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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】回転装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/32 20060101AFI20230802BHJP
   F16F 15/22 20060101ALI20230802BHJP
   F16B 11/00 20060101ALI20230802BHJP
   F16B 4/00 20060101ALI20230802BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20230802BHJP
   B23B 19/02 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
F16F15/32 E
F16F15/22 A
F16B11/00 A
F16B4/00 D
B23Q11/00 B
B23B19/02 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021572713
(86)(22)【出願日】2021-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2021001438
(87)【国際公開番号】W WO2021149627
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2020009575
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】室田 真弘
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-009244(JP,A)
【文献】特開2004-066443(JP,A)
【文献】特開2009-014049(JP,A)
【文献】米国特許第05545010(US,A)
【文献】特開2001-138162(JP,A)
【文献】特開2001-129743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/32
F16B 23/00- 43/02
B23B 1/00- 25/06
B23Q 3/00- 3/154
B23Q 3/16- 3/18
B23Q 11/00- 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な軸(12)と連動して回転し、ねじ(22)を用いてバランスを調整可能な回転体(14)を有する回転装置(10)であって、
前記回転体のラジアル方向に沿って延び、前記回転体の表面に開口部(20a)を有する複数のねじ穴(20)と、
前記軸を覆うハウジング(16)に固定され、前記回転体のラジアル方向の外周面と隙間を隔てて前記開口部の一部の上側に突出する突起(36)と、
を備える、回転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転可能な軸と連動して回転し、ねじを用いてバランスを調整可能な回転体を有する回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特開平10-238594号公報には、回転体のバランス調整装置が開示されている。このバランス調整装置では、回転可能な軸と連動して回転する回転体(回転部材)に、回転体の中心から放射状に向けて複数のねじ穴が設けられ、各々のねじ穴の内部に、当該ねじ穴と螺合するバランス調整用のねじが配置されている。
【発明の概要】
【0003】
しかしながら、温度変化に起因するねじ穴の膨張などが生じてねじ穴と螺合するねじが緩むことで、回転体の回転時にねじ穴からねじが外部に飛び出すことが懸念される。
【0004】
そこで、本発明は、安全性を向上し得る回転装置を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の態様は、回転可能な軸と連動して回転し、ねじを用いてバランスを調整可能な回転体を有する回転装置であって、前記回転体のラジアル方向に沿って延び、前記回転体の表面に開口する開口部を有する複数のねじ穴と、前記ねじを回す工具の前記ねじ穴への挿入を妨げずに、前記ねじ穴の内部に配置された前記ねじが前記開口部から外部に出ることを抑止するストッパ部と、を備える。
【0006】
本発明によれば、温度変化に起因するねじ穴の膨張などが生じてねじ穴と螺合するねじが緩んだとしても、回転体の回転時にねじ穴からねじが外部に飛び出すことが防止され、この結果、安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の回転装置を示す模式図である。
図2】ねじに工具が嵌合された様子を示す模式図である。
図3】変形例1のストッパ部が設けられた回転体を示す模式図である。
図4】変形例1のストッパ部を図2と同じ視点で示す模式図である。
図5】変形例2のストッパ部を図2と同じ視点で示す模式図である。
図6】変形例3のストッパ部を図2と同じ視点で示す模式図である。
図7】変形例4のストッパ部を図2と同じ視点で示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について、好適な実施形態を掲げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
図1は、本実施形態の回転装置10を示す模式図である。回転装置10は、回転可能な軸12と、軸12と連動して回転する回転体14と、軸12の少なくとも一部を覆うハウジング16とを有する。なお、図1では、便宜上、回転体14は、軸12に対して直交する方向の断面を示している。
【0010】
軸12は、ハウジング16に設けられる軸受によって回転可能に支持され、モータから伝達される動力により回転する。回転体14は、軸12と連動して回転するものであれば、軸12に固定されていてもよく、軸受の外輪に固定されていてもよい。また、回転体14は、工作機械における加工対象物または加工用工具が取り付けられるベース部材であってもよい。回転体14には、回転体14のバランスを調整するための調整機構としてねじ穴20およびねじ22が設けられる。
【0011】
ねじ穴20は複数設けられる。複数のねじ穴20は、回転体14の中心軸AXを基準として放射状に配置される。軸12の一端側から回転体14を見た場合に、回転体14の中心軸AXを基準として複数のねじ穴20が対称に配置されることが好ましい。複数のねじ穴20の各々は、回転体14のラジアル方向に沿って延びており、回転体14の表面(側面)に開口する開口部20aを有する。なお、図1の例示では、各々のねじ穴20の外径は同じであるが、各々のねじ穴20の外径が異なっていてもよく、一対のねじ穴20を単位としてねじ穴20の外径が異なっていてもよい。
【0012】
ねじ22は、ねじ穴20と螺合するバランスウェイトであり、1つのねじ穴20の内部に配置される。図1の例示では、複数のねじ穴20の各々にねじ22が配置されている。なお、ねじ22が配置されないねじ穴20があってもよい。また、2以上のねじ穴20の各々の内部に配置されたねじ22の重さは同じであっても異なっていてもよい。ねじ22の端部には、工具溝22aが形成される。
【0013】
工具溝22aは、図2に示すように、ねじ22を回す工具24が嵌合する溝である。工具24は、ねじ穴20の開口部20aからねじ穴20に挿入可能な軸部を有し、軸部の先端は工具溝22aに嵌合する。工具24には、取っ手などが設けられていてもよい。工具24として、例えば、棒レンチあるいはドライバなどが挙げられる。
【0014】
工具24を用いて、ねじ穴20の内部に配置されたねじ22が回されると、回転体14の中心軸AXに対するねじ22の相対位置が回転体14のラジアル方向に変化する。このため、回転体14の回転時に生じる遠心力のバランスが変化する。したがって、複数のねじ穴20のうち、選択されたねじ穴20の内部でのねじ22の位置が調整されることで、回転体14のバランスを調整することができる。
【0015】
本実施形態の回転装置10には、工具24のねじ穴20への挿入を妨げずに、ねじ穴20の内部に配置されたねじ22が開口部20aから外部に出ることを抑止するストッパ部30が設けられる。
【0016】
ストッパ部30は、本実施形態では、ねじ穴20の内径よりも小さく工具24が挿入可能な貫通孔を有するブッシュ(管状部材)である。ブッシュは、ねじ22が内部に配置されたねじ穴20の開口部20aから圧入されることで、当該ねじ穴20における開口部20a側の端部に固定される。これにより、温度変化に起因するねじ穴20の膨張などが生じてねじ穴20と螺合するねじ22が緩んだとしても、回転体14の回転時にねじ穴20からねじ22が外部に飛び出すことを防止することができる。また、ブッシュによってねじ22の工具溝22aに工具24を案内することができる。
【0017】
〔変形例〕
上記のストッパ部30は、ブッシュに代えて、以下のように変形することができる。
【0018】
(変形例1)
図3は変形例1のストッパ部30が設けられた回転体14を示す模式図であり、図4は変形例1のストッパ部30を図2と同じ視点で示す模式図である。図3および図4では、上記の実施形態において説明した構成と同等の構成に対して同一の符号が付されている。なお、本変形例では、上記の実施形態と重複する説明は省略する。
【0019】
本変形例のストッパ部30は、回転体14のラジアル方向の外周面を囲繞する囲繞体32と、囲繞体32に形成された複数の貫通孔32Hとを有する構造である。
【0020】
囲繞体32は、回転体14のラジアル方向の外周面に当接する状態で、当該回転体14に固定される。複数の貫通孔32Hは、複数のねじ穴20と一対一で対応している。各々の貫通孔32Hは、ねじ穴20の内径よりも小さく、工具24が挿入可能であり、回転体14のラジアル方向に沿ってねじ穴20に連通している。
【0021】
本変形例のストッパ部30であっても、上記の実施形態と同様に、ねじ穴20と螺合するねじ22が緩んだとしても、回転体14の回転時にねじ穴20からねじ22が外部に飛び出すことを防止することができる。また、囲繞体32によってねじ22の工具溝22aに工具24を案内することができる。
【0022】
(変形例2)
図5は、変形例2のストッパ部30を図2と同じ視点で示す模式図である。図5では、上記の実施形態において説明した構成と同等の構成に対して同一の符号が付されている。なお、本変形例では、上記の実施形態と重複する説明は省略する。
【0023】
本変形例のストッパ部30は、ハウジング16に固定される。ハウジング16は、軸12と、当該軸12の一端側に設けられる回転体14の一部とを覆う。ハウジング16は、回転体14のラジアル方向の外周面と隙間を隔てて、当該外周面の軸12側を囲うように覆っている。なお、ハウジング16は、軸12を覆い、回転体14を覆っていないものであってもよい。
【0024】
ストッパ部30は、回転体14のラジアル方向の外周面と隙間を隔てて配置されており、支持体34および突起36を有する。支持体34は、環状に形成されており、ハウジング16から軸方向に沿って延びている。突起36は、支持体34のハウジング16側とは逆側に延び、開口部20aの一部の上側に突出している。
【0025】
突起36は、1つであっても、複数であってもよい。突起36が1つである場合、当該突起36は環状に形成される。突起36が複数である場合、当該突起36は例えば板状に形成される。複数の突起36は、複数のねじ穴20と一対一で対応してもよい。
【0026】
本変形例のストッパ部30であっても、上記の実施形態と同様に、ねじ穴20と螺合するねじ22が緩んだとしても、回転体14の回転時にねじ穴20からねじ22が外部に飛び出すことを防止することができる。
【0027】
(変形例3)
図6は、変形例3のストッパ部30を図2と同じ視点で示す模式図である。図6では、上記の実施形態において説明した構成と同等の構成に対して同一の符号が付されている。なお、本変形例では、上記の実施形態と重複する説明は省略する。
【0028】
本変形例のストッパ部30は、ねじ穴20における開口部20a側の端部の少なくとも一部のねじ溝を塞ぐ部材である。このような部材として、接着剤、あるいは、粘着テープなどが挙げられる。なお、接着剤は、未硬化状態であってもよいが、硬化状態であることが好ましい。
【0029】
本変形例のストッパ部30であっても、上記の実施形態と同様に、ねじ穴20と螺合するねじ22が緩んだとしても、回転体14の回転時にねじ穴20からねじ22が外部に飛び出すことを防止することができる。また、本変形例の場合には、回転体14に対してストッパ部30が設け易くなる。
【0030】
(変形例4)
図7は、変形例4のストッパ部30を図2と同じ視点で示す模式図である。図7では、上記の実施形態において説明した構成と同等の構成に対して同一の符号が付されている。なお、本変形例では、上記の実施形態と重複する説明は省略する。
【0031】
本変形例のストッパ部30は、ねじ穴20における開口部20a側の端部の少なくとも一部のねじ山が潰されることで形成される。このようにしても、上記の実施形態と同様に、ねじ穴20と螺合するねじ22が緩んだとしても、回転体14の回転時にねじ穴20からねじ22が外部に飛び出すことを防止することができる。また、本変形例の場合には、回転体14に対してストッパ部30が設け易くなる。
【0032】
〔発明〕
上記の実施形態および変形例から把握し得る発明について、以下に記載する。
【0033】
本発明は、回転可能な軸(12)と連動して回転し、ねじ(22)を用いてバランスを調整可能な回転体(14)を有する回転装置(10)である。回転装置(10)は、回転体(14)のラジアル方向に沿って延び、回転体(14)の表面に開口部(20a)を有する複数のねじ穴(20)と、ねじ(22)を回す工具(24)のねじ穴(20)への挿入を妨げずに、ねじ穴(20)の内部に配置されたねじ(22)が開口部(20a)から外部に出ることを抑止するストッパ部(30)と、を備える。
【0034】
これにより、ねじ穴(20)と螺合するねじ(22)が緩んだとしても、回転体(14)の回転時にねじ穴(20)からねじ(22)が外部に飛び出すことが防止される。したがって、安全性を向上することができる。
【0035】
ストッパ部(30)は、ねじ穴(20)における開口部(20a)側の端部に固定され、ねじ穴(20)よりも小さく工具(24)が挿入可能な貫通孔を有するブッシュであってもよい。これにより、ねじ穴(20)からのねじ(22)の飛び出しを防止することができる。また、ブッシュによってねじ(22)の工具溝(22a)に工具(24)を案内することができる。なお、このブッシュは、回転時の遠心力で外れることの無いように、ねじ穴(20)における開口部(20a)側の端部に圧入、または、焼き嵌め、または、接着して固定されていてもよい。
【0036】
ストッパ部(30)は、回転体(14)のラジアル方向の外周面を囲繞する囲繞体(32)と、囲繞体(32)に形成され、回転体(14)のラジアル方向に沿ってねじ穴(20)に連通し、ねじ穴(20)よりも小さく工具(24)が挿入可能な貫通孔(32H)とを有してもよい。これにより、ねじ穴(20)からのねじ(22)の飛び出しを防止することができる。また、囲繞体(32)によってねじ(22)の工具溝(22a)に工具(24)を案内することができる。
【0037】
ストッパ部(30)は、軸(12)を覆うハウジング(16)に固定され、回転体(14)のラジアル方向の外周面と隙間を隔てて開口部(20a)の一部の上側に突出する突起(36)を有してもよい。これにより、ねじ穴(20)からのねじ(22)の飛び出しを防止することができる。
【0038】
ストッパ部(30)は、ねじ穴(20)における開口部(20a)側の端部の少なくとも一部のねじ溝を塞いでもよい。これにより、ねじ穴(20)からのねじ(22)の飛び出しを防止することができる。また、回転体(14)の表面側に設ける場合に比べて小型化することができる。
【0039】
ストッパ部(30)は、接着剤であってもよい。これにより、ねじ穴(20)からのねじ(22)の飛び出しを防止することができる。また、回転体(14)に対してストッパ部(30)が設け易くなる。
【0040】
ストッパ部(30)は、ねじ穴(20)における開口部(20a)側の端部の少なくとも一部のねじ山が潰されることで形成されてもよい。これにより、ねじ穴(20)からのねじ(22)の飛び出しを防止することができる。また、回転体(14)に対してストッパ部(30)が設け易くなる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7