(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】レーダーシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/46 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
G01S13/46
(21)【出願番号】P 2021548009
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2019037338
(87)【国際公開番号】W WO2021059340
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋介
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-052414(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235397(WO,A1)
【文献】特開2005-067294(JP,A)
【文献】特開2017-037400(JP,A)
【文献】特開2011-117895(JP,A)
【文献】特開2016-080646(JP,A)
【文献】特開2002-154347(JP,A)
【文献】特開2002-277544(JP,A)
【文献】特開2015-194371(JP,A)
【文献】特開2005-275723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検出範囲内に存在する物体を検出するレーダー装置と、
前記レーダー装置により移動しない第1の物体が検出されると共に、前記レーダー装置により移動する第2の物体が検出された場合に、前記第1の物体と前記第2の物体との間の距離を算出する計算装置と、
前記計算装置により算出された距離を出力する出力装置とを備え、
前記出力装置は、前記第1の物体の撤去に向かう作業者に携帯され、又は、前記第1の物体の撤去に向かう車両に搭載され
たものであり、
前記第2の物体は、前記作業者又は前記車両であることを特徴とするレーダーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダーシステムにおいて、
前記計算装置は、前記第1の物体が検出された第1の時刻と前記第2の物体が検出された第2の時刻とが異なる場合に、前記第1の物体と前記第2の物体との間の距離を、前記第1の時刻と前記第2の時刻との時間差と、前記第1の時刻における前記第1の物体の位置と前記第2の時刻における前記第2の物体の位置との間の距離と、前記第2の物体について設定された移動速度とに基づいて算出することを特徴とするレーダーシステム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のレーダーシステムにおいて、
前記計算装置は、第1のレーダー装置により前記第1の物体が検出されると共に、前記第1のレーダー装置とは異なる第2のレーダー装置により前記第2の物体が検出された場合に、前記第1のレーダー装置による検出結果と前記第2のレーダー装置による検出結果とに基づいて、前記第1の物体と前記第2の物体との間の距離を算出することを特徴とするレーダーシステム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のレーダーシステムにおいて、
前記レーダー装置により検出された前記第1の物体の位置を示す光を照射する照光器を更に備えたことを特徴とするレーダーシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のレーダーシステムにおいて、
前記照光器は、前記第1の物体の位置を中心としたエリアに光を照射することを特徴とするレーダーシステム。
【請求項6】
請求項4に記載のレーダーシステムにおいて、
前記照光器は、前記第1の物体の位置を中心とした線分の両端、又は前記第1の物体の位置を中心とした多角形の各頂点に光を照射することを特徴とするレーダーシステム。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれかに記載のレーダーシステムにおいて、
前記第1の物体の位置を含むエリア又は前記光の照射位置を含むエリアを撮影するカメラ装置と、
前記カメラ装置により撮影された映像を表示する表示装置とを更に備えたことを特徴とするレーダーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダー装置を使用して撤去の必要がある物体を検出するレーダーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波やミリ波帯などを用いたレーダー装置として、例えば、
図1のような構造のFMCW(Frequency Modulated Continuous-Wave)レーダー装置がある。
図1のレーダー装置100は、FMCW送信源101からの周波数変調されたレーダー信号を、送信電力増幅器103で増幅し、送信アンテナ104から発射する。レーダー装置100の検出範囲内に物体T(反射物)が存在する場合には、レーダー送信波が物体Tで反射される。物体Tからの反射波は、レーダー装置100の受信アンテナ105で受信され、受信電力増幅器106で増幅された後、電力分配器102からの送信レーダー信号成分と混合器107によってミキシングされ、IF信号に変換される。混合器107から出力されたIF信号は、信号処理部108でA/D変換及び信号処理される。その結果として、物体Tによる反射受信電力(反射波電力)、物体Tまでの距離、物体Tの方位、また、物体Tが移動している場合の速度(レーダー装置100に対する相対速度)等のレーダー検出結果が得られる。
【0003】
このようなレーダー装置に関し、これまでに種々の発明が提案されている。
例えば、特許文献1には、移動体にミリ波レーダーを設置し、目標位置の近くにそれぞれ設置された第1の反射体と第2の反射体との間の距離と、これら反射体からの反射波の受信結果に基づいて、目標位置までの距離を測定する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーダー装置の使用用途として、道路や滑走路などの路面上に存在する物体を検出する用途がある。道路や滑走路上には通常、落下物や放置物などの反射物は存在しない。そのため、レーダー装置は、反射物が存在しない検出範囲に対してレーダー送信波を送り続け、何らかの反射物が検出範囲内に現れた場合にのみ受信波(反射波)が得られ、その物体が検出される。
【0006】
しかしながら、レーダー装置により検出された物体の寸法が小さい場合、物体の色が路面と類似色の場合、夜間や霧で周囲が見えにくい場合、雨天で路面が濡れている若しくは路面で降雨が跳ねている場合などでは、物体を目視で確認することは困難であり、現場での捜索に時間がかかってしまう。
【0007】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、レーダー装置により検出された物体を作業者が効率よく見つけ出せるように支援するレーダーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記目的を達成するために、レーダーシステムを以下のように構成した。
すなわち、本発明に係るレーダーシステムは、所定の検出範囲内に存在する物体を検出するレーダー装置と、前記レーダー装置により移動しない第1の物体が検出されると共に、前記レーダー装置により移動する第2の物体が検出された場合に、前記第1の物体と前記第2の物体との間の距離を計算する計算装置と、前記計算装置により算出された距離を出力する出力装置とを備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、前記出力装置は、前記第1の物体の撤去に向かう作業者に携帯され、又は、前記第1の物体の撤去に向かう車両に搭載されるように構成してもよい。
【0010】
また、前記計算装置は、前記第1の物体が検出された第1の時刻と前記第2の物体が検出された第2の時刻とが異なる場合に、前記第1の物体と前記第2の物体との間の距離を、前記第1の時刻と前記第2の時刻との時間差と、前記第1の時刻における前記第1の物体の位置と前記第2の時刻における前記第2の物体の位置との間の距離と、前記第2の物体について設定された移動速度とに基づいて算出するように構成してもよい。
【0011】
また、前記計算装置は、第1のレーダー装置により前記第1の物体が検出されると共に、前記第1のレーダー装置とは異なる第2のレーダー装置により前記第2の物体が検出された場合に、前記第1のレーダー装置による検出結果と前記第2のレーダー装置による検出結果とに基づいて、前記第1の物体と前記第2の物体との間の距離を算出するように構成してもよい。
【0012】
また、本発明に係るレーダーシステムは、前記レーダー装置により検出された前記第1の物体の位置を示す光を照射する照光器を備えるように構成してもよい。
【0013】
また、前記照光器は、前記第1の物体の位置を中心としたエリアに光を照射するように構成してもよい。
【0014】
また、前記照光器は、前記第1の物体の位置を中心とした線分の両端、又は前記第1の物体の位置を中心とした多角形の各頂点に光を照射するように構成してもよい。
【0015】
また、本発明に係るレーダーシステムは、前記第1の物体の位置を含むエリア又は前記光の照射位置を含むエリアを撮影するカメラ装置と、前記カメラにより撮影された映像を表示する表示装置とを更に備えるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、レーダー装置により検出された物体を作業者が効率よく見つけ出せるように支援するレーダーシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】本発明の一実施形態に係るレーダーシステムの概要を示す図である。
【
図3】落下物とその撤去に向かう移動体との距離を算出する第1の方法を説明する図である。
【
図4】落下物とその撤去に向かう移動体との距離を算出する第2の方法を説明する図である。
【
図5】落下物を検出したレーダー装置と落下物の撤去に向かう移動体を検出したレーダー装置とが異なる場合の例を示す図である。
【
図6】
図2に示したレーダーシステムの拡張例を示す図である。
【
図7】落下物を中心としたエリアに光を照射する例を示す図である。
【
図8】落下物を中心としたエリアの四隅に光を照射する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係るレーダーシステムについて、図面を参照して説明する。
図2には、本発明の一実施形態に係るレーダーシステムの概要を示してある。本例のレーダーシステムは、所定の検出範囲Rにレーダー送信波を発射するレーダー装置100と、制御室や監視室などに設置されたレーダー監視装置200および表示装置220と、作業員が乗る車両Mに搭載された出力装置300とを備えている。
図2では、レーダー装置100を1台のみ示しているが、それぞれ異なる検出範囲Rを有する複数台のレーダー装置100を設置してもよい。
【0019】
レーダー装置100は、検出範囲Rに対して送信したレーダー送信波の反射波を受信し、信号処理した結果をレーダー監視装置200に出力する。レーダー監視装置200は、レーダー装置100から出力されたデータに基づいて、検出範囲R内に存在する物体X(落下物や放置物)の検出情報を表示装置220に表示させる。
【0020】
レーダー装置100の検出範囲Rは道路や滑走路などの路面上の所定区間であり、レーダー装置100のアンテナ角度は検出範囲Rを包含するように設定される。レーダー装置100から物体Xまでの距離は、物体Xからの反射波を信号処理することで算出することができる。また、レーダー装置100のアンテナが機械的に回転している場合は、アンテナの回転角度情報に基づいて、レーダー装置100に対する物体Xの角度(方位)を特定することができる。或いは、レーダー装置100のアンテナから発射するレーダー送信波のビームの角度が電子的に走査されている場合は、ビームの走査角度情報に基づいて、レーダー装置100に対する物体Xの角度(方位)を特定することができる。
【0021】
このように、レーダー装置100を使用することで、検出範囲R内に物体Xが存在する場合に、レーダー装置100に対する物体Xの距離及び角度を得ることができる。物体Xを路面上から撤去する場合には、撤去に向かう作業者に対して、物体Xの位置を適切に知らせる必要がある。その手法の一つとして、レーダー装置100から得られた距離及び角度の情報をもとに算出された検出範囲R内での物体Xの座標を、作業者に対して通知する手法がある。これにより、作業者は、通知された座標を目指して移動することで、物体Xの位置に近づくことができる。
【0022】
しかしながら、作業者は、通知された座標に到着した後は、その周辺にある物体Xを目視で探し出す必要がある。このとき、物体Xの寸法が小さい場合、物体Xの色が路面と類似色の場合、夜間や霧で周囲が見えにくい場合、雨天で路面が濡れている若しくは路面で降雨が跳ねている場合などでは、物体を目視で確認することは困難である。
【0023】
そこで、本例のレーダー監視装置200は、レーダー装置100から得られた距離及び角度の情報をもとに、物体Xが存在する位置の座標を算出するだけでなく、物体Xと物体Xに向かって移動する移動体(例えば、作業者やその作業者が乗る車両など)との間の距離を算出する。つまり、レーダー監視装置200は、レーダー装置100により移動しない第1の物体(物体X)が検出されると共に、レーダー装置100により移動する第2の物体(作業者や車両などの移動体)が検出された場合に、これら物体間の距離を算出する。そして、算出された距離を、作業員が乗る車両Mに搭載された出力装置300へ送信し、出力装置300から出力させることで、作業者が物体Xを効率よく見つけ出せるように支援する。
【0024】
出力装置300は、専用の装置として実現してもよいし、車両Mに搭載されたカーナビゲーションなどの他の装置を利用して実現してもよい。また、車載型の出力装置300に代えて、作業者が持ち運び可能な携帯端末を出力装置300として用いてもよい。レーダー監視装置200による算出結果の距離は、無線通信等の通信手段を用いて出力装置300に伝送される。
図3には、車両Mに搭載された出力装置300により、物体Xと車両Mとの間の距離を表示出力した様子を示してある。出力装置による距離の出力は、
図3のように表示出力する態様に限られず、他の態様による出力(例えば、音声出力)でも構わない。
【0025】
次に、落下物Xとその撤去に向かう車両Mとの距離を算出する方法について、
図3を参照して説明する。ここでは、レーダー装置100により、物体Xに対する距離及び角度の情報と、車両Mに対する距離及び角度の情報とが、同時刻に得られた場合を想定して説明する。
【0026】
レーダー装置100により検出された物体Xとレーダー装置100との間の距離をD2とする。また、レーダー装置100により検出された車両Mとレーダー装置100との間の距離をD1とする。また、レーダー装置100と物体Xを結ぶ直線と、レーダー装置100と車両Mを結ぶ直線とが形成する角度をθとする。この場合、物体Xと車両Mの間の距離D3は、一般的に知られる下記(式1)で算出することが可能である。
D3^2=D1^2+D2^2-2×D1×D2×cosθ (式1)
ここで、記号「^」は、累乗の演算を示す。
【0027】
なお、上記(式1)は一例に過ぎず、他の計算式を用いて距離D3を算出することも可能である。例えば、レーダー装置100で得られた物体Xに対する距離及び角度の情報に基づいて物体Xの座標を算出し、レーダー装置100で得られた車両Mに対する距離及び角度の情報に基づいて車両Mの座標を算出し、これらの座標から距離D3を計算してもよい。
【0028】
上記の距離計算方法は、物体Xに対する距離及び角度の情報と、車両Mに対する距離及び角度の情報とが同時刻に得られた場合を想定したものだが、これらを同時刻に取得できない場合がある。例えば、レーダー装置100のアンテナが機械的に回転している場合や、レーダー装置100のアンテナから発射するレーダー送信波のビームの角度が電子的に走査されている場合である。これらの場合には、アンテナの回転やビームの走査に要した時間において車両Mの位置が変化してしまうので、車両Mの移動を考慮して距離を算出する必要がある。
【0029】
落下物Xとその撤去に向かう車両Mとの間の距離を、車両Mの移動を考慮して算出する方法について、
図4を参照して説明する。ここでは、レーダー装置100のアンテナが回転する方向が、車両Mが先に検出され、その後に物体Xが検出される方向である場合について説明する。
【0030】
まず、時刻T1において、レーダー装置100により車両Mが検出され、車両Mまでの距離D1が得られたとする。その後、時刻T2において、レーダー装置100により物体Xが検出され、物体Xまでの距離D2が得られたとする。このときの時間差をΔT(=T2-T1)とし、時間差ΔTの間にアンテナが回転した角度をθとする。車両Mが物体Xに向かって速度Vで移動しているとすると、時間差ΔTの間に車両Mは距離V×ΔTだけ物体Xに近づいたことになる。したがって、時刻T1における車両Mの位置と時刻T2における物体Xの位置との間の距離をD3’とすると、距離D3’から距離V×ΔTを差し引くことで、車両Mの移動を考慮した距離D3を算出することができる。
【0031】
なお、距離計算に使用する速度Vは、一定の速度を予め設定しておいてもよいし、距離に応じて変化する速度(例えば、距離が小さいほど遅い速度)の算出式や変換テーブルを予め用意しておき、距離D3’に応じた速度Vを得るようにしてもよい。また、速度Vとして、車両Mの速度計等によって測定された実際の速度を用いてもよい。
【0032】
また、距離の計算、計算した距離の出力装置300への送信、出力装置300による距離の表示などの処理にある程度の時間を要する場合には、その間の車両Mの移動を更に考慮して、車両Mと物体Xの間の距離D3を算出してもよい。具体的には、例えば、物体X及び車両Mの両方が検出された時刻(つまり、遅い方の検出時刻)と出力装置300による距離の表示時刻との時間差を予め想定しておき、その間に車両Mが移動した距離を算出し、上記の距離D3’から更に差し引くようにしてもよい。
【0033】
これまで、1台のレーダー装置により物体Xと車両Mの両方が検出された場合について説明したが、
図5に示すように、物体Xと車両Mがそれぞれ異なるレーダー装置により検出されることもあり得る。
図5では、検出範囲R1を監視するレーダー装置100-1により車両Mが検出され、検出範囲R1に隣接する検出範囲R2を監視するレーダー装置100-2により物体Xが検出されている。
【0034】
この場合、レーダー監視装置200は、レーダー装置100-1から得られた距離及び角度の情報をもとに、車両Mが存在する位置の座標(x1,y1)を算出し、レーダー装置100-2から得られた距離及び角度の情報をもとに、物体Xが存在する位置の座標(x2,y2)を算出する。そして、これらの座標に基づいて、車両Mと物体Xの間の距離を算出し、出力装置300に送信して出力させるようにすればよい。
【0035】
以上のように、本例のレーダーシステムは、レーダー監視装置200が、レーダー装置100により移動しない物体Xが検出されると共に、レーダー装置100により移動する車両Mが検出された場合に、物体Xと車両Mとの間の距離を算出し、出力装置300が、レーダー監視装置200により算出された距離を出力するように構成されている。
【0036】
このような構成により、車両Mに乗って物体Xの撤去に向かう作業者は、出力装置300を通じて、物体Xまでの距離を知ることができる。したがって、作業者は、物体Xへ近づいていく段階においては、物体Xまでの距離をほぼリアルタイムに把握できる。このため、例えば、物体Xまでの距離が100mのときは、捜索範囲はまだ先なので、作業員は物体Xの存在を気にせずに移動することができる。また、物体Xまでの距離が10m、5mと次第に小さくなって捜索範囲が間近になると、作業員は物体Xの存在に注意しながら近づくことができる。更に、物体Xの寸法が小さい場合、物体Xの色が路面と類似色の場合、夜間や霧で周囲が見えにくい場合、雨天で路面が濡れている若しくは路面で降雨が跳ねている場合などでも、作業者は物体Xまでの距離を予め知ることができるので、捜索範囲をある程度絞って作業することが可能になる。このように、本例のレーダーシステムによれば、レーダー装置100により検出された物体Xを作業者が効率よく見つけ出せるように支援することができる。
【0037】
また、本例では、レーダー監視装置200が、車両Mが検出された時刻T1と物体Xが検出された時刻T2とが異なる場合に、物体Xと車両Mとの間の距離を、時刻T1と時刻T2との時間差ΔTと、時刻T1における車両Mの位置と時刻T2における物体Xの位置との間の距離と、車両Mについて設定された移動速度Vとに基づいて算出するように構成されている。したがって、レーダー装置100のアンテナの回転やビームの走査に要した時間における車両Mの移動を考慮して、物体Xと車両Mとの間の距離を算出することができる。つまり、物体Xと車両Mとの間の距離をより正確に算出することができる。
【0038】
また、本例では、レーダー監視装置200が、レーダー装置100-1により車両Mが検出されると共に、レーダー装置100-2により物体Xが検出された場合に、レーダー装置100-1による検出結果とレーダー装置100-2による検出結果とに基づいて、物体Xと車両Mとの間の距離を算出するように構成されている。したがって、それぞれの検出範囲Rが異なる複数のレーダー装置100を備える場合に、これらを連動させて物体Xと車両Mとの間の距離を算出できるので、システム全体としての検出範囲を拡大することができる。
【0039】
ここで、上記の説明では、作業者が車両Mに乗って物体Xの位置まで移動する場合を例にしたが、作業者が徒歩で物体Xの位置まで移動する場合にも、本発明を適用することが可能である。この場合には、速度Vとして、一般的な歩行速度を設定しておけばよい。
【0040】
次に、上述したレーダーシステムの拡張例について説明する。
図6には、
図2に示したレーダーシステムを拡張した構成の概要を示してある。同図のレーダーシステムは、第1実施例(
図2)の構成に加え、レーダー装置100の検出範囲Rを撮影可能なカメラ装置400と、レーダー装置100の検出範囲Rを取り囲むように設置された複数台の照光器500(
図6では、照光器500-1~500-6の6台)とを備えている。カメラ装置400及び照光器500は、レーダー監視装置200と通信可能に接続されている。照光器500としては、LED(Light Emitting Diode)照明やレーザー光などの、ある程度の指向性を持つ光を照射するものが用いられる。なお、カメラ装置400及び照光器500はレーダー装置100の架台に設置されても良く、本発明において設置位置は限定されない。
【0041】
本拡張例のレーダー監視装置200は、検出範囲R内で検出された物体Xの座標を算出し、その座標の位置又は周辺に光が照射されるように照光器500を制御する(
図7、
図8参照)。したがって、本拡張例のレーダーシステムによれば、作業者は、照光器500から照射された光を頼りにして物体Xの捜索を行えるようになる。なお、検出範囲Rが別の照明や直射日光により照らされている場合を考慮して、レーザーポインターのような高輝度の光を照射できる照光器500を用いることが好ましい。
【0042】
図7には、物体Xの位置に最も近い照光器500-6から、物体Xの位置を中心としたエリアに光を照射する例を示してある。この場合、光の照射エリア内に物体Xが存在することになるので、作業員は、光の照射エリア内で捜索を行えば済むようになる。
【0043】
図8には、物体Xの位置に近い4つの照光器500-2,500-3,500-5,500-6から、物体Xを中心としたエリアの四隅に光を照射する例を示してある。この場合、4つの光が形成する四角形の中心に物体Xが存在することになるので、作業員は、この四角形の中心付近を注意して捜索すればよい。なお、物体Xを中心とした他の多角形(例えば、三角形や五角形)の各頂点に光を照射するようにしてもよい。また、物体Xの位置を中心とした線分の両端に光を照射するようにしてもよい。
【0044】
ここで、
図7のように、物体Xを含むエリアに光を照射する場合には、光の照射エリア内に物体Xが含まれていることを映像で確認できるようにしてもよい。すなわち、レーダー監視装置200は、検出範囲R内で検出された物体Xの座標を含むエリアの撮影を行うようにカメラ装置400を制御する。そして、カメラ装置400により撮影された映像を、表示装置220に表示させる。これにより、光の照射エリア内に物体Xが存在することを事前に確認できるようになるので、物体Xの捜索の困難性を低減させることが可能となる。なお、作業者が物体Xを捜索する際の手掛かりとなるように、カメラ装置400により撮影された映像を出力装置300にも表示させるようにしてもよい。また、カメラ400で物体Xの検出位置を含むエリアを撮影する構成に代えて、カメラ400で光の照射位置を含むエリアを撮影するように構成してもよい。また、
図8のように、物体Xを中心とした複数位置に光を照射する場合にも同様に、カメラ400で物体Xの検出位置を含むエリア又は光の照射位置を含むエリアを撮影し、表示装置220(及び出力装置300)に表示させるように構成してもよい。
【0045】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記のような構成に限定されるものではなく、上記以外の構成により実現してもよいことは言うまでもない。
また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法や方式、そのような方法や方式をプロセッサやメモリ等のハードウェア資源を有するコンピュータにより実現するためのプログラム、そのようなプログラムを記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、レーダー装置を使用して撤去の必要がある物体を検出するレーダーシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
100:レーダー装置、 101:FMCW送信源、 102:電力分配器、 103:送信電力増幅器、 104:送信アンテナ、 105:受信アンテナ、 106:受信電力増幅器、 107:混合器、 108:信号処理部、 200:レーダー監視装置、 220:表示装置、 300:携帯表示端末、 400:カメラ装置、 500:照光器