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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】電磁鋼板積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/085 20060101AFI20230802BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20230802BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
B32B15/085 Z
C23C26/00 A
H01F1/147 183
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021517633
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 KR2019012470
(87)【国際公開番号】W WO2020067720
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】10-2018-0115284
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ボン ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】ノ,テ ヨン
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-508573(JP,A)
【文献】特開2007-076127(JP,A)
【文献】特開2012-186007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/085
C23C 26/00
H01F 1/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電磁鋼板、および
前記複数の電磁鋼板の間に位置する融着層を含み、
前記融着層は、オレフィン系半結晶(Semi-Crystalline)高分子85~95重量%、並びに
金属リン酸塩および金属クロム酸塩のうちの1種以上の無機金属化合物5~15重量%を含み、
前記融着層内の無機金属化合物の微細相を含み、前記融着層の厚さ方向を含む断面に対して、前記無機金属化合物の微細相が占める面積の分率が10%以下であり、
前記融着層の厚さは、0.5~40μmであり、
前記電磁鋼板および前記融着層の間に位置する融着界面層をさらに含み、
前記融着界面層は、Al、Mg、Ca、Co、Zn、ZrおよびFeのうちの1種以上の金属が0.5~10重量%、PおよびCrのうちの1種以上が5~30重量%、並びに残部Oを含むことを特徴とする電磁鋼板積層体。
【請求項2】
前記オレフィン系半結晶高分子は、ポリエチレン半結晶高分子およびポリプロピレン半結晶高分子のうちの1種以上を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項3】
前記オレフィン系半結晶高分子は、重量平均分子量が1,000~30,000である、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項4】
前記オレフィン系半結晶高分子は、軟化点が50~120℃である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項5】
前記金属リン酸塩および金属クロム酸塩は、Al、Mg、Ca、Co、Zn、ZrおよびFeのうちの1種以上の金属を含む、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項6】
前記無機金属化合物の微細相の平均粒径は、前記融着層の厚さの20%以下である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項7】
前記融着界面層の厚さは、10~500nmである、ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の電磁鋼板積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁鋼板積層体に係り、具体的には、溶接、クランピング、インターロッキングなどの既存の締結方法を用いずに、電磁鋼板を接合(締結)できる融着層を形成した電磁鋼板積層体に関する。具体的には、本発明の一実施例では、電磁鋼板の間に形成される融着層の成分を制御して、電磁鋼板間の接合力を向上させた電磁鋼板積層体を提供する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電磁鋼板は圧延板上の全方向に磁気的特性が均一な鋼板で、モータ、発電機の鉄心、電動機、小型変圧器などに幅広く用いられている。
電磁鋼板は、打抜加工後、磁気的特性の向上のために応力除去焼鈍(SRA)を実施しなければならないものと、応力除去焼鈍による磁気的特性効果より熱処理による経費損失が大きい場合に応力除去焼鈍を省略するもの、の2種の形態に区分される。
【0003】
絶縁被膜は、モータ、発電機の鉄心、電動機、小型変圧器などの積層体の仕上げ製造工程でコーティングされる被膜であって、通常、渦電流の発生を抑制させる電気的特性が要求される。その他にも、連続打抜加工性、耐粘着性および表面密着性などが要求される。連続打抜加工性とは、所定の形状に打抜加工後、複数積層して鉄心にする時、金型の摩耗を抑制する能力を意味する。耐粘着性とは、鋼板の加工応力を除去して磁気的特性を回復させる応力除去焼鈍過程後に鉄心鋼板間で密着しない能力を意味する。
このような基本的な特性のほかに、コーティング溶液の優れた塗布作業性と配合後に長時間使用可能な溶液安定性なども要求される。このような絶縁被膜は、溶接、クランピング、インターロッキングなどの別途の締結方法を用いて、電磁鋼板積層体としての製造が可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施例では、溶接、クランピング、インターロッキングなどの既存の締結方法を用いずに、電磁鋼板を接合(締結)できる融着層を形成した電磁鋼板積層体およびその製造方法を提供する。具体的には、本発明の一実施例では、電磁鋼板の間に形成される融着層の成分を制御して、電磁鋼板間の接合力を向上させた電磁鋼板接合コーティング組成物、電磁鋼板積層体、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施例による電磁鋼板積層体は、複数の電磁鋼板、および複数の電磁鋼板の間に位置する融着層を含み、前記融着層は、オレフィン系半結晶(Semi-Crystalline)高分子85~95重量%、並びに金属リン酸塩および金属クロム酸塩のうちの1種以上の無機金属化合物5~15重量%を含む。
【0006】
前記オレフィン系半結晶高分子は、ポリエチレン半結晶高分子およびポリプロピレン半結晶高分子のうちの1種以上を含むことができる。
前記オレフィン系半結晶高分子は、重量平均分子量が1,000~30,000であってもよい。
【0007】
前記オレフィン系半結晶高分子は、軟化点が50~120℃であってもよい。
【0008】
前記金属リン酸塩および金属クロム酸塩は、Al、Mg、Ca、Co、Zn、ZrおよびFeのうちの1種以上の金属を含むことができる。
【0009】
前記融着層内の無機金属化合物の微細相を含み、前記融着層の厚さ方向を含む断面に対して、前記無機金属化合物の微細相が占める面積の分率が10%以下であってもよい。
【0010】
前記無機金属化合物の微細相の平均粒径は、前記融着層の厚さの20%以下であってもよい。
【0011】
前記融着層の厚さは、0.5~40μmであってもよい。
【0012】
前記電磁鋼板および前記融着層の間に位置する融着界面層をさらに含むことができる。
【0013】
前記融着界面層は、Al、Mg、Ca、Co、Zn、ZrおよびFeのうちの1種以上の金属が0.5~10重量%、PおよびCrのうちの1種以上が5~30重量%、並びに残部Oを含むことができる。
前記融着界面層の厚さは、10~500nmであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施例によれば、電磁鋼板の間に形成される融着層の成分を制御して、電磁鋼板間の接合力を向上させることができる。
本発明の一実施例によれば、電磁鋼板の間に形成される融着層内の無機金属化合物の微細相を制御して、電磁鋼板間の接合力を向上させることができる。
本発明の一実施例によれば、溶接、クランピング、インターロッキングなどの既存の締結方法を用いずに、電磁鋼板を接合可能で、電磁鋼板積層体の磁性にさらに優れている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】電磁鋼板積層体の模式図である。
図2】本発明の一実施例による電磁鋼板積層体の断面の概略図である。
図3】本発明の他の実施例による電磁鋼板積層体の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用するが、これらに限定されない。これらの用語を、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用する。したがって、以下に述べる第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及される。
【0017】
ここで使用する専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用する単数形態は、文章がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。明細書で使用する「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるわけではない。
【0018】
ある部分が他の部分の「上に」あると言及する場合、これはまさに他の部分の上にあるか、その間に他の部分を伴ってもよい。対照的に、ある部分が他の部分の「真上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介在しない。
【0019】
ここに使用する技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味で解釈されない。
【0020】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施例について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0021】
本発明の一実施例では、電磁鋼板積層体を提供する。
本発明の一実施例による電磁鋼板積層体は、複数の電磁鋼板、および複数の電磁鋼板の間に位置する融着層を含む。図1は、本発明の一実施例による電磁鋼板積層体の模式図を示す。図1に示すように、複数の電磁鋼板が積層されている形態である。
【0022】
図2は、本発明の一実施例による電磁鋼板積層体の断面の概略図を示す。図2に示すように、本発明の一実施例による電磁鋼板積層体100は、複数の電磁鋼板10、および複数の電磁鋼板の間に位置する融着層30を含む。
【0023】
本発明の一実施例による電磁鋼板積層体は、溶接、クランピング、インターロッキングなどの既存の方法を用いずに、単に前述した接合コーティング組成物を用いて融着層を形成することによって、互いに異なる電磁鋼板を熱融着させた積層体であってもよい。
【0024】
この時、電磁鋼板積層体は、熱融着後にも高温接合性および高温耐油性に優れた特性がある。
【0025】
以下、各構成別に詳細に説明する。
電磁鋼板10は、一般的な無方向性または方向性電磁鋼板を制限なく使用可能である。本発明の一実施例では、複数の電磁鋼板10の間に融着層30を形成して、電磁鋼板積層体100を製造することが主要構成であるので、電磁鋼板10に関する具体的な説明は省略する。
【0026】
融着層30は、複数の電磁鋼板10の間に形成され、複数の電磁鋼板10を溶接、クランピング、インターロッキングなどの既存の締結方法を用いずに、接合できるほど接合力が強い。
【0027】
融着層30は、接合コーティング組成物を表面にコーティングし、硬化させて接合コーティング層を形成し、これを積層して熱融着して融着層30を形成する。接合コーティング層が形成された複数の電磁鋼板10を積層し熱融着すれば、接合コーティング層内の樹脂成分が熱融着して、融着層を形成する。このような融着層は、有機物の主成分に少量の無機金属化合物が含まれている。融着層内で有機物中に無機物成分が均一に分散して微細相を形成する。
【0028】
本発明の一実施例において、融着層は、オレフィン系半結晶(Semi-Crystalline)高分子並びに、金属リン酸塩および金属クロム酸塩のうちの1種以上の無機金属化合物を含む。
オレフィン系半結晶(Semi-Crystalline)高分子は、熱圧着時、熱圧着層を形成し、電磁鋼板の間に介在して、電磁鋼板の間に接合力を付与する。熱圧着層が電磁鋼板の間で接合力を適切に付与できない場合、精密に積層された複数の電磁鋼板が工程進行過程でずれるようになる。積層位置がずれると、最終的に製造された電磁鋼板製品の品質に悪影響を与える。樹脂によって熱圧着後、接合力を確保することによって、積層された電磁鋼板の位置がずれないようにできる。
【0029】
オレフィン系半結晶(Semi-Crystalline)高分子は、電磁鋼板の間に接合力を付与する。この時、有機樹脂の中でも、オレフィン系半結晶(Semi-Crystalline)高分子を用いる場合、溶融点以下の温度では、結晶によって接合層表面の硬度が高くて、加工工程(Slitting、Stamping)上、接合層が加工ラインとの摩擦による損傷を最小化し、溶融点以上の温度で接合層の流れ性が急速に増加して接合力にさらに優れている。本発明の一実施例において、半結晶(Semi-Crystalline)高分子とは、結晶性と非結晶性を同時に有する高分子を意味する。具体的には、結晶化度が50~90の高分子を意味する。
【0030】
オレフィン系半結晶高分子は、具体的には、ポリエチレン半結晶高分子およびポリプロピレン半結晶高分子のうちの1種以上を含むことができる。この時、先に例示したオレフィン系半結晶高分子を選択することによって、融着層の耐熱性を向上させることができる。言い換えれば、オレフィン系半結晶高分子は、融着層の絶縁性、耐熱性、表面特性などを改善するのに寄与する。
【0031】
オレフィン系半結晶高分子は、重量平均分子量が1,000~30,000であり、数平均分子量が1,000~40,000である。重量平均分子量および数平均分子量に関連し、各下限未満の場合、硬化性、強度など接合コーティング層の物性が低下することがあり、各上限超過の場合、樹脂内の相(phase)分離が起こり、無機金属化合物との相溶性が劣ることがある。より具体的には、オレフィン系半結晶高分子は、5,000~30,000の重量平均分子量を有することができる。
【0032】
また、オレフィン系半結晶高分子の軟化点(Tg)は、50~120℃であってもよい。もし、樹脂の軟化点(Tg)が高すぎる場合、コーティング作業性が低下することがある。
オレフィン系半結晶高分子は、融着層30の100重量%を基準として、85~95重量%含まれる。オレフィン系半結晶高分子が過度に少なく含まれる場合、融着層の接合力を適切に確保できない問題が発生しうる。オレフィン系半結晶高分子が過度に多く含まれる場合、融着層30の高温安定性が劣位になる。さらに具体的には、オレフィン系半結晶高分子は、融着層30の100重量%を基準として、90~95重量%含まれる。
【0033】
本発明の一実施例による融着層は、金属リン酸塩および金属クロム酸塩のうちの1種以上の無機金属化合物を含む。
本発明の一実施例で使用される金属リン酸塩は、M(HPOの化学式で表される複合金属リン酸塩、またはM(POの化学式で表される金属リン酸塩(metal phosphate)を含むものである。
【0034】
本発明の一実施例で使用される金属クロム酸塩は、M(HCrOの化学式で表される複合金属クロム酸塩、またはM(CrOの化学式で表される金属リン酸塩(metal phosphate)を含むものである。
【0035】
金属リン酸塩および金属クロム酸塩は、Al、Mg、Ca、Co、Zn、ZrおよびFeのうちの1種以上の金属を含むことができる。金属リン酸塩に対する具体例として、第1リン酸アルミニウム(Al(HPO)、第1リン酸コバルト(Co(HPO)、第1リン酸カルシウム(Ca(HPO)、第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)、第1リン酸マグネシウム(Mg(HPO)などがある。
【0036】
無機金属化合物は、熱融着による熱融着層の高温接合性、高温耐油性に寄与する。
無機金属化合物は、融着層30の100重量%を基準として、5~15重量%含まれる。無機金属化合物が過度に少なく含まれる場合、融着層の接合力を適切に確保しにくいことがある。無機金属化合物が過度に多く含まれる場合、無機金属化合物間の凝集によって、融着層の接合力がむしろ劣位になる。さらに具体的には、無機金属化合物は、融着層30の100重量%を基準として、5~10重量%含まれる。
【0037】
融着層30は、無機金属化合物の微細相を含むことができる。無機金属化合物の微細相は、無機金属化合物が熱融着過程で凝集して、粒径0.01μm以上の相を形成したものである。
融着層の厚さ方向を含む断面に対して、無機金属化合物の微細相が占める面積の分率が10%以下であってもよい。無機金属化合物の微細相が占める面積の分率が大きすぎると、融着層30の締結力が低下することがある。さらに具体的には、融着層30の断面の面積に対して、無機金属化合物の微細相が占める面積の分率が5%以下であってもよい。
【0038】
無機金属化合物の微細相の平均直径は、融着層30の厚さの20%以下であってもよい。無機金属化合物の微細相の平均直径が大きすぎる場合、融着層の安定性の低下で接合力が低下することがある。さらに具体的には、無機金属化合物の微細相の平均直径は、融着層30の厚さの10%以下であってもよい。融着層30の断面の面積とは、鋼板の厚さが含まれる断面の面積、さらに具体的には、圧延垂直方向の断面(TD面)と平行な面を意味する。
【0039】
融着層30の厚さは、0.5~40μmであってもよい。このような範囲を満足する場合、融着層30の優れた表面特性(例えば、絶縁性、耐食性、密着性など)を有することができる。
【0040】
図3には、本発明の他の実施例による電磁鋼板積層体の断面の概略図を示す。図3に示すように、本発明の一実施例による電磁鋼板積層体100は、複数の電磁鋼板10、複数の電磁鋼板の間に位置する融着層30、および電磁鋼板10および融着層30の間に位置する融着界面層20を含む。
【0041】
融着界面層20は、コーティング乃至熱融着過程で融着層30にある無機金属化合物成分と、電磁鋼板10の表面にある金属成分とが反応して融着界面層20を形成する。適切な融着界面層20の形成により電磁鋼板積層体100の磁性をさらに向上させることができる。
【0042】
融着界面層20は、Al、Mg、Ca、Co、Zn、ZrおよびFeのうちの1種以上の金属が0.5~10重量%、PおよびCrのうちの1種以上が5~30重量%、並びに残部Oを含むことができる。
【0043】
PおよびCrは、融着層30内の無機金属化合物に由来する。Al、Mg、Ca、Co、Zn、ZrおよびFeのうちの1種以上の金属は、融着層20内の無機金属化合物の金属に由来する。
【0044】
融着界面層20の厚さは、10~500nmであってもよい。融着界面層20の厚さが薄すぎると、電磁鋼板10内に酸化物が生成されて磁性に悪影響を及ぼすことがある。融着界面層20の厚さが厚すぎると、融着界面層20と融着層30との密着性が良くなく、ボンディング力が劣位になる。
【0045】
本発明の一実施例による電磁鋼板積層体の製造方法は、接合コーティング組成物を用意する段階と、接合コーティング組成物を電磁鋼板の表面にコーティングした後、硬化させて接合コーティング層を形成する段階と、接合コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し、熱融着して融着層を形成する段階と、を含む。
【0046】
以下、各段階別に具体的に説明する。
まず、接合コーティング組成物を用意する。
次に、接合コーティング組成物を電磁鋼板の表面にコーティングした後、硬化させて接合コーティング層を形成する。この段階は、接合コーティング組成物の硬化のために、100~300℃の温度範囲で行う。
【0047】
接合コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し、熱融着して融着層30を形成する。熱融着する段階により接合コーティング層内の高分子成分が熱融着し、融着層を形成する。
熱融着する段階は、100~300℃の温度、0.05~5.0Mpaの圧力および0.1~120分の加圧条件で熱融着することができる。前記条件はそれぞれ独立して満足することができ、2以上の条件を同時に満足することもできる。このように熱融着する段階における温度、圧力、時間の条件を調節することによって、電磁鋼板の間に、ギャップや、有機物相なしに、密に熱融着できる。
【0048】
熱融着する段階は、昇温段階および融着段階を含み、昇温段階の昇温速度は、10℃/分~1000℃/分になってもよい。
融着層30を形成する段階は、融着層と電磁鋼板との間に融着界面層20がさらに生成できる。融着層30および融着界面層20については前述したので、重複する説明を省略する。
【0049】
以下、本発明の好ましい実施例、これに対比される比較例、およびこれらの評価例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0050】
実験例1
無方向性電磁鋼板(50×50mm、0.35mmt)を供試片として用意した。接合コーティング溶液を、バーコーター(Bar Coater)およびロールコーター(Roll Coater)を用いて、各用意された供試片に上部と下部に一定の厚さ(約5.0μm)に塗布して、板温基準200~250℃で20秒間硬化した後、空気中でゆっくり冷却させて、接合コーティング層を形成した。
【0051】
接合コーティング層がコーティングされた電磁鋼板を高さ20mmに積層した後、0.1MPaの力で加圧して120℃、10分間熱融着した。熱融着層の成分および熱融着された電磁鋼板の接合力を剪断面引張法によって接合力を測定して、下記表1にまとめた。
【0052】
その具体的な評価条件は、次の通りである。
接合力は、剪断法(Shear Strength)および剥離法(T-Peeloff)で製作された試片を上/下部ジグ(JIG)に一定の力で固定させた後、一定の速度で引っ張りながら積層されたサンプルの引張力を測定する装置を用いて測定した。この時、剪断法の場合、測定された値は、積層されたサンプルの界面のうち最小接合力を有する界面が脱落する地点を測定した。剥離法は、剥離時に測定される一定の力で最初と最終10%を除いた地点の平均値で測定した。
【表1】
【0053】
その具体的な評価条件は、次の通りである。
表1に示すように、実施例1~実施例2のように、融着層の成分および含有量が適切に調節された場合、優れた剪断接合力と剥離接合力を示した。
比較例1は、無機金属化合物を含まず、剪断接合力と剥離接合力が劣位であることを確認できる。
比較例2は、ポリオレフィン系半結晶高分子でないエポキシ高分子を含み、剥離接合力が非常に劣位であることを確認できる。
比較例3は、無機金属化合物を多量含み、剪断接合力と剥離接合力とも劣位であることを確認できる。
【0054】
実験例2
前述した実験例1と同様に実施し、融着層の構造を下記表2のように変更しながら実施した。
【表2】
【0055】
表2に示すように、実施例3および実施例4のように、融着層の構造を適切に形成した場合、優れた剪断接合力と剥離接合力を示した。
比較例4は、無機金属化合物の微細相の面積の分率および粒径が大きく、剪断接合力と剥離接合力がすべて劣位であることを確認できる。
比較例5は、融着層の厚さが薄すぎて、剪断接合力と剥離接合力がすべて劣位であることを確認できる。
【0056】
実験例3
前述した実験例1と同様に実施し、融着界面層の成分を下記表3のように変更しながら実施した。
【表3】
【0057】
表3に示すように、実施例5および実施例6のように、融着層界面層の成分を適切に形成した場合、優れた剪断接合力と剥離接合力を示した。
比較例6は、無機金属化合物として、金属リン酸塩の代わりにリン酸塩を用いてAl、Mg、Ca、Co、Zn、Zr、Feなどの金属が含まれておらず、融着界面層が強固に形成されず、剪断接合力は優れているが、剥離接合力が劣位であった。
比較例7は、無機金属化合物として、金属リン酸塩や金属クロム酸塩でないシラン系およびチタン系無機物を用いて、P、Crを含んでおらず、融着界面層が強固でなくて、剪断接合力と剥離接合力が劣位であった。
【0058】
本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例はあらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0059】
10:電磁鋼板
20:融着界面層
30:融着層
100:電磁鋼板積層体
図1
図2
図3