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特許7324278セラミド類とオレイン酸イソブチルを含有する組成物
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  • 特許-セラミド類とオレイン酸イソブチルを含有する組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】セラミド類とオレイン酸イソブチルを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/42 20060101AFI20230802BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230802BHJP
   A61K 8/68 20060101ALI20230802BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20230802BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20230802BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
A61K8/42
A61K8/37
A61K8/68
A61Q5/00
A61Q5/12
A61Q19/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021519393
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2020018536
(87)【国際公開番号】W WO2020230691
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2019089504
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592042750
【氏名又は名称】株式会社アルビオン
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【弁理士】
【氏名又は名称】時岡 恭平
(72)【発明者】
【氏名】乾 沙王里
(72)【発明者】
【氏名】飯野 誠之
(72)【発明者】
【氏名】坂田 修
(72)【発明者】
【氏名】大成 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】小田 和裕
(72)【発明者】
【氏名】清水 湧太郎
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178860(JP,A)
【文献】特開2016-166187(JP,A)
【文献】特開2016-044167(JP,A)
【文献】特開2015-027977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミド類およびオレイン酸イソブチルを含有する化粧料用組成物。
【請求項2】
皮膚用化粧料または毛髪用化粧料である、請求項に記載の化粧料用組成物。
【請求項3】
セラミド類が、ヒト型セラミドである、請求項1または2に記載の化粧料用組成物。
【請求項4】
セラミド類が、セラミドNP、セラミドNG、セラミドNS、セラミドEOP、セラミドAS、セラミドAP、セラミドEOS、セラミドNDS、セラミドNH、セラミドADS、セラミドAH、セラミドEOH、セラミド2、およびセラミド3から選ばれる1種以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の化粧料用組成物。
【請求項5】
セラミド類の含有量が、オレイン酸イソブチルの含有量を1質量部としたときに、0.001~20質量部である、請求項1~のいずれか1項に記載の化粧料用組成物。
【請求項6】
更に水を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の化粧料用組成物。
【請求項7】
更に界面活性剤を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の化粧料用組成物。
【請求項8】
乳化物の形態である、請求項1~のいずれか1項に記載の化粧料用組成物。
【請求項9】
組成物の総質量比に対する、セラミド類の含有率が、0.0001~50質量%であり、オレイン酸イソブチルの含有率が、0.001~90質量%である、請求項1~のいずれか1項に記載の化粧料用組成物。
【請求項10】
セラミド類の皮膚への浸透を増大または促進させるための、請求項1~のいずれか1項に記載の化粧料用組成物。
【請求項11】
セラミド類およびオレイン酸イソブチルを含有する、皮膚外用剤。
【請求項12】
オレイン酸イソブチルを用いた、セラミド類の皮膚への浸透を増大または促進させるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料および皮膚外用剤などに使用可能な、オレイン酸イソブチルを配合したセラミド類含有組成物に関する。本発明はまた、オレイン酸イソブチルを用いた、セラミド類の皮膚への浸透を増大または促進させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは、皮膚の角層における細胞間脂質の主要な成分として知られている。セラミド類とは、皮膚由来のセラミドや、セラミドの擬似物質または誘導体を含む物質としての総称である。セラミド類は、細胞膜の裏打ちタンパク質であるコーニファイドエンベロープと結合することによって皮膚の水分を蒸散させないバリア機能としての役割を果たし得ることが知られる。また、セラミド類は、毛髪にハリやコシを付与する機能も有することが知られる。皮膚のバリア機能の低下は、皮膚の水分量を低下させて皮膚老化の初期症状とも言える小皺を発生させたり、アレルゲンなどの外的因子からの抵抗力を低下させたりするなど、様々な皮膚トラブルを引き起こす。そのため、セラミド類の前記有用な機能に着目し、セラミド類を配合した化粧料や外用剤の検討がなされている。
【0003】
セラミド類の機能を十分に発揮させるためには、有効量のセラミド類を速やかに生体内に浸透させることが求められる。しかしながら、外部から皮膚や毛髪の表面を通してセラミド類を生体内に入れたり留めたりすることは容易ではなく、有効にセラミド類を生体に浸透させ得る組成物を得ることは容易ではない。さらに、セラミド類は結晶性が高いため化粧料や外用剤に安定して配合することが困難な場合がある。特に、乳化化粧料においてセラミド類を安定して配合させることは容易ではない。そこで、これまで、種々の成分と組み合わせたり、製造方法を工夫したりするなどして、セラミド類を安定的に配合し、セラミド類の機能性を高める技術が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、セラミド類、デキストリン脂肪酸エステル、リン脂質、非イオン性界面活性剤、および高級アルコールまたはエステルを組み合わせた水中油型乳化組成物が開示されている。この文献では、セラミド類を安定に配合させる技術が開示されている。しかしながら、セラミド類を皮膚や毛髪にさらに有効に浸透する技術が開発されることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-206971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、セラミド類を皮膚や毛髪といった生体内に浸透させることができる、オレイン酸イソブチルを配合したセラミド類含有組成物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記に挙げられる実施態様を含むが、これらに限定されるものではない。
[項1] セラミド類およびオレイン酸イソブチルを含有する組成物(以下、「本組成物」と呼称する)。
[項2] 化粧料用である、項1に記載の組成物。
[項3] 皮膚用化粧料または毛髪用化粧料である、項2に記載の組成物。
[項4] セラミド類が、ヒト型セラミドである、項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
[項4-1] セラミド類が、ヒト型セラミドまたは天然セラミドである、項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
[項5] セラミド類が、セラミドNP、セラミドNG、セラミドNS、セラミドEOP、セラミドAS、セラミドAP、セラミドEOS、セラミドNDS、セラミドNH、セラミドADS、セラミドAH、セラミドEOH、セラミド2、およびセラミド3から選ばれる1種以上である、項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
[項6] セラミド類の含有量が、オレイン酸イソブチルの含有量を1質量部としたときに、0.001~20質量部である、項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
[項7] 更に水を含有する、項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
[項8] 更に界面活性剤を含有する、項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
[項9] 乳化物の形態である、項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
[項10] 組成物の総質量比に対する、セラミド類の含有率が、0.0001~50質量%であり、オレイン酸イソブチルの含有率が、0.001~90質量%である、項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
[項11] セラミド類の皮膚への浸透を増大または促進させるための、項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
[項12] セラミド類およびオレイン酸イソブチルを含有する、皮膚外用剤。
[項13] オレイン酸イソブチルを用いた、セラミド類の皮膚への浸透を増大または促進させるための方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セラミド類を皮膚や毛髪といった生体内に有効に浸透させることができる、オレイン酸イソブチルを配合したセラミド類含有組成物(例えば、化粧料用組成物)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】セラミドおよびセラミド混合物(オレイン酸イソブチル含有)のDSC測定の結果を示すグラフである。
図2】細胞間脂質(IL)、および細胞間脂質とセラミド混合物(オレイン酸エステル含有)との混合物のDSC測定の結果を示すグラフである。
図3】塗布1.5時間後の蛍光観察の画像である。図3Aはオレイン酸イソブチル、図3Bはオレイン酸メチル、図3Cはオレイン酸エチル、図3Dはオレイン酸プロピル、図3Eはオレイン酸ブチル、図3Fはトリエチルヘキサノインについての結果を示す。
図4】塗布3時間後の蛍光観察の画像である。図4Aはオレイン酸イソブチル、図4Bはオレイン酸メチル、図4Cはオレイン酸エチル、図4Dはオレイン酸プロピル、図4Eはオレイン酸ブチル、図4Fはトリエチルヘキサノインについての結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る組成物は、必須成分としてセラミド類およびオレイン酸イソブチルを含有する。
【0011】
セラミド類は、スフィンゴ脂質の一種であり、スフィンゴシンと脂肪酸がアミド結合した化合物群を含む。また、セラミド類は、分子中に1個以上の長鎖の直鎖および/もしくは分岐アルキルまたはアルケニル基、さらに、少なくとも2個以上の水酸基、1個以上のアミド基(および/またはアミノ基)を有する非イオン系両親媒性物質であってもよい。また、セラミド類は、前記非イオン系両親媒性物質の水酸基にフォスファチジルコリン残基、または糖残基が結合した物質(いわゆるセラミド誘導体の一種)であってもよい。本組成物に使用されるセラミド類は、市販のものであってよく、あるいは、一般的に知られる合成法を用いて製造してもよい。
【0012】
本明細書中、用語「セラミド」および「セラミド類」とは同義を有する用語であり、相互に交換可能に使用することができる。
セラミド類には、セラミド類およびその誘導体が含まれる。また、セラミド類には、天然物由来のセラミド(例えば、動物由来のセラミド(ヒト型セラミド、ヒト以外の動物(例えば、ウマ)由来の天然セラミド)、および植物由来のセラミド)、および合成手法によって製造されるセラミド(例えば、合成セラミド、プソイドセラミド(合成擬似セラミド)、およびそれらの誘導体)などが含まれるが、これらに限定されない。例えば、好ましい1実施態様において、セラミド類としては、ヒト型セラミドおよび天然セラミドが挙げられる。セラミド類は、天然抽出物であっても、合成物であってもよい。また、セラミド類は、化粧料用組成物中での通常の使用形態であれば、本組成物中に適宜に使用し得る。
【0013】
セラミド類の例としては、通常、化粧料または皮膚外用剤に用いられるセラミド類であれば、特に限定されるものではないが、例えば、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンおよびそれらの長鎖脂肪酸アミドが挙げられる。セラミド類の具体例としては、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド3B、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6I、およびセラミド6IIが挙げられる。これらは、天然セラミドに分類される。セラミドの後の数字は、セラミドのタイプを表している。また、セラミド類として、セラミドNP、セラミドNG、セラミドNSなどが挙げられる。セラミドの後のアルファベット表記は、脂肪酸とスフィンゴイドとの組み合わせを表している。これらは、化粧品等の原料であってよい。また、セラミド類は、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンのリン脂質誘導体、つまりスフィンゴリン脂質が挙げられる。スフィンゴリン脂質の具体例としては、スフィンゴミエリン、フィトスフィンゴミエリンが挙げられる。また、セラミド類には、上記したセラミド類の配糖体であるグルコシルセラミドやセレブロシドが含まれる。また、セラミド類は、ガングリオシドなどのスフィンゴ糖脂質およびフィトスフィンゴ糖脂質が含まれる。また、セラミド類は、適宜、それぞれのセラミド類がとり得る異性体の任意の混合比率の混合物の形態であってもよく、また、特定の異性体の形態であってもよい。これらのセラミド類は、前記の具体例の一種として、または二種以上の任意の混合比の組み合わせとして用いることができる。
【0014】
セラミド類としては、ヒト型セラミドが好ましい。セラミド類はこれに限定されるものではないが、このようなセラミド類を使用した場合には、セラミドが本来有する効果(例えば、保湿効果)の増大が得やすくなる。また、ここでいうヒト型セラミドとは、角層の細胞間脂質を構成する成分のことを指している。ヒト型セラミドは、たとえば、セラミドNP、セラミドNG、セラミドNS、セラミドEOP、セラミドAS、セラミドAP、セラミドEOS、セラミドNDS、セラミドNH、セラミドADS、セラミドAH、セラミドEOH、セラミド2、およびセラミド3などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらを使用した場合には、セラミドが本来有する効果(例えば、保湿効果)の増大がさらに得やすくなる。ところで、セラミド類は、上記のように、機能や由来による分類による表記(例えば、セラミド2)や、構造による分類の表記(例えば、セラミドNS)など、複数の表記方法が存在しており、一部について複数の表記方法による重複した成分があるかもしれないが、本組成物で使用するセラミド類は、その表記によって限定されるものではない。
【0015】
セラミド類は、皮膚の水分を蒸散させないバリア機能、および毛髪にハリやコシを付与する機能を果たし得る。そのため、セラミド類は、製剤に使用され、皮膚や毛髪に適用された場合に、保湿効果を発揮し得る。また、セラミド類は、本組成物において、アトピー改善効果(アトピー性皮膚炎改善効果ともいう)を発揮し得る。また、セラミド類は、外部から生体内に浸透すると、生体内でセラミドの合成を促進させる場合がある。そのため、セラミド類は、セラミド産生促進効果を発揮し得る。このように、セラミド類は種々の機能を有するが、本組成物中におけるセラミド類の機能はこれら前記機能のうちの1つもしくは2つ以上に限定されるものではなく、これら前記機能以外の機能を有していてもよい。
【0016】
オレイン酸イソブチルは、油剤の一種である。具体的にはエステル系油剤である。オレイン酸イソブチルは、オレイン酸とイソブチルアルコールのエステルである。本組成物で使用されるオレイン酸イソブチルは、市販のものであってよく、あるいは、一般的に知られる合成法、例えば、オレイン酸とイソブチルアルコールとの脱水反応によって製造してもよい。オレイン酸イソブチルは、イソブチルオレエート、または(Z)-9-オクタデセン酸2-メチルプロピルなどとも呼ばれる。
【0017】
オレイン酸イソブチルをセラミド類と共に、本組成物中に配合することにより(すなわち、セラミド類とオレイン酸イソブチルの組み合わせ)、セラミド類が皮膚や毛髪といった生体内に浸透しやすくなる。すなわち、オレイン酸イソブチルがあることにより、オレイン酸イソブチルがないときよりも、セラミドが生体に浸透しやすくなる。本組成物は、セラミド類の皮膚への浸透を増大または促進させるための組成物であり得る。したがって、セラミド類が多い量で生体に浸透し得る。また、セラミド類が速やかに生体に浸透し得る。またさらには、オレイン酸イソブチルをセラミド類と共に、本組成物中に配合することにより、セラミド類が安定化しやすくなる。すなわち、セラミド類は、結晶性が高いため、化粧料などの製剤に用いられた際、通常の温度、すなわち、室温または製剤を保存する温度では結晶化などによって固体として析出しやすいが、オレイン酸イソブチルにより、固体になって析出することが抑制される。これらの効果は、オレイン酸イソブチルがセラミドと高い混和性を有するからであると推定される。セラミド類を含有する本組成物は、オレイン酸イソブチルによるセラミド類の生体内への浸透効果が他のエステルよりも優れていることが見いだされた結果、開発された。より詳細に説明すると、従来、オレイン酸エチルやオレイン酸メチルが化粧品等の原料として存在するにも関わらず、それらのオレイン酸誘導体の構造の違いによる機能の違いについては明らかにされていなかった。本願では、その点に着目して、未開発のオレイン酸誘導体を作製してその機能を評価するなどし、オレイン酸イソブチルにおいて、最良の活性を見出したことにより、開発がなされたものである。後述するように、オレイン酸イソブチルによって、セラミド類は細胞間脂質と親和性が高くなるため、皮膚または毛髪に浸透しやすくなり、そして、皮膚表面および皮膚内、あるいは毛髪表面および毛髪内に留まりやすくなると考えられる。
【0018】
ここで、オレイン酸エステルの表面張力を確認したところ、オレイン酸イソブチルは、表面張力が他のオレイン酸エステル(オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸ブチルなど)よりも小さいことが確認された。また、オレイン酸エステルについて、ガラスプレート上での接触角を経時(滴下2、12、22、32秒後)で確認したところ、オレイン酸イソブチルは、他のオレイン酸エステルよりも低い接触角を示した。これらの結果より、オレイン酸イソブチルは、生体、特に皮膚への親和性が高いことが予期される。よって、オレイン酸イソブチルと組み合わせることで、セラミド類が浸透しやすくなることが示唆される。
【0019】
上記セラミド類含有の本組成物は、好ましくは、セラミド類の含有量が、オレイン酸イソブチルの含有量を1質量部としたときに、0.001~20質量部である。セラミド類とオレイン酸イソブチルとがこの含有比になることで、セラミド類が安定に配合され、また、セラミド類の生体内への浸透性がさらに高まる。セラミドの安定性と生体浸透性の観点から、オレイン酸イソブチルの含有量を1質量部としたときのセラミド類の含有量は、0.005~10質量部であることがより好ましく、0.01~5質量部であることがさらに好ましい。さらに、オレイン酸イソブチルの含有量を1質量部としたときのセラミド類の含有量は、0.05質量部以上であってもよく、または0.1質量部以上であってもよい。また、オレイン酸イソブチルの含有量を1質量部としたときのセラミド類の含有量は、4質量部以下であってもよく、または3質量部以下であってもよく、または2質量部以下であってもよい。
【0020】
上記セラミド類含有の本組成物は、適宜更に水を含有してもよい。水の含有により、本組成物が製剤としてより利用しやすくなる。例えば、水の存在により、本組成物に求められる種々の配合成分を容易に配合することができる。また、水の含有により、本組成物の使用感を向上させることもできる。上記本組成物では、水を含有した系において、セラミド類が安定化すると共に、セラミド類の生体内への浸透性が高まる。もちろん、本組成物は、非水系の製剤であってもよい。水は、精製水、蒸留水、水道水、地下水、温泉水、海洋深層水などを利用することができるが、特に限定されるものではない。
【0021】
上記セラミド類含有の本組成物は、適宜更に界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤の含有により、本組成物が製剤としてより利用しやすくなる。例えば、界面活性剤の存在により、本組成物に求められる種々の配合成分を容易に配合することができる。具体的には、油剤や油溶性材料を容易に配合させることができる。特に、水と油剤とが含まれる製剤では、界面活性剤の存在によって、製剤が安定化する。界面活性剤の具体例は、特に限定されるものではなく、化粧料または皮膚外用剤に用いられる通常のものを使用することができる。界面活性剤の具体例は後述する。
【0022】
上記セラミド類含有の本組成物は、乳化物の形態であることが好ましい。本組成物が、乳化物の形態であると、製剤としてより利用しやすくなる。上記本組成物では、乳化した系において、セラミド類が安定化すると共に、セラミド類の生体内への浸透性が高まる。もちろん、本組成物は、非乳化形態の製剤であってもよい。乳化系は、O/W型(水中油型)、W/O型(油中水型)、W/O/W型など、種々の乳化形態であってよい。特に、O/W型の乳化形態が好ましい。
【0023】
上記セラミド類含有の本組成物は、その態様の一つとして、最終製品に配合するための材料としての形態が挙げられる。この材料は、原料、半製品または仕掛かり品として利用され得る。この材料は、セラミド類とオレイン酸イソブチルのみからなるものであってもよいし、それ以外の成分が含まれていてもよい。この態様においては、例えば、セラミド類とオレイン酸イソブチルと、必要に応じ他の成分とを混合して加熱溶解した後、冷却することにより、セラミド類とオレイン酸イソブチルとを含有する材料が得られる。加熱は、セラミド類や他の成分が安定な温度の範囲内で行うことができる。加熱なしで溶解できるならば、加熱はなくてもよい。この材料は、固体であってもよいし、液体であってもよい。他の成分が含まれない場合、この材料は、通常、固体であり得る。固体の材料は、結晶状となっているが、厳密には結晶でなくてもよい。
【0024】
上記セラミド類含有の本組成物が、最終製品に配合するための材料である場合における他の成分は、水、界面活性剤が例示されるが、それ以外の後述する成分であってもよい。この材料は、乳化物の形態であってもよい。
【0025】
上記セラミド類含有の本組成物は、組成物の総質量比に対する、セラミド類の含有率が、0.0001~50質量%であることが好ましい。セラミド類の含有率がこの範囲になることで、セラミド類が製剤中で安定化しやすくなるとともに、セラミド類による上記の効果(例えば、保湿効果)が得られやすくなる。また、本組成物を化粧料や皮膚外用剤などの最終製品に利用しやすくすることができる。すなわち、本組成物中のセラミド類の含有率は、好ましくは、組成物の総質量を100質量%としたときに、0.0005~50質量%である。セラミド類の含有率は、0.0007~20質量%であることがより好ましく、0.001~10質量%であることがさらに好ましい。さらに、セラミド類の含有率は、0.01質量%以上であってもよく、0.05質量%以上であってもよく、または0.1質量%以上であってもよい。また、セラミド類の含有率は、5質量%以下であってもよく、2質量%以下であってもよく、または1質量%以下であってもよい。
【0026】
上記セラミド類含有の本組成物は、オレイン酸イソブチルの含有率が、0.001~90質量%であることが好ましい。オレイン酸イソブチルの含有率がこの範囲になることで、セラミド類が製剤中で安定化しやすくなるとともに、セラミド類の生体への浸透性をより高めることができる。また、本組成物を化粧料や皮膚外用剤などの最終製品に利用しやすくすることができる。オレイン酸イソブチルの含有率は、0.002~50質量%であることがより好ましく、0.003~30質量%であることがさらに好ましい。さらに、オレイン酸イソブチルの含有率は、0.01質量%以上であってもよく、または0.1質量%以上であってもよく、または0.5質量%以上であってもよく、または1質量%以上であってもよい。また、オレイン酸イソブチルの含有率は、20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよく、5質量%以下であってもよい。
【0027】
上記セラミド類含有の本組成物は、化粧料であることが好ましい一態様である。その場合、製剤的に安定で、保湿性の高い化粧料を得ることができる。上記セラミド類含有の本組成物は、特に、化粧料として、皮膚用化粧料、または毛髪用化粧料であることが好ましい。皮膚用化粧料の場合、セラミド類の皮膚への浸透性を高くすることができ、保湿効果の高い化粧料を得ることができる。毛髪用化粧料の場合、セラミド類の毛髪への浸透性を高くすることができ、毛髪にハリおよびコシを付与する化粧料を得ることができる。
【0028】
皮膚用化粧料としては、特に限定されるものではなく、種々の用途の化粧料として利用することができる。例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、ローション、ジェルクリーム、マッサージ化粧料、パック化粧料、ハンドクリーム、アイクリーム、ボディローション、ボディクリーム、メーキャップ化粧料、化粧用下地化粧料などの化粧料が例示される。皮膚用化粧料の使用方法としては、手や指、コットンで使用する方法、不織布などに含浸させて使用する方法、スプレーやミストで吹きつける方法などが挙げられる。
【0029】
毛髪用化粧料としては、特に限定されるものではなく、種々の用途の化粧料として利用することができる。例えば、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアワックス、ヘアスプレー、ヘアリンス、ヘアマスク、ヘアトリートメントなどの化粧料が例示される。毛髪用化粧料の使用方法としては、手や指で使用する方法、スプレーやミストで吹きつける方法などが挙げられる。
【0030】
上記セラミド類含有の本組成物は、皮膚外用剤であることも好ましい一態様である。その場合、製剤的に安定で、保湿性の高い皮膚外用剤を得ることができる。皮膚外用剤としては、特に限定されるものではなく、種々の用途の皮膚外用剤として利用することができる。例えば、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤などが挙げられる。皮膚外用剤は、医薬品であってもよいし、医薬部外品であってもよい。皮膚外用剤の使用方法としては、手や指、コットンで使用する方法、不織布などに含浸させて使用する方法、スプレーやミストで吹きつける方法などが挙げられる。
【0031】
上記セラミド類含有の本組成物に用いる界面活性剤としては、化粧料または皮膚外用剤において一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用することができる。例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤により、製剤がより安定化し、セラミド類の機能がより発揮されやすくなる。界面活性剤の含有率は、組成物の総質量を100質量%としたときに、0.001~60質量%であることが好ましい。界面活性剤の含有率は、0.01~50質量%であることがより好ましく、界面活性剤の含有率は、0.1~40質量%であることがさらに好ましい。
【0032】
界面活性剤は、具体的には、アニオン性界面活性剤として、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸とナトリウム、カリウム、トリエタノールアミンなどのアルカリ物質により形成される脂肪酸石鹸類、アシルグルタミン酸塩類、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレン付加アルキルリン酸塩などが挙げられる。また、カチオン性界面活性剤として、アルキルアミン塩、ポリアミンおよびアルカノールアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩などが挙げられる。また、両性界面活性剤として、N-アルキルN,N-ジメチルアミノ酢酸、レシチン、リン脂質などが挙げられる。また、非イオン性界面活性剤として、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキルおよびアルキル共変性オルガノポリシロキサン、グリセリン変性オルガノポリシロキサン、ポリグリセリン変性オルガノポリシロキサン、グリセリン脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステルおよびそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物などが挙げられる。界面活性剤は、一種または二種以上で用いることができる。
【0033】
上記セラミド類含有の本組成物は、化粧料または皮膚外用剤として配合され得る種々の成分を含有してもよい。そのような成分として、例えば、水溶性成分、油溶性成分、油剤、水溶性高分子、保湿剤、増粘剤、粉体、色素、紫外線吸収剤、被膜形成性剤、pH調整剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料などが挙げられる。
【0034】
上記セラミド類含有の本組成物は、オレイン酸イソブチル以外の油剤を含有してもよいし、含有していなくてもよい。オレイン酸イソブチル以外の油剤を含有することは、好ましい一態様である。油剤を含有することにより、オレイン酸イソブチルのみを油剤として使用するときよりも、製剤の利用性が高まりやすくなる。
【0035】
油剤は、動物油、植物油、合成油などの起源や、固形油、半固形油、液体油、揮発性油などの性状を問わない。油剤としては、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類などが挙げられる。具体的には、炭化水素類として、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテンなどが例示される。天然性の油脂類として、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油などが例示される。また、ロウ類として、ミツロウ、ゲイロウなどが例示される。エステル油類として、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステルなどが例示される。脂肪酸類として、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸などが例示される。高級アルコール類として、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、2-デシルテトラデカノール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、セテアリルアルコール、セトステアリルアルコール、セタノール、オクチルドデカノールなどが例示される。シリコーン油類として、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、高重合度メチルフェニルポリシロキサン、メタクリル変性オルガノポリシロキサン、ステアリル変性オルガノポリシロキサン、オレイル変性オルガノポリシロキサン、ベヘニル変性オルガノポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、アルコキシ変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサンなどが例示される。また、油剤として、トリエチルヘキサノインが用いられてもよい。油剤は、一種または二種以上で用いることができる。
【0036】
油剤として、エステル油類を使用することは好ましい一態様である。エステル油類としては、脂肪酸エステルが例示される。脂肪酸エステルの具体例は、上記で述べたもののほか、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、エチルヘキサン酸セチル、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチレングリコールなどが挙げられる。また、オレイン酸イソブチル以外のオレイン酸エステルが用いられてもよい。例えば、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチルが挙げられる。ただし、これらのオレイン酸エステルよりも、オレイン酸イソブチルの方が、セラミド類の安定化に優れ、セラミド類の生体への浸透性が高いことが分かった。そのため、オレイン酸エステルは、補助的に使用され得る。例えば、オレイン酸イソブチルは、それ以外のオレイン酸エステルの総質量よりも質量が多く配合され得る。
【0037】
ここで、油性成分、すなわち、油剤と油剤に溶解し得る成分との合計質量は、セラミド類含有組成物中の総質量を100質量%としたときに、1~80質量%であることが好ましい一態様である。油性成分の含有量がこの範囲であると、製剤が安定化するとともに、好ましい使用感を得ることができる。油性成分の含有量の範囲は、2~60質量%であってもよいし、5~50%であってもよい。
【0038】
上記セラミド類含有の本組成物は、低級アルコール類を含有することもできる。そのようなアルコール類としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコールが例示される。アルコール類の使用により、製剤が利用しやくなる。例えば、前記種々の成分の溶解性が高まる。
【0039】
上記セラミド類含有の本組成物は、多価アルコールを含有することもできる。多価アルコールとしては、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールが例示される。多価アルコールの使用により、製剤が利用しやくなる。例えば、製剤の安定性が高まる。また、本組成物は、これら多価アルコールと脂肪酸とのエステルを含有することもできる。
【0040】
上記セラミド類含有の本組成物は、上記した成分を混合することにより製造することができる。このとき、セラミド類とオレイン酸イソブチルとを予め混合してこれらを含む材料を調製し、この材料と他の成分とを混合して、本組成物を製造してもよい。もちろん、セラミド類とオレイン酸イソブチルとが予め混合されていなくてもよい。乳化系の組成物を得る場合は、加熱条件下で材料を適宜に混合した後、冷却することにより、乳化型の組成物を得ることができる。製造の際は、たとえば、予め加熱および混合した水性成分と、予め加熱および混合した油性成分とを混合する方法を利用することができる。もちろん、本組成物を製造する方法は、これに限られるものではない。
【0041】
本明細書においては、また、オレイン酸イソブチルを用いた、セラミド類の皮膚への浸透を増大または促進させるための方法が開示される。上記したように、セラミド類をオレイン酸イソブチルとともに使用することにより、セラミド類は皮膚に浸透しやすくなる。その適用方法や適用手段などは、特に限定されるものではないが、好ましくは、上述のとおりである。
【実施例
【0042】
以下、本発明に係る組成物を実施例により説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0043】
試験例1:セラミド混合物のDSC測定
DSC(示差走査熱量計)の測定により、セラミド類とオレイン酸イソブチルとを含む組成物について、親和性(相溶性または混和性といってもよい)を調べた。
【0044】
セラミド類とオレイン酸イソブチルとを、質量比1:3で混合し、加熱溶解した後、冷却することにより、セラミド混合物の固体を得た。セラミド類としては、セラミドであるセラミド2(高砂香料工業(株)製)を使用した。得られた固体を測定サンプルとし、DSC測定を行った。なお、セラミド混合物はセラミド類含有組成物(材料)として使用可能である。
【0045】
DSCの測定は、測定機器として電気冷却ユニットが取り付けられたDSC7000(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用い、5℃/minの速度で加熱スキャンすることにより行った。測定にあたっては、測定サンプル4mg程度をアルミパンに置き、これを密閉した。リファレンスは、空気とした。DSC測定により、融点が吸熱ピークとして検出された。
【0046】
図1は、DSC測定の結果を示すグラフである。このグラフより、セラミド混合物は、セラミド単体よりも吸熱ピークが低温になっていることが分かる。具体的には、セラミド混合物のピークトップは約92℃であり、セラミド単体のピークトップは約107℃である。すなわち、セラミド混合物は、セラミド単体よりも融点が降下しているといえる。融点の低下は、オレイン酸イソブチルがセラミドと混和していることを示している。そのため、オレイン酸イソブチルにより、セラミドが結晶化しにくくなり、製剤が安定化されることが示唆される。
【0047】
なお、オレイン酸エステルとして、オレイン酸イソブチルの代わりに、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸ブチル、またはオレイン酸イソプロピルを使用したセラミド混合物についても親和性について確認した。すなわち、上記と同様に、セラミド2と各オレイン酸エステルとを混合したセラミド混合物を調製し、DSC測定を実施したところ、これらのセラミド混合物についてもそれぞれ、セラミド単体よりも融点降下がみられた。オレイン酸エステルは、セラミドと混和することが分かった。
【0048】
試験例2:セラミド混合物の細胞間脂質との親和性
各オレイン酸エステルを含有するセラミド混合物と細胞間脂質との親和性を確認することにより、セラミド混合物の生体内への浸透しやすさについて検討を行った。
【0049】
細胞間脂質(IL;Intercellular Lipid)として、S.Yoshida,et al,Chem.Pharm.Bull.,vol.65,pages134-142(2017)の文献の記載に基づいて擬似細胞間脂質を調製した。この擬似細胞間脂質は、セラミド5(高砂香料工業(株)製)、コレステロール(Sigma Aldrich Inc.製)、およびパルミチン酸から調製された。擬似細胞間脂質は、皮膚角質層の細胞間の脂質成分に類似するものであり、擬似細胞間脂質を使用することにより、本来の細胞間脂質での挙動が理解され得る。まず、セラミド5、コレステロール、およびパルミチン酸の各試料について、それぞれ1mmol秤量してこれらを混合し、この混合物をクロロホルム/メタノール(容量比2:1)の溶媒に完全に溶解させた。次に、混合物の溶液をフラスコに入れ、ロータリーエバポレーターを使用して溶媒を除去した後、酢酸緩衝液(pH5.0、濃度0.1M)を、試料濃度が10mmol/Lになるように添加した。この試料溶液を65℃の水浴中でインキュベートし、超音波処理機(MICROTEC製)で5分間、超音波処理を行った。これにより、擬似細胞間脂質含有液が得られた。擬似細胞間脂質含有液は室温で保存された。以下の混和性の試験の際には、試験前に擬似細胞間脂質含有液をろ過し、自然乾燥でろ過物の水分を蒸発させることにより、試験用の擬似細胞間脂質を得た。
【0050】
上記で得られた擬似細胞間脂質4mgと、セラミド混合物4mgとを混合し、測定サンプルとした。セラミド混合物は、試験例1と同様に、セラミド2と各オレイン酸エステルとの混合により得られた混合物とした。オレイン酸エステルとしては、オレイン酸イソブチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸ブチル、またはオレイン酸イソプロピルを使用した。このようにして得た測定サンプルについて、試験例1と同様の条件(ただしサンプル量は8mg)で、DSC測定を行った。
【0051】
図2は、DSC測定の結果を示すグラフであり、表1は、DSC測定結果に基づくピーク温度を示す表である。該グラフから、各オレイン酸エステルを含むセラミド混合物と細胞間脂質との混合物について、75~90℃の間に吸熱ピークがあることが確認された。また、該グラフから、細胞間脂質単体、およびセラミド混合物と細胞間脂質との混合物について、40~65℃の間に吸熱ピークがあることが確認された。表1は、2つの吸熱ピークについてのピークトップの具体的な温度を示している。
【0052】
【表1】
【0053】
上記DSC測定結果において、75~90℃のピークは、セラミド混合物中のセラミドに由来するピークであり、試験例1のセラミド単体およびセラミド混合物の結果と同様に、各オレイン酸エステルによってセラミドのピークが低温度にシフトしており、そのピークシフト幅は試験例1のときよりも大きいことから、各オレイン酸エステルはセラミドを細胞間脂質と混和する作用を持つことが分かる。特に、オレイン酸イソブチルを含むセラミド混合物は、他のオレイン酸エステルのセラミド混合物よりも融点降下の程度が大きい。よって、オレイン酸イソブチルは、セラミド混合物中のセラミドを細胞間脂質の中へと誘導する高い混和作用に優れていることが確認された。
【0054】
また、上記DSC測定結果において、40~65℃のピークは、細胞間脂質に由来するピークであり、オレイン酸エステルを含んだセラミド混合物を使用した場合は、細胞間脂質由来のピークが、細胞間脂質単体のときよりも低温度にシフトしていることが分かる。特に、オレイン酸イソブチルを含むセラミド混合物を使用したときは、他のオレイン酸エステルのセラミド混合物のときよりも融点降下の程度が大きい。よって、オレイン酸イソブチルが、細胞間脂質成分と高く混和していることが確認された。なお、オレイン酸イソブチルは、細胞間脂質成分のうち40~65℃にピークを示す成分との混和性が特に高いといえ、この成分が細胞間脂質内のセラミドであり得る。
【0055】
以上より、オレイン酸イソブチルは、セラミド混合物中のセラミドとの混和性が高く、かつ、細胞間脂質成分との混和性が高く、セラミドを含む製剤を安定化させるとともに、セラミドを生体に浸透しやすくすることが示唆される。
【0056】
試験例3:皮膚浸透性試験
蛍光セラミドを用いた皮膚浸透性試験を実施し、オレイン酸イソブチルによるセラミドの皮膚への浸透性向上効果を確認した。
【0057】
ヒトより摘出された摘出皮膚を皮膚サンプルとして使用した。この皮膚サンプルを外科用ナイフにより縦15mm×横15mmのサイズに切り取って皮膚片を作製し、この皮膚片に直径11mmの円を描き、この円を試料サンプルの適用エリアとした。
【0058】
試料サンプルは、下記の配合組成により調製した(組成の合計量は100質量%)。オレイン酸エステルについては、オレイン酸イソブチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、またはオレイン酸ブチルを用いた。オレイン酸メチルは、分子量が最も小さいオレイン酸エステルであり、オレイン酸プロピルは、置換基であるプロピル基の主鎖長がイソブチル基と同じであり、オレイン酸ブチルは、置換基であるブチル基がイソブチル基と同じ分子量である。また、比較対象(ネガティブコントロール)として、下記の配合組成において、オレイン酸エステルをトリエチルヘキサノインに変えたものを調製した。トリエチルヘキサノインは、油剤として汎用されている成分である。なお、試料サンプルは、セラミド類含有組成物として使用可能である。
【0059】
試料サンプルの配合組成
(成分) (質量%)
セラミド2 0.2
オレイン酸エステル 15
界面活性剤 1
エタノール 2
1,3-ブチレングリコール 20
精製水 残量
【0060】
ここで、上記のセラミド2として、全セラミドの1質量%が蛍光セラミドになったものを使用した。蛍光セラミドは、セラミド2に蛍光性の置換基を導入したものであり、C6-NBD-ceramideと呼ばれるものである。蛍光セラミドは緑色蛍光を生じる。なお、界面活性剤としては、ステアリン酸PEG-40を用いた。
【0061】
上記試料サンプルの調製にあたっては、まず、成分を混合し、加熱して溶解した。次に、超音波処理機(MICROTEC製)で超音波処理することにより、この混合物を撹拌した。混合物を冷却することにより、乳化物を得た。この乳化物が試料サンプルである。乳化物について、BECKMAN COULTER製のLS13320レーザーコールターカウンターにより、ミセル粒子の粒子径を測定したところ、いずれも、粒子径700nm程度であった。このように、安定な乳化物が得られた。
【0062】
皮膚浸透性試験では、それぞれ、皮膚片にサンプル試料5μLを塗布した。そして、温度32~35℃の条件下、1.5時間または3時間、試料サンプルが塗布された皮膚片をインキュベートした。その後、PBS緩衝液で湿らせた紙ワイパーにより皮膚片の表面に残存する試料サンプルを軽く拭き取り、皮膚片を液体樹脂に埋め込み、-100℃で凍結固定した。固定処理された皮膚片をクリオスタット(CM3050S、Leica Microsystems)で厚さ20μmにスライスし、皮膚薄片を作製した。この皮膚薄片について、角層中の蛍光セラミド(緑色蛍光)の分布を共焦点レーザー顕微鏡(CLSM;FLUOVIEW FV-1000、OLYMPUS製)を用いて蛍光観察した。
【0063】
図3および図4に、蛍光観察の画像を示す。図3は塗布1.5時間後の結果であり、図3Aはオレイン酸イソブチル、図3Bはオレイン酸メチル、図3Cはオレイン酸エチル、図3Dはオレイン酸プロピル、図3Eはオレイン酸ブチル、図3Fはトリエチルヘキサノインについての結果である。図4は塗布3時間後の結果であり、図4Aはオレイン酸イソブチル、図4Bはオレイン酸メチル、図4Cはオレイン酸エチル、図4Dはオレイン酸プロピル、図4Eはオレイン酸ブチル、図4Fはトリエチルヘキサノインについての結果である。
【0064】
図3および図4の画像から、オレイン酸イソブチルの蛍光発色が最も強く、次に、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル、オレイン酸ブチル、トリエチルヘキサノイン、オレイン酸メチルの順に、蛍光発色が弱くなっていることが分かる。とりわけ、オレイン酸イソブチルの蛍光の程度は、他のオレイン酸エステルの蛍光の程度よりもかなり大きい。また、オレイン酸イソブチルは皮膚の深くに浸透していることも分かる。
【0065】
表2に、蛍光観察画像の結果を数値化したデータを示す。表2では、画像において、全面積に対する蛍光を示した面積の百分率(%)を示している。表2からも、オレイン酸イソブチルによる浸透性の程度が大きいことが理解できる。
【0066】
【表2】
【0067】
図3および図4の画像結果および表2の数値結果に示すように、オレイン酸イソブチルを用いた試料サンプルでは、蛍光が最も強く発しており、セラミドが皮膚の表面層に多く残存していることが確認される。すなわち、オレイン酸イソブチルを含有する試料サンプルでは、セラミドが皮膚に保持されており、セラミドが皮膚に浸透および滞留しやすくなっていることが示唆される。
【0068】
(製剤例)
化粧料として使用可能な、以下の製剤を製造した。なお、以下の製剤例において、配合量(質量%)で「残量」とあるのは、製剤の合計量が100質量%となる量であることを意味する。
【0069】
製剤例1:乳液
(成分) (質量%)
1.ポリソルベート80 0.5
2.水添レシチン 0.5
3.ジプロピレングリコール 10.0
4.1,3-ブチレングリコール 5.0
5.グリコシルトレハロース 0.5
6.水酸化ナトリウム 0.05
7.カルボマー 0.05
8.(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマー 0.1
9.アセチルヒアルロン酸 0.05
10.ミネラルオイル 5.0
11.水添ポリイソブテン 5.0
12.トコフェロール 0.05
13.セラミドNP 0.05
14.イソステアリン酸 0.5
15.セテアリルアルコール 1.5
16.オレイン酸イソブチル 0.5
17.エチルヘキサン酸セチル 5.0
18.コレステロール 0.5
19.セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
20.ステアリン酸グリセリル 0.5
21.ステアロイルグルタミン酸 0.3
22.パルミチン酸ソルビタン 0.5
23.エタノール 10.0
24.香料 0.3
25.精製水 残量
【0070】
(製造方法)
A:成分No.1~9、25を均一に加熱混合溶解した。
B:成分No.10~22を均一に加熱混合溶解した。
C:上記Aに上記Bを添加し、乳化混合した。
D:上記Cを冷却し、成分No.23、24を添加し、乳液を得た。
【0071】
製剤例1の乳液は、製剤が安定で、保湿性が高く、使用感もよいことが確認された。
【0072】
製剤例2:アイクリーム
(成分) (質量%)
1.モノステアリン酸ポリエチレングリコール 2.5
2.水添レシチン 0.5
3.グリセリン 5.0
4.1,3-ブチレングリコール 15.0
5.グリコシルトレハロース 0.5
6.キサンタンガム 0.05
7.ジグリセリン 3.0
8.塩酸ピリドキシン 0.1
9.D-パントテニルアルコール 0.05
10.マカデミアナッツ油 3.0
11.ミネラルオイル 3.0
12.トコフェロール 0.05
13.セラミドNP 0.05
14.イソステアリン酸 0.5
15.セトステアリルアルコール 3.0
16.オレイン酸イソブチル 0.5
17.α―オレフィンオレゴマー 5.0
18.ジペンタエリトリット脂肪酸エステル 3.0
19.ワセリン 3.0
20.ベヘニルアルコール 3.0
21.モノステアリン酸グリセリル 2.0
22.リン酸アスコルビルMg 0.05
23.香料 0.3
24.精製水 残量
【0073】
(製造方法)
A:成分No.1~9、24を均一に加熱混合溶解した。
B:成分No.10~21を均一に加熱混合溶解した。
C:上記Bに上記Aを添加し、乳化混合した。
D:上記Cを冷却し、成分No.22、23を添加し、アイクリームを得た。
【0074】
製剤例2のアイクリームは、製剤が安定で、保湿性が高く、使用感もよいことが確認された。
【0075】
製剤例3:クリーム
(成分) (質量%)
1.PCA-Na 0.05
2.水添レシチン 1.0
3.グリセリン 0.5
4.1,3-ブチレングリコール 2.0
5.グリコシルトレハロース 0.5
6.スイセンジノリ多糖体 0.05
7.カルボマー 0.05
8.(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマー 1.0
9.(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)
コポリマー 0.5
10.ジカプリン酸PG 5.0
11.ジメチコン 5.0
12.トコフェロール 0.05
13.セラミドNP 0.05
14.イソステアリン酸 0.5
15.(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 1.0
16.オレイン酸イソブチル 0.5
17.エタノール 10.0
18.香料 0.3
19.精製水 残量
【0076】
(製造方法)
A:成分No.1~9、19を均一に加熱混合溶解した。
B:成分No.10~16を均一に加熱混合溶解した。
C:上記Aに上記Bを添加し、乳化混合した。
D:上記Cを冷却し、成分No.17、18を添加し、クリームを得た。
【0077】
製剤例3のクリームは、製剤が安定で、保湿性が高く、使用感もよいことが確認された。
【0078】
製剤例4:ヘアリンス
(成分) (質量%)
1.ベヘニルPGトリモニウムクロリド 1.5
2.塩化ベヘニルトリメチルアンモニム 0.5
3.塩化ステアリルトリメチルアンモニム 0.5
4.塩化ジステアリルジメチルアンモニム 0.2
5.ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウム
メトサルフェート 0.1
6.セトステアリルアルコール 2.0
7.セタノール 1.0
8.ステアリルアルコール 1.0
9.ベヘニルアルコール 1.0
10.オクチルドデカノール 1.5
11.セラミドNP 0.1
12.イソステアリルアルコール 0.5
13.オレイルアルコール 0.3
14.水添ヤシ油 1.8
15.水添パーム油 0.2
16.水添ヒマシ油 0.2
17.水添ポリイソブテン 0.5
18.エチルヘキサン酸セチル 1.5
19.トリエチルヘキサノイン 2.0
20.オレイン酸イソブチル 0.3
21.オリーブ脂肪酸エチル 0.2
22.ジメチコン(25℃において10mPa・s) 3.5
23.ジメチコン(25℃において100万mPa・s) 0.5
24.ジメチコノール(25℃において100万mPa・s)0.5
25.アモジメチコン 0.8
26.グリセリン 1.5
27.プロピレングリコール 3.5
28.1,3-ブチレングリコール 0.5
29.1,3-プロパンジオール 1.0
30.トリプロピレングリコール 0.5
31.クエン酸 0.01
32.クエン酸Na 0.01
33.グリシン 0.1
34.ジラウロイルグルタミン酸リシンNa 0.1
35.ポリアクリル酸ホスホリルコリングリコール 0.1
36.香料 0.3
37.精製水 残量
【0079】
(製造方法)
A:成分No.1~25を均一に加熱混合溶解した。
B:成分No.26~35、37を均一に加熱混合溶解した。
C:上記Bに上記Aを添加し、乳化混合した。
D:上記Cを冷却し、成分No.36を添加し、ヘアリンスを得た。
【0080】
製剤例4のヘアリンスは、製剤が安定で、保湿性が高く、使用感もよいことが確認された。
【0081】
製剤例5:ヘアマスク
(成分) (質量%)
1.ベヘニルPGトリモニウムクロリド 2.5
2.塩化ベヘニルトリメチルアンモニム 1.0
3.塩化ジココイルジメチルアンモニム 0.5
4.塩化ジステアリルジメチルアンモニム 0.2
5.ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウム
メトサルフェート 0.1
6.ステアリルPGトリモニウムクロリド 0.4
7.セトステアリルアルコール 6.0
8.ステアリルアルコール 1.0
9.ベヘニルアルコール 1.5
10.オクチルドデカノール 2.0
11.デシルテトラデカノール 1.0
12.イソステアリルアルコール 0.2
13.オレイン酸 0.3
14.水添ヤシ油 2.0
15.セラミドNG 0.1
16.ワセリン 0.2
17.重質流動イソパラフィン 0.5
18.ポリプロピレン 0.4
19.イソステアリン酸デキストリン 0.5
20.オレイン酸イソブチル 0.5
21.オリーブ脂肪酸エチル 0.5
22.ジメチコン(25℃において100mPa・s) 5.0
23.ジメチコノール(25℃において10万mPa・s) 1.0
24.(ビスブチロキシアミジメチコン/PEG-60)
コポリマー 0.5
25.アモジメチコン 0.5
26.ジグリセリン 1.5
27.PEG-8 2.0
28.PEG-45M 0.2
29.ジプロピレングリコール 1.0
30.エタノール 0.5
31.乳酸 0.01
32.乳酸Na 0.01
33.イソステアロイル加水分解コラーゲンAMPD 0.1
34.PCA-Na 0.05
35.ポリクオタニウム-51(注1) 0.1
36.ポリクオタニウム-61(注2) 0.1
37.ポリクオタニウム-65(注3) 0.3
38.ポリクオタニウム-104 0.1
39.ポリクオタニウム-64(注4) 0.1
40.香料 0.3
41.精製水 残量
(注1)LIPIDURE-PMB(BG)(日油社製)
(注2)LIPIDURE-NR(日油社製)
(注3)LIPIDURE-A(日油社製)
(注4)LIPIDURE-C(日油社製)
【0082】
(製造方法)
A:成分No.1~25を均一に加熱混合溶解した。
B:成分No.26~39、41を均一に加熱混合溶解した。
C:上記Bに上記Aを添加し、乳化混合した。
D:上記Cを冷却し、成分No.40を添加し、ヘアマスクを得た。
【0083】
製剤例5のヘアマスクは、製剤が安定で、保湿性が高く、使用感もよいことが確認された。
【0084】
製剤例6:ヘアトリートメント
(成分) (質量%)
1.ベヘニルPGトリモニウムクロリド 2.0
2.塩化ベヘニルトリメチルアンモニム 0.5
3.塩化ジステアリルジメチルアンモニム 0.5
4.セトステアリルアルコール 4.5
5.ベヘニルアルコール 1.5
6.オクチルドデカノール 1.0
7.水添ヤシ油 4.0
8.オレイン酸イソブチル 1.0
9.オレイン酸フィトステリル 1.5
10.ダイマージリノレイル水添ロジン縮合物 0.3
11.ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル
ビスイソステアリル 0.1
12.ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/
フィトステリル) 0.2
13.セラミドNS 0.1
14.テトライソステリン酸ペンタエリスリチル 1.0
15.テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 0.2
16.ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/
ロジン酸)ジペンタエリスリチル 0.2
17.シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸
ビスエトキシジグリコール 0.2
18.(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)
ポリグリセリル-10 0.3
19.イソノナン酸イソノニル 0.5
20.イソノナン酸イソトリデシル 0.5
21.フェニルトリメチコン 5.0
22.ジメチコン(25℃において1000万mPa・s) 0.2
23.ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 1.0
24.(ビスイソブチルPEG-14/アモジメチコン)
コポリマー 0.5
25.ビス(ヒドロキシ/メトキシ)アモジメチコン 0.5
26.メチルグルセス-10 1.5
27.PPG-10メチルグルコース 2.0
28.グルコシルトレハロース 0.2
29.PPG-52ブチル 1.0
30.イソプロパノール 0.5
31.リンゴ酸 0.01
32.リンゴ酸Na 0.01
33.(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)
ヒドロキシプロピル加水分解シルク 0.1
34.ジグルコシル没食子酸 0.05
35.ポリクオタニウム-6(注5) 0.1
36.ポリクオタニウム-7(注6) 0.1
37.ポリクオタニウム-22(注7) 0.1
38.ポリクオタニウム-39(注8) 0.1
39.グア-ヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド(注9)0.1
40.香料 0.3
41.精製水 残量
(注5)Merquat 100 Polymer(日本ルーブリゾール社製)
(注6)Merquat 550 Polymer(日本ルーブリゾール社製)
(注7)Merquat 295 Polymer(日本ルーブリゾール社製)
(注8)Merquat 3330PR Polymer(日本ルーブリゾール社製)
(注9)JAGUAR C-14S(Solvay S.A.社製)
【0085】
(製造方法)
A:成分No.1~25を均一に加熱混合溶解した。
B:成分No.26~39、41を均一に加熱混合溶解した。
C:上記Bに上記Aを添加し、乳化混合した。
D:上記Cを冷却し、成分No.40を添加し、ヘアトリートメントを得た。
【0086】
製剤例6のヘアトリートメントは、製剤が安定で、保湿性が高く、使用感もよいことが確認された。
【0087】
製剤例7:化粧水
(成分) (質量%)
1.ラウリン酸ポリグリセリル-10 1.5
2.エタノール 20.0
3.ジプロピレングリコール 4.0
4.香料 0.5
5.セラミドNP 0.05
6.オレイン酸イソブチル 0.5
7.トコフェロール 0.05
8.クエン酸 0.02
9.クエン酸Na 0.1
10.ソルビトール 0.1
11.アセチルヒアルロン酸 0.05
12.精製水 残量
【0088】
(製造方法)
A:成分No.1~7を均一に加熱混合溶解した。
B:成分No.8~12を均一に混合溶解した。
C:上記Bに上記Aを添加して混合し、化粧水を得た。
【0089】
製剤例7の化粧水は、製剤が安定で、保湿性が高く、使用感もよいことが確認された。
【0090】
製剤例8:ジェルクリーム
(成分) (質量%)
1.(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))
クロスポリマー 0.05
2.カルボマー 0.3
3.精製水 残量
4.AMP 0.1
5.BG 0.5
6.エタノール 50.0
7.セラミドNP 0.05
8.イソステアリン酸 0.5
9.香料 0.05
10.オレイン酸イソブチル 0.5
11.イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油 0.05
【0091】
(製造方法)
A:成分No.1~6を均一に混合溶解した。
B:成分No.7~11を均一に加熱混合溶解した。
C:上記Aに上記Bを添加し、乳化混合して、ジェルクリームを得た。
【0092】
製剤例8のジェルクリームは、製剤が安定で、保湿性が高く、使用感もよいことが確認された。
図1
図2
図3
図4