、はんだ付け又は他の公知の取り付け技術によってアンカーハブ308にしっかりと固定されてもよい。アンカーハブ308は、螺旋状アンカー302とともに埋め込まれたままでもよい。
【0038】
アンカーハブ308は、縫合糸74を受容し(
図2A)、縫合糸74を螺旋状アンカー302に取り付けるために、アンカーハブ308の中心軸に実質的に沿って配置された内腔を含むことができる。いくつかの実施形態において、縫合糸74は、縫合糸74がアンカーハブ308内腔を通して近位側に引っ張られるのを防止する大きさの直径を有する接着要素(例えば、結節またはワッシャー)を含んでいてもよい。例えば、縫合糸74は、内腔の遠位側に結びつけることができる。いくつかの実施形態では、縫合糸74は、アンカーハブ308に縛られることができる(例えば、内腔を通過し、
図2Bに示されるように外表面またはクロスピン76のような構造の周りに包まれ、それ自身に縛られる)。
【0039】
螺旋状アンカー302は、巻線の遠位部および巻線の近位部を含むことができる。巻線の近位部は、巻線の遠位部よりも間隔を狭くしてもよく、螺旋状アンカー302をアンカーハブ308に固定するように構成してもよい。巻線の遠位部は、巻線の近位部よりも間隔を広げて配置されてもよく、心室組織への挿入のために構成されてもよい。アンカーハブ308は、螺旋状アンカー302に接するように構成され、かつ/または螺旋状アンカー302がアンカーハブ308の近位端を超えて近位側に進むのを妨げるように構成された、その近位端が拡大された断面を有することができる。本明細書の他の箇所に記載される他の螺旋状アンカーは、同様に本明細書に記載された心室アンカーデリバリーサブシステム300と共に使用されるように構成されてもよい。
【0040】
螺旋状アンカー308の近位面は、駆動ヘッド306の延長部分306’を受容するための凹部を含むことができる。凹部は、駆動部の回転時に駆動部からアンカーハブ308にトルクを伝達するように構成されるように、非円形(例えば、長方形または六角形などの多角形)であってもよい。凹部は、アンカーハブ308の中心内腔の周囲に位置してもよい。
【0041】
他の実施形態では、アンカーハブ308は延長部分を含むことができ、駆動部306は相対する凹部を有することができる。駆動ヘッド306は、アンカー上の対応する構成要素と回転係合するように相補的な構成を有する遠位側に面したポスト又は開口部を有する略円筒形であってもよい。駆動ヘッド306は、駆動シャフト307に固定的に連結されてもよい。駆動部は、駆動ヘッド306と、縫合糸74を受容するように構成された駆動シャフト307とを通る中心内腔を含むことができる。駆動部の中心内腔は、アンカーハブ308の中心内腔と整列するように構成されてもよい。駆動シャフト307は、ガイドシャフト305内に受容され得る。駆動ヘッド306の直径は、ガイドシャフト305の内径よりも大きくてもよい。外鞘304は、駆動ヘッド306、アンカーハブ308、及び螺旋状アンカー302と共に、ガイドシャフト305を受け入れるような寸法とすることができる。
【0042】
外鞘304は、デリバリーカテーテル100を介して左心室内および心室付着部位の近位側に送達され得る。いくつかの実施形態において、外鞘304は、デリバリーカテーテルなしで送達され得る。いくつかの実施形態では、外鞘304が心室付着部位の近位側に配置され、次いで外鞘304を通して遠位側に押されるか、または外鞘304が近位側に後退して螺旋状アンカー302が露出するようになるまで、螺旋状アンカー302を外鞘304内に隠してもよい。螺旋状アンカー302は、心室組織と接触させることができる。駆動シャフト307を回転させると、駆動ヘッド306、アンカーハブ308、および螺旋状アンカー302が回転し、それによって心室アンカー302が心室組織にねじ込まれる。駆動部309の回転は、駆動部309、アンカーハブ308、および螺旋状スクリュー302を外鞘304に対して遠位方向に軸方向に前進させることができる。
【0043】
駆動シャフト307は、
図2Dに示すように、駆動ハンドル312を用いてユーザによって手動で回転させることができる。
図2Dに示されるように、心室アンカーデリバリーサブシステム300の近位端は、第1および第2の止血弁314、316を含むことができる。第1止血弁314は、駆動ハンドル312の遠位側に位置してもよく、ガイドシャフト305へのアクセスを提供してもよい。第2止血弁316は、駆動ハンドル312の近位側に位置してもよく、駆動部の中心内腔へのアクセスを提供してもよい。心室アンカー縫合糸(図示せず)は、第2止血弁316を通って延びることがある。
【0044】
いくつかの実施形態では、駆動ヘッド306の挿入部306’とアンカーハブ308の凹部は、2つの構成要素を一時的に一緒に保持する摩擦的な係合を有していてもよい。摩擦係合は、螺旋状アンカー302が挿入されると、心室組織からの反力によって、駆動部の近位への後退時に解放され得る。いくつかの実施形態では、縫合糸74上の近位張力は、近位ハブ308と駆動ヘッド306との間の係合力を提供することができ、これは、駆動部309の後退時に解放することができる。駆動ヘッド306は、外鞘304がデリバリーカテーテル100内に引き込まれる前に、外鞘304内に近位側に引き込まれてもよい。
【0045】
心室アンカーデリバリーサブシステム300の埋め込まれていない部品をデリバリーカテーテル100から取り出し、後続のサブシステムをデリバリーカテーテル100に配置して、新生腱索の埋め込みを完了することができる。改変された実施形態では、心室アンカーデリバリーサブシステム300および弁尖アンカーデリバリーサブシステム330のような後続のサブシステムは、デリバリーカテーテル100内に同時に配置されてもよく、ある配置では、組織および弁尖アンカーの両方をデリバリーカテーテル内に予め装填することができる。代替の実施形態では、心室アンカーの移植は、異なる順序(例えば、弁尖アンカーの移植後)で実施されてもよい。心室アンカーデリバリー部品は、デリバリーカテーテル100を通して心室アンカー302まで延びたままの縫合糸74の近位端を超えて近位側に後退されてもよい。
【0046】
図3~6は、弁尖アンカーの展開を示している。
図3を参照すると、心室アンカー32が展開され、心室アンカー縫合糸74によってカテーテル100に連結され、心室アンカーサブシステムは除去されている。弁尖アンカーは、弁尖の心房側の標的部位に向けられた針338内に運ばれる。針338は、カテーテル100を通って前進可能な管状スリーブ332内など、カテーテル100内を軸方向に相互に運ばれる。針および針駆動部の追加の詳細については、以下で考察する。
【0047】
図3に示したように、図に示した配置では、針は心房から心室へと弁尖を通過し、そして予め搭載された縫合糸を心室内に進めることができる。その後、縫合糸を用いて、弁尖の心室側に対してプレジェットを折り畳み、
図4に示すように弁尖に縫合糸を固定することができる。したがって、プレジェットは放射状に拡大可能な弁尖アンカーを形成する。特定の実施形態では、放射状に拡大可能な弁尖アンカーの他の形態を使用することができる。
【0048】
次に、弁尖アンカーおよび縫合糸を、心室アンカー、縫合糸および縫合糸ロックと組み合わせて使用して、
図5に示されるような新しい僧帽腱索を効果的に作製することができる。前述のように、弁尖アンカーおよび縫合糸を、米国特許出願第15/858,671号(その全体は本明細書中に基準として組み込まれる)およびそこに開示される心室アンカー、縫合糸および縫合糸ロックの様々な実施形態で開示される経血管的人工腱索移植のためのシステムおよび方法と組み合わせて使用することができる。
【0049】
好適には、弁尖アンカー展開サブアセンブリには、弁尖を捕捉して安定化するための一時的なアンカーが備えられ、一方、針先338は、標的側でそれを通して前進する。
図3および
図4に示されるように、デリバリーチューブ332または他のシステム構成要素の遠位端400は、螺旋状組織アンカー402などの一時的な組織アンカーを有する。一時的なアンカー402は弁尖と一時的にしか係合しないように意図されているため、アンカー402は遠位の棘を有していないが、それを除けば、弁尖アンカー54と類似のものでよい。このように、アンカー402は、遠位先端408で終わる螺旋状エレメント406を含む。
【0050】
使用時には、遠位先端408は、弁尖表面上の標的部位に配置され、螺旋状エレメント406は、軸周りに回転し、弁尖とかみ合い、貫通する。針先338は、螺旋状エレメント406の回転に先立って、任意に弁尖とかみ合ってもよく、心室アンカーと
図2Aおよび
図2Bと関連して述べたのと同様の方法で、回転に応じてアンカーが標的部位から離れるのに逆らって動くのを安定化させるために利用されてもよい。
【0051】
螺旋状エレメント406が心房側から弁尖を捕捉し、弁尖をカテーテルに固定するように係合した後に、針は、螺旋状エレメント406によって規定される中心内腔を通して遠位側に進められ、弁尖を完全に通過して、針先338が
図4に見られるように弁尖の心室側から出るようにすることができる。針を通して伸びるプッシャーのようなアンカー展開アクチュエータを利用して、アンカーを針から心室内に展開することができる。
【0052】
図5を参照すると、弁尖アンカーは、本明細書の他の箇所に記載されたものと同様のプレジェット340であってもよい。プレジェット340は、弁尖アンカー縫合糸344の遠位端に結合されるか、または付着され得る。プレジェットは、布
(ファブリック:fabric)のようなソフトなおよび/または柔軟な材料を含んでいてもよい。縫合糸344は、針336を通って延びてもよい。プレジェット340は、以下で考察する
図8および10に示すように、送達のために針336内に配置することができるように、縮小した放射状断面を含む形態で折りたたまれるか、または圧縮されることができる。プレジェット340は、
図5に示すように、針先338の遠位端からの展開時に、より大きな放射状断面を想定するために、縮小した断面から拡大することができる。いくつかの実施形態では、プッシュワイヤーまたはリリースワイヤー(図示せず)を介して、プレジェット340を針336を通して押し込むことができる。針先338を通って送達されると、
図6に示されるように、弁尖縫合糸344の近位側への後退は、弁尖アンカーが軸方向に折り畳まれ、放射状に拡大された形態をとることができ、これは、
図7に示されるように、弁尖アンカーが弁尖の穿刺を通って後退することを防ぎ、それによって弁尖縫合糸344を弁尖に固定する。
【0053】
図6A~6Dは、弁尖縫合糸344の遠位端に接続されたプレジェット340を模式的に示す。プレジェット340は、2つの羽341、342を含んでいてもよく、これらは、プレジェット340の縦軸の周りで(例えば、両方とも時計回りまたは反時計回りに)丸められ/折りたたまれ、縮小した断面形態を形成することができる。いくつかの実施形態において、弁尖縫合糸344は、プレジェット340と一体的に形成されてもよい。折り畳み可能な構成を産み出すために、縫合糸344は、プレジェットを通って遠位方向に延び、プレジェットの遠位端の周りをループし、近位方向に戻り、
図6Aに示すように、プレジェット340内に形成された1つまたは複数の開口部(例えば、2つの開口部、3つの開口部、4つの開口部など)を通ってねじ戻されてもよい。いくつかの実施形態において、開口部は、プレジェット340の中心に沿って並べてもよい。
【0054】
開口部は、プレジェット340を通って、およびプレジェット340と一体化している縫合糸344の埋め込まれた部分の部分を通って延びることができる。縫合糸344の埋め込まれた部分は、少なくともプレッジェット340内で部分的に平らになっていてもよい。いくつかの実施形態では、開口部は、実質的に、プレッジェットの中心付近に配置されてもよい(例えば、埋め込まれた縫合糸344の左または右のすぐ近く、または縫合糸344の左側と右側の間で交互に配置されてもよい)。展開された場合、縫合糸344は、プレジェット340の遠位端に効果的に連結され得る(例えば、縫合糸344は、プレジェットシートの間で挿入される位置にループを戻すことができる)。
【0055】
図6B~6Dは、本明細書の他の箇所に記載されているようなプレジェットの例を模式的に示す。
図6Bは、縫合糸344の遠位端(破線で示す)を2枚の平らなシートの間に貼付して形成されたプレジェット340を模式的に示し、その結果、左右の羽341、342に対するシートが形成される。
図6Cは、
図6Bに図示されたB-Bの軸に沿ったプレジェット340の断面を示す。いくつかの実施形態において、縫合糸344は、2枚のシートの間に挿入され(例えば、シートの真ん中に実質的に下方に)、3つの構成要素を一緒に接合するために(例えば、熱および/または圧力下で)押さえられかつ/または積層され得る。少なくとも1つの層は、部分的に焼結され得る。縫合糸344は、縫合糸の断裂に対する抵抗を改善するために、平坦化および/または緻密化され得る。シートは、平坦なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート(例えば、薄い未硬化の拡張PTFE(ePTFE)シート)または他の適当な材料であってもよい。いくつかの実施形態では、弁尖縫合糸344は、ジグザグまたはS字形の形状のような別の構成でシート間に配置されてもよい。
図6Dは、縫合糸344の近位尾端を縫着する複数の開口部343を含む
図6Bのプレジェット340を示す。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書の別の箇所に記載されているように、縫合糸344を僧帽弁尖に固定するように構成されている、折り畳み可能な構造を形成するために、1つ以上の開口部343を、様々な形態で、プレジェットを通して形成することができる。
図6Dは、縫合糸344の両側の周りで交互に開口部343を示す。いくつかの実施形態において、開口部343は、縫合糸344の同じ側(例えば、羽341または羽342)に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、縫合糸344を通して開口部343を形成することができる。開口部343は、プレジェット340の中心に沿って並べてもよい。開口部343は、縫合糸344の長さに沿って並べてもよい(例えば、直線を形成してもよい)。縫合糸344は、2つの対向するシートの間で少なくとも部分的に平坦にすることができ、これにより、縫合糸344を介して開口部343の配置が容易になる。上記の配置を含め、開口部343の様々な組み合わせが使用され得る。
【0057】
プレジェット340は、羽341、342がほぼ同じ大きさになるように形成されてもよく、または異なる大きさになるように形成されてもよい。弁尖縫合糸344の近位側への後退に際して、
図6Aに示されるように、プレジェット340を折りたたんでアコーディオン状の形態をとってもよい。プレッジ340は、弁尖縫合糸344の長軸に対して概ね垂直な略平面の近位表面を含む形態としてもよい。この形態は、縫合糸344を弁尖に固定することを容易にし得る。弁尖中に弁尖縫合糸344を固定すると、弁尖アンカーデリバリーサブシステム340は、デリバリーカテーテル100から引き抜かれる。弁尖アンカーデリバリー部品は、心室アンカー縫合糸74と共に、デリバリーカテーテル100を通って弁尖アンカー340まで延在したままの縫合糸344の近位端を超えて近位側に後退してもよい。
【0058】
図8~10は、弁尖アンカーデリバリーサブシステム330およびその部品の様々な図を示す。
図8は、サブシステム330の遠位端の斜視図を示す。
図9は、サブシステム330の近位端の斜視図を示す。
図10は、サブシステム330の遠位端の分解図を示す。
【0059】
図8および
図10に示すように、弁尖アンカーデリバリーサブシステム330は、外側デリバリーチューブ332を含むことができる。チューブ332は、任意に偏向ゾーンを含んでいてもよく、可撓性チューブ332の種々の側面に沿った1本または2本以上の引っ張りワイヤー(図示しない)の近位側への後退などによって、操作者が操作できるように構成されていてもよい。操作者は、
図9に示すように、弁尖アンカーデリバリーサブシステム330の近位端のハンドル350上に位置するノブ352またはレバーまたは他の作動機構を介して、可撓性チューブの屈曲を制御することができる。
【0060】
針先338で遠位端で終わる内側管状シャフトまたは針336は、デリバリーチューブ332を通して延びることができる。内部針336は、任意の可撓性チューブ332の形状に適合するのに十分な柔軟性を有するハイポ管、押出管または編組管またはカテーテルを含んでいてもよい。針先338は、内側柔軟性シャフト336の遠位端に結合されてもよい。可撓性ジャケット333は、可撓性チューブ332およびデリバリーシャフト334を取り囲んでもよい。
【0061】
図9に示すように、内側管状シャフト336の近位端は、針用ハンドル354に接続されてもよい。針ハンドル354は、止血弁356を含むことができる。弁尖縫合糸344は、弁356を通して挿入することができる。弁356は、チューイ・ボレスト弁(tuohy-borst valve)であってもよい。針用ハンドル354は、内側可撓性シャフト336の内腔にアクセスするための追加ポート358を含むことができる。針用ハンドル354は、内側可撓性シャフト336がハンドル350を通ってデリバリーシャフト334の内腔に伸びるように、ハンドル350の近位側に配置されてもよい。ハンドル350は、内側可撓性シャフト336を受け入れ、デリバリーシャフト334への開口部を含むハンドルの内部構成要素を周囲環境からシールするための止血弁を備えてもよい。
【0062】
針先338は、針用ハンドル354をハンドル350に向かって伸展させるか、または針用ハンドル354をハンドル350から引っ込めることにより、伸縮可能であってもよい。針336の遠位側への前進は、ハンドル354を手動で前進させることによって達成することができる。あるいは、針の遠位側への前進は、比較的高速でストローク長の短い遠位側前進を生じさせる機械的または電気機械的機構によってアシストされてもよい。
【0063】
針先338が管332を越えて遠位側に伸展したときの弁尖への圧力の発生により、
図4に示すように、針先338が弁尖の反対側(例えば、心房側)まで伸展するように、針先338を弁尖に穿刺させてもよい。この圧力は、針先338を伸展させること、および/または針先338が伸展位置にある状態でデリバリー装置330全体を近位方向に後退させることによって発生し得る。
【0064】
心室アンカー縫合糸74と弁尖アンカー縫合糸344は、新生腱索インプラントを形成するために、または新生腱索インプラントの2つの切片を一緒に連結するために、緊張した状態で一緒に連結することができ、その結果、新生腱索は、弁尖の接合端部(coaptive edge)の心房側を横切って、心室アンカー302と弁尖アンカー340との間に延びる。新生腱索の全長は、適度な張力が弁尖に加えられるように、縫合糸ロック376に係合する前に縫合糸74、344の一方または両方の近位側に牽引して調節され、続いて心室アンカー302によって張力が維持される。縫合糸74、344は、デリバリーカテーテル100を通して本体の外側位置まで近位側に延在してもよい。いくつかの実施形態において、縫合糸74、344の近位端は、縫合糸ロックの配置および縫合糸74、344の切断を容易にするために、縫合糸ロックデリバリーシステム370のハンドルまたは近位部に供給されてもよい。いくつかの実施形態において、近位端は、フリーのままであってもよく、または他の手段によって連結または固定されていてもよい。
【0065】
図11は、心室アンカー縫合糸74および弁尖縫合糸344にわたる縫合糸ロック376の前進を示す。縫合糸ロックデリバリーサブシステム370は、デリバリーカテーテル100を通して進めることができ、管状プッシャーカテーテル372は、縫合糸74、344の遠位方向に沿って縫合糸ロック376を押すことができる。縫合糸ロック376が心室に到達すると、縫合糸74上の近位牽引により縫合糸ロック376を心室縫合糸74に沿って押し続けることができ、一方、縫合糸ロック376が心室アンカーに遠位側に進むのに必要であれば、弁尖縫合糸344をカテーテルを通して遠位側に供給することができる。以下でさらに考察するように、
図12は、弁尖アンカーと心室アンカーを連結して人工腱索を形成した最終構成を示している。2本の縫合糸の近位尾部を切断し、心室から僧帽弁を通してカテーテルを近位側に後退させた。
【0066】
図13~14は、縫合糸ロックデリバリーサブシステム370およびその部品の様々な図を示す。
図13は、サブシステム370の遠位端の斜視図を示す。
図14は、サブシステム370の近位端の斜視図を示す。
図15は、サブシステム370の遠位端の部分分解図を示す。
図16は、切断アセンブリの遠位端の斜視図を示す。
図17および18は、サブシステム370の切断アセンブリ部分の側面図を示す。
図19は、縫合糸ロック376と、縫合糸ロック376に係合するように構成されたトルク駆動部388の遠位端の側面図を示す。
図20および
図21は、縫合糸ロック376の近位端図および遠位端図をそれぞれ示す。
【0067】
縫合糸ロックデリバリーサブシステム370は、縫合糸74、344の両方(またはさらに3本もしくは4本もしくは追加の縫合糸)にわたって縫合糸ロック376を進める(例えばスライドする)ように構成されていてもよい。縫合糸74、344は、各々、縫合糸74、344に張力を与え、縫合糸ロック376と対応する組織アンカー302、340との間の各縫合糸74、344の長さを調節するために、縫合糸ロック376に対して近位側に後退してもよい。新生腱索インプラントの張力および長さが最適化されると、縫合糸ロック376は、縫合糸74、344が縫合糸ロック376に対してもはや動けなくなるように、縫合糸74、344の長さを固定するようにロックされてもよい。次いで、縫合糸74、344を縫合糸ロック376の近位の点で切断することができる。縫合糸74、344は、縫合糸ロック376を送達したものと同一の縫合糸ロック送達サブシステム370によって切断することができる。他の実施形態では、縫合糸ロックが適所にロックされた後、別個の切断デバイスを送達カテーテル100に挿入してもよい。
【0068】
縫合糸ロックは、それを通して1つまたは2つ以上の縫合糸を進め、調整することを可能にし、その後、ePTFE縫合糸が通常の使用条件(例えば、滑らずに縫合糸破断強度の少なくとも約60%または80%以上の張力に耐える使用条件)下で縫合糸ロックから滑らないようにすることができる十分なクランプ効率でロックする。僧帽弁尖の張力を再調整するためにロックを再開放し、所望の結果が得られるまで、締め直すこともできる。その後、縫合糸を固定したまま、締め付けツールを外してもよい。
【0069】
縫合糸ロック376は、保持カテーテル373によって縫合糸に沿って進めることができる。保持カテーテル373の遠位端は、保持エレメント377に結合されてもよい(
図15)。保持エレメントは、縫合糸ロック376に係合するように構成されたフランジ371または他の機械的特徴を含むことができる。例えば、フランジ371は、縫合糸ロック376の近位端の凹部に挿入することができる。いくつかの実施形態において、保持カテーテル373の回転および/または保持カテーテル373の軸方向に略垂直な移動により、保持カテーテル373を縫合糸ロック376から外すことができる。
【0070】
縫合糸74、344は、それぞれの組織アンカーから伸びて縫合糸ロック376を通過し、
図21に示す縫合糸ロック376の遠位面の遠位開口部395から入り、
図20に示す縫合糸ロック376の近位面における近位開口部394から縫合糸経路へと出ることができる。縫合糸74、344は、縫合糸ロック376の近位側にあるカッターヘッド375内のチャネルを通り、保持カテーテル373の外側に沿って、デリバリーカテーテル100を通って延びることができる。カッターヘッド375は、カッターカテーテル372の遠位端に結合することができる。保持カテーテル373は、2つのカテーテル372、373が相互に伸長可能または収縮可能となるように、カッターカテーテル372の内部内腔を通って延在することができる。
【0071】
縫合糸74、344が縫合糸ロック376内にロック(しっかりと固定)されると、縫合糸74、344の近位端は、縫合糸ロックの近位面の隣で切断され得る。縫合糸74、344は、カッターヘッド375に連結されたカッターカテーテル372を縫合糸ロック376の近位面に向かって進めることによって切断することができる。
図17~18に模式的に示されるように、カッターヘッド375が保持カテーテル373に沿って保持エレメント377に向かって進めると、カッターヘッドは縫合糸74、344を保持エレメント377上に配置された切断ブレード379に近接させる。カッターヘッド375は、縫合糸74、344を保持するカッターヘッド375内のチャネルがブレード379によって空間的に徐々に占有されるように、保持エレメント377の上を前進するように構成される。ブレード379がカッターヘッド375のチャンネルに押し込まれると、ブレード379は縫合糸74、344を剪断する。縫合糸74、344への近位張力の付加は、縫合糸74、344の切断を容易にすることができる。他の実施形態では、縫合糸74、344を切断するために異なる作動(例えば、切断カテーテルの回転)を構成することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、2つ以上の縫合糸を使用することができ、縫合糸ロック376内でロックし、縫合糸ロックデリバリーサブシステム370によって同様の方法で切断することができる。いくつかの実施形態では、保持エレメント377上のカッターヘッド375の前進は、保持カテーテル373を縫合糸ロック376から取り外すのを容易にすることができる。例えば、カッターヘッド375は、縫合糸ロック376を安定化するように構成されている遠位位置まで前進し、保持カテーテル373を、縫合糸ロック376から軸方向および/または回転方向に離脱させることができる。
【0073】
図19は、縫合糸ロック376の例の側面図を示す(その外側ケーシング/シェルを除去した状態を示す)。縫合糸は、本明細書の別の箇所に記載されているように、縫合ロック376を遠位端から近位端まで通過することができる。縫合糸ロック376は、回転方向に応じて、プッシュウェッジ384を遠位側に前進または近位側に後退させるように構成されたねじ382を含むことができる。ねじ382は、トルクシャフト388によって回転されてもよい。トルクシャフト388は、トルクシャフト388の回転がねじ382の回転を引き起こすように、縫合糸ロック376の近位端に配置された凹部381(例えば、
図20に示すように、多角形の凹部または他の非円形状の凹部)と嵌合するように構成された駆動部ヘッドを備えることができる。トルクシャフト388は、保持カテーテル373の内部内腔を貫通して延びることができる。トルクシャフト388は、サブシステムハンドル396の近位端に配置されたノブ398または他の作動機構によって、その近位端で回転させることができる。ハンドル396は、止血弁397を含むことができる。いくつかの実施形態では、縫合糸311、344は止血弁397を通過することができる。
【0074】
トルクシャフト388によるプッシュウェッジ384の前進は、角度付き表面386により、スプリングピン388のような1つ以上のスプリングを徐々に圧縮させることができる。スプリングは、トルクシャフト388の回転によって強制的に閉鎖されるまで、クランプを上方に付勢して縫合糸経路を開放する。1つ以上のバネ388の圧縮力により、縫合糸311、344上にクランプ390が下方に押し付けられ、2つの対向する表面の間で縫合糸311、344が圧縮される。いくつかの実施形態では、クランプ390および対向面392は、個々の増量で互いに嵌合するように構成された切り欠き面を有してもよい。嵌合されたノッチ表面は、増強された摩擦を提供することができ、いくつかの実施形態では、縫合糸311、344を縫合糸ロック376から近位側または遠位側のいずれかで引き外すことができないように、対向面の間で縫合糸を保持するための機械的干渉を提供することができる。いくつかの実施形態では、トルクシャフトを反対方向に回転させることによって、締め付けが逆転可能であってもよい。
【0075】
縫合糸ロックが縫合糸74、344上に適切に配置され、所定の位置にロックされると、縫合糸74、344は、本明細書の他の箇所に記載されているように切断され得る。
図12は、縫合糸74、344が切断された後の縫合糸ロックデリバリーサブシステム370の格納を示す。縫合糸ロックデリバリーサブシステム370がデリバリーカテーテル100から取り外されると、デリバリーカテーテル100は体内から引き抜くことができる。
【0076】
本開示は、特定の実施形態および実施例を記載するが、上記のシステムおよび方法の多くの態様は、さらに別の実施形態または受容可能な例を形成するために、異なるように組み合わされ、および/または改変され得る。このような全ての改変および変形例は、本開示の範囲内で本明細書に含まれることを意図している。実際、多種多様なデザインおよびアプローチが可能であり、本開示の範囲内である。
【0077】
更に、別個の実施形態の内容として本開示に記載される特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実施することもできる。反対に、単一の実施形態の内容として説明される様々な特徴は、複数の実施形態で別々に、又は、任意の適切なサブコンビネーションで実施することもできる。更に、特定の組み合わせで作用するものとして記述された特徴も、特許請求される組み合わせのうちの1つ以上の特徴は、場合によっては、組み合わせから削除されてもよく、そのような組み合わせは、サブコンビネーション又はその変形例として特許請求されてもよい。
【0078】
種々の実施形態に関連した任意の特定の特徴、態様、方法、特性、特性、品質、属性、要素などの本明細書における開示は、本明細書に示される全ての他の実施形態において使用することができる。また、ここに記載されたいずれの方法も、記載されたステップを実施するのに適した任意の装置を用いて実施することができる。
【0079】
さらに、部品及び動作は、図面に描かれたり、特定の配列又は順序で明細書に記述されているが、所望の結果を得るために、そのような部品及び動作は、図面に示した特定の配列及び順序で配列及び実施される必要はなく、連続した順序でもなく、また部品及び動作の全てを含む必要もない。図示や記載されていない他の構成要素及び動作は、実施例及び実施例に組み込むことができる。例えば、1つ又は複数の追加の動作を、説明した動作のいずれかの前、後、同時、又は、その間に実行することができる。更に、動作は、他の実施形態では、再編成又は再実施されてもよい。また、上述の実施態様における種々のシステム部品の分離は、すべての実施態様においてそのような分離を必要とするものとして理解されるべきではなく、記載した部品及びシステムは、一般に、単一の製品に一体化される、又は、複数の製品にパッケージ化され得ることを理解されたい。
【0080】
要約すると、様々な例示的な実施形態および例が本明細書に記載されている。システムおよび方法は、それらの実施形態および実施例として開示されているが、本開示は、具体的に開示された実施形態を超えて、実施形態の他の別の実施例および/または他の使用、ならびにそれらの特定の改変および均等物にまで及ぶ。本開示は、開示された実施形態の様々な特徴及び態様を互いに組み合わせるか、または代替することができることを明示的に意図している。したがって、本開示の範囲は、上述の特定の開示された実施形態によって限定されるべきではなく、請求項の公正な読み方ならびにそれらの均等物の全範囲によってのみ決定されるべきである。
【0081】
条項1.経血管的人工腱索の移植方法であって、
カテーテルを前記左心房内に進入させ、前記僧帽弁を通って前記左心室内に進入させるステップと、
前記カテーテルから前記左心室の壁内に心室アンカーを展開し、前記心室アンカーに装着されて前記カテーテルを介して近位側に伸びる心室縫合糸を残すステップと、
心房側から、僧帽弁尖に弁尖アンカーを固定するステップと、
前記僧帽弁尖を、前記カテーテルを通って近位側に延在する弁尖縫合糸に固定するために、前記弁尖に固定された前記弁尖アンカーカテーテルを用いて、弁尖アンカーを前記カテーテルから前記僧帽弁尖を通して進入させるステップと、
前記弁尖縫合糸を前記心室縫合糸に固定して前記弁尖の前記左心房方向への移動範囲を制限するステップと、を備える方法。
条項2.前記僧帽弁尖を弁尖縫合糸に固定するために弁尖アンカーを前記カテーテルから前記僧帽弁尖を通して進入させるステップは、前記弁尖アンカーを予め装填した針を前記僧帽弁尖の上面を通して進めるステップを含む、条項1に記載の方法。
条項3.僧帽弁尖に弁尖アンカーカテーテルを固定する前記ステップは、弁尖コネクタを使用するステップを含む、条項2に記載の方法。
条項4.前記弁尖コネクタは、螺旋状アンカーを含む、条項3に記載の方法。
条項5.前記弁尖コネクタは、フックを含む、条項3に記載の方法。
条項6.弁尖アンカーを僧帽弁尖に固定する方法であって、
カテーテルを前記心房内に進入させるステップと、
心房側から、前記カテーテルと結合した弁尖コネクタを、前記弁尖の心房側から僧帽弁尖に固定するステップと、
前記弁尖コネクタを前記僧帽弁尖に固定した後、前記僧帽弁尖を弁尖縫合糸に固定するために、弁尖アンカーを前記僧帽弁尖を通して進入させるステップと、を備える方法。
条項7.前記僧帽弁尖を弁尖縫合糸に固定するために前記僧帽弁尖を通して弁尖アンカーを進めるステップは、前記弁尖アンカーをあらかじめ装填した針を心房側から前記僧帽弁尖を通して進めるステップを含む、条項6に記載の方法。
条項8.前記針は、前記弁尖コネクタを通して進められる、条項7に記載の方法。
条項9.前記弁尖コネクタは、螺旋状アンカーを含む、条項8に記載の方法。
条項10.前記弁尖コネクタは、フックを含む、条項8に記載の方法。
条項11.弁尖アンカー展開システムであって、
近位端と遠位端とを有するカテーテルと、
前記カテーテルの遠位端に配置された弁尖コネクタと、
前記弁尖コネクタを通って侵入可能な針と、を備え、
前記針は、予め装填された放射状に拡大可能な弁尖アンカー内部に有すると共に、前記カテーテルを通って近位側に延在する縫合糸を有する弁尖アンカー展開システム。
条項12.前記弁尖コネクタが螺旋状アンカーである、条項11に記載の弁尖アンカー展開システム。
条項13.新生腱索展開システムであって、
近位端と遠位端とを有するカテーテルと、
前記カテーテルを通して伸長可能であって、前記カテーテルを通って近位側に延在する心室縫合糸を有する螺旋状心室アンカーサブアセンブリと、
前記カテーテルを通して伸長可能であって、内部で放射状に拡大可能な弁尖アンカーと前記カテーテルを通って近位側に延在する弁尖縫合糸とを有する弁尖アンカー展開サブアセンブリと、を備える新生腱索展開システム。
条項14.前記放射状に拡大可能な弁尖アンカーがプレジェットを含む、条項13に記載の新生腱索展開システム。
条項15.前記プレジェットが、前記縫合糸の近位側への収縮によって、細長いストリップ構造から放射状に拡大した軸方向に短縮した構造に変換可能である、条項14に記載の新生腱索展開システム。
条項16.前記放射状に拡大可能な弁尖アンカーは、2枚の材料シートの間に配置された弁尖縫合糸を備える、条項13に記載の新生腱索展開システム。
条項17.前記放射状に拡大可能な弁尖アンカーは、前記弁尖を穿孔するための鋭利な先端を有する針内に運ばれる、条項13に記載の新生腱索展開システム。
条項18.前記弁尖アンカー展開サブアセンブリは、遠位端および中央内腔を有する細長いチューブと、前記遠位端に弁尖コネクタとを含む、条項17に記載の新生腱索展開システム。
条項19.前記弁尖コネクタは、螺旋状弁尖アンカーを備える、条項18に記載の新生腱索展開システム。
条項20.前記針は、前記螺旋状弁尖アンカーに対して軸方向に移動可能である、条項19に記載の新生腱索展開システム。
条項21.さらに、前記カテーテルを通して前進可能であり、前記心室縫合糸を前記弁尖縫合糸に接続するように構成された縫合糸ロックサブアセンブリを備える、条項13に記載の新生腱索展開システム。
条項22.弁尖アンカーデリバリーサブシステムであって、
近位端、遠位端及び中心内腔を有する細長い可撓性管状体と、
前記中心内腔を通して軸方向に移動可能に前進可能な展開針と、
前記展開針内に運ばれる、折り畳み可能なプレジェット弁尖アンカーと、
前記管状体の遠位端によって運ばれる弁尖コネクタと、を備える弁尖アンカーデリバリーサブシステム。
条項23.前記弁尖アンカーは、螺旋状エレメントを含む、条項22に記載の弁尖アンカーデリバリーシステム。
条項24.前記展開針は、前記螺旋状エレメントを通して軸方向に伸長可能である、条項23に記載の弁尖アンカーデリバリーシステム。
条項25.組織アンカーであって、
ハブと、
前記ハブから近位側に延在する縫合糸と、
前記ハブから遠位側に延在する螺旋状アンカーと、
前記螺旋状アンカーを通して、前記螺旋状アンカーの遠位端を越えて同心円状に延在するコアワイヤと、を備える組織アンカー。
条項26.さらに、前記ハブから近位側に伸びる縫合糸アンカーガイドを備える、条項25に記載の組織アンカー。
条項27.さらに、前記ハブから近位側に伸びる約10cm以下の長さを有する管状スリーブを備える、条項25に記載の組織アンカー。
条項28.さらに、前記スリーブによって運ばれる放射線不透過性マーカーを備える、条項27に記載の組織アンカー。
条項29.さらに、前記コアワイヤによって軸方向に移動可能に運ばれる放射線不透過性マーカーを備える、条項25に記載の組織アンカー。
条項30.さらに、前記コアワイヤによって運ばれるバネを備える、条項29に記載の組織アンカー。
条項31.さらに、前記螺旋状アンカーの遠位端上の組織穿孔点と、組織との係合を解く前記螺旋状アンカーの回転に抵抗するように構成された当該螺旋状アンカー上の棘とを備える、条項25に記載の組織アンカー。
条項32.動的深度インジケータを有する組織アンカーであって、
ハブと、
前記ハブから遠位側に延在する組織アンカーと、
前記ハブから遠位側に延在するコアワイヤと、
前記ハブによって移動可能に運ばれる放射線不透過性マーカーと、
前記放射線不透過性マーカーを遠位方向に付勢するスプリングと、を備え、
前記放射線不透過性マーカーは、前記組織アンカーが組織内に進むことに対応して、前記組織アンカーに対して近位側に進む、組織アンカー。
条項33.血管内縫合糸ロックであって、
内部を通って延在する縫合糸経路を有する本体と、
前記縫合糸経路の断面寸法を減少させるためのハウジング内の可動壁と、
前記ハウジング内の回転可能な結合部と、
前記結合部の回転に応じて前記可動壁を前進させる駆動機構と、を備える血管内縫合糸ロック。
条項34.前記縫合糸経路に露出した摩擦増強面を備える、条項33に記載の血管内縫合糸ロック。
条項35.前記摩擦増強面は、可動壁上にある、条項34に記載の血管内縫合糸ロック。
条項36.角度付き表面を有し、前記ハウジング内で軸方向に移動可能なプッシュウェッジを備える、条項33に記載の血管内縫合糸ロック。
条項37.前記カップリングの回転は、前記可動壁を側方に進ませる前記プッシュウェッジを軸方向に前進させて、前記縫合糸経路の断面寸法を変化させる、条項36に記載の血管内縫合糸ロック。
条項38.前記可動壁は、第1の側の縫合糸把持面と第2の側の傾斜面とを含み、前記傾斜面が前記プッシュウェッジ上の角度付き表面と滑り接触するように構成されている、条項37に記載の血管内縫合糸ロック。