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特許7324300前立腺がんのバイオマーカとしてのBMMF1 REPタンパク質の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】前立腺がんのバイオマーカとしてのBMMF1 REPタンパク質の使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20230802BHJP
【FI】
G01N33/574 A ZNA
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021549296
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2020054617
(87)【国際公開番号】W WO2020169798
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】19158840.9
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512113803
【氏名又は名称】ドイチェス クレブスフォルシュンクスツェントルム
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(72)【発明者】
【氏名】ブント, ティモ
(72)【発明者】
【氏名】ド ヴィリエ-ツア ハウゼン, エセル-ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ツア ハウゼン, ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】エルンスト, クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】テスマー, クラウディア
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-522869(JP,A)
【文献】国際公開第2018/069296(WO,A1)
【文献】米国特許第5972615(US,A)
【文献】EILEBRECHT, Sebastian et al.,Expression and replication of virus-like circular DNA in human cells,SCIENTIFIC REPORTS,2018年02月12日,8:2851,pp.1-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺がんのバイオマーカとしての、牛肉及び牛乳因子グループ1(BMMF1)Repタンパク質の使用。
【請求項2】
前記Repタンパク質が、MSBI1ゲノムにコードされたRepタンパク質(MSBI1 Rep)、MSBI2ゲノムにコードされたRepタンパク質(MSBI2 Rep)、CMI1ゲノムにコードされたRepタンパク質(CMI1 Rep)、CMI2ゲノムにコードされたRepタンパク質(CMI2 Rep)又はCMI3ゲノムにコードされたRepタンパク質(CMI3 Rep)である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
配列番号2又は配列番号3に含まれるエピトープに結合する抗Rep抗体によって、対象からのサンプル中のRepタンパク質を検出するステップを含む、前記対象における前立腺がんの診断又は素因を提供するための方法。
【請求項4】
前記Repタンパク質に特異的な抗体が、配列番号1のアミノ酸1~136、137~229及び230~324からなる群より選択されるアミノ酸配列内にあるエピトープに結合する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
対象からのサンプルが、癌性前立腺組織、癌性組織を取り囲む周囲組織及び(良性)過形成からなる群から選択される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
さらに、CD68陽性細胞が抗CD68抗体によってサンプル中で検出される、請求項3~5のいずれかに記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺がんのバイオマーカとしてのDNA複製関連(Rep)タンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺がんは、米国の男性におけるがん死亡率の2番目に高い原因である。毎年、20万人以上の新規患者が確認され、今年だけでも3万人以上がこの病気で亡くなっている。
【0003】
ほとんどの前立腺がんは、初期にはアンドロゲン依存性、すなわち前立腺がん細胞が増殖を続けるためにアンドロゲンを必要とする。手術や内科的治療によるアンドロゲン遮断療法(ADT)は、アンドロゲン依存性のがん細胞を速やかにアポトーシスに導く。ADTは70年以上にわたり、転移性ホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)の主要な治療法となっている。
【0004】
しかし、多くの場合、一部のがん細胞が生き残り、アンドロゲン非依存性または非反応性となり、前立腺がんの再発につながる。化学療法は、アンドロゲン非依存性前立腺がんの一種である転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)にのみ行われてきた。前立腺がんの治療には、タキサン系薬剤とDNA損傷性薬剤の2つの主要な化学療法剤が使用されている。
【0005】
前立腺がんを早期に発見することは、治療のための最良の機会となる。前立腺特異抗原(PSA)は、有効な腫瘍マーカと考えられているが、がんに特異的なものではない。前立腺がんの男性と前立腺良性疾患の男性では、PSAの濃度にかなりの重複が見られる。さらに、PSA値は、低悪性度の前立腺がんや臓器に限局した前立腺がん(手術の効果がある)と、侵攻性の前立腺がんや臓器に限局しない前立腺がん(手術の効果がない)との鑑別には使用できない。
【0006】
現在、前立腺がんの検出・診断には、直腸指診(DRE)と組み合わせて血清PSAを測定する方法が主流となっている。市販されているPSA検査は、一般的に地域や地方の検査機関で実施されている。これらの検査法は、前立腺がんの早期発見のための現在の戦略において重要な役割を果たしている。
【0007】
前立腺がんは進行すると治らないため、前立腺に限局している早期の段階で発見し、治療につなげるための努力がなされている。残念ながら、前立腺がんは、腫瘍が他の臓器や構造に転移するまで無症状のままである。前立腺がんのスクリーニングは、主に血液中のPSAを検出することで行われるが、良性疾患とがん疾患の間の特異性がないため、前立腺がんに対するPSAの診断価値は限られている。上述したように、PSAは疾患特異的なマーカではなく、前立腺肥大症(BPH)や前立腺炎の患者の多く(25~86%)、及びその他の非悪性疾患でもPSAの上昇が検出されるため、このマーカの診断特異性は著しく低いといえる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、スクリーニングプログラムにもかかわらず、PSA以外に予測できるバイオマーカがないため、多くの患者が診断を遅らせているのが現状である。早期発見を促進するためには、前立腺がんの早期発見を促進し、その病因を解明するためのバイオマーカが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願では、本発明者らは、図1に示すような前立腺がん発症のモデルを作成した。
【0010】
一般的に、肉類の摂取が、がんのリスクを高めることが知られている(Lippiら、2015)。本発明者らは、離乳期の母乳を牛乳製品で代用したり、乳製品や牛肉製品を摂取したりして、生後数ヶ月以内にBMMF(牛肉及び牛乳因子)剤を摂取すると、一般的に新生児がBMMF抗原に早期に感染することを発見した。母体の抗体(移行抗体)の減少と、しばしば観察される生後ごく初期の新生児の免疫寛容の誘導に関連した免疫系の弱さに基づき、これらの剤は免疫応答を直接逃れるか、又はこれらの剤に対する免疫寛容の状況が誘導されるかのいずれかであろう。その後数年から数十年のうちに、宿主の免疫系に依存して、前立腺組織の間質内に蓄積するBMMF抗原が増える。この蓄積はまた、BMMFに対する受容体に相当する特定の分子の取り込みによって誘発され得る。これらの分子は牛の産物の消費によっても取り込まれ、宿主細胞表面の受容体に代謝される。感染の限局的拡散と共に、BMMFの持続的な取り込みによって一定レベルの抗原量に到達すると、宿主免疫応答は慢性及び局所炎症の状態を誘導し、活性酸素種(ROS)及びシクロオキシゲナーゼ-2(Cox-2)の安定した増加を生じ、これはROSによって誘導された周囲の細胞におけるランダムな突然変異の同時固定を伴う脱調節細胞増殖の確率を劇的に増加させる。特に、本質的に高い複製活性を有する細胞は、腫瘍形成及び前立腺がんの発症の基本的な要件として、突然変異の確率的発現を可能にするランダムなDNA突然変異を濃縮する標的を表す可能性がある。したがって、BMMFは、組織間質内の慢性炎症の誘発の特定の局所的なトリガーを表し、ROSの増加を引き起こし、周囲の複製細胞の増殖と突然変異を誘発し、最終的には癌の前駆体としての過形成の形成をもたらす。
【0011】
詳しくは、腫瘍の病期が判明している前立腺がん患者12名の組織サンプルを選択し、マウスモノクローナル抗Rep抗体を用いてIHC染色を行った。すべての組織は、BMMF1 Rep標的に対して陽性と判定された。例示的に、抗Rep抗体(例えば、mAb10-3、mAb3-6)による染色は、前立腺がん患者サンプル17AD97及び16RAV2内の間質性腫瘍組織領域におけるタンパク質標的の特異的検出を示す(図2及び3)。一般的に、抗Repの検出では、主に間質内の細胞の細胞質領域にある小さなサイズの凝集体が強く染色された。さらに、抗Repで染色されたシグナルは、CD68陽性のマクロファージと共局在していることが観察された。Rep特異的抗体が最も多く検出された領域は、CD68陽性細胞の検出レベルが最も高い領域と相関しており、Rep特異的抗原が炎症組織領域に局在していることを示唆している。アイソタイプコントロール抗体を用いた対照染色では、シグナルは検出されなかった。一方、前立腺管と尖端の壁を取り囲む上皮細胞では、有意な抗Rep染色パターンが観察され、細胞質内に凝集塊状の局在が認められた。これは、BMMFの複製/増殖を可能にする組織領域であると考えられる。
【0012】
これまでに、異なる試験材料(ウシ血清、乳、1つの多発性硬化症患者の剖検の脳組織)から、18種の、異なるが部分的に関連するDNA分子のスペクトルが単離された(Funk,Gunstら、2014、Gunst,zur Hausenら、2014、Lamberto,Gunstら、2014,Whitley,Gunstら、2014;WO2015/062726A2;WO2016/005054A2)。18分離物を、それらの分子特性に従って、4つの異なるグループBMMF1~BMMF4に分けた(zur Hausenら、2017)。これらのグループのうち3つは、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)及びサイクロバクター属(Psychrobacter)プラスミドと顕著な程度の類似性を明らかにした。第4のグループは、ジェミサーキュラーウイルス(Gemycirularviridae)の代表的な3つの分離物を含んだ。推定Rep遺伝子は、利用可能な配列とのインシリコ比較により得られたBMMFのDNA配列の一部として同定された。rep遺伝子において隣接するプライマーを使用する増幅はウシ血清からの完全及び部分環状DNAゲノムの単離を導いた(Funkら、2014)。これは、特定の環状一本鎖DNAゲノムの存在について、市販の乳製品からのサンプルに拡張された。14の異なる単離物(約1100~3000ヌクレオチド)の全長環状一本鎖DNA分子をクローニングし、配列決定した(Whitleyら、2014;Gunstら、2014;Funkら、2014;Lambertoら、2014)。ヒト脳及び血清(すべて多発性硬化症患者由来)からさらに4つの分離物を得た(Whitleyら、2014;Gunstら、2014;Lambertoら、2014)。
【0013】
これらの分離物の中で、伝達性海綿状脳症(TSE)関連分離物Sphinx1.76(1758bp;受入番号HQ444404)に密接に関連する2つのDNA分子が、MS患者の脳組織から分離された。(Manuelidis L.2011))これらの分離物はMSBI1.176(MSBI、多発性硬化症脳分離物)(1766bp)及びMSBI2.176(1766bp)であり、それぞれ「MSBI1ゲノム」及び「MSBI2ゲノム」と命名された。MSBI1.176は、Sphinx1.76の配列と98%の配列類似性を共有する。分離物の大きなオープンリーディングフレーム(ORF)は、それらの間で高い類似性を共有する推定DNA複製タンパク質をコードする。もう1つの一般的な特徴は、イテロンのようなタンデムリピートの存在である。この反復領域のアラインメントは、コアにおける単一ヌクレオチドの変異を示す。このイテロン様反復は、Repタンパク質の結合部位を構成し得る。分離物の配列はEMBL Databankに登録番号LK931491(MSBI1.176)及びLK931492(MSBI2.176)(Whitley C.ら、2014)で寄託されており、WO2016/005054A2に整列及び記載されている。
【0014】
牛乳からさらに分離物を入手した。これらの牛乳分離物(CMI)は、それぞれ「CMI1ゲノム」、「CMI2ゲノム」及び「CMI3ゲノム」と命名されたCMI1.252、CMI2.214及びCMI3.168であった。分離物の配列は登録番号LK931487(CMI1.252)、LK931488(CMI2.214)及びLK931489(CMI3.168)でEMBL Databankに寄託されており、WO2016/005054A2に整列及び記載されている。
【0015】
本発明者らは、CMIゲノムとMSBIゲノムの両方で、転写されたRNAが大量に生産され、コードされたRepタンパク質ががん組織周辺の末梢組織に多く発現していることを発見した。本発明者らは、コードされたRepタンパク質(MSBI1 Rep、MSBI2 Rep、CMI1 Rep、CMI2 Rep、CMI3 Rep)が前立腺がんのバイオマーカとなることを見出した。DNA複製関連タンパク質(RepB)として、Repタンパク質はDNA結合活性を有し、エピソーム又はウイルスDNA分子の複製の開始に必須であり得る。Repタンパク質は自己オリゴマー化及び凝集の顕著な可能性を示し、これは、インビボ及びインビトロにおける原核生物系内で記載されている(Giraldoら、2011,Torreiraら、2015)。
【0016】
本発明者らは、Repタンパク質に対するモノクローナル抗体を作製した。特定の実施形態において、抗Rep抗体は、図4に例示されるRepタンパク質のエピトープに結合する。特に好ましい抗体は、配列番号1のアミノ酸1~136、137~229及び230~324からなる群より選択されるアミノ酸配列内のエピトープに結合する。例えば、抗体は、配列番号2又は配列番号3に含まれるエピトープに結合する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、前立腺がんの発生について提案されたモデルを示す。
図2図2は、前立腺がん患者組織17AD97の連続した組織切片におけるBMMF1 RepのIHC検出(スケールバー=100μm)を示す。
図3図3は、前立腺がん患者組織16RAV2の連続した組織切片におけるBMMF1 RepのIHC検出(スケールバー=100μm)を示す。
図4図4は、産生された抗体の特徴とRep内のエピトープの局在を示す。
図5A図5Aは、BMMF1 Rep染色に基づく免疫反応性スコアを示す棒グラフ(X軸:免疫反応性スコア;Y軸:患者数)を示す。
図5B図5Bは、BMMF1 Rep染色に基づく免疫反応性スコアを示す棒グラフ(X軸:免疫反応性スコア;Y軸:患者数)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、Repタンパク質が前立腺がん発症のリスクを高めるバイオマーカを示す可能性があり、前立腺がん患者の全生存予後を判定するためのマーカとして有用であるという教示を提供するものである。
【0019】
「前立腺がん」とは、前立腺における制御不能な細胞増殖の結果として発生した悪性腫瘍を意味する。これらの悪性腫瘍は、既存の良性腺腫及び過形成の結果として発症することがあり、遺伝子の変化が正常な成長から癌性の成長への移行を促進する。用語、「前立腺がん」とは、当該疾患の前段階、初期段階、後期段階、及びそれらに由来する転移を意味する。
【0020】
異なる実施形態では、本発明はまた、将来の疾患リスクを評価するための、健康な前立腺組織(癌の診断を受けていない、あるいは癌の特異的なヒントを持っていない人の組織)の系統的試験を包含し得る。これは、本発明が前立腺がんを発症する素因を決定するのにも適していることを意味している。
【0021】
本明細書で使用される「Repタンパク質」は、DNA複製関連タンパク質(RepB)を指す。Repタンパク質はDNA結合活性を有し、エピソーム/ウイルスDNA分子の複製の開始に必須であり得る。一般に、Repタンパク質は、小さなSphinxゲノムの群からのRepタンパク質を指す(Whitleyら、2014)。特に、Repタンパク質はMSBI1ゲノムコードRepタンパク質(MSBI1 Rep)、MSBI2ゲノムコードRepタンパク質(MSBI2 Rep)、CMI1ゲノムコードRepタンパク質(CMI1 Rep)、CMI2ゲノムコードRepタンパク質(CMI2 Rep)又はCMI3ゲノムコードRepタンパク質(CMI3 Rep)である。好ましくは、MSBI1 Repタンパク質は、受入番号LK931491の下でEMBLデータバンクに寄託されたMSBI1.176によってコードされ、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有し、又はRepタンパク質は、受入番号LK931492の下でEMBLデータバンクに寄託されたMSBI2.176によってコードされるMSBI2であり、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する(Whitley,Gunstら、2014)。別の好ましい実施形態において、CMI1 Repタンパク質は、受入番号LK931487の下でEMBLデータバンクに寄託されたCMI1.252によってコードされ、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する。別の好ましい実施形態において、CMI2 Repタンパク質は、受入番号LK931488の下でEMBLデータバンクに寄託されたCMI2.214によってコードされ、配列番号11に示されるアミノ酸配列を有する。別の好ましい実施形態において、CMI3 Repタンパク質は、受入番号LK931489の下でEMBLデータバンクに寄託されたCMI3.168によってコードされ、配列番号12に示されるアミノ酸配列を有する。特に好ましい実施形態において、Repタンパク質は、配列番号1の1~229のアミノ酸から本質的になるBMMF1ゲノムの間で保存されたN末端領域、及び配列番号1のアミノ酸230~324から本質的になるMSBI1.176に特異的なC末端可変領域を含む。N末端保存領域は、配列番号1の1~136のアミノ酸から本質的になる推定上の第1のDNA結合ドメインと、配列番号1の137~229のアミノ酸から本質的になる第2の推定上のDNA結合ドメインとを含む。C末端ドメインは、任意の公知のタンパク質とほとんど配列相同性を示さず、そしてアミノ酸230~324からなる。
【0022】
「Repタンパク質」はまた、配列番号1又は配列番号8のタンパク質のフラグメント及び改変体を包含し、これらは配列番号1又は配列番号8のアミノ酸配列を有するRepタンパク質に特異的な抗Rep抗体に結合し得る。好ましくはこのようなフラグメントは配列番号1又は配列番号8のアミノ酸配列を有するタンパク質の免疫原性フラグメントであり、これらは配列番号1又は配列番号8のRepタンパク質に対する抗Repタンパク質抗体のための少なくとも1つのエピトープを含み、そして好ましくは少なくとも7、8、9、10、15、20、25又は50の連続するアミノ酸を含む。特定の実施形態では、フラグメントがRepタンパク質のドメイン、例えば、N末端保存領域、C末端可変領域、第1又は第2のDNA結合ドメインを含むか、又は本質的にそれらからなる。配列番号1又は配列番号8を有するタンパク質の変異体は配列番号1と比較して1つ以上のアミノ酸欠失、置換又は付加を含み、配列番号1又は配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の相同性を有し、変異体は、配列番号1又は配列番号8のアミノ酸配列を有するRepタンパク質に特異的な抗Rep抗体に結合することができる。変異体の定義内に含まれるのは、例えば、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、非天然アミノ酸、ペプチド核酸(PNA)などを含む)、置換された結合を有するポリペプチド、ならびに天然に存在するもの及び天然に存在しないもの両方の、当技術分野で公知の他の改変を含有するポリペプチドである。Repタンパク質という用語は、異種アミノ酸配列、リーダー配列、又はタグ配列などを有する融合タンパク質を含む。本発明の特定の実施形態において、タンパク質タグは上記のRepタンパク質(例えば、MSBI1、MSBI2、CMI1、CMI2又はCMI3からなる群より選択されるRepタンパク質)上に遺伝的に移植される。特に、少なくとも1つのタンパク質タグは、配列番号1~3、8~12、14のいずれか1つに示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに結合される。このようなタンパク質タグは、化学物質によって、又は酵素的手段によって除去可能であり得る。タンパク質タグの例は、精製のためのアフィニティー又はクロマトグラフィータグである。例えば、RepタンパクはHis-Tag(配列番号4)、T7-Tag(配列番号5)、FLAG-Tag(配列番号6)及びStrep-II-Tag(配列番号7)からなるグループから選択されるように、Tag配列に融合することができる。His-Tag (配列番号4)、T7-Tag(配列番号5)、FLAG-Tag(配列番号6)、又はStrepII-Tag(配列番号7)。さらに、緑色蛍光タンパク質(GFP)又はその変異体などの蛍光タグを、本発明によるRepタンパク質に付着させることができる。
【0023】
特に好ましい実施形態において、MSBI1ゲノムコード化Repタンパク質(MSBI1 Rep)はヒト細胞株(例えば、HEK-293、HEK293T、HEK293T、HEK293FT、HaCaT、HeLa、SiHa、CaSki、HDMEC、L1236、L428、BJAB、MCF7、Colo678、任意の一次細胞株)ならびにウシ細胞株(例えば、MAC-T)又はマウス細胞株(例えば、GT1-7)における産生のためにコドン最適化される。これは、PCT/EP2017/075774に詳細に記載されている。
【0024】
本発明のRepタンパク質(上記で定義したRep断片及びRep変異体を含む)は、古典的化学合成によって調製することができる。合成は、均一溶液中又は固相中で行うことができる。組換えDNA技術の手段により、ポリペプチドを調製することもできる。
【0025】
本明細書で使用される「対象」は、マウス、ウシ、例えばウシ、サル及びヒトを含む哺乳動物個体又は患者を指す。好ましくは、対象はヒト患者である。
【0026】
本明細書で使用される「抗Rep抗体」は、Repタンパク質に検出可能なレベルで結合する抗体を指し、非Repタンパク質よりも本発明のRepタンパク質により強く親和性である。好ましくは、Repタンパク質に対する抗原親和性がバックグラウンド結合よりも少なくとも2倍大きい。特に、抗Rep抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有するMSBI1 Rep又はMSBI2 Repに特異的である。特定の実施形態では、抗体がMSBI1 Rep、MSBI2 Rep、CMI1 Rep、CMI2 Rep及び/又はCMI3 Repに対して交差特異的である。特定の実施形態では、抗Rep抗体がMSBI1 Rep、MSBI2 Rep、CMI1 Rep、CMI2 Rep及び/又はCMI3 Repの少なくとも2つ、好ましくは全てに対して交差特異的である。
【0027】
本発明者らはまた、抗Repタンパク質抗体を含むことが疑われる検体とRepタンパク質を、Repタンパク質が検体中に存在する任意のこのような抗体に結合することを可能にする条件下で接触させることによって、前立腺がん患者の抗体レベルを試験した。このような条件は、典型的には過剰のRepタンパク質を使用する生理学的温度、pH及びイオン強度である。検体とのRepタンパク質のインキュベーションに続いて、抗原を含む免疫複合体を検出する。特定の実施形態において、Repタンパク質はシグナル生成化合物(例えば、検出可能な標識)に結合されるか、又はシグナル生成化合物に結合されるさらなる結合剤(例えば、二次抗ヒト抗体)が、免疫複合体を検出するために使用される。
【0028】
抗Rep抗体はタンパク質抗原としてのRepタンパク質に基づくアッセイにおいて検出及び定量され得、これは、試料において疑われる哺乳動物(例えば、ヒト)抗体の標的として役立つ。好ましくは、Repタンパク質は精製され、そして検体は例えば、血清又は血漿であり得る。この方法は、マトリックス上へのRepタンパク質の固定化、続いて、固定化されたRepタンパク質の検体とのインキュベーションを含む。最後に、Repタンパク質と検体の抗体との間に形成された免疫複合体のRep結合抗体を、シグナル生成化合物、例えば、二次HRP-(西洋ワサビ-ペルオキシダーゼ)結合検出抗体に結合した検出結合剤によって定量し、HRP基質に基づく定量を可能にする。このシグナル生成化合物又は標識は、それ自体が検出可能であるか、又は追加の化合物と反応させて検出可能な生成物を生成することができる。
【0029】
イムノアッセイの設計は、非常に多くのバリエーションがあり、そして多くの形式が当該分野で公知である。プロトコールは例えば、固体支持体又は免疫沈降を使用し得る。ほとんどのアッセイはシグナル生成化合物、例えば、標識抗体又は標識Repタンパク質に結合された結合剤の使用を含む;標識は、例えば、酵素、蛍光、化学発光、放射性、又は色素分子であり得る。免疫複合体からのシグナルを増幅するアッセイも知られており、その例は、ビオチン及びアビジン又はストレプトアビジンを利用するアッセイ、ならびにELISAアッセイなどの酵素標識及び酵素媒介免疫アッセイである。
【0030】
イムノアッセイは、不均一又は均一フォーマットであり得、そして標準又は競合型であり得る。標準フォーマット及び競合フォーマットの両方が、当技術分野で知られている。
【0031】
免疫沈降又は凝集アッセイフォーマットにおいて、Repタンパク質と抗Rep抗体との間の反応は、溶液又は懸濁液から沈殿し、沈殿物の可視層又はフィルムを形成するネットワークを形成する。抗Rep抗体が検体中に存在しない場合、目に見える沈殿物は形成されない。
【0032】
さらなる実施形態において、本発明者らは、サンプル中の増加した量のRepタンパク質が前立腺がんの診断又は素因と相関する方法を使用した。このような実施形態において、サンプル中のRepタンパク質は、抗Rep抗体によって検出される。
【0033】
本明細書中で使用される「サンプル」は、癌性前立腺組織、癌性組織を取り囲む周囲組織、及び(良性)過形成を包含する生物学的サンプルをいう。サンプルは、組織培養物又は生検検体などの組織サンプルを包含する。
【0034】
このような方法は、抗Rep抗体によって被験体由来のサンプル中のRepタンパク質を検出する工程を包含する。このような方法において、Repタンパク質は、免疫組織化学的方法又は免疫蛍光顕微鏡法によって組織サンプル中で検出される。
【0035】
特定の実施形態において、抗Rep抗体は、サンプル中のRepタンパク質の検出又は捕捉のために使用される。
【0036】
用語「抗体」は、好ましくは異なるエピトープ特異性を有するプールされたポリクローナル抗体、ならびに個別のモノクローナル抗体調製物から本質的になる抗体に関連する。本明細書で使用される場合、用語「抗体」(Ab)又は「モノクローナル抗体」(Mab)は完全な免疫グロブリン分子、ならびにRepタンパク質に特異的に結合することができる抗体断片(例えば、Fab及びF(ab‘)断片など)を含むことを意味する。Fab及びF(ab‘)フラグメントは、インタクトな抗体のFcフラグメントを欠き、循環からより迅速に取り除かれ、インタクトな抗体よりも非特異的な組織結合が少ないかもしれない。従って、これらのフラグメント、ならびにFAB又は他の免疫グロブリン発現ライブラリーの産物が好ましい。さらに、本発明の目的に有用な抗体には、キメラ、一本鎖、多機能(例えば、二重特異性)及びヒト化抗体又はヒト抗体が含まれる。
【0037】
特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合フラグメントはシグナル生成化合物に結合され、例えば、検出可能な標識を有する。抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤又は酵素で直接的又は間接的に検出可能に標識することができる。当業者は、通常の実験を用いて、抗体に結合するための他の適切な標識を知っているか、又はそれを確認することができる。
【0038】
抗Rep抗体は好ましくは当業者に周知の方法により、配列番号1又は配列番号8のアミノ酸配列又はその断片を有するRepタンパクに対し、産生(生成)される。
【0039】
特定の実施形態において、抗Rep抗体は、小さなSphinxゲノム(抗Small-Sphinx様Rep抗体又は抗SSLRep抗体)の群からのいくつかの又は全ての種類のRepタンパク質に結合することができる本発明の方法において使用される。このような抗SSLRep抗体は、配列番号1のアミノ酸1~229のRepタンパク質の保存されたN末端領域内のエピトープに結合する。特定の実施形態では、配列番号2(配列番号1のアミノ酸32~49)又は配列番号3(配列番号1のアミノ酸197~216)内のエピトープに結合する抗SSLRep型の抗Rep抗体が使用される。配列番号2及び配列番号3のペプチド断片は、小さなSphinxゲノム群由来のRepタンパク質の間で高度に保存されており、それらの親水性のために露出しているようである。抗SSLRep型の抗Rep抗体は、例えばマウス又はモルモットの免疫化によって、配列番号2又は3に示されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドによって;又は配列番号1のアミノ酸1~229の保存されたN末端Repタンパク質領域に由来する、好ましくは少なくとも8~15アミノ酸を含む他の免疫原性フラグメントによって産生され得る。
【0040】
さらなる実施形態において、MSBI1 Repタンパク質に特異的な抗Rep抗体が使用される。このような抗体は、例えば、配列番号1のアミノ酸配列を有する全長Repタンパク質でマウス又はモルモットのような哺乳動物を免疫することによって産生され得る。
【0041】
好ましくは、本発明の方法がピコグラムからフェムトグラムまでの範囲までのRepタンパク質を検出することができる抗Rep抗体を使用する。
このような抗Rep抗体群の例を表1に示す:
【0042】
【表1】
【0043】
グループAの抗Rep抗体は配列番号3(配列番号1のaa198~217)に示されるアミノ酸配列内にエピトープを有し、そして小さなSphinxゲノム群のこの保存されたエピトープを含むMSBI1 Rep及びRepタンパク質(例えば、MSBI2、CMI1、CMI4)を検出し得る。免疫蛍光アッセイにおいて、このような抗Rep抗体は特異的なRep局在化パターンを検出し、ここで、主要な局在化は、細胞質及び核膜にわたって均一に分布され;そしてさらなる弱く均一に分布された局在化が核において見られる。このようなグループA抗体の例は、実施例においてグループA抗体として使用された抗体AB01 523-1-1(抗体1-5とも呼ばれる;DSM ACC3327)である。
【0044】
グループBの抗Rep抗体は配列番号2(配列番号1のaa33~50)に示されるアミノ酸配列内にエピトープを有し、小さなSphinxゲノムグループ(例えば、MSBI2、CMI1、CMI4)のこの保存されたエピトープを含むMSBI1 Rep及びRepタンパク質を検出することができる。免疫蛍光アッセイにおいて、このような抗Rep抗体は、Repタンパク質の特異的スペックル(細胞質凝集)(しばしば核膜の周辺)を検出する。このようなグループB抗体の例はAB02 304-4-(抗体5-2とも呼ばれる;DSM ACC3328)として指定される抗体であり、これは、実施例においてグループB抗体として使用された。
【0045】
グループCの抗Rep抗体は、MSBI1(配列番号1)の構造エピトープを特異的に検出する。免疫蛍光アッセイにおいて、このような抗Rep抗体は、特異的なRep局在化パターンを検出し、ここで、主要な局在化は、細胞質及び核膜にわたって均一に分布され;そしてさらなる弱く均一に分布された局在化が核において見られる。このようなグループC抗体の例は、aa137~324の配列中にエピトープを有するグループC抗体として実施例において使用された抗体MSBI1381-6-2(抗体3-6とも呼ばれる;DSM ACC3329)である。グループC抗体の別の例は、MSBI1 Rep(aa230~324)のC末端ドメインにおけるエピトープを検出する抗体MBSI1 572-13-19(抗体10-3とも呼ばれる)である。グループC抗体の別の例は、MSBI1 Rep(aa1~136)のN末端ドメインにおけるエピトープを検出する抗体MBSI1 617-1-3(抗体11-5とも呼ばれる)である。
【0046】
グループDの抗Rep抗体はMSBI1の構造エピトープ(配列番号1)を特異的に検出し、ここで、「D1」として指定される抗体9-2(DSM ACC3331)は、MSBI1のC末端ドメイン中の配列番号9(aa281-287)に示されるエピトープを検出する。抗体MSBI1761-5-1(抗体13とも呼ばれる;DSM ACC3328)が「D2」として指定されるが、MSBI1の3D構造エピトープを検出し、これはインビボ条件下で排他的にアクセス可能であり、ウェスタンブロットではアクセスできない。免疫蛍光アッセイにおいて、このような抗Rep抗体は、Repタンパク質の特異的スペックル(細胞質凝集)(しばしば核膜の周辺)を検出する。本発明を、以下の実施例によってさらに説明するが、これらに限定されるものではない:
【実施例
【0047】
実施例1:前立腺組織におけるBMMFタンパク質ターゲットの検出
すべての組織サンプルは、組織バンクの規定及びハイデルベルク大学倫理委員会の承認に基づき、国立腫瘍疾患センター(NCT、ハイデルベルク、ドイツ、ハイデルベルク大学病院病理学研究所)の組織バンクから提供された。
【0048】
組織の染色
パラフィン包埋組織切片(約4μm厚)を,EDTAエピトープ回収(Sigma E1161)後、Zytomed Chem-Plus HRP Polymer-Kit(Zytomed、POLHRP-100)及びDAB Substrate Kit High Contrast(Zytomed、DAB500plus)を用いて,所定の抗体インキュベーション(表2参照)及びヘマトキシリン対比染色で染色した。スライドはデジタルスライドスキャナー(浜松)でスキャンし、NDP.view2Plusソフトウェア(浜松)を用いて解析した。
【0049】
【表2】
【0050】
抗Rep抗体(mAb10-3、mAb3-6など)を用いた染色では、前立腺がん患者サンプル17AD97及び16RAV2の間質腫瘍組織領域におけるタンパク質ターゲットの特異的な検出が示された(図2及び3)。一般的に、抗Repの検出では、主に間質内の細胞の細胞質領域にある小さなサイズの凝集体が強く染色された。さらに、抗Rep抗体で染色されたシグナルとCD68陽性のマクロファージとの共局在も観察された。Rep特異的抗体が最も多く検出された領域は、CD68陽性細胞が最も多く検出された領域と相関しており、Rep特異的抗原が炎症組織領域に局在していることを示唆している。すなわち、炎症性単球、循環マクロファージ、又は組織内常駐マクロファージが特に多く存在する領域である。アイソタイプコントロール抗体を用いた対照染色では、シグナルは検出されなかった。
【0051】
実施例2:組織染色及び組織分析
組織マイクロアレイTMA105は、国立腫瘍疾患センター(NCT)ハイデルベルクにおいて作製され、好意により提供された。このデータセットでは、120人の患者に対してそれぞれ4つの腫瘍組織が、14人の患者に対してそれぞれ2つの腫瘍周囲組織のスポットが利用可能である。
【0052】
TMA105をBOND MAX機(ライカバイオシステムズ)でEDTAエピトープ回収用バッファー(Abcam、#ab93680)を用いて全自動で染色した。一次抗体抗BMMF1 Rep(#3-6、モノクローナル、DKFZ Heidelberg)とアイソタイプコントロール抗体(Biolegend IgG1、MG1-45)を室温で30分間インキュベートした(4μg/ml)。二次ウサギ抗マウス抗体(Abcam、#125904)を室温で20分間インキュベートした。検出は、DABクロモゲンとヘマトキシリン対比染色を含むBond Polymer Refine Detection Kit(Leica、#DS9800)を用いて行った。スライドは浜松のNanozoomerスライドスキャナー(浜松)でスキャンし、NDP.view2 Plusソフトウェア(浜松)で解析した。
【0053】
組織分析
組織マイクロアレイ(TMA)上のBMMF1 Rep染色の解析では、抗体染色は、染色された細胞の割合(陽性率)と、組織スポットの間質/間隙部分におけるシグナルの強度(I)の2つのパラメータに基づいて特徴付けられた。上皮部分や腫瘍細胞は、一般的にBMMFの陽性化の対象ではないため、解析には含めなかった。BMMF1 Rep染色の陽性度(POS)は、3段階で評価した。0は全く陽性の組織部分がないことを示し、1は1~10%の陽性、2は11~30%の陽性、3は30%以上の陽性細胞が組織スポットの複数の領域に分布していることを示した。強度(I)は以下のように評価した。0=検出されない、1=中程度、2=強い染色。統計解析のため、免疫反応性スコア(IRS)を以下のように算出した。IRS=IxPOS;最小値=0、最大値=6(表3)。
【0054】
【表3】
【0055】
IRS=I×POS
IRS=免疫反応性スコア
これらのスコアリング基準を用いて、BMMF1 Rep染色に基づく腫瘍組織(患者120名)のサンプルは
12%の陰性(IRS 0)
88%が陽性(IRS1以上)[うち75%が有意に陽性=IRS2以上]
【0056】
BMMF1 Rep染色に基づく腫瘍周囲組織(患者14名)のサンプルは
29%が陰性(IRS 0)
71%が陽性(IRS1以上)[うち21%が有意に陽性=IRS2以上]
これらの結果は、図5A及び図5Bに棒グラフで示されている。
【0057】
【表4-1】
【0058】
【表4-2】
【0059】
【表4-3】
【0060】
参考文献
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
【配列表】
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