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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】流路付きプレート
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020559932
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2019047274
(87)【国際公開番号】W WO2020121898
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2018234929
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019184146
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 良仁
(72)【発明者】
【氏名】諸田 修平
(72)【発明者】
【氏名】花待 年彦
(72)【発明者】
【氏名】横山 響
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3154629(JP,U)
【文献】特開2003-338492(JP,A)
【文献】特開2006-344766(JP,A)
【文献】特開2017-135351(JP,A)
【文献】特開2010-123712(JP,A)
【文献】特開2014-209615(JP,A)
【文献】特開2009-218517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガスを流通させる流路が形成される本体部と、
前記本体部の前記流路の形成面を覆うカバーと、
を備え、
前記本体部の前記流路には、該流路の開口に埋設される埋設部材が設けられ、
前記埋設部材は、
緻密セラミックを用いて形成され、前記流路に固定される埋設部と、
少なくとも一部が多孔質セラミックからなり、前記埋設部に保持され、前記本体部の内部から外部に前記不活性ガスを流通させる流通部と、
を有し、
前記流通部には、複数の貫通孔が設けられ、
すべての前記貫通孔を含む円のうち最小の円の径に対する、前記埋設部の外周のなす径の比が、1.2以上である
ことを特徴とする流路付きプレート。
【請求項2】
前記埋設部材は、絶縁性の接着剤によって前記本体部に固定される
ことを特徴とする請求項1に記載の流路付きプレート。
【請求項3】
前記埋設部は、外形が、外部に露出している側からその反対側に向かって径が小さくなる形状をなす
ことを特徴とする請求項1または2に記載の流路付きプレート。
【請求項4】
前記流路は、前記開口が段付きの孔形状をなし、
前記埋設部は、外形が、前記開口の形状に応じた凸形状をなす
ことを特徴とする請求項3に記載の流路付きプレート。
【請求項5】
前記埋設部材は、絶縁性を有する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の流路付きプレート。
【請求項6】
前記埋設部には、前記流通部と前記流路との間を連通する第2の貫通孔が形成され、
前記第2の貫通孔の形成領域と、前記流通部における前記複数の貫通孔の形成領域とは、貫通方向からみて互いに異なる位置に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の流路付きプレート。
【請求項7】
前記カバーは、前記埋設部の一部を覆っている
ことを特徴とする請求項1に記載の流路付きプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば冷却用のガスを放出する流路付きプレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用、自動車用などに用いる半導体を製造する半導体製造装置や、液晶ディスプレイを製造する液晶製造装置においては、ワークを保持するためのプレートに冷却機能を備えた熱交換板が用いられることが知られている。熱交換板は、金属やセラミックス複合体からなり、加温用または冷却用の媒体が移動する流路や、熱交換板から外部に不活性ガスを放出する孔部が形成されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1では、孔部に多孔質体を設け、この多孔質体を経由して外部に不活性ガスを放出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-209615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8は、従来の熱交換板の要部の構成を示す断面図であって、多孔質体配設位置近傍において発生するアーキングについて説明する断面図である。従来の熱交換板は、不活性ガスを流通する孔部110が形成された本体部100を備える。孔部110には、多孔質体120Aを保持する保持部120が設けられる。保持部120および多孔質体120Aは、セラミックによって形成されている。また、保持部120は、溶射によって本体部100に固定されている。多孔質体120Aの外周部、ならびに本体部100および保持部120は、溶射膜130によってカバーされている。
【0005】
例えばエッチングを行う際、上述した熱交換板によって温度調整がなされる一方、アーキング現象によって保持部120や多孔質体120Aが破壊されてしまうことがあった。具体的には、溶射膜130を経由して本体部100に到達する経路Y1や、多孔質体120Aを経由して本体部100に到達する経路Y2を通って過電圧が入り込んで、保持部120や多孔質体120Aが破壊されてしまう。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アーキング現象の発生を抑制することができる流路付きプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる流路付きプレートは、不活性ガスを流通させる流路が形成される本体部と、前記本体部の前記流路の形成面を覆うカバーと、を備え、前記本体部の前記流路には、該流路の開口に埋設される埋設部材が設けられ、前記埋設部材は、前記流路に固定される埋設部と、前記埋設部に保持され、前記本体部の内部から外部に前記不活性ガスを流通させる流通部と、を有し、前記流通部には、複数の貫通孔が設けられ、すべての前記貫通孔を含む円のうち最小の円の径に対する、前記埋設部の外周のなす径の比が、1.2以上であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる流路付きプレートは、上記の発明において、前記埋設部材は、絶縁性の接着剤によって前記本体部に固定されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる流路付きプレートは、上記の発明において、前記埋設部は、外形が、外部に露出している側からその反対側に向かって径が小さくなる形状をなすことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる流路付きプレートは、上記の発明において、前記流路は、前記開口が段付きの孔形状をなし、前記埋設部は、外形が、前記開口の形状に応じた凸形状をなすことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる流路付きプレートは、上記の発明において、前記流通部は、多孔質セラミックスからなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる流路付きプレートは、上記の発明において、前記埋設部材は、絶縁性を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる流路付きプレートは、上記の発明において、前記埋設部には、前記流通部と前記流路との間を連通する第2の貫通孔が形成され、前記第2の貫通孔の形成領域と、前記流通部における前記複数の貫通孔の形成領域とは、貫通方向からみて互いに異なる位置に配置されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる流路付きプレートは、上記の発明において、前記カバーは、前記埋設部の一部を覆っていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アーキング現象の発生を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施の形態にかかる熱交換板の構造を示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施の形態にかかる熱交換板の要部の構成を説明する模式図である。
図3図3は、本発明の実施の形態の変形例1にかかる熱交換板の要部の構成を説明する模式図である。
図4図4は、本発明の実施の形態の変形例2にかかる熱交換板の要部の構成を説明する模式図である。
図5図5は、本発明の実施の形態の変形例3にかかる熱交換板の要部の構成を説明する模式図である。
図6図6は、本発明の実施の形態の変形例4にかかる熱交換板の要部の構成を説明する模式図である。
図7図7は、本発明の実施の形態の変形例5にかかる熱交換板の要部の構成を説明する模式図である。
図8図8は、従来の熱交換板の要部の構成を示す断面図であって、多孔質体配設位置近傍において発生するアーキングについて説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。すなわち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態にかかる熱交換板の構造を示す部分断面図である。図2は、本発明の一実施の形態にかかる熱交換板の要部の構成を説明する模式図である。図2の(a)は、熱交換板の埋設部材13を示す平面図である。図2の(b)は、図1に示す領域Rを拡大した断面図である。図1に示す熱交換板1は、円板状の本体部10と、本体部10の一方の面(ここでは上面)を覆うカバー20と、を備える。熱交換板1は、不活性ガスを流通させる流路が内部に形成された流路付きプレートである。
【0019】
本体部10は、アルミニウム、又はアルミニウム合金、チタニウム、チタニウム合金、ステンレススチール、ニッケル合金等からなる円板状をなす。本体部10には、熱交換を促す媒体を流通させる流路11と、対象の部材との間における熱交換を促す不活性ガスを流通させ、外部に放出する流路12とが形成されている。媒体は、例えば水等の液体や、気体である。
【0020】
カバー20は、溶射によって本体部10の上面を覆う溶射膜であり、流路12の開口形成面に設けられる。
【0021】
熱交換板1では、図示しない媒体流入口から媒体を導入して流路11に流通させ、図示しない媒体放出口から媒体を放出する。熱交換板1では、熱源から伝達された熱を、本体部10およびカバー20を介して外部に放出するか、または、熱源から伝達された熱を吸収した媒体が流路から放出される。
また、熱交換板1では、図示しない不活性ガス導入口から不活性ガスを導入し、不活性ガスが流路12を流通して外部に放出される。不活性ガスは、対象の部材に接触して、該部材を冷却する。
【0022】
流路12は、一端が不活性ガス導入口に繋がり、本体部10内で流路を形成する流路部121と、流路部121の他端に設けられる開口部122とを有する。開口部122の径は、流路部121の他端の径より大きい。このため、流路12は、開口近傍において、段付きの孔形状をなしている。
【0023】
流路12には、流路12の開口に埋設される埋設部材13が設けられる。埋設部材13は、流路12に埋設される埋設部131と、埋設部131に保持される流通部132とを有する。
【0024】
埋設部131は、セラミックからなり、気孔率が20%以下の緻密体を用いて形成される。埋設部131の気孔率は、15%以下であることが好ましい。埋設部131は、外形が凸状をなし、開口部122に収容されている。セラミックは、絶縁性のセラミックが用いられる。
流通部132は、多孔質セラミックスであり、一方から他方(図2の上下方向)に気体等の媒体を流通させる。流通部132を構成する多孔質セラミックスには、一方と他方とを貫通し、媒体を流通する複数の貫通孔が形成される。
【0025】
埋設部131と、開口部122との間には、接着剤14が設けられ、該接着剤14によって固定されている。接着剤14は、絶縁性材料を用いてなる。
【0026】
ここで、埋設部131の外周のなす径(外径)をd1、流通部132の外周のなす径(外径)をd2としたとき、外径d2に対する外径d1の比(d1/d2)は、1.2以上であり、好ましくは1.5以上である。本実施の形態では、上記の比率の範囲において、流通部132の外径、すなわち不活性ガスの放出量を調整することが可能である。ここで、流通部132の外周のなす円(図2に示す円Q1)は、流通部132に形成される、すべての貫通孔を含む円のうち最小の円に相当する。
【0027】
また、流路12における埋設部材13の沿面距離は、開口部122および流路部121が形成する段部に沿った距離となるため、従来(例えば図8参照)と比して長い距離となっている。
【0028】
以上説明したように、本実施の形態にかかる熱交換板1は、流路12における沿面距離を確保し、流路12と埋設部材13とを絶縁性の接着剤14によって固定するようにしたので、上述した経路Y1、Y2を経由した過電圧が本体部10に入り込むことが抑制され、その結果、アーキング現象の発生を抑制することができる。
【0029】
なお、上述した実施の形態では、埋設部131が凸状をなす例を説明したが、外周面が、例えば本体部10から露出する露出面に対して傾斜した傾斜面をなすようにしてもよい。外周面が傾斜面をなす場合、埋設部材(埋設部)は、錐状をなす。本実施の形態にかかる熱交換板1は、凸形状や傾斜面のように、外形が、外部に露出している側からその反対側に向かって径が小さくなる形状をなすものであれば適用可能である。このほか、埋設部131は、円筒状をなすものであってもよい。
【0030】
また、上述した実施の形態において、流路部121に段部を形成して、埋設部131を支持する構成としてもよいし、この段部と埋設部131とが接触しない構成としてもよい。埋設部131が流路部121の段部と接触しておらず、この段部と埋設部131との間に空間(空気層)が存在している方が、過電圧の入り込みを抑制するという観点で好ましい。
【0031】
また、上述した実施の形態において、埋設部材13を一様な径で延びる柱状として、埋設部材13の一部(例えば図2に示す流路部進入部分)が流路部121に進入しない構成としてもよい。
【0032】
(変形例1)
図3は、本発明の実施の形態の変形例1にかかる熱交換板の要部の構成を説明する模式図である。図3の(a)は、熱交換板の埋設部材15を示す平面図である。図3の(b)は、図1に示す領域Rに対応する領域を拡大した断面図である。変形例1にかかる熱交換板は、上述した熱交換板1の埋設部材13に代えて埋設部材15を備える。埋設部材以外の構成は、上述した熱交換板1と同じであるため説明を省略する。
【0033】
埋設部材15は、流路12に埋設される埋設部151と、埋設部151に保持される流通部152とを有する。
埋設部151は、セラミックからなり、気孔率が20%以下の緻密体を用いて形成される。埋設部151は、中空円板状をなし、開口部122に収容されている。
流通部152は、多孔質セラミックスであり、一方から他方に気体等の媒体を流通させる。流通部152を構成する多孔質セラミックスには、一方と他方とを貫通し、媒体を流通する複数の貫通孔が形成される。
【0034】
埋設部151と、開口部122との間には、絶縁性の接着剤14が設けられ、該接着剤14によって固定されている。
【0035】
ここで、埋設部151の外周のなす径(外径)をd3、流通部152のカバー20から露出している部分の外周のなす径(外径)をd4としたとき、外径d4に対する外径d3の比(d3/d4)は、1.2以上であり、好ましくは1.5以上である。ここで、流通部152のカバー20から露出している部分の外周のなす円(図3に示す円Q2)は、流通部152に形成され、一方から他方に貫通しているすべての貫通孔を含む円のうち最小の円に相当する。
【0036】
また、流路12における埋設部材15の沿面距離は、開口部122の内壁に沿った距離となるため、従来(例えば図8参照)と比して長い距離となっている。
【0037】
以上説明したように、本変形例1にかかる熱交換板は、流路12における沿面距離を確保し、流路12と埋設部材15とを絶縁性の接着剤14によって固定するようにしたので、上述した経路Y1を経由した過電圧が本体部10に入り込むことが抑制され、その結果、アーキング現象の発生を抑制することができる。また、埋設部151(流通部152)と流路部121との間に空間(空気層)を存在させることによって、埋設部151と流路部121とが接触している場合と比して、上述した経路Y2を経由した過電圧が本体部10に入り込むことを抑制できる。
【0038】
なお、上述した変形例1では、埋設部151が中空円板状をなす例を説明したが、外周面が、環状をなす側の面に対して傾斜した傾斜面をなすようにしてもよい。外周面が傾斜面をなす場合、埋設部材(埋設部)は、錐状をなす。
【0039】
(変形例2)
図4は、本発明の実施の形態の変形例2にかかる熱交換板の要部の構成を説明する模式図である。図4の(a)は、熱交換板の埋設部材16を示す平面図である。図4の(b)は、図1に示す領域Rに対応する領域を拡大した断面図である。変形例2にかかる熱交換板は、上述した熱交換板1の埋設部材13に代えて埋設部材16を備える。埋設部材以外の構成は、上述した熱交換板1と同じであるため説明を省略する。
【0040】
埋設部材16は、流路12に埋設される埋設部161と、埋設部161に保持され、不活性ガスを流通させる流通部162とを有する。
埋設部材16は、セラミックからなり、気孔率が20%以下の緻密体を用いて形成される。流通部162には、外部と流路部121とを連通する複数の貫通孔163が形成される。複数の貫通孔163は、例えば、円環状に配列されてなる。
【0041】
埋設部161は、段付き形状をなして延びる中空円柱状である。流通部162は、貫通孔163が形成される基部と、基部の中央部から埋設部161の延伸方向に沿って延びる延在部とを有する。なお、流通部162が延在部を有しない構成としてもよい。
【0042】
埋設部161と開口部122との間には、絶縁性の接着剤14が設けられ、該接着剤14によって固定されている。また、埋設部161と流通部162とは、例えば、それぞれを作製した後、一体焼結して接触部分を接合(結合)させて固着される。なお、公知の固着方法によって埋設部161と流通部162とを固着させてもよい。
【0043】
ここで、埋設部161の外周のなす径(外径)をd5、複数の貫通孔163に外接する円(貫通孔163の形成領域)のなす径(外径)をd6としたとき、外径d6に対する外径d5の比(d5/d6)は、1.2以上であり、好ましくは1.5以上である。ここでいう「複数の貫通孔163に外接する円」とは、すべての貫通孔163を含む円のうち最小の円をさす。
【0044】
また、流路12における埋設部材16の沿面距離は、開口部122の内壁に沿った距離となるため、従来(例えば図8参照)と比して長い距離となっている。
【0045】
以上説明したように、本変形例2にかかる熱交換板は、流路12における沿面距離を確保し、流路12と埋設部材16とを絶縁性の接着剤14によって固定するようにしたので、上述した経路Y1を経由した過電圧が本体部10に入り込むことが抑制され、その結果、アーキング現象の発生を抑制することができる。また、流通部162と流路部121との間に埋設部161が存在しているため、流通部162と流路部121とが接触している場合と比して、上述した経路Y2を経由した過電圧が本体部10に入り込むことを抑制できる。
【0046】
(変形例3)
図5は、本発明の実施の形態の変形例3にかかる熱交換板の要部の構成を説明する模式図である。図5の(a)は、熱交換板の埋設部材17を示す平面図である。図5の(b)は、図1に示す領域Rに対応する領域を拡大した断面図である。変形例3にかかる熱交換板は、上述した熱交換板1の埋設部材13に代えて埋設部材17を備える。埋設部材以外の構成は、上述した熱交換板1と同じであるため説明を省略する。
【0047】
埋設部材17は、流路12に埋設される埋設部171と、埋設部171に保持され、不活性ガスを流通させる流通部172とを有する。
埋設部材17は、セラミックからなり、気孔率が20%以下の緻密体を用いて形成される。埋設部171には、一端側と他端側とを連通する貫通孔173(第2の貫通孔)が形成される。流通部172には、外部と流路部121とを連通する複数の貫通孔174が形成される。複数の貫通孔174は、例えば、円環状に配列されてなる。流通部172は、貫通孔173を介して外部と流路部121とを連通する。
【0048】
埋設部171は、段付き形状をなして延びる中空円柱状である。埋設部171は、流通部172を保持する穴、および貫通孔173が形成される基部171aと、基部171aの中央部から埋設部171の延伸方向に沿って筒状に延びる延在部171bとを有する。なお、埋設部171が延在部171bを有しない構成としてもよい。
【0049】
埋設部171と開口部122との間には、絶縁性の接着剤14が設けられ、該接着剤14によって固定されている。また、埋設部171と流通部172とは、例えば、それぞれを作製した後、一体焼結して接触部分を接合(結合)させて固着される。なお、公知の固着方法によって埋設部171と流通部172とを固着させてもよい。
【0050】
また、貫通孔173の形成位置と、各貫通孔174の形成位置とは、互いにずれた位置に形成される。すなわち、貫通孔173と貫通孔174とは、孔の中心軸(貫通方向の中心軸)が一致しない位置に形成される。さらに言うと、貫通孔173と貫通孔174とは、中心軸方向からみたときに、開口領域が互いに重複しない位置に形成される。
【0051】
ここで、埋設部171の外周のなす径(外径)をd7、複数の貫通孔174に外接する円(貫通孔174の形成領域)のなす径(外径)をd8としたとき、外径d8に対する外径d7の比(d7/d8)は、1.2以上であり、好ましくは1.5以上である。ここでいう「複数の貫通孔174に外接する円」とは、すべての貫通孔174を含む円のうち最小の円をさす。
【0052】
また、流路12における埋設部材17の沿面距離は、開口部122の内壁に沿った距離となるため、従来(例えば図8参照)と比して長い距離となっている。
【0053】
以上説明したように、本変形例3にかかる熱交換板は、流路12における沿面距離を確保し、流路12と埋設部材17とを絶縁性の接着剤14によって固定するようにしたので、上述した経路Y1を経由した過電圧が本体部10に入り込むことが抑制され、その結果、アーキング現象の発生を抑制することができる。また、流通部172と流路部121との間に埋設部171が存在しているため、流通部172と流路部121とが接触している場合と比して、上述した経路Y2を経由した過電圧が本体部10に入り込むことを抑制できる。
【0054】
(変形例4)
図6は、本発明の実施の形態の変形例4にかかる熱交換板の要部の構成を説明する模式図である。図6は、図1に示す領域Rに対応する領域を拡大した断面図である。変形例4にかかる熱交換板は、上述した熱交換板1の埋設部材13に代えて埋設部材17Aを備える。また、変形例4では、上述した流路12に代えて流路12Aが形成される。埋設部材および流路以外の構成は、上述した熱交換板1と同じであるため説明を省略する。
【0055】
流路12Aは、一端が不活性ガス導入口に繋がり、本体部10内で流路を形成する流路部121Aと、流路部121Aの他端に設けられる開口部122Aとを有する。開口部122Aの径は、流路部121Aの他端の径より大きい。このため、流路12Aは、開口近傍において、段付きの孔形状をなしている。
【0056】
流路12Aには、流路12Aの開口に埋設される埋設部材17Aが設けられる。
埋設部材17Aは、セラミックからなり、気孔率が20%以下の緻密体を用いて形成される。埋設部材17Aは、流路12Aに埋設される埋設部171Aと、埋設部171Aに保持され、不活性ガスを流通させる流通部172とを有する。流通部172は、上述した変形例3と同じであるため、説明を省略する。
埋設部171Aには、一端側と他端側とを連通する貫通孔173(第2の貫通孔)が形成される。
【0057】
埋設部171Aは、中空円柱状をなす。埋設部171Aは、流通部172を保持する穴、および貫通孔173が形成される基部171aと、基部171aの中央部から埋設部171Aの延伸方向に沿って筒状に延びる延在部171cとを有する。なお、埋設部171Aが延在部171cを有しない構成としてもよい。
埋設部171Aは、流路部121Aと開口部122Aとが形成する段部に載置され、開口部122Aに収容される。
【0058】
埋設部171Aと開口部122との間には、絶縁性の接着剤14が設けられ、該接着剤14によって固定されている。また、埋設部171Aと流通部172とは、例えば、それぞれを作製した後、一体焼結して接触部分を接合(結合)させて固着される。なお、公知の固着方法によって埋設部171Aと流通部172とを固着させてもよい。
【0059】
また、変形例3と同様に、貫通孔173の形成位置と、各貫通孔174の形成位置とは、互いにずれた位置に形成される。
【0060】
ここで、埋設部171Aの外周のなす径(外径)と、複数の貫通孔174に外接する円(貫通孔174の形成領域)のなす径(外径)との比(上述したd7/d8に相当)は、1.2以上であり、好ましくは1.5以上である。
【0061】
また、流路12Aにおける埋設部材17Aの沿面距離は、開口部122の内壁に沿った距離となるため、従来(例えば図8参照)と比して長い距離となっている。
【0062】
以上説明したように、本変形例4にかかる熱交換板は、流路12Aにおける沿面距離を確保し、流路12Aと埋設部材17Aとを絶縁性の接着剤14によって固定するようにしたので、上述した経路Y1を経由した過電圧が本体部10に入り込むことが抑制され、その結果、アーキング現象の発生を抑制することができる。また、流通部172と流路部121との間に埋設部171Aが存在しているため、流通部172と流路部121とが接触している場合と比して、上述した経路Y2を経由した過電圧が本体部10に入り込むことを抑制できる。
【0063】
また、本変形例4にかかる熱交換板は、埋設部材17Aの埋設部171Aが円柱状をなしているため、段付き形状をなす構成(例えば、変形例3(図5参照))と比して作製コストを低減することができる。
【0064】
(変形例5)
図7は、本発明の実施の形態の変形例5にかかる熱交換板の要部の構成を説明する断面図である。図7は、図1に示す領域Rに対応する領域を拡大した断面図に対応する。変形例5にかかる熱交換板は、上述した熱交換板1の埋設部材13に代えて埋設部材13Aを備える。埋設部材以外の構成は、上述した熱交換板1と同じであるため説明を省略する。
【0065】
埋設部材13Aは、流路12に埋設される埋設部131Aと、埋設部131Aに保持される流通部132とを有する。流通部132の構成は上述した実施の形態と同じであるため、説明を省略する。
【0066】
埋設部131Aは、セラミックからなり、気孔率が20%以下の緻密体を用いて形成される。埋設部131Aは、中空円板状をなし、開口部122に収容されている。埋設部131Aの表面のうち、本体部10から露出する側の表面には、カバー20の厚さに応じた切欠き部131aが、埋設部131Aの外縁に沿って形成される。
【0067】
埋設部131Aは、切欠き部131aがカバー20に覆われている。埋設部131Aは、カバー20によって本体部10に固定されている。
【0068】
ここで、流通部132のカバー20から露出している部分の外周のなす径(外径)に対する、埋設部131Aの外周のなす径(外径)の比は、1.2以上であり、好ましくは1.5以上である。
【0069】
以上説明したように、本変形例5にかかる熱交換板は、流路12における沿面距離を確保し、流路12と埋設部材13Aとを、接着剤14ではなく、溶射膜であるカバー20によって固定するようにした。本変形例5においても、実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
なお、上述した変形例5では、埋設部131Aに切欠き部131aを設けて、その切欠き部131aにカバー20を被せる例を説明したが、実施の形態のような切欠き部131aを有しない埋設部131の一部をカバー20が覆う構成としてもよい。
【0071】
また、上述した実施の形態および変形例では、対象の部材を冷却する例を説明したが、熱交換板が対象の部材を温めるための熱交換を促すようにしてもよい。熱交換板が対象の部材を温める場合、熱交換板には、温水等の媒体が流路11に流通し、温風等の熱を与えるガスが流路12を流通する。
【0072】
また、上述した実施の形態および変形例では、対象の部材を冷却する不活性ガスを放出する熱交換板を例に説明したが、吸着している部材を引き離す際に用いる圧力調整用の不活性ガスを放出させてもよい。このように、本発明は、目的に応じた不活性ガスを放出する流路付きプレートとして用いることができる。
【0073】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明したように、本発明に係る流路付きプレートは、アーキング現象の発生を抑制するのに好適である。
【符号の説明】
【0075】
1 熱交換板
10 本体部
11、12 流路
13、13A、15~17、17A 埋設部材
14 接着剤
20 カバー
131、131A、151、161、171、171A 埋設部
132、152、162、172 流通部
163、174 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8