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特許7324324射出成形システム及び成形品を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】射出成形システム及び成形品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/04 20060101AFI20230802BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20230802BHJP
   B29C 33/34 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
B29C45/04
B29C45/26
B29C33/34
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022018034
(22)【出願日】2022-02-08
(65)【公開番号】P2022122285
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】63/147,523
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/587,382
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520449345
【氏名又は名称】キヤノンバージニア, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Canon Virginia, Inc.
【住所又は居所原語表記】12000 Canon Blvd., Newport News, Virginia, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小平 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】柳原 裕一
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-039036(JP,A)
【文献】特開平09-076288(JP,A)
【文献】特開平03-142208(JP,A)
【文献】特開2009-039876(JP,A)
【文献】特開平05-096548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/04
B29C 45/26
B29C 33/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形システムであって、
金型で射出成形を行うように構成された射出成形機と、
前記金型を搬送するように構成された搬送装置と、を備え、
前記金型は、
第1の部材と、
前記第1の部材と組み合わせることで、第1の成形品に対応する第1のキャビティを形成するように構成される第2の部材と、
記第1の部材と組み合わせることで、第2の成形品に対応する第2のキャビティを形成するように構成される第3の部材と、を含
前記搬送装置は、前記第2の部材と前記第3の部材の一方が、対応するキャビティに樹脂を注入するための成形動作位置に位置するときに、前記第2の部材と前記第3の部材の他方が、対応するキャビティに注入された樹脂を冷却するための冷却位置に位置するように、前記金型を搬送するように構成され、
前記冷却位置に位置する部材は、前記射出成形機のフレームと前記搬送装置のフレームによって支持される、ことを特徴とする射出成形システム
【請求項2】
前記第1の部材は、射出成形機の固定プラテンに固定された固定部材である、請求項1に記載の射出成形システム
【請求項3】
前記第2の部材は、前記第1のキャビティから前記第1の成形品を取り出すことができるように移動する可動部材であり、
前記第3の部材は、前記第2のキャビティから前記第2の成形品を取り出すことができるように移動する可動部材である、
請求項1に記載の射出成形システム
【請求項4】
前記第2の部材と前記第3の部材とは、互いに独立して移動する、請求項3に記載の射出成形システム
【請求項5】
前記第1のキャビティと前記第2のキャビティとの間を断熱するように構成される断熱構造をさらに備える、請求項1に記載の射出成形システム
【請求項6】
前記断熱構造は、中空構造であり、前記断熱構造には断熱材が設けられている、請求項5に記載の射出成形システム
【請求項7】
前記断熱構造は、前記第1と第2のキャビティの間に空気層を形成するように構成される中空構造である、請求項5に記載の射出成形システム
【請求項8】
前記第1のキャビティに流入する成形材料を加熱するための第1のヒータと、
前記第2のキャビティに流入する成形材料を加熱するための第2のヒータと、
をさらに備える、請求項1に記載の射出成形システム
【請求項9】
前記搬送装置のフレームには、前記金型を搬送するためのアクチュエータが設けられており、
前記アクチュエータは、前記金型の前記第1の部材に接続されている、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の射出成形システム。
【請求項10】
第1の部材と第2の部材と第3の部材とを含む金型を使用して成形品を製造する方法であって、
記第1の部材と前記第2の部材により形成される第1のキャビティであって、第1の成形品を形成するための第1のキャビティに樹脂を射出する工程と、
前記第1の部材と前記第3の部材により形成される第2のキャビティであって、第2の成形品を形成するための第2のキャビティに樹脂を射出する工程と、
前記第2の部材と前記第3の部材の一方が、対応するキャビティに樹脂を注入するための成形動作位置に位置するときに、前記第2の部材と前記第3の部材の他方が、対応するキャビティに注入された樹脂を冷却するための冷却位置に位置するように、前記金型を搬送する工程と、
前記金型から成形品の取り出す工程と、を備え、
前記冷却位置に位置する部材は、射出成形機のフレームと搬送装置のフレームによって支持される、ことを特徴とする成形品を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月9日に出願された、米国仮出願63/147523号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、射出成形システム及び成形品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
射出成形機による成形品の製造は、型締め後の金型への樹脂の射出、樹脂の固化による体積減少を補うための高圧での金型への樹脂の押し込み、樹脂が固化するまでの金型内での成形品の保持、および金型からの成形品の取り出しが含まれる。射出成形工程を繰り返し行い、所望の数の成形品を得る。1つの金型で所定数の成形を行った後、射出成形機から金型を排出し、次の金型を段取りして射出成形機に挿入し、次の金型で所定数の射出成形を行う。
【0004】
上述の成形方法において、1台の射出成形機に対して、2つの金型を用いる方法が提案されている。例えば、米国特許第2018/0009146号/日本特許公開第2018-001738号/VN20160002505号では、射出成形機2の両側に搬送装置を配置するシステムが論じられている。図1は、米国特許第2018/0009146号/日本特許公開第2018-001738号/VN20160002505号の射出成形システムを示す。このシステムでは、樹脂を射出し、成形品を取り出す成形動作位置と、金型内に射出した樹脂を冷却する冷却位置との間で金型を移動させる。
【0005】
図1に示すようなシステムの生産性は、通常、金型の搬送に要する時間を可能な限り短縮することと結びついている。射出成形システム全体のコスト増加を最小限に抑えつつ、金型の搬送時間を短縮する方法が求められる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の例示的一態様は、金型搬送時間の短縮を可能にする金型構造を提供する。
【0007】
射出成形用の金型であって、第1の部材と、前記第1の部材と組み合わせることで、第1の成形品に対応する第1のキャビティを形成するように構成される第2の部材とを備え、前記金型に対する改良は、前記第1の部材と組み合わせることで、第2の成形品に対応する第2のキャビティを形成するように構成される第3の部材を含む金型。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する添付の図面は、本開示の様々な実施形態、目的、特徴、および利点を示す。
図1図1は、射出成形システムを示す。
図2図2は、射出成形機の側面図である。
図3図3は、固定プラテンの端面図である。
図4A図4Aは、成形処理を示すフローチャートを示す。
図4B図4Bは、図4Aの成形処理の改善を示す。
図5図5は、一例示的実施形態における射出成形システムを示す。
図6図6A図6Bは、1組の金型から成形品を取り出す状態を示す。
図7図7A図7Bは、別の組の金型から成形品を取り出す状態を示す。
図8図8A図8Bは、金型の内部構成を示す。 図面全体を通して、別段の記載がない限り、同一の参照番号および符号は、図示する実施形態の同様の特徴、要素、構成要素、または部分を示すために用いられる。図面を参照して本開示を詳細に説明するが、これは説明のための例示的な実施形態に関連して行われる。添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の範囲および趣旨を逸脱することなく、説明される例示的な実施形態に対して変更および修正を加えることができることを意図する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、いくつかの実施形態を説明しており、当業者に既知の詳細については、特許、特許出願、および他の参考文献に依拠する。したがって、本明細書において、特許、特許出願、または他の参考文献が引用される、または繰り返されるとき、それらは、記載されている提案だけでなくあらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれることを理解されたい。
【0010】
図面を参照して、本開示の一実施形態における射出成形システムについて説明する。各図中の矢印XおよびYは、互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは、地面に対して垂直(直立)方向を示す。
【0011】
図1図3は、米国特許第2018/0009146号/日本特許公開第2018-001738号/VN20160002505号の射出成形システム1を示しており、本明細書では情報/説明の目的のためだけに提供されている。
【0012】
射出成形システム1は、射出成形機2と、搬送装置3Aおよび3Bと、制御装置4とを含む。射出成形システム1は、1台の射出成形機2に対して、搬送装置3Aおよび3Bを用いて、複数の金型を入れ替えながら成形品を製造する。2つの金型100Aおよび100Bを用いる。
【0013】
金型100A/100Bは、固定金型101と、固定金型101に対して開閉される可動金型102との組である。成形品は、固定金型101と可動金型102との間に形成されたキャビティに溶融樹脂を射出することで成形される。固定金型101および可動金型102には、それぞれ取付板101aおよび102aが固定されている。取付板101aおよび102aは、金型100A/100Bを射出成形機2の成形動作位置11(型締位置)に固定するために用いられる。
【0014】
金型100A/100Bには、固定金型101と可動金型102との間を閉状態に維持する自己閉鎖部103が設けられている。自己閉鎖部103により、射出成形機2から金型100A/100Bを搬出した後も、金型100A/100Bが開くことを防止することが可能となる。自己閉鎖部103は、磁力を利用して金型100A/100Bを閉状態に維持する。自己閉鎖部103は、固定金型101および可動金型102の対向面に沿って複数の箇所に配置されている。自己閉鎖部103は、固定金型101側の要素と可動金型102側の要素との組み合わせである。通常、金型100Aおよび100Bの1つに対して2組以上の自己閉鎖部103が設けられる。
【0015】
搬送装置3Aは、金型100Aを射出成形機2の成形動作位置11に搬入および搬出する。搬送装置3Bは、金型100Bを成形動作位置11に搬入および搬出する。搬送装置3A、射出成形機2、および搬送装置3Bは、この順にX軸方向に並ぶように配置されている。言い換えれば、搬送装置3Aおよび搬送装置3Bは、射出成形機2をX軸方向において挟むように、射出成形機2に対して横方向に配置されている。搬送装置3Aおよび3Bは、互いに対向して配置され、搬送装置3Aは射出成形機2の左右の一側方に、搬送装置3Bは他側方にそれぞれ隣接して配置されている。成形動作位置11は、搬送装置3Aと搬送装置3Bとの間に位置している。搬送装置3Aおよび3Bは、それぞれフレーム30と、搬送ユニット31と、複数のローラ32と、複数のローラ33とを含む。
【0016】
フレーム30は、搬送装置3Aおよび3Bの骨格であり、搬送ユニット31と、複数のローラ32および33とを支持する。搬送ユニット31は、金型100A/100BをX軸方向に往復移動させ、成形動作位置11に対して金型100A/100Bを排出および挿入する装置である。
【0017】
搬送ユニット31は、モータを駆動源とした電動シリンダであり、シリンダに対して進退するロッドを含む。シリンダはフレーム30に固定され、ロッドの端部には固定金型101が固定されている。搬送ユニット31は、流体アクチュエータ、電動アクチュエータのいずれも使用可能であるが、電動アクチュエータにより、金型100A/100Bの搬送時に、その位置や速度の制御精度の向上を図ることができる。流体アクチュエータとしては、例えば、油圧シリンダ、エアシリンダを挙げることができる。電動アクチュエータとしては、電動シリンダに加えて、モータを駆動源としたラックアンドピニオン機構、モータを駆動源としたボールねじ機構等を挙げることができる。
【0018】
搬送ユニット31は、搬送装置3Aと3Bのそれぞれに独立して配置されている。しかし、金型100Aおよび100Bを支持する共通の支持部材を用い、この支持部材に対して単一の共通の搬送ユニット31を配置してもよい。搬送ユニット31を搬送装置3Aと3Bのそれぞれに独立して配置した場合は、金型100Aと金型100Bとで搬送時の移動ストロークが異なる場合に対応することが可能となる。例えば、金型の幅(X方向の幅)が異なっていたり、金型の厚み(Y方向の幅)が異なっていたりして、金型を同時に搬送できない場合である。
【0019】
複数のローラ32は、X軸方向に配列されたローラ列を構成しており、Y軸方向に離間して2列構成されている。複数のローラ32は、Z軸方向の回転軸を中心に回転し、金型100A/100Bの側面(取付板101aおよび102aの側面)に接触して、金型100A/100Bを横から支えて金型100A/100BのX軸方向の移動をガイドする。複数のローラ33は、X軸方向に配列されたローラ列を構成しており、Y軸方向に離間して2列構成されている。複数のローラ33は、Y軸方向の回転軸を中心に回転し、金型100A/100Bの底面(取付板101aおよび102aの底面)を支持して、金型100A/100Bを下から支えて金型100A/100BのX軸方向の移動を円滑にする。
【0020】
制御装置4は、射出成形機2を制御するためのコントローラ41と、搬送装置3Aを制御するためのコントローラ42Aと、搬送装置3Bを制御するためのコントローラ42Bとを含む。各コントローラ41、42A、42Bは、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶装置と、センサやアクチュエータに接続されるインタフェース(図示せず)とを含む。プロセッサは、記憶装置に記憶されたプログラムを実行する。コントローラ41が実行するプログラム(制御)の一例は後述する。コントローラ41は、コントローラ42Aおよび42Bと通信可能に接続され、コントローラ42Aおよび42Bに金型100A/100Bの搬送に関する指示を行う。コントローラ42Aおよび42Bは、金型100A/100Bの搬入や搬出が終了した場合に、動作完了の信号をコントローラ41に送信する。さらに、コントローラ42Aおよび42Bは、異常発生時に非常停止信号をコントローラ41に送信する。
【0021】
射出成形機2、搬送装置Aおよび搬送装置Bのそれぞれには、コントローラが配置されているが、1つのコントローラで3台全ての装置を制御してもよい。より確実に協調的に動作させるために、搬送装置Aと搬送装置Bとを単一のコントローラで制御してもよい。
【0022】
図2は、射出成形機2の側面図である。図3は、固定プラテン61の端面図であり、図2のI-I線の矢印方向から見た図である。
【0023】
図1および図2を参照して、射出成形機2は、射出装置5と、型締装置6と、成形品を取り出す取出機7とを含む。射出装置5および型締装置6は、フレーム10上にY軸方向に配置されている。
【0024】
射出装置5は、Y軸方向に延びるように配置された射出シリンダ51を含む。射出シリンダ51は、バンドヒータ等の加熱装置(図示せず)を含み、ホッパ53から導入された樹脂を溶融する。射出シリンダ51にはスクリュ51aが内蔵されており、スクリュ51aを回転させることで射出シリンダ51内に導入された樹脂が可塑化され、計量される。スクリュ51aの軸方向(Y軸方向)への移動により、射出ノズル52から溶融樹脂を射出することができる。
【0025】
図2に、ノズル52としての遮断ノズルの一例を示す。吐出口52aを開閉するピン56aが、図2の開閉機構56として配置されている。ピン56aは、リンク56bを介してアクチュエータ(シリンダ)56cに連結されており、アクチュエータ56cの動作により吐出口52aが開閉される。
【0026】
射出シリンダ51は、駆動部54に支持されている。駆動部54には、スクリュ51aを回転駆動させて樹脂の可塑化と計量を行うモータと、スクリュ51aを軸方向に進退させる駆動モータとが配置されている。駆動部54は、フレーム10上のレール12に沿ってY軸方向に進退可能である。また、駆動部54には、射出装置5をY軸方向に進退させるアクチュエータ(例えば電動シリンダ)55が配置されている。
【0027】
型締装置6は、金型100A/100Bの型締めおよび型開閉を行う。型締装置6には、Y軸方向に順に、固定プラテン61、可動プラテン62、可動プラテン63が配置されている。プラテン61~63には、複数のタイバー64が通過している。各タイバー64は、Y軸方向に延びる軸であり、その一端部が固定プラテン61に固定されている。各タイバー64は、可動プラテン62に形成された各貫通穴に挿入されている。各タイバー64の他端部は、調整機構67を介して可動プラテン63に固定されている。可動プラテン62および63は、フレーム10上のレール13に沿ってY軸方向に移動可能であり、固定プラテン61は、フレーム10に固定されている。
【0028】
可動プラテン62と可動プラテン63との間には、トグル機構65が配置されている。トグル機構65は、可動プラテン63に対して(言い換えれば、固定プラテン61に対して)、可動プラテン62をY軸方向に進退させる。トグル機構65は、リンク65a~65cを含む。リンク65aは、可動プラテン62に回転自在に連結されている。リンク65bは、可動プラテン63に回動自在に連結されている。リンク65aとリンク65bとは、互いに回動自在に連結されている。リンク65cとリンク65bとは、互いに回動自在に連結されている。リンク65cは、アーム66cに回動自在に連結されている。
【0029】
アーム66cは、ボールナット66bに固定されている。ボールナット66bは、Y軸方向に延びるボールねじ軸66aに係合し、ボールねじ軸66aの回転によりY軸方向に進退する。ボールねじ軸66aは、可動プラテン63によって回転自在となるように支持されており、モータ66は、可動プラテン63に支持されている。モータ66は、モータ66の回転量を検出しながら、ボールねじ軸66aを回転駆動する。モータ66の回転量を検出しながらモータ66を駆動することにより、金型100A/100Bの型締めおよび型開閉を行うことが可能となる。
【0030】
射出成形機2は、型締力を計測するためのセンサ68を含み、各センサ68は、例えばタイバー64に設けられた歪みゲージであり、タイバー64の歪みを検出することで型締力を算出する。
【0031】
調整機構67は、可動プラテン63に回転自在に支持されたナット67bと、駆動源であるモータ67aと、モータ67aの駆動力をナット67bに伝達する伝達機構とを含む。各タイバー64は、可動プラテン63に形成された穴を通過して、ナット67bと係合している。ナット67bを回転させることにより、ナット67bとタイバー64との間のY軸方向の係合位置が変化する。すなわち、タイバー64に対する可動プラテン63の固定位置が変化する。これにより、可動プラテン63と固定プラテン61との間の間隔を変化させることができるため、型締力等を調整することができる。
【0032】
成形動作位置11は、固定プラテン61と可動プラテン62との間の領域である。
【0033】
成形動作位置11に導入された金型100A/100Bは、固定プラテン61と可動プラテン62との間に挟まれ、それによって型締めされる。可動プラテン62の移動により、可動金型102の移動に基づく開閉が行われる。
【0034】
取出機7は、X軸方向に延びるレール71と、レール71上をX軸方向に移動可能な可動レール72とを含む。可動レール72は、Y軸方向に延びるように設置されており、可動レール72上にはスライダ73が設けられている。スライダ73は、可動レール72にガイドされてY軸方向に移動する機能と、昇降軸73aをZ軸方向に昇降する機能とを含む。昇降軸73aの下端部には、真空ヘッド74が設けられており、真空ヘッド74には、成形品に特化したチャック板75が取り付けられている。取出機7は、型開き後、レール71、可動レール72、およびスライダ73により、図2中に破線で示すように、真空ヘッド74を固定金型101と可動金型102との間に移動し、成形品を吸着して、射出成形機2の外部へ搬送する。別の例示的実施形態では、取出機は、成形品を機械的に把持する方式のものである。
【0035】
図3は、固定プラテン61の中央部の開口部61aを示しており、ノズル52がこの開口部を通って進退する。固定プラテン61の可動プラテン62側の面(内面という)には、複数のローラBRが回転自在となるように支持されている。複数のローラBRは、回転軸を中心としてY軸方向に回転し、金型100A/100Bの底面(取付板101aの底面)を支持して、金型100A/100Bを下から支えて金型100A/100BのX軸方向の移動を円滑にする。固定プラテン61のX軸方向の両側には、ローラ支持体620が固定されており、このローラ支持体620によって、複数のローラBRが支持されている。固定プラテン61の内面には、X軸方向に延びる溝61bが形成されている。
【0036】
溝61bは、上下に離間して2列形成されている。各溝61bには、ローラユニット640が配置されている。ローラユニット640には、複数のローラSRが回転自在となるように支持されている。複数のローラSRは、回転軸を中心としてZ軸方向に回転し、金型100A/100Bの外面(取付板101aの外面)に接触して、金型100A/100Bを横から支えて金型100A/100BのX軸方向の移動をガイドする。II-II線断面図に示すように、ローラユニット640は、バネ641の付勢により、ローラSRが溝61bから突出する位置に位置する一方、型締め時には、溝61b内に後退して、ローラSRが溝61bから突出しない位置に位置する。ローラユニット640は、金型100A/100Bの入れ替え時には、金型100A/100Bと固定プラテン61の内面とが接触して内面が損傷することを防止でき、型締め時には、固定プラテン61の内面と金型100A/100Bとが密接することを妨げない。固定プラテン61のX軸方向の両側には、ローラ支持体630が固定されており、このローラ支持体630によって、複数のローラSRが支持されている。
【0037】
固定プラテン61には、固定金型101を固定プラテン61に固定するための複数の固定機構(クランプ)610が配置されている。各固定機構610は、取付板101aと係合する係合部610a、および係合位置と係合解除位置との間で係合部610aを移動させる内蔵アクチュエータ(図示せず)を含む。
【0038】
なお、可動プラテン62についても、固定プラテン61と同様に、複数のローラBRと、ローラ支持体620および630と、ローラユニット640と、可動金型102を固定するための固定機構610とが配置されている。
【0039】
図4Aは、コントローラ41が実行する射出成形システム1の既知の動作の一例を示す。以下の例では、金型100Aおよび100Bを入れ替えながら成形動作を行う場合を示す。
【0040】
ステップS1では、初期設定を行う。金型100Aと100Bの両方に対して、射出装置5および型締装置6の動作条件を登録する。動作条件には、1回の射出樹脂量、温度、射出速度、型締力、タイバー64に対する可動プラテン63の位置の初期値等が含まれるが、これらに限定されない。これらの動作条件は、金型100Aと金型100Bとが同種の金型であっても異なる。1回目の成形動作は金型100Aを用いるので、動作条件として金型100Aに関する条件が自動設定される。また、射出シリンダ51の加温や初回の樹脂の可塑化計量等を開始する。
【0041】
ステップS2では、金型100Aを射出成形機2内に搬送する。モータ66を駆動して、固定プラテン61と可動プラテン62との間の隙間を、金型100Aの厚み(Y方向の幅)よりも少し広くする。次に、コントローラ41はコントローラ42Aに金型100Aの搬入指示を送信し、コントローラ42Aは搬送ユニット31を駆動して、金型100Aを成形動作位置11に搬入する。金型100Aを搬入すると同時に金型100Bを搬出する。金型100Aの搬入が完了すると、コントローラ42Aからコントローラ41へ搬入完了を示す信号が送信される。搬入完了を示す信号を受信すると、モータ66を駆動して、固定プラテン61と可動プラテン62とを金型100Aに密着させる。このときは、成形中に発生させるような型締力を発生させる必要はない。固定機構610を駆動して、金型100Aを固定プラテン61、可動プラテン62にそれぞれロックする。
【0042】
ステップS3では、モータ66を駆動して、トグル機構65を駆動し、固定プラテン61と可動プラテン62とにより金型100Aの型締めを行う。金型100Aに対する射出の準備を行う。アクチュエータ55を駆動して射出装置5を移動し、ノズル52を金型100Aに接触させる。
【0043】
ステップS5では、溶融樹脂の射出および保圧を行う。より具体的には、射出装置5を駆動してノズル52から金型100A内のキャビティに溶融樹脂を充填し、樹脂の固化による体積減少を補うために、上記シリンダ51内の樹脂を金型100A内に高圧で押し込む。センサ68によって実際の型締力を計測する。成形中、金型100Aの温度が次第に上昇することで、金型100Aが熱膨張し、初期の型締力としばらく時間が経過した後の型締力に差が生じる場合がある。よって、次回の型締めの際の型締力を、センサ68の計測結果に基づき補正することができる。
【0044】
型締力の調整は、モータ67を駆動して、タイバー64に対する可動プラテン63の位置調整により行う。このようにタイバー64に対する可動プラテン63の位置の初期値を、センサ68の計測結果に基づいて補正して型締力を調整することで、型締力の精度を高めることができる。タイバー64に対する可動プラテン63の位置調整は、任意のタイミング、例えば、図4AのステップS7およびS9、図4BのステップS13~ステップS15のタイミングで行えばよい。
【0045】
ステップS6およびステップS8の処理を、ステップS7と並行して行う。ステップS6では、金型100A内の成形品の冷却時間の計時を開始する。ステップS7では、型締装置6に関連する処理を行う。より具体的には、固定機構610による金型100Aのロックを解除する。ステップS5から所定の時間の遅延後にモータ66を駆動して、トグル機構65を駆動する。これにより、型締力を消失し、固定プラテン61に対して可動プラテン62を僅かに離間させ、金型の入れ替えが可能となる空間を形成する。
【0046】
ステップS8では、射出装置5に関連する処理を行う。例えば、保圧サックバック、ノズルシャットオフ、射出装置5の後退等を行う。保圧サックバックおよびノズルシャットオフは、ノズル52が金型100Aから離れたときに溶融樹脂が垂れることを防止するものである。これらの処理は、ステップS7で固定プラテン61に対して可動プラテン62を僅かに離間させる前の遅延時間中に行ってもよい。
【0047】
保圧サックバックとは、保圧後にスクリュ51aを後退させて、射出シリンダ51内や金型100A/100B内の樹脂圧力を低減するものである。保圧サックバックにおけるスクリュ51aの後退位置は、絶対位置で管理してもよいし、保圧完了後のスクリュ51aの位置に対する相対位置で管理してもよい。射出装置5に設置されているロードセル(図示せず)が測定する樹脂圧力が所定圧まで低下することが検知されるまで、スクリュ51aを後退させてもよい。
【0048】
ノズルシャットオフは、ノズル52の吐出口52aを閉鎖することであり、図2の例でいえば、ピン56aで吐出口52aを閉鎖する。このような動作により、樹脂が漏れ出ることを抑制できる。次の射出のための樹脂計量の精度も向上できる。以上の処理により、樹脂が漏れ出ることを防止できるが、金型100A/100Bの構造や樹脂の種類によっては、金型100A/100Bとノズル52との間で長い糸状の樹脂が発生する場合がある。この発生を防止するために、ノズル52にエアを吹きつける装置を設置してもよい。
【0049】
ステップS9では、金型100A/100Bの入れ替えを行う。金型100Aを成形動作位置11から搬送装置3Aに搬出し、金型100Bを搬送装置3Bから成形動作位置11に搬入する。コントローラ41はコントローラ42Aに金型100Aの搬出指示を送信し、コントローラ42Aは搬送ユニット31を駆動して、金型100Aを成形動作位置11から搬出する。金型100Aの搬出が完了すると、コントローラ42Aからコントローラ41へ搬出完了を示す信号が送信される。金型100Aは搬送装置3A上で冷却される。このとき、自己閉鎖部103の働きによって金型100Aの閉状態が維持される。
【0050】
搬出完了を示す信号を受信すると、ステップS10で、成形動作の動作条件として金型100Bに関する動作条件を設定する。例えば、金型100Bの厚み(Y方向の幅)、型締力等を成形動作の動作条件として設定する。また、金型100Bに対応した射出速度等の成形条件を設定する。次の射出のための可塑化計量を開始する。モータ66を駆動して、固定プラテン61と可動プラテン62とを金型100Bに密着させる。このときは、成形中に発生させるような型締力を発生させる必要はない。固定機構610を駆動して、金型100Bを固定プラテン61と可動プラテン62の両方にロックする。
【0051】
本実施形態では、ステップS9の後にステップS10を行っている。ただし、成形動作条件の切り替えには時間を要することがあるため、例えば、金型100Aの搬出指示と同時に成形動作条件を切り替えるようにしてもよい。
【0052】
ステップS11では、成形動作が金型100Aおよび100Bに対する初回の成形動作かどうかを判定する。成形動作が初回の成形動作の場合は、処理はステップS3へ戻る。成形動作が初回の成形動作ではない、すなわち2回目、3回目等の成形動作の場合は、処理はステップS12へ進む。
【0053】
上述の処理は、初回の成形動作を説明したものである。したがって、処理はステップS3へ戻る。次いで、金型100Bに対してステップS3~ステップS8の処理が実行される。
【0054】
金型100Bに対するステップS3~ステップS8の処理が実行されると、ステップS9で金型100Bの搬出と、金型100Aの搬入とが行われる。金型100Bは、搬送装置3B上で冷却される。ステップS11では、成形動作が初回の成形動作ではないと判定され、処理はステップS12へ進む。
【0055】
ステップS12では、ステップS6で計時を開始した冷却時間が所定の時間に達したかどうかに基づいて、金型100Aの冷却が完了したかどうかを判定する。冷却が完了した場合は、図4B中のステップS13~ステップS16の処理を行う。
【0056】
ステップS13では、モータ66を駆動して、固定プラテン61から可動プラテン62を離間する。固定金型101は固定プラテン61に固定機構610により固定され、可動金型102は可動プラテン62に固定機構610により固定されている。したがって、自己閉鎖部103の力に抗して、固定金型101から可動金型102が離間し、金型100Aが型開きされる。ステップS14では、取出機7を駆動して、金型100Aの可動金型102側に残留している成形品を取り出し、射出成形機2の外部へ搬送する。チャック板75が成形品に対向する位置に真空ヘッド74が移動し、成形品を吸着力で保持する。
【0057】
ステップS15では、モータ66を駆動して、可動プラテン62を固定プラテン61に近づける。固定金型101から離間していた可動金型102は、固定金型101に密着して、金型100Aが型閉じされる。射出成形動作が金型100Bを用いているときは、ステップS13、S14、およびS15を実行して、成形品を金型100Bから取り出す。
【0058】
ステップS16では、コントローラ41は、成形品の現在生産数と閾値THとを比較する。成形品の現在生産数は、ROMおよび/またはRAMに記憶される。閾値THは、所望の生産量であり、ステップS1で設定される。成形品の現在生産数が閾値TH未満であれば、フローはステップS3へ戻る。その時点で、上記の処理が繰り返される。
【0059】
成形品の現在生産数が閾値THと等しい場合は、フローはステップS17へ進む。ステップS17~S21の処理は、他方の金型、例えば金型100Bから成形品を取り出すための処理である。
【0060】
ステップS17では、ステップS9と同様に、金型100A/100Bを入れ替える。本ステップでは、金型100Aを成形動作位置11から搬送装置3Aに搬出し、金型100Bを搬送装置3Bから成形動作位置11に搬入する。コントローラ41はコントローラ42Aに金型100Aの搬出指示を送信し、コントローラ42Aは搬送ユニット31を駆動して、金型100Aを成形動作位置11から搬出する。金型100Aの搬出が完了すると、コントローラ42Aからコントローラ41へ搬出完了を示す信号が送信される。
【0061】
搬出完了を示す信号の受信後、ステップS18では、ステップS6で開始した冷却時間が所定の時間に達したかどうかに基づいて、金型100Bの冷却が完了したかどうかを判定する。冷却が完了した場合は、ステップS19へ進む。
【0062】
ステップS19では、モータ66を駆動して、固定プラテン61から可動プラテン62を離間する。固定金型101は固定プラテン61に固定機構610により固定され、可動金型102は可動プラテン62に固定機構610により固定されている。自己閉鎖部103の力に抗して、固定金型101から可動金型102が離間し、金型100Aが型開きされる。ステップS20では、取出機7を駆動して、金型100Aの可動金型102側に残留している成形品を取り出し、射出成形機2の外部へ搬送する。チャック板75が成形品に対向する位置に真空ヘッド74が移動し、成形品を吸着力で保持する。ステップS21では、モータ66を駆動して、可動プラテン62を固定プラテン61に近づける。固定金型101から離間していた可動金型102は、固定金型101に密着して、金型100Aが型閉じされる。射出成形動作が金型100Bを用いているときは、ステップS19、S20、およびS21を実行して、成形品を金型100Bから取り出す。
【0063】
上述したように、本実施形態では、金型100Aおよび100Bの冷却を射出成形機2外の搬送装置3Aおよび3B上で行う。金型100Aと100Bの一方を冷却中に、金型100A/100Bの他方に対して、射出成形機2によって、成形品の取り出し→型締め→射出および保圧といった各処理を行う。型開きおよび成形品の取り出しを射出成形機2で行うため、搬送装置3Aおよび3Bは、型開き機能および成形品の取り出し機能を有している必要がない。したがって、射出成形システムのコストアップを抑制しつつ、1台の射出成形機2で金型100Aおよび100Bを入れ替えながら成形品を製造することができる。
【0064】
金型100Aまたは100Bの一方の冷却に要する時間に、金型交換工程の開始から、他方の金型の取り出し工程、射出工程、保圧工程までと、再度の金型交換工程の完了までの全工程に要する時間が収まれば、生産性が通常の成形に比べて少なくとも2倍に向上する。すなわち、コストアップの抑制に加えて、高い生産性を実現することができる。
【0065】
2倍の生産性を実現するには、金型交換工程の時間にも依存するが、金型100Aおよび100Bの冷却時間が全成形工程(1成形サイクルの時間)の50%以上を占めていれば十分である。自動車や家電、事務機器などの外装部品や電気機械部品に用いられる成形品の多くは、強度確保のため数ミリメートルの肉厚を持つ。このため、全成形工程中、冷却工程が最も長い時間を占め、1成形サイクルの時間に対し、金型100Aおよび100Bの冷却時間が50%から70%に達することも珍しくない。したがって、この種の成形品の生産性向上に上記実施形態は特に有効である。金型100Aの成形サイクルの時間と金型100Bの成形サイクルの時間とが同程度で、1成形サイクルの時間に対する金型100Aおよび100Bの冷却時間が50%以上であれば、特に生産性を向上することができる。
【0066】
成形品の肉厚が1mm程度と比較的薄い場合でも、高い寸法精度が必要な部品や、金型温度として高温が必要な樹脂、あるいは、冷却に時間のかかる結晶性樹脂を使用する成形品の場合は、冷却工程が長くなる傾向がある。上述の実施形態では、幅広い成形品の製造で2倍に近い生産性を実現することが可能である。
【0067】
1成形サイクルの時間に対し、金型100Aおよび100Bの冷却時間が50%未満の場合であっても、冷却時間の有効活用により、通常成形に対して1.5倍や1.8倍といった高い生産性の実現が可能となる。
【0068】
上述の実施形態によれば、1台の射出成形機2で、従来の製造方法による2台分の射出成形機の生産性を得ることができるため、設置スペースや電力使用量を削減することができる。
【0069】
図5図6A図6B図7A図7B、および図8A図8Bは、本開示の例示的実施形態により実現される現在の射出成形システムに対しての改善を示す図である。既知の射出成形システムの構成要素は、説明のみを目的として図5図6A図6B図7A図7B、および図8A図8Bの説明に含まれており、必要に応じてのみ説明する。
【0070】
図5は、本開示における射出成形システムの一例示的実施形態を示す。射出成形システム99は、横型の射出成形機2と、搬送装置3Aおよび3Bと、制御装置4とを含み、射出成形機2に対して、搬送装置3Aおよび3Bによって複数の金型を入れ替えながら成形品を製造する。
【0071】
金型200は、固定金型101と、固定金型101に対して開閉される可動金型102および可動金型104とを含む。固定金型101は、X軸方向に長い構成となっており、可動金型102および可動金型104とそれぞれキャビティを形成し、このキャビティに成形材料、例えば溶融樹脂を射出することで成形品が成形される。以下、固定金型101と可動金型102との組を金型200A、固定金型101と可動金型104との組を金型200Bと称する。
【0072】
固定金型101には、取付板101aおよび101bが固定されている。可動金型102および可動金型104には、それぞれ取付板102aおよび104aが固定されている。取付板101aおよび102aは、金型200Aを射出成形機2の成形動作位置11(型締位置)に固定するために用いられる。取付板101bおよび104aは、金型200Bを射出成形機2の成形動作位置11(型締位置)に固定するために用いられる。
【0073】
搬送装置3Aは、金型200Aを射出成形機2の成形動作位置11に搬入および搬出する。搬送装置3Bは、金型200Bを射出成形機2の成形動作位置11に搬入および搬出する。搬送装置3Aおよび搬送装置3Bは、射出成形機2をX軸方向に挟む。成形動作位置11は、搬送装置3Aと搬送装置3Bとの間に位置している。
【0074】
図5の射出成形システムでは、上述したように、可動金型102と対をなす構成要素と、可動金型104と対をなす構成要素とが一体化されて、X軸方向に単一の長尺状の固定金型101を形成している。これにより、金型200Aと金型200Bとを1つの搬送ユニット31で移動させることができる。
【0075】
本実施形態の構成では、金型200Aと金型200Bとが共に移動する。したがって、金型200Aが成形動作位置11に位置しているときは、金型200Bは射出成形機2の外部(搬送装置3B側)の冷却位置に位置している。図5に示すように、金型200Bが成形動作位置11に位置しているときは、金型200Aは射出成形機2の外部(搬送装置3A側)の冷却位置に位置している。
【0076】
図6Aおよび図6Bは、金型200Aから成形品を取り出す状態を示す。説明のために、搬送装置3A、搬送装置3B、および射出成形機2の一部の図示を省略している。
【0077】
図6Aは、金型200Aが成形動作位置11にあり、金型200Bが冷却位置にある状態を示す。本実施形態の構成では、可動金型102と対をなす固定金型と、可動金型104と対をなす固定金型とが固定金型101として一体化されているので、金型200Aと金型200Bとの間の距離を短くすることが可能である。そのため、図6Aに示すように、金型200B(固定金型101の一部および可動金型104)は、射出成形機2のフレーム10上で、一部が射出成形機2内にある位置で停止する。
【0078】
固定プラテン61は、取付板101aに密着して、固定金型101に対して固定されている。可動プラテン62は、取付板102aに密に接触して、可動金型102に対して固定されている。
【0079】
図6Bは、可動プラテン62を図示矢印の方向に移動させて、固定金型101から可動金型102を離間させ、金型200Aを開いた状態を示す。固定金型101と可動金型102とがキャビティを形成し、このキャビティ内で成形品Pが成形される。チャック板75が成形品Pに対向する位置に真空ヘッド74が移動し、真空ヘッド74によって生じる吸着力で成形品Pを保持する。
【0080】
上記構成を考慮すると、可動金型102を固定金型101から離間させたときでも、固定金型101を介して連結された可動金型104には影響を及ぼさない。このため、金型200Bは、図6Bに示す冷却位置で停止する。
【0081】
図7A図7Bは、金型200Bから成形品を取り出す状態を示す。説明のために、搬送装置3A、搬送装置3B、および射出成形機2の一部の図示を省略している。
【0082】
図7Aは、金型200Bが成形動作位置11にあり、金型200Aが冷却位置にある状態を示す。本実施形態の構成では、可動金型102と対をなす固定金型と、可動金型104と対をなす固定金型とが固定金型101として一体化されているので、金型200Aと金型200Bとの間の距離を短くすることが可能である。そのため、図7Aに示すように、金型200A(固定金型101の一部および可動金型102)は、射出成形機2のフレーム10上で、一部が射出成形機2内にある位置で停止する。
【0083】
固定プラテン61は、取付板101aに密着して、固定金型101に対して固定されている。可動プラテン62は、取付板104aに密に接触して、可動金型104に対して固定されている。
【0084】
図7Bは、可動プラテン62を図示矢印の方向に移動させて、固定金型101から可動金型104を離間させ、金型200Bを開いた状態を示す。固定金型101と可動金型104とがキャビティを形成し、このキャビティ内で成形品Pが成形される。チャック板75が成形品Pに対向する位置に真空ヘッド74が移動し、真空ヘッド74によって生じる吸着力で成形品Pを保持する。
【0085】
上記構成を考慮すると、可動金型104を固定金型101から離間させたときでも、固定金型101を介して連結された可動金型102には影響を及ぼさない。このため、金型200Aは、図7Bに示す冷却位置で停止する。
【0086】
上述したように、本実施形態では、金型200Aと金型200Bとが交互に成形動作位置11に移動する。可動金型102と対をなす固定金型と、可動金型104と対をなす固定金型とが一体化されているので、金型200Aと金型200Bとの間の距離を短くすることが可能である。その結果、各冷却位置は、フレーム10上で、一部が射出成形機2内に位置することになる。
【0087】
金型が互いに独立している構成、すなわち、可動金型と対をなす固定金型と、別の可動金型と対をなす別の固定金型とが一体化されておらず、別体となっている構成に比べて、本実施形態の構成では、成形動作位置11と冷却位置との間の距離を短くすることができる。したがって、従来の構成に比べて、金型100の移動時間(金型200Aを成形動作位置11に移動させ、金型200Bを冷却位置に移動させる時間、または金型200Aを冷却位置に移動させ、金型200Bを成形動作位置11に移動させる時間)を短縮することができる。
【0088】
本実施形態では、冷却位置が成形動作位置11に近いため、搬送装置3Aおよび搬送装置3BのX軸方向の長さを短くすることができる。これにより、射出成形システムの小型化が可能となる。さらに、搬送装置3Aおよび搬送装置3Bのフレーム30等の長さも短くなるので、これらの各構成要素の材料コストも低減することができる。
【0089】
図8A図8Bは、金型200の内部構成を示す。金型200は、ホットランナ(図示せず)と、図8Aに示すように金型200の内部に配置されたヒータ105とを含む。ヒータ105は、成形材料のキャビティへの流路を加熱し、成形材料の硬化を防止する。ヒータ105は、金型200Aおよび金型200Bにそれぞれ設けられている。
【0090】
上述したように、金型200Aが成形動作位置11にあるときは、金型200Bは冷却位置にある。金型200A内に位置するヒータ105が生成した熱が固定金型101を介して冷却位置にある金型200Bに伝達するのを防止するために、図8Aに示すように断熱材106を用いる。具体的には、断熱材106は、金型200Aと金型200Bとの間に位置する境界に挿入されている。その結果、熱伝達を遮断することができ、成形品の品質低下を防止することができる。
【0091】
別の例示的実施形態では、図8Bに示すように、金型200Aと金型200Bとの間の境界を部分的に除去することで、空気層107を形成してもよい。この場合、固定金型101に対して可動金型102と可動金型104とが互いに密着した状態で、金型200を移動させることができるように固定金型101の強度を考慮して、金型200の内側部分を除去する。
【定義】
【0092】
説明においては、開示する実施例が完全に理解されるように、具体的な詳細を記載している。他の例では、周知の方法、手順、構成要素、および回路については、本開示を不要に長くすることを避けるために、詳細には説明していない。
【0093】
本明細書では、ある要素または部分が、別の要素または部分「の上にある」、「に接している」、「に接続されている」、または「に結合されている」と言及される場合、それは、直接にその別の要素または部分「の上にある」、「に接している」、「に接続されている」、または「に結合されている」こともあるし、あるいは介在する要素または部分が存在することもあることを理解されたい。これに対して、ある要素が、別の要素または部分「の上に直接にある」、「に直接に接続されている」、または「に直接に結合されている」と言及される場合には、介在する要素または部分は存在しない。「および/または」という用語を用いるときには、関連して列挙されている項目があれば、そのうちの1つまたは複数のあらゆる組合せを含む。
【0094】
本明細書では、「の下(under)」、「の真下(beneath)」、「の下方(below)」、「の下側(lower)」、「の上方(above)」、「の上側(upper)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」等の空間的に相対的な用語を、様々な図面に示すある要素または特徴の別の(1つまたは複数の)要素または特徴に対する関係を記述する際に、説明を容易にするために用いることがある。しかし、これらの空間的に相対的な用語は、図面に示す配向に加えて、使用時または動作時における装置の様々な配向をも包含することを意図するものと理解されたい。例えば、図中の装置を反転した場合には、別の要素または特徴の「下方(below)」または「真下(beneath)」と記述された要素が、それらの別の要素または特徴の「上方(above)」に配向されることになる。したがって、「の下方(below)」等の相対的な空間用語は、上および下の両方の配向を包含することができる。装置は、その他の配向にすることもでき(90度またはその他の配向に回転させることもでき)、本明細書で用いる空間的に相対的な記述語は、それに応じて解釈されるものとする。同様に、「近位(proximal)」および「遠位(distal)」という相対的な空間用語も、適用可能な場合には、入れ換えることができることもある。
【0095】
本明細書で用いる「約」という用語は、例えば、10%以内、5%以内、またはそれ未満を意味する。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、測定誤差内を意味することもある。
【0096】
本明細書では、第1、第2、第3等の用語を、様々な要素、構成要素、領域、部分、および/または区画を説明するために用いることがある。これらの要素、構成要素、領域、部分、および/または区画は、これらの用語によって限定されないものと理解されたい。これらの用語は、単にある要素、構成要素、領域、部分、または区画を、別の領域、部分、または区画と区別するために用いているに過ぎない。したがって、以下に論じる第1の要素、構成要素、領域、部分、または区画は、本明細書の教示を逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、部分、または区画と呼ぶこともできる。
【0097】
本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することは意図していない。本開示を説明する文脈における(中でも、添付の特許請求の範囲の文脈における)「1つの(a,an)」および「前記/その(the)」という用語ならびに類似の指示語の使用は、本明細書で別段の指示がない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、単数形および複数形の両方を含むと解釈されるものとする。「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」および「含有する(containing)」という用語は、別段の言及がない限り、非限定用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味する)と解釈されるものとする。具体的には、本明細書でこれらの用語を用いるとき、記載する特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素が存在することを指定するが、明示的には述べられていない1つまたは複数のその他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループが存在すること、あるいは追加されることを排除するものではない。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で別段の指示がない限り、単にその範囲に該当する各別個の値について個々に言及する簡略表記法として機能するよう意図するものに過ぎず、各別個の値は、それが本明細書においては個々に記載されたかのごとく本明細書に組み込まれる。例えば、10~15の範囲を開示する場合には、11、12、13および14もまた開示される。本明細書に記載する全ての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書に提示するあらゆる例または例示的な言葉(例えば「等の(such as)」)の使用は、単に本開示をより明確にすることを意図するものに過ぎず、別段に特許請求の範囲に記載がない限り、本開示の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、特許請求の範囲に記載のない任意の要素が、本開示の実施に必須であることを示すものではないと解釈されたい。
【0098】
本開示の方法および構成は、様々な実施形態の形で組み込むことができ、そのほんの一部が本明細書に開示されているに過ぎないことを理解されたい。それらの実施形態の変形形態は、上述の説明を読めば、当業者には明白であろう。本発明者らは、当業者がそのような変形形態を必要に応じて採用するものと想定しており、また、本開示が、本明細書に具体的に記載されたものとは別様に実施されることを意図している。したがって、本開示は、適用法により許容されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題の全ての修正形態および均等物を含む。さらに、本明細書で別段の指示がない限り、またはそうでないことが文脈から明らかでない限り、その全ての可能な変形形態における上記要素の任意の組み合わせが、本開示に包含される。
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