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特許7324261艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230802BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20230802BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
C08L67/00
C08J3/22 CFD
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021181028
(22)【出願日】2021-11-05
(65)【公開番号】P2022117420
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】110103383
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】楊 文政
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲テ▼超
(72)【発明者】
【氏名】楊 春成
(72)【発明者】
【氏名】蕭 嘉▲イェン▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 豪昇
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-200724(JP,A)
【文献】特開2011-256328(JP,A)
【文献】特開2013-142100(JP,A)
【文献】特開2010-260892(JP,A)
【文献】特開2014-239126(JP,A)
【文献】特開2006-176774(JP,A)
【文献】特開2018-168381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02
C08J 5/12-5/22
C08J 3/00-3/28
C08J 99/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の固有粘度に応じて物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を混合し、溶解し、押出することで形成され、前記所定の固有粘度を有する艶消しポリエステルフィルムであって、
前記艶消しポリエステルフィルムの前記所定の固有粘度は、0.40dL/g~0.75dL/gであり、前記艶消しポリエステルフィルムは、10mgKOH/g~80mgKOH/gの酸価を有し、前記艶消しポリエステルフィルムは、100nm~400nmの表面粗さ(Ra)を有し、前記艶消しポリエステルフィルムは、0.2~0.6の間の摩擦係数を有
前記艶消しポリエステルフィルムの総重量100mol%に基づいて、前記艶消しポリエステルフィルム中のイソフタル酸の含有量は、0.7mol%~4.0mol%の間であり、
150±2℃及び10Hzで測定した前記艶消しポリエステルフィルムの貯蔵弾性率は、4.2×10 dyne/cm2~6.8×10 dyne/cm である、
ことを特徴とする艶消しポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記艶消しポリエステルフィルムは、15%~95%のヘイズを有し、
前記艶消しポリエステルフィルムは、60%以上の可視光透過率を有する、
ことを特徴とする請求項に記載の艶消しポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記艶消しポリエステルフィルムの総重量100wt%に基づいて、前記艶消しポリエステルフィルム中のバイオマス由来のエチレングリコールの含有量は、5wt%以下である、ことを特徴とする請求項に記載の艶消しポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法に関し、特に、物理的に再生されたポリエステル樹脂及び化学的に再生されたポリエステル樹脂の両方を用いて用意された艶消しポリエステルフィルム並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、廃棄PETボトルをリサイクルする最も一般的な方法は、物理的リサイクル方法(又は機械的リサイクル方法)である。物理的リサイクル方法は、主に、物理的機械的手段によって廃棄PETボトル材料を粉砕し、次に、溶解のための高温環境に粉砕されたPETボトル材料を配置し、そして、物理的に再生されたポリエステルチップを形成するために、溶解したPETボトル材料をペレット化するものである。物理的に再生されたポリエステルチップは、続く加工作業において用いられてよい。
【0003】
物理的リサイクル方法によって生成された、物理的に再生されたポリエステルチップは、通常、高い固有粘度(IV)を有する。物理的に再生されたポリエステルチップの固有粘度を調整するためには、主として固相重合が用いられる。しかしながら、固相重合方法は、物理的に再生されたポリエステルチップの固有粘度を増加させるためのみに用いられ得るもので、物理的に再生されたポリエステルチップの固有粘度を低減するためには用いることができない。また、一般的なフィルム形成処理は、通常、ポリエステルチップの固有粘度領域に対して特定の制限を有する。物理的リサイクル方法によって生成された、物理的に再生されたポリエステルチップは、通常、ボトル吹き込み及びスピニング処理のみに適しており、フィルム押出には適さない。
【0004】
物理的に再生されたポリエステルチップをフィルム形成処理に適するようにするために、主に、物理的に再生されたポリエステルチップと追加の未使用のポリエステルチップとを混合して、ポリエステル材料の全体的な固有粘度を低減する。しかしながら、この方法は、艶消しポリエステルフィルムにおいてリサイクルされたポリエステル材料の割合を効果的に増加させることができず、従って、最終的な艶消しポリエステルフィルム製品は、環境保護の要求を満たし得ない。換言すると、既存の艶消しポリエステルフィルムにおけるリサイクルされたポリエステルの割合には確かな制限があり、これを解決する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存の艶消しポリエステルフィルムにおけるリサイクルされたポリエステルの割合には確かな制限があり、これを解決する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、技術的な問題を解決する、艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法を提供する。
【0007】
本開示は、艶消しポリエステルフィルムの製造方法を提供する。艶消しポリエステルフィルムの製造方法は、以下のステップを含む。リサイクルポリエステル材料を供給し、リサイクルポリエステル材料の一部分を物理的に再生して、第1の固有粘度を有する物理的再生ポリエステルチップを形成し、リサイクルポリエステル材料の別の部分を化学的に再生して、第1の固有粘度より小さい第2の固有粘度を有する化学的再生ポリエステルチップを形成し、艶消し再生ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップを所定の固有粘度に応じて混合することにより、ポリエステルマスターバッチ材料を形成し、ポリエステルマスターバッチ材料を溶解して押出して、所定の固有粘度を有する艶消しポリエステルフィルムを取得する。艶消しポリエステルフィルムの所定の固有粘度は、0.40dL/g~0.75dL/gであり、艶消しポリエステルフィルムは、10mgKOH/g~80mgKOH/gの酸価を有し、艶消しポリエステルフィルムは、100nm~400nmの表面粗さ(Ra)を有し、艶消しポリエステルフィルムは、0.2~0.6の摩擦係数を有する。
【0008】
本開示は、艶消しポリエステルフィルムを提供する。艶消しポリエステルフィルムは、所定の固有粘度に応じて物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を混合し、溶解し、押出することで形成され、それによって、艶消しポリエステルフィルムは、所定の固有粘度を有する。艶消しポリエステルフィルムの所定の固有粘度は、0.40dL/g~0.75dL/gであり、艶消しポリエステルフィルムは、10mgKOH/g~80mgKOH/gの酸価を有し、艶消しポリエステルフィルムは、100nm~400nmの表面粗さ(Ra)を有し、艶消しポリエステルフィルムは、0.2~0.6の摩擦係数を有する。
【0009】
ある実施の形態において、艶消しポリエステルフィルムの総重量100mol%に基づいて、艶消しポリエステルフィルム中のイソフタル酸の含有量は、0.7mol%~4.0mol%であり、150±2℃及び10Hzで測定した艶消しポリエステルフィルムの貯蔵弾性率は、4.2×10dyne/cm~6.8×10dyne/cmである。
【0010】
ある実施の形態において、艶消しポリエステルフィルムは、15%~95%のヘイズを有し、艶消しポリエステルフィルムは、60%以上の可視光透過率を有する。
【0011】
ある実施の形態において、艶消しポリエステルフィルムの総重量100wt%に基づいて、艶消しポリエステルフィルム中のバイオマス由来のエチレングリコールの含有量は、5wt%以下である。
【0012】
上記の技術的課題を解決するために、本開示において適用される技術的な解決手段は、艶消しポリエステルフィルムを提供することである。前記艶消しポリエステルフィルムは、0.40dL/g~0.75dL/gの所定の固有粘度を有し、艶消しポリエステルフィルムは、10mgKOH/g~80mgKOH/gの酸価を有し、艶消しポリエステルフィルムは、100nm~400nmの表面粗さ(Ra)を有し、艶消しポリエステルフィルムは、0.2~0.6の摩擦係数を有する。
【0013】
ある実施の形態において、艶消しポリエステルフィルムの総重量100mol%に基づいて、艶消しポリエステルフィルム中のイソフタル酸の含有量は、0.7mol%~4.0mol%であり、150±2℃及び10Hzで測定した艶消しポリエステルフィルムの貯蔵弾性率は、4.2×10dyne/cm~6.8×10dyne/cmである。
【0014】
ある実施の形態において、艶消しポリエステルフィルムは、15%~95%のヘイズを有し、艶消しポリエステルフィルムは、60%以上の可視光透過率を有する。
【0015】
ある実施の形態において、艶消しポリエステルフィルムの総重量100wt%基づいて、艶消しポリエステルフィルム中のバイオマス由来のエチレングリコールの含有量は、5wt%以下である。
【発明の効果】
【0016】
本開示の有用な効果の一つは、本開示による艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法について、「艶消し再生ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップを、所定の固有粘度に応じて混合し、それによってポリエステルマスターバッチ材料を形成する」といった技術的な解決手段により、ポリエステルマスターバッチ材料を、フィルム押出処理に適するように所定の固有粘度を有するように調整し、リサイクルポリエステルマスターバッチ材料の高い割合を達成できることである。
【0017】
本開示の特徴及び技術的内容についての更なる理解のため、以下の本開示の詳細な説明及び図面を参照されたい。しかしながら、供された図面は、参考及び説明の目的にのみ用いられるものであり、本開示を限定するために用いるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付の図面は本開示についての更なる理解のために供され、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本開示の実施の形態を示し、詳細な説明とともに、本開示の原理を説明する。
【0019】
図1図1は、本開示の艶消しポリエステルフィルムの製造方法の概略的なフローチャートである。
【0020】
図2図2は、本開示のポリエステルマスターバッチ材料の分子量分布の概略図である。
【0021】
図3図3は、本開示の一つの実施の形態に係る艶消しポリエステルフィルムの貯蔵弾性率の試験結果である(試験条件:フィルムの厚さが50ミクロン、テスト方向がMD方向)。
【0022】
図4図4は、本開示の一つの実施の形態に係る艶消しポリエステルフィルムの貯蔵弾性率の試験結果である(試験条件:フィルムの厚さが50ミクロン、テスト方向がTD方向)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下は、本開示により開示される「艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法」の実施について説明する具体的な実施の形態である。当業者は、本明細書に開示された内容から、本開示の利点及び効果を理解し得る。本開示は、他の異なる具体的な実施の形態によって実施又は適用され得る。また、本明細書における様々な詳細についても、本開示の概念から逸脱しない範囲において異なる視点及び用途に基づいて、変形及び変更が可能である。また、本開示の図面は単なる概略図であり、実際の寸法に応じて描かれたものではない。以下の実施の形態は、本開示の関連する技術的な内容を詳細に説明するが、開示される内容は、本開示の技術的範囲を限定するように意図したものではない。また、本明細書において用いられる用語「又は」は、実際の状況に応じて、複数の関連するリスト化された事項のいずれかあるいは組み合わせを含み得る。
【0024】
(艶消しポリエステルフィルムの製造方法)
【0025】
本開示の目的のうちの1つは、艶消しポリエステルフィルムにおけるリサイクルポリエステル材料の割合を増加させ、それによって艶消しポリエステルフィルム製品が、環境保護の要求を満たし得るようにすることである。
【0026】
上記の目的を達成するために、図1を参照する。本開示の一つの実施の形態は、艶消しポリエステルフィルムにおけるリサイクルポリエステル材料の割合を効果的に増加させ、良好な加工性を備える艶消しポリエステルフィルム提供するの製造方法が提供される。艶消しポリエステルフィルムの製造方法は、ステップS110からステップS150を含む。本実施の形態において説明されるステップの順序及び実際の操作方法は、必要に応じて調整され、本実施の形態において説明されるものに限定されない。
【0027】
ステップS110は、リサイクルポリエステル材料を供給することを含む。
【0028】
再利用可能なリサイクルポリエステル材料を得るために、ポリエステル材料のリサイクル方法は、様々な種類の廃棄ポリエステル材料を収集し、廃棄ポリエステルの種類、色、及び使用に応じて分類する、ことを含む。次に、廃棄ポリエステル材料は、圧縮されてパッケージ化される。そして、パッケージ化された廃棄ポリエステル材料は、廃棄物処理場へと搬送される。本実施の形態において、廃棄ポリエステル材料は、リサイクルされたPETボトル(r-PET)であるが、本開示はこれに限定されない。
【0029】
ポリエステル材料のリサイクル方法は、更に、廃棄ポリエステル材料上の他の物体(例えば、ボトルキャップ、ラベル、及び接着剤)を除去することを含む。次に、廃棄ポリエステル材料は、物理的機械的手段によって粉砕される。その後、異なる材料のボトル口、ライナー、及びボトル本体は、浮選によって分離される。さらに、粉砕された廃棄ポリエステル材料は、リサイクルPETボトル(r-PET)のボトル片等の処理済みのリサイクルポリエステル材料を得るために乾燥され、これにより、続く薄いフィルム製造処理が容易となる。
【0030】
本開示の他の応用の実施の形態において、リサイクルポリエステル材料は、例えば、直接購入された処理済みのリサイクルポリエステル材料であってもよい。
【0031】
本明細書における用語「ポリエステル」、「ポリエステル材料」等は、任意の種類のポリエステル、特に、芳香族ポリエステルであり、本明細書において、具体的には、はテレフタル酸及びエチレングリコールの共重合に由来するポリエステル、つまり、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0032】
また、ポリエステルは、例えば、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、又はポリエチレンナフサレート(PEN)であってもよい。本実施の形態において、ポリエステルは、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート及びポリトリメチレンテレフタレートである。さらに、共重合体、特に、2つ以上のジカルボン酸及び/又は2つ以上のジオール成分を用いて得ることが可能な共重合体を用いてもよい。
【0033】
本開示の一つの実施の形態において、r-PETボトル片は、二塩基酸ユニットとして、イソフタル酸(IPA)を含む。従って、最終的な艶消しポリエステルフィルムもまた、イソフタル酸を含む。特に、艶消しポリエステルフィルムにおけるイソフタル酸の含有量は、艶消しポリエステルフィルムの総重量100mol%に基づいて、0.5mol%~5mol%のである。
【0034】
本開示の一つの実施の形態において、r-PETボトル片は、ジオールユニットとして、バイオマス由来のエチレングリコールを含む。従って、最終的な艶消しポリエステルフィルムもまた、バイオマス由来のエチレングリコールを含む。特に、艶消しポリエステルフィルムにおけるバイオマス由来のエチレングリコールの含有量は、艶消しポリエステルフィルムの総重量100wt%に基づいて、5wt%以下である。また、艶消しポリエステルフィルムにおける全ての炭素に基づいて、放射性元素(C14)によって測定されたバイオマス由来の炭素の含有量は、5%以下である。
【0035】
本開示の一つの実施の形態において、r-PETボトル片は、金属触媒を含み、そのため、最終的な艶消しポリエステルフィルムもまた、金属触媒を包む。特に、金属触媒は、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、及びチタン(Ti)からなる群から選択される少なくとも1つである。艶消しポリエステルフィルムの総重量100wt%に基づいて、艶消しポリエステルフィルムにおける金属触媒の含有量は、0.0003wt%~0.04wt%である。
【0036】
ステップS120は、リサイクルポリエステル材料の一部を物理的に再生し、物理的再生ポリエステルチップを得ることを含む。物理的再生ポリエステルチップは、第1の固有粘度を有する。本実施の形態において、物理的再生ポリエステルチップの第1の固有粘度は、一般に、0.60dL/g以上である。好ましくは、第1の固有粘度は、0.65dL/g~0.90dL/gである。より好ましくは、第1の固有粘度は、0.65dL/g~0.80dL/gである。
【0037】
具体的には、物理的再生ポリエステルチップの製造ステップは、リサイクルポリエステル材料を溶解するのに要する時間及びエネルギー消費を低減するために、物理的機械的手段によってリサイクルポリエステル材料(例えば、r-PETボトル片)の一部分を粉砕することを含む。次に、粉砕されたリサイクルポリエステル材料は溶解され、それにより、リサイクルポリエステル材料は、溶解状態となる。その後、第1のスクリーンを用いて溶解状態のリサイクルポリエステル材料をろ過し、リサイクルポリエステル材料中の固体不純物を除去する。最後に、ろ過されたリサイクルポリエステル材料は、、押出されてペレット化され、物理的再生ポリエステルチップを形成されるる。
【0038】
換言すると、リサイクルポリエステル材料は、元のリサイクルポリエステル材料中のポリエステル分子を再配置することにより物理的再生ポリエステルチップを複数用意するために、切断、溶解、ろ過、押出等の順により再形成される。
【0039】
物理的な再生処理において、リサイクルポリエステル材料のポリエステル分子が再配置されるのみであって再編されないので、リサイクルポリエステル材料中に元々存在した組成物(例えば、金属触媒、スリップ剤、又は、共重合モノマー等)は、リサイクルポリエステル材料中に依然として存在し、そのため、最終的な艶消しポリエステルフィルムもまた、これらの組成物を包む。更に、リサイクルポリエステル材料自体の様々な特性もまた、物理的再生ポリエステルチップおいてに維持される。
【0040】
物理的な再生処理におけるリサイクルポリエステル材料の分子量が著しく変化しないため、リサイクルポリエステル材料は、溶解状態で比較的高い粘度を有し、流れにくい特性を有する。従って、不十分なメッシュ径のスクリーンが用いられた場合、ろ過効率が不十分になるという問題が容易に生じる。
【0041】
本実施の形態において、良好なろ過効果を得るため、第1のスクリーンのメッシュ径は、好ましくは、10ミクロン~100ミクロンである。換言すると、第1のスクリーンは、メッシュ径より大きな粒径の固体不純物を遮ることができるが、本開示はこれに限定されない。
【0042】
異なるフィルム形成処理について、異なる好適な固有粘度の範囲がある点が注目される。一般に、物理的再生によって得られた、物理的再生ポリエステルチップ(物理的再生ポリエステル樹脂)は、高い固有粘度(0.60dL/g以上)を有する。物理的再生ポリエステルチップ(物理的再生ポリエステル樹脂)のみが用いられた場合、ポリエステルマスターバッチ材料は、ボトルブローイング及びスピニング処理のみに適し、フィルム押出処理には適さない。
【0043】
物理的再生ポリエステルチップの固有粘度を調整するために、固相重合が用いられてよい。しかしながら、固相重合法は、物理的再生ポリエステルチップの固有粘度を増加させるためのみに用いられ、物理的再生ポリエステルチップの固有粘度を低減するためには用いることができない。
【0044】
上記の課題を解決するために、本開示において、ステップS130の化学的再生ステップによって、低い固有粘度(0.65dL/g以下)を備える化学的再生ポリエステルチップ(化学的再生ポリエステル樹脂)用意される。このため、物理的再生ポリエステルチップ及び化学的再生ポリエステルチップの両方を同時に用い、物理的再生ポリエステルチップ及び化学的再生ポリエステルチップの割合を調整することで、ポリエステルマスターバッチ材料の固有粘度を調整する効果を得ることが出来、それによって、ポリエステルマスターバッチ材料はフィルム押出処理に適し得る。
【0045】
ステップS130は、、リサイクルポリエステルの別の部分を化学的に再生して、化学的再生ポリエステルチップを得ることを含む。化学的再生ポリエステルチップは、第2の固有粘度を有し、化学的再生ポリエステルチップの第2の固有粘度は、物理的再生ポリエステルチップの第1の固有粘度より小さい。本実施の形態において、化学的再生ポリエステルチップの第2の固有粘度は、一般に、0.65dL/g以下である。好ましくは、第2の固有粘度は、0.40dL/gから0.65dL/gである。より好ましくは、第2の固有粘度は、0.50dL/gから0.65dL/gである。
【0046】
具体的には、化学的再生ポリエステルチップの製造ステップは、リサイクルされたポリエステル材料を解重合するために要する時間及びエネルギー消費量を低減するために、リサイクルポリエステル材料(r-PETボトル片等)の別の部分を切断又は粉砕する、ことを含む。そして、切断又は粉砕された再生されたポリエステル材料を化学的解重合溶液に入れてポリエステル材料を解重合することにより、マスターバッチ材料混合物を形成する。次に、第2のスクリーンを用いてマスターバッチ材料混合をろ過し、リサイクルポリエステル材料中の固体不純物を除去し、それによってマスターバッチ材料混合物における非ポリエステル不純物の濃縮を低減する。
【0047】
次に、第2のスクリーンによってろ過されたマスターバッチ材料混合物に対してエステル化反応を行い、エステル化反応において無機添加物又は共重合体モノマーが添加される。最後に、特定の反応条件下で、マスターバッチ材料混合物におけるモノマー及び/又はオリゴマーが、再重合され、ペレット化され、化学的再生ポリエステルチップが得られる。特に、化学的解重合溶液の液体温度は、例えば、160℃~250℃であるが、本開示はこれに限定されない。更に、第2のスクリーンのメッシュ径は、第1のスクリーンのメッシュ径未満である。
【0048】
化学的解重合溶液は、リサイクルされたポリエステル材料中のポリエステル分子に鎖の切断を生じさせて解重合の効果を達成してよく、短い分子鎖と、1つの二塩基酸ユニット及び2つのジオールユニットからなるエステルモノマーとを備えるポリエステル組成物、例えば、ビス(2-ヒドロキシ-エチル)テレフタレート(BHET)をさらに得ることができる。つまり、マスターバッチ材料混合物の分子量は、リサイクルポリエステル材料の分子量以下である。
【0049】
本実施の形態において、化学的解重合溶液は、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、又はそれらの組み合わせの溶液であってよいが、本開示はこれに限定されない。例えば、水は加水分解に用いられ、メタノール、エタノール、エチレングリコール、又はジエチレングリコールは、アルコール分解に用いられる。
【0050】
また、物理的再生ステップと異なり、化学的再生ステップは、ポリエステル分子をより小さな分子量の分子に解重合し、さらに分子を新たなポリエステル樹脂に再重合する「リサイクルポリエステル材料中のポリエステル分子の解重合及び再重合」を含む。
【0051】
本開示の他の実施の形態において、化学的再生ポリエステルチップを用意する方法は、上記の実施の形態で説明されたものに限定されず、化学的再生ポリエステルチップは、また、加水分解又は超臨界流体方法によって用意されてもよい。加水分解方法は、アルカリ性溶液中でリサイクルポリエステル材料に行われ、特定の温度及び圧力を調整することで及びマイクロ波放射の照射下で、ポリエステル分子は、モノマーへと完全に分解される。超臨界流体方法は、超臨界流体メタノール中でリサイクルされたポリエステル材料を少量のモノマー及びオリゴマーへと分解する。特に、モノマー及びオリゴマーの収率は、反応温度及び反応時間の影響を受ける。
【0052】
更に、化学的リサイクル方法により、リサイクルポリエステル材料は、小さな分子量を有するモノマーに解重合されてよい。従って、リサイクルポリエステル材料(r-PETボトル片等)に元々存在した不純物(例えば、コロイド不純物又は他の非ポリエステル不純物)は、物理的リサイクル方法と比較して、ろ過することでより容易に除去され得る。
【0053】
また、化学的再生処理は、リサイクルポリエステル材料の分子量を低減(例えば、より短い分子鎖を有するポリエステル組成物及び化合物モノマーを形成)し得るので、リサイクルポリエステル材料は、解重合された後により低い粘性を有し、そのフロー特性は良好となる。従って、化学的再生処理は、ポリエステル材料中のより小さな粒径を有する不純物を除去するために、より小さなメッシュ径を有するスクリーンを採用してよい。
【0054】
本実施の形態において、良好なろ過効果を得るために、第2のスクリーンのメッシュ径は、好ましくは、1ミクロン~10ミクロンである。換言すると、第2のスクリーンは、メッシュ径より大きな粒径の固体不純物を遮るが、本開示はこれに限定されない。
【0055】
固体不純物をろ過する点では、物理的再生ステップは、ポリエステル材料中の大きな粒径を有する固体不純物をろ過しリサイクルすることが可能であり、化学的再生ステップは、ポリエステル材料中の小さな粒径を有する固体不純物をろ過しリサイクル可能である。従って、艶消しポリエステルフィルムの製品品質は、効果的に向上し得る。
【0056】
更に、化学的再生ステップによって生成された化学的再生ポリエステルチップは、一般に、低い固有粘度を有する。また、化学的再生ポリエステルチップの固有粘度は、制御が容易であり、化学的再生ポリエステルチップの固有粘度は、物理的再生ポリエステルチップの固有粘度未満となるように調整されてよい。
【0057】
ステップS140は、所定の固有粘度に応じて、艶消し再生ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップを混合し、ポリエステルマスターバッチ材料を生成する、ことを含む。
【0058】
このように、ポリエステルマスターバッチ材料の固有粘度は、フィルム形成処理に適している。具体的には、ポリエステルマスターバッチ材料の固有粘度は、0.50dL/g~0.8dL/gである。好ましくは、ポリエステルマスターバッチ材料の固有粘度は、0.50dL/g~0.60dL/gである。更に、最終的な艶消しポリエステルフィルムは、所定の固有粘度を有し、それは、0.50dL/g~0.75dL/gである。好ましくは、所定の固有粘度は、0.50dL/g~0.60dL/gである。
【0059】
より具体的には、艶消し再生ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップは、所定の固有粘度に応じた重量比で互いに混合される。従って、混合された艶消し再生ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップは、フィルム形成処理に適した固有粘度を有し得る。
【0060】
艶消し再生ポリエステルマスターバッチ材料は、艶消し添加物を含み、艶消し添加物は、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、アルミナ粒子、及び滑石粒子からなる群から選択された少なくとも1つの材料である。特に、艶消し添加物の粒径は、0.1μm~10μmである。また、艶消しポリエステルフィルムの総重量100重量パ-セントに基づいて、艶消し添加物の含有量は、0.1重量パ-セント~20重量パ-セントである。
【0061】
艶消し再生ポリエステルチップは、物理的再生ステップ又は化学的再生ステップによって用意されてよい。換言すると、艶消し再生ポリエステルチップは、物理的再生艶消しポリエステルチップ及び化学的再生艶消しポリエステルチップの少なくとも1つを含む。
【0062】
具体的には、物理的再生艶消しポリエステルチップを製造する方法は、リサイクルされたポリエステル材料の一部部を溶解し、、第1の溶解混合物を得ることを含む。艶消し添加物は、第2の溶解混合物を形成するために、第1の溶解混合物に加えられる。第2の溶解混合物は、物理的艶消し再生ポリエステルチップを得るために再形成される。本開示の一つの実施の形態において、例えば、第1の溶解混合物は、まず、第1のスクリーンによってろ過され、次に、第2の溶解混合物を得るために、艶消し添加物が加えられる。また、物理的再艶消しポリエステルチップに艶消し添加物が加えられるので、物理的再生艶消しポリエステルチップは、固有粘度が低減される。本開示の一つの実施の形態において、物理的再生艶消しポリエステルチップの固有粘度は、0.58dL/g~0.72dL/gである。
【0063】
具体的には、化学的再生艶消しポリエステルチップを製造する方法は、リサイクルポリエステル材料の別の部分を解重合して、第1のオリゴマー混合物を得ることを含む。第2のオリゴマー混合物を形成するために、艶消し添加物が第1のオリゴマー混合物に加えられる。化学的再生艶消しポリエステルチップを得るために、第2のオリゴマー混合物が再重合される。本開示の一つの実施の形態において、例えば、第1のオリゴマー混合物は、まず、第2のスクリーンによってろ過され、次に、艶消し添加物が加えられて第2のオリゴマー混合物を形成する。また、化学的再生艶消しポリエステルチップに、艶消し添加物が加えられるので、その固有粘度が低減される。本開示の一つの実施の形態において、化学的再生艶消しポリエステルチップの固有粘度は、0.45dL/g~0.58 dL/gである。
【0064】
リサイクルポリエステル材料の割合を増加させるために、様々な再生されたポリエステルチップは、全て、適切な使用範囲を有する。
【0065】
所定の重量比の点では、物理的再生ポリエステルチップの量は、ポリエステルマスターバッチ材料の100重量部の量(つまり、全てのポリエステルチップ)に基づいて、好ましくは、50重量部~95重量部であり、より好ましくは、60重量部~80重量部である。化学的再生ポリエステルチップの量は、5重量部~50受領部の間であり、好ましくは、20重量部~40重量部であるが、本開示はこれに限定されない。
【0066】
好ましい実施の形態において、物理的再生ポリエステルチップの量は、化学的再生ポリエステルチップの量より多いが、本開示はこれに限定されない。
【0067】
ステップS150は、ポリエステルマスターバッチ材料を溶解し、次に押出し、艶消しポリエステルフィルムを形成することを含む。特に、艶消しポリエステルフィルムは、所定の固有粘度を有する。
【0068】
艶消しポリエステルフィルムにおいて、物理的再生ポリエステルチップ(物理的再生艶消しポリエステルチップを含む)は、物理的再生ポリエステル樹脂を形成し、化学的再生ポリエステルチップ(化学的再生艶消しポリエステルチップを含む)は、化学的再生ポリエステル樹脂を形成する。また、艶消し再生ポリエステルチップ中の艶消し添加物は、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂中に均等に分散される。
【0069】
ステップS140における混合比によれば、物理的再生ポリエステル樹脂の含有量は、艶消しポリエステルフィルムの総重量100wt%に基づいて、好ましくは、50wt%~95wt%であり、より好ましくは、60wt%~80wt%である。化学的再生ポリエステル樹脂の含有量は、好ましくは、5wt%~50wt%であり、より好ましくは、20wt%~40wt%である。艶消し添加物の含有量は、0.1wt%~20wt%である。
【0070】
また、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂の総含有量は、55wt%~100wt%であり、総含有量は、より好ましくは、70wt%~100wt%である。
【0071】
上記の構成によれば、本実施の形態に係る艶消しポリエステルフィルムの製造方法は、未使用ポリエステル樹脂を追加することなく、リサイクルポリエステル材料を高い割合で用いて行われる、又は小量の未使用ポリエステル樹脂のみを加える必要がある。例えば、本開示の一つの実施の形態において、未使用ポリエステル樹脂の量は、通常、50重量部以下であり、好ましくは、未使用ポリエステル樹脂は、30重量部以下であり、より好ましくは、未使用のポリエステル樹脂は、10重量部以下である。
【0072】
本開示の一つの実施の形態において、物理的再生ポリエステルチップは第1の酸価を有し、化学的再生ポリエステルチップは第2の酸価を有し、第2の酸価は、第1の酸価より大きい。特に、第1の酸価は、10mgKOH/g~40mgKOH/gであり、第2の酸価は、20mgKOH/g~70mgKOH/gである。
【0073】
より具体的には、図2を参照すると、物理的再生ポリエステルチップは、第1の分子量分布1を有し、化学的再生ポリエステルチップは。第2の分子量分布2を有し、第2の分子量分布2の分布範囲は、第1の分子量分布1の分布範囲より広い。
【0074】
また、物理的再生ポリエステルチップ及び化学的再生ポリエステルチップを混合することにより、ポリエステルマスターバッチ材料(艶消し再生ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップ)は、第3の分子量分布3を有し、第3の分子量分布3の分布範囲は、第1の分子量分布1と第2の分子量分布2との間である。
【0075】
より具体的には、分子量分布の点で、化学的再生ポリエステルチップの分子量分布は広く、これは、フィルム形成処理の生産性に寄与し得るが、化学的再生ポリエステルチップのみを用いて生成された艶消しポリエステルフィルムの物理的性質(械的特性等)は、低い。更に、化学的再生ポリエステルチップの生成コストは、高い。
【0076】
物理的再生ポリエステルチップの分子量分布は狭く、これは、フィルム形成処理の生産性において好ましくないが、高い機械的特性を備えた艶消しポリエステルフィルムを、良好な物理的特性で生成し得る。換言すると、物理的リサイクル又は化学的リサイクルを完全に用いることは、理想的でない。
【0077】
本開示の一つの実施の形態に係る艶消しポリエステルフィルムの製造方法の特徴は、物理的再生ポリエステルチップ及び化学的再生ポリエステルチップを同時に用いることで、フィルム形成処理の生産性を向上させ、艶消しポリエステルフィルムの物理的特性を向上させ、艶消しポリエステルフィルムの製造コストを低減可能なことである。
【0078】
(艶消しポリエステルフィルム)
【0079】
上記は、本開示の一つの実施の形態に係る艶消しポリエステルフィルムの製造方法であり、以下、本開示の一つの実施の形態に係る艶消しポリエステルフィルムについて説明する。本実施の形態において、艶消しポリエステルフィルムは、上記の製造方法によって形成されるが、本開示はこれに限定されない。
【0080】
艶消しポリエステルフィルムの材料は、物理的再生ポリエステル樹脂と、化学的再生ポリエステル樹脂と、艶消し添加物と、を含む。物理的再生ポリエステル樹脂は、物理的再生ポリエステルチップから形成され、物理的再生ポリエステルチップは、第1の固有粘度を有する。化学的再生ポリエステル樹脂は、化学的再生ポリエステルチップから形成され、化学的再生ポリエステルチップは、第2の固有粘度を有し、第2の固有粘度は、第1の固有粘度より小さい。艶消し添加物は、化学的再生ポリエステル樹脂と物理的再生ポリエステル樹脂との間で分散される。
【0081】
物理的再生ポリエステルチップ及び化学的再生ポリエステルチップは、タ-ゲットとしての所定の固有粘度に応じて混合される点が特徴的であり、それにより、得られる艶消しポリエステルフィルムは、所定の固有粘度を有し得る。
【0082】
本開示の実施の形態において、物理的再生ポリエステルチップの第1の固有粘度は、0.60dL/g以下であり、化学的再生ポリエステルチップの第2の固有粘度は、0.65dL/g以下であり、所定の固有粘度は、0.40dL/g~0.75dL/gである。
【0083】
本開示の好ましい実施の形態において、物理的再生ポリエステルチップの第1の固有粘度は、0.65dL/g~0.80dL/gであり、化学的再生ポリエステルチップの第2の固有粘度は、0.50dL/g~0.65dL/gであり、艶消しポリエステルフィルムは、0.50dL/g~0.60dL/gの所定の固有粘度を有する。
【0084】
本開示の一つの実施の形態において、艶消しポリエステルフィルムは、10mgKOH/g~80mgKOH/gの酸価を有し、好ましくは、40mgKOH/g~70mgKOH/gの酸価を有する。
【0085】
艶消しポリエステルフィルムの酸価範囲を測定する方法は、滴定法を用いることであり、これは、ASTMのD7409-15の標準試験方法を参照して行われる。
【0086】
艶消しポリエステルフィルムの酸価が10mgKOH/g~80mgKOH/gにある場合、艶消しポリエステルフィルムは、低い酸価の条件の下、耐熱性及び耐加水分解効果を有する。
【0087】
リサイクルポリエステル材料のリサイクル及びリサイクルポリエステル材料のペレット化により、複数の物理的再生ポリエステルチップ及び複数の化学的再生ポリエステルチップが全て得られるという点が特徴的である。特に、リサイクルポリエステル材料は、r-PETボトル片である。
【0088】
上記の構成によれば、艶消しポリエステルフィルムは、次の:(i)艶消しポリエステルフィルムの総重量100mol%に基づいて、艶消しポリエステルフィルム中のイソフタル酸の含有量は、0.7mol%~4.0mol%であり、(ii)艶消しポリエステルフィルムの総重量100wt%に基づいて、艶消しポリエステルフィルム中のバイオマス由来のエチレングリコールの含有量は、5wt%以下であり、(iii)艶消しポリエステルフィルムのヘイズは、15%~95%であり、(iv)艶消しポリエステルフィルムの可視光透過率は、60%であり、好ましくは、80%以上であり、(v)艶消しポリエステルフィルムの表面粗さ(Ra)は、100nm~400nmであり(表面粗さの測定法は、DIN EN ISO4287/4288に基づく)、(vi)艶消しポリエステルフィルムの摩擦係数は、0.2~0.6である、という条件を満たす。
【0089】
艶消しポリエステルフィルムの摩擦係数を測定する方法は、ASTM D1894に基づく。
【0090】
本開示の実施の形態において、150±2℃及び10Hzで測定される艶消しポリエステルフィルムの貯蔵弾性率は、4.2×10dyne/cm~6.8×10dyne/cmであり、好ましくは、4.2×10dyne/cm~6.6×10dyne/cmである。艶消しポリエステルフィルムの貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定器によって測定されたMD方向及びTD方向の艶消しポリエステルフィルムの貯蔵弾性率の平均値である。具体的な測定結果を、図3及び図4に示すが、本開示はこれに限定されない。
【0091】
(実施の形態による作用効果)
【0092】
本開示の有益な効果のうちの1つは、本開示によって提供される艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法に関して、「艶消し再生ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップを所定の固有粘度に応じて混合して、ポリエステルマスターバッチ材料を形成する」という技術的な解決手段を介して、ポリエステルマスターバッチ材料がフィルム押出処理に適するように所定の固有粘度を有するように調整され、リサイクルポリエステルマスターバッチ材料のより高い割合が達成されることである。
【0093】
上記の開示は、本開示の好ましい実施可能な実施の形態にすぎず、本開示の技術的範囲を限定しない。従って、本開示の明細書及び図面の内容を用いて得られる全ての均等な技術的変更は、全て、本開示の技術的範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0094】
艶消しポリエステルフィルム及びその製造方法は、艶消しポリエステルフィルムの分野に適用されてよい。
図1
図2
図3
図4