(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】肝臓特異的コンストラクト、第VIII因子発現カセット、およびその使用の方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20230802BHJP
C12N 15/67 20060101ALI20230802BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20230802BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20230802BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230802BHJP
A61K 38/37 20060101ALI20230802BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20230802BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230802BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
A61K35/76
C12N15/67 Z ZNA
C12N15/864 100Z
C12N7/01
A61K48/00
A61K38/37
A61K38/46
A61P7/04
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021110561
(22)【出願日】2021-07-02
(62)【分割の表示】P 2018521965の分割
【原出願日】2016-07-13
【審査請求日】2021-07-02
(32)【優先日】2015-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508241200
【氏名又は名称】サンガモ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ブリジット イー. ライリー
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー ケー. リー
【審査官】宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/064277(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/089046(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/089077(WO,A2)
【文献】国際公開第2014/162318(WO,A2)
【文献】国際公開第2014/043131(WO,A1)
【文献】特表2008-543283(JP,A)
【文献】特表2007-508833(JP,A)
【文献】国際公開第2015/038625(WO,A1)
【文献】特許第6909212(JP,B2)
【文献】Drug Delivery System,2007年,22-6,pp. 643-650
【文献】血栓止血誌,2008年,Vol. 19, No. 2,pp. 265-270
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
A61K 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質をそれを必要とする被験体へ提供する方法における使用のための医薬組成物であって、
該医薬組成物は、以下、
1つまたは2つの、配列番号:28、29、30および38からなる群より選択されるインスレーター配列と、
野生型セルピン1エンハンサー配列もしくは変異セルピン1エンハンサー配列と、
野生型トランスサイレチン(TTR)プロモーター配列もしくは変異TTRプロモーター配列と、
導入遺伝子と
を含むポリヌクレオチド発現コンストラクトを含むAAVベクターを含み、
該方法は、該被験体へ該医薬組成物を静脈内投与する工程を包含する、医薬組成物。
【請求項2】
前記発現コンストラクトがさらにポリアデニル化配列を含む、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
前記発現コンストラクトがさらにイントロン配列を含み、該イントロン配列が、野生型マウス微小ウイルス(MVM)イントロン配列または変異MVMイントロン配列を含む、請求項1または請求項2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
前記イントロン配列が、配列番号:15、16、17、および、配列番号:37のヌクレオチド340~432からなる群より選択される、請求項3に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
前記エンハンサー配列が、配列番号:1~13のうちの任意のものの位置1、5、14、32および39のいずれかに突然変異を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項6】
前記発現コンストラクトが、配列番号:28を含む第1のインスレーター配列と、配列番号:30を含む第2のインスレーター配列とを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項7】
前記発現コンストラクトが2つのインスレーター配列を含み、ここで、前記2つのインスレーター配列のうちの1つが該発現コンストラクトの5’末端に位置し、他のインスレーター配列が該発現コンストラクトの3’末端に位置する、請求項3~6のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項8】
前記導入遺伝子が、血友病またはリソソーム蓄積症の被験体において機能が欠如または欠損するタンパク質をコードする、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記導入遺伝子が、代替第VIII因子をコードする、請求項8に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
前記代替第VIII因子が、Bドメイン欠失ヒト第VIII因子である、請求項9に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
前記導入遺伝子が、ZFN、TALEN、TtAgoおよびCRISPR/Cas系から選択される1つまたは複数のヌクレアーゼをさらにコードする、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記発現コンストラクトが、5’から3’に、
配列番号:28を含む第1のインスレーター配列、
配列番号:36を含むエンハンサー配列、
TTR最小プロモーター配列、
配列番号:37のヌクレオチド340~432を含むイントロン配列、
Bドメイン欠失ヒト第VIII因子をコードする導入遺伝子、
ポリアデニル化シグナル配列、および
配列番号:30を含む第2のインスレーター配列
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
タンパク質をそれを必要とする被験体へ提供する方法における使用のための医薬組成物であって、
ここで、該医薬組成物は、配列番号:37を含むポリヌクレオチド発現コンストラクトを含むAAVベクターを含み、そして、
該方法は、該医薬組成物を該被験体へ静脈内投与することを含む、医薬組成物。
【請求項14】
タンパク質をそれを必要とする被験体へ提供する方法における使用のための医薬組成物であって、
ここで、該医薬組成物は、配列番号:34を含むポリヌクレオチド発現コンストラクトを含むAAVベクターを含み、そして、
該方法は、該医薬組成物を該被験体へ静脈内投与することを含む、医薬組成物。
【請求項15】
前記ポリヌクレオチド発現コンストラクトが、Bドメイン欠失ヒト第VIII因子をコードする導入遺伝子を含み、前記導入遺伝子が肝細胞のゲノムの中に組み込まれる、請求項13または14に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
前記ポリヌクレオチド発現コンストラクトが、前記AAVベクターの5’逆方向末端反復(ITR)と3’ITRの間にある、請求項1~1
5のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項17】
前記ITRがAAV2 ITRである、請求項1
6に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項18】
前記AAVベクターがさらに、AAV血清型6(AAV6)カプシドを含む、請求項1~1
7のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項19】
前記医薬組成物が、前記被験体の門脈に静脈内投与されるか、または、前記被験体の末梢静脈中に静脈内投与されることを特徴とする、請求項1~1
8のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項20】
前記導入遺伝子が肝細胞のゲノムの中に組み込まれる、請求項1~1
2および16~19のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項21】
タンパク質をそれを必要とする被験体へ提供する方法における使用のための医薬組成物であって、
該医薬組成物は、以下、
1つまたは2つの、配列番号:28、29、30および38からなる群より選択されるインスレーター配列と、
野生型セルピン1エンハンサー配列もしくは変異セルピン1エンハンサー配列と、
野生型トランスサイレチン(TTR)プロモーター配列もしくは変異TTRプロモーター配列と、
導入遺伝子と
を含むポリヌクレオチド発現コンストラクトを含むAAVベクターを含み、
該方法は、該被験体へ該医薬組成物を投与する工程を包含し、該方法がさらに、1つまたは複数のヌクレアーゼを該被験体に投与することを含み、該ヌクレアーゼが、内在性アルブミン遺伝子を切断し、該導入遺伝子が、該内在性アルブミン遺伝子の中に組み込まれる、医薬組成物。
【請求項22】
タンパク質をそれを必要とする被験体へ提供する方法における使用のための医薬組成物であって、
該医薬組成物は、以下、
1つまたは2つの、配列番号:28、29、30および38からなる群より選択されるインスレーター配列と、
野生型セルピン1エンハンサー配列もしくは変異セルピン1エンハンサー配列と、
野生型トランスサイレチン(TTR)プロモーター配列もしくは変異TTRプロモーター配列と、
導入遺伝子と
を含むポリヌクレオチド発現コンストラクトを含むAAVベクターを含み、
該方法は、該被験体へ該医薬組成物を投与する工程を包含し、該被験体が哺乳動物であり、該方法が、治療用タンパク質への寛容を該哺乳動物において誘導し、該方法は、該哺乳動物中の細胞を該治療用タンパク質を産生するように修飾し、そして、該方法はさらに、該哺乳動物が該治療用タンパク質へ寛容化されるようになるように、該哺乳動物を、1つまたは複数のステロイドおよび/またはB細胞阻害因子で治療することを含む、医薬組成物。
【請求項23】
血友病Aの治療を必要とするヒト被験体における血友病Aの治療方法における使用のための医薬組成物であって、
ここで、該医薬組成物は、配列番号:37を含むポリヌクレオチド発現コンストラクトを含むAAVベクターを含み、そして、
該方法は、該医薬組成物を該被験体の末梢静脈中に静脈内投与することを含む、医薬組成物。
【請求項24】
前記AAVベクターが、AAV6カプシドを含み、前記ポリヌクレオチド発現コンストラクトがAAV2 ITRと隣接する、請求項2
3に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年10月28日に出願された米国仮特許出願第62/247,469号;2016年3月14日に出願された米国仮特許出願第62/307,897号;2016年4月22日に出願された米国仮特許出願第62/326,229号;2016年3月30日に出願された米国仮特許出願第62/315,438号;および2016年6月27日に出願された米国仮特許出願第62/355,106号(それらの開示はその全体を参照することにより本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
本開示は、遺伝子療法、特に、有益な(治療用)タンパク質の発現のための導入遺伝子をコードするコンストラクトの肝臓への標的化送達の分野である。特に、本開示は血友病(血友病A等)の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
遺伝子療法を使用して、1つもしくは複数の不活性化遺伝子を有するように細胞を遺伝子操作すること、および/または、その細胞中で以前に産生されていない産物を(例えば導入遺伝子挿入経由および/または内在性配列の修正経由で)その細胞に発現させることができる。導入遺伝子挿入の使用の例としては、1つもしくは複数の新規治療用タンパク質をコードする1つもしくは複数の遺伝子の挿入、細胞もしくは個体に欠如するタンパク質をコードするコーディング配列の挿入、変異遺伝子配列を含有する細胞における野生型遺伝子の挿入、および/または構造核酸(マイクロRNAまたはsiRNA等)をコードする配列の挿入が挙げられる。内在性遺伝子配列の「修正」の有用な適用の例としては、疾患関連遺伝子突然変異の変更、スプライス部位をコードする配列中の変更、調節配列中の変更、および/またはタンパク質の構造特徴をコードする配列の標的化された変更が挙げられる。
【0004】
肝臓への遺伝子の移入は、様々な障害(血友病およびリソソーム貯蔵障害が含まれる)の治療および/または予防のために被験体に導入遺伝子を送達する効果的な手段を提供する。例えば米国特許第9,150,847号、米国公報第20130177983号および同第20140017212号を参照されたい。肝臓指向性の遺伝子療法のための特異的ベクターも記載されている。例えばWO2014064277;WO2009130208;EP2451474B1、Chuah et al.,(2014)Molecular Therapy,22,1605-1613;およびNair et al.(2014)Blood 123:3195-3199を参照されたい。これらのベクターは野生型マウス微小ウイルス(MVM)イントロン配列を含み得る。例えばHaut and Pintel(1998)J.Virol.72:1834-1843;Haut
and Pintel(1998)Virol.258:84-94を参照されたい。
【0005】
哺乳動物個体全体において、免疫系の細胞メンバーの活性化または抑制のいずれかを調節できる複雑なメカニズムがある。例えば、樹状細胞(DC)は、免疫活性化vs免疫寛容の間のバランスにおける主役として確立されている。それらは免疫系において最も強力な抗原提示細胞であり、抗原を特異的に捕捉しナイーブT細胞へ提示する。抗原が微飲作用によって細胞の中へ運ばれる場合に、未成熟DCは特異的受容体(トール様受容体等)を介して可能性のある抗原と相互作用する。次いで抗原はより小さなペプチドへと破壊され、それらは主要組織適合遺伝子複合体によってT細胞へ提示される。加えて、成熟DCは炎症性メディエーター(IL-1β、IL-12、IL-6およびTNF等)を分泌し、それらはT細胞を活性化するようにさらに働く。他方では、DCは、中枢性寛容および末梢性寛容を維持するために、いくつかの抗原への身体の寛容化における役割も果たす。寛容原性DC(tolDC)は細胞表面上に低量の共刺激シグナルを有し、上で記載される炎症性メディエーターの発現の低減を有する。しかしながら、これらのtolDCは多量の抗炎症サイトカイン(IL-10のような)を発現し、これらの細胞がナイーブT細胞と相互作用する場合に、T細胞はアネルギーT細胞/調節性T細胞(CD8+ Treg)になるように駆動される。実際、これらの未成熟DC/寛容原性DCによるT細胞の反復刺激に際して、このプロセスが促進されることが示された。tolDCと協力して働いて異なるタイプのTregを誘導する、いくつかの因子も同定された。例えば、tolDCおよびHGF、VIPペプチド、TSLPまたはビタミンD3に共曝露されたナイーブT細胞は、CD4+CD25+Foxp3+ Tregの誘導を導き、TGF-βまたはIL-10による共曝露はTr1 Tregを導き、コルチコステロイド、ラパマイシン、レチノイン酸による共曝露はCD4+/CD8+ Tregを導き得る(Raker
et al(2015)Front Immunol 6:art 569およびOsorio et al(2015)Front Immunol 6:art 535)。
【0006】
血友病(血友病Aおよび血友病B等)は、関節および軟組織の中への出血によって、ならびに外傷経験または外科手術中の任意の部位の中への過剰な出血によって特徴づけられる、血液凝固系の遺伝障害である。血友病Aは血友病Bとは臨床的に判別不能であるが、血友病Aにおいて第VIII因子(FVIIIまたはF8)は欠損または存在しない一方で、血友病Bに罹患する患者において第IX因子(FIXまたはF.IX)が欠損または存在しない。F8遺伝子は、不活性形態のフォンウィルブランド(von Wilebrand)因子と会合して血中循環する血漿糖タンパク質をコードする。表面の傷に際して、内因性の凝血カスケードが開始し、FVIIIは複合体から放出され活性化される。活性化形態は第IX因子と共に働いて、活性化Xaになるように第X因子を活性化し、最終的にはフィブリノーゲンのフィブリンへの変化および凝血誘導を導く。Levinson
et al.(1990)Genomics 7(1):1-11を参照されたい。血友病A患者の40~50%は、F8のイントロン22に関与する染色体逆位(IVS22としても知られている)を有する。逆位は、F8遺伝子のイントロン22内の9.6kbの配列と、F8遺伝子に対して約300kb遠位に所在する2つの非常によく関連する逆方向の配列のうちの1つとの間の、染色体内組換え事象によって引き起こされ、エクソン23~26に関してエクソン1~22の逆位をもたらす。Textbook of Hemophilia、Lee et al.(eds.)2005、Blackwell Publishingを参照されたい。他の血友病A患者は、F8中の欠陥(活性部位の突然変異ならびにナンセンス突然変異およびミスセンス突然変異が含まれる)を有する。
【0007】
臨床的には、血友病A患者は、患者に出血エピソードがどのくらい頻繁にあるか、およびそれらのエピソードがどのくらいの時間続くかに依存して、評価および層別化される。これらの特徴の両方は、患者の血液中のFVIIIタンパク質の量に直接的に依存する。重度の血友病に罹患する患者は、典型的にはFVIIIの正常血中レベルの1%未満を有し、傷に後続する出血および関節の中への頻繁な自然出血を経験する。中等度の患者は正常FVIIIレベルの1~5%を有する一方で、軽度の患者は正常FVIIIの6%以上を有し、大怪我、外傷または外科手術後のみで出血エピソードを有する(Kulkarni et al(2009)Haemophilia 15:1281-90)。血友病Aに罹患する患者は、ヒト血漿に由来するかまたは組換えにより産生されたいずれかの代替FVIIIタンパク質により治療され、そこで、治療の頻度は出血パターンおよび血友病の重症度に基づく。重度の血友病Aに罹患する患者は、予防的治療を定期的に受けて出血が起こることを予防する一方で、それほど重度でない患者は、傷に後続して必要に応じてのみ治療を受けることができる。
血友病Aまたは血友病Bに罹患する患者のための遺伝子療法(機能的なFVIIIタンパク質またはF.IXタンパク質をコードするプラスミドおよび他のベクター(例えばAAV)の導入を包含する)が記載されている(例えば米国特許第6,936,243号;同第7,238,346号および6,200,560;Shi et al.(2007)J Thromb Haemost.(2):352-61;Lee et al.(2004)Pharm.Res.7:1229-1232;Graham et al.(2008)Genet Vaccines Ther.3:6-9;Manno et
al.(2003)Blood 101(8):2963-72;Manno et al.(2006)Nature Medicine 12(3):342-7;Nathwani et al.(2011)Mol Ther 19(5):876-85;Nathwani et al.(2011);N Engl J Med.365(25):2357-65およびMcIntosh et al.(2013)Blood 121(17):3335-44を参照)。しかしながら、これらのプロトコルにおいて、阻害性の抗第VIII因子または抗第IX因子(抗FVIIIまたは抗F.IX)抗体および送達ベヒクルに対する抗体の形成は、血友病のためのFVIIIおよびF.IXの補充に基づく治療の主要な合併症である。例えばScott & Lozier(2012)Br J Haematol.156(3):295-302を参照されたい。
しかしながら、1つまたは複数の導入遺伝子(血友病において欠如する1つまたは複数のタンパク質をコードする導入遺伝子が含まれる)の発現を肝細胞中で高レベルで駆動する、肝臓に特異的なポリヌクレオチド(発現コンストラクトおよび転写モジュール)についての必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2014/064277号
【文献】国際公開第2009/130208号
【文献】欧州特許第2451474号明細書
【文献】米国特許第6,936,243号明細書
【文献】米国特許第7,238,346号明細書
【文献】米国特許第6,200,560号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】Chuah et al.,(2014)Molecular Therapy,22,1605-1613
【文献】Nair et al.(2014)Blood 123:3195-3199
【文献】Haut and Pintel(1998)J.Virol.72:1834-1843
【文献】Haut and Pintel(1998)Virol.258:84-94
【文献】Raker et al(2015)Front Immunol 6:art 569
【文献】Osorio et al(2015)Front Immunol 6:art 535
【文献】Levinson et al.(1990)Genomics 7(1):1-11
【文献】Textbook of Hemophilia、Lee et al.(eds.)2005、Blackwell Publishing
【文献】Kulkarni et al(2009)Haemophilia 15:1281-90
【文献】Shi et al.(2007)J Thromb Haemost.(2):352-61
【文献】Lee et al.(2004)Pharm.Res.7:1229-1232
【文献】Graham et al.(2008)Genet Vaccines Ther.3:6-9
【文献】Manno et al.(2003)Blood 101(8):2963-72
【文献】Manno et al.(2006)Nature Medicine 12(3):342-7
【文献】Nathwani et al.(2011)Mol Ther 19(5):876-85
【文献】Nathwani et al.(2011);N Engl J Med.365(25):2357-65
【文献】McIntosh et al.(2013)Blood 121(17):3335-44
【文献】Scott & Lozier(2012)Br J Haematol.156(3):295-302
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、肝細胞中で導入遺伝子を発現させるための組成物および方法を記載する。導入遺伝子は、余剰染色体として(エピソームとして)発現され得るか、または肝細胞のゲノムの中への組み込まれ得る(例えばヌクレアーゼ媒介性標的化組み込み経由で、例えばアルブミン遺伝子座の中へ)。いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、凝血カスケードに関与するタンパク質をコードする。好ましい実施形態において、導入遺伝子はFVIIIポリペプチドをコードする。本明細書において記載される組成物および方法は、インビトロおよびインビボの両方で高レベルのタンパク質産生をもたらす(インビボで臨床的に妥当な(治療)効果を示すのに十分なレベルが含まれる)。
【0011】
一態様において、インスレーター配列を含む少なくとも1つスペーサー配列、肝臓特異的エンハンサー配列(例えば野生型セルピン1エンハンサー配列または変異セルピン1エンハンサー配列)、プロモーター配列(例えば野生型トランスサイレチン(TTR)プロモーターまたは変異TTRプロモーター)、および導入遺伝子(例えばヌクレアーゼおよび/または治療用タンパク質(血友病またはリソソーム蓄積症において欠如および/または欠損するタンパク質等))を含む、ポリヌクレオチド発現コンストラクトが、本明細書において記載される。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチド発現コンストラクトは、イントロン配列(例えば野生型マウス微小ウイルス(MVM)イントロン配列または変異MVMイントロン配列)をさらに含む。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチド発現カセットは、肝臓特異的エンハンサー配列、プロモーター配列、イントロン配列および導入遺伝子に隣接する、2つのスペーサー配列、ならびに随意にポリアデニル化シグナルを含む。任意のインスレーター配列(複数可)を使用することができ、これらには、任意の野生型インスレーター配列または変異インスレーター配列(例えば任意の組み合わせで、配列番号:28、29、30および/または38のうちの1つまたは複数)が含まれるがこれらに限定されない。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチド発現コンストラクトは、CRMSBS1(配列番号:37)またはCRMSBS2(配列番号:34)と表記されるポリヌクレオチドを含む。
【0012】
別の態様において、肝臓特異的エンハンサー配列(例えば野生型セルピン1エンハンサー配列または変異セルピン1エンハンサー配列)、プロモーター配列(例えば野生型トランスサイレチン(TTR)プロモーターまたは変異TTRプロモーター)、配列番号:15、16または17のうちの任意の1つ中で示されるようなイントロン配列、および導入遺伝子(例えばヌクレアーゼおよび/または、治療用タンパク質(血友病またはリソソーム蓄積症において欠如および/または欠損するタンパク質等))を含む、ポリヌクレオチド発現コンストラクトが、本明細書において記載される。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチド発現カセットは、インスレーター配列を含む少なくとも1つのスペーサー配列および/またはポリアデニル化シグナルをさらに含む。
【0013】
さらに別の態様において、配列番号:1~13のうちの任意のものの位置1、5、14、32および/または39での突然変異を有する肝臓特異的エンハンサー配列(例えば配列番号:35または36中に示されるような)、プロモーター配列(例えば野生型トランスサイレチン(TTR)プロモーターまたは変異TTRプロモーター)、および導入遺伝子(例えばヌクレアーゼおよび/または治療用タンパク質(血友病またはリソソーム蓄積症において欠如および/または欠損するタンパク質等))を含む、ポリヌクレオチド発現コンストラクトが、本明細書において記載される。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチド発現コンストラクトは、イントロン配列(例えば野生型マウス微小ウイルス(MVM)イントロン配列または変異MVMイントロン配列)、および/またはインスレーター配列を含む少なくとも1つのスペーサー配列、および/またはポリアデニル化シグナルをさらに含む。
【0014】
他の態様において、本明細書において記載されるポリヌクレオチド発現コンストラクトのうちの任意のものを含む、AAVベクターが提供される(例えばそこで、ポリヌクレオチド発現コンストラクトは、AAVベクターの5’逆方向末端反復(ITR)と3’ITRとの間にある)。
【0015】
さらに他の態様において、1つもしくは複数のAAVベクターおよび/または本明細書において記載されるような1つもしくは複数のポリヌクレオチド発現コンストラクトを含む、医薬組成物が、本明細書において提供される。
【0016】
タンパク質をそれを必要とする被験体へ提供するための方法であって、ポリヌクレオチド発現コンストラクト(AAVベクター)を被験体の肝臓へ、または本明細書において記載されるような医薬組成物を被験体へ、投与することを含み、導入遺伝子がタンパク質をコードし、タンパク質が被験体中で産生される、方法も、提供される。ある特定の実施形態において、導入遺伝子は被験体の肝細胞のゲノムの中へ組み込まれる。随意に、方法は被験体へ1つまたは複数のヌクレアーゼを投与することをさらに含み、そこで、ヌクレアーゼは内在性アルブミン遺伝子を切断し、導入遺伝子は内在性アルブミン遺伝子の中へ組み込まれる。導入遺伝子(例えばそれはタンパク質を産生する)を含むように細胞を遺伝的に修飾する方法も提供され、それらには、細胞の中へ導入遺伝子を導入する方法が含まれる(エピソームとしてまたは組み込まれる(ヌクレアーゼを媒介性標的化組み込みが含まれる))。哺乳動物において治療用タンパク質への寛容を誘導する方法であって、本明細書において記載されるように被験体中の細胞を遺伝的に修飾する(例えば本明細書において記載されるようにタンパク質を産生するように修飾された細胞)こと、ならびに哺乳動物が治療用タンパク質へ寛容化されるようになるように、1つまたは複数のステロイドおよび/またはB細胞阻害因子で治療することを含む、方法も、提供される。
【0017】
一態様において、エンハンサー配列(例えば野生型セルピン1エンハンサーまたは変異セルピン1エンハンサー)、プロモーター配列(例えばトランスサイレチンの最小プロモーター(TTRm)プロモーター)、および導入遺伝子、ならびに随意にポリアデニル化配列(例えば合成ポリアデニル化配列(SPA))および/またはシグナルペプチド(SP)を含む、ポリヌクレオチド発現コンストラクトが、本明細書において記載される。ある特定の実施形態において、発現コンストラクトは、イントロン配列(例えば野生型MVM配列もしくは変異MVM配列および/またはキメライントロン)をさらに含む。ある特定の実施形態において、発現コンストラクトは、5’から3’の方向で、エンハンサー配列、プロモーター配列、イントロン性配列、導入遺伝子(随意にシグナルペプチドを含む)、およびポリアデニル化シグナルを含む。
【0018】
発現カセットは、プラスミドベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクターおよびアデノ随伴ベクター(AAV)が含まれるがこれらに限定されない、任意のウイルスベクターまたは非ウイルスベクター中に組入れられ得る。好ましい実施形態において、発現コンストラクトはAAVコンストラクト上で保有され、本明細書において記載されるような発現コンストラクトに隣接する5’ITRおよび3’ITRをさらに含む。随意に、インスレーター(スペーサー)分子も、発現コンストラクトの構成要素の1つまたは複数の間に、例えば5’ITRとエンハンサーとの間に、および/またはポリアデニル化シグナルと3’ITRとの間に組入れられる。いくつかの実施形態において、インスレーター(スペーサー)領域は、標的化組み込みを促進するように相同性アームを含む。ある特定の実施形態において、コンストラクトは、
図1、2、4、6、7、10、19、20または25のうちの任意のものの中で示されるようなコンストラクトである。例示的な2つのコンストラクトが配列番号:34および配列番号:37中に示される。個別の構成要素(プロモーター、インスレーター(複数可)、エンハンサー、導入遺伝子)が、任意の組み合わせで、本明細書において記載されるような他の構成要素と組み合わせられ得ることは明らかであろう。
【0019】
本明細書において記載されるポリヌクレオチドのうちの任意のものにおいて、エンハンサーはセルピン-1エンハンサーに由来し得る。ある特定の実施形態において、エンハンサーは野生型配列である。他の実施形態において、エンハンサーは野生型に比較して1つまたは複数の修飾を含み、例えばセルピン1エンハンサーは、
図5中に示されるような1つまたは複数のヌクレオチド修飾(配列番号:1~13のうちの任意のものにおいて示される配列の残基1、5、14、32および/または39のうちの1つまたは複数でのヌクレオチドの修飾)を含有する。ある特定の実施形態において、セルピン1エンハンサーは、配列番号:1~13のうちの任意のものの位置1、5、14および32での修飾を含む一方で、他の実施形態において、セルピン1エンハンサーは、配列番号:1~13のうちの任意のものの位置1、14、32および39での修飾を含む。例示的なエンハンサー配列は配列番号:35および36において示される。いくつかの実施形態において、本明細書において記載されるポリヌクレオチドは、1、2、3、4、5またはそれ以上のエンハンサーエレメントを含む。ある特定の実施形態において、1、2、3、4、5またはそれ以上のエンハンサーエレメントは同一である一方で、他の実施形態において、2つ以上のタイプのエンハンサーエレメントが使用される。
【0020】
本明細書において記載されるポリヌクレオチドのうちの任意のものは、イントロン性配列をさらに随意に含み得る。ある特定の実施形態において、例えば
図6および7の下部パネル中で示されるように、発現コンストラクトはキメライントロン配列を含む。T-キメライントロンは、pCI-neo(GenBank U47120)中のキメライントロンの短縮バージョンである。pCI-neo中のキメライントロンは、ヒトβ-グロビン遺伝子からの5’スプライスドナー部位ならびに免疫グロブリン遺伝子重鎖可変領域のブランチポイントおよび3’アクセプター部位である。T-キメライントロンは、5’スプライスドナーとブランチポイントとの間で45bpの欠失を含有する。さらに他の実施形態において、発現コンストラクトは、変異MVMイントロン配列(例えば
図12、13および14中で示される突然変異のうちの1つまたは複数(配列番号:15~17))を含む。あるいは、例えば
図6、7、19および20の中央パネルにおいて描写されるコンストラクト中で示されるように、発現コンストラクトは、本明細書において記載されるようなイントロン性配列を欠如し得る。
【0021】
本発明の発現コンストラクトは、AAV ITRと発現カセットとの間に最適化されたインスレーター配列も含み得る。ある特定の実施形態において、発現コンストラクトは、インスレーター(スペーサー)領域(例えばIns1、Ins3、配列番号:15または28および配列番号:17または30(それぞれ)ならびにIns2(配列番号:16または29))を含む。ある特定の実施形態において、発現コンストラクトはIns4(配列番号:38)を含む。インスレーター配列のうちの任意のものは5’または3’の所在位置のいずれかで使用することができ、インスレーター配列のうちの任意の組み合わせは発現コンストラクト内で使用することができる。5’所在位置でのIns1および3’所在位置でのIns3の組み合わせが特に好ましい。
【0022】
発現コンストラクトは、本明細書において記載されるような1つまたは複数の導入遺伝子も含み発現する。任意の導入遺伝子(複数可)は本明細書において記載されるポリヌクレオチドを使用して発現させることができ、これらには、任意の遺伝性疾患(リソソーム貯蔵障害(例えばゴーシェ病、ファブリー病、ハンター病、ハーラー病、ニーマン-ピック病、フェニルケトン尿症(PKU)など)、代謝障害、および/または血液疾患(血友病および異常血色素症等)が含まれるがこれらに限定されないものなど)において、欠如または欠損するタンパク質の機能的なバージョンをコードする導入遺伝子が含まれるがこれらに限定されない。例えば米国公報第20140017212号および同第20140093913号;米国特許第9,255,250号および同第9,175,280号を参照されたい。本明細書において記載されるように発現され得るタンパク質の非限定例としては、フィブリノーゲン、プロトロンビン、組織因子、第V因子、第VII因子、第VIIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子(ハーゲマン因子)、第XIII因子(フィブリン安定化因子)、フォンウィルブランド因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(フィッツジェラルド因子)、フィブロネクチン、抗トロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害因子、プラスミノーゲン、α2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-1、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-2、グルコセレブロシダーゼ(GBA)、α-ガラクトシダーゼA(GLA)、イズロン酸スルファターゼ(IDS)、イズロニダーゼ(IDUA)、酸性スフィンゴミエリナーゼ(SMPD1)、MMAA、MMAB、MMACHC、MMADHC(C2orf25)、MTRR、LMBRD1、MTR、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ(PCC)(PCCAサブユニットおよび/またはPCCBサブユニット)、グルコース6-リン酸トランスポーター(G6PT)タンパク質またはグルコース-6-ホスファターゼ(G6Pase)、LDL受容体(LDLR)、ApoB、LDLRAP-1、PCSK9、ミトコンドリアタンパク質、(NAGS(N-アセチルグルタミン酸合成酵素)、CPS1(カルバモイルリン酸合成酵素I)およびOTC(オルニチントランスカルバミラーゼ)、ASS(アルギニノコハク酸合成酵素)、ASL(アルギニノコハク酸リアーゼ)および/またはARG1(アルギナーゼ)、および/または溶質キャリアファミリー25(SLC25A13、アスパラギン酸/グルタミン酸キャリア)タンパク質等)、UGT1A1またはUDPグルクロノシルトランスフェラーゼポリペプチドA1、フマリルアセトアセテートヒドロリアーゼ(FAH)、アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT)タンパク質、グリオキシル酸レダクターゼ/ヒドロキシピルビン酸レダクターゼ(GRHPR)タンパク質、トランスサイレチン遺伝子(TTR)タンパク質、ATP7Bタンパク質、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)タンパク質、リポタンパク質リアーゼ(LPL)タンパク質、操作されたヌクレアーゼ、操作された転写因子および/または操作された一本鎖可変断片抗体(ダイアボディ、ラクダ科の動物のものなど)が挙げられる。1つの好ましい実施形態において、導入遺伝子はFVIIIポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、FVIIIポリペプチドは、Bドメインの欠失を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の導入遺伝子は、操作されたヌクレアーゼ(例えばZFN、TALEN、TtAgoおよびCRISPR/Cas系)をコードする配列を含む。他の実施形態において、導入遺伝子は、操作された転写因子(例えばZFP-TF、TALE-TF、CRISPR/Cas-TF系)をコードする配列を含む。導入遺伝子は、対象となる標的について特異的な一本鎖抗体をコードする配列も含み得る。加えて、導入遺伝子は、構造RNA(例えばRNAi、shRNA、miRNA)をコードする配列を含み得る。
【0024】
ある特定の態様において、本明細書において記載されるようなポリヌクレオチドは、それらがエピソームとして維持される一方で、導入遺伝子の発現を駆動するように細胞の中へ導入される。他の態様において、発現コンストラクトは、それらが導入される細胞のゲノムの中へランダムに組み込まれる。さらなる態様において、導入遺伝子発現を駆動する発現コンストラクトは、ヌクレアーゼ媒介性標的化組み込みによってゲノムの中へ組み込まれる。
【0025】
さらなる態様において、肝細胞中で1つまたは複数の導入遺伝子を発現させるための方法であって、導入遺伝子が細胞中で発現されるように、本明細書において記載されるような1つまたは複数の発現コンストラクトを細胞の中へ導入することを含む、方法が、本明細書において記載される。ある特定の実施形態において、発現コンストラクトは、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクター、好ましくはAAVベクター(例えばAAV2またはAAV2/6)上で保有される。
【0026】
別の態様において、生きている動物において1つまたは複数の導入遺伝子を発現する方法であって、本明細書において記載されるような1つまたは複数の発現カセットを生きている動物へ投与することを含む、方法が、本明細書において提供される。ある特定の実施形態において、発現カセットは生きている動物の肝臓へ投与される。ある特定の実施形態において、発現コンストラクトは、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクター、好ましくはAAVベクター(例えばAAV2、AAV2/6またはAAV2/8)上で保有される。
【0027】
いくつかの実施形態において、治療的に妥当なレベルの1つまたは複数の治療用タンパク質を1つまたは複数の導入遺伝子から発現させる方法および組成物が本明細書において提供される。ある特定の実施形態において、補充タンパク質をコードする導入遺伝子コンストラクトの発現は、産生されるタンパク質の正常レベルの1%をもたらす一方で、他において、タンパク質の正常レベルの2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、30%、50%、80%、100%、150%、200%またはそれ以上が産生される。いくつかの好ましい実施形態において、導入遺伝子はFVIIIタンパク質をコードし、治療的に妥当な量のタンパク質が産生される。いくつかの実施形態において、本発明の方法および組成物の使用の結果として、ヒト患者は、臨床症状の減少をもたらす増加した量の治療用タンパク質を血液中に有する。ある特定の態様において、本明細書において記載される方法および組成物による治療用タンパク質のヒト患者における産生は、治療されていない患者に比較してまたは治療の前の患者に比較して、傷に後続する凝血時間の減少をもたらす。いくつかの態様において、本発明の方法および組成物により治療されたヒト患者は、治療されていない患者よりもまたは治療の前に患者に比較して、減少した量の置換療法を要求する。
【0028】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載されるような本発明の方法および組成物を使用して、導入遺伝子によってコードされる治療用タンパク質のレベルが、抗治療用タンパク質抗体の一時的上昇に後続して治療的に妥当なレベルで残存するように、治療用タンパク質への寛容を哺乳動物において誘導する。したがって、被験体において治療用タンパク質への寛容を誘導する方法であって、本明細書において記載されるような方法を使用して被験体中の細胞を遺伝的に修飾する(例えばその結果、細胞が治療用タンパク質を産生する)こと、随意に、動物が治療用タンパク質への寛容化されるようになるように、追加の組成物(例えばステロイドおよび/またはB細胞阻害因子)により被験体を治療することを含む、方法が、本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、レシピエント細胞の中への治療用タンパク質の挿入(組み込み)は、免疫阻害性ステロイドまたはB細胞阻害因子による治療と同時に行われるが、他の事例において、免疫修飾物質は動物へ投与されない。いくつかの事例において、抗治療用タンパク質抗体が生成される場合にのみ、免疫修飾剤が投与される。さらなる事例において、免疫修飾剤は期間後に中止される。
【0029】
別の態様において、細胞、発現コンストラクト、および/または本明細書において記載される随意のヌクレアーゼのうちの1つまたは複数を含む医薬組成物が提供される。
【0030】
ある特定の態様において、肝臓特異的発現カセットの標的化組み込みのための方法および系が、本明細書において記載される。方法および系は、本明細書において記載されるような1つまたは複数の発現カセットを投与すること、および標的遺伝子について特異的な1つまたは複数のヌクレアーゼを細胞へ投与することを含む。標的遺伝子のヌクレアーゼ媒介性切断に後続して、発現カセットは、相同性依存性メカニズムまたは相同性非依存性メカニズム経由で遺伝子の中へ組み込まれる。ある特定の実施形態において、標的遺伝子は内在性アルブミン遺伝子である。
【0031】
本発明の発現コンストラクトのヌクレアーゼ媒介性標的化組み込みのために、発現コンストラクトがヌクレアーゼ(複数可)によって切断された領域(遺伝子)の中へ組み込まれるように、任意のヌクレアーゼを使用することができる(1つまたは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEN、CRISPR/Casヌクレアーゼおよび/またはTtAgoヌクレアーゼが含まれるがこれらに限定されない)。ある特定の実施形態において、1つまたは複数のペアのヌクレアーゼが用いられる。ヌクレアーゼはmRNAの形態で導入され得るか、または非ウイルスベクターもしくはウイルスベクターを使用して細胞へ投与され得る。いくつかの態様において、ヌクレアーゼポリヌクレオチドはレンチウイルスまたは非組み込みレンチウイルスによって送達され得る。他の態様において、発現カセットはAAVおよび/またはDNAオリゴによって送達され得る。
【0032】
別の態様において、哺乳動物または霊長動物(ヒト霊長動物等、疾患(例えば代謝疾患、リソソーム蓄積症(LSD)、異常血色素症および/または血友病)に罹患するヒト患者等)において欠如または欠損する1つまたは複数の機能的タンパク質を提供するため、例えば被験体において欠如または欠損するタンパク質(複数可)の供給によって疾患を治療するための方法が、本明細書において提供される。別の態様において、タンパク質が欠如、欠損、または異常に発現される障害の治療のための機能的タンパク質を提供するための方法が、本明細書において提供される。さらなる実施形態において、方法は、障害の予防または治療のために有用な治療用タンパク質をコードする発現カセットを投与することを含む。さらなる態様において、治療用タンパク質が一本鎖抗体である場合に障害を治療するための治療用タンパク質の提供のための方法が、本明細書において記載される。ある特定の実施形態において、方法は、本明細書において記載されるような発現カセット(例えばAAVベクター)をそれを必要とする被験体の肝臓へ投与することを含む。他の実施形態において、方法は、修飾された細胞を(被験体において異常に発現されるタンパク質の機能的なバージョンを記載されるような発現カセットから発現する)を被験体へ投与することを含む。したがって、単離された細胞は被験体の中へ導入され得るか(エクスビボ細胞療法)、または被験体の一部である細胞が修飾され得る(インビボ)。
【0033】
記載される組成物および方法のうちの任意のものにおいて、発現カセットおよび/またはヌクレアーゼは、AAVベクター(AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV9およびAAVrh10、またはシュードタイプ化AAV(AAV2/8、AAV8.2、AAV2/5およびAAV2/6等)および同種のものが含まれるがこれらに限定されない)上で保有され得る。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチド(発現コンストラクトおよび/またはヌクレアーゼ)は同じAAVベクタータイプを使用して送達される。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは異なるAAVベクタータイプを使用して送達される。ポリヌクレオチドは1つまたは複数のベクターを使用して送達され得る。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、静脈内(例えば門脈内)投与経由でインタクトな動物の肝臓の中へ送達される。他の実施形態において、ポリヌクレオチドは静脈内投与経由で末梢静脈中に送達される。
【0034】
本明細書において記載される組成物および方法のうちの任意のものにおいて、導入遺伝子によってコードされるタンパク質は、F8タンパク質、例えばBドメイン欠失第VIII因子(BDD-F8)を含み得る。他の実施形態において、導入遺伝子によってコードされるタンパク質は第IX因子タンパク質を含む。他の実施形態において、導入遺伝子によってコードされるタンパク質は第VII因子タンパク質を含む。他の実施形態において、導入遺伝子によってコードされるタンパク質は第X因子タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、導入遺伝子によってコードされるタンパク質はグルコセレブロシダーゼを含む。他の実施形態において、導入遺伝子によってコードされるタンパク質はαガラクトシダーゼを含む。さらなる実施形態において、導入遺伝子によってコードされるタンパク質はイズロン酸-2-スルファターゼを含む。いくつかの実施形態において、導入遺伝子によってコードされるタンパク質はα-Lイズロニダーゼを含む。さらなる実施形態において、導入遺伝子によってコードされるタンパク質はスフィンゴミエリンホスホジエステラーゼを含む。いくつかの実施形態において、導入遺伝子は一本鎖抗体をコードする。他の実施形態において、導入遺伝子は構造RNAをコードする。本明細書において記載される組成物または方法のうちの任意のものにおいて、導入遺伝子は転写調節因子も含む一方で、他においては含まれず、転写は内在性調節因子によって調節される。別の態様において、本発明の方法は、それを必要とする被験体の治療法のための組成物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、安全領域(safe harbor)特異的ヌクレアーゼを含む操作された幹細胞、ならびに第VII因子、F8、F.IX、第X因子、GBA、GLA、IDS、IDUA、一本鎖抗体および/もしくはSMPD1タンパク質またはその機能的断片および/もしくは短縮型をコードする導入遺伝子を含む。他の実施形態において、組成物は、修飾され、第VII因子、F8、F.IX、第X因子、GBA、GLA、IDS、IDUA、一本鎖抗体および/もしくはSMPD1タンパク質またはその機能的断片および/もしくは短縮型をコードする導入遺伝子を発現する、操作された幹細胞を含む。
【0035】
本明細書において記載される方法は、インビトロ、エクスビボまたはインビボで実践することができる。ある特定の実施形態において、組成物は生きているインタクトな哺乳動物の中へ導入される。哺乳動物は、送達時で任意の発生のステージ、例えば、胚、胎仔、新生仔、乳仔、幼若体または成体であり得る。加えて、標的細胞は健康または疾患であり得る。ある特定の実施形態において、組成物のうちの1つまたは複数は、静脈内に(例えば門脈内静脈経由で肝臓へ、例えば尾静脈注射)、動脈内に、腹腔内に、筋肉内に、肝実質の中に(例えば注射経由で)、肝動脈の中に(例えば注射経由で)、および/または胆管系を介して(例えば注射経由で)送達される。
【0036】
特定のタイプの細胞(例えば血小板、線維芽細胞、肝細胞など)へ組成物を標的化するために、投与された組成物のうちの1つまたは複数は、細胞の表面受容体へ特異的に結合するホーミング剤と会合し得る。例えば、ベクターは、ある特定の肝臓系細胞が受容体を有するリガンド(例えばガラクトース)へコンジュゲートされ得る。コンジュゲーションは、共有結合(例えば架橋剤(グルタルアルデヒド等))または非共有結合(例えばビオチン化ベクターへのアビジン化リガンドの結合)であり得る。共有結合のコンジュゲーションの別の形態は、ベクターストックの調製に使用されるAAVヘルパープラスミドを、コードされたコートタンパク質のうちの1つまたは複数が生来のAAVコートタンパク質とペプチドリガンドまたはタンパク質リガンドのハイブリッドであるように操作し、その結果、リガンドがウイルス粒子の表面上で曝露されて提供される。
【0037】
本明細書において記載される発現コンストラクト、AAVベクター、細胞および/または医薬組成物のうちの1つまたは複数を含む、キットも提供される。キットは、ヌクレアーゼをコードする核酸(例えばZFN、TALENまたはCasおよび修飾Casタンパク質をコードするRNA分子、ならびにガイドRNA)、またはヌクレアーゼタンパク質のアリコート、細胞、本発明の方法の遂行のための説明書、および同種のものをさらに含み得る。
【0038】
これらおよび他の態様は、開示に照らして全体として当業者に容易に明らかである。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
インスレーター配列を含む少なくとも1つのスペーサー配列、肝臓特異的エンハンサー配列、プロモーター配列および導入遺伝子を含む、ポリヌクレオチド発現コンストラクト。
(項目2)
イントロン配列をさらに含む項目1に記載のポリヌクレオチド発現コンストラクトであって、前記エンハンサー配列が野生型セルピン1エンハンサーもしくは変異セルピン1エンハンサーを含む;および/または、前記プロモーター配列が野生型トランスサイレチン(TTR)プロモーターもしくは変異TTRプロモーターを含む;および/または、前記イントロン配列が野生型マウス微小ウイルス(MVM)イントロン配列もしくは変異MVMイントロン配列を含む、前記コンストラクト。
(項目3)
前記インスレーター配列が、配列番号:28、29および/または30のうちの任意の1つである、項目1または項目2のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド発現カセット。
(項目4)
前記肝臓特異的エンハンサー配列、前記プロモーター配列、前記イントロン配列および前記導入遺伝子に隣接する、2つのスペーサー配列を含む、項目1~3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド発現カセット。
(項目5)
前記インスレーター配列が、配列番号:28、29、30および/または38である、項目4に記載のポリヌクレオチド発現カセット。
(項目6)
前記導入遺伝子が血友病またはリソソーム蓄積症において欠如または欠損するタンパク質をコードする、項目1~5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド発現カセット。
(項目7)
前記導入遺伝子が1つまたは複数のヌクレアーゼをさらにコードする、項目6に記載のポリヌクレオチド発現カセット。
(項目8)
肝臓特異的エンハンサー配列、プロモーター配列、配列番号:15、16または17のうちの任意の1つ中で示されるようなイントロン配列、および導入遺伝子を含む、ポリヌクレオチド発現コンストラクト。
(項目9)
前記エンハンサー配列が野生型セルピン1エンハンサーまたは変異セルピン1エンハンサーを含む;および/または、前記プロモーター配列が野生型トランスサイレチン(TTR)プロモーターもしくは変異TTRプロモーターを含む、項目8に記載のポリヌクレオチド発現コンストラクト。
(項目10)
インスレーター配列を含む少なくとも1つのスペーサー配列および/またはポリアデニル化シグナルをさらに含む、項目8または項目9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド発現カセット。
(項目11)
前記導入遺伝子が血友病またはリソソーム蓄積症において欠如または欠損するタンパク質をコードする、項目8~10のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド発現カセット。(項目12)
前記導入遺伝子が1つまたは複数のヌクレアーゼをさらにコードする、項目8~11のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド発現カセット。
(項目13)
配列番号:1~13のうちの任意のものの位置1、5、14、32および/または39で突然変異を有する肝臓特異的エンハンサー配列、プロモーター配列、および導入遺伝子を含む、ポリヌクレオチド発現コンストラクト。
(項目14)
イントロン配列をさらに含む項目13に記載のポリヌクレオチド発現コンストラクトであって、前記プロモーター配列が野生型トランスサイレチン(TTR)プロモーターもしくは変異TTRプロモーターを含む、および/または、前記イントロン配列が野生型マウス微小ウイルス(MVM)イントロン配列もしくは変異MVMイントロン配列を含む、前記コンストラクト。
(項目15)
インスレーター配列を含む少なくとも1つのスペーサー配列および/またはポリアデニル化シグナルをさらに含む、項目13または14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド発現カセット。
(項目16)
前記導入遺伝子が血友病またはリソソーム蓄積症において欠如または欠損するタンパク質をコードする、項目13~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド発現カセット。
(項目17)
前記導入遺伝子が1つまたは複数のヌクレアーゼをさらにコードする、項目13~16のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド発現カセット。
(項目18)
項目1~17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド発現コンストラクトを含むAAVベクターであって、前記ポリヌクレオチド発現コンストラクトが前記AAVベクターの5’逆方向末端反復(ITR)と3’ITRとの間にある、前記ベクター。
(項目19)
前記AAVベクターがCRMSBS1(配列番号:34)またはCRMSBS2(配列番号:37)と表記される、項目18に記載のAAVベクター。
(項目20)
項目18または19のいずれか一項に記載のAAVベクターを含む、医薬組成物。
(項目21)
タンパク質を、それを必要とする被験体へ提供する方法であって、項目18もしくは19のいずれか一項に記載のAAVベクターを前記被験体の肝臓へ、または項目20に記載の医薬組成物を前記被験体へ、投与することを含み、前記導入遺伝子が前記タンパク質をコードし、前記タンパク質が前記被験体中で産生される、前記方法。
(項目22)
前記導入遺伝子が肝細胞のゲノムの中へ組み込まれる、項目21に記載の方法。
(項目23)
1つまたは複数のヌクレアーゼを被験体へ投与することをさらに含む、項目21または22のいずれか一項に記載の方法であって、前記ヌクレアーゼが内在性アルブミン遺伝子を切断し、前記導入遺伝子が内在性アルブミン遺伝子の中へ組み込まれる、前記方法。
(項目24)
哺乳動物において治療用タンパク質への寛容を誘導する方法であって、項目21~23のいずれか一項に記載の方法に従ってタンパク質を産生するように前記哺乳動物における細胞を修飾すること、ならびに前記哺乳動物が治療用タンパク質へ寛容化されるようになるように、1つまたは複数のステロイドおよび/またはB細胞阻害因子により哺乳動物を治療することを含む、前記方法。
(項目25)
項目1~17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド発現カセット、項目18もしくは項目19のいずれか一項に記載のAAVベクター、および/または項目20に記載の医薬組成物を含む、キット。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】導入遺伝子カセットエレメント、ならびに改善されたエンハンサーおよびイントロンの同定に採用されたステップを示す概略図である。
【
図2】インスレーター1-3(「Ins1-3」)を備えた、親TTRmプロモーターおよびHLPコンストラクトを描写する概略図である。SerpEは、肝臓特異的セルピン調節エレメントである、セルピンA1(SERPINA1)遺伝子からのセルピンエンハンサーを指す。TTRmはトランスサイレチン最小プロモーターを指す。HLPはハイブリッドの肝臓特異的プロモーターを指す(McIntosh et al.、同書)。hFVIIIはヒト第VIII因子Bドメイン欠失導入遺伝子を指す。SPはシグナルペプチドを指す。ITRは逆方向末端反復を指す。SPAは合成ポリアデニル化配列を指す。
【
図3】異なるインスレーター配列またはプロモーター領域を含む、異なるAAVコンストラクトの収量を描写するグラフである。親TTRmプロモーターまたはHLPコンストラクトのコンテキストにおいて、Ins1-Ins2へ比較されたIns1-Ins3からの改善された収量が、図中で観察される。ウイルスはHEK293細胞中で産生され、収量は2つの細胞工場(cell factories)(2つのCF)からである。SerpEは、肝臓特異的セルピン調節エレメントである、セルピンA1遺伝子からのセルピンエンハンサーを指す。TTRmはトランスサイレチン最小プロモーターを指す。HLPはハイブリッドの肝臓特異的プロモーターを指す(McIntosh et al.、同書)。hFVIIIはヒト第VIII因子Bドメイン欠失導入遺伝子を指す。SPはシグナルペプチドを指す。ITRは逆方向末端反復を指す。SPAは合成ポリアデニル化配列を指す。
【
図4】親ならびにCRMSBS1およびCRMSBS2と表記される新しいエンハンサーを備えたコンストラクト(各々はヒト第VIII因子Bドメイン欠失(第VIII因子-BDD)導入遺伝子を保有する)を描写する概略図である。「SerpE」は、肝臓特異的セルピン調節エレメントである、セルピンA1遺伝子からのセルピンエンハンサーを指す。「TTRm」はトランスサイレチン最小プロモーターを指す。「SBS」は内部のSangamo Biosciencesの数値参照を指す。「hFVIII」はヒト第VIII因子BDD導入遺伝子を指す。「SP」はシグナルペプチドを指す。「ITR」は逆方向末端反復を指す。「SPA」は合成ポリアデニル化配列を指す。「Ins1」および「Ins3」は
図2中で上で記載される通りである。
【
図5】セルピンA1遺伝子の複数の種のENCODEアライメントを使用する、複数の種からのセルピンA1遺伝子のアライメントを示す(配列番号:1~13)。同一の残基は図示しない(「.」によって表示される)。1~5で表示される四角で囲った領域は、配列への修飾の部位である。さらに中央パネル中で黒いバーによって示されるものは、HepG2細胞中でのDNAse I感受性の領域である。CRMSBS1は四角で囲った位置1、2、3および4での変化を含み、CRMSBS2は四角で囲った位置1、3、4および5での変化を含む。「CRM」はシス調節モジュールを指す。「SBS1/2」はコンストラクト1および2についてのSangamo Biosciencesの内部数値参照を指す。薄い灰色の四角で囲った領域は、省かれたセルピンA1遺伝子の配列である。
【
図6】CRMSBS1、およびMVMイントロンのない(CRMSBS1イントロンなし)または短縮キメライントロンのある(CRMSBS1 T-キメライントロン)CRMSBS1に由来する2つのコンストラクト(各々のコンストラクトは第VIII因子BDD導入遺伝子を含む)を描写する概略図である。「CRM」はシス調節エレメントを指す。「SBS」はSangamo Biosciencesの内部数値参照を指す。「hFVIII」はヒト第VIII因子-BDDを指す。「SP」はシグナルペプチドを指す。「ITR」は逆方向末端反復を指す。「SPA」は合成ポリアデニル化配列を指す。「Ins1」および「Ins3」は
図2中で上で記載される通りである。
【
図7】CRMSBS2、およびMVMイントロンのない(CRMSBS2イントロンなし)または短縮キメライントロンのある(CRMSBS2 T-キメライントロン)CRMSBS2に由来する2つのコンストラクト(各々のコンストラクトは第VIII因子BDD導入遺伝子を含む)を描写する概略図である。「CRM」はシス調節エレメントを指す。「SBS」はSangamo Biosciencesの内部数値参照を指す。「hFVIII」はヒト第VIII因子BDDを指す。「SP」はシグナルペプチドを指す。「ITR」は逆方向末端反復を指す。「SPA」は合成ポリアデニル化配列を指す。「Ins1」および「Ins3」は
図2中で上で記載される通りである。
【
図8】
図8Aおよび8Bは、指示されたコンストラクトのマウスへの投与に後続する、ヒトの分泌性第VIII因子BDDのインビボの産生を示すグラフである。C57BL/6マウスは、6E+12vg/kgのAAV2/6 hFVIII-BDDコンストラクトにより形質導入された。
図8Aは投与後7日目の分泌性hFVIII-BDDレベルを示し、
図8Bは28日の研究の継続期間にわたる分泌性hFVIII-BDDレベルを示す。各々のグラフの左側のy軸はng/mLを示し、右側のy軸はパーセント正常(そこで1U=100%正常=200ng/mL)を示す。
***はp>.001を示し、
*はp>.05を示す。グループ内の各々の個別の形は、単一動物からの結果を表わす。
【
図9】
図9Aおよび9Bは、
図7中で記載されるようなベクターの投与に後続する、F8-BDD cDNAの肝臓特異的発現を描写する。
図9Aは、指示された組織(脳、心臓、腎臓、肺、肝臓、脾臓、精巣)から分析されるヒト第VIII因子-BDD(hFVIII)mRNAのレベルを示す。示されるように、hFVIII-BDD mRNAは肝臓中でのみ検出され、他の組織では、親F8-BDD cDNAコンストラクト(白抜きの記号)またはCRMSBS2イントロンなし(塗りつぶされた記号)のいずれかから検出されない。
図9Bは、
図9A中で描写された同じ組織からのベクターゲノム(VG)の生体内分布を示す。血清型AAV2/6は主として肝臓に形質導入される。
【
図10】コンストラクトCRMSBS2、および追加のコンストラクト(CRMSBS2 SBRイントロン1、2または3と表記される)を描写する概略図である。すべてのコンストラクトはヒト第VIII因子BDD導入遺伝子を含む。「CRM」はシス調節エレメントを指す。「SBS」は内部のSangamo Biosciencesの内部数値参照を指す。「hFVIII」はヒト第VIII因子-BDD導入遺伝子を指す。「SP」はシグナルペプチドを指す。「ITR」は逆方向末端反復を指す。「SPA」は合成ポリアデニル化配列を指す。「MVM」はMVMイントロン配列を指す。
【
図11】部分的配列(配列番号:14)を含む、野生型マウス微小ウイルスイントロン(「WT MVM」)ならびにドナーおよびアクセプターの所在位置を描写する概略図である。「D1」および「D2」はそれぞれドナー1およびドナー2を指す。「A1」および「A2」はそれぞれアクセプター1およびアクセプター2を指す。「IES」はイントロン性エンハンサー配列を指す。Haut and Pintel(1998)J.Virology 72:1834-1843およびHaut and Pintel(1998)Virology J.,258:84-94も参照されたい。
【
図12】本明細書において記載されるコンストラクト中で使用されるSBRイントロン1における野生型MVMイントロンへ行われた変化の概要を示す(配列番号:15)。変化は灰色の四角で囲ってあり、可能なブランチポイントアクセプター1へのマイナーな突然変異(PBPA1);変異されたアクセプター部位1ポリ-ピリミジントラクト(A1PPT(-));変異されたアクセプター部位1(A1(-));改善された可能なブランチポイントアクセプター部位2(PBPA2(+));さらなるチミジン(T)の追加によって強化された、アクセプター部位2ポリ-ピリミジントラクト(A2PPT(+、8T));改善されたアクセプター部位2(A2(+))を含む。
【
図13】本明細書において記載されるコンストラクト中で使用されるSBRイントロン2における野生型MVMイントロンへ行われた変化の概要を示す(配列番号:16)。変化は灰色の四角で囲ってあり、可能なブランチポイントアクセプター1へのマイナーな突然変異(PBPA1);変異されたアクセプター部位1ポリ-ピリミジントラクト(A1PPT(-));変異されたアクセプター部位1(A1(-));さらなるチミジン(T)の追加によって強化された、アクセプター部位2ポリ-ピリミジントラクト(A2PPT(+、8T));改善されたアクセプター部位2(A2(+))を含む。
【
図14】本明細書において記載されるコンストラクト中で使用されるSBRイントロン3における野生型MVMイントロンへ行われた変化の概要を示す(配列番号:17)。変化は灰色の四角で囲ってあり、Gリッチイントロン性エンハンサー配列の突然変異(IES ko);可能なブランチポイントアクセプター1へのマイナーな突然変異(PBPA1);変異されたアクセプター部位1ポリ-ピリミジントラクト(A1PPT(-));変異されたアクセプター部位1(A1(-));さらなるチミジン(T)の追加によって強化された、アクセプター部位2ポリ-ピリミジントラクト(A2PPT(+、9T));改善されたアクセプター部位2(A2(+))を含む。
【
図15】
図15Aおよび15Bは、新規イントロン配列を備えたヒトの分泌性第VIII因子Bドメイン欠失のマウスにおけるインビボの産生を描写する。
図15は、分泌性ヒト第VIII因子(hFVIII)Bドメイン欠失の、マウスからのレベルを描写するグラフを有し、ng/mL(左側のy軸)またはパーセント正常(右側のy軸)のいずれかとして表わされ、1U=100%正常=200ng/mLである。C57BL/6マウスは、x軸上に表示されるように6E+12vg/kgのAAV2/6 hFVIIIコンストラクトにより形質導入された。
図15Aは7日目の分泌性hFVIIIのレベルを示す。
図15Bは28日の研究の継続期間にわたるピークの分泌性hFVIIIレベルを示す。数字は、群についての平均hFVIIIパーセント正常レベルを表示する。
【
図16】
図16Aおよび16Bは、FVIII-BDD cDNAの発現が肝臓特異的であることを示す。
図16Aは、
図15中で表わされた研究における組織(脳、心臓、腎臓、肺、肝臓、脾臓、精巣)から分析されたヒト第VIII因子(hFVIII)をコードするmRNAの値を示すグラフである。hFVIII mRNAは肝臓中でのみ検出され、他の組織では、親F8 cDNAコンストラクト(白抜きの記号)またはCRMSBS2 SBRイントロン3(塗りつぶされた記号)のいずれかから検出されない。
図16Bは、
図16A中で分析された同じ組織からのベクターゲノム(VG)生体内分布を示す。以前に出版されたように血清型AAV2/6は主として肝臓に形質導入される。
【
図17】
図17Aおよび17Bは、血友病Aマウスの血漿中の酵素的に活性なヒト第VIII因子-BDDの超生理学的レベルを描写する。
図17は、酵素的に活性な分泌性ヒト第VIII因子(hFVIII)Bドメイン欠失の、血友病AR593Cマウスからのレベルを描写するグラフを有し、パーセント正常として表わされ、1U=100%正常である。血友病AノックアウトマウスR593Cは、x軸上に表示されるように約7E+12vg/kgのAAV2/6 hFVIII-BDDコンストラクトにより形質導入された。
図17Aは14日目の分泌性hFVIII活性レベルを示す。
図17Bは42日目の分泌性hFVIII活性レベルを示す。数字は、群についての平均hFVIIIパーセント正常レベルを表示する。
【
図18】F8 CRMSBS2 SBRイントロン3 cDNAにより治療された血友病AのR593Cマウスにおける出血時間を示すグラフである。結果から、尾静脈切断(transection)後の血友病マウスにおいて止血を達成する時間の量の有意な低減(p<0.0001)が実証される。
【
図19】CRMSBS1、および新しい例示的なコンストラクト(MVMイントロンなし、またはキメライントロンあり)を、第VIII因子Bドメイン欠失導入遺伝子およびIns1-Ins3と一緒に描写する概略図。CRMはシス調節エレメントを指す。SBSはSangamo Biosciencesを指す。hFVIIIはヒト第VIII因子を指す。SPはシグナルペプチドを指す。ITRは逆方向末端反復を指す。SPAは合成ポリアデニル化配列を指す。「Ins1」および「Ins3」は
図2中で上で記載される通りである。
【
図20】CRMSBS2、および新しい例示的なコンストラクト(MVMイントロンなし、キメライントロンあり、またはSBRイントロン3あり)を、第VIII因子Bドメイン欠失導入遺伝子およびIns1-Ins3と一緒に描写する概略図。CRMはシス調節エレメントを指す。SBSはSangamo Biosciencesを指す。hFVIIIはヒト第VIII因子を指す。SPはシグナルペプチドを指す。ITRは逆方向末端反復を指す。SPAは合成ポリアデニル化配列を指す。「Ins1」および「Ins3」は
図2中で上で記載される通りである。
【
図21】HepG2細胞におけるAAV F8 cDNAのインビトロでの発現による、hFVIIIのレベルおよび活性の評価を描写するグラフである。AAV2/6 F8 cDNA(CRMSBS2 SBRイントロン3)を、24ウェルディッシュ中の1E+05細胞あたり4.8E+06、2.4E+06、1.2E+-6および0.6E+06のウイルスゲノムの用量で、HepG2細胞に加えた(時間t0日として表示される)。上清は、AAV2/6ウイルス添加7日目(t7)に、ELISAによって分泌性hFVIIIレベル(左端のバー)、ならびにAPTT凝血アッセイ(右端のバー)および発色活性アッセイ(中央のバー)によって活性について分析された。結果から分泌性hFVIIIレベルと活性との間の良好な相関性が実証された(左側の軸上でU/mLおよび右側のy軸上でパーセント正常として報告され、1U/mL=100パーセント正常)。示されたデータは、n=6の生物学的重複測定である。エラーバーは平均の標準誤差を表わす。
【
図22】CRMSBS1またはCRMSBS2のイントロンシリーズのコンテキストにおける産生収量の改善を示すグラフである。ウイルスはHEK293細胞中で産生され、収量は2つの細胞工場(2つのCF)からである。CRMはシス調節エレメントを指す。SBSはSangamo Biosciencesを指す。hFVIIIはヒト第VIII因子を指す。SPはシグナルペプチドを指す。ITRは逆方向末端反復を指す。SPAは合成ポリアデニル化配列を指す。Ins1およびIns3はそれぞれインスレーター1およびインスレーター3を指す。
【
図23】示されるように、複数のAAV血清型を使用して、野生型マウス中のhFVIII-BD産生レベルを描写するグラフである。オスC57BL/6マウスに、AAV2/5およびAAV2/9のコンストラクトについて6E+10vg/マウス(約2E+12vg/kg)、またはAAV2/6およびAAV2/8のコンストラクトについて6E+10vg/マウス(約2E+12vg/kg)および1.8E+11vg/マウス(約7E+12vg/kg)を静脈注射した。図は、AAV2/6およびAAV2/5のより低い用量のうちのいくつか以外は、すべてのサンプルの血漿中で検出された超生理学的hFVIII-BDDを実証する。
【
図24】導入遺伝子が、HEK293産生(HEK)またはSf9細胞中でのバキュロウイルス産生(Sf9)のいずれかによって精製されたAAV2/6経由で送達された場合の、野生型マウスにおけるhFVIII-BDD導入遺伝子の相対的発現を描写するグラフである。導入遺伝子をF8親cDNA(
図4)により使用した。オスC57BL/6マウスに、HEK293細胞またはSf9/rBV(組み換えバキュロウイルス)のいずれかから産生された1.8E+11vg/マウス(約7E+12vg/kg)のAAV2/6 F8親cDNAによる親F8親cDNAを静脈注射(尾静脈)経由で投与した。HEK293細胞からのF8親cDNAによる治療は、正常ヒトFVIII血漿レベルの142.1%±8.3%標準誤差(n=8)(hFVIII ELISAによって測定された)の平均ピーク値を達成した。同レベルの132.8%±18.6%標準誤差(n=5)(hFVIII ELISAによって測定された)が、F8親cDNA(Sf9/rBV)のマウスへの投与に後続して達成された。
【
図25】
図25Aおよび25Bは、CRBSBS2 SBRイントロン3(Ins1-Ins3)cDNA導入遺伝子ドナーの、マウスにおける発現レベルを示す。
図25Aはドナーの概略図であり、それは
図10中でも示される。
図25Bは、ng/mLおよびパーセント正常(正常ヒト血漿における)の両方として表現される、血漿中の検出可能なhFVIII-BDDの量を示す。オスC57BL/6マウスに、1.8E+11vg/マウス(約7E+12vg/kg)のAAV2/6 CRMSBS2 SBRイントロン3 cDNAを静脈注射した(n=8)。hFVIII ELISAによって測定されるように、C57BL/6マウスの血漿中のhFVIII-BDDの平均ピークレベルが示される。
【
図26】
図26Aおよび26Bは、様々な非ヒト霊長動物(NHP)研究におけるヒトFVIII-BDDについての投薬スキーム(103日目でのすべての免疫抑制を除去する研究が含まれる)を示す。
図26Aは、リツキサンおよびソル-メドロール投薬の概要を示す。リツキサン(10mg/kg;静脈内)投薬は試験品の投与の前であり、その一方でメチルプレドニゾロン(ソル-メドロール)(10mg/kg;筋肉内)投薬は103日目まで毎日であった。
図26Bは、試験品の添加の前および後の実験についての投薬スキームを示し、リツキサンおよびソル-メドロール投薬のタイミングも示す。群1~5は、試験品の注射前の免疫抑制レジメンに従うが、群6~8は、試験品の注射後の免疫抑制レジメンに従った。この研究の継続期間は56日であった。
【
図27】AAV2/6 hF8 cDNAにより治療されたNHPにおける、hFVIII活性とレベルとの間の相関性を示すグラフである。カニクイザルに、製剤バッファーまたは6E+12vg/kgのAAV2/6 hF8 cDNA(親ベクター)を投与した。
図27は、製剤対照群(群1、動物識別1101~1102)および6E+12vg/kg用量群(群3、動物識別3101~3103)についての個別の動物を示す。試験品添加後14日目で、hFVIIIの循環レベルおよび活性は、ELISAまたはAPTT凝血活性によって分析された。カニクイザルFVIIIの正常レベルは、凝血活性アッセイがヒトFVIIIについて特異的でないので、製剤対照群についての凝血活性データにおいて反映される、約1U/mL(約100%正常)である。ELISAはカニクイザルFVIIIよりもヒトFVIIIについて特異的であり、したがって、予想通りに、製剤対照群においてELISAによって測定されるようなhFVIIIレベルはない。群3の動物において、8U/mL(800%正常)を越える循環hFVIIIの超生理学的なレベルおよび活性がある。
【
図28】
図28Aおよび28Bは、AAV hF8 cDNAにより治療されたNHPにおける肝酵素プロファイルを示すグラフである。カニクイザルに、製剤バッファーまたは6E+12vg/kgのAAV2/6 hF8 cDNA(親ベクター)を投与した。製剤対照群(群1、動物識別1101)および6E+12vg/kg用量群(群3、動物識別3102)についての動物における代表的な肝酵素プロファイルが、肝臓状態の指標として示される。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が示される。カニクイザルについてまだ正常範囲である許容される上限参照値は、ALTについて126U/Lであり、ASTについて120U/Lである。製剤対照群および6E+12vg/kgのAAV hF8 cDNA(親ベクター)群の両方について、ALT/ASTレベルは肝生検後(肝生検は41日目であった)に上昇し、星印によって表示された。それ以外は、AAV hF8 cDNAは研究の全体にわたって(247日)良好な忍容性を示した。
【
図29】
図29A~29Cは、第VIII因子(F8)Bドメイン欠失(FVIII-BDD)タンパク質を保有するAAVドナーを使用する、NHP研究についてヒトFVIII血漿レベルの要約を描写するグラフである。
図29Aは群2の動物(AAV2/6、2E+12vg/kg)についての結果を示し;
図29Bは群3の動物(AAV2/6、6E+12vg/kg)についての結果を示し;
図29Cは群4の動物(AAV2/8、6E+12vg/kg)についての結果を示し;
図29Dは群5の動物(AAV2/8、6E+12vg/kg)についての結果を示す。1U/mLのヒト第VIII因子は生理的に正常と判断され、したがって正常な生理的循環ヒト第VIII因子の100%と等しい。
【
図30】指示されたコンストラクト(AAV6またはAAV8のベクターにおける)による非ヒト霊長動物(NHP)における治療に後続する研究にわたる、ピークのヒトFVIII抗原レベルを描写するグラフである。2E+12vg/kgの用量レベルで(n=3)、ヒトにおける正常hFVIII血漿レベルの111.0%、493.9%および840.0%(全体の平均481.6%、hFVIII ELISAによって測定されるように)のピーク値が達成された。6E+12vg/kgを表わすより高い用量で(n=3)、450.0%、625.6%および886.7%[全体の平均654.1%]のhFVIII血漿レベルのピーク値が達成された。AAV8についての全体の平均値は147.1%であった。
【
図31】
図31A~31Cは、低用量(2E+12vg/kg、群2)のAAV2/6-FVIII-BDD cDNAを投薬した個別のカニクイザル(n=3;動物2101、2102および2103)からの、投薬後168日の期間にわたる結果を描写するグラフである。すべての3つのグラフにおいて、血漿中のFVIII-BDDの濃度は黒色で示される(ELISAで測定されるように)。加えて、血漿中の抗FVIII中和抗体の濃度(ベセスダ単位として示される)は、灰色で示される。点線の横線は、抗FVIII中和抗体について陽性である値と判断されないベセスダ単位カットオフポイントを表わす。ソル-メドロールは、垂直の破線によって示されるように103日目で停止された。各々のグラフは単一のサルについての結果を示し:
図31Aは動物2101を示し;
図31Bは動物2102を示し;
図31Cは動物2103を示す。
【
図32】
図32A~32Cは、高用量(6E+12vg/kg、群3)のAAV2/6-FVIII-BDD cDNAを投薬した個別のカニクイザル(n=3、動物3101、3102および3103)からの、投薬後の168日の期間にわたる結果を描写するグラフである。すべての3つのグラフにおいて、血漿中のFVIII-BDDの濃度は黒色において示される(ELISAで測定されるように)。加えて、血漿中の抗FVIII中和抗体の濃度(ベセスダ単位として示される)は、灰色で示される。点線の横線は、抗FVIII中和抗体について陽性である値と判断されないベセスダ単位カットオフポイントを表わす。ソル-メドロールは103日目で(垂直の破線によって指示される)停止された。各々のグラフは単一のサルについての結果を示し:
図32Aは動物3101を示し;
図32Bは動物3102を示し;
図32Cは動物3103を示す。
【
図33】
図33A~33Dは、高用量(6E+12vg/kg、群4)のAAV2/8-FVIII-BDD cDNAを投薬した個別のカニクイザル(n=3、動物4101、4102および4103)からの、投薬後の168日の期間にわたる結果を描写するグラフである。グラフ33A~33Cにおいて、血漿中のFVIII-BDDの濃度は黒色において示される(ELISAで測定されるように)。加えて、血漿中の抗FVIII中和抗体の濃度(ベセスダ単位として示される)は、灰色で示される。
図33Dは、動物4103についてのグラフ中のより低い値の「拡大」である(
図33A~33C中のy軸は0~5U/mLのFVIII抗原である一方で、
図33Dは0~1U/mLのFVIII抗原であることに注目)。点線の横線は、抗FVIII中和抗体について陽性である値と判断されないベセスダ単位カットオフポイントを表わす。ソル-メドロールは103日目で(垂直の破線によって指示される)停止された。各々のグラフは単一のサルについての結果を示し:
図33Aは動物4101を示し;
図33Bは動物4102を示し;
図33Cおよび33Dは動物4103を示す。
【
図34A-C】
図34A~34Eは、高用量(6E+12vg/kg、群5)のAAV2/8-FVIII-BDD cDNAを投薬した個別のカニクイザル(n=3)からの、投薬後の168日の期間にわたる結果を描写するグラフである。
図34A~34Cにおいて、血漿中のFVIII-BDDの濃度は黒色において示される(ELISAで測定されるように)。加えて、血漿中の抗FVIII中和抗体の濃度(ベセスダ単位として示される)は、灰色で示される。
図34Dおよび34Eは、グラフ中のより低い値の「拡大」である(34A~C中のy軸は0~5U/mLのFVIII抗原である一方で、34Dおよび34Eの軸は0~1U/mLのFVIII抗原であることに注目)。点線の横線は、抗FVIII中和抗体について陽性である値と判断されないベセスダ単位カットオフポイントを表わす。ソル-メドロールは103日目で(垂直の破線によって指示される)停止された。各々のグラフは単一のサルについての結果を示す(動物5101:
図34A、5102:
図34Bおよび5103:
図34C)。
【
図34D-E】
図34A~34Eは、高用量(6E+12vg/kg、群5)のAAV2/8-FVIII-BDD cDNAを投薬した個別のカニクイザル(n=3)からの、投薬後の168日の期間にわたる結果を描写するグラフである。
図34A~34Cにおいて、血漿中のFVIII-BDDの濃度は黒色において示される(ELISAで測定されるように)。加えて、血漿中の抗FVIII中和抗体の濃度(ベセスダ単位として示される)は、灰色で示される。
図34Dおよび34Eは、グラフ中のより低い値の「拡大」である(34A~C中のy軸は0~5U/mLのFVIII抗原である一方で、34Dおよび34Eの軸は0~1U/mLのFVIII抗原であることに注目)。点線の横線は、抗FVIII中和抗体について陽性である値と判断されないベセスダ単位カットオフポイントを表わす。ソル-メドロールは103日目で(垂直の破線によって指示される)停止された。各々のグラフは単一のサルについての結果を示す(動物5101:
図34A、5102:
図34Bおよび5103:
図34C)。
【
図35A-B】
図35Aおよび35Fは、遺伝子導入hFVIIIを発現する動物における治療用hFVIII生物製剤によるチャレンジを描写するグラフである。群1、3、4および5(動物識別1101、3101、3103、4103、5101、5102)からのカニクイザルは、hFVIII生物製剤Xyntha(登録商標)によりチャレンジされ、それは25U/kgのXyntha(登録商標)の4回の毎週の点滴からなり、
図35A~35F中で逆さまの三角形として指示された。Xyntha(登録商標)のチャレンジは、198、205、212、219日目(0日目でのAAV hF8 cDNA試験品添加に後続して)に対応した。hFVIIIの短い半減期および毎週の血漿収集に起因して、hFVIII生物製剤Xyntha(登録商標)からのhFVIIIレベルの増加はなかった。しかしながら、対照製剤群1において、Xyntha(登録商標)のチャレンジに後続して阻害抗体(ベセスダ単位(BU)による測定)の増加があった(AAV hF8 cDNAを投与されない動物識別1101を参照、
図35A)。
図35A中で示されるように、BUはXyntha(登録商標)のチャレンジに後続して約0.9BU/mLに達し、グラフの灰色領域によって指示される。動物識別3103は何週間もの間の3U/mLを越える高いBUレベルを有し、添加されたhFVIII生物製剤チャレンジ(破線の垂線によって指示される)は、追加の検出可能な阻害抗体(BU)を誘導しなかった(
図35B)。AAV hF8 cDNAを投与され、hFVIIIレベルを持続したすべての群において、阻害抗体(BU)の増加はない(
図35C~F、灰色の矢印によって指示される)。
図35Cは動物識別3101についてのhFVIIIレベルが正常hFVIIIの約150%で19週間持続したことを示す一方で、
図35Dは動物識別4103についてのhFVIIIレベルが正常hFVIIIの約10%で19週間持続したことを示す。
図35Eは動物識別5101についてのhFVIIIレベルが正常hFVIIIの約15%で19週間持続したことを示す一方で、
図35Fは動物識別5102についてのhFVIIIレベルが正常hFVIIIの約35%で19週間持続したことを示す。点線の横線は、抗FVIII中和抗体について陽性である値と判断されないベセスダ単位カットポイントを表わす。垂直の点線は、
図35B、35Eおよび35Fにおいて、試験品投薬後103日目でのソル-メドロールの除去を表わす。
【
図35C-D】
図35Aおよび35Fは、遺伝子導入hFVIIIを発現する動物における治療用hFVIII生物製剤によるチャレンジを描写するグラフである。群1、3、4および5(動物識別1101、3101、3103、4103、5101、5102)からのカニクイザルは、hFVIII生物製剤Xyntha(登録商標)によりチャレンジされ、それは25U/kgのXyntha(登録商標)の4回の毎週の点滴からなり、
図35A~35F中で逆さまの三角形として指示された。Xyntha(登録商標)のチャレンジは、198、205、212、219日目(0日目でのAAV hF8 cDNA試験品添加に後続して)に対応した。hFVIIIの短い半減期および毎週の血漿収集に起因して、hFVIII生物製剤Xyntha(登録商標)からのhFVIIIレベルの増加はなかった。しかしながら、対照製剤群1において、Xyntha(登録商標)のチャレンジに後続して阻害抗体(ベセスダ単位(BU)による測定)の増加があった(AAV hF8 cDNAを投与されない動物識別1101を参照、
図35A)。
図35A中で示されるように、BUはXyntha(登録商標)のチャレンジに後続して約0.9BU/mLに達し、グラフの灰色領域によって指示される。動物識別3103は何週間もの間の3U/mLを越える高いBUレベルを有し、添加されたhFVIII生物製剤チャレンジ(破線の垂線によって指示される)は、追加の検出可能な阻害抗体(BU)を誘導しなかった(
図35B)。AAV hF8 cDNAを投与され、hFVIIIレベルを持続したすべての群において、阻害抗体(BU)の増加はない(
図35C~F、灰色の矢印によって指示される)。
図35Cは動物識別3101についてのhFVIIIレベルが正常hFVIIIの約150%で19週間持続したことを示す一方で、
図35Dは動物識別4103についてのhFVIIIレベルが正常hFVIIIの約10%で19週間持続したことを示す。
図35Eは動物識別5101についてのhFVIIIレベルが正常hFVIIIの約15%で19週間持続したことを示す一方で、
図35Fは動物識別5102についてのhFVIIIレベルが正常hFVIIIの約35%で19週間持続したことを示す。点線の横線は、抗FVIII中和抗体について陽性である値と判断されないベセスダ単位カットポイントを表わす。垂直の点線は、
図35B、35Eおよび35Fにおいて、試験品投薬後103日目でのソル-メドロールの除去を表わす。
【
図35E-F】
図35Aおよび35Fは、遺伝子導入hFVIIIを発現する動物における治療用hFVIII生物製剤によるチャレンジを描写するグラフである。群1、3、4および5(動物識別1101、3101、3103、4103、5101、5102)からのカニクイザルは、hFVIII生物製剤Xyntha(登録商標)によりチャレンジされ、それは25U/kgのXyntha(登録商標)の4回の毎週の点滴からなり、
図35A~35F中で逆さまの三角形として指示された。Xyntha(登録商標)のチャレンジは、198、205、212、219日目(0日目でのAAV hF8 cDNA試験品添加に後続して)に対応した。hFVIIIの短い半減期および毎週の血漿収集に起因して、hFVIII生物製剤Xyntha(登録商標)からのhFVIIIレベルの増加はなかった。しかしながら、対照製剤群1において、Xyntha(登録商標)のチャレンジに後続して阻害抗体(ベセスダ単位(BU)による測定)の増加があった(AAV hF8 cDNAを投与されない動物識別1101を参照、
図35A)。
図35A中で示されるように、BUはXyntha(登録商標)のチャレンジに後続して約0.9BU/mLに達し、グラフの灰色領域によって指示される。動物識別3103は何週間もの間の3U/mLを越える高いBUレベルを有し、添加されたhFVIII生物製剤チャレンジ(破線の垂線によって指示される)は、追加の検出可能な阻害抗体(BU)を誘導しなかった(
図35B)。AAV hF8 cDNAを投与され、hFVIIIレベルを持続したすべての群において、阻害抗体(BU)の増加はない(
図35C~F、灰色の矢印によって指示される)。
図35Cは動物識別3101についてのhFVIIIレベルが正常hFVIIIの約150%で19週間持続したことを示す一方で、
図35Dは動物識別4103についてのhFVIIIレベルが正常hFVIIIの約10%で19週間持続したことを示す。
図35Eは動物識別5101についてのhFVIIIレベルが正常hFVIIIの約15%で19週間持続したことを示す一方で、
図35Fは動物識別5102についてのhFVIIIレベルが正常hFVIIIの約35%で19週間持続したことを示す。点線の横線は、抗FVIII中和抗体について陽性である値と判断されないベセスダ単位カットポイントを表わす。垂直の点線は、
図35B、35Eおよび35Fにおいて、試験品投薬後103日目でのソル-メドロールの除去を表わす。
【
図36】
図36Aおよび36Bは、HepG2細胞中の内在性アルブミン遺伝子座からのhVIII-BDDのインビトロの発現を描写する。
図36Aは、HepG2細胞へのアルブミン標的化ZFN(SBS#47171/47898、AAV2/6-ZFN)およびhFVIII-BDD cDNA AAV2/6-FVIII-BDD(CRMSBS2イントロンなし)の投与(3.0E+05のAAV2/6-ZFNと一緒に、AAV2/6-FVIII-BDDは3.0E+04、6.0E+04および1.2E+05で投与される)に後続して、HepG2細胞上清中で経時的に(t=日)検出されたhFVIII-BDDを示すグラフである。
図36BはhFVIII cDNA単独(ZFNなし)を示すグラフである。示されたデータは、n=3の生物学的重複測定である。エラーバーは重複測定の平均の標準誤差を表わし、点線はhFVIII ELISAの検出限界である。
【
図37】内在性アルブミン遺伝子座でのhFVIII-BDD導入遺伝子標的化組み込みのインビトロの検出を示すグラフである。標的化組み込みはアルブミン挿入部位を含む定量的PCRによって検出された。5’PCRプライマーは内在性ヒトアルブミン遺伝子座内に所在し、PCRプローブはhFVIII-BDDカセットのITR内に所在し、3’プライマーはhFVIII-BDD導入遺伝子内である。提示された数字は、ハウスキーピング遺伝子GAPDHへ正規化されたものである。
【
図38】
図26B中で示されるスケジュールに従う非ヒト霊長動物(NHP)における治療に後続する、ピークのヒトFVIII抗原レベルを示すグラフである。群1~5は、試験品の注射前の免疫抑制(IS)レジメンに従った。6E+11vg/kgの用量レベル(n=3、群3)で、ヒトにおける正常hFVIII血漿レベルの5.7%である、ピーク値の全体の平均(hFVIII ELISAによって測定される)が、達成された。2E+12vg/kgを表わすより高い用量(n=3、群4)で、ピーク値の全体の平均は56.4%であり、および6E+12vg/kg(n=3、群5)で、hFVIII血漿レベルの229.0%である、ピーク値の全体の平均(hFVIII ELISAによって測定される)が、達成された。灰色の陰は、試験品後のISレジメンに従う群7および8である。用量レベル2E+12vg/kg(n=3、群7)で、ピーク値の全体の平均は87.9%であり、6E+12vg/kg(n=3、群8)について、101.7%であった。群1および6は、製剤として表示された製剤対照群であった。
【
図39】検出可能な循環ヒトFVIII抗原レベルにおいて同じ血清型結果を使用する、
図38中で示される2E+11vg/kgコホートにおける被験物質の再投薬後の結果を示すグラフである。群2(もとは2E+11vg/kg用量(n=3)を表わす)は、研究の56日目で9E+11vg/kg(n=3)を再投薬された(
図26B)。再用量後7日目の循環ヒトFVIII抗原レベルが示され、白抜きの半円により表示される(9E+11vg/kgの新しい用量で7日目)。すべての残りのデータは
図38中で提示されるものと同じである(研究の56日目の時点でのピークレベル)。
【
図40A】
図40Aおよび40Bは、内在性アルブミン遺伝子座からのhVIIIのインビトロの産生および検出を示すグラフである。
図40Aは、アルブミン標的化ZFN(SBS#42906/43043)およびhFVIII cDNA(CRMSBS2 SBRイントロン3)のHepG2細胞への投与に後続する、HepG2細胞上清中で検出されるhFVIIIの合計レベルを示す(19日目でアッセイされる)。この実施例において、hFVIII cDNAは、3.0E+05のZFNと一緒に、3.0E+04、6.0E+04および1.2E+05の増加用量で使用された。細胞へ添加された合計のウイルスについて調整するためのGFPと(ZFNなしの)hFVIII cDNA、およびhFVIII cDNA単独(ZFNなし)も示され、後者の両方とも検出可能な分泌性hFVIIIはほとんどまたは全くないことを実証する。これは、エピソームのhFVIIIが、十分な量の検出可能な分泌性hFVIIIの蓄積の前に分解されるからである。示されたデータは、n=2の生物学的重複測定である。エラーバーは、技術的および生物学的な重複測定の平均の標準誤差を表わす。点線はhFVIII ELISAの検出限界である。
図40Bは、定量的PCRを使用する、NHEJによる内在性アルブミン-hFVIII標的化組み込みのレベルを示す。5’プライマーは内在性ヒトアルブミン遺伝子座内であり、プローブはhFVIIIカセットのITR内に所在し、3’プライマーはhFVIII内である。
【
図40B】
図40Aおよび40Bは、内在性アルブミン遺伝子座からのhVIIIのインビトロの産生および検出を示すグラフである。
図40Aは、アルブミン標的化ZFN(SBS#42906/43043)およびhFVIII cDNA(CRMSBS2 SBRイントロン3)のHepG2細胞への投与に後続する、HepG2細胞上清中で検出されるhFVIIIの合計レベルを示す(19日目でアッセイされる)。この実施例において、hFVIII cDNAは、3.0E+05のZFNと一緒に、3.0E+04、6.0E+04および1.2E+05の増加用量で使用された。細胞へ添加された合計のウイルスについて調整するためのGFPと(ZFNなしの)hFVIII cDNA、およびhFVIII cDNA単独(ZFNなし)も示され、後者の両方とも検出可能な分泌性hFVIIIはほとんどまたは全くないことを実証する。これは、エピソームのhFVIIIが、十分な量の検出可能な分泌性hFVIIIの蓄積の前に分解されるからである。示されたデータは、n=2の生物学的重複測定である。エラーバーは、技術的および生物学的な重複測定の平均の標準誤差を表わす。点線はhFVIII ELISAの検出限界である。
図40Bは、定量的PCRを使用する、NHEJによる内在性アルブミン-hFVIII標的化組み込みのレベルを示す。5’プライマーは内在性ヒトアルブミン遺伝子座内であり、プローブはhFVIIIカセットのITR内に所在し、3’プライマーはhFVIII内である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
特に肝細胞における導入遺伝子の発現のための発現カセットが本明細書において開示される。コンストラクトは、任意の導入遺伝子(複数可)のインビボまたはインビトロでの肝細胞への送達に使用することができ、導入遺伝子のうちの1つまたは複数の供与によって回復できる任意の疾患または障害の治療および/または予防のために使用することができる。現在使用される肝臓標的化コンストラクトとは異なり、本明細書において記載されるコンストラクトは、修飾されたエンハンサーおよび/またはイントロン性配列を含み、加えて、MVMイントロンの使用なしでさえ高レベルで導入遺伝子を発現する。これらのコンストラクトは小さくもあり、小さなベクター系(AAV)によって送達される導入遺伝子の成功した使用を可能にする。
【0041】
本明細書において記載されるコンストラクトを使用して、非ヒト霊長動物の肝臓においてhFVIII BDDを発現させることができる。AAV hF8 cDNA発現カセットの初期用量に依存して、循環血漿レベルのhFVIIIは正常循環hFVIIIの800%以上であった。これらの初期の高用量に後続して、多くの動物が、8週間を超える間に正常レベルの10~150%の発現へと落ち着いた。加えて、何匹かの動物は、注射されたhFVIIIタンパク質(Xyntha(登録商標))によるチャレンジに際して抗hFVIIIの抗体応答が高まらず、実験の経過にわたってこれらの動物におけるhFVIIIIタンパク質への寛容の発生を示唆する。
【0042】
全般
本明細書において開示される方法の実践に加えて、組成物の調製および使用は、特別の指示のない限り、当業者の技能の範囲内にあるような、分子生物学、生化学、クロマチンの構造および分析、計算機化学、細胞培養、組換DNAならびに関連する分野における従来の技法を用いる。これらの技法は文献中で完全に説明される。例えば、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Second edition,Cold Spring Harbor
Laboratory Press,1989およびThird edition,2001;Ausubel et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,New York,1987および定期的な改訂版;シリーズ、METHODS IN ENZYMOLOGY,Academic Press、San Diego;Wolffe、CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION、Third edition、Academic Press,San Diego,1998;METHODS IN ENZYMOLOGY,Vol.304,「Chromatin」(P.M.Wassarman and A.P.Wolffe,eds.),Academic Press,San Diego,1999;ならびにMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Vol.119,「Chromatin Protocols」(P.B.Becker,ed.)Humana Press,Totowa,1999を参照されたい。
【0043】
定義
「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、直線状または環状の立体配座、および一本鎖または二本鎖の形態のいずれかである、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーを指す。本開示の目的のために、これらの用語はポリマーの長さに関して限定するものとして解釈するべきではない。これらの用語は、天然ヌクレオチドの既知の類似体に加えて、塩基部分、糖部分および/またはリン酸塩部分中で修飾されたヌクレオチド(例えばホスホロチオエート骨格)を包含することができる。一般に、特定のヌクレオチドの類似体は同じ塩基対を作る特異性を有し、すなわち、Aの類似体はTと塩基対を作るだろう。
【0044】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すように互換的に使用される。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸が対応する天然に存在するアミノ酸の化学的類似体または修飾された誘導体であるアミノ酸ポリマーへも適用される。
【0045】
「組換え」は、2つのポリヌクレオチドの間の遺伝情報の交換のプロセス(非相同末端結合(NHEJ)および相同組換えによる捕捉が含まれるがこれらに限定されない)を指す。本開示の目的のために、「相同組換え(HR)」は、例えば相同性指向修復機構経由の細胞中での二本鎖切断の修復の間に起こるような、交換の特殊化された形態を指す。
【0046】
本開示のある特定の方法において、本明細書において記載されるような1つまたは複数の標的化ヌクレアーゼは、既定の部位(例えばアルブミン遺伝子)で標的配列(例えば細胞クロマチン)中に二本鎖切断(DSB)を生成する。DSBは、本明細書において記載されるようなコンストラクトの組み込みを媒介する。随意に、コンストラクトは、切断の領域中のヌクレオチド配列への相同性を有する。発現コンストラクトは物理的に組み込まれ得るか、または、あるいは、発現カセットは相同組換え経由の切断の修復のためにテンプレートとして使用され、発現カセットとしてヌクレオチド配列のすべてまたは一部の細胞クロマチンの中への導入をもたらす。したがって、細胞クロマチン中の第1の配列は改変することができ、およびある特定の実施形態において、発現カセット中に存在する配列へと変換することができる。したがって、「置き換える」または「置き換え」という用語の使用は、あるヌクレオチド配列の別のものによる置き換え(すなわち情報的な意味での配列の置き換え)を表わし、必ずしもあるポリヌクレオチドの別のものによる物理的または化学的な置換を要求しないことが理解され得る。
【0047】
本明細書において記載される方法のうちの任意のものにおいて、外来性ヌクレオチド配列(「発現コンストラクト」または「発現カセット」または「ベクター」)は、対象となる領域中のゲノム配列へ相同であるが同一ではない配列を含有することができ、それによって相同組換えを刺激して対象となる領域中に同一でない配列を挿入する。したがって、特定の実施形態において、対象となる領域中の配列へ相同な発現カセット配列の部分は、置き換えられるゲノム配列へ約80~99%の間(またはその間の任意の整数)の配列同一性を示す。他の実施形態において、例えば発現カセットの相同性領域と100を上回る連続した塩基対のゲノム配列との間で、1つのヌクレオチドのみが異なるならば、発現カセットとゲノム配列との間の相同性は99%以上である。ある特定の事例において、発現カセットの非相同な部分は、新しい配列が対象となる領域の中へ導入されるように、対象となる領域中に存在しない配列を含有することができる。これらの事例において、非相同な配列には、一般的には、対象となる領域中の配列へ相同または同一の50~1,000塩基対(またはその間の任意の整数値)または1,000を超える塩基対の任意の数字の配列が隣接する。
【0048】
「配列」という用語は、DNAまたはRNAであり得、直線状、環状または分岐状であり得、一本鎖または二本鎖であり得る、任意の長さのヌクレオチド配列を指す。「導入遺伝子」という用語は、ゲノムの中へ挿入されるヌクレオチド配列を指す。導入遺伝子は、任意の長さ、例えば、2~100,000,000ヌクレオチドの間(またはその間もしくはその上の任意の整数値)の長さ、好ましくは約100~100,000ヌクレオチドの間(またはその間の任意の整数)の長さ、より好ましくは約2000~20,000ヌクレオチドの間(またはその間の任意の値)の長さ、およびさらにより好ましくは約5~15kbの間(またはその間の任意の値)の長さであり得る。
【0049】
「染色体」は、細胞のゲノムのすべてまたは一部分を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、しばしばその核型(それは細胞のゲノムを含むすべての染色体のコレクションである)によって特徴づけられる。細胞のゲノムは1つまたは複数の染色体を含み得る。
【0050】
「エピソーム」は、細胞の染色体核型の一部でない核酸を含む、複製する核酸、核タンパク複合体または他の構造である。エピソームの例としては、プラスミドおよびある特定のウイルスゲノムが挙げられる。本明細書において記載される肝臓の特異的なコンストラクトは、エピソームとして維持され得るか、または、あるいは、細胞の中へ安定的に組み込まれ得る。
【0051】
「外来性」分子は、細胞中に通常は存在しないが、1つまたは複数の遺伝学的方法、生化学的な方法または他の方法によって細胞の中へ導入できる分子である。「細胞中での通常の存在」は、細胞の特定の発生ステージおよび環境条件に関して決定される。したがって、例えば、筋肉の胚発生の間にのみ存在する分子は成体筋細胞に関しては外来性分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、非熱ショック細胞に関して外来性分子である。外来性分子は、例えば、正常に機能しない内在性分子の機能バージョンまたは通常は機能的な内在性分子の正常に機能しないバージョンを含むことができる。
【0052】
外来性分子は、とりわけ、小分子(コンビナトリアルケミストリープロセスによって生成されるもの等)またはマクロ分子(タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記の分子の任意の修飾誘導体、または上記の分子のうちの1つもしくは複数を含む任意の複合体等)であり得る。核酸にはDNAおよびRNAが含まれ、一本鎖または二本鎖であり得、直線状、分岐状または環状であり得、任意の長さであり得る。核酸には、二重らせんを形成できるものに加えて、三重らせんを形成する核酸が含まれる。例えば米国特許第5,176,996号および同第5,422,251号を参照されたい。タンパク質には、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、脱メチル化酵素、アセチル化酵素、脱アセチル化酵素、キナーゼ、ホスファターゼ、リガーゼ、脱ユビキチン化酵素、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレースおよびヘリカーゼが含まれるがこれらに限定されない。
【0053】
外来性分子は、内在性分子と同じタイプの分子(例えば外来性のタンパク質または核酸)であり得る。例えば、外来性核酸は、感染するウイルスゲノム、細胞の中へ導入されるプラスミドもしくはエピソーム、または細胞中に通常はない染色体を含み得る。外来性分子の細胞の中への導入のための方法は当業者に公知であり、これらには、脂質媒介性移入(すなわちリポソーム、中性脂肪および陽イオン性脂質が含まれる)、エレクトロポレーション、直接注射、細胞融合、粒子爆撃、リン酸カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン媒介性移入およびウイルスベクター媒介性移入が含まれるがこれらに限定されない。外来性分子は内在性分子と同じタイプの分子でもあり得るが、細胞が由来するもののとは異なる種に由来し得る。例えば、ヒト核酸配列は、もとはマウスまたはハムスターに由来する細胞株の中へ導入され得る。外来性分子の植物細胞の中への導入のための方法は当業者に公知であり、これらには、プロトプラスト形質転換、炭化ケイ素(例えばWHISKERS(商標))、アグロバクテリウム媒介性形質転換、脂質媒介性移入(すなわちリポソーム、中性脂質および陽イオン性脂質が含まれる)、エレクトロポレーション、直接注射、細胞融合、粒子爆撃(例えば「遺伝子銃」を使用して)、リン酸カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン媒介性移入およびウイルスベクター媒介性移入が含まれるがこれらに限定されない。
【0054】
これとは対照的に、「内在性」分子は、特定の環境条件下の特定の発生ステージの特定の細胞中に通常は存在するものである。例えば、内在性核酸は、染色体、ミトコンドリア、葉緑体もしくは他の細胞内小器官のゲノム、または天然に存在するエピソーム核酸を含み得る。追加の内在性分子には、タンパク質(例えば転写因子および酵素)が含まれ得る。
【0055】
本明細書において使用される時、「外来性核酸の産物」という用語には、ポリヌクレオチド産物およびポリペプチド産物、例えば転写産物(RNA等のポリヌクレオチド)および翻訳産物(ポリペプチド)の両方が含まれる。
【0056】
「融合」分子は、好ましくは共有結合で2つ以上のサブユニット分子が連結される分子である。サブユニット分子は、同じ化学的タイプの分子であり得るかまたは異なる化学的タイプの分子であり得る。融合分子の例としては、融合タンパク質(例えばタンパク質DNA結合ドメインと切断ドメインとの間の融合物)、切断ドメインと作動するように結合されたポリヌクレオチドDNA結合ドメイン(例えばsgRNA)との間の融合物、および融合核酸(例えば融合タンパク質をコードする核酸)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0057】
細胞における融合タンパク質の発現は、融合タンパク質の細胞への送達から、または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの細胞への送達によって(そこで、ポリヌクレオチドは転写され、転写物は翻訳されて融合タンパク質を生成する)、生じ得る。トランススプライシング、ポリペプチド切断、およびポリペプチドライゲーションも、細胞におけるタンパク質の発現に関与し得る。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの細胞への送達のための方法は、本開示中の他のところで提示される。
【0058】
本開示の目的のための「遺伝子」には、遺伝子産物(下を参照)をコードするDNA領域に加えて、遺伝子産物の産生を調節するすべてのDNA領域(かかる調節配列がコーディング配列および/または転写配列へ隣接するか否かにかかわらず)が含まれる。したがって、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列(リボソーム結合部位および内部リボソーム侵入部位等)、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、バウンダリーエレメント、複製起点、マトリックス結合部位、および遺伝子座制御領域が含まれるが必ずしもこれらに限定されない。
【0059】
「遺伝子発現」は、遺伝子中に含有される情報の遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接的な転写産物(例えばmRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNAまたは他のタイプのRNA)またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であり得る。遺伝子産物には、プロセッシング(キャッピング、ポリアデニル化、メチル化および編集等)によって修飾されるRNA、ならびに例えばメチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP-リボシル化、ミリスチル化(myristilation)および糖鎖付加によって修飾されるタンパク質も含まれる。
【0060】
遺伝子発現の「修飾」は、遺伝子の活性における変化を指す。発現の修飾には遺伝子活性化および遺伝子抑制が含むまれ得るがこれらに限定されない。ゲノム編集(例えば切断、変更、不活性化、ランダム変異)を使用して発現を修飾することができる。遺伝子不活性化は、本明細書において記載されるようなZFP、TALEまたはCRISPR/Cas系を含まない細胞に比較した、遺伝子発現の任意の低減を指す。したがって、遺伝子不活性化は、部分的または完全であり得る。
【0061】
「対象となる領域」は、外来性分子を結合することが所望される細胞クロマチンの任意の領域(例えば遺伝子または遺伝子内のもしくは遺伝子に近接する非コーディング配列等)である。結合は標的化DNA切断および/または標的化組換えのためのものであり得る。例えば、対象となる領域は、染色体、エピソーム、細胞内小器官ゲノム(例えばミトコンドリア、葉緑体)または感染ウイルスゲノム中に存在し得る。対象となる領域は、遺伝子のコーディング領域内、転写される非コーディング領域(例えばリーダー配列、トレーラー配列またはイントロン等)内、またはコーディング領域の上流もしくは下流のいずれかの非転写領域内にあり得る。対象となる領域は、単一のヌクレオチド対ほどの小ささ、もしくは2,000ヌクレオチド対までの長さ、または任意の整数値のヌクレオチド対であり得る。
【0062】
「真核生物」細胞には、真菌細胞(酵母等)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞、および幹細胞(万能性および多能性)が含まれるヒト細胞(例えばT細胞)が含まれるがこれらに限定されない。
【0063】
「作動するようなリンケージ」および「作動するように連結される」(「または作動可能に連結される」)という用語は、2つ以上の構成要素(配列エレメント等)の並置に関して互換的に使用され、そこで、両方の構成要素が正常に機能し、少なくとも構成要素のうちの1つが少なくとも他の構成要素の1つに対して発揮される機能を媒介する可能性を許容するように、構成要素はアレンジされる。例としては、転写調節配列が1つまたは複数の転写調節因子の存在または非存在に応答してコーディング配列の転写のレベルを制御するならば、転写調節配列(プロモーター等)はコーディング配列へ作動するように連結されている。転写調節配列は、一般的にはコーディング配列とシスで作動するように連結されるが、それに直接的に隣接する必要はない。例えば、エンハンサーは、たとえそれらが連続していなくても、コーディング配列へ作動するように連結される転写調節配列である。
【0064】
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的断片」は、その配列が全長のタンパク質、ポリペプチドまたは核酸に同一でないが、全長のタンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同じ機能をまだ保持する、タンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的断片は、対応する生来の分子について、より多い、より少ないもしくは同じ残基数を保持することができる、および/または、1つもしくは複数のアミノ酸置換もしくはヌクレオチド置換を含有することができる。核酸の機能(例えばコーディング機能、別の核酸へハイブリダイズする能力)を決定するための方法は、当技術分野において周知である。同様に、タンパク質機能を決定する方法は周知である。例えば、Bドメイン欠失ヒト第VIII因子は、全長の第VIII因子タンパク質の機能的断片である。
【0065】
ポリヌクレオチドの「ベクター」または「コンストラクト」は、遺伝子配列を標的細胞へ移入させることができる。典型的には、「ベクターコンストラクト」、「発現ベクター」、「発現コンストラクト」、「発現カセット」、および「遺伝子移入ベクター」は、対象となる遺伝子の発現を指令でき、標的細胞へ遺伝子配列を移入できる、任意の核酸コンストラクトを意味する。したがって、この用語は、クローニングベヒクルおよび発現ベヒクルに加えて、組み込みベクターを包含する。
【0066】
「被験体」および「患者」という用語は互換的に使用され、哺乳動物(ヒト患者および非ヒト霊長動物等)に加えて、実験動物(ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウスおよび他の動物等)を指す。したがって、「被験体」または「患者」という用語は、本明細書において使用される時、本発明の発現カセットが投与され得る任意の哺乳動物の患者または被験体を意味する。本発明の被験体には、障害に罹患するものが含まれる。
【0067】
肝臓特異的発現コンストラクト
肝細胞における導入遺伝子の発現の指令における使用(後続する発現カセット(複数可)の被験体へのインビボの投与(例えば肝臓への送達)が含まれる)のための発現カセット(コンストラクト)が本明細書において記載される。発現コンストラクトはエピソームとして維持され、導入遺伝子の発現を染色体外で駆動し得るかまたは、あるいは、発現コンストラクトは、例えばヌクレアーゼ媒介性標的化組み込みによって肝細胞のゲノムの中へ組み込まれ得る。
【0068】
ポリヌクレオチド発現コンストラクトは、エンハンサー配列、プロモーター配列、および1つまたは複数の導入遺伝子を含む。随意に、以下の:イントロン性配列、ポリアデニル化配列、および/またはシグナルペプチドのうちの1つまたは複数が含まれる。任意のエンハンサー配列が本明細書において記載される発現コンストラクト中で使用され得る。ある特定の実施形態において、エンハンサーは、野生型セルピン1エンハンサーまたは修飾セルピン1エンハンサーである(Chuah et al.,(2014)Molecular Therapy,22,1605-1613,;Nair et al.,(2014)Blood,123,3195-3199)。
【0069】
好ましい実施形態において、セルピン1エンハンサーは、野生型に比較して1つまたは複数の突然変異(例えば点突然変異)を含み、例えば、セルピン1エンハンサーは、
図5中に示されるような1つまたは複数のヌクレオチド修飾(すなわち配列番号:1~13のうちの任意のものにおいて示される配列の残基1、5、14、32および/または39のうちの1つまたは複数でのヌクレオチドの修飾)を含有する。ある特定の実施形態において、セルピン1エンハンサーは、配列番号:1~13のうちの任意のものの位置1、5、14および32(CRMSBS1と表記されるコンストラクト)での修飾を含む一方で、他の実施形態において、セルピン1エンハンサーは、配列番号:1~13のうちの任意のものの位置1、14、32および39(CRMSBS2と表記されるコンストラクト)での修飾を含む。例示的なエンハンサー配列は、以下に示される。
CRMSBS1(配列番号:35):
5’GGGGGAGGCTGCTGGTGAATATTAACCAAGATCAGCCCAGTTACCGGAGGAGCAAACAGGGGCTAAGTTCAC
CRMSBS2(配列番号:36):5’
GGGGGAGGCTGCTGGTGAATATTAACCAAGATCACCCCAGTTACCGGAGGAGCAAACAGGGACTAAGTTCAC
【0070】
同様に、任意のプロモーター配列が本発明の発現カセット中で使用され得る。ある特定の実施形態において、プロモーターは構成的プロモーターである。他の実施形態において、プロモーターは誘導可能プロモーターまたは組織特異的プロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは肝臓特異的プロモーターである。ある特定の実施形態において、プロモーターはトランスサイレチン最小プロモーター(TTRm)プロモーターである。他の実施形態において、プロモーターはα-1抗トリプシン(hAAT)プロモーターである。
【0071】
本明細書において記載されるポリヌクレオチドのうちの任意のものは、イントロン性配列をさらに随意に含み得る。ある特定の実施形態において、例えば
図6、7、19および20の下部パネル中で示されるように、発現コンストラクトは短縮キメライントロン(T-キメライントロン)配列を含む。T-キメライントロンは、pCI-neo(GenBank U47120)中のキメライントロンの短縮バージョンである。pCI-neo中のキメライントロンは、ヒトβ-グロビン遺伝子からの5’スプライスドナー部位ならびに免疫グロブリン遺伝子重鎖可変領域のブランチポイントおよび3’アクセプター部位である。T-キメライントロンは、5’スプライスドナーとブランチポイントとの間で45bpの欠失を含有する。さらに他の実施形態において、発現コンストラクトは、変異MVMイントロン配列(例えば
図12、13および14中で示される突然変異のうちの1つまたは複数(配列番号:15~17))を含む。
【0072】
あるいは、例えば
図6、7、19および20の中央パネルにおいて描写されるコンストラクト中で示されるように、発現コンストラクトは、本明細書において記載されるようなイントロン性配列を欠如し得る。第VIII因子導入遺伝子を含む例示的なコンストラクトは注釈付きで以下に示され、任意の導入遺伝子によりF8導入遺伝子を置き換えることができ、プロモーターおよびインスレーター配列が本明細書において記載されるようにさらに修飾され得ることは明らかだろう。
hF8 cDNA、イントロンなし(プロモーターモジュール、ポリAおよびIns、CRMSBS2イントロンなし、を含む、完全な配列)(配列番号:34):
【化1】
【化2】
【化3】
5’
【0073】
第VIII因子導入遺伝子を含む他の例示的なコンストラクトは注釈付きで以下に示され、任意の導入遺伝子によりF8導入遺伝子を置き換えることができ、プロモーターおよびインスレーター配列が本明細書において記載されるようにさらに修飾され得ることも明らかだろう。
【0074】
hF8 cDNA、イントロンを含む(プロモーターモジュール、ポリAおよびIns、CRMSBS2 SBRイントロン3、を含む、完全な配列)(配列番号:37):
【化4】
【化5】
【化6】
【0075】
好ましい実施形態において、本明細書において記載されるコンストラクトは、
図1、2、4、6、7、10、19、20および25中に示されるように、インスレーター(スペーサー)配列を含む。例示的なインスレーター配列は、Ins1:5’GGAACCATTGCCACCTTCA(配列番号:28);Ins2:5’CTATCCATTGCACTATGCT(配列番号:29);Ins3:5’TTTCCTGTAACGATCGGG(配列番号:30)およびIns4:5’TTGAATTCATAACTATCCCAA(配列番号:38)を含む。
【0076】
明らかであるように、任意の導入遺伝子は、本明細書において記載されるコンストラクト中で使用できる。さらに、本明細書において記載されるコンストラクトの個別の構成要素(プロモーター、エンハンサー、インスレーター、導入遺伝子など)は混合され、任意の組み合わせで調和し得る。
【0077】
本明細書において記載されるコンストラクトは、任意のウイルスベクターまたは非ウイルスベクター内に含有され得る。コンストラクトはエピソームとして維持され得るか、または細胞のゲノムの中へ組み込まれ得る(例えばヌクレアーゼを媒介とした標的化組み込み経由で)。
【0078】
非ウイルスベクターには、DNAプラスミドまたはRNAプラスミド、DNA MC、むき出しの核酸、および送達ベヒクル(リポソーム、ナノ粒子またはポロキサマー等)と複合体化した核酸が含まれる。本明細書において記載される発現カセットの保有に使用され得るウイルスベクターには、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターおよび単純ヘルペスウイルスベクターが含まれるがこれらに限定されない。宿主ゲノム中の組み込みは、レトロウイルス、レンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルスの遺伝子移入方法により可能で、ヌクレアーゼ媒介性組み込みによって本明細書において記載されるように促進され得る。
【0079】
特定の好ましい実施形態において、コンストラクトはアデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターまたはベクター系中に含まれ、それらは、エピソームとして維持され得るか、または肝細胞のゲノムの中へ組み込まれ得る(例えばヌクレアーゼ媒介性標的化組み込み経由で)。組換えAAVベクターの構築は、多くの出版物(米国特許第5,173,414号;Tratschin et al.,Mol.Cell.Biol.5:3251-3260(1985);Tratschin,et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072-2081(1984);Hermonat & Muzyczka,PNAS 81:6466-6470(1984);およびSamulski et al.,J.Virol.63:03822-3828(1989)が含まれる)中にある。
【0080】
したがって、特定の実施形態において、発現コンストラクトはAAVコンストラクト上で保有され、本明細書において記載されるような発現コンストラクトエレメント(例えばエンハンサー、プロモーター、随意のイントロン、導入遺伝子など)に隣接する5’ITRおよび3’ITRをさらに含む。随意に、スペーサー分子も、発現コンストラクトの構成要素の1つまたは複数の間に、例えば5’ITRとエンハンサーとの間に、および/またはポリアデニル化シグナルと3’ITRとの間に組入れられる。スペーサーは相同性アームとして機能して、安全領域遺伝子座(例えばアルブミン)の中へ組換えを促進することができる。ある特定の実施形態において、コンストラクトは、
図1、2、4、6、7、10、18、19、20または25のうちの任意のもの中で示されるようなコンストラクトである。
【0081】
ある特定の実施形態において、AAVベクターは、本明細書において記載されるような任意のAAVに由来し得る。ある特定の実施形態において、AAVベクターは、欠損のある非病原性のパルボウイルスアデノ随伴タイプ2ウイルスに由来する。すべてのかかるベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAVの145bpの逆方向末端反復のみを保持するプラスミドに由来する。形質導入細胞のゲノムの中へ組み込みに起因する、効率的な遺伝子移入および安定的な導入遺伝子送達は、本ベクター系のための重要な特色である(Wagner et al.,Lancet 351:9117 1702-3(1998),Kearns et al.,Gene Ther.9:748-55(1996))。他のAAV血清型(AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9およびAAVrh.10ならびに任意の新規AAV血清型が含まれる)も、本発明に従って使用することができる。いくつかの実施形態において、キメラAAVが使用され、そこで、ウイルス核酸のLTR配列のウイルス起源はカプシド配列のウイルス起源へ異種である。非限定例としては、AAV2に由来するLTRおよびAAV5、AAV6、AAV8またはAAV9に由来するカプシドを備えたキメラウイルス(すなわちそれぞれAAV2/5、AAV2/6、AAV2/8およびAAV2/9)が挙げられる。
【0082】
レトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびその組み合わせに基づくものが含まれる(例えばBuchscher et
al.,J.Virol.66:2731-2739(1992);Johann et al.,J.Virol.66:1635-1640(1992);Sommerfelt et al.,Virol.176:58-59(1990);Wilson et al.,J.Virol.63:2374-2378(1989);Miller
et al.,J.Virol.65:2220-2224(1991);PCT/US94/05700を参照)。
【0083】
本明細書において記載されるコンストラクトは、アデノウイルスベクター系の中へも取り込まれ得る。アデノウイルスベースのベクターは多くの細胞タイプにおいて非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を要求しない。かかるベクターにより、高力価および高レベルの発現が得られた。このベクターは、比較的単純な系において大量に産生することができる。
【0084】
pLASNおよびMFG-Sは、臨床試験において使用されたレトロウイルスベクターの例である(Dunbar et al.,Blood 85:3048-305(1995);Kohn et al.,Nat.Med.1:1017-102(1995);Malech et al.,PNAS 94:22 12133-12138(1997))。PA317/pLASNは遺伝子療法試験において使用された最初の治療ベクターであった(Blaese et al.,Science 270:475-480(1995))。50%以上の形質導入効率がMFG-Sパッケージベクターについて観察された(Ellem et al.,Immunol Immunother.44(1):10-20(1997);Dranoff et al.,Hum.Gene Ther.1:111-2(1997))。
【0085】
複製欠損性組換えアデノウイルスのベクター(Ad)も本明細書において記載されるポリヌクレオチドと共に使用され得る。大部分のアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAd E1a、E1bおよび/またはE3遺伝子を置き換えるように操作され、続いて、複製欠損ベクターは、欠失遺伝子機能をトランスで供給するヒト293細胞中で増殖される。Adベクターは、複数のタイプの組織(無分裂の分化細胞(肝臓および腎臓および筋肉において見出されるもの等)が含まれる)をインビボで形質導入することができる。従来のAdベクターは高い保有能力を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用の例は、筋肉内注射による抗腫瘍免疫付与のためのポリヌクレオチド療法を包含していた(Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083-9(1998))。臨床試験における遺伝子移入のためのアデノウイルスベクターの使用の追加の例としては、Rosenecker et al.,Infection 24:1 5-10(1996);Sterman et al.,Hum.Gene Ther.9:7
1083-1089(1998);Welsh et al.,Hum.Gene Ther.2:205-18(1995);Alvarez et al.,Hum.Gene Ther.5:597-613(1997);Topf et al.,Gene
Ther.5:507-513(1998);Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083-1089(1998)が挙げられる。
【0086】
パッケージング細胞を使用して、宿主細胞を感染できるウイルス粒子を形成する。かかる細胞にはHEK293細胞およびSf9細胞が含まれ、それらはAAVおよびアデノウイルスを使用してパッケージングすることができ、ψ2細胞またはPA317細胞はレトロウイルスをパッケージングする。遺伝子療法において使用されるウイルスベクターは、通常、ウイルス粒子の中へ核酸ベクターをパッケージングするプロデューサー細胞株によって生成される。ベクターは、典型的には、パッケージングおよび続いて行われる宿主の中への組み込み(適用可能なならば)のために要求される最小のウイルス配列を含有し、他のウイルス配列は、発現されるタンパク質をコードする発現カセットによって置き換えられる。欠けているウイルス機能はパッケージング細胞株によってトランスで供給される。例えば、遺伝子療法において典型的に使用されるAAVベクターは、パッケージングおよび宿主ゲノムの中への組み込みのために要求される、AAVゲノムからの逆方向末端反復(ITR)配列のみを保持する。ウイルスDNAは、細胞株(それは他のAAV遺伝子(すなわちrepおよびcap)をコードするがITR配列を欠如するヘルパープラスミドを含有する)中でパッケージングされる。細胞株はヘルパーとしてアデノウイルスでも感染される。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠如に起因して有意な量でパッケージングされない。アデノウイルスの混入は例えば熱処理によって低減させることができ、アデノウイルスはAAVよりも熱処理へより感受性がある。いくつかの実施形態において、AAVはバキュロウイルス発現系を使用して産生される。
【0087】
多くの遺伝子療法の適用において、特定の組織タイプへの高度の特異性を備えた遺伝子療法ベクターが送達されることが所望される。したがって、ウイルスベクターは、ウイルスの外側表面上のウイルスコートタンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現することによって、既定の細胞タイプについての特異性を有するように修飾され得る。リガンドは対象となる細胞タイプ上に存在することが既知の受容体について親和性を有するように選択される。例えば、Han et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:9747-9751(1995)は、モロニーマウス白血病ウイルスをgp70へ融合されたヒトヘレグリンを発現するように修飾することができ、組換えウイルスはヒト表皮増殖因子受容体を発現する特定のヒト乳癌細胞に感染することを報告する。この原理は他のウイルス-標的細胞のペアへ拡張することができ、そこで、標的細胞は受容体を発現し、ウイルスは細胞表面の受容体についてのリガンドを含む融合タンパク質を発現する。例えば、線状ファージは、実質的には任意の選ばれた細胞受容体について特異的な結合親和性を有する抗体断片(例えばFABまたはFv)を提示するように操作され得る。上の記載は主としてウイルスベクターへ適用されるが、同じ原則を非ウイルスベクターへ適用することができる。かかるベクターは特異的な取込み配列(それは特異的な標的細胞による取込みを容易にする)を含有するように操作され得る。
【0088】
本明細書において記載されるポリヌクレオチドは、1つまたは複数の非天然の塩基および/または骨格を含み得る。特に、本明細書において記載されるような発現カセットはメチル化シトシンを含んで、対象となる領域において転写静止の状態を達成することができる。
【0089】
さらに、本明細書において記載されるような発現コンストラクトは、追加の転写配列、翻訳調節配列または他の配列(例えばコザック配列、追加のプロモーター、エンハンサー、インスレーター、内部リボソーム侵入部位、2Aペプチドをコードする配列、フューリン切断部位および/またはポリアデニル化シグナル)も含み得る。さらに、対象となる遺伝子の調節エレメントをレポーター遺伝子へ作動可能に連結して、モザイク遺伝子(例えばレポーター発現カセット)を生成することができる。
【0090】
導入遺伝子
本明細書において記載されるコンストラクトは、任意の導入遺伝子の肝臓への送達のために使用され得る。例示的な導入遺伝子(対象となる遺伝子および/または外来性配列とも称される)には、任意のポリペプチドコーディング配列(例えばcDNA)、プロモーター配列、エンハンサー配列、エピトープタグ、マーカー遺伝子、切断酵素認識部位、および様々なタイプの発現コンストラクトも含まれるがこれらに限定されない。マーカー遺伝子には、抗生物質耐性(例えばアンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を媒介するタンパク質をコードする配列、着色タンパク質または蛍光タンパク質または発光タンパク質(例えば緑色蛍光タンパク質、増強緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)をコードする配列、ならびに細胞増殖および/または遺伝子増幅の促進を媒介するタンパク質(例えばジヒドロ葉酸還元酵素)が含まれるがこれらに限定されない。エピトープタグには、例えば、FLAG、His、myc、Tap、HAまたは任意の検出可能なアミノ酸配列のうちの1つまたは複数のコピーが含まれる。
【0091】
好ましい実施形態において、導入遺伝子は細胞における発現が所望される任意のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、これには、抗体、抗原、酵素、受容体(細胞表面または核)、ホルモン、リンホカイン、サイトカイン、レポーターポリペプチド、増殖因子、および上記のもののうちの任意のものの機能的断片が含まれるがこれらに限定されない。コーディング配列は例えばcDNAであり得る。
【0092】
ある特定の実施形態において、導入遺伝子(複数可)は、任意の遺伝性疾患(リソソーム貯蔵障害(例えばゴーシェ病、ファブリー病、ハンター病、ハーラー病、ニーマン-ピック病など)、代謝障害、および/または血液疾患(血友病および異常血色素症等)が含まれるがこれらに限定されないものなど)において、欠如または欠損するタンパク質の機能的なバージョンをコードする。例えば米国公報第20140017212号および同第20140093913号;米国特許第9,255,250号および同第9,175,280号を参照されたい。
【0093】
例えば、導入遺伝子は、遺伝性疾患を有する被験体において欠如するかまたは非機能的なポリペプチドをコードする配列を含み、遺伝性疾患には、以下のもの:軟骨異栄養症、色覚異常、酸性マルターゼ欠損症、アデノシンデアミナーゼ欠損症(OMIM番号102700)、副腎白質ジストロフィー、アイカルディ症候群、α-1アンチトリプシン欠損症、α-サラセミア、アンドロゲン不感性症候群、アペール症候群、不整脈源性右室異形成症、毛細血管拡張性運動失調症、バース症候群、β-サラセミア、青色ゴムまり様母斑症候群、カナバン病、慢性肉芽腫性疾患(CGD)、ネコ鳴き症候群、嚢胞性線維症、ダーカム病、外胚葉性異形成症、ファンコニ貧血、進行性骨化性線維異形成症、脆弱X症候群、ガラクトース血症、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス(例えばGM1)、ヘモクロマトーシス、β-グロビンの第6コドンにおけるヘモグロビンC突然変異(HbC)、血友病、ハンチントン舞踏病、ハーラー症候群、低ホスファターゼ症、クラインフェルター症候群、クラッベ病、ランガー-ギーディオン症候群、白血球接着不全症(LAD、OMIM番号116920)、白質萎縮症、QT延長症候群、マルファン症候群、メビウス症候群、ムコ多糖症(MPS)、爪膝蓋骨症候群、腎原発性尿崩症、神経線維腫症、ニーマン-ピック病、骨形成不全症、ポルフィリン症、プラダー-ウィリー症候群、早老症、プロテウス症候群、網膜芽細胞腫、レット症候群、ルビンシュタイン-テイビ症候群、サンフィリポ症候群、重症複合免疫不全症(SCID)、シュバックマン症候群、鎌型赤血球症(鎌状赤血球細胞貧血)、スミス-マゲニス症候群、スティックラー症候群、テイ-サックス病、血小板減少橈骨欠損(TAR)症候群、トレチャー・コリンズ症候群、トリソミー、結節硬化症、ターナー症候群、尿素サイクル異常症、フォンヒッペル-リンダウ病、ワールデンブルヒ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウィスコット-アルドリッチ症候群、X染色体性リンパ増殖症候群(XLP、OMIM番号308240)、後天性免疫不全症、リソソーム蓄積症(例えばゴーシェ病、GM1、ファブリー病およびテイ-サックス病)、ムコ多糖症(例えばハンター病、ハーラー病)、異常血色素症(例えば鎌型赤血球症、HbC、α-サラセミア、β-サラセミア)および血友病のうちの任意のものが含まれるがこれらに限定されない。
【0094】
本明細書において記載されるように発現され得るタンパク質(短縮バージョン等のその機能的断片が含まれる)の非限定例としては、フィブリノーゲン、プロトロンビン、組織因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子(ハーゲマン因子)、第XIII因子(フィブリン安定化因子)、フォンウィルブランド因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン(フィッツジェラルド因子)、フィブロネクチン、抗トロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害因子、プラスミノーゲン、α2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-1、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-2、グルコセレブロシダーゼ(GBA)、α-ガラクトシダーゼA(GLA)、イズロン酸スルファターゼ(IDS)、イズロニダーゼ(IDUA)、酸性スフィンゴミエリナーゼ(SMPD1)、MMAA、MMAB、MMACHC、MMADHC(C2orf25)、MTRR、LMBRD1、MTR、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ(PCC)(PCCAサブユニットおよび/またはPCCBサブユニット)、グルコース6-リン酸トランスポーター(G6PT)タンパク質またはグルコース-6-ホスファターゼ(G6Pase)、LDL受容体(LDLR)、ApoB、LDLRAP-1、PCSK9、ミトコンドリアタンパク質(NAGS(N-アセチルグルタミン酸合成酵素)、CPS1(カルバモイルリン酸合成酵素I)およびOTC(オルニチントランスカルバミラーゼ)、ASS(アルギニノコハク酸合成酵素)、ASL(アルギニノコハク酸リアーゼ酸性リアーゼ)および/またはARG1(アルギナーゼ)、および/または溶質キャリアファミリー25(SLC25A13、アスパラギン酸/グルタミン酸キャリア)タンパク質等、UGT1A1またはUDPグルクロノシルトランスフェラーゼポリペプチドA1、フマリルアセトアセテートヒドロリアーゼ(FAH)、アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT)タンパク質、グリオキシル酸レダクターゼ/ヒドロキシピルビン酸レダクターゼ(GRHPR)タンパク質、トランスサイレチン遺伝子(TTR)タンパク質、ATP7Bタンパク質、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)タンパク質、リポタンパク質リアーゼ(LPL)タンパク質、操作されたヌクレアーゼ、操作された転写因子および/または治療用一本鎖抗体が挙げられる。
【0095】
ある特定の実施形態において、導入遺伝子は、標的化組み込みを受けた細胞の選択を可能にするマーカー遺伝子(上で記載される)および追加機能性をコードする連結された配列を含み得る。マーカー遺伝子の非限定例としては、GFP、薬物選択マーカー(複数可)および同種のものが挙げられる。
【0096】
本明細書において記載されるコンストラクトは、非コーディング導入遺伝子の送達のためにも使用され得る。アンチセンスRNA、RNAi、shRNAおよびマイクロRNA(miRNA)をコードする配列も、標的化挿入のために使用され得る。
【0097】
ある特定の実施形態において、導入遺伝子は、1kbより大きい長さ、例えば2~200kbの間、2~10kbの間(またはその間の任意の値)の配列(例えばコーディング配列、導入遺伝子とも称される)を含む。導入遺伝子は、1つまたは複数のヌクレアーゼ標的部位も含み得る。
【0098】
組み込まれる(例えばヌクレアーゼ媒介性組み込み経由で)場合に、内在性遺伝子のすべてもしくはいくらかが発現するように、またはまったく発現しないように、導入遺伝子は内在性遺伝子の中へ挿入され得る。
【0099】
ヌクレアーゼ
上で指摘されるように、発現カセットはエピソームとして維持され得るか、または細胞のゲノムの中へ組み込まれ得る。組み込みはランダムであり得る。好ましくは、導入遺伝子コンストラクト(複数可)の組み込みは、1つまたは複数のヌクレアーゼ(例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ(「ZFN」)、TALEN、TtAgo、CRISPR/Casヌクレアーゼ系、およびホーミングエンドヌクレアーゼ)による標的遺伝子の切断に後続して標的化され、コンストラクトは、相同性指向修復(HDR)によってまたは非相同末端結合(NHEJ)駆動性プロセスの間の末端捕捉によってのいずれかで組み込まれる。例えば米国特許第9,255,250号;同第9,200,266号;同第9,045,763号;同第9,005,973号;同第9,150,847号;同第8,956,828号;同第8,945,868号;同第8,703,489号;同第8,586,526号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,503,717号;同第6,689,558号;同第7,067,317号;同第7,262,054号;同第7,888,121号;同第7,972,854号;同第7,914,796号;同第7,951,925号;同第8,110,379号;同第8,409,861号;米国特許公報第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20050064474号;同第20060063231号;同第20080159996号;同第201000218264号;同第20120017290号;同第20110265198号;同第20130137104号;同第20130122591号;同第20130177983号;第20130196373号および第20150056705号(それらの開示はその全体をすべての目的のために参照することにより本明細書に援用される)を参照されたい。
【0100】
任意のヌクレアーゼが、導入遺伝子発現コンストラクトの標的化組み込みのために使用され得る。
【0101】
ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含み、それはジンクフィンガーDNA結合ドメインおよび切断(ヌクレアーゼ)ドメインを含む。例えば米国特許第9,255,250号;同第9,200,266号;同第9,045,763号;同第9,005,973号;同第9,150,847号;同第8,956,828号;同第8,945,868号;同第8,703,489号;同第8,586,526号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,503,717号;同第6,689,558号;同第7,067,317号;同第7,262,054号;同第7,888,121号;同第7,972,854号;同第7,914,796号;同第7,951,925号;同第8,110,379号;同第8,409,861号を参照されたい。
【0102】
他の実施形態において、ヌクレアーゼはTALENを含み、それはTALエフェクターDNA結合ドメインおよび切断(ヌクレアーゼ)ドメインを含む。例えば米国特許第8,586,526号および米国公報第20130196373号を参照されたい。
【0103】
なおさらなる実施形態において、ヌクレアーゼはCRISPR/Casヌクレアーゼ系を含み、それは、標的部位および1つまたは複数の切断ドメインの認識のための単一のガイドRNAを含む。例えば米国特許公報第20150056705号を参照されたい。いくつかの実施形態において、CRISPR-Cpf1系が使用される(Fagerlund et al,(2015)Genom Bio 16:251を参照)。「CRISPR/Cas」系という用語は、CRISPR/Cas系およびCRISPR/Cfp1系の両方を指すことが理解される。
【0104】
ヌクレアーゼの切断ドメインは、野生型であるかまたは変異され得る(強制的なヘテロダイマーを形成する天然に存在しない(操作された)切断ドメインを含む)。例えば米国特許第8,623,618号;同第7,888,121号;同第7,914,796号;および同第8,034,598号および米国公報第20110201055号を参照されたい。
【0105】
ヌクレアーゼ(複数可)は、標的部位において1つまたは複数の二本鎖および/または一本鎖の切断を行い得る。ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼは、触媒的に不活性な切断ドメイン(例えばFokIおよび/またはCasタンパク質)を含む。例えば米国特許第9,200,266号;同第8,703,489号およびGuillinger
et al.(2014)Nature Biotech.32(6):577-582を参照されたい。触媒的に不活性な切断ドメインを、ニッカーゼとして作用する触媒的に活性のあるドメインと組み合わせて、一本鎖切断を生じさせることができる。したがって、2つのニッカーゼを組み合わせて使用して、特異的な領域において二本鎖切断を生じさせることができる。追加のニッカーゼも当技術分野において公知である(例えばMcCaffery et al.(2016)Nucleic Acids Res.44(2):e11.doi:10.1093/nar/gkv878.Epub 2015 Oct 19)。
【0106】
ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼは安全領域遺伝子(例えばCCR5、Rosa、アルブミン、AAVS1など)を切断する。例えば米国特許第7,888,121号;同第7,972,854号;同第7,914,796号;同第7,951,925号;同第8,110,379号;同第8,409,861号;同第8,586,526号;米国特許公報第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20060063231号;同第20080159996号;同第201000218264号;同第20120017290号;同第20110265198号;同第20130137104号;同第20130122591号;同第20130177983号および同第20130177960号を参照されたい。好ましい実施形態において、発現カセットが肝細胞の内在性アルブミン遺伝子座の中へ組み込まれるように、ヌクレアーゼは内在性アルブミン遺伝子を切断する。アルブミン特異的ヌクレアーゼは、例えば米国特許第9,150,847号;ならびに米国公報第20130177983号および同第20150056705号中に記載される。
【0107】
送達
本明細書において記載されるコンストラクト(および/またはヌクレアーゼ)は、任意の好適な手段によってインビボでまたはエクスビボで任意の細胞タイプの中へ、好ましくは肝臓へ送達され得る(肝臓への送達)。同様に、標的化組み込みのためにヌクレアーゼと組み合わせて使用される場合に、ヌクレアーゼは、ポリヌクレオチドおよび/もしくはタンパク質の形態(例えば非ウイルスベクター(複数可)、ウイルスベクター(複数可)を使用して)において、ならびに/またはRNAの形態(例えばmRNAとして)において、送達され得る。
【0108】
核酸の非ウイルス送達の方法には、エレクトロポレーション、リポフェクション、顕微注射、微粒子銃、ビロゾーム、リポソーム、イムノリポソーム、他のナノ粒子、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、むき出しのDNA、人工ビリオン、およびDNAの薬剤促進性取込みが含まれる。例えばSonitron 2000システム(Rich-Mar)を使用するソノポレーションも、核酸の送達のために使用され得る。追加の例示的な核酸送達系には、AmaxaBiosystems(Cologne、ドイツ)、Maxcyte,Inc.(Rockville、Maryland)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston、MA)およびCopernicus Therapeutics Inc.によって提供されるものが含まれる(例えばUS6008336を参照)。
【0109】
好ましい実施形態において、発現コンストラクトはAAVベクターである。随意のヌクレアーゼは、mRNAの形態で、または1つまたは複数のウイルスベクター(AAV、Adなど)を使用して、投与され得る。投与は任意の手段によることができ、そこでポリヌクレオチドは所望される標的細胞へ送達される。インビボおよびエクスビボの両方の方法が企図される。門脈への静脈注射は投与の好ましい方法である。他のインビボの投与モードには、例えば肝小葉もしくは胆管の中への直接注射およびに肝臓から遠位の静脈注射(肝動脈を介するものが含まれる)、肝実質の中への直接注射、肝動脈経由の注射、ならびに/または胆管系を介する逆行性注射が含まれる。エクスビボ投与モードには、切除された肝細胞または肝臓の他の細胞をインビトロで形質導入し、後続して、形質導入された切除肝細胞をヒト患者の門脈血管、肝実質または胆管系の中へ戻して点滴することが含まれる(例えばGrossman et al.,(1994)Nature Genetics,6:335-341を参照)。
【0110】
2つ以上のポリヌクレオチド(例えば本明細書において記載されるようなコンストラクトおよびポリヌクレオチドの形態でのヌクレアーゼ)の送達を包含する系において、2つ以上のポリヌクレオチドは、同じベクターおよび/または異なるベクターのうちの1つまたは複数を使用して送達される。例えば、ポリヌクレオチドの形態でのヌクレアーゼはmRNAの形態で送達され得、本明細書において記載されるような肝臓特異的コンストラクトは、他の形式(ウイルスベクター(例えばAAV)、ミニサークルDNA、プラスミドDNA、直線状DNA、リポソーム、ナノ粒子および同種のもの等)経由で送達され得る。
【0111】
薬学的に許容されるキャリアは、投与されている特定の組成によって、加えて、組成物の投与に使用される特定の方法によって、部分的に決定される。したがって、下で記載されるように、入手可能な医薬組成物の様々な好適な製剤がある(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences、17th ed.,1989を参照)。
【0112】
投与される発現カセット(および随意のヌクレアーゼ(複数可)、および/または修飾された細胞)の有効量は、患者間で変動するだろう。したがって、有効量は組成物(例えば細胞)を投与する医師によって最も良好に決定され、適切な投薬量は、当業者によって容易に決定され得る。治療用ポリペプチドの血清、血漿または他の組織内レベルの分析、および投与の前の初期のレベルへの比較は、投与されている量が低すぎるか、正しい範囲内か、または高すぎるかどうかを決定することができる。初期の投与および続いて行われる投与のために好適なレジームも変動するが、初期の投与によって代表され、必要であるならば続いて行われる投与が後続する。続いて行われる投与は、変動するインターバルで(毎日~毎年~数年毎の範囲で)投与され得る。当業者は、送達ベクターの免疫抑制による形質導入の阻害または遮断を避けるために、適切な免疫抑制性技法が推奨され得ることを認識するだろう(例えばVilquin et al.,(1995)Human Gene Ther.,6:1391-1401を参照)。
【0113】
エクスビボおよびインビボの投与のための製剤には、液体または乳化された液体中の懸濁物(例えば遺伝的に修飾された細胞、リポソームまたはナノ粒子の)が含まれる。活性成分は、多くの場合、薬学的に許容され活性成分と適合性のある賦形剤と混合される。好適な賦形剤には、例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールまたは同種のもの、およびその組み合わせが含まれる。加えて、組成物は、少量の補助物質(湿潤剤もしくは乳化剤、pHバッファー剤、安定化剤または医薬組成物の有効性を促進する他の試薬等)を含有し得る。
【0114】
適用
本明細書において開示される方法および組成物は、疾患において欠如もしくは欠損する産物を発現するか、またはそうでなければ疾患を治療もしくは防止する、導入遺伝子の供与による任意の疾患についての治療法の提供のためのものである。細胞はインビボで修飾され得るか、またはエクスビボで修飾され、続いて被験体へ投与され得る。したがって、方法および組成物はかかる遺伝性疾患の治療および/または予防を提供する。
【0115】
以下の実施例は本開示の例示的な実施形態を包含し、そこで、随意に使用されるヌクレアーゼはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む。これが例示のみの目的のためであり、他のヌクレアーゼ、例えばTALEN、CRISPR/Cas系、操作されたDNA結合ドメインを備えたホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)、および/または天然に存在するかもしくは操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)DNA結合ドメインと異種のホーミングエンドヌクレアーゼ切断ドメインの融合物、および/またはメガヌクレアーゼとTALEタンパク質の融合物が使用され得ることが認識されるだろう。加えて、他のベクター(AAV以外)上に本明細書において記載されるような発現コンストラクトを保有して、欠損タンパク質産生によって行われる障害の治療および/または予防において同じ結果を生ずることができることが認識されるだろう。
【実施例】
【0116】
実施例1:方法
DNAコンストラクト
ヒト第VIII因子cDNAを保有する例示的なコンストラクトの開発のために行われた全体構造およびアプローチを、
図1中で描写する。コンストラクトは、肝臓特異的エンハンサー、肝臓特異的プロモーター、随意のイントロン、インスレーター配列および導入遺伝子(例えばコドン至適化ヒト第VIII因子Bドメイン欠失導入遺伝子)、合成ポリアデニル化配列、スペーサーおよび5’/3’逆方向末端反復を含む。すべてのコンストラクトをルーチンの分子生物学クローニング法を使用してアセンブルした。
【0117】
図1中で示されるように、ベクター開発の間にいくつかのステップが後続した。製造の間に得られるウイルス収量に対するコンストラクト構成要素の効果を、最初に検討した。コンストラクト中のインスレーター領域の配列の影響を、以下に示されるような3つの異なる可能なインスレーター配列の使用によって調査した。Ins1:5’GGAACCATTGCCACCTTCA(配列番号:28)、Ins2:5’CTATCCATTGCACTATGCT(配列番号:29)、およびIns3:5’TTTCCTGTAACGATCGGG(配列番号:30)。次いでインスレーター領域を導入遺伝子発現カセットの中へ挿入し、そこで、5’ITR配列とエンハンサー/プロモーター配列の開始との間に使用されるインスレーターは、常にIns1であった。しかしながら、コンストラクトの3’末端で、Ins2配列またはIns3配列のいずれかを、SPA51合成ポリA配列(5’AATAAAATATCTTTATTTTCATTACATCTGTGTGTTGGTTTTTTGTGTGTT(配列番号:31))へ、以下のように連結した。Ins2-SPA51:5’ATAAAATATCTTTATTTTCATTACATCTGTGTGTTGGTTTTTTGTGTGTTCTATCCATTGCACTATGCT(配列番号:32)、およびIns3-SPA51:5’AATAAAATATCTTTATTTTCATTACATCTGTGTGTTGGTTTTTTGTGTGTTTTCCTGTAACGATCGGG(配列番号:33)。いくつかの実施形態において、Ins4をSPA51へ連結する。
【0118】
Ins配列バリアントを、SerpE-TTRm-MVMプロモーター領域がハイブリッド肝臓プロモーター(HLP、McIntosh et al、同書)により置き換えられた発現コンストラクト中でも使用した。これらのコンストラクトを
図2中で図示する。次いでこれらのコンストラクトをHEK293細胞を使用してAAV2/6粒子の中へパッケージングし、そこで、収量は2つの細胞工場からのものである(Yuan et al.,(2011)Hum Gene Ther.,22,613-624,2011)。修飾インスレーター配列を含有するコンストラクトについての収量(ベクターゲノム)は、親プロモーター領域を含むコンストラクトに対して、およそ3log高いことが見出され、そこで、その発現カセットは、5’末端および3’末端でのIns1インスレーター領域およびIns3インスレーター領域がそれぞれ隣接していた(
図3)。加えて、これらのインスレーター配列を、ステップ2において下で記載される、修飾されたCRMSBS1コンストラクトおよびCRMSBS2コンストラクトの中へも挿入し(
図19および20)、ウイルス収量について試験した(
図22)。このデータから、親コンストラクトに比較して、新しいコンストラクトについてのウイルス収量が8~10倍改善したことが示された。
【0119】
ステップ2において、点突然変異をセルピン1エンハンサー中に導入して、第1の2つの派生ベクターCRMSBS1およびCRMSBS2を生成した(
図4)。これらのベクターはそれらのエンハンサー配列で異なり、そこで、点突然変異は
図5中に示されるように導入される。行われた特異的な変化は以下の通りである。CRMSBS1については、
図5中に描写されるように1、2、3および4として表示される、以下の置換がそれぞれ行われた。1=GからA、2=CからG、3=TからC、および4=GからA。同様に、CRMSBS2については、位置1、3、4および5は以下のように修飾された。1=GからA、3=TからC、4=GからA、および5=CからT。
【0120】
ステップ3において、コンストラクトを作製して、ベクター中のイントロン配列を調査した。
図6および7中で示されるように、CRMSBS2ベクターおよびCRMSBS2ベクター中のイントロン配列を、MVMイントロンの除去によって修飾した(「CRMSBS1イントロンなし」、
図6、および「CRMSBS2イントロンなし」、
図7)。別のバリアントにおいて、T-キメライントロン配列を試験した(「CRMSBS1 T-キメライントロン」、
図6、および「CRMSBS2 T-キメライントロン」、
図7)。
【0121】
ステップ4については、スプライスのドナー部位およびアクセプター部位に向けた突然変異の導入を介して、MVMイントロンへの変化を行った。これらのベクターのマップは
図10中で示され、ここで、改変されたイントロンはSBRイントロン1~3と称される。MVMイントロンは、2つの可能なドナー部位およびそれらのドナーの2つの可能なアクセプター部位を有する(図示のために
図11を参照)。
図11中で、2つのドナー部位はD1およびD2と表示され、それらの対応するアクセプター部位はA1およびA2として示される。D1-A1およびD2-A2のスプライスによってなされたスプライス部位は、点線として遺伝子の上に示される。MVMイントロンの部分的配列を
図11中で遺伝子の下方に示し(配列番号:14)、イントロン性エンハンサー配列(IES)の所在位置(下線を引いた)に加えて、A1アクセプターおよびA2アクセプターの部位を指示する(Haut and Pintel,(1998)J Virol,72:1834-1843;Haut and Pintel,(1998)Virol J,258:84-94)。3つのイントロンを試験のために構築し、これらを
図10中で図示し、SBRイントロン1~3と表示する(配列番号:15~17中で示されるイントロン配列)。AAV F8 cDNAによって送達された発現hFVIIIの活性もインビトロで評価した。AAV2/6 F8 cDNA(CRMSBS2 SBRイントロン3)を、24ウェルディッシュ中の1E+05細胞あたり4.8E+06、2.4E+06、1.2E+06および0.6E+06のベクターゲノム/mLの用量で、HepG2細胞に加えた(時間t0日として表示される)。上清を、AAV2/6ウイルス添加後7日目(t7)に、ELISAによって分泌性hFVIIIレベル、ならびにAPTT凝血アッセイおよび発色活性アッセイによって活性について分析した(方法については以下を参照)。結果(
図21)から分泌性hFVIIIレベルと活性との間の良好な相関性が実証された。示されたデータは、n=6の生物学的重複測定である。エラーバーは重複測定の平均の標準誤差を表わす。
【0122】
次いでこれらのコンストラクトを下で記載されるようにインビボで試験した。
【0123】
定量的PCR
qRT-PCR(ヒト第VIII因子mRNAのレベルのための):製造者の指示によって、FastPrepおよびLysing Matrix D(MP Biomedicals、Santa Ana CA)を使用して、マウス組織を溶解した。製造者の指示(Qiagen、Carlsbad CA)によって、AllPrep DNA/RNAキットを使用して、RNA/DNAをマウス組織から単離した。次いで抽出されたRNAを使用し、Quantitect cDNA合成キット(Qiagen、Carlsbad CA)を使用してcDNAを作製した。次いでIDT(Coralville IA)からの標識プライマー/プローブアッセイを使用するBiorad CFX 96上でSsoAdvanced Universal Probes Supermix(Biorad、Hercules CA)を使用して、定量的PCRを実行した。マウスGAPDHアッセイはMm.PT.39a.1であった。ヒト第VIII因子mRNAの特異的な検出のために、プライマー/プローブアッセイはカスタムであり、フォワードプライマー(GGAGATGAAGAAGGAGGACTTTG)(配列番号:18)、プローブ(ACATCTACGACGAGGACGAGAACCA)(配列番号:19)およびリバースプライマー(TCCACAGCAGCAATGAAGTAG)(配列番号:20)であった。定量的qRT-PCR(絶対的でない)をGAPDHへ正規化して各々のサンプルについて使用し、最終データ解析を、1.0に設定した1つのマウスサンプルと比べて報告した。テンプレートなしの対照および逆転写酵素なしの対照をすべてのサンプルと共に実行し、それは検出可能なシグナルを産生しなかった。
【0124】
qPCR(ベクターゲノム(VG)分析のための):製造者の指示によって、FastPrepおよびLysing Matrix D(MP Biomedicals、Santa Ana CA)を使用して、マウス組織を溶解した。製造者の指示(Qiagen、Carlsbad CA)によって、AllPrep DNA/RNAキットを使用して、RNA/DNAをマウス組織から単離した。抽出したDNAを、AB 7300リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems、Foster City、CA)上で、TaqMan Fast Universal PCR Master Mix、No AmpErase UNG(Applied Biosystems、Foster City、CA)による定量的PCRのために使用した。ヒト第VIII因子の特異的な検出のために、プライマー/プローブアッセイはカスタムであり、フォワードプライマー(CCTGGGCCAGTTCCTGCT)(配列番号:21)、プローブ(TTCTGCCACATCAGCAGCCACCA)(配列番号:22)およびリバースプライマー(GGCCTCCATGCCATCATG)(配列番号:23)であった。テンプレートなしの対照をすべてのサンプルと共に実行し、それは検出可能なシグナルを産生しなかった。qPCR DNAスタンダードカーブを、7つの既知の量の精製した直線化ヒト第VIII因子プラスミドの4倍希釈のシリーズから生成した。
【0125】
qPCR(HepG2細胞を使用するNHEJによる標的化組み込みのための)。製造者の指示(Qiagen、Carlsbad CA)によって、QIAamp DNA microを使用して、DNAをヒトHepG2細胞から単離した。次いでIDT(Coralville IA)からの標識プライマー/プローブアッセイを使用するBiorad CFX 96上でSsoAdvanced Univesal Probes Supermix(Biorad、Hercules CA)を使用して、定量的PCRを実行した。ヒトGAPDHアッセイはHs.PT.39a.22214836であった。内在性ヒトアルブミン遺伝子座でのNHEJによるヒト第VIII因子の標的化組み込みの特異的な検出のために、プライマー/プローブアッセイはカスタムであり、フォワードプライマー(AGTGCAAAGTAACTTAGAGTGACT)(配列番号:24)、プローブ(CCATCACTAGGGGTTCCTGCGGCCT)(配列番号:25)およびリバースプライマー(CCTGAAGGTGGCAATGGT)(配列番号:26)であった。この研究の目的のために、定量的qPCR(絶対的でない)をGAPDHへ正規化して各々のサンプルについて使用し、最終データ解析を、1.0に設定した1つのサンプルと比べて報告した。テンプレートなしの対照、トランスクリプターゼなしの対照およびZFNなしの対照を実行し、それは検出可能なシグナルを産生しなかった。
【0126】
qPCR(マウス組織からのNHEJおよびHDRによる標的化組み込みのための)。製造者の指示によって、FastPrepおよびLysing Matrix D(MP
Biomedicals、Santa Ana CA)を使用して、マウス組織を溶解した。製造者の指示(Qiagen、Carlsbad CA)によって、AllPrep DNA/RNAキットを使用して、RNA/DNAをマウス組織から単離した。次いでIDT(Coralville IA)からの標識プライマー/プローブアッセイを使用するBiorad CFX 96上でSsoAdvanced Universal Probes Supermix(Biorad、Hercules CA)を使用して、定量的PCRを実行した。マウスGAPDHアッセイはMm.PT.39a.1であった。内在性マウスアルブミン遺伝子座でのNHEJによるヒト因子8 cDNAの標的化組み込みの特異的な検出のために、プライマー/プローブアッセイはカスタムであり、フォワードプライマー(GTGTAGCAGAGAGGAACCATT、配列番号:39)、プローブ(CCATCACTAGGGGTTCCTGCGGCCT、配列番号:40)およびリバースプライマー(GTTAATATTCACCAGCAGCCT、配列番号:41)であった。内在性マウスアルブミン遺伝子座でのNHEJによるZFNの標的化組み込みの特異的な検出のために、プライマー/プローブアッセイはカスタムであり、フォワードプライマー(AGTGTAGCAGAGAGGAACCA、配列番号:42)、プローブ(CCATCACTAGGGGTTCCTGCGGCCT、配列番号:43)およびリバースプライマー(CAGGGTGAGCCCAGAAAC、配列番号:44)であった。内在性マウスアルブミン遺伝子座でのHDRによるヒト因子8の標的化組み込みの特異的な検出のために、プライマー/プローブアッセイはカスタムであり、フォワードプライマー(AACTTTGAGTGTAGCAGAGAGG、配列番号:45)、プローブ(TACCGGAGGAGCAAACAGGGACTA、配列番号:46)およびリバースプライマー(CTCTACGAAATGTGCAGACAGA、配列番号:47)であった。この研究の目的のために、定量的qPCR(絶対的でない)を使用し、最終データ解析を、1.0に設定した1つのサンプルと比べて報告した。テンプレートなしの対照、トランスクリプターゼなしの対照およびZFNなしの対照を実行し、それは検出可能なシグナルを産生しなかった。
【0127】
インデル(挿入および欠失)。製造者の指示によって、FastPrepおよびLysing Matrix D(MP Biomedicals、Santa Ana CA)を使用して、マウス組織を溶解した。製造者の指示(Qiagen、Carlsbad
CA)によって、AllPrep DNA/RNAキットを使用して、RNA/DNAをマウス組織から単離した。抽出したDNAをPCRおよびディープシーケンシングのために使用して、マウスアルブミン遺伝子座でインデルを測定した。
【0128】
血漿。C57BL/6研究について、7、14および21日目(非終了時)および28日目または指摘されるようにより長期(終了時)で、すべてのマウスから血液を収集した。血友病Aマウス研究について、8、14、21、28、35および42日目(非終了時)で、すべてのマウスから血液を収集した。すべての血液をクエン酸ナトリウムを含有するチューブの中へ収集し、血漿へとプロセシングした。非終了時の血液収集は顎下静脈または眼窩後方の副鼻腔経由で収集した。屠殺時での血液収集は心臓穿刺または大静脈経由で収集した。血漿を分離し、下で記載されるELISAアッセイまたはChromogenix Coamatic活性アッセイにおける使用まで-60~-80℃で保管した。
【0129】
肝臓。C57BL/6研究について、28日目でマウスを屠殺し、肝臓、脾臓、精巣、脳、心臓、肺および腎臓を収集し、秤量した。肝臓の左側葉を分離し3片へと分割し、肝臓の残りから分けて液体窒素中で急冷凍結した。残りの肝葉および他の組織(丸のまま)を液体窒素中で急冷凍結した。RNA/DNA抽出のためにプロセシングするまで、凍結試料を-60~-80℃で保管した。
【0130】
インビトロの研究(HepG2 AAV F8 cDNA/ZFN)。ヒトHepG2肝細胞を製造者のガイドライン(ATCC、Manassas VA)によって維持した。実験の日に、HepG2細胞を洗浄し、トリプシン処理し、カウントした。使用されるZFNは、ヒトアルブミンイントロン遺伝子座(左SBS47171および右SBS47898)へのものであった。ZFNを、hF8 cDNA(CRMSBS2イントロンなし)と一緒に、AAV2/6として送達した(時間ゼロとして表示される)。24ウェルディッシュの1ウェルあたり1E+05細胞について、AAV2/6 ZFNを3.0E+05で、ならびにAAV2/6 hFVIII cDNA CRMSBS2イントロンなしを、3.0E+04、6.0E+04および1.2E+05で、送達した。翌日培地を交換した。上清を、AAV2/6ウイルス添加後のタイムポイントt3、t5およびt7日目に、下で記載されるhFVIII ELISAを使用して、分泌性hFVIIIについて分析した。
【0131】
インビトロの研究(HepG2 AAV F8 cDNA)。ヒトHepG2肝細胞を製造者のガイドライン(ATCC、Manassas VA)によって維持した。実験の日に、HepG2細胞を洗浄し、トリプシン処理し、カウントした。AAV2/6 hF8 cDNA(CRMSBS2 SBRイントロン3)を、24ウェルディッシュのウェル中の1E+05細胞あたり6.0E+06、1.2E+06、2.4E+06および4.8E+06のウイルスゲノムの用量で、送達した。培地をタイムポイントt3(t=日)で交換した。AAV 2/6ウイルス添加後のタイムポイントt5およびt7での上清を、Affinity BiologicsからのhFVIII ELISAを使用して分泌性hFVIIIレベルについて、ならびに下で記載される発色アッセイおよび凝血アッセイによってhFVIII活性について、分析した。
【0132】
ヒト第VIII因子ELISA。Affinity Biologics hFVIII ELISA(マウスおよびHepG2細胞)。分泌性ヒト第VIII因子レベルを、ヒト第VIII因子スタンダードを例外として製造のプロトコルに従ってAffinity Biologicals(カナダ)ELISAキット(FVIII-AG)を使用して決定した。ELISAアッセイにおいて使用されるヒト第VIII因子スタンダードは、US Biologicals(Salem、MA)からの組換え精製ヒト第VIII因子(#F0016-06)であった。簡潔には、マウス血漿をプレートへ添加し、室温で振動させながら1.5時間インキュベーションし、後続してキット中で提供される洗浄バッファーにより3回洗浄した。検出抗体(キットにより提供される)を添加し室温で45分間インキュベーションし、後続してキット中で提供される洗浄バッファーにより3回洗浄した。キットにより提供されるTMB基質を添加し、10分間顕色させた。反応を停止溶液により停止し、プレートリーダーを使用して、吸光度を450nMで読み取った。
【0133】
インハウスのhFVIII ELISA(カニクイザル)。NHPの血漿の中へ分泌されたhFVIIIのレベルをカスタムELISAを使用して決定した。ポリスチレンマイクロプレート(Corning、96ウェル、ハーフエリア、高結合)を、0.2Mの炭酸-重炭酸塩バッファー(pH9.4)(Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)中のマウスモノクローナル抗hFVIII抗体(Green Mountain、Burlington、VT)により4℃で一晩コーティングした。翌日、プレートを、1×TBST(Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)を使用して4回洗浄した。次いで96ウェルプレートを、3%のBSA/TBSブロッキングバッファーを使用して室温で2時間ブロッキングし、後続して1×TBSTにより4回洗浄した。血漿をプレートへ添加し、室温で振動させながら2時間インキュベーションし、後続して1×TBSTにより4回洗浄した。検出抗体(ビオチン化モノクローナルマウス抗FVIII抗体(Green Mountain、Burlington、VT))を添加し、室温で1時間インキュベーションし、後続して1×TBSTにより4回洗浄した。ストレプトアビジンHRP(Jackson ImmunoResearch、West Grove PA)を添加し、室温で1時間インキュベーションし、後続して1×TBSTにより4回洗浄した。TMB Ultra(Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)を添加し、10分間顕色させ、反応を停止溶液により停止し、プレートリーダーを使用して、吸光度を450nMで読み取った。バックグラウンド吸光度読み取りは無視できた(典型的には0)。
【0134】
発色によるヒト第VIII因子活性アッセイ。血漿中の分泌性ヒト第VIII因子の活性を、ヒト第VIII因子スタンダードを例外として製造のプロトコルに従ってDiapharma Chromogenic Coamatic Factor VIII assay(West Chester(OH))を使用して決定した。ELISAアッセイにおいて使用されるヒト第VIII因子スタンダードは、US Biologicals(Salem、MA)からの組換え精製ヒト第VIII因子(#F0016-06)であった。
【0135】
凝血活性アッセイ。HepG2上清(またはカニクイザル血漿)中の分泌性ヒト第VIII因子の活性を、ヒト第VIII因子スタンダードおよびヒト第VIII因子欠損血漿を例外として製造のプロトコルに従ってDiagnostica Stago(Boston MA)による活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイを使用して決定した。ヒト第VIII因子スタンダードは、ELISAアッセイにおいて使用されるものと同じであった(組換え精製ヒト第VIII因子、US Biologicals、Salem、MAからの#F0016-06)。凝血アッセイにおいて使用されるFVIII欠損試薬は、Haematologic Technologies,Inc.(Essex Junction、VT)からのVIII-CD <1% FVIII Activity(凍結FVIII欠損)であった。簡潔には、スタンダードまたはサンプルを鋼球を含有するキュベットへ添加した。キットにより提供されるFVIII-CD <1% FVIII ActivityおよびPTT Automateを添加し、37℃で180秒間インキュベーションした。鋼球をキュベット内で動かしながら、キットにより提供されたSTA CaCl2を反応へ添加した。凝血時間は、STA CaCl2の添加から鋼球の動きが止まるまでを測定した。Stago Start Hemostasis Analyzerをこのアッセイのために使用して、インキュベーションおよび時間の記録を行った。
【0136】
実施例2:インビボの研究
野生型マウス:8~10週齢のC57BL/6マウスをインビボの研究のために使用した。本研究は、動物の人道的なケアおよび使用のために動物福祉法を遵守した。試験品(コンストラクトを含有するAAVウイルス)を投薬の前に室温で融解し、すべての動物に単一の200μLの静脈内(IV)注射を与えた。以下の表1は、
図8中のインビボで研究されるコンストラクトの試験のための研究デザインを示す(
図4、6および7中でマップが示される)。表2は、
図15中で略述されるコンストラクトの試験のための研究デザインを示す。用量は1マウスあたり1.8E+11vgであり、それはおよそ7E+12vg/kgであった。すべての動物に、0および14日目で200μLのシクロホスファミドのフォローアップの腹腔内注射を与えた。表1および2中で略述されるように、非終了時および終了時の血液収集を行った。
【表1】
【表2】
【0137】
7、14および21日目(非終了時)および28日目(終了時)で、すべてのマウスから血液を収集した。すべての血液をクエン酸ナトリウムを含有するチューブの中へ収集し、血漿へとプロセシングした。非終了時の血液収集は顎下静脈または眼窩後方の副鼻腔経由で収集した。屠殺時での血液収集は心臓穿刺または大静脈経由で収集した。血漿を分離し、下で記載されるELISAアッセイにおける使用まで-60~-80℃で保管した。
【0138】
28日目ですべての動物を屠殺し、肝臓、脾臓、精巣、脳、心臓、肺および腎臓を収集し、秤量した。肝臓の左側葉を分離し3片へと分割し、肝臓の残りから分けて液体窒素中で急冷凍結した。残りの肝葉および他の組織(丸のまま)を液体窒素中で急冷凍結した。RNA/DNA抽出のためにプロセシングするまで、凍結試料を-60~-80℃で保管した。
【0139】
図8および15中で示されるように、試験されたすべてのコンストラクトは、投与後7日目(
図8Aおよび
図15A)および28日目(
図8Bおよび
図15B)で、インビボの導入遺伝子(ヒト分泌性第VIII因子Bドメイン欠失)のインビボの産生をもたらした。さらに、
図9および16中で示されるように、導入遺伝子は肝臓においてのみ発現し、他の組織は発現せず(
図9Aおよび16A)、AAVベクターは主として肝細胞を形質導入する(
図9Bおよび16B中で示されるようなベクターゲノムの生体内分布分析)。これらのデータセットにおいて、ヒト第VIII因子-BDD(hFVIII-BDD)mRNAを、表1中で表わされる研究において、組織(脳、心臓、腎臓、肺、肝臓、脾臓、精巣)から上で記載されるような実施例1におけるqRT-PCRによって分析した。加えて、ベクターゲノム分布を、qPCRによってこれらの同じ組織において分析し(実施例1を参照)、結果を
図9B/16B中で示す。これらのデータから、AAV2/6ベクターが主として肝臓を形質導入することが実証される。
【0140】
イントロン修飾の有効性を検討するようにデザインされたコンストラクトを、表2中で略述された研究において同様にインビボで試験し、7日目についておよびピークレベルでのデータを
図15中で示す。hFVIII-BDD mRNA(
図16A)も、ベクターゲノム分布(
図16B)も同様に分析し、hF8 mRNA発現が肝臓に特異的であり、AAV2/6が主として肝臓を形質導入することが示された。
【0141】
したがって、本明細書において記載されるコンストラクトは、肝臓の送達に後続して着実な導入遺伝子発現を提供する。
【0142】
インビボで観察されるhFVIII-BDDのレベルが使用されているAAVの血清型へ感受性があるかどうかを、追加の研究を実行して試験した。オスC57BL/6マウスに、6E+10vg/マウス(約2E+12vg/kg)または1.8E+11vg/マウス(約7E+12vg/kg)のAAV2/5、AAV2/6、AAV2/8またはAAV2/9のF8親cDNAを静脈注射した。6E+10vg/マウス(約2E+12vg/kg)での血清型AAV2/6(マウス肝臓の形質導入で非効率的であることが既知)により形質導入したマウスで、ヒトにおいて正常なhFVIII血漿レベルの91.9%±15.5標準誤差(n=6)の平均ピーク値が達成された。約7E+12vg/kgを表わすより高い用量で、6つの独立したインビボのマウス研究にわたって169.2%±10.1標準誤差(n=36)のhFVIII血漿の平均ピーク値が達成された。AAV2/8についての平均ピークレベルは、2E+12vg/kgで320%であり、6E+12vg/kgで323.6%であった。2E+12vg/kgでのAAV2/9については、平均ピークレベルは389.6%であった(AAV2/5およびAAV2/6を使用する結果も示す、
図23を参照)。
【0143】
研究を遂行して、AAVを生成するのに使用される産生方法が、インビボで達成されるhFVIII-BDD発現に対する影響を有するかどうかを決定した。オスC57BL/6マウスに、HEK293細胞またはSf9/rBV(組み換えバキュロウイルス)のいずれかから産生された1.8E+11vg/マウス(約7E+12vg/kg)のAAV2/6 F8親cDNAによる親F8親cDNAを静脈注射(尾静脈)経由で投与した。HEK293細胞からのF8親cDNAによる治療は、正常ヒトFVIII血漿レベルの142.1%±8.3%標準誤差(n=8)(hFVIII ELISAによって測定された)の平均ピーク値を達成した。同レベルの132.8%±18.6%標準誤差(n=5)(hFVIII ELISAによって測定された)が、F8親cDNA(Sf9/rBV)のマウスへの投与に後続して達成された(
図24)。
【0144】
F8 CRMSBS2 SBRイントロン3 cDNAとの比較の目的のために、研究を反復した(
図10を参照)。オスC57BL/6マウスに、1.8E+11vg/マウス(約6E+12vg/kg)のAAV2/6 CRMSBS2 SBRイントロン3 cDNAを静脈注射した(n=8)。hFVIII ELISAによって測定されるように、C57BL/6マウスの血漿中のhFVIIIの平均ピークレベルが示される(
図25)。
【0145】
血友病Aマウス:コンストラクトを血友病AのR593Aマウスモデルにおいても試験した(Bril et al(2006)Thromb Haemost 95(2):341-7;Chavez et al.,(2012)Hum Gen Ther.,23(4):390)。これらのマウスは内在性マウスF8遺伝子のノックアウトを保有する。加えて、これらのマウスは、マウスアルブミンプロモーターの制御下で突然変異体ヒトFVIII-R593C導入遺伝子を保有し、その結果、検出不可能な量の突然変異体ヒトタンパク質を発現するが、微量の産生された突然変異体FVIII R593Aタンパク質があるのでヒトFVIII発現へ寛容であると考えられる。もとの系統はFVBであったが、Jackson Laboratoryで少なくとも5世代の間C57BL/6マウスへ戻し交配された。本研究は、動物の人道的なケアおよび使用のために動物福祉法を遵守した。試験品を投薬の前に室温で融解し、すべての動物に単一の200μLの静脈内(IV)注射を与えた。用量は1マウスあたり1.8E+11vgであり、それはおよそ7E+12vg/kgであった。研究デザインを表3中で以下に示す。
【表3】
【0146】
研究を3か月の間実行し、3か月の研究の代表的な結果が示され、14日目および42日目での両方の結果(
図17)から、FVIII-BDD導入遺伝子は、14日目(
図17A)および42日目(
図17B)の両方で、正常ヒト血漿中で見出されるFVIIIタンパク質のレベルの>300%のレベルで発現されたことが示される。
【0147】
マウス血友病AモデルにおいてhFVIIIの機能性および治療有効性を試験するために、尾静脈切断(transection)(TVT)モデルを使用した。簡潔には、最初にイソフルランによりマウスに麻酔をかけ、研究継続時間の間、麻酔マスク経由で麻酔を維持した。麻酔導入の直後に、マウスを、胃とヒーティングパッドとの間の温度センサーと共にヒーティングパッド(37℃へ設定された)上に置き、頭部が適切に麻酔マスク中に位置することを保証する。マーカーブロックを測定のために使用して、尾を、正確に直径2.5mmへ対応する「12時」でマーカーペンによりマークし、その後、尾を食塩水収集チューブ(37℃食塩水)の中へ沈めた。出血の誘導前に尾を合計10分間体温にした食塩水(temperature saline)中に沈めた。次いで尾を、切断が行われるおよそ10秒前に、マークが「13」から「15時」を指すように切断ブロック中に置いた(左外側尾静脈の切断(transection)を促進するために)。正確にt=0分で、マウス尾の左側上の外側に位置する1mmの深さの切断で切断し、それによって外側尾静脈を切断(transect)した。直後に、尾をあらかじめ温めた食塩水収集チューブ中に沈めた。一次出血エピソードを3分間記録した。一次出血が3分間を超える時間だったならば、動物を安楽死させ、置き換えた。傷の3分後に、収集チューブを、新しいあらかじめ温められた食塩水収集チューブと交換した。すべての二次出血エピソードを、追加の57分間記録した。出血が15、30または45分に中止したならば、食塩水で湿らせられたガーゼスワブにより創傷を穏やかに2回拭うというチャレンジを行った。このチャレンジ直後に、尾を食塩水の中に再び沈めた。t=60分で、依然として完全麻酔下である間に、マウスを安楽死させた。出血時間は、一次時間および二次出血時間の合計として報告した。一次出血および二次出血を溶解し、後の失血量についてのヘモグロビン測定のために保管した(Johansen et al.,Haemophilia,(2016)doi:10.1111/hae.12907)。
【0148】
結果から、尾静脈切断(transection)後の血友病AのR593Cマウスにおける止血を達成する時間の量の有意な低減(p<0.0001)が実証され(
図18)、これらのマウスにおける治療有効性が実証される。
【0149】
非ヒト霊長動物:hFVIII-BDD cDNAコンストラクトを使用してNHPにおいて実験を実行し、そこで、AAV2/6血清型およびAAV2/8血清型を評価した。以下の表4および
図26Bは、投薬群の識別を示す。デザインされたF8導入遺伝子発現カセットの「cDNA 1」(以下の表4の群2-4)と「cDNA 2」(以下の表4の群5)との間の差は、「cDNA 2」ドナーがわずかに異なるプロモーターモジュール(ハイブリッド肝臓プロモーター、McIntosh et al(2013)Blood 121(17):3335を参照)を有していたということであるが、F8-BDD導入遺伝子発現カセット(コーディング領域が含まれる)の残りは同じであった。これらの実験のために、
図26A中で略述される投薬レジメンを使用した(そこでは、リツキシマブを試験品の前に投与し、ステロイドを試験品と同時に投与し、その後は毎日投与した)。
【表4】
【0150】
カニクイザルに、製剤バッファーまたは6E+12vg/kgのAAV2/6 hF8
cDNA(親)を投与した。試験品添加後14日目で、hFVIIIの循環レベルおよび活性をELISAまたは凝血活性によって分析した(
図27を参照)。カニクイザルFVIIIの正常レベルは、凝血活性アッセイがヒトFVIIIについて特異的でないので、製剤対照群についての凝血活性データにおいて反映される、約1U/mLである。ELISAはカニクイザルFVIIIよりもヒトFVIIIについて特異的であり、したがって、予想通りに、製剤対照群においてELISAによって測定されるようなhFVIIIレベルはない。製剤対照群(群1、動物識別1101~1102)および6E+12vg/kg用量群(群3、動物識別3101~3103)についての個別の動物を示す。群3の動物において、8U/mLを越える循環hFVIIIの超生理学的なレベルおよび活性がある。
【0151】
治療後の肝臓状態の指標として、肝酵素を、製剤対照群(群1、動物識別1101)および6E+12vg/kg用量群(群3、動物識別3102)について測定した。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)を測定した。カニクイザルについて許容される上限参照値は、ALTについて126U/Lであり、ASTについて120U/Lである。製剤対照群および6E+12vg/kgのAAV hF8 cDNA(親)群の両方について、ALT/ASTレベルは後肝生検後(肝生検は41日目であった)に上昇し、星印によって表示された。それ以外は、AAV hF8 cDNAは研究の全体にわたって(247日)良好な忍容性を示した(
図28Aおよび28Bを参照)。
【0152】
図29中で提示されるデータは、グラフ上で描写される各々のサルについてのデータセットであった。データから、AAV6血清型のバックグラウンドにおいて、試験品のより高い用量(
図29Aを
図29Bと比較して)により、正常ヒト血漿中で見出されるレベルのおよそ10×のFVIII-BDDの発現が生じたことが指摘される。AAV2/8血清型における試験品についてのデータからFVIII活性の増加が示されたが、AAV2/6について観察されたものと同じ程度ではなかった。
【0153】
上で記載される最初の14日の期間に続いて、AAV-FVIII-BDDの単一用量後の247日目まで、実験を継続した。ステロイドの共投薬は103日目で停止した。サルの血漿中のhFVIII-BDDレベルの決定は、以下のようにカスタムELISAを使用して決定した。96ウェルハーフエリアHB(高結合)ポリスチレンマイクロプレート(Corning)を、0.2Mの炭酸-重炭酸塩バッファー(pH9.4)(Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)中のマウスモノクローナル抗hFVIII抗体(Green Mountain、Burlington、VT)により4℃で一晩コーティングした。翌日、プレートを、1×TBST(Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)を使用して4回洗浄した。次いで96ウェルプレートを、3%のBSA/TBSブロッキングバッファーを使用して室温で2時間ブロッキングし、後続して1×TBSTにより4回洗浄した。血漿をプレートへ添加し、室温で振動させながら2時間インキュベーションし、後続して1×TBSTにより4回洗浄した。検出抗体(ビオチン化モノクローナルマウス抗FVIII抗体(Green Mountain、Burlington、VT))を添加し、室温で1時間インキュベーションし、後続して1×TBSTにより4回洗浄した。ストレプトアビジンHRP(Jackson ImmunoResearch、West Grove PA)を添加し、室温で1時間インキュベーションし、後続して1×TBSTにより4回洗浄した。TMB Ultra(Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)を添加し、10分間顕色させ、反応を停止溶液により停止し、プレートリーダーを使用して、吸光度を450nMで読み取った。バックグラウンド吸光度読み取りは無視できた(典型的には0)。阻害性抗FVIII抗体の存在はベセスダアッセイを使用して決定した(例えばKasper et al(1975)Thromb Diath Haemorrh 34:869-72を参照)。ELISAアッセイを使用して、研究にわたってピークヒトFVIII抗原レベルを評価した。2E+12vg/kgの用量レベルで(n=3)、ヒトにおける正常hFVIII血漿レベルの111.0%、493.9%および840.0%(全体の平均481.6%、hFVIII ELISAによって測定されるように)のピーク値が達成された。6E+12vg/kgを表わすより高い用量で(n=3)、450.0%、625.6%および886.7%[全体の平均654.1%]のhFVIII血漿レベルのピーク値が達成された(
図30)。
【0154】
表4中で略述される研究を実行し、FVIII-BDDのレベルおよび任意の阻害性抗FVIII抗体を測定した。2E+12vg/kgで投薬された低用量動物(n=3)(AAV2/6中でFVIII-BDD cDNAを含む)については、着実なhFVIII抗原レベル(Ag)の検出に後続して、hFVIII-BDDレベルは減少し、それに付随してベセスダ単位(BU)は増加した。BUは経時的に減少し、hFVIII Agは増加した(
図31)。結果から、免疫抑制療法の中断に後続して、ヒトFVIII抗原のレベル(ELISAによって測定されるように)が低下したことが実証された。
【0155】
6E+12vg/kgで投薬された高用量の動物(n=3)(AAV2/6中でFVIII-BDD cDNAを含む)については、類似のパターンが観察された(
図32を参照)。しかしながら1匹の動物(3101)において、ソル-メドロールの除去に後続して、検出可能で持続的なレベルのFVIII抗原(正常なhFVIIIレベルの200%を表わす)にもかかわらず、抗FVIIIの抗体は検出されず、それはヒトFVIII抗原への動物の寛容を暗示し得る。
【0156】
血清型AAV2/8が高用量の送達のために使用された場合に、血漿中の検出可能なhFVIII抗原の量がAAV2/6ベクターを使用して測定されたよりも少なかったという点を除いて、類似の結果が観察された(
図33)。同様に、異なるFVIII-BDD
cDNAプロモーターモジュールがAAV2/8ベクター中で試験された(群5、上で記載される)場合に、hFVIII-BDD血漿レベルは群4中で観察されたものに類似していた(
図34)。しかしながら、上記のように、ソル-メドロールの除去に後続して、著しい抗体応答なしにFVIII-BDD発現の検出可能な量を維持した2個体(5101および5102)および群4中の1個体(4103、
図33D)が存在し、この場合もやはり実験の初期の日において観察された着実な応答レベルに後続する抗原への寛容化が示唆される。
【0157】
図34D中で示されるように、メチルプレドニゾロンの除去後に、hFVIII-BDDレベルが、およそ0.1U/mL(正常なhFVIIIレベルの10%を表わす)で8週間安定的なままであったので、動物番号5101はhFVIII-BDDへ寛容化されているように思われた。また、
図34E中で示されるように、メチルプレドニゾロンの除去後に、hFVIII-BDDレベルが、およそ0.6U/mL(正常なhFVIIIレベルの60%を表わす)で8週間安定的なままであったので、動物番号5102はhFVIII-BDDへ寛容化されているように思われた。ヒト血漿中のhFVIIIの正常値はおよそ1U/mLまたは200ng/mLであること、および正常の1%~5%(>0.001U/mL)の発現でさえ治療有効性を有し得ることを指摘する価値はある(Llung,RC(1999)Thromb Haemost 82(2):525-530)。
【0158】
異なる免疫抑制レジームを調査したという点を除いて、NHPにおける実験も上で記載されるように遂行した。これらの実験について、
図26B中で示される投薬レジメンに従い、いくつかの群(1~5)は試験品投薬の前に投与される免疫抑制療法を受けた一方で、他の群(6~8)は試験品投薬の後に免疫抑制を受けた。
【0159】
図38中で示されるように、6E+11vg/kgの用量レベル(n=3、群3)で、ヒトにおける正常hFVIII血漿レベルの5.7%である、ピーク値の全体の平均(hFVIII ELISAによって測定される)が、達成された。2E+12vg/kgを表わすより高い用量(n=3、群4)で、ピーク値の全体の平均は56.5%であり、および6E+12vg/kg(n=3、群5)で、hFVIII血漿レベルの229.0%である、ピーク値の全体の平均(hFVIII ELISAによって測定される)が、達成された。用量レベル2E+12vg/kg(n=3、群7)で、ピーク値の全体の平均は87.9%であり、6E+12vg/kg(n=3、群8)について、101.7%であった。群1および6は、製剤として表示された製剤対照群であった。加えて、
図39中で示されるように、同じ血清型を使用する再投薬は、検出可能な循環ヒトFVIII抗原レベルをもたらした。これらの結果から、免疫抑制による動物の前治療が最大の治療用タンパク質発現のために有用であり得ることが指摘される。加えて、前治療は、中和抗体が第1の用量の間に発生しなかった場合に、再投薬を可能にする。
図39は、投薬されたFVIII-BDD cDNAの範囲の変動に応答したhFVIII発現の治療動物における用量応答も実証する。血漿中の1~5%のFVIIIタンパク質の存在でさえヒトにおいて有意な治療有効性を有すると考えられるので、E11範囲(この実験において正常値の5.7~12.0パーセントをもたらす)中の臨床用量は、有意な治療利益を提供するだろう。したがって、データから、本明細書において記載されるコンストラクトが治療レベルの導入遺伝子産生をインビボでもたらすことが実証される。
【0160】
実施例3:ヌクレアーゼ媒介性標的化組み込み
実施例1および2において記載されるコンストラクトを、アルブミン遺伝子座の中への発現コンストラクトの標的化組み込みのために、アルブミン特異的ヌクレアーゼと組み合わせて使用した場合の発現についても評価した。特に、コンストラクトをアルブミン特異的ジンクフィンガーヌクレアーゼ共にHepG2細胞へ投与した。例えば米国特許第9,150,847号;同第9,255,250号ならびに米国特許公報第20130177983号;同第20150159172号;同第20150056705号および同第20150166618号を参照されたい。
【0161】
ヒトHepG2肝細胞を製造者のガイドライン(ATCC、Manassas VA)によって維持した。実験の日に、HepG2細胞を洗浄し、トリプシン処理し、カウントした。ヒトアルブミンイントロン遺伝子座へ使用されるZFNを、ヒト第VIII因子-BDD(hFVIII)cDNA CRMSBS2イントロンなしと一緒に、AAV2/6として送達した(時間ゼロとして表示される)。24ウェルディッシュの1ウェルあたり1E+05細胞について、AAV2/6 ZFNを3.0E+05で、ならびにAAV2/6 hFVIII cDNA CRMSBS2イントロンなしを、3.0E+04、6.0E+04および1.2E+05で、送達した。したがって、発現コンストラクトを、3.0E+05のZFNと一緒に、3.0E+04、6.0E+04および1.2E+05の増加用量で投与した。対照サンプルには、CRMSGS2 SBRイントロン3導入遺伝子単独もしくはGFPと共に、ZFN単独、またはGFP単独の投与が含まれていた。翌日培地を交換した。上清を、AAV2/6ウイルス添加後19日目に、下で記載されるhFVIII ELISAを使用して、分泌性hFVIIIについて分析した。
【0162】
分泌性ヒト第VIII因子-BDDレベルを、ヒト第VIII因子スタンダードを例外として製造のプロトコルに従ってAffinity Biologicals(カナダ)ELISAキット(FVIII-AG)を使用して決定した。ELISAアッセイにおいて使用されるヒト第VIII因子スタンダードは、US Biologicals(Salem、MA)からの組換え精製ヒト第VIII因子(#F0016-06)である。簡潔には、HepG2上清をプレートへ添加し、室温で振動させながら1.5時間インキュベーションし、後続してキット中で提供される洗浄バッファーにより3回洗浄した。検出抗体(キットにより提供される)を添加し室温で45分間インキュベーションし、後続してキット中で提供される洗浄バッファーにより3回洗浄した。キットにより提供されるTMB基質を添加し、10分間顕色させた。反応を停止溶液により停止し、プレートリーダーを使用して、吸光度を450nMで読み取った。
【0163】
アルブミン標的化ZFN(SBS#47171/47898、PCT特許公報WO2015/089077を参照)の投与に後続して、HepG2細胞上清中のhFVIII-BDDタンパク質の合計レベルを経時的に(t=日)検出し、指示されたコンストラクトを分析した(
図36)。FVIII BDD発現コンストラクトおよびZFNの両方の存在下において、分泌性FVIII BDDは、FVIII BDD導入遺伝子の最高用量での治療の3日後に上清中で検出され、次いで5日目でより低い用量で検出可能であり、7日目ですべてのレベルで検出可能であった。ZFNの非存在下において、上清中のFVIII BDDは、7日目でアッセイのバックグラウンドを超えてかろうじて検出可能であった。示されたデータは、n=3の生物学的重複測定である。エラーバーは技術的重複測定の平均の標準誤差を表わす。点線はhFVIII ELISAの検出限界を表わす。分泌性hFVIII-BDDは、ZFNの非存在下において弱く検出されたのみであり、これは、エピソームのhFVIII-BDDが、そのエピソームからの十分な量の検出可能な分泌性hFVIII-BDDが蓄積する前に、希釈または分解される可能性が高いからである。
【0164】
さらに、定量的PCR(内在性ヒトアルブミン遺伝子座内に所在する5’プライマーおよびhFVIII-BDDカセットのITR内に所在するプローブおよびhFVIII-BDD内の3’プライマーを使用する)によって決定されるように、指示されたコンストラクトの標的化組み込み(NHEJによって)はアルブミン特異的ZFNの存在下においてのみ達成された(
図37)。したがって、これらのデータから、hFVIII-BDDカセットの成功した組み込みおよびコードされたF8タンパク質の発現が実証される。
【0165】
アルブミン特異的ZFNの別のセット(SBS#42906/43043、PCT特許公報WO2015/089046を参照)を試験して、これらの実験を反復した。結果(
図40Aおよび40B)から、これらの細胞の上清中のFVIIIタンパク質の発現および導入遺伝子の標的化組み込みが示される。
【0166】
本質的に実施例1および2において記載されるように、続いてアルブミン特異的ZFNおよびコンストラクトを動物へインビボで送達する。コンストラクトは内在性アルブミン遺伝子座の中へ組み込まれ、導入遺伝子を発現する。
【0167】
インビボの研究のための実験デザインを表5中で以下に示す。簡潔には、F1世代オスC57BL/6仔マウスをインビボの研究のために使用した(試験品は表5中で表示される)。研究において使用されるZFNはSBS#48641およびSBS#31523であった(米国特許公報2014-0017212を参照)。本研究は、動物の人道的なケアおよび使用のために動物福祉法を遵守した。試験品を投薬の前に室温で融解し、以下で略述されるようにすべての動物に単一の100μLの皮下注射を与えた。ZFN用量は1マウスあたり1.5E+11vgであり、F8 cDNA用量は1マウスあたり1.5E+11vgであった。7、14、21および28日目の各々で1群あたり2または3匹の仔から血液を収集し、その後安楽死させ、血漿中のhFVIIIの循環レベルの分析のために血漿へと加工し、インハウスのhFVIII ELISAをマウスのために使用した。ディープシーケンシング(インデル、挿入および欠失)による遺伝子修飾のレベルの分析、RT-PCRによるmRNAの分析、qPCRを使用するベクターゲノム分析、およびqPCRを使用する標的化組み込み分析のために、すべてのマウスから組織を収集した。
【表5】
【0168】
血漿中で検出されるF8のレベルに加えて、FVIII-BDD導入遺伝子の標的化組み込みの量を表6中で以下で提示する。
【表6】
【0169】
したがって、FVIIIは、アルブミン特異的ヌクレアーゼおよびFVIII-BDD導入遺伝子の投与後に、マウス仔において検出可能であった。導入遺伝子の挿入も、ZFNおよび導入遺伝子の両方により治療されたマウス中でより高い量で検出可能であった。
【0170】
したがって、本明細書において記載されるコンストラクトのヌクレアーゼ媒介性標的化組み込みは、肝細胞における導入遺伝子発現を提供する。
【0171】
本明細書において言及されるすべての特許、特許出願および出版物は、それらの全体の参照によって本明細書に援用される。
【0172】
開示は、理解の明瞭性の目的のための図示および実施例によってかなり詳細に提供されてきたが、本開示の趣旨または範囲から逸脱せずに、様々な変化および修飾を実践できることは当業者に明らかであろう。したがって、先の記載および実施例は限定として解釈されるべきではない。
【配列表】