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特許7324336屋外用製品を製造するための熱硬化性エポキシ樹脂組成物、およびそれから得られる屋外用製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】屋外用製品を製造するための熱硬化性エポキシ樹脂組成物、およびそれから得られる屋外用製品
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/24 20060101AFI20230802BHJP
   C08G 59/44 20060101ALI20230802BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20230802BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230802BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230802BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20230802BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230802BHJP
   H01B 3/40 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C08G59/24
C08G59/44
C08G59/50
C08L63/00 C
C08K3/36
C08K5/17
C08K3/22
H01B3/40 J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022077626
(22)【出願日】2022-05-10
(62)【分割の表示】P 2020164787の分割
【原出願日】2016-03-10
(65)【公開番号】P2022116017
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2015/075085
(32)【優先日】2015-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516342265
【氏名又は名称】ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・ライセンシング・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】バイゼレ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジージエン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ホーンイエン
(72)【発明者】
【氏名】菱川 悟
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-024300(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01144638(GB,A)
【文献】特開昭49-020300(JP,A)
【文献】特表2014-518921(JP,A)
【文献】特表2004-504436(JP,A)
【文献】特表2012-522854(JP,A)
【文献】特開平08-283540(JP,A)
【文献】特開平06-248059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00- 59/72
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
H01B 3/18- 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物を含む屋外用絶縁製品であって、多成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、
(A)エステル基を含有しない少なくとも1種の脂環式グリシジル型エポキシ樹脂;
(B)脂肪族アミン、脂環式アミン、およびジシアンジアミドの群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤;ならびに
(C)少なくとも1種のシラン処理フィラー;
を含むが、無水物を含んでおらず、多成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量を基準としてシラン処理フィラーが40~75重量%である、上記絶縁製品
【請求項2】
前記少なくとも1種のエポキシ樹脂(A)が、1,2-シクロヘキサンジオールのポリグリシジルエーテル、1,3-シクロヘキサンジオールのポリグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオール(キニトール)のポリグリシジルエーテル、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンのポリグリシジルエーテル、1,1-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキセ-3-エンのポリグリシジルエーテル、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン(水素化ビスフェノールF)のポリグリシジルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(水素化ビスフェノールA)のポリグリシジルエーテル、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(水素化ビスフェノールC)のポリグリシジルエーテル、1,1-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)エタン(水素化ビスフェノールE)のポリグリシジルエーテル、1,3-シクロペンタンジオールのポリグリシジルエーテル、4,4'-ジヒドロキシジシクロヘキサンのポリグリシジルエーテル、2,6-ビス(4'-ヒドロキシシクロヘキシルメチル)-1-ヒドロキシシクロヘキサンのポリグリシジルエーテル、1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサンのポリグリシジルエーテル、1,2,2-トリス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)エタンのポリグリシジルエーテル、または3~10個のシクロヘキサン環を有する水素化フェノール-ホルムアルデヒド縮合生成物のポリグリシジルエーテルである、請求項1に記載の絶縁製品
【請求項3】
前記少なくとも1種のエポキシ樹脂(A)が、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンのポリグリシジルエーテルまたは水素化ビスフェノールAのポリグリシジルエーテルである、請求項1または2に記載の絶縁製品
【請求項4】
前記少なくとも1種の硬化剤(B)が、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N,N-ジメチルプロピレンジアミン-1,3、N,N-ジエチルプロピレンジアミン-1,3、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,4-ビス(4-アミノシクロヘキシルメチル)シクロヘキシルアミン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、4,4'-ビス(4-シクロヘキシルメチル)ジシクロヘキシルアミン、2,2-ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(メチルアミン)(ノルボルナンジアミン)、3,3,5-トリメチル-N-(プロパン-2-イル)-5-[(プロパン-2-イルアミノ)メチル]シクロヘキシルアミン、Jefflink(登録商標)JL754、4-アミノシクロヘキシル-4-ヒドロキシシクロヘキシルメタン、N-アミノエチルピペラジン、またはジシアンジアミドである、請求項1~3のいずれかに記載の絶縁製品
【請求項5】
前記少なくとも1種の硬化剤(B)が、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、またはジシアンジアミドである、請求項1~4のいずれかに記載の絶縁製品
【請求項6】
前記樹脂組成物が、ポリエーテルアミンをさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載の絶縁製品。
【請求項7】
前記少なくとも1種のシラン処理フィラーが、石英、シリカ、珪灰石、または炭酸カルシウムをシラン処理することによって得られる、請求項1~6のいずれかに記載の絶縁製品
【請求項8】
少なくとも1種のエポキシ樹脂(A)が、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンのジグリシジルエーテルと水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルの群から選ばれ、少なくとも1種の硬化剤(B)が、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、およびジシアンジアミドの群から選ばれる、請求項1~7のいずれかに記載の絶縁製品
【請求項9】
前記シラン処理フィラーが、エポキシ樹脂組成物に加えられる前にシランで被覆されたものである、請求項1~8のいずれかに記載の絶縁製品。
【請求項10】
(A)多成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物を脱気すること、
(B)脱気した組成物を加熱したモールドに圧力下で注入すること、
(C)脱気した組成物を硬化させて絶縁製品を得ること、
を含む、絶縁製品の製造方法であって、
多成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、
(a)エステル基を含有しない少なくとも1種の脂環式グリシジル型エポキシ樹脂;
(b)脂肪族アミン、脂環式アミン、およびジシアンジアミドの群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤;ならびに
(c)少なくとも1種のシラン処理フィラー;
を含み、多成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量を基準としてシラン処理フィラーが40~75重量%であり、脱気した組成物を調製するための混合タンクにおいて樹脂組成物は無水物を含んでいない、上記方法。
【請求項11】
前記絶縁製品が、屋外用絶縁体、ブッシング、屋外用の計器用変圧器、配電変圧器、屋外スイッチギヤ、リクローザーまたはロコモティブインシュレーターである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記シラン処理フィラーが、エポキシ樹脂組成物に加えられる前にシランで被覆されたものである、請求項10または11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物、該エポキシ樹脂組成物を使用した屋外用製品(例えば電気工学用絶縁システム)の製造方法、および該製造方法によって得られる製品に関する。得られるケース入り絶縁製品(insulation encased articles)は、屋
外用電気的用途に適していて、優れた機械的特性、電気的特性、および誘電的特性を示し、例えば絶縁体、ブッシング、スイッチギヤ、および計器用変圧器として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
電気工学用絶縁システムの製造には、一般にエポキシ樹脂組成物が使用される。しかしながら、これらエポキシ樹脂組成物のほとんどは、無水物を硬化剤として使用する。化学薬品に対する規制の枠組みが進展していることから、エポキシ樹脂中に無水物を使用することは、R42ラベル(呼吸器感作物質)のために近い将来制限されるであろうと考えられる。従ってある種の無水物は、REACH規制のSVHC候補リスト(極めて重要な物質)に既に載っている。従って数年したら、これらの物質はもはや、特別な許可がなければ使用できなくなるであろう。メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA)とヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA)は、電気絶縁用途向けの屋外用脂環式エポキシ樹脂に対する主たる硬化剤として広く使用されているので、将来は、これらに代わる、SVHCとは見なされない物質が必要となる。既知の無水物はいずれもR42ラベルされており、毒物学者によれば、未知の無水物でもR42ラベルされるであろうと考えているので、無水物を含有しない解決策が望ましい。
【0003】
エポキシ樹脂用の硬化剤(特に複合材料を製造するための硬化剤)としてはアミンがよく知られている。しかしながら、アミン硬化剤は反応性が高すぎて、電気ポッティングやカプセル封入の用途に対しては処理できないことが多い。処理しようとするエポキシ樹脂組成物の量が増すにつれて、発熱量の制御が極めて重要になってくる。熱硬化性樹脂の硬化による熱の放出が、その処理量のために制御できないと、熱硬化性樹脂の機械的特性の低下を、あるいは熱硬化性樹脂の熱分解さえも引き起こすことがある。さらに、熱硬化性樹脂と接触している構造部品の機械的特性の低下も起こりうる。特に自動圧力ゲル化法(APG)では、硬化プロフィール〔すなわち、モールド内のゲル化フロント(gelation front)〕を制御するために、より低い発熱ピーク温度をもたらすことが重要である。アミンが硬化剤として使用されると、エポキシ樹脂組成物の硬化プロフィールが不適切であり、APGにおいて利用するには発熱量が高すぎる。
【0004】
アミン硬化剤を含有するエポキシ樹脂の硬化プロフィールが不適切であるという問題をうまく処理するために、芳香族アミンの使用が提唱された。しかしながら現在、考えられる芳香族アミンは、ポッティング用途やキャスティング用途で使用してはならない禁止物質リストに載っている。上記したように、脂肪族アミン等の他のアミンは反応性が高すぎて、低収縮で低発熱量の大形部品のキャスティングには適しているものの、APGにおいては許容しうるゲル化プロフィールをもたらさない。さらに、硬化体の幾つかの特性が、無水物硬化による熱硬化樹脂より劣る(例えば、高湿度状態調節後の長期老化、耐トラッキング性、耐アーク性、および誘電特性)。従って、スイッチギヤや変圧器向けなどの、屋外用途に適した電気絶縁システムを製造するための、ポッティングやカプセル封入の用途において有利に使用することができる、新規の無水物非含有熱硬化性エポキシ組成物が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、屋外条件にさらされる製品(例えば、電気工学用屋外絶縁システム)を製造するのに適した無水物非含有多成分熱硬化性エポキシ組成物を提供することである。該エポキシ樹脂組成物は、R42フリー且つSVHCフリーであって、吸水性が低いこと、水拡散絶縁破壊強度(water diffusion break down strength)が極めて優れている
こと、およびポットライフが長いことを特徴とすべきである。該エポキシ樹脂組成物は、自動圧力ゲル化(APG)によるプロセシングに適したものでなければならない。硬化プロフィールは所望の仕方で制御できるのが望ましい。本発明の他の目的は、優れた機械的・電気的特性・誘電的特性を示し、屋外用途(例えば、電気工学における絶縁体、ブッシング、スイッチギヤ、および計器用変圧器など)において使用することができる、ポッティング法やカプセル封入法により得られるケース入り製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って本発明は、下記を含む多成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物に関する:
(A)エステル基を含有しない少なくとも1種の脂環式グリシジル型エポキシ樹脂;
(B)脂肪族アミン、脂環式アミン、およびジシアンジアミドの群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤;ならびに
(C)少なくとも1種のシラン処理フィラー。
【0007】
少なくとも1種の脂環式グリシジル型エポキシ樹脂(A)は、エステル基を含有せず、少なくとも1つの隣接エポキシ基〔好ましくは1つより多い隣接エポキシ基(例えば、2つ又は3つの隣接エポキシ基)〕を含有する化合物である。エポキシ樹脂は、単量体化合物であっても高分子化合物であってもよい。成分(A)として有用なエポキシ樹脂が、例えば、GB-A-1144638、米国特許出願第3,425,961号、およびLee,HとNevilleによる“Handbook of Epoxy Resins, McGraw-Hill Book Company, New York (1982)”に記載されている。
【0008】
本発明の成分(A)に関して本明細書に開示の実施態様において使用されるエポキシ樹脂はいろいろ変わってよく、従来のエポキシ樹脂と市販のエポキシ樹脂を含み、これらは単独でも2種以上の組み合わせでも使用することができる。本明細書に開示の組成物のためのエポキシ樹脂を選定する際には、最終製品の特性だけでなく、樹脂組成物の処理に影響を及ぼす可能性のある粘度や他の特性も考慮しなければならない。適切なエポキシ樹脂は、エステル基(カルボン酸エステル基など)を含まないエポキシ樹脂である。例えば、脂環式ジカルボン酸のジグリシジルエステル(ジグリシジルヘキサヒドロフタレートなど)は、本発明の目的に対して適していない。
【0009】
当業者に公知の特に適したエポキシ樹脂は、多官能脂環式アルコール(すなわち、脂環式基を含有する多官能脂肪族アルコール)とエピクロルヒドリンとの反応生成物をベースとするエポキシ樹脂である。
【0010】
エピクロロヒドリンと反応させて適切なポリグリシジルエーテルを形成させるために考えられる多官能脂環式アルコール、すなわち脂環式基を含有する多官能脂肪族アルコールは、例えば、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール(キニトール)、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,1-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキセ-3-エン、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メ
タン(水素化ビスフェノールF)、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(水素化ビスフェノールA)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパ
ン(水素化ビスフェノールC)、1,1-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)エタン(水素化ビスフェノールE)、1,3-シクロペンタンジオール、4,4'-ジヒドロキシジシクロヘキ
サン、2,6-ビス(4'-ヒドロキシシクロヘキシルメチル)-1-ヒドロキシシクロヘキサン、1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサン、1,2,2-トリス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)エタン、および3~10個のシクロヘキサン環を有する水素化フェノール-ホルムアルデヒド縮合生成物である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい実施態様では、少なくとも1種のエポキシ樹脂(A)は、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンもしくは水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルである。特に、少なくとも1種のエポキシ樹脂(A)は、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルである。
【0012】
エステル基を含有しない少なくとも1種の脂環式グリシジル型エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、例えば4.0~5.5Eq/kgであり、好ましくは4.3~5.2Eq/kgである。
少なくとも1種のエポキシ樹脂成分(A)は、市販されているか、あるいはそれ自体公知の方法に従って製造することができる。このような方法は、例えばGB-A-1144638(エポキシ樹脂A、B、C、D、およびF)や米国特許出願第3,425,961号(実施例1、2、および6)
に記載されている。市販されている製品としては、例えば、Huntsman社から市販の低粘度脂環式グリシジル型エポキシ樹脂であるDY-C;アデカ社(日本)から市販の低粘度水素化ビスフェノールAエポキシ樹脂であるEP4080E;または三菱ケミカル社(日本)から市販
の低粘度水素化ビスフェノールAエポキシ樹脂であるYX8000;などがある。
【0013】
最終組成物中のエポキシ樹脂(A)の量は、広い範囲で変わってよく、組成物の用途に応じて異なる。組成物が電気工学用絶縁システムの製造に使用される場合、エポキシ樹脂(A)の量は、例えば、組成物中の成分(A)と(B)の総重量を基準として40重量%~98重量%である。一実施態様では、エポキシ樹脂(A)の量は、例えば、成分(A)と(B)の総重量を基準として70重量%~96重量%である。他の実施態様では、エポキシ樹脂(A)の量は、例えば、成分(A)と(B)の総重量を基準として50重量%~90重量%である。
【0014】
少なくとも1種の硬化剤(B)としては、例えば下記のような脂肪族アミンや脂環式アミンが考えられる:エチレンジアミン;ヘキサメチレンジアミン;トリメチルヘキサメチ
レンジアミン;メチルペンタメチレンジアミン;ジエチレントリアミン;トリエチレンテトラミン;テトラエチレンペンタミン;N,N-ジメチルプロピレンジアミン-1,3;N,N-ジエチルプロピレンジアミン-1,3;1,2-ジアミノシクロヘキサン;1,4-ジアミノシクロヘキサン;ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン;ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル
)メタン;ビス(3,5-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン;2,4-ビス(4-アミノシ
クロヘキシルメチル)シクロヘキシルアミン;2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン;4,4'-ビス(4-シクロヘキシルメチル)ジシクロヘキシルアミン;2,2-ビス(4-ア
ミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパン;3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン);1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(メチルアミン)(
ノルボルナンジアミン);3,3,5-トリメチル-N-(プロパン-2-イル)-5-[(プロパン-2-
イルアミノ)メチル]シクロヘキシルアミン;Jefflink JL 754、Huntsman社から市販の脂環式アミン;4-アミノシクロヘキシル-4-ヒドロキシシクロヘキシルメタン;およびN-ア
ミノエチルピペラジン。これらアミンのうちで好ましいのは脂環式アミンである。
【0015】
好ましい脂環式アミンとしては、1,2-ジアミノシクロヘキサン;ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン;ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン;3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン);1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(メチルアミン)(ノルボルナンジ
アミン); Jefflink JL 754;およびN-アミノエチルピペラジン;などがある。
【0016】
脂肪族アミンや脂環式アミンは単独でも使用できるし、あるいはこれとは別に、少なくとも2種(例えば2種、3種、または4種)の異なる脂肪族アミンまたは脂環式アミンの混合物も使用することができる。
【0017】
本発明の好ましい実施態様では、少なくとも1種の硬化剤(B)は、エチレンジアミン;ヘキサメチレンジアミン;トリメチルヘキサメチレンジアミン;メチルペンタメチレンジアミン;ジエチレントリアミン;トリエチレンテトラミン;テトラエチレンペンタミン;N,N-ジメチルプロピレンジアミン-1,3;N,N-ジエチルプロピレンジアミン-1,3;1,2-ジアミノシクロヘキサン;1,4-ジアミノシクロヘキサン;ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン;ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン;ビス(3,5-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン;2,4-ビス(4-アミノシクロヘキシルメチル)シクロヘキシルアミン;2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン;4,4'-ビス(4-シクロヘキシルメ
チル)ジシクロヘキシルアミン;2,2-ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパ
ン;3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン);1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;
ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(メチルアミン)(ノルボルナンジアミン);3,3,5-トリ
メチル-N-(プロパン-2-イル)-5-[(プロパン-2-イルアミノ)メチル]シクロヘキシルアミン;Jefflink JL 754;4-アミノシクロヘキシル-4-ヒドロキシシクロヘキシルメタン;N-アミノエチルピペラジン;またはジシアンジアミド;である。
【0018】
本発明の特に好ましい実施態様では、少なくとも1種の硬化剤成分(B)は、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミ
ノシクロヘキシル)メタン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(
イソホロンジアミン)、またはジシアンジアミドである。
【0019】
少なくとも1種の硬化剤(B)は、市販されているか、あるいはそれ自体公知の方法に従って製造することができる。市販されている製品は、例えば、Huntsman社から市販の脂環式アミン硬化剤であるDCH99もしくはARADUR(登録商標)42;BASF社から市販の脂環式
アミン硬化剤であるEC331;またはAlzChem社から市販のジシアンジアミド硬化剤であるDyhard 100S;である。
【0020】
少なくとも1種の硬化剤(B)は、ポリエーテルアミンと組み合わせて使用することができる。ポリエーテルアミンは、例えば、ポリエーテルトリアミンやポリエーテルジアミン等のポリエーテルポリアミンである。
【0021】
有用なポリエーテルジアミンとしては、末端が共にアミン基によって終結されたポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドコポリマー等のポリオキシアルキレンジアミン
がある。このようなポリエーテルジアミンは、式H2N(PO)(EO)(PO)
を有してよく、ここで、xは0~10の数であり、yは0~40の数であり、zは0~10の
数であり、EOはエチレンオキシドであり、POはプロピレンオキシドである。ポリエーテルポリアミンは、末端が共にアミン基によって終結された他のポリエチレンオキシドポリマーまたはポリプロピレンオキシドポリマーであってもよい。エチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)を使用する代表的なポリエーテルジアミンとしては、下記の式で示されるポリエーテルジアミンがある。
【0022】
【化1】
【0023】
他のタイプのポリエーテルポリアミンやエーテルオリゴマーも使用することができる。ポリテトラヒドロフランのジアミンも、単独にて、あるいは他のアルキレンオキシドまたはオレフィン系モノマーと共重合させた形で使用することができる。幾らかのエーテル酸素原子が組み込まれた炭化水素鎖を有する任意の第一ポリアミンも使用することができる。酸素原子は、ある一定の間隔で配置されてもよいし(従ってポリエーテルポリアミンは、単一の反復モノマー単位を有する)、あるいは酸素原子は、異なる間隔で配置されてもよい(ランダムであっても、ある反復パターンに従って分散されてもよい)。従ってポリエーテルポリアミンは、エーテルコポリマー(ランダム、ブロック、反復、または交互であってよい)のジアミンであっても、あるいは3種以上の異なるエーテルモノマー単位を
有するエーテルマルチポリマーのジアミンであってもよい。ポリエーテルポリアミンは、第一アミンを有していても、あるいは第二アミンを有していてもよい。
【0024】
ポリエーテルポリアミンのポリエーテル成分の酸素原子は、全て又は一部を他の電気陰性化学種(例えばイオウ)で置き換えることができる。従って、ポリチオエーテルポリアミンも使用することができる。
【0025】
このようなポリエーテルポリアミンの市販品の例としては、Huntsman社から市販されているJEFFAMINE(登録商標)ポリエーテルアミンがある。これらアミンのエーテル単位は
、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、またはこれらの混ざり合いである。JEFFAMINE(登録商標)ポリエーテルアミンは一般に、オキシプロピレン単位、またはオ
キシエチレン単位とオキシプロピレン単位の組み合わせを有する。好ましいJEFFAMINE(
登録商標)ポリエーテルアミンは、JEFFAMINE(登録商標)Dシリーズ、JEFFAMINE(登録
商標)EDシリーズ、JEFFAMINE(登録商標)Tシリーズ、およびJEFFAMINE(登録商標)XTJシリーズのポリエーテルアミンである。
【0026】
最終組成物中の硬化剤(B)の量は、広い範囲で変わってよく、組成物の用途に応じて異なる。組成物が電気工学用絶縁システムの製造に使用される場合、最終組成物中の硬化剤(B)の量は、例えば、組成物中の成分(A)と(B)の総重量を基準として2重量%
~60重量%である。一実施態様では、硬化剤(B)の量は、例えば、成分(A)と(B)の総重量を基準として4重量%~40重量%である。他の実施態様では、硬化剤(B)の量
は、例えば、成分(A)と(B)の総重量を基準として10重量%~50重量%である。
【0027】
少なくとも1種のシラン処理フィラー(C)は、市販されているか、あるいはそれ自体公知の方法に従って(例えば、適切なフィラーをエポキシシランやアミノシランでシラン処理することによって)製造することができる。適切なフィラーは、例えば、金属粉末、木粉、ガラス粉末、ガラスビーズ、半金属酸化物、金属酸化物、金属水酸化物、半金属窒化物、金属窒化物、半金属炭化物、金属炭化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、天然鉱物、または合成鉱物である。フィラー材料は、エポキシ樹脂組成物にフィラーを加える前に、フィラー材料の被覆に関して当業界に公知のシランで適切に被覆されるか、あるいはこれとは別に、エポキシ樹脂組成物にフィラーとシランを加えることによって、フィラー材料の被覆に関して当業界に公知のシランで適切に被覆され、これにより組成物中にシラン処理フィラーが形成される。
【0028】
適切なフィラーは、例えば、ケイ砂、石英粉末、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、Mg(OH)、Al(OH)、ドロマイト[CaMg(CO
]、Al(OH)、AlO(OH)、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウ
ム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ドロマイト、白亜、炭酸カルシウム、バライト、石膏、ハイドロマグネサイト、ゼオライト、滑石、雲母、カオリン、および珪灰石の群から選択される。好ましいのは、石英、シリカ、珪灰石、または炭酸カルシウムであり、特に石英またはシリカである。適切なシリカは、例えば、結晶質シリカまたは非晶質シリカであり、特に溶融シリカである。
【0029】
最終組成物中のシラン処理フィラー(C)の量は、広い範囲で変わってよく、組成物の用途に応じて異なる。組成物が電気工学用絶縁システムの製造に使用される場合、シラン処理フィラー(C)の量は、例えば、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量を基準として30重量%~75重量%である。一実施態様では、シラン処理フィラー(C)の量は、例えば、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量を基準として40重量%~75重量%である。他の実施態様では、シラン処理フィラー(C)の量は、例えば、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量を基準として50重量%~70重量%である。さらに他の実施態様では、シラン処理フィラー(C)の量は、例えば、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量を基準として60重量%~70重量%である。
【0030】
混合液体樹脂のレオロジー特性を改良するための加工助剤、シリコーンを含めた疎水性化合物、湿潤/分散剤、可塑剤、反応性もしくは非反応性希釈剤、軟化剤、促進剤、酸化
防止剤、光吸収剤、顔料、難燃剤、繊維、および電気的用途に一般的に使用されている他の添加剤からさらなる添加剤を選択することができる。これらの添加剤は当業者に公知である。
【0031】
一実施態様では、多成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、(A)1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンのジグリシジルエーテルと水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルの群から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂;(B)1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロ
ヘキシル)メタン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロ
ンジアミン)、およびジシアンジアミドの群から選択される少なくとも1種の硬化剤;ならびに(C)石英、シリカ、珪灰石、および炭酸カルシウムの群から選択される少なくとも1種のシラン処理フィラー;を含む。
【0032】
他の実施態様では、多成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、(A)水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、(B)3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシル
アミン(イソホロンジアミン)、および(C)シラン処理ケイ砂もしくはシラン処理石英
粉末を含む。
【0033】
電気工学用絶縁システム以外の屋外用製品の製造(例えば、複合製品や空心リアクトル用塗料の製造)に本発明の組成物が使用される場合は、シラン処理フィラー(C)を省くことができる。シラン処理フィラー(C)を含まない組成物の一部も新規である。
【0034】
従って本発明はさらに、(A)エステル基を含有しない少なくとも1種の脂環式グリシジル型エポキシ樹脂;および(B)硬化剤としてのジシアンジアミド;を含む多成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物に関し、このとき上記の定義、実施態様、および優先性が当てはまる。
【0035】
本発明に従ったエポキシ樹脂組成物は、R42フリー且つSVHCフリーであって、吸水性が低いこと、水拡散絶縁破壊強度が極めて優れていること、およびポットライフが長いことを特徴とする。
【0036】
本発明に従ったエポキシ樹脂組成物は、電気工学用絶縁システム〔特に屋外環境にさらされる絶縁システム(例えば、屋外用の絶縁体やブッシング、屋外用の計器用変圧器や配電変圧器、屋外スイッチギヤ、リクローザー、およびロコモティブインシュレーター[locomotive insulators])〕の製造に対して有利に使用することができる。
【0037】
本発明の組成物はさらに、屋外環境にさらされる他の製品(例えば、送水管や水タンク等の複合製品、または空心リアクトル用の塗料など)の製造に対しても使用することができる。
【0038】
本発明に従ったエポキシ樹脂組成物から製造される製品のガラス転移温度は、例えば70℃~150℃の範囲で要望通りに調整することができる。
一般には、絶縁システムは、キャスティング法、カプセル封入法、および含浸法〔例えば、重力キャスティング、真空キャスティング、自動圧力ゲル化(APG)、真空圧力ゲル化(VPG)、および注入など〕によって製造される。
【0039】
電気工学用絶縁システム(例えばキャストエポキシ樹脂絶縁体)を製造するための代表的な方法は、自動圧力ゲル化法(APG法)である。APG法は、エポキシ樹脂を硬化・成形することによって、エポキシ樹脂で造られるキャスティング物品を短時間で製造することを可能にする。APGプロセスを実施するためのAPG装置は一般に、一対のモールド(以後、単にモールドと呼ぶ)、パイプを介してモールドに連結された樹脂混合・脱気タンク、およびモールドを開いたり閉じたりするための開閉システムを含む。
【0040】
硬化性エポキシ樹脂組成物を高温のモールド中に注入する前に、エポキシ樹脂と硬化剤とを含む硬化性組成物の成分を、注入のために調製しなければならない。
プレフィルドシステム(pre-filled system:既にフィラーを含有する成分を含むシス
テム)の場合、沈降を防止して均一な配合物を得るために、供給タンク中の成分を加熱しながら撹拌する必要がある。均一化させた後、成分を合わせて混合器中に移し、高温・減圧にて混合して、配合物を脱気する。脱気した混合物を、引き続き高温のモールド中に注入する。
【0041】
非プレフィルドシステム(non-pre-filled system)の場合、一般には、エポキシ樹脂
成分と硬化剤成分を、高温・減圧にてフィラーと個別に混合して、エポキシ樹脂の予備混合物と硬化剤の予備混合物を調製する。必要に応じて、あらかじめさらなる添加剤を加えることもできる。さらなる工程にて、2つの成分を、一般には高温・減圧で混合することによって合わせて最終的な反応混合物を形成させる。引き続き、脱気した混合物をモール
ド中に注入する。
【0042】
典型的なAPG法では、予熱・乾燥した金属導体すなわち挿入物を、真空チャンバー中に置かれたモールド中に配置する。開閉システムによってモールドを閉じた後、樹脂混合タンクに圧力をかけることによって、エポキシ樹脂組成物を、モールドの底部に配置された入口からモールド中に注入する。注入する前に、通常は樹脂組成物を40~60℃の適度な温度に保持して、適切なポットライフ(エポキシ樹脂の使用可能時間)が確実に得られるようにし、このとき同時に、キャスティング物品を適度に短い時間で得るために、モールドの温度を約120℃以上に保持する。エポキシ樹脂組成物を高温のモールド中に注入した
後、樹脂組成物の硬化が進み、このとき同時に、樹脂混合タンク中のエポキシ樹脂に加える圧力を約0.1~0.5メガパスカルに保持する。
【0043】
樹脂10kg超で造られる大形のキャスティング物品を、APG法によって短時間(例えば20~60分)で適切に製造することができる。通常は、モールドから取り出されるキャスティング物品を別個のキュアオーブン中でポストキュアして、エポキシ樹脂の反応を完全なものにする。
【0044】
本発明はさらに、(A)エステル基を含有しない少なくとも1種の脂環式グリシジル型エポキシ樹脂;(B)脂肪族アミン、脂環式アミン、およびジシアンジアミドの群から選択される少なくとも1種の硬化剤;ならびに(C)少なくとも1種のシラン処理フィラー;を含む多成分熱硬化性樹脂組成物を使用する屋外用製品の製造方法に関し、このとき上記の定義、実施態様、および優先性が当てはまる。
【0045】
本発明の製造方法の一実施態様では、前記屋外用製品は、電気工学用絶縁システム、特に、キャスティング法、ポッティング法、カプセル封入法、および含浸法〔例えば、重力キャスティング法、真空キャスティング法、自動圧力ゲル化(APG)法、真空圧力ゲル化(VPG)法、フィラメント・ワインディング法、引抜成形法、および注入法など〕によって製造される絶縁システムである。好ましいのは自動圧力ゲル化(APG)法と真空キャスティング法、特に自動圧力ゲル化(APG)法である。
【0046】
本発明の製造方法の他の実施態様では、屋外用製品は、送水管や水タンク等の複合製品、または空心リアクトル用の塗料である。
電気工学用絶縁システムの製造は、自動圧力ゲル化(APG)法または真空キャスティング法によって行われることが多い。無水物硬化をベースとする公知のエポキシ樹脂組成物を使用する場合、このような方法は一般に、エポキシ樹脂組成物をその最終的な不溶解性三次元構造物に造形するに足る時間(通常は最大で10時間)にわたってモールド中でキュアーする工程、および硬化エポキシ樹脂組成物の最終的な物理的・機械的特性を発現させるために、脱型した物品を高温でポストキュアーする工程、を含む。このような後硬化工程は、物品の形状とサイズに応じて、最大で30時間かかることがある。
【0047】
本発明の製造方法を実施するとき、硬化プロフィールと収縮を、所望の仕方で有利に制御することができる。無水物硬化をベースとする公知のエポキシ樹脂組成物と比較して、より短い硬化時間およびより低いモールド温度とキュアー温度を適用することができる。さらに、ポストキュアー時間を短縮することができて、ポストキュアー温度を下げることができ、こうしたことにより処理時間とエネルギーが節約される。ポストキュアー処理は省くこともできる。熱硬化性エポキシ樹脂組成物のポットライフは、当業界に公知の一般的な応用手法を使用するのに十分である。当業者に公知のエポキシ樹脂組成物と比較して、本発明の方法に従った熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、呼吸器が感知する無水物が使用されていないので、臭気の排出がより少ないことを特徴とする。本発明に従った製造方法によって、硬化プロフィール(すなわち、モールド内のゲル化フロント)を制御するため
により低い発熱ピーク温度がもたらされ、このことは無水物硬化をベースとする公知のエポキシ樹脂組成物を使用して行われる製造方法と同様である。
【0048】
本発明の製造方法は、特に、優れた機械的・電気的・誘電的特性を示すケース入り製品を製造するのに有用である。
従って本発明は、本発明の製造方法によって得られる絶縁システム製品に関する。製品のガラス転移温度は、高温硬化無水物ベースの公知の熱硬化性エポキシ樹脂組成物の場合と同じ範囲である。製品の引張強度は70MPa以上である。
【0049】
本発明に従って製造される絶縁システム製品の有望な用途は、例えば、中電圧セクター中のベース絶縁体;屋外電源スイッチ、測定用変換器、ブッシング、および過電圧プロテクターに関連した絶縁体の製造において;スイッチギヤ構造物において;電源スイッチと電気機械において;そしてトランジスタと他の半導体素子のための及び/又は電気設備を
含浸させるための被覆材料として;である。
【0050】
本発明の方法に従って製造される製品は特に、中電圧スイッチギヤと高電圧スイッチギヤの用途および計器用変圧器(6kV~143kV)に使用される。
【実施例
【0051】
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。特に明記しない限り、温度は摂氏温度で、部は重量部で表示し、パーセント値は重量%に関する。重量部は、キログラム対リットルの比における容量部に関する。
【0052】
成分の説明
・CY184: 5.8~6.1Eq/kgのエポキシ当量を有する低粘度の脂環式エポキシ樹脂。スイス
のHuntsman社から市販。
・EP4080E: 4.3~5Eq/kgのエポキシ当量を有する低粘度の水素化ビスフェノールAエポ
キシ樹脂。日本のADEKA社から市販。
・YX8000: 4.5~5.2Eq/kgのエポキシ当量を有する低粘度の水素化ビスフェノールAエポキシ樹脂。日本の三菱ケミカル社から市販。
・DY-C: 1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンジグリシジルエーテル、低粘度
のエポキシ樹脂。スイスのHuntsman社から市販。
・HY1235BD: 液状の変性脂環式無水物硬化剤。ドイツのHuntsman社から市販。
・DY062: 液状の第三アミン。触媒。中国のHuntsman社から市販。
・EC331: ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン。アミン硬化剤。中国のBASF社から市販。
・DCH99: 1,2-ジアミノシクロヘキサン。アミン硬化剤。中国のHuntsman社から市販。
・Aradur42: イソホロンジアミン。アミン硬化剤。中国のHuntsman社から市販。
・W12EST: エポキシシランで処理したシリカ。フィラー。ドイツのQuarzwerke社から市
販。
・W12AST: アミノシランで処理したシリカ。フィラー。ドイツのQuarzwerke社から市販

・Dyhard100S: ジシアンジアミド。アミン硬化剤。中国のAlzChem社から市販。
【0053】
比較例1
CY184をオーブン中にて60℃で30分予熱した。100gの予熱したCY184をスチール製容器中の90gのHY1235BDに、撹拌しながら約5分で加えた。撹拌を止め、0.6gのDY062を混合物に
加え、撹拌を約2分続けた。再び撹拌を止め、約1分減圧にすることによって、容器中の組成物を慎重に脱気した。少量の混合物を使用して、ゲルノーム(Gelnorm)で60℃にてゲ
ル化時間を測定した。混合物の主要部分を高温のアルミニウム製モールド中に注入し、80
℃に予熱し、離型剤QZ13で処理して4mm厚さの吸水試験用サンプルを作製した。モールド
中の組成物をオーブン中にて80℃で6時間キャアーし、そして140℃でさらに10時間キュアーした。硬化後、モールドからサンプルを取り出し、周囲温度に自然冷却した。
【0054】
比較例2
CY184をオーブン中にて80℃で30分予熱した。200gの予熱したCY184をスチール製容器中の180gのHY1235BDに、撹拌しながら約5分で加えた。次いで撹拌混合物に740gのW12ESTを
、少量ずつ20分以内に加えた。引き続き、容器中の組成物をオーブン中にて80℃で0.5時
間予熱し、オーブンから容器を取り出し、1.2gのDY062を加え、そして撹拌を約5分続けた。撹拌を止め、約2~3分減圧にすることによって、容器中の組成物を慎重に脱気した。組成物を高温のアルミニウム製モールド中に注入し、80℃に予熱し、離型剤QZ13で処理して4mm、6mm、および10mm厚さの試験用サンプルを作製した。約1~2分減圧にすることによってモールド中の組成物を慎重に脱気し、オーブン中にて80℃で6時間キュアーし、そして140℃でさらに10時間キュアーした。硬化後、モールドからサンプルを取り出し、周囲温度に自然冷却した。
【0055】
比較例3
CY184をオーブン中にて80℃で30分予熱した。100gの予熱したCY184をスチール製容器中の36gのEC331に、撹拌しながら約3分で加えた。撹拌を止め、約30秒減圧にすることによ
って、容器中の組成物を慎重に脱気した。少量の混合物を使用して、ゲルノームで60℃にてゲル化時間を測定した。混合物の主要部分を高温のアルミニウム製モールド中に注入し、60℃に予熱し、離型剤QZ13で処理して4mm厚さの吸水試験用サンプルを作製した。モー
ルド中の組成物をオーブン中にて60℃で6時間キャアーし、そして140℃でさらに10時間キュアーした。硬化後、モールドからサンプルを取り出し、周囲温度に自然冷却した。
【0056】
比較例4
CY184とW12ESTをオーブン中にて60℃で30分予熱した。200gの予熱したCY184をスチール製容器中に供給し、528gのW12ESTを、撹拌しながら少量ずつ20分以内で加えた。引き続き、容器中の組成物をオーブン中にて60℃で30分加熱し、オーブンから容器を取り出し、約15分減圧にすることによって組成物を慎重に脱気した。容器中の組成物を再びオーブン中にて60℃でさらに15分加熱し、そしてオーブンから取り出した。72gのEC331を組成物に加え、得られた組成物を約3分撹拌した。撹拌を止め、約1分減圧にすることによって容器中の組成物を慎重に脱気した。組成物を高温のアルミニウム製モールド中に注入し、60℃に予熱し、離型剤QZ13で処理して4mm、6mm、および10mm厚さの試験用サンプルを作製した。約1分減圧にすることによってモールド中の組成物を慎重に脱気し、オーブン中にて60℃
で6時間キュアーし、そして140℃でさらに10時間キュアーした。引き続きモールドからサンプルを取り出し、周囲温度に自然冷却した。
【0057】
比較例5
EC331を同量のDCH99で置き換えたこと以外は、比較例3を繰り返した。
比較例6
EC331を同量のDCH99で置き換えたこと以外は、比較例4を繰り返した。
【0058】
比較例7
EC331を同量のイソホロンジアミンで置き換えたこと以外は、比較例3を繰り返した。
比較例8
EC331を同量のイソホロンジアミンで置き換えたこと以外は、比較例4を繰り返した。
【0059】
比較例9
1000gのCY184、30gのDyhard100S、および3gのDY062を真空分散機/混合機(vacuum dis
perser & mixer)の3リットルチャンバー中に入れ、チャンバーを60℃に加熱した。混合/分散は、均一な組成物が得られるまで、200rpmの混合機速度と1500rpmの分散機速度で減
圧下にて2時間行った。引き続き、2000gの予熱した乾燥フィラーW12ESTを組成物に加えた。均一な組成物が得られるまで、同じ条件下で混合/分散を1時間続けた。次いで80℃に予熱した金属プレートモールド中に組成物を加圧下で注入して、4mm、6mm、および10mm厚さのサンプルを作製した。充填したモールドをオーブン中に配置して、組成物を120℃で3時間プレキュアーし、そして160℃で10時間ポストキュアーした。硬化後、モールドからサ
ンプルを取り出し、周囲温度に自然冷却した。
【0060】
比較例10
YX8000をオーブン中にて60℃で30分予熱した。100gの予熱したYX8000をスチール製容器中の30gのEC331に、撹拌しながら約3分で加えた。撹拌を止め、約30秒減圧にすることに
よって、容器中の組成物を慎重に脱気した。少量の混合物を使用して、ゲルノームで60℃にてゲル化時間を測定した。混合物の主要部分を高温のアルミニウム製モールド中に注入し、60℃に予熱し、離型剤QZ13で処理して4mm厚さの吸水試験用サンプルを作製した。モ
ールド中の組成物をオーブン中にて60℃で6時間キャアーし、そして160℃でさらに10時間キュアーした。硬化後、モールドからサンプルを取り出し、周囲温度に自然冷却した。
【0061】
実施例1
YX8000とW12ESTをオーブン中にて60℃で30分予熱した。200gの予熱したYX8000をスチール製容器中に供給し、504.7gのW12ESTを、撹拌しながら少量ずつ20分以内に加えた。引き続き、容器中の組成物をオーブン中にて60℃で30分加熱し、オーブンから容器を取り出し、約15分減圧にすることによって組成物を慎重に脱気した。容器中の組成物を再びオーブン中にて60℃でさらに15分加熱し、次いでオーブンから取り出した。60gのEC331を組成物に加え、得られた組成物を約3分撹拌した。撹拌を止め、約1~2分減圧にすることによっ
て容器中の組成物を再び慎重に脱気した。組成物を高温のアルミニウム製モールド中に注入し、60℃に予熱し、離型剤QZ13で処理して4mm、6mm、および10mm厚さの試験用サンプルを作製した。次いで約1分減圧にすることによってモールド中の組成物を慎重に脱気し、
オーブン中にて60℃で6時間キュアーし、そして160℃でさらに10時間キュアーした。次いでモールドからサンプルを取り出し、周囲温度に自然冷却した。
【0062】
実施例2
1000gのYX8000、50gのDyhard100S、および3gのDY062を真空分散機&混合機の3リットル
チャンバー中に入れ、チャンバーを60℃に加熱した。混合/分散は、均一な組成物が得ら
れるまで、200rpmの混合機速度と1500rpmの分散機速度で減圧下にて2時間行った。引き続き、2050gの予熱した乾燥フィラーW12ESTを組成物に加えた。均一な組成物が得られるま
で、同じ条件下で混合/分散を1時間続けた。次いで80℃に予熱した金属プレートモールド中に組成物を加圧下で注入して、4mm、6mm、および10mm厚さのサンプルを作製した。充填したモールドをオーブン中に配置して、組成物を120℃で3時間プレキュアーし、そして160℃で10時間ポストキュアーした。硬化後、モールドからサンプルを取り出し、周囲温度
に自然冷却した。
【0063】
比較例11
EP4080Eをオーブン中にて60℃で30分予熱した。100gの予熱したEP4080Eをスチール製容器中の14gのDCH99に、撹拌しながら約3分で加えた。撹拌を止め、約30秒減圧にすること
によって、容器中の組成物を慎重に脱気した。少量の混合物を使用して、ゲルノームで60℃にてゲル化時間を測定した。混合物の主要部分を高温のアルミニウム製モールド中に注入し、60℃に予熱し、離型剤QZ13で処理して4mm厚さの吸水試験用サンプルを作製した。
モールド中の組成物をオーブン中にて60℃で6時間キャアーし、そして160℃でさらに10時間キュアーした。硬化後、モールドからサンプルを取り出し、周囲温度に自然冷却した。
【0064】
実施例3
EP4080EとW12ESTをオーブン中にて60℃で30分予熱した。200gの予熱したEP4080Eをスチール製容器中に供給し、442.6gのW12ESTを、撹拌しながら少量ずつ20分以内で加えた。引き続き、容器中の組成物をオーブン中にて60℃で30分加熱し、オーブンから容器を取り出し、約15分減圧にすることによって組成物を慎重に脱気した。容器中の組成物を再びオーブン中にて60℃でさらに15分加熱し、そしてオーブンから取り出した。28gのDCH99を組成物に加え、得られた組成物を約3分撹拌した。撹拌を止め、約1~2分減圧にすることによ
って容器中の組成物を再び慎重に脱気した。組成物を高温のアルミニウム製モールド中に注入し、60℃に予熱し、離型剤QZ13で処理して4mm、6mm、および10mm厚さの試験用サンプルを作製した。約1分減圧にすることによってモールド中の組成物を慎重に脱気し、オー
ブン中にて60℃で6時間キュアーし、そして160℃でさらに10時間キュアーした。引き続きモールドからサンプルを取り出し、周囲温度に自然冷却した。
【0065】
比較例12
EP4080Eをオーブン中にて60℃で30分予熱した。100gの予熱したEP4080Eをスチール製容器中の20.5gのAradur42に、撹拌しながら約3分で加えた。撹拌を止め、約30秒減圧にすることによって、容器中の組成物を慎重に脱気した。少量の混合物を使用して、ゲルノームで60℃にてゲル化時間を測定した。混合物の主要部分を高温のアルミニウム製モールド中に注入し、60℃に予熱し、離型剤QZ13で処理して4mm厚さの吸水試験用サンプルを作製し
た。モールド中の組成物をオーブン中にて60℃で6時間キャアーし、そして160℃でさらに10時間キュアーした。硬化後、モールドからサンプルを取り出し、周囲温度に自然冷却した。
【0066】
実施例4
EP4080EとW12ESTをオーブン中にて60℃で30分予熱した。200gの予熱したEP4080Eをスチール製容器中に供給し、467.8gのW12ESTを、撹拌しながら少量ずつ20分以内で加えた。引き続き、容器中の組成物をオーブン中にて60℃で30分加熱し、オーブンから容器を取り出し、約15分減圧にすることによって組成物を慎重に脱気した。容器中の組成物を再びオーブン中にて60℃でさらに15分加熱し、そしてオーブンから取り出した。41gのAradur42を
組成物に加え、得られた組成物を約3分撹拌した。撹拌を止め、約1~2分減圧にすること
によって容器中の組成物を再び慎重に脱気した。組成物を高温のアルミニウム製モールド中に注入し、60℃に予熱し、離型剤QZ13で処理して4mm、6mm、および10mm厚さの試験用サンプルを作製した。約1分減圧にすることによってモールド中の組成物を慎重に脱気し、
オーブン中にて60℃で6時間キュアーし、そして160℃でさらに10時間キュアーした。引き続きモールドからサンプルを取り出し、周囲温度に自然冷却した。
【0067】
比較例13
DY-Cをオーブン中にて60℃で30分予熱した。100gの予熱したDY-Cをスチール製容器中の37.5gのEC331に、撹拌しながら約3分で加えた。撹拌を止め、約30秒減圧にすることによ
って、容器中の組成物を慎重に脱気した。少量の混合物を使用して、ゲルノームで60℃にてゲル化時間を測定した。混合物の主要部分を高温のアルミニウム製モールド中に注入し、60℃に予熱し、離型剤QZ13で処理して4mm厚さの吸水試験用サンプルを作製した。モー
ルド中の組成物をオーブン中にて60℃で6時間キャアーし、そして160℃でさらに10時間キュアーした。硬化後、モールドからサンプルを取り出し、周囲温度に自然冷却した。
【0068】
実施例5
DY-CとW12ESTをオーブン中にて60℃で30分予熱した。200gの予熱したDY-Cをスチール製容器中に供給し、533.8gのW12ESTを、撹拌しながら少量ずつ20分以内で加えた。引き続き、容器中の組成物をオーブン中にて60℃で30分加熱し、オーブンから容器を取り出し、約
15分減圧にすることによって組成物を慎重に脱気した。容器中の組成物を再びオーブン中にて60℃でさらに15分加熱し、そしてオーブンから取り出した。75gのEC331を組成物に加え、得られた組成物を約3分撹拌した。撹拌を止め、約1~2分減圧にすることによって容
器中の組成物を再び慎重に脱気した。組成物を高温のアルミニウム製モールド中に注入し、60℃に予熱し、離型剤QZ13で処理して4mm、6mm、および10mm厚さの試験用サンプルを作製した。約1分減圧にすることによってモールド中の組成物を慎重に脱気し、オーブン中
にて60℃で6時間キュアーし、そして160℃でさらに10時間キュアーした。引き続きモールドからサンプルを取り出し、周囲温度に自然冷却した。
【0069】
実施例6
1000gのYX8000、50gのDyhard100S、および3gのDY062を真空分散機&混合機の3リットル
チャンバー中に入れ、チャンバーを60℃に加熱した。混合/分散は、均一な組成物が得ら
れるまで、200rpmの混合機速度と1500rpmの分散機速度で減圧下にて2時間行った。次いで80℃に予熱した金属プレートモールド中に組成物を加圧下で注入して、4mm、6mm、および10mm厚さのサンプルを作製した。充填したモールドをオーブン中に配置して、組成物を120℃で3時間プレキュアーし、そして160℃で10時間ポストキュアーした。硬化後、モール
ドからサンプルを取り出し、周囲温度に自然冷却した。
【0070】
【表1】
【0071】
比較例2は無水物硬化をベースとしており、キャスティング、ポッティング、およびカプセル封入用に使用する上で最新技術の組成物を表わしている。比較例2は、使用する無水物がR42ラベルであること(吸入によって感作を引き起こす場合がある)およびSVHCリスト表示であることを除いては、全ての面において良好に機能した。
【0072】
比較例4、6、8、および9は、カルボン酸エステル基を含むエポキシ樹脂をベースとしている。これらの組成物に対しては高い吸水量が観察され、水拡散破壊強度については不合格となった。さらに、比較例4、6、および8の組成物に対しては、許容できないポットラ
イフが観察された。
【0073】
実施例1~5の本発明の組成物は、長いポットライフと低い吸水量を示し、水拡散試験に
合格した。機械的性能は、現在使用されている最新技術のシステムと同等であった。
【0074】
【表2】
【0075】
実施例6に係る本発明の組成物は低い吸水量を示した。
[1]
(A)エステル基を含有しない少なくとも1種の脂環式グリシジル型エポキシ樹脂;
(B)脂肪族アミン、脂環式アミン、およびジシアンジアミドの群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤;ならびに
(C)少なくとも1種のシラン処理フィラー;
を含む、多成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
[2]
前記少なくとも1種のエポキシ樹脂(A)が、1,2-シクロヘキサンジオールのポリグリシジルエーテル、1,3-シクロヘキサンジオールのポリグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオール(キニトール)のポリグリシジルエーテル、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンのポリグリシジルエーテル、1,1-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキセ-3-エンのポリグリシジルエーテル、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン(水
素化ビスフェノールF)のポリグリシジルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(水素化ビスフェノールA)のポリグリシジルエーテル、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン(水素化ビスフェノールC)のポリグリシ
ジルエーテル、1,1-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)エタン(水素化ビスフェノールE)のポリグリシジルエーテル、1,3-シクロペンタンジオールのポリグリシジルエーテル、4,4'-ジヒドロキシジシクロヘキサンのポリグリシジルエーテル、2,6-ビス(4'-ヒドロキシシクロヘキシルメチル)-1-ヒドロキシシクロヘキサンのポリグリシジルエーテル、1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサンのポリグリシジルエーテル、1,2,2-トリス(4-ヒド
ロキシシクロヘキシル)エタンのポリグリシジルエーテル、または3~10個のシクロヘキ
サン環を有する水素化フェノール-ホルムアルデヒド縮合生成物のポリグリシジルエーテ
ルである、[1]に記載の組成物。
[3]
前記少なくとも1種のエポキシ樹脂(A)が、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンのポリグリシジルエーテルまたは水素化ビスフェノールAのポリグリシジルエーテルである、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]
前記少なくとも1種の硬化剤(B)が、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N,N-ジメチルプロピレンジアミン-1,3、N,N-ジエチルプロピレンジアミン-1,3、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-
アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2
,4-ビス(4-アミノシクロヘキシルメチル)シクロヘキシルアミン、2,2-ビス(4-アミノ
シクロヘキシル)プロパン、4,4'-ビス(4-シクロヘキシルメチル)ジシクロヘキシルア
ミン、2,2-ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビ
ス(メチルアミン)(ノルボルナンジアミン)、3,3,5-トリメチル-N-(プロパン-2-イル)-5-[(プロパン-2-イルアミノ)メチル]シクロヘキシルアミン、Jefflink(登録商標)JL 754、4-アミノシクロヘキシル-4-ヒドロキシシクロヘキシルメタン、N-アミノエチル
ピペラジン、またはジシアンジアミドである、[1]~[3]のいずれか一項に記載の組成物。
[5]
前記少なくとも1種の硬化剤(B)が、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、3-アミノ
メチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、またはジシア
ンジアミドである、[1]~[4]のいずれか一項に記載の組成物。
[6]
前記少なくとも1種のシラン処理フィラーが、ケイ砂、石英粉末、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、Mg(OH)2、Al(OH)3、ドロマイト[
CaMg(CO32]、Al(OH)3、AlO(OH)、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ドロマイト、白亜、炭酸カルシウム、バライト、石膏、ハイドロマグネサイト、ゼオライト、滑石、雲母、カオリン、または珪灰石をシラン処理することによって得られる、[1]~[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[7]
前記少なくとも1種のシラン処理フィラーが、石英、シリカ、珪灰石、または炭酸カルシウムをシラン処理することによって得られる、[1]~[6]のいずれか一項に記載の組成物。
[8]
(A)1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンのジグリシジルエーテルと水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルの群から選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂;
(B)1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、およびジシアンジアミドの群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤;ならびに
(C)石英、シリカ、珪灰石、および炭酸カルシウムの群から選ばれる少なくとも1種のシラン処理フィラー;
を含む、[1]~[7]のいずれか一項に記載の組成物。
[9]
(A)エステル基を含有しない少なくとも1種の脂環式グリシジル型エポキシ樹脂;
(B)脂肪族アミン、脂環式アミン、およびジシアンジアミドの群から選ばれる少なくとも1種の硬化剤;ならびに
(C)少なくとも1種のシラン処理フィラー;
を含む多成分熱硬化性樹脂組成物を使用する、屋外用製品の製造方法。
[10]
屋外用製品が、キャスティング法、ポッティング法、カプセル封入法、または含浸法によって製造される電気工学用絶縁システムである、[9]に記載の製造方法。
[11]
屋外用製品が、複合製品または空心リアクトルの塗料である、[9]に記載の製造方法

[12]
電気工学用絶縁システムが、自動圧力ゲル化(APG)または真空キャスティングによって製造される、[10]に記載の製造方法。
[13]
[9]~[12]のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる製品。
[14]
中電圧スイッチギャ用途と高電圧スイッチギャ用途のための、および中電圧計器用変圧器と高電圧計器用変圧器としての、[10]または[12]に記載の製品の使用。
[15]
(A)エステル基を含有しない少なくとも1種の脂環式グリシジル型エポキシ樹脂;および
(B)硬化剤としてのジシアンジアミド;
を含む、多成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物。