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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】段階的無炎燃焼の方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F23C 6/04 20060101AFI20230802BHJP
   F23C 9/08 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
F23C6/04 303
F23C6/04 306
F23C9/08 403
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021525795
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2019080635
(87)【国際公開番号】W WO2020099254
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】18205667.1
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596022477
【氏名又は名称】ヴェーエス-ヴェルメプロツェステヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】ヴュニング・ヨアヒム ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴュニング・ヨアヒム エー.
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0000551(US,A1)
【文献】国際公開第2017/220250(WO,A1)
【文献】特開昭55-110725(JP,A)
【文献】特開平04-098011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0354746(US,A1)
【文献】特開平08-166108(JP,A)
【文献】特開平05-126316(JP,A)
【文献】特表2008-527283(JP,A)
【文献】特開2000-283427(JP,A)
【文献】米国特許第04405587(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 1/00 - 99/00
F02B 19/00 - 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱室(12)を加熱する方法であって、前記加熱室(12)の温度は、また、使用済み燃料の自然発火温度を下回り得、
前記加熱中、燃焼室(11)内で、無炎酸化において、燃料及び空気は、非化学量論的な比で互いに反応させられ、有用な熱が取り出されずに、反応ガスとして前記加熱室(12)に供給され、
必要に応じて空気及び/又は燃料を添加することにより、前記加熱室(12)内で前記反応ガスは、完全に酸化される、
方法。
【請求項2】
前記加熱室(12)内の前記酸化は、火炎形成によって行われる
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱室(12)内の前記酸化は、大規模な再循環を伴うガス誘導によって、火炎形成なしに行われる
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
非化学量論的な燃料及び空気の比は、前記燃焼室(11)内で1400℃の温度を超えないように前記燃焼室(11)内で調整される
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記燃焼室(11)内での1000℃~1300℃の温度は、前記燃料及び空気の比を調整又は閉ループ制御することにより達成される
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記燃焼室(11)は、
全負荷運転中に準化学量論的に(λ<1)運転され、
部分負荷運転中に超化学量論的に(λ>1)運転される
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
未使用の燃料及び空気の比の範囲(λ、λ)は、前記超化学量論的な運転における前記燃料及び空気の比と、前記準化学量論的な運転における前記燃料及び空気の比との間で定義される
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
有用な熱は、前記加熱室(12)から引き出される
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
加熱室(12)を加熱するための装置(10)であって、
少なくとも1つの空気の供給装置(15)と、少なくとも1つの燃料の供給装置(14)と、少なくとも1つの排出部(16)とを含み、燃料及び空気の非化学量論的な比で、前記燃料を無炎酸化するように構成された、断熱された燃焼室(11)と、
前記燃焼室(11)の前記排出部が開口し、空気及び/又は燃料用の供給装置が設けられた加熱室(12)と、を有する
装置(10)。
【請求項10】
前記燃焼室(11)は、前記加熱室(12)の容積よりも極めて小さい容積を有する
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記燃焼室(11)は、保炎構造体を含まないように構成されている
請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
前記加熱室(12)には、熱取り出し装置(13)が設けられている
請求項9~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記燃焼室(11)及び/又は前記加熱室(12)の上流には、熱交換器(23)が設けられている
請求項9~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記燃焼室(11)ならびに/又は前記加熱室(12)への燃料及び/もしくは空気の供給を調整する調整装置が設けられ、前記調整装置は、前記燃焼室ならびに/又は前記加熱室(12)内で規定の上限温度を超えないように構成されている
請求項9~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記調整装置は、温度の調整のために前記燃料及び空気の比に影響を及ぼすように構成されている
請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段階的無炎燃焼の方法及びそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水を加熱するために可燃性ガスと空気との混合気の無炎燃焼を行うバーナについては、特許文献1から公知である。燃焼室内の無炎酸化を維持するために、ウォータージャケットと燃焼室内部との間に断熱材を設けることにより、燃焼室内で起こる無炎酸化に必要な高温に達することができるようにしている。
【0003】
ガスタービン用の燃焼室については、特許文献2から公知であり、燃焼室は段階的酸化を行いながら作動している。この燃焼室では大規模な循環流が維持され、この循環流内に、さまざまな位置において燃焼用空気が少量添加されている。そうすることで、非常に安定した火炎が得られることになる。
【0004】
ガスタービン用の燃焼室については、特許文献3からも公知であるが、この燃焼室は大規模な循環流でも作動する一方、安定した無炎運転を行うように構成されている。
【0005】
特許文献4では、無炎酸化によって燃焼室を加熱するバーナが開示されている。このバーナには、火炎に点火可能な燃焼室が形成されている。このことは、炉室の予熱及び加熱、即ちバーナの始動に寄与している。定常運転では燃焼室は作動せず、燃料の酸化は炉室内でのみ起こる。
【0006】
無炎酸化に通常必要となる、850℃を下回る温度での無炎酸化を行うことによって燃焼室を加熱する形態については、特許文献5から公知である。無炎酸化の生成及び維持のために、当該バーナは、火炎が安定して燃焼する燃焼室を備える。燃焼室から排出される高温の排出ガスは、空気及び燃料と共に炉室内に導入され、そこで燃料の無炎酸化が起こる。
【0007】
特許文献6には、ガスと空気との混合気を酸化させる、無炎酸化燃焼室を備えるガスタービンについて記載されている。このために、トーラス形状の燃焼室が設けられている。この燃焼室には、気化器から到来するガスと空気との混合気が供給されている。
【0008】
さらに、ガスタービンについては特許文献7から公知であり、当該ガスタービンの燃焼室は、噴射器から到来する燃料リッチ混合気を受け取り、加えて複数の吸気口を介して空気を受け取り、その結果として無炎の一次混合領域と、その下流に燃焼領域とが形成されている。燃料の酸化は、この燃焼領域で起こる。一方、混合領域は燃料の噴射に寄与している。火炎面は、この混合領域から離隔するように変位する。
【0009】
特許文献8には、無炎酸化によって作動する、分離不可能な液体の熱処理を行う装置について記載されている。熱処理対象の不燃性液体は、無炎酸化によって加熱される炉室に注入される。
【0010】
従来技術から公知である、無炎酸化によって作動する燃焼方法では、火炎生成が抑制され、これによって熱NOx形成も回避される。同時に、それに応じて構成されたバーナが、例えば排出ガスエネルギーを使用することにより、これによって熱NOxを形成することなく、高温になるまで空気を予熱できるようにしている。しかしながら、加熱室内で無炎酸化が確実に行われるようにするための要件は、加熱室温度に準拠することであり、この加熱室温度は、安全マージンを含め、使用済み燃料の自然発火温度を上回るものである。なお、これより以下の「自然発火温度」とは、例えば天然ガスであれば、150ケルビン程度の安全マージンをさらに持たせた上で、実際の自然発火温度を常に意味しているものである。これは、例えばメタン(天然ガス)などの典型的な燃料の場合、加熱室温度が850℃を上回る必要があることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許出願公開第0698764号明細書
【文献】国際公開第01/11215号
【文献】米国特許第7062917号明細書
【文献】米国特許第5154599号明細書
【文献】欧州特許第1995515号明細書
【文献】米国特許第3309866号明細書
【文献】米国特許第5727378号明細書
【文献】米国特許第6234092号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、多くの用途では、個々の限界温度を超えてはならない感受性の高い物品の加熱を加熱室が担うため、加熱室温度が高温になることは望ましくない。そのような用途には、例えば、物品の乾燥、金属物品のアニーリング、アルミニウムのろう付け、又は金属、とりわけ低融点金属に行う別の熱処理若しくは蒸気生成がある。そのようなプロセスのために行われる熱発生は通常、火炎の維持を伴うバーナに基づいており、この場合、熱NOxの発生が不可避となっている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、NOxの発生が少ない低温プロセスを実行するための、熱発生に関する着想を提供することにある。
【0014】
この目的は、請求項1に記載の方法によって解決され、また、請求項9に記載の装置によって実現される。
【0015】
本発明の方法及び本発明の装置により、使用済み燃料の自然発火温度も下回り得る温度(安全マージンも付加)で加熱室を加熱できるようになり、その際、使用済み熱エネルギーの少なくとも大部分が無炎酸化プロセスで放出されることになる。このために、少なくとも2段階の酸化プロセスが設けられ、第1の段階において、燃焼室内に燃料と空気とが非化学量論比で導入され、次いでこれらが、無炎酸化において互いに反応させられる。この燃焼室は略断熱的に構成されており、これは即ち、不可避の熱損失を除いては、そこから熱エネルギーが取り出されることはなく、とりわけ有用な熱が何ら抽出されない。熱抽出は、実質的には燃焼室を退出するガス流と共にのみ生じるが、それ以外では起こらない。このガス流は、非冷却状態で燃焼室を退出する。大規模な再循環流が燃焼室内で維持されるため、保炎構造体上に発生し得る小さな局所渦が回避されることで、無炎酸化が実現する。燃焼室は、保炎器又は他の保炎構造体を含まない。すべての構造は、それまで生じていたガス流の速度を低下させ、火炎が当該構造体上に維持され得るように、小さな局所的静止渦を生成することができる、保炎構造体と見なされる。
【0016】
燃焼室内の温度は、使用済み燃料の自然発火温度を上回るように調整される。ただし、この温度は、増加しつつある窒素酸化物の形成に留意する必要が生じ得る温度を下回るように維持されている。このような条件の調整は、燃焼室内の燃料対空気比(簡潔に言えば、空気比λ)を用いて行われることが好ましい。
【0017】
燃焼室から排出される反応ガス流は加熱室に供給され、必要に応じて空気及び/又は燃料が添加される下で、完全に酸化する。これにより、主として反応ガス流の反応可能部分で酸化が起こり、その際の温度は、使用済み燃料の自然発火温度を上回っている。加熱室内では、高温の反応ガス流が加熱室内に含まれるより低温のガス容積と混合されることで、循環流が維持される。そうすることで、感受性の高い物品又は蒸発器の加熱コイルが、加熱対象の物品又は蒸発器に損傷を生じることなく加熱され得る。同時に、熱NOxの発生が大幅に回避されるように配慮がなされる。具体的には、例えば1400℃など、増加した窒素酸化物の形成が留意される温度限界をいずれの場所でも超えることがないように、燃焼室及び加熱室で酸化プロセスが制御される。
【0018】
好ましくは、この酸化は、高度に準化学量論的又は高度に超化学量論的に燃焼室内で行われ、これによってその温度は使用済み燃料の自然発火温度を上回るが、窒素酸化物の形成に必要となるより高温の状態からいかに乖離したとしても、これによって酸化が維持され得る。例えば、この燃焼室内の温度は、空気比を用いて、例えば1000℃~1300℃の温度範囲内にある温度に閉ループ制御され得る。したがって、追加の空気導入(準化学量論的燃焼室の場合)又は燃料導入(超化学量論的燃焼室の場合)による加熱室内の後酸化も、好ましくは、指定された1300℃~1440℃の温度限界値を、後酸化領域で生じる温度が超えることのないように制御されることが好ましい。このために、後酸化に必要となる空気及び/又は燃料は反応ガスの噴流内に導入され、次いで燃焼室から退出して、可能な限り広範な領域に分散していく。こうした噴流内の空気又は燃料の大規模な分散は、複数の燃料ノズル及び/又は空気ノズルが設けられるということ、並びに/あるいは局所的な完全酸化が起こり得る前に、反応ガスの噴流内の空気又は燃料の分散が得られるように、反応ガス流だけでなく、後酸化に必要となる燃料流又は空気流の流速及びインパルスが互いに適合されることで、実現し得る。
【0019】
好ましくは、使用済み燃料の部分的な無炎燃焼を伴う断熱プロセスが、燃焼室内で実行される。燃焼室で発生した熱は、燃焼ガス流によって燃焼室からのみ排出され、次いで加熱室に供給される。有用な熱は燃焼室からは何ら取り出されない一方で、下流の加熱室は有用な熱を抽出するのに寄与している。
【0020】
熱発生装置の作動中、好ましくは供給燃料流と供給空気流との比率を適切に定義し、かつ調整することによって、燃焼室内で温度閉ループ制御が実行される。これは、質量流量又は体積流量に基づいて実行され得る。
【0021】
全負荷運転では、燃焼室は準化学量論的に作動することが好ましく、ここでは、温度の上昇は空気比λの低下によって相殺される。部分負荷運転では、この燃焼室は超化学量論的に作動することもでき、これによって温度の上昇は、好ましくは空気比λの上昇によって相殺される。
【0022】
例えば、負荷変動に適応するための準化学量論的運転から超化学量論的運転への移行は、好ましくは、λ=1に近似した空気比λの範囲を回避しながら実行される。例えば、λ=1前後、例えばλ=0.8からλ=1.6までなど、制御装置が連続運転されない範囲を定義することができる。この範囲は例示としてのみ示しており、これを燃料に応じて別々に定義することができる。
【0023】
このような作動範囲を回避することにより、燃焼室の過熱、ひいては望ましくないNOx形成さえも効果的に回避され得る。
【0024】
本発明の方法及び本発明の装置では、発生する熱出力は、主として断熱運転される燃焼室内で生成されることが好ましく、この燃焼室内で燃料は無炎酸化する。この酸化は準化学量論的に起こることが好ましく、それはなぜなら、超化学量論的に作動させる場合と比較して、より少量のガス体積流量が得られるからである。供給燃料と供給空気との混合気の断熱反応温度は、例えば1400℃の限界値を下回るように維持されることが好ましい。燃料が天然ガスである場合、空気比λは、例えば0.5に近似する。その結果、燃焼室内の平均ガス温度は、指定された限界値を著しく下回る。
【0025】
下流の加熱室では、燃焼室からの高温の反応ガス及び空気又は燃料が供給され、これにより、加熱室内に大規模な再循環流が発生し、好ましくは、加熱室内で無炎燃焼が起こる。燃焼室から高温の反応ガスがもたらされることで、加熱室での燃焼は確実に行われるが、受熱媒体又は加熱対象の物品の温度や加熱室の平均温度は、使用済み燃料の自然発火温度を下回る。燃焼室から反応ガスが退出した後、当該燃料の自然発火温度を上回る温度上昇領域が加熱室内で維持され、この領域はより低温の領域、即ち、自然発火温度を下回る温度の領域に包囲されている。
【0026】
本発明の方法は、とりわけ組成を変更するような場合において、火炎安定化が困難になる、いわゆるリーンガスの燃焼にも適している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面には、本発明の装置の実施形態を例示している。これらの図面は以下を示す。
図1】本発明の装置の概略図である。
図2】本発明の装置の変形例を示す概略図である。
図3】本発明の装置の燃焼室及び加熱室の概略縦断面図である。
図4図1から図3に係る、本装置の負荷閉ループ制御について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の方法について説明するために、熱損失に対して断熱された燃焼室11と、内部から有用な熱を抽出することができる加熱室12と、を備える、図1に係る装置10を参照する。加熱室12からの熱の取り出しは、例えば加熱コイル13を介した熱抽出、又は他の技術的手段によって実行され得、この加熱コイル13では、熱キャリア流体が加熱されるか、又は蒸発する。例えば、加熱室12は、生成物の乾燥、例えばはんだ付けなどの生成物の加熱、又は、例えば850℃など、使用済み燃料の自然発火温度を下回る可能性のある、中温での流体又は物体の加熱を必要とする他の用途に使用され得る。
【0029】
燃焼室11には、燃料ライン14と空気ライン15とを介して燃料及び空気が供給される。これにより、空気比がλ=1となるように燃料と空気との比率が定義される。好ましくは、λは1よりも極めて低くなり、即ち、燃料過剰で当該運転が実行される。燃焼室11内で酸化が開始されるように、ここでさらに図示していない点火装置、例えば火花点火装置又はパイロットバーナなどの装置を設けることが好ましい。こうした装置は連続運転で作動することができ、あるいは燃焼室11内で無炎酸化が起こった後にオフにすることもできる。
【0030】
好ましくは、燃焼室11の壁は高い耐熱性を備える。例えば、燃焼室11はセラミックで裏打ちされるか、又はセラミックから構成され得る。そうすることで、燃焼室11内で燃料に点火された後に、燃焼室11の急速な加熱や、無炎酸化による作動方法の迅速な実現が可能になる。
【0031】
燃焼室で発生した反応ガスは、反応ガス流路16を介して加熱室12に導入される。さらに、空気及び/又は燃料が、ライン17を介して加熱室12に導入され、そこで高温の反応ガスと混合して、使用済み燃料の完全酸化が起こる。加熱室12は、好ましくは燃焼室11よりも極めて大きく、そこで得られる平均温度は燃焼室11の平均温度よりも極めて低く、好ましくは、使用済み燃料の自然発火温度を下回っている可能性もある。ここで発生する排出ガスは、ライン18を介して加熱室12から排出される。
【0032】
好ましくは、燃焼室11は、使用済み燃料の自然発火温度を少なくとも超えるような高い温度範囲で作動するが、また一方で、それと同時に窒素酸化物の形成がほぼ完全に抑制されるような低い温度範囲で作動する。燃焼室11内で使用可能となるこうした温度範囲は、例えば、下限温度が800℃~1100℃、好ましくは850℃~1100℃であるのに対して、上限温度が、例えば1100℃~1400℃、好ましくは1100℃~1300℃であり、例えば、温度が1200℃となるように定義され得る。所望の温度範囲は、好ましくは空気比λをそれぞれ定義するか、又は規定することによって調整される。これにより、燃焼室11は、例えば(かつ好ましくは)空気過剰で作動する。そうすることで、燃焼室11を比較的小型の構造にすることができる。さらに、ライン17を介して供給する必要があり、また完全酸化に必要となる二次空気のインパルスは、下流の加熱室12内に大規模かつ十分に迅速な再循環流をもたらすのに利用することができる。
【0033】
燃焼室11内の温度は、断熱運転中、燃料対空気比、即ち空気比に、及びしたがって燃焼室11の吸気口ノズルと加熱室12内の二次空気ノズルとの断面比にのみ従属する。例えば、約50%の空気不足に相当する1:1の比率となる場合、ほぼ断熱された燃焼室11内の燃料として天然ガスを使用することで、約1100℃の温度が得られる。さらに、燃焼室11内の温度を所望の範囲内に維持するために、化学量論比、即ち燃焼室11内の空気比に影響を及ぼす温度閉ループ制御が確立され得る。この状態は、発熱量が変化するリーンガスを燃料として使用する場合に、とりわけ適している。その場合、燃焼室11内の温度は、空気比λによって閉ループ制御され得る。
【0034】
(空気比λの)化学量論比を適切に定義することにより、燃焼室11内の温度制御は、燃焼室11を例えば1000℃などの所望の作動温度に迅速に至らしめることができるように、コールドスタートにも適用され得る。コールドスタートを行うために、燃焼室11は、例えば所望の温度に達するまで化学量論的運転(λ=1)で作動することができ、その後、準化学量論的に継続作動する。燃焼室11内で所望の無炎運転がなされるように、燃焼室11は、大規模な再循環渦を発生させるように構成されている。その一方で、保炎構造体を設けていない。このために、再循環流の形成を支援する適切なフローガイド装置が、燃焼室11内に配置され得る。
【0035】
必要に応じて、下流の加熱室12内でも無炎運転が実行され得るが、その際の温度は、熱取り出し構造、例えば、加熱コイル13の領域における使用済み燃料の自然発火温度よりも低い。この点について、燃焼室11及び加熱室12の概略縦断面を示している図3を参照する。燃焼室11内では、例えば、燃料が準化学量論的に酸化する中空シリンダ状のガイド装置によって、再循環渦19がもたらされる。ライン17を介して加熱室12内に吹き込まれる空気20は、燃焼室11から排出される反応ガスで構成されたガス噴流21に対して、そのインパルスを搬送する。ガス噴流21を形成しているこの領域では、ガス噴流21内に依然として存在する燃料による無炎酸化が起こり得、これにより、さらなる熱放出が起こる。また一方で、このガス噴流21は加熱室12において、その再循環の過程で、そこに存在するより低温の静止ガスと混合し、その結果として、ガス噴流21内でさらにエネルギー放出が行われても、加熱室12内の平均温度が使用済み燃料の自然発火温度を下回る、例えば850℃を下回り得るように、より低温の領域が形成される。
【0036】
装置10及び、本装置に基づいて説明している方法は、従来の加熱装置、とりわけ火炎を用いた運転に基づく装置と比較して数多くの利点を有する。燃焼室11を無炎酸化で、さらに好ましくは、加熱室12も無炎酸化で作動させることにより、熱NOx形成がほぼ完全に抑制され得、その結果として、10mg/mを下回る値が達成され得る。この状況は、使用済み燃料の自然発火温度を下回る、例えば850℃を下回り得る熱引き出しに寄与する加熱室12の当該領域の温度とは無関係に当てはまるものである。
【0037】
発熱量が変化するリーンガスを使用する場合、通常なら発生する火炎安定化の問題が、無炎酸化で燃焼室11を作動させることによって回避され得る。構造が同じでも安価となるように、10kW~数MWの異なる出力範囲に、この燃焼室11が適合し得ることが示されている。
【0038】
燃焼室11が熱引き出しなしで作動する場合、その温度は、部分負荷運転中も略一定に維持され得、その結果、特別な労力なしに高い制御比が得られる。
【0039】
この燃焼室11に熱遷移を妨げるライニング、例えばセラミックライニングが施されているか、又はそれ自体がセラミック若しくは高い熱抵抗を有する別の材料から構成されている場合、燃焼室11は、コールドスタート中に無炎で作動することもできる。無炎酸化の手法を用いれば、火炎の局所的な温度ピークが回避され、このことは、燃焼室11及び加熱室12に対して材料の保全効果を発揮する。
【0040】
図2は、図1及び図3に係る装置10に基づくシステム22を示しており、その説明に際しては、既に導入している参照符号に基づいて、上述の記載を参照する。システム22において、熱交換器23は、空気の予熱を担う排出ガスライン18に接続され、冷却済みの排出ガスを排出口24で排出している。熱交換器23は、吸気口25を介して供給される外気を加熱し、この外気を、被加熱状態でライン15及び/又は17に排出する。ライン15、17のうちの少なくとも一方には、例えばスライド式、バルブ式、ファン式、又は流速に影響を及ぼす同様の手段形式の流量調整装置26、27が設けられ得る。これらの流量調整装置26、27は、制御装置28に接続されている。この制御装置28は、燃焼室11への燃料流量を調整するためにライン14に配置された、流量調整装置29にさらに接続されている。流量調整装置29も同様に、スライド式、バルブ式、ポンプ式、又はファン式などとすることができる。
【0041】
燃焼室11には、制御装置28に接続された温度センサ30が設けられ得る。この場合、無炎酸化では火炎が発生しないために、通常の火炎センサを使用することができないので、この温度センサ30のタスクは、燃焼室11の動作を監視することである。好ましくは、この温度センサは「迅速な」センサであり、これは、この温度センサの熱慣性が極めて低いことを意味する。
【0042】
図2に係るシステムでは、燃焼室11及び/又は加熱室12に供給される空気は、熱交換器23によって予熱される。ただし、この熱交換器23は任意選択であり、この熱交換器を必要とせず、したがって加熱室12に向かう空気の予熱も必要とせず、またとりわけ、燃焼室11に向かう空気の予熱も必要としない実施形態も想定可能である。ここで燃焼室11内での無炎酸化に必要となる温度は、この場合は有用な熱の取り出し、即ち燃焼室11の熱的隔離を省略した形態から生じる。
【0043】
図2に示すシステム22は、例えば以下のように作動することができる。
【0044】
まず、全負荷運転について説明する。この全負荷運転を行うために、制御装置28は、流量調整装置29を用いて所望の負荷に応じて燃料流量を調整し、次いで流量調整装置26を用いて、空気流量、即ち空気比を調整し、これにより、燃焼室11内の温度が所望の作動範囲内、例えば850℃~1300℃、例えば約1100℃になるようにしている。これにより、燃焼室11において無炎酸化が実現する。制御装置28は、温度センサ30を用いて温度を検出し、当該温度が所望の温度を超えて上昇した場合、空気ライン15内の空気流量を増加させ、当該温度が過度に低下した場合、空気流量を減少させる。したがって、温度閉ループ制御は、準化学量論的範囲内で空気比λが変動することによって実行される。このことは、図4の横座標の右側部分から明らかである。これにより、制御装置28は、過度の温度上昇、ひいては窒素酸化物の発生を回避するために、この制御範囲内で限界値λを超えないようにさらに構成されている。この制御装置28は、ガス噴流21内の残留燃料が加熱室12内の空気20で完全に酸化するように、流量調整装置27を用いてライン17内の空気流を同時に放出する。この酸化は、好ましくはガス噴流21内で無炎に起こる。後者は、使用済み燃料の自然発火温度を下回る温度まで加熱室12を加熱するが、ガス噴流21自体は、燃料の自然発火温度を上回る温度を有する。そうすることで、加熱室12内でも熱NOxの形成は認められない。
【0045】
部分負荷運転への移行中、制御装置28は、流量調整装置29を用いて、燃料流量をより小さい値まで減少させる。これにより、燃焼室11内で自然発火温度を確実に超えるように、空気比λが調整される。加熱室12内に依然として存在する残留燃料を完全に酸化させるために潜在的に必要となる空気は、ライン17を介して再度供給される。
【0046】
極低負荷運転中、制御装置は、図4において、空気比の限界値λの上方にある横軸の左側部分に示すように、これまで述べた燃焼室11の準化学量論的運転からその超化学量論的運転へと運転を移行させることができる。空気比λの低下を伴う準化学量論的運転中、温度低下が達成されているが、ここで、超化学量論的運転中、温度低下は空気比λの上昇によって達成される。この範囲内で、制御装置28は、空気比の上昇を伴う過剰高温化と、空気比の低下を伴う燃焼室11の過剰低温化とに対処している。
【0047】
2つの限界値λ~λ間の範囲を、準化学量論的運転から超化学量論的運転へと切り替わる間に短時間で推移するか、又は準化学量論的運転から超化学量論的運転へと移行なしに切り替わることから(その逆も可能である)、少なくとも燃焼室11が加熱されるとすぐに、制御装置28によってこの範囲が回避される。そうすることで、例えば1300℃又は1400℃などの臨界限界値を上回る燃焼室11内の温度上昇や、それに伴う熱NOx形成が回避される。
【0048】
提示している実施形態に対して、数多くの修正が行われ得る。例えば、熱交換器23による空気の予熱は、ライン15を介して燃焼室11に供給される空気に限定され得る。1つの代替形態として、空気の予熱は、ライン17を介して加熱室12に供給される空気に限定され得る。また、ライン15及び/又はライン17を介して予熱された空気と予熱されていない空気との混合気を供給することもできる。さらに、ライン14を介して燃焼室11に供給される燃料を予熱することも、基本的に可能である。加えて、とりわけ燃焼室11の準化学量論的運転を実行するために、加熱室12に追加の燃料供給を行うことで、加熱室12内の熱発生率を高めることができる。しかしながら、提示しているすべての実施形態では、燃焼室11内での熱発生の大部分を、無炎酸化によって達成することが有利であると考えられる。加熱室12内のさらなる酸化は、火炎の有無にかかわらず実行され得、ここでは無炎酸化により、10mg/mを下回る値まで窒素酸化物の発生を減少させることができる。
【0049】
使用済み燃料の自然発火温度を下回る温度で加熱室12を加熱する本発明の方法では、無炎酸化において、燃料と空気とが非化学量論的混合比で互いに反応させられる形態で、燃焼室11が設けられる。これにより、空気比λが少なくとも化学量論比λ=1から極めて乖離するので、燃焼室11内の温度が、熱窒素酸化物の形成が始まる温度を超えることがない。この温度は、例えば1300℃~1400℃である。その一方で、燃焼室11内で使用済み燃料の自然発火温度を確実に超えるように、空気比λが定義される。したがって、信頼性の高い2つの空気比範囲、即ち、燃焼室11の準化学量論的運転におけるλ最小~λ間の第1の範囲と、燃焼室11の超化学量論的運転における第2の範囲λ~λ最大と、が得られる。燃焼室11から放出される依然として反応性を有するガスは、加熱室12のある領域内で追加の空気及び/又は追加の燃料と反応させられ、このために、好ましくは当該反応が無炎酸化で行われる。ここで指定される領域は、具体的にはガス噴流21内に形成される。ここで無炎酸化が起こることにより、加熱室12内においても、熱窒素酸化物の発生が回避される。
【符号の説明】
【0050】
10 装置
11 燃焼室
12 加熱室
13 加熱コイル
14 燃料ライン
15 空気ライン
16 反応ガス流路
17 ライン
18 排出ガス
19-a フローガイド装置
19 再循環渦
20 空気
21 ガス噴流
22 システム
23 熱交換器
24 排出口
25 吸気口
26,27 流量調整装置
28 制御装置
λ 空気比
λ,λ,λ最小,λ最大,λ 空気比限界値
29 流量調整装置
30 温度センサ
図1
図2
図3
図4