IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーションの特許一覧

特許7324280ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシンにおける自然放出および熱光子雑音の減少
<>
  • 特許-ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシンにおける自然放出および熱光子雑音の減少 図1
  • 特許-ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシンにおける自然放出および熱光子雑音の減少 図2
  • 特許-ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシンにおける自然放出および熱光子雑音の減少 図3
  • 特許-ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシンにおける自然放出および熱光子雑音の減少 図4
  • 特許-ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシンにおける自然放出および熱光子雑音の減少 図5
  • 特許-ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシンにおける自然放出および熱光子雑音の減少 図6
  • 特許-ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシンにおける自然放出および熱光子雑音の減少 図7
  • 特許-ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシンにおける自然放出および熱光子雑音の減少 図8
  • 特許-ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシンにおける自然放出および熱光子雑音の減少 図9
  • 特許-ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシンにおける自然放出および熱光子雑音の減少 図10
  • 特許-ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシンにおける自然放出および熱光子雑音の減少 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシンにおける自然放出および熱光子雑音の減少
(51)【国際特許分類】
   G06F 7/38 20060101AFI20230802BHJP
   G06N 10/00 20220101ALI20230802BHJP
【FI】
G06F7/38 510
G06N10/00
G06F7/38 610
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021524968
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2020051599
(87)【国際公開番号】W WO2020160920
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】16/269,185
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】ブロン、ニコラス、トーレイフ
(72)【発明者】
【氏名】グマン、パトリク
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-533253(JP,A)
【文献】特表2018-537841(JP,A)
【文献】特表2018-538681(JP,A)
【文献】国際公開第2018/052427(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 7/38
G06N 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然放出および熱光子雑音から量子プロセッサのキュービットを保護する方法であって、
フィルタの第1のポートを量子プロセッサのキュービット回路の読み出し共振器の信号線に接続することであって、前記フィルタが、前記読み出し共振器に関連付けられた読み出し共振器周波数を含む通過帯域および前記キュービット回路に関連付けられたキュービット遷移周波数を含む第1の阻止帯域を有する、前記接続することと、
前記フィルタの第2のポートを測定デバイスに接続することと、
クライオスタットのステージに熱接触する基準接地に前記フィルタの信号線をガルバニック接続することであって、前記ガルバニック接続が、前記キュービット回路の入力信号線に対してさらに熱接続を行う、前記ガルバニック接続することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記フィルタが、バンドパス・フィルタを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルタが、パーセル・フィルタを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタが、増幅器ポンプ周波数を含む第2の阻止帯域をさらに含む、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記フィルタが、1/4波長共振器フィルタを含む、請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記フィルタおよび前記キュービット回路が、希釈冷凍機内に配置される、請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記フィルタが、接地面に連結された1/4波長マイクロストリップ・スタブを含む、請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記フィルタが、ビアによる接地面へのガルバニック接続へ終端する前記1/4波長マイクロストリップ・スタブに連結され、かつ前記1/4波長マイクロストリップ・スタブと同一平面上の第1の伝送線路および第2の伝送線路をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1/4波長マイクロストリップ・スタブが、前記第1の伝送線路および前記第2の伝送線路に垂直に配置される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フィルタが、インダクタンス負荷Y形共振器を含む、請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記熱接続が、出力信号線における熱光子雑音を減少させるように構成される、請求項1ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記フィルタが、低下した熱境界抵抗を有する種類の材料で構築される、請求項1ないし11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
自然放出および熱光子雑音から量子プロセッサのキュービットを保護するためのシステムであって、前記システムが、
量子プロセッサのキュービット回路であって、前記キュービット回路が、読み出し共振器に連結されたキュービットを有する、前記キュービット回路と、
前記読み出し共振器の信号線に対するフィルタの第1のポートを有するフィルタであって、前記フィルタが、前記読み出し共振器に関連付けられた読み出し共振器周波数を含む通過帯域および前記キュービット回路に関連付けられたキュービット遷移周波数を含む第1の阻止帯域を有する、前記フィルタと、
前記フィルタの第2のポートに接続された測定デバイスと、を備え、
前記フィルタの信号線が、クライオスタットのステージに熱接触する基準接地にガルバニック接続され、前記ガルバニック接続が、前記キュービット回路の入力信号線に対してさらに熱接続を行う、システム。
【請求項14】
前記フィルタが、バンドパス・フィルタを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記フィルタが、パーセル・フィルタを含む、請求項13または14に記載のシステム。
【請求項16】
前記フィルタが、増幅器ポンプ周波数を含む第2の阻止帯域をさらに含む、請求項13ないし15のいずれかに記載のシステム。
【請求項17】
前記フィルタが、1/4波長共振器フィルタを含む、請求項13ないし16のいずれかに記載のシステム。
【請求項18】
自然放出および熱光子雑音から量子プロセッサのキュービットを保護するための装置であって、前記装置が、
量子プロセッサのキュービット回路の読み出し共振器の信号線への接続のための第1のポートを有するフィルタであって、前記フィルタが、前記読み出し共振器に関連付けられた読み出し共振器周波数を含む通過帯域および前記キュービット回路に関連付けられたキュービット遷移周波数を含む第1の阻止帯域を有し、前記フィルタが、測定デバイスへの接続のための第2のポートをさらに含む、前記フィルタを備え、
前記フィルタの信号線が、クライオスタットのステージに熱接触する基準接地にガルバニック接続され、前記ガルバニック接続が、前記キュービット回路の入力信号線に対してさらに熱接続を行う、装置。
【請求項19】
前記フィルタが、バンドパス・フィルタを含む、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記フィルタが、パーセル・フィルタを含む、請求項18または19に記載の装置。
【請求項21】
前記フィルタが、増幅器ポンプ周波数を含む第2の阻止帯域をさらに含む、請求項18ないし20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
前記フィルタが、1/4波長共振器フィルタを含む、請求項18ないし21のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、量子コンピューティング・マシンのための方法、システム、および装置に関する。より詳細には、本発明は、ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシンにおける自然放出および熱光子雑音の両方の減少のための方法、システム、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、単語または語句中の「Q」という接頭語は、使用される場所が明示的に区別されない限り、量子計算の文脈におけるその単語または語句の参照を示している。
【0003】
分子を含む自然界は、物質界が最も基礎的なレベルでどのように動作するかを探究する物理学の一分野である量子力学の法則に従う。このレベルでは、粒子が奇妙な挙動を示し、同時に1つより多くの状態をとり、非常に遠くの他の粒子と相互作用する。量子計算は、これらの量子現象を利用して情報を処理する。
【0004】
我々が今日使用するコンピュータは、古典的コンピュータ(本明細書では「従来型」コンピュータまたは従来型ノード、即ち「CN」とも呼ばれる)といわれる。従来型コンピュータは、フォン・ノイマン式アーキテクチャというものにおいて、半導体技術を用いて製造されるプロセッサ、半導体メモリ、および磁気記憶デバイスまたはソリッド・ステート記憶デバイスを使用する。特に、従来型コンピュータにおけるプロセッサは、バイナリ・プロセッサであり、即ち、1および0を含む文字列で表されるバイナリ・データに対して動作する。
【0005】
量子プロセッサ(qプロセッサ)は、量子もつれ状態のキュービット・デバイス(本明細書では簡潔に「キュービット」、複数の「キュービット」と呼ばれる)の変わった性質を用いて計算タスクを実行する。量子力学が動作する特定の領域では、問題の粒子が、「オン」状態、「オフ」状態、または同時に「オン」および「オフ」の両方の状態などの、複数の状態で存在し得る。半導体プロセッサを用いたバイナリ計算が、単にオン状態およびオフ状態(バイナリコードの1および0に相当する)を用いることに限定される場合、量子プロセッサは、問題のこれらの量子状態を利用して、データ計算において使用可能な信号を出力する。
【0006】
従来型コンピュータは、ビットで情報を符号化する。各ビットは、1または0の値をとり得る。これらの1および0は、コンピュータ機能を最終的に駆動するオン/オフ・スイッチによって物理的に実施される。一方、量子コンピュータは、キュービットに基づき、キュービットは、量子物理学の2つの重要な原理、重ね合わせおよびもつれに従って動作する。重ね合わせは、各キュービットが、1および0の両方を同時に表し得ることを意味する。もつれは、重ね合わせにおけるキュービットが非古典的なやり方で互いに相互に関連付けられ得ること、即ち、1つの状態(それが1または0のいずれにせよ)が別の状態に依存し得ること、および2つのキュービットが個々に扱われるときよりもそれらがもつれているときに、2つのキュービットについて確認され得る情報がより多く存在することを意味する。これら2つの原理を用いて、キュービットは、より高度な情報のプロセッサとして動作して、従来型コンピュータを用いて処理し難い難問を量子コンピュータが解決することができるように、量子コンピュータが機能することを可能にする。
【0007】
普遍的な量子コンピュータの開発に対する障害は、キュービットのデコヒーレンスを防止することである。キュービットのコヒーレンスに関する2つの測定値が、緩和時間(T)およびデコヒーレンス時間(T)であり、デコヒーレンス時間は、緩和時間と位相緩和時間の両方を包含する。緩和時間(T)は、キュービットが基底状態に向かって緩和する時間の測定値であり、キュービットの寿命を表す。デコヒーレンス時間(T)は、量子コヒーレンスについての時間の測定値であり、それは、緩和に加えて、キュービットの位相内に含まれる情報がコヒーレンスを失うようにキュービットの位相情報が拡散していくことを特徴付ける位相緩和時間を含む。
【0008】
回路量子電磁力学(QED)アーキテクチャでは、キュービットは、マイクロ波伝送線路キャビティに連結されている。回路QEDアーキテクチャでは、緩和時間は、典型的には、キャビティを通した自然光子放出によって設定される。最大可能緩和時間は、パーセル効果(Purcell effect)によって設定され、即ち、欠陥、準粒子などとの連結はない。さらに、回路QEDアーキテクチャでは、キャビティ読み出し速度は、緩和時間、即ちパーセル効果によって設定されるキュービット寿命(T)に反比例する。自然放出は、パーセル効果に起因したキュービットの緩和であり、欠陥、準粒子などに連結し、熱光子雑音は、制御および測定信号を生成する室温機器、黒体放射からの不十分な遮蔽、マイクロ波増幅器のバックアクション(backaction)、クライオスタットの適切な温度ステージに対する不十分な熱化のために所望の温度を達成しない構成要素などによって生じる。
【0009】
その結果、コヒーレンスを維持するために、自然光子放出および位相緩和から量子コンピューティング・デバイス内のキュービットを保護する必要がある。したがって、当技術分野において前述した問題に対処する必要がある。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様から見ると、本発明は、自然放出および熱光子雑音から量子プロセッサのキュービットを保護する方法であって、フィルタの第1のポートを量子プロセッサのキュービット回路の読み出し共振器の信号線に接続することであって、フィルタが、読み出し共振器に関連付けられた読み出し共振器周波数を含む通過帯域およびキュービット回路に関連付けられたキュービット遷移周波数を含む第1の阻止帯域を有する、接続することと、フィルタの第2のポートを測定デバイスに接続することと、クライオスタットのステージに熱接触する基準接地にフィルタの信号線をガルバニック接続することであって、ガルバニック接続が、キュービット回路の入力信号線に対してさらに熱接続を行う、ガルバニック接続することと、を含む、方法を提供する。
【0011】
さらなる態様から見ると、本発明は、自然放出および熱光子雑音から量子プロセッサのキュービットを保護するためのシステムであって、システムが、量子プロセッサのキュービット回路であって、キュービット回路が、読み出し共振器に連結されたキュービットを有する、キュービット回路と、読み出し共振器の信号線に対するフィルタの第1のポートを有するフィルタであって、フィルタが、読み出し共振器に関連付けられた読み出し共振器周波数を含む通過帯域およびキュービット回路に関連付けられたキュービット遷移周波数を含む第1の阻止帯域を有する、フィルタと、フィルタの第2のポートに接続された測定デバイスと、を備え、フィルタの信号線が、クライオスタットのステージに熱接触する基準接地にガルバニック接続され、ガルバニック接続が、キュービット回路の入力信号線に対してさらに熱接続を行う、システムを提供する。
【0012】
さらなる態様から見ると、本発明は、自然放出および熱光子雑音から量子プロセッサのキュービットを保護するための装置であって、装置が、量子プロセッサのキュービット回路の読み出し共振器の信号線への接続のための第1のポートを有するフィルタであって、フィルタが、読み出し共振器に関連付けられた読み出し共振器周波数を含む通過帯域およびキュービット回路に関連付けられたキュービット遷移周波数を含む第1の阻止帯域を有し、フィルタが、測定デバイスへの接続のための第2のポートをさらに含む、フィルタを備え、フィルタの信号線が、クライオスタットのステージに熱接触する基準接地にガルバニック接続され、ガルバニック接続が、キュービット回路の入力信号線に対してさらに熱接続を行う、装置を提供する。
【0013】
例示的実施形態は、方法、システム、および装置を提供する。自然放出および熱光子雑音から量子プロセッサのキュービットを保護する方法の実施形態は、フィルタの第1のポートを量子プロセッサのキュービット回路の読み出し共振器の信号線に接続することを含む。実施形態において、フィルタは、読み出し共振器に関連付けられた読み出し共振器周波数を含む通過帯域およびキュービット回路に関連付けられたキュービット遷移周波数を含む第1の阻止帯域を有する。実施形態は、フィルタの第2のポートを測定デバイスに接続することをさらに含む。実施形態は、クライオスタットのステージに熱接触する基準接地にフィルタの信号線をガルバニック接続することであって、ガルバニック接続が、キュービット回路の入力信号線に対してさらに熱接続を行う、ガルバニック接続することと、をさらに含む。
【0014】
別の実施形態では、フィルタは、バンドパス・フィルタを含む。別の実施形態では、フィルタは、パーセル・フィルタを含む。別の実施形態では、フィルタは、増幅器ポンプ周波数を含む第2の阻止帯域をさらに含む。別の実施形態では、フィルタは、1/4波長共振器フィルタを含む。
【0015】
別の実施形態では、フィルタおよびキュービット回路は、希釈冷凍機内に配置される。
【0016】
別の実施形態では、フィルタは、接地面に連結された1/4波長マイクロストリップ・スタブを含む。別の実施形態では、フィルタは、ビアによる接地面へのガルバニック接続へ終端する1/4波長マイクロストリップ・スタブに連結され、かつ1/4波長マイクロストリップ・スタブと同一平面上の第1の伝送線路および第2の伝送線路をさらに含む。別の実施形態では、1/4波長マイクロストリップ・スタブは、第1の伝送線路および第2の伝送線路に垂直に配置される。
【0017】
別の実施形態では、フィルタは、インダクタンス負荷Y形共振器を含む。別の実施形態では、熱接続は、出力信号線における熱光子雑音を減少させるように構成される。別の実施形態では、フィルタは、低下した熱境界抵抗を有する材料で構築される。
【0018】
自然放出および熱光子雑音から量子プロセッサのキュービットを保護するためのシステムの実施形態は、量子プロセッサのキュービット回路であって、キュービット回路が読み出し共振器に連結されたキュービットを有する、キュービット回路を含む。実施形態は、読み出し共振器の信号線に対するフィルタの第1のポートを有するフィルタであって、フィルタが、読み出し共振器に関連付けられた読み出し共振器周波数を含む通過帯域およびキュービット回路に関連付けられたキュービット遷移周波数を含む第1の阻止帯域を有する、フィルタをさらに含む。実施形態は、フィルタの第2のポートに接続された測定デバイスをさらに含む。実施形態では、フィルタの信号線は、クライオスタットのステージに熱接触する基準接地にガルバニック接続され、ガルバニック接続が、キュービット回路の入力信号線に対してさらに熱接続を行う。
【0019】
自然放出および熱光子雑音から量子プロセッサのキュービットを保護するための装置の実施形態は、量子プロセッサのキュービット回路の読み出し共振器の信号線への接続のための第1のポートを有するフィルタを含む。実施形態では、フィルタは、読み出し共振器に関連付けられた読み出し共振器周波数を含む通過帯域およびキュービット回路に関連付けられたキュービット遷移周波数を含む第1の阻止帯域を有する。実施形態では、フィルタは、測定デバイスへの接続のための第2のポートをさらに含む。実施形態では、フィルタの信号線は、クライオスタットのステージに熱接触する基準接地にガルバニック接続され、ガルバニック接続が、キュービット回路の入力信号線に対してさらに熱接続を行う。
【0020】
本発明は、以下の図に示されるように、単なる例として好適な実施形態を参照してここで説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】例示的実施形態が実施され得るデータ処理システムのネットワークのブロック図を示す。
図2】例示的実施形態が実施され得るデータ処理システムのブロック図を示す。
図3】例示的実施形態による、ガルバニック接地フィルタを有する量子コンピューティング・マシンの簡略化されたブロック図を示す。
図4】別の例示的実施形態による、ガルバニック接地フィルタを有する量子コンピューティング・マシンの簡略化されたブロック図を示す。
図5】例示的実施形態による、接地へのガルバニック接続を有するパーセル・フィルタの簡略化された等価な回路図を示す。
図6】例示的実施形態による、接地へのガルバニック接続を有するパーセル・フィルタのマイクロストリップ実施態様の簡略化構造の斜視図を示す。
図7】例示的実施形態による、図6のパーセル・フィルタの例としての周波数応答を示す。
図8】例示的実施形態による、接地へのガルバニック接続を有するインダクタンス負荷Y形共振器を有するパーセル・フィルタの別のマイクロストリップ実施態様の簡略化構造を示す。
図9】例示的実施形態による、接地へのガルバニック接続を有するインダクタンス負荷Y形共振器を有するパーセル・フィルタのマイクロストリップ実施態様の簡略化構造の斜視図を示す。
図10】例示的実施形態による、図9のパーセル・フィルタの例としての周波数応答をカプラ長の関数として示す。
図11】例示的実施形態による、ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシン・キュービットにおける熱光子放出の減少のためのプロセスのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
例示的実施形態は、現在利用可能なデバイスまたは解決策が、これらの必要性/問題に対処せず、またはこれらの必要性/問題のための十分な解決策をもたらさないと認識している。実施形態は、これらの必要性/問題において認識し、またはこれらの必要性/問題のための十分な解決策をもたらす。実施形態は、大抵の回路QEDアーキテクチャにおいて、マイクロ波フィルタが、電子伝導を可能にしない(即ち、非ガルバニックである)絶縁体で構成されるキャパシタによって接地に接続されると認識している。実施形態は、これらのキャパシタが、キャパシタの導電層間の誘電物質の特性のために、通常は不十分な熱伝導体であるとさらに認識している。したがって、信号線は、キャパシタの接地部分で適切に熱化されない。フィルタの信号部分は「より高温である」ため、過剰な熱雑音が存在する。
【0023】
キュービット回路は、キュービット回路の読み出しのためのマイクロ波共振器から構成される読み出し共振器に連結されることがよくあり、キュービット回路および読み出し共振器は、キュービット回路および読み出し共振器を非常に低い温度(例えば、10mK)に冷却するために希釈冷凍機内に置かれる。
【0024】
典型的な読み出し方式では、読み出しパルスは、希釈冷凍機において入力線を通してキュービット/読み出し共振器システムに印加され、読み出しパルスは、減衰器およびフィルタを通して少数のマイクロ波光子のレベルまで大いに減衰される。反射測定において、減衰された読み出しパルスは、読み出しパルスをキュービット/共振器システムの方に向けるマイクロ波サーキュレータ上に入射し、それは、読み出し共振器の測定されるキュービット状態依存共振周波数に依存して位相シフトで反射される。反射された読み出しパルスは、次いで、サーキュレータによって出力線の方に向けられ、それは、次いで、増幅器および室温環境からデバイスを保護するために用いられるアイソレータおよびローパス・フィルタを通過する。読み出しパルスは、最初に、量子制限増幅器、即ち量子力学によって許容される最小量の雑音を加える増幅器によって増幅されてもよく、増幅器の例は、特に、ジョセフソン・パラメトリック増幅器、ジョセフソン・パラメトリック変換器、および進行波パラメトリック増幅器である。読み出しパルスは、次いで、より温度の高いステージ(例えば3K)において高電子移動度トランジスタ(HEMT)増幅器によって増幅され、読み出しパルスがミックスダウンされ、デジタル化される前に、希釈冷凍機の外側で室温無線周波数(RF)増幅器によってさらに増幅される。しかしながら、読み出し共振器内の残留光子ポピュレーションが、典型的にはキュービットを位相緩和し続け、共振器が十分「リングダウン」するまで位相緩和/デコヒーレンス時間(T)を制限する。
【0025】
実施形態は、現在の回路QEDアーキテクチャにおいて利用される大抵のマイクロ波フィルタが、電子伝導を可能にしない(即ち、非ガルバニックである)絶縁体で構成されるキャパシタによって接地に接続されると認識している。実施形態は、これらのキャパシタが、キャパシタの導電層間の誘電物質の特性のために、通常は不十分な熱伝導体であるとさらに認識している。したがって、信号線は、キャパシタの接地部分で適切に熱化されない。フィルタの信号部分は「より高温である」ため、過剰な熱雑音が存在する。実施形態は、回路QEDアーキテクチャなどの現在の量子コンピューティング・アーキテクチャが、しばしばパーセル・フィルタを用いてキュービット遷移周波数における放射を抑制し、それによって、緩和時間(T)を犠牲にすることなく高速読み出しが可能となると認識している。パーセル・フィルタは、キュービット周波数におけるマイクロ波伝播を妨げるために用いられるバンドパス・フィルタである。パーセル・フィルタは、読み出し共振器周波数において測定パルスを認めつつ、キュービット周波数においてインピーダンス不整合を引き起こす。
【0026】
実施形態は、現在の量子コンピューティング構成が、希釈冷凍機の信号線および温度ステージ間のレジスタを通してガルバニック接続を行うことによって、しばしば減衰器を用いて光子雑音を熱化するとさらに認識している。
【0027】
本明細書で説明される様々な実施形態は、ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシンにおける自然放出および熱光子雑音の両方の減少のための方法、システム、および装置を提供する。1つまたは複数の実施形態は、コヒーレンスを維持するために、量子コンピューティング・デバイス内のキュービットを自然光子放出および位相緩和の両方から保護するために接地にガルバニック接続されたフィルタを提供する。
【0028】
様々な実施形態では、パーセル・フィルタなどのフィルタは、量子コンピューティング回路内のキュービットに連結され、フィルタの信号線は、自然キュービット放出を抑制しつつ熱光子ポピュレーションを減少させる2重の目的で基準接地にガルバニック接続される。
【0029】
特定の実施形態では、パーセル・フィルタが、量子コンピューティング回路の1つまたは複数のキュービット/読み出し共振器と入力/出力線との間に連結されて、自然放出からキュービットを保護し、熱光子雑音を減少させ、それによって位相緩和からキュービットを保護する。実施形態において、パーセル・フィルタは、信号線への熱接続を行うために基準接地にガルバニック接続されて、パーセル・フィルタのより有効な冷却が可能にされ、それによって、熱光子雑音が減少する。
【0030】
実施形態において、パーセル・フィルタは、読み出し共振器周波数前後の通過帯域およびキュービット遷移周波数前後の阻止帯域を有する。別の特定の実施形態では、パーセル・フィルタは、増幅器ポンプ周波数前後の阻止帯域を含んでもよい。1つまたは複数の実施形態では、パーセル・フィルタは、読み出し周波数において放射の透過を可能にし、キュービット周波数または増幅器ポンプ周波数あるいはその両方において透過を抑制する。
【0031】
1つまたは複数の実施形態では、本明細書で説明されるフィルタは、キュービット・パッケージング内で、または分離したダイ上で実施され得る。特定の実施形態では、フィルタは、マイクロストリップ、ストリップライン、コプレーナ導波路(CPW)マイクロ波伝送線路互換の実施態様として、プリント回路基板上で、基板上で、またはオンチップで実施され得る。
【0032】
特定の実施形態では、本明細書で説明されるフィルタの部分は、マイクロ波周波数において損失があり、または異なる熱特性を有する、あるいはその両方である材料で構築され得る。これは、これらの量子デバイスが動作する低温における重要な優性効果である、熱境界(即ちカピッツァ)抵抗を低減する焼結材料を含むがこれに限定されない。
【0033】
例示的実施形態は、単なる一例として、ある種類の量子コンピューティング回路、キュービット、フィルタ、qプロセッサ、読み出し共振器、周波数、動作、アルゴリズム、実施形態の場所、追加データ、デバイス、データ処理システム、環境、コンポーネント、およびアプリケーションに関して説明される。これらのおよび他の類似の人工物の任意の特定の明示は、本発明に対する限定であることを意図するものではない。これらのおよび他の類似の人工物の任意の適当な明示は、例示的実施形態の範囲内で選択され得る。
【0034】
さらに、例示的実施形態は、任意の種類のデータ、データ・ソース、またはデータ・ネットワーク上のデータ・ソースへのアクセスに関して実施され得る。任意の種類のデータ記憶デバイスは、本発明の範囲内で、データ処理システムにおいてローカルに、またはデータ・ネットワーク上のいずれかにおいて、本発明の実施形態にデータを提供し得る。実施形態が、モバイル・デバイスを用いて説明される場合に、モバイル・デバイスで使用するのに適当な任意の種類のデータ記憶デバイスが、例示的実施形態の範囲内で、モバイル・デバイスにおいてローカルに、またはデータ・ネットワーク上のいずれかにおいて、そのような実施形態にデータを提供し得る。
【0035】
例示的実施形態は、単なる例として特定のコード、設計、アーキテクチャ、プロトコル、レイアウト、回路図、およびツールを用いて説明され、例示的実施形態に限定されない。さらに、例示的実施形態は、説明を明確にするために、単なる例として特定のソフトウェア、ツール、およびデータ処理環境を用いて、いくつかの事例において説明される。例示的実施形態は、他の同等のまたは類似の目的の構造、システム、アプリケーション、またはアーキテクチャと併せて使用され得る。例えば、他の同等のモバイル・デバイス、構造、システム、アプリケーション、またはそれらのためのアーキテクチャが、本発明の範囲内でそのような本発明の実施形態と併せて使用され得る。例示的実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせにおいて実施されてもよい。
【0036】
本開示における例は、説明を明確にするためだけに使用され、例示的実施形態に限定されない。追加のデータ、動作、アクション、タスク、アクティビティ、および操作は、本開示から考えられ、それらは、例示的実施形態の範囲内で考慮される。
【0037】
本明細書に列挙される任意の利点は、単なる例であり、例示的実施形態に対する限定であることを意図するものではない。追加の利点または異なる利点は、特定の例示的実施形態によって実現され得る。さらに、特定の例示的実施形態は、上記に列挙された利点のうちのいくつかを有してもよく、全てを有してもよく、またはどれも有しなくてもよい。
【0038】
図を参照すると、特に図1および図2を参照すると、これらの図は、例示的実施形態が実施され得るデータ処理環境の例としての図である。図1および図2は、単なる例であり、異なる実施形態が実施され得る環境に関していかなる限定も主張または示唆することを意図するものではない。特定の実施態様は、以下の説明に基づいて図示される環境に対して多くの修正を行い得る。
【0039】
図1は、例示的実施形態が実施され得るデータ処理システムのネットワークのブロック図を示す。データ処理環境100は、例示的実施形態が実施され得るコンピュータのネットワークである。データ処理環境100は、ネットワーク102を含む。ネットワーク102は、データ処理環境100内で共に接続された様々なデバイスとコンピュータとの間に通信リンクを提供するために使用される媒体である。ネットワーク102は、有線、無線通信リンク、または光ファイバ・ケーブルなどの接続を含み得る。
【0040】
クライアントまたはサーバは、ネットワーク102に接続されたあるデータ処理システムの単なる例としての役割であり、これらのデータ処理システムのための他の構成または役割を除外することを意図するものではない。サーバ104およびサーバ106は、データベース109を含むストレージ・ユニット108と共にネットワーク102に連結する。ソフトウェア・アプリケーションは、データ処理環境100内の任意のコンピュータ上で実行し得る。クライアント110、112、および114もまた、ネットワーク102に連結される。サーバ104もしくは106、またはクライアント110、112、もしくは114などのデータ処理システムは、データを含んでもよく、その上で実行するソフトウェア・アプリケーションまたはソフトウェア・ツールを有してもよい。
【0041】
単なる一例として、そのようなアーキテクチャに対するいかなる限定も示唆することなく、図1は、実施形態の例としての実施態様において使用可能なあるコンポーネントを示す。例えば、サーバ104および106、ならびにクライアント110、112、114は、単なる一例としてサーバおよびクライアントとして示されており、クライアント・サーバ・アーキテクチャへの限定を示唆するものではない。別の例として、実施形態は、図示される複数のデータ処理システムおよびデータ・ネットワークにわたって分散されてもよく、別の実施形態は、例示的実施形態の範囲内で単一のデータ処理システム上で実施されてもよい。データ処理システム104、106、110、112、および114は、また、クラスタ、パーティション、および実施形態を実施するのに適当な他の構成における例としてのノードを表す。
【0042】
デバイス132は、本明細書で説明されるデバイスの一例である。例えば、デバイス132は、スマートフォン、タブレット・コンピュータ、ラップトップ・コンピュータ、据え付け型もしくはポータブル形式のクライアント110、ウェアラブル・コンピューティング・デバイス、または任意の他の適当なデバイスの形態をとり得る。図1の別のデータ処理システムにおいて実行すると説明される任意のソフトウェア・アプリケーションは、同様のやり方でデバイス132において実行するように構成され得る。図1の別のデータ処理システムにおいて記憶され、または生成される任意のデータまたは情報は、同様のやり方でデバイス132において記憶され、または生成されるように構成され得る。
【0043】
量子コンピューティング・デバイス146は、1つまたは複数のqプロセッサ148を含む。現在実現可能なキュービットは、qプロセッサ148の一例である。アプリケーション105は、本明細書で説明される実施形態を実施する。アプリケーション105は、量子コンピューティング・デバイス146によって処理するためのデータを提供するなど、量子コンピューティング・デバイス146上で動作する。
【0044】
量子コンピューティング・デバイス146は、有線接続、無線通信プロトコル、または他の適当なデータ接続性を用いてネットワーク102に連結し得る。クライアント110、112、および114は、例えば、パーソナル・コンピュータまたはネットワーク・コンピュータであってもよい。ネットワーク102は、伝送制御プロトコル/インターネット・プロトコル(TCP/IP)および他のプロトコルを用いて互いに通信する、ネットワークおよびゲートウェイの集合を表し得る。図1は、一例として意図され、異なる例示的実施形態についてのアーキテクチャの限定としては意図されない。
【0045】
データ処理環境100は、また、全体としてクラウドの形態をとってもよく、最小の管理労力またはサービス・プロバイダとの対話で迅速に供給され、リリースされ得る、構成可能なコンピューティング・リソース(例えば、ネットワーク、ネットワーク帯域幅、サーバ、処理、メモリ、ストレージ、アプリケーション、仮想マシン、およびサービス)の共有プールへの便利なオンデマンド・ネットワーク・アクセスを可能にするためのサービス配信のクラウド・コンピューティング・モデルを採用してもよい。
【0046】
図2を参照すると、この図は、例示的実施形態が実施され得る従来データ処理システムのブロック図を示す。データ処理システム200は、図1におけるサーバ104および106、もしくはクライアント110、112、および114などのコンピュータの一例、またはプロセスを実施するコンピュータ使用可能プログラム・コードもしくは命令が例示的実施形態のために位置し得る別の種類のデバイスである。
【0047】
データ処理システム200は、また、例示的実施形態のプロセスを実施するコンピュータ使用可能プログラム・コードまたは命令が位置し得る、図1におけるデータ処理システム132などの、データ処理システムまたはその中の構成を表す。データ処理システム200は、単なる例としてのコンピュータとしてそれに限定されることなく説明される。図1におけるデバイス132などの他のデバイスの形式での実施態様は、タッチ・インターフェースを追加することなどによってデータ処理システム200を修正してもよく、本明細書で説明されるデータ処理システム200の動作および機能の概略説明から逸脱することなく、ある図示された構成要素をデータ処理システム200から除去すらしてもよい。
【0048】
図示される例では、データ処理システム200は、ノース・ブリッジおよびメモリ・コントローラ・ハブ(NB/MCH)202、ならびにサウス・ブリッジおよび入力/出力(I/O)コントローラ・ハブ(SB/ICH)204を含む、ハブ・アーキテクチャを採用する。処理ユニット206、メイン・メモリ208、およびグラフィックス・プロセッサ210は、ノース・ブリッジおよびメモリ・コントローラ・ハブ(NB/MCH)202に連結される。処理ユニット206は、1つまたは複数のプロセッサを含んでもよく、1つまたは複数の異種プロセッサ・システムを用いて実施されてもよい。処理ユニット206は、マルチコア・プロセッサであってもよい。グラフィックス・プロセッサ210は、ある実施態様においてアクセラレーテッド・グラフィックス・ポート(AGP)を通してNB/MCH202に連結されてもよい。
【0049】
図示される例では、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)・アダプタ212は、サウス・ブリッジおよびI/Oコントローラ・ハブ(SB/ICH)204に連結される。オーディオ・アダプタ216、キーボードおよびマウス・アダプタ220、モデム222、読み取り専用メモリ(ROM)224、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)および他のポート232、ならびにPCI/PCIeデバイス234は、バス238を通してサウス・ブリッジおよびI/Oコントローラ・ハブ204に連結される。ハード・ディスク・ドライブ(HDD)またはソリッド・ステート・ドライブ(SSD)226およびCD-ROM230は、バス240を通してサウス・ブリッジおよびI/Oコントローラ・ハブ204に連結される。PCI/PCIeデバイス234は、例えば、イーサネット(R)・アダプタ、アドイン・カード、およびノートブック・コンピュータ用のPCカードを含み得る。PCIは、カード・バス・コントローラを使用し、PCIeは使用しない。ROM224は、例えば、フラッシュ・バイナリ入力/出力システム(BIOS)であってもよい。ハード・ディスク・ドライブ226およびCD-ROM230は、例えば、インテグレーティド・ドライブ・エレクトロニクス(IDE)、シリアル・アドバンスド・テクノロジ・アタッチメント(SATA)・インターフェース、または外部SATA(eSATA)およびマイクロSATA(mSATA)などの変化形を使用し得る。スーパーI/O(SIO)デバイス236は、バス238を通してサウス・ブリッジおよびI/Oコントローラ・ハブ(SB/ICH)204に連結され得る。
【0050】
メイン・メモリ208、ROM224、またはフラッシュ・メモリ(図示せず)などのメモリは、コンピュータ使用可能記憶デバイスのいくつかの例である。ハード・ディスク・ドライブまたはソリッド・ステート・ドライブ226、CD-ROM230、および他の類似の使用可能デバイスは、コンピュータ使用可能記憶媒体を含むコンピュータ使用可能記憶デバイスのいくつかの例である。
【0051】
オペレーティング・システムは、処理ユニット206上で動作する。オペレーティング・システムは、図2におけるデータ処理システム200内の様々な構成要素を協調させ、制御を提供する。オペレーティング・システムは、サーバ・システム、パーソナル・コンピュータ、およびモバイル・デバイスを含むがこれらに限定されない、任意の種類のコンピューティング・プラットフォームのための市販のオペレーティング・システムであってもよい。オブジェクト指向または他の種類のプログラミング・システムが、オペレーティング・システムと併せて動作し、データ処理システム200上で実行するプログラムまたはアプリケーションからオペレーティング・システムに呼び出しを提供し得る。
【0052】
オペレーティング・システム、オブジェクト指向プログラミング・システム、および図1のアプリケーション105などのアプリケーションまたはプログラムのための命令は、ハード・ディスク・ドライブ226上のコード226Aの形態などで記憶デバイス上に位置し、処理ユニット206による実行用に、メイン・メモリ208などの1つまたは複数のメモリのうちの少なくとも1つの中にロードされてもよい。例示的実施形態のプロセスは、処理ユニット206によってコンピュータ実施命令を用いて実行されてもよく、コンピュータ実施命令は、例えば、メイン・メモリ208、読み取り専用メモリ224などのメモリ内、または1つもしくは複数の周辺デバイス内に位置し得る。
【0053】
さらに、1つの場合において、コード226Aは、リモート・システム201Bからネットワーク201Aを経てダウンロードされてもよく、類似コード201Cは、記憶デバイス201D上に記憶される。別の場合において、コード226Aは、ネットワーク201Aを経てリモート・システム201Bへダウンロードされてもよく、ダウンロードされたコード201Cは、記憶デバイス201D上に記憶される。
【0054】
図1図2におけるハードウェアは、実施態様に依存して変化し得る。フラッシュ・メモリ、等価な不揮発性メモリ、または光学ディスク・ドライブなどの、他の内部ハードウェアまたは周辺デバイスは、図1図2に示されるハードウェアに加えて、またはその代わりに使用され得る。さらに、例示的実施形態のプロセスは、マルチプロセッサ・データ処理システムに適用されてもよい。
【0055】
いくつかの例示的な例において、データ処理システム200は、携帯情報端末(PDA)であってもよく、それは、概して、オペレーティング・システム・ファイルまたはユーザ生成データあるいはその両方を記憶するための不揮発性メモリを提供するためにフラッシュ・メモリで構成される。バス・システムは、システム・バス、I/Oバス、およびPCIバスなどの1つまたは複数のバスを含み得る。当然ながら、バス・システムは、ファブリックまたはアーキテクチャに取り付けられた異なる構成要素またはデバイス間のデータ移送を提供する、任意の種類の通信ファブリックまたはアーキテクチャを用いて実施され得る。
【0056】
通信ユニットは、モデムまたはネットワーク・アダプタなどのデータを送信および受信するために使用される1つまたは複数のデバイスを含み得る。メモリは、例えば、メイン・メモリ208、またはノース・ブリッジおよびメモリ・コントローラ・ハブ202において見出されるキャッシュなどのキャッシュであってもよい。処理ユニットは、1つまたは複数のプロセッサまたはCPUを含み得る。
【0057】
図1図2において図示される例および上述の例は、アーキテクチャの限定を示唆することを意味しない。例えば、データ処理システム200は、また、モバイル・デバイスまたはウェアラブル・デバイスの形態をとることに加えて、タブレット・コンピュータ、ラップトップ・コンピュータ、または電話デバイスであってもよい。
【0058】
コンピュータまたはデータ処理システムが仮想マシン、仮想デバイス、または仮想コンポーネントとして説明される場合に、仮想マシン、仮想デバイス、または仮想コンポーネントは、データ処理システム200に示されるいくつかのまたは全てのコンポーネントの仮想化表現を用いるデータ処理システム200のやり方で動作する。例えば、仮想マシン、仮想デバイス、または仮想コンポーネントにおいて、処理ユニット206は、ホスト・データ処理システムにおいて利用可能な全ての、またはいくつかのハードウェア処理ユニット206の仮想化インスタンスとして表され、メイン・メモリ208は、ホスト・データ処理システムにおいて利用可能であり得るメイン・メモリ208の全ての、またはいくつかの部分の仮想化インスタンスとして表され、ディスク226は、ホスト・データ処理システムにおいて利用可能であり得るディスク226の全てのまたはいくつかの部分の仮想化インスタンスとして表される。このような場合のホスト・データ処理システムは、データ処理システム200によって表される。
【0059】
図3を参照すると、この図は、例示的実施形態による、ガルバニック接地フィルタを有する量子コンピューティング・マシン300の簡略化されたブロック図を示す。量子コンピューティング・マシン300は、読み出し共振器304に連結されたキュービット回路302を含む。読み出し共振器304は、フィルタ306にさらに連結される。特定の実施形態では、フィルタ306は、パーセル・フィルタを含む。フィルタ306は、低温(例えば、10mK)にあるクライオスタットのステージと熱的密着した基準接地310へのガルバニック接続308を有する。特定の実施形態では、クライオスタットは、極低温を維持するために使用されるデバイスである。フィルタ306は、測定および制御回路312にさらに連結される。
【0060】
測定および制御回路312は、キュービット回路302の出力を表す出力314を提供するために、反射を通して信号を測定するように構成される。例示される実施形態では、キュービット回路302、読み出し共振器304、およびフィルタ306は、キュービット回路302、フィルタ306、および読み出し共振器304を超低温(例えば10mK)に冷却するように構成される希釈冷凍機316内に位置する。
【0061】
量子コンピューティング・マシン300の例としての動作において、測定および制御回路312からの測定パルスは、フィルタ306を通過し、(測定した、または崩壊した)キュービット状態を符号化する測定パルスに対して位相を与える読み出し共振器304と相互作用し、その点において、測定パルスは、測定および制御回路312にフィルタ306を通して反射される。特定の実施形態では、フィルタ306は、読み出し共振器304の読み出し共振器周波数前後の通過帯域、およびキュービット回路302のキュービット遷移周波数前後の阻止帯域を有する。別の特定の実施形態では、フィルタ306は、増幅器ポンプ周波数前後の阻止帯域を含み得る。実施形態では、フィルタ306は、キュービットを自然放出から保護し、かつ熱光子雑音を減少させるために、基準接地へのガルバニック接続を提供し、信号線および基準接地への熱接続を提供する。その結果、キュービットは、位相緩和から保護される。
【0062】
例としての動作において、測定および制御回路312は、キュービット回路302のキュービットの状態を表す出力314を生成するために、量子コンピューティング・マシン300の動作を制御し、読み出し共振器304の出力を測定する。
【0063】
図4を参照すると、この図は、別の例示的実施形態による、ガルバニック接地フィルタを有する量子コンピューティング・マシン400の簡略化されたブロック図を示す。量子コンピューティング・マシン400は、読み出し共振器404に連結されたキュービット・チップ402を含み、読み出し共振器404は、基準接地410へのガルバニック接続408を有するパーセル・フィルタ406にさらに連結される。パーセル・フィルタ406は、サーキュレータ412の入力にさらに連結される。サーキュレータ412は、制御機器414およびアイソレータ416にさらに連結される。アイソレータ416は、HEMT増幅器418にさらに連結される。HEMT増幅器418は、測定機器420にさらに連結される。
【0064】
実施形態において、キュービット・チップ402、読み出し共振器404、パーセル・フィルタ406、サーキュレータ412、アイソレータ416、およびHEMT増幅器418は、希釈冷凍機によって低温に維持され、基準接地410は、希釈冷凍機422などのクライオスタットのステージに熱的密着している。実施形態では、パーセル・フィルタ406は、キュービットを自然放出から保護し、かつ熱光子雑音を減少させるために、基準接地へのガルバニック接続を提供し、信号線および基準接地への熱接続を提供する。
【0065】
測定機器420は、パーセル・フィルタ406を通して読み出し共振器404から反射されるマイクロ波パルスを生成し、サーキュレータ412は、反射された信号をアイソレータ416およびHEMT増幅器418を通して測定機器420にルーティングする。測定機器420は、キュービット・チップ402のキュービットの状態を表す出力を提供する。
【0066】
図5を参照すると、この図は、例示的実施形態による、接地へのガルバニック接続を有するパーセル・フィルタ500の簡略化された等価な回路図を示す。特定の実施形態において、パーセル・フィルタ500は、図3のフィルタ306または図4のパーセル・フィルタ406の一例である。実施形態では、パーセル・フィルタ500は、1/4波長(λ/4)共振器フィルタとして示される。
【0067】
実施形態では、パーセル・フィルタ500は、第1のキャパシタ506Aの第1の端子および第2のキャパシタ506Bの第1の端子への第1の接続、ならびに接地への第2の接続を有する、インピーダンスZcharを有する1/4波長(λ/4)共振器502を含む。第1のキャパシタ506Aおよび第2のキャパシタ506Bは、直列で互いに接続され、それぞれがキャパシタンスCcを有する。第1のキャパシタ506Aの第2の端子は、第1の環境インピーダンス504Aを通して接地に連結され、第2のキャパシタ506Bの第2の端子は、第2の環境インピーダンス504Bを通して接地に連結される。第1の環境インピーダンス504Aおよび第2の環境インピーダンス504Bのそれぞれが、マイクロ波伝送線路の50オームのインピーダンス値Zenvを有し、それは、測定/制御電子機器、または共振器/キュービットへの経路、あるいはその両方を表す。
【0068】
図6を参照すると、この図は、例示的実施形態による、接地へのガルバニック接続を有するパーセル・フィルタ600のマイクロストリップ実施態様の簡略化構造の斜視図を示す。特定の実施形態において、パーセル・フィルタ600は、図5のパーセル・フィルタ500のマイクロストリップ実施態様である。
【0069】
実施形態において、パーセル・フィルタ600は、略T形であり、スタブ602に平行に、かつスタブ602の下に配置される接地面606にビア604によって連結される1/4波長(λ/4)スタブ602を含む。スタブ602は、キャパシタ616を通して第1の伝送線路608および第2の伝送線路610にさらに連結され、第1の伝送線路608および第2の伝送線路610と同一平面にある。例示された実施形態では、スタブ602は、第1の伝送線路608および第2の伝送線路610に垂直に配置される。第1の伝送線路608は、第1のマイクロ波ポート612にさらに連結され、第2の伝送線路610は、第2のマイクロ波ポート614にさらに連結される。例示された実施形態では、第1のマイクロ波ポート612および第2のマイクロ波ポート614は、第1の伝送線路608および第2の伝送線路610に垂直に配置される。実施形態では、パーセル・フィルタ600は、キュービット周波数前後のバンドパス周波数を有するバンドパス・マイクロ波フィルタを形成する。
【0070】
1つまたは複数の実施形態では、第1のマイクロ波ポート612は、キュービット回路302または402などのキュービット回路の出力に連結され、第2のマイクロ波ポート614は、読み出し共振器304などの読み出し共振器の入力に連結される。1つまたは複数の実施形態では、接地面606は、量子コンピューティング・マシンにおいて自然キュービット放出を抑制し、熱光子ポピュレーションを減少させるために、接地にガルバニック連結および熱連結される。
【0071】
図7を参照すると、この図は、例示的実施形態による、有限要素マイクロ波シミュレーションによって判断される、図6のパーセル・フィルタ600の例としての周波数応答700を示す。特に、図7は、図6のパーセル・フィルタ600の0GHz~10GHzの周波数範囲についての挿入損失(S21)を示す。図7は、キュービット周波数曲線702についてのパーセル・フィルタ600の周波数応答を示す。特定の例では、キュービットは、約4.8GHz~5.2GHzの周波数範囲において動作する。図7は、パーセル・フィルタ600が、読み出し共振器周波数前後の通過帯域704およびキュービット遷移周波数前後の阻止帯域を有することを示している。
【0072】
図8を参照すると、この図は、例示的実施形態による、接地へのガルバニック接続を有するインダクタンス負荷Y形共振器を有するパーセル・フィルタ802の別のマイクロストリップ実施態様の簡略化構造800を示す。
【0073】
実施形態では、パーセル・フィルタ800は、Y形構成で配列された入力スタブ802、非接地スタブ804、および出力スタブ806を含む。パーセル・フィルタ800は、ビア・ホール810を介して接地面に連結される円形部を有する接地スタブ808をさらに含む。例示された実施形態では、第1のスタブ804、第2のスタブ806、第3のスタブ808、およびマイクロストリップ810は、上面上かつ基板と平行に配置され、接地面は、基板の下面上に配置される。パーセル・フィルタ800は、キュービット周波数前後のバンドパス周波数を有するバンドパス・マイクロ波フィルタを形成する。
【0074】
図8の特定の実施形態では、入力スタブ802は、長さLおよび幅Wを有し、非接地スタブ804は、長さLusおよび幅Wusを有し、出力スタブ806は、長さLおよび幅Wを有する。接地スタブ808は、長さLgsおよび幅Wgsを有する。
【0075】
図9を参照すると、この図は、例示的実施形態による、接地へのガルバニック接続を有するインダクタンス負荷Y形共振器を有するパーセル・フィルタ900のマイクロストリップ実施態様の簡略化構造の斜視図を示す。
【0076】
実施形態では、パーセル・フィルタ900は、Y形構成で配列された非接地スタブ902、入力スタブ906、および出力スタブ908を含む。パーセル・フィルタ900は、接地面910とガルバニック接触するビア905を下に有するパッド904をさらに含む。例示された実施形態では、非接地スタブ902、入力スタブ906、出力スタブ908、およびパッド904は、上面上かつ基板に平行に配置され、接地面910は、基板の下面上に配置される。
【0077】
入力スタブ906は、第1のマイクロ波ポート912にさらに連結され、出力スタブ908は、第2のマイクロ波ポート914にさらに連結される。例示された実施形態では、第1のマイクロ波ポート912および第2のマイクロ波ポート914は、入力スタブ906および出力スタブ906に垂直に配置される。実施形態では、パーセル・フィルタ900は、キュービット周波数前後のバンドパス周波数を有するバンドパス・マイクロ波フィルタを形成する。
【0078】
1つまたは複数の実施形態では、第1のマイクロ波ポート912は、キュービット回路302または402などのキュービット回路の読み出し共振器の出力に連結され、第2のマイクロ波ポート914は、測定および制御回路312または測定機器420などの測定回路に連結される。1つまたは複数の実施形態では、接地面910は、量子コンピューティング・マシンにおいて自然キュービット放出を抑制し、熱光子ポピュレーションを減少させるために、接地にガルバニック連結および熱連結される。
【0079】
図10を参照すると、この図は、例示的実施形態による、図9のパーセル・フィルタ900の例としての周波数応答をカプラ長Iの関数として示す。特に、図10は、図9のパーセル・フィルタ900の0GHz~20GHzの周波数範囲についての挿入損失(S21)を示す。図10は、カプラ長Iの数についてのパーセル・フィルタ900の周波数応答を示す。図10は、パーセル・フィルタ900が、読み出し共振器周波数前後の通過帯域およびキュービット遷移周波数前後の阻止帯域を有することを示している。
【0080】
図11を参照すると、この図は、例示的実施形態による、ガルバニック接地フィルタを用いた量子コンピューティング・マシンにおける自然放出および熱光子雑音の両方の減少のためのプロセス1100のフローチャートを示す。ブロック1102において、パーセル・フィルタは、様々な実施形態に関して本明細書で説明されるように構築される。ブロック1104において、パーセル・フィルタは、基準接地にガルバニック接続される。ブロック1106において、パーセル・フィルタの入力は、キュービット回路の読み出し共振器に接続される。ブロック1108において、パーセル・フィルタの出力は、測定デバイスの入力に接続される。ブロック1110において、読み出し共振器の出力は、反射された測定によってパーセル・フィルタを通して測定デバイスにより測定される。実施形態では、パーセル・フィルタは、量子コンピューティング・マシンにおいて、自然キュービット放出を抑制し、熱光子ポピュレーションを減少させるように機能する。プロセス1100は、次いで終了する。
【0081】
このようにして、コンピュータ実施方法、システムまたは装置、およびコンピュータ・プログラム製品が、量子コンピューティング・マシンおよび他の関連特徴、機能、または動作において、自然キュービット放出を抑制し、熱光子ポピュレーションを減少させるために、例示的実施形態において提供される。実施形態またはその一部が、ある種類のデバイスに関して説明される場合、コンピュータ実施方法、システムもしくは装置、コンピュータ・プログラム製品、またはその一部が、その種類のデバイスの適当かつ同等の表現で使用するために適合され、または構成される。
【0082】
実施形態が、アプリケーションにおいて実施されると説明される場合、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)モデルにおけるアプリケーションの配信が、例示的実施形態の範囲内で考慮される。SaaSモデルにおいて、実施形態を実施するアプリケーションのケイパビリティが、クラウド・インフラストラクチャにおいてアプリケーションを実行することによってユーザに提供される。ユーザは、ウェブ・ブラウザ(例えば、ウェブベース電子メール)または他の軽量クライアント・アプリケーションなどのシン・クライアント・インターフェースを通して多様なクライアント・デバイスを用いてアプリケーションにアクセスし得る。ユーザは、ネットワーク、サーバ、オペレーティング・システム、またはクラウド・インフラストラクチャのストレージを含む、基盤クラウド・インフラストラクチャを管理または制御しない。いくつかの場合において、ユーザは、SaaSアプリケーションのケイパビリティを管理または制御すらしなくともよい。いくつかの他の場合において、アプリケーションのSaaS実施態様は、限定されたユーザ固有のアプリケーション構成設定を可能な限り除外することを許容し得る。
【0083】
本発明は、任意の可能な統合の技術的詳細レベルにおけるシステム、方法、またはコンピュータ・プログラム製品、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。コンピュータ・プログラム製品は、プロセッサに本発明の態様を実行させるためのコンピュータ可読プログラム命令をその上に有するコンピュータ可読記憶媒体(または複数の媒体)を含んでもよい。
【0084】
コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行デバイスにより使用するための命令を保持し、記憶し得る有形デバイスであり得る。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、電子記憶デバイス、磁気記憶デバイス、光学記憶デバイス、電磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、または前述したものの任意の適当な組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例の非網羅的リストは、ポータブル・コンピュータ・ディスケット、ハード・ディスク、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュ・メモリ)、静的ランダム・アクセス・メモリ(SRAM)、ポータブル・コンパクト・ディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、メモリ・スティック、フロッピー(R)・ディスク、パンチカードまたはその上に記録された命令を有する溝内の隆起構造などの機械的に符号化されたデバイス、および前述したものの任意の適当な組み合わせを含む。本明細書で用いられるコンピュータ可読記憶デバイスを含むがこれに限定されないコンピュータ可読記憶媒体は、本来、電波もしくは他の自由伝播する電磁波、導波管もしくは他の送信媒体を通って伝播する電磁波(例えば、光ファイバ・ケーブルを通過する光パルス)、または電線を通って送信される電気信号などの、一過性信号であると解釈されるべきではない。
【0085】
本明細書で説明されるコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ可読記憶媒体からそれぞれのコンピューティング/処理デバイスに、あるいはネットワーク、例えば、インターネット、ローカル・エリア・ネットワーク、ワイド・エリア・ネットワーク、もしくは無線ネットワーク、またはそれらの組み合わせを介して外部コンピュータまたは外部記憶デバイスに、ダウンロードされ得る。ネットワークは、銅伝送ケーブル、光伝送ファイバ、無線伝送、ルータ、ファイアウォール、スイッチ、ゲートウェイ・コンピュータ、またはエッジ・サーバ、あるいはそれらの組み合わせを含み得る。各コンピューティング/処理デバイス内のネットワーク・アダプタ・カードまたはネットワーク・インターフェースは、コンピュータ可読プログラム命令をネットワークから受信し、それぞれのコンピューティング/処理デバイス内のコンピュータ可読記憶媒体の記憶用にコンピュータ可読プログラム命令を転送する。
【0086】
本発明の動作を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令は、アセンブラ命令、命令セット・アーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、集積回路用の構成データ、またはSmalltalk(R)、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語もしくは類似のプログラミング言語などの手続き型プログラミング言語を含む、1つもしくは複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで書かれたソース・コードもしくはオブジェクト・コードのいずれかであってもよい。コンピュータ可読プログラム命令は、ユーザのコンピュータ上で完全に、ユーザのコンピュータ上で部分的に、スタンドアロン・ソフトウェア・パッケージとして、ユーザのコンピュータ上で部分的にかつリモート・コンピュータ上で部分的に、またはリモート・コンピュータもしくはサーバ上で完全に、実行してもよい。後者のシナリオでは、リモート・コンピュータは、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)またはワイド・エリア・ネットワーク(WAN)を含む任意の種類のネットワークを通して、ユーザのコンピュータに接続されてもよい。あるいは、接続は、(例えば、インターネット・サービス・プロバイダを用いてインターネットを通して)外部コンピュータに対して行われてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、プログラマブル・ロジック回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、またはプログラマブル・ロジック・アレイ(PLA)を含む電子回路は、本発明の態様を実行するために、コンピュータ可読プログラム命令の状態情報を利用して電子回路を個別化することによって、コンピュータ可読プログラム命令を実行し得る。
【0087】
本発明の態様は、発明の実施形態による、方法、装置(システム)、およびコンピュータ・プログラム製品のフローチャート図またはブロック図あるいはその両方を参照して、本明細書において説明される。フローチャート図またはブロック図あるいはその両方の各ブロック、ならびにフローチャート図またはブロック図あるいはその両方のブロックの組み合わせが、コンピュータ可読プログラム命令によって実施され得ると理解されたい。
【0088】
コンピュータまたは他のプログラマブル・データ処理装置のプロセッサによって実行する命令が、フローチャートまたはブロック図あるいはその両方の1つまたは複数のブロックにおいて指定される機能/動作を実施する手段を生成するように、これらのコンピュータ可読プログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、またはマシンを製造するための他のプログラマブル・データ処理装置のプロセッサに提供されてもよい。コンピュータ可読記憶媒体に記憶される命令を有するコンピュータ可読記憶媒体が、フローチャートまたはブロック図あるいはその両方の1つまたは複数のブロックにおいて指定される機能/動作の態様を実施する命令を含む製品を含むように、これらのコンピュータ可読プログラム命令は、また、コンピュータ、プログラマブル・データ処理装置、または他のデバイス、あるいはそれらの組み合わせに特定のやり方で機能するように指示し得る、コンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよい。
【0089】
コンピュータ、他のプログラマブル装置、または他のデバイス上で実行する命令が、フローチャートまたはブロック図あるいはその両方の1つまたは複数のブロックにおいて指定される機能/動作を実施するように、コンピュータ可読プログラム命令は、また、コンピュータ実施されるプロセスを作り出すために、コンピュータ、他のプログラマブル装置、または他のデバイス上で一連の動作ステップを実行させるコンピュータ、他のプログラマブル・データ処理装置、または他のデバイス上にロードされてもよい。
【0090】
図面中のフローチャートおよびブロック図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、およびコンピュータ・プログラム製品の考えられる実施態様のアーキテクチャ、機能性、および動作を示している。この点に関して、フローチャートまたはブロック図内の各ブロックは、指定された論理機能を実施するための1つまたは複数の実行可能命令を含む、モジュール、セグメント、または命令の一部を表し得る。いくつかの代替的実施態様において、ブロック内に記載された機能は、図面中に記載された順序以外で発生してもよい。例えば、連続して示される2つのブロックが、実際には、実質的に同時に実行されてもよく、または、ブロックが、関係する機能性次第で逆の順序で実行されることがあってもよい。ブロック図またはフローチャート図あるいはその両方の各ブロック、ならびにブロック図またはフローチャート図あるいはその両方におけるブロックの組み合わせが、指定された機能もしくは動作を実行し、または専用ハードウェアおよびコンピュータ命令の組み合わせを実行する専用ハードウェアベース・システムによって実施され得ることにも留意されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11