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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】眼薬徐放性製剤およびその利用
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/00 20060101AFI20230802BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20230802BHJP
   A61K 38/13 20060101ALI20230802BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230802BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230802BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230802BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230802BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20230802BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230802BHJP
   A61L 31/16 20060101ALN20230802BHJP
【FI】
A61K9/00
A61K31/165
A61K38/13
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/34
A61K47/36
A61L31/12 100
A61P27/02
A61L31/16
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022093373
(22)【出願日】2022-06-09
(62)【分割の表示】P 2019516703の分割
【原出願日】2017-09-30
(65)【公開番号】P2022125050
(43)【公開日】2022-08-26
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】62/402,938
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516019091
【氏名又は名称】マティ セラピューティクス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】ウッケーデ,ディーパンク
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ワイズマン,デイビッド
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-510477(JP,A)
【文献】特表2013-518049(JP,A)
【文献】特表2010-513555(JP,A)
【文献】特表平09-509184(JP,A)
【文献】国際公開第2016/037169(WO,A1)
【文献】特表2012-515628(JP,A)
【文献】特表2006-500328(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0196905(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネパフェナクを局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤であって、
約30から約15%(w/w)のポリカプロラクトンと、約5から約15%(w/w)のポリエチレングリコール(PEG)ポリマーと、約1から約15%w/wのチロキサポールと、約60から約70%(w/w)のネパフェナクと、を含む、
製剤。
【請求項2】
前記ポリカプロラクトンは約17から21%(w/w)で存在し、前記PEGポリマーは約10から15%で存在し、前記チロキサポールは約1から10%(w/w)で存在し、前記ネパフェナクは約68から70%(w/w)で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記PEGポリマーは、PEG400である、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記PEG400は、約10%(w/w)で存在する、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
前記ネパフェナクは、約66%(w/w)で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
前記チロキサポールは、約4%(w/w)で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
前記ポリカプロラクトンは、約20%(w/w)で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
約20%(w/w)のポリカプロラクトンと、約10%(w/w)のポリエチレングリコール(PEG)ポリマーと、約4%w/wのチロキサポールと、約66%(w/w)のネパフェナクとを含み、前記製剤は、約2週間から約4週間の期間中、毎日治療的に有効なレベルで前記ネパフェナクを放出するように適合される、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
前記固体マトリクスは、医用デバイスとして構成される、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
前記医用デバイスは、実質的に円柱形状を有する、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記医用デバイスは、眼内に、または眼に隣接して配置するように構成される、請求項9に記載の製剤。
【請求項12】
前記医用デバイスは、涙小管内に配置するように構成される、請求項9に記載の製剤。
【請求項13】
前記固体マトリクスの少なくとも部分的にわたって配置される鞘部本体をさらに含む、請求項9に記載の製剤。
【請求項14】
前記固体マトリクスは、メタクリレートポリマーまたはモノマーを含まない、請求項1に記載の製剤。
【請求項15】
ネパフェナクを局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤であって、
約20%(w/w)のポリカプロラクトンと、約10%(w/w)のポリエチレングリコール(PEG)ポリマーと、約4%w/wのチロキサポールと、約66%(w/w)のネパフェナクと、を含む、
製剤。
【請求項16】
前記製剤は、約2週間から約4週間の期間中、毎日治療的に有効なレベルで前記ネパフェナクを放出するように適合される、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
前記固体マトリクスの少なくとも部分的にわたって配置される鞘部本体をさらに含む、請求項15に記載の製剤。
【請求項18】
ネパフェナクを局所的に送達するための薬剤挿入物であって、
a)約20%(w/w)のポリカプロラクトンと、約10%(w/w)のポリエチレングリコール(PEG)ポリマーと、約4%w/wのチロキサポールと、約66%(w/w)のネパフェナクと、を含む、固体マトリクスと、
b)前記固体マトリクスの少なくとも部分的にわたって配置される鞘部本体と、
を含む、薬剤挿入物。
【請求項19】
涙小管内に配置するように構成される、請求項18に記載の薬剤挿入物。
【請求項20】
疼痛の治療用に、約2週間から約4週間の期間中、毎日治療的に有効なレベルで前記ネパフェナクを放出するように適合される、請求項18に記載の薬剤挿入物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対するクロスリファレンス]
本出願は、2016年9月30日に出願された米国仮特許出願整理番号62/402,938号の優先権を享受する権利を主張し、米国仮特許出願整理番号62/402,938号の内容は、その全体において、参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願は、概して、眼に眼薬を局所的に送達するための固体マトリクス徐放製剤および眼病を治療する方法のためのその利用に関する。
【背景技術】
【0003】
涙腺移植片は、(ドライアイなどの症状を防ぐために)涙の排出を阻害するためか、または眼に放出するためのある量の薬剤を包含するためかの、いずれかの目的で眼の涙点および関連する涙小管に挿入されるデバイスである。
【0004】
図1図2は、眼100に関連付けられる解剖学的組織構造の例の図を図示する。図示された解剖学的組織構造のうちのある構造は、本明細書で論じられる様々な涙腺移植片および方法を用いて治療するのに適したものであり得る。眼100は、三層を有する壁を含む球構造であって、その三層とは、外側の強膜102、中間の脈絡膜104および内側の網膜106である。強膜102は、内側の層を保護する固い繊維状のコーティングを含む。それは、角膜108としてよく知られる、前面における透明な領域を除いてほぼ白色であり、それによって、眼100に光が入射することを可能とする。
【0005】
強膜102の内側に位置する脈絡膜104は、多数の血管を含み、色素性の虹彩110として、眼100の前面で改質される。両凸レンズ112は、瞳孔のちょうど背後に位置する。レンズ112の背後のチャンバ114は、硝子体液、ゼラチン状物質で満たされる。前方および後方のチャンバ116は、角膜108と虹彩110との間に其々位置し、眼房水で満たされる。眼100の後ろには、光検出網膜106がある。
【0006】
角膜108は、眼100の後ろに画像を伝達する光学的に透明な組織である。それは、血管組織を含み、血管組織には、角膜108と強膜102との間の接合を覆う血管からと、涙液および眼房水で浸すことを介して、栄養分および酸素が供給される。角膜108は、眼100に薬剤を浸透させるための経路を含む。
【0007】
図2を参照すると、分泌系230、分配系、および排出系を含む涙腺排出器官系を含む眼100に関連する他の解剖学的組織構造が図示される。分泌系230は、瞬きや涙の蒸発による温度変化によって刺激される分泌細胞と、輸出性副交感神経供給を有し、物理的または感情的な刺激に応じて涙を分泌する反射分泌細胞とを含む。分配系は、瞼202と、開いた眼の瞼周囲の涙半月部とを含み、これらは、瞬きによって眼表面上に涙を広げ、それによって、乾燥領域が広がることを軽減する。
【0008】
涙腺排出系の排出系は、流動と排出のために、涙点、涙小管、涙嚢204、および涙管206を含む。涙管206からは、涙および他の流動性物質が鼻涙系の経路に流れ出す。涙小管は、上部(上位)涙小管208と、下部(下位)涙小管210とを含み、これらは、其々、上部涙点212および下部涙点214にて終端する。上部涙点212および下部涙点214は、結膜嚢218近傍の睫毛と涙腺部分との接合216において、眼瞼縁の中央端においてわずかに上昇する。上部涙点212および下部涙点214は、組織の連結環によって包囲された、ほぼ円形またはわずかに楕円形の開口である。涙点212および214の各々は、涙嚢204の入り口で互いに接合するために、涙小管の湾曲250においてより水平方向に曲がる前に、その其々の涙小管の垂直部分220、222につながる。涙小管208、210は、ほぼ管状の形状であり、弾性組織によって包囲された重層扁平上皮によって覆われ、これによって、涙小管を拡張することが可能となる。図示されるように、涙小管膨大部252は、各々の涙小管湾曲250の外端の近傍に存在する。
【0009】
薬剤送達、例えば、眼薬の送達の領域では、患者および医者は様々な課題に直面している。特に、治療の其々の特性(複数の注入、一日につき複数の目薬の点眼)、関連するコスト、患者の服薬順守の欠如は、利用できる治療の効能に顕著に影響を与えることがあり、視力の低下および多くの場合には失明につながる。
【0010】
例えば、目薬の点眼など、投薬の上での患者の服薬順守は、不安定であり得、ある場合には、指示された処方計画に患者が従わないこともある。服薬順守の欠如は、目薬点眼の失敗、無効になるような技術(必要量未満の点眼)、目薬の過度の使用(全身性の副作用につながる)、および非処方の目薬の使用または複数種類の目薬を必要とする処方計画に従う上での失敗を含み得る。薬剤のうちの多くは、一日に四回まで、患者に点眼を要求することがある。
【0011】
従来の薬剤送達の方法は、目の表面に局所的に点眼薬を適用することである。局所的な目薬は、効果的ではあっても、効率的にすることができない。例えば、点眼薬が目に滴下されるとき、しばしば結膜嚢(すなわち、眼と関連する瞼との間のポケット)を満たし過ぎ、眼瞼縁での溢出や頬上への流出に起因する相当量の点眼薬の喪失を引き起こす。さらには、眼表面上に残る点眼薬の大部分は、涙小管内へ、また涙小管を通って洗い流され得、それによって、眼を治療することが可能になる前に薬剤の濃度を希釈することになる。さらに、ある場合には、局所的に適用された薬剤は、約2時間以内に眼に対する効果のピークを有し、その後、治療効果を維持するためには、薬剤のさらなる適用が実施されるべきである。
【0012】
眼の管理の難易度をより増すことには、被験者は、彼らの点眼薬を規定されたとおりに使用しないことがしばしばある。25%以上の点眼薬使用者による非順守率が以前報告されている。この順守率の低さは、例えば、忘却、または点眼薬によって引き起こされる最初のズキズキした痛みもしくは激しい痛み、および被験者による経験に起因し得る。人が自身の眼に点眼薬を滴下することは、目を保護するための正常反射という一つの理由もあって、困難であり得る。したがって、一つ以上の点眼は眼から外れることがある。高齢の被験者は、関節炎、不安定性および視力減退のために、点眼薬を滴下する上でさらなる問題を有し得る。小児科および精神医学での患者もまた同様に困難を引き起こす。
【0013】
眼薬送達に対する一つの将来有望なアプローチは、眼内または眼の近傍の組織に薬剤を放出する移植片を配置することである。しかしながら、所望の期間にわたって、治療量で特定の眼薬の徐放(持続的な放出)を提供することは、課題である。さらに、涙腺移植片の使用は、薬剤および徐放マトリクスを含むための容積の制限をもたらし、ここで、薬剤の溶出は、所望の期間にわたって、比較的一定かつ治療量の双方でなければならない。
【0014】
上記に照らして、上述の欠点のうちの少なくとも幾つかを克服する、ある眼薬の徐放を提供することが望まれている。
【0015】
なお、関連する技術として、特許文献1には、結膜円蓋に留置し、薬物を放出するための薬物負荷ナノメッシュウェファーであって、薬物としてトラボプロストを含み、PLGA(ポリラクチド-co-グリコリド)RG503H(Evonik)、ステアリン酸PEG40(Sigma-Aldrich)、F127(Spectrum)を含むナノメッシュウェファーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】国際公開第2016/037169号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
眼に眼薬を局所的に送達するための徐放製剤、その製剤を含む薬剤挿入物、薬剤送達システム、その製剤を製造する方法、眼に少なくとも2週間、眼薬を送達するための薬剤挿入物とその使用方法が本明細書に提供される。実施形態においては、少なくとも一つの疎水性ポリマーおよび少なくとも一つの親水性ポリマーであって、親水性ポリマーは、約20と25℃との間で液体であり、疎水性ポリマーは、親水性ポリマーよりも高い割合(%w/w)で存在する疎水性ポリマーおよび親水性ポリマーと、b)非イオン性界面活性剤と、c)眼薬とを含む、長期間、眼に眼薬を局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤が、本明細書に提供され、その製剤は、約2週間から約12週間の期間中、毎日、治療的に有効なレベルで眼薬を放出するように適合される。ある実施形態においては、製剤は、毎日少なくとも1ugの薬剤を溶出するように構成される。ある実施形態においては、製剤は、少なくとも2週間の期間中に毎日少なくとも2ugの薬剤を溶出するように構成される。
【0018】
実施形態においては、疎水性ポリマーは、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリ(D,L-乳酸グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリウレタン、ポリグリコール酸(PGA)またはその組み合わせから選択される。ある実施形態においては、疎水性ポリマーは、ポリカプロラクトンを含み、これは、15%(w/w)以上、または約15から約30%(w/w)で固体マトリクス内に存在し得る。
【0019】
実施形態においては、親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー、アクリレート誘導体化PEG(PEGDA)ポリマー、ポリサッカライドポリマー、親水性ポリ無水物、またはその組み合わせである。ある実施形態においては、親水性ポリマーはPEGポリマーを含み、ここで、PEGポリマーは、約200から1000の分子量(Mw)を有し得る。実施形態においては、PEGポリマーはPEG400を含む。ある実施形態においては、PEGポリマーは、15%(w/w)以下、または約5から約15%(w/w)で固体マトリクス内に存在する。
【0020】
実施形態においては、眼薬は、ネパフェナク、ブロムフェナク、サリチル酸塩、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ピロキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセン、またはナブメトンから選択される非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)である。代替的実施形態においては、眼薬は、コルチコステロイド、デキサメタゾン、ジフルプレドナート、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロン、フルオシノロン、コルチゾン、プレドニゾロン、またはフルメトロンから選択されるステロイド系抗炎症剤である。ある実施形態においては、眼薬は、抗緑内障薬またはドライアイを治療するための薬剤である。実施形態においては、眼薬はシクロスポリンAである。
【0021】
実施形態においては、NSAIDは、約60から約70%w/wで存在する。ある実施形態においては、NSAIDは、約50%から80%(w/w)で固体マトリクス内に存在し、疎水性ポリマーは、約15%から約25%(w/w)で存在するポリカプロラクトンポリマーであり、親水性ポリマーは、約5%から約15%で存在するPEGポリマーであり、非イオン性界面活性剤は、約1%から約15%で存在する。
【0022】
実施形態においては、非イオン性界面活性剤は、チロキサポール、Span(例えば、ソルビタン)、BRIJ(エチレン、ポリエチレン、またはポリオキシエチレン部分を含む界面活性剤)、ポリソルベートまたはその組み合わせである。ある実施形態においては、界面活性剤はチロキサポールを含む。ある他の実施形態においては、界面活性剤はポリソルベート80などのポリソルベートを含む。
【0023】
実施形態においては、眼薬はネパフェナクであり、約60から約70%(w/w)で存在し、固体マトリクスは、約30から約15%(w/w)のポリカプロラクトンと、約5から約15%(w/w)のPEG400と、約1から約15%のチロキサポールまたはポリソルベート80を含む。
【0024】
ある実施形態においては、a)少なくとも一つの疎水性ポリマーおよび少なくとも一つの親水性ポリマーであって、親水性ポリマーは20から25℃の間で液体であるPEGポリマーであり、疎水性ポリマーはポリカプロラクトンであって、ポリカプロラクトンは、PEGポリマーよりも高い割合(%w/w)で存在する、少なくとも一つの疎水性ポリマーおよび少なくとも一つの親水性ポリマーと、b)チロキサポールまたはポリソルベート80と、c)ネパフェナクと、を含む、固体眼薬を局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤が本明細書に提供され、その製剤は、約2週間から約12週間の期間中、毎日治療的に有効なレベルでネパフェナクを放出するように適合、または構成される。実施形態においては、PEGポリマーはPEG400であり、約5から約15%(w/w)で固体マトリクス内に存在し得る。実施形態においては、ポリカプロラクトンは、約15から約30%(w/w)で固体マトリクス内に存在する。ある他の実施形態においては、チロキサポールまたはポリソルベート80は、約2から約8%(w/w)で固体マトリクス内に存在し、ネパフェナクは、約55から75%(w/w)で固体マトリクス内に存在する。
【0025】
したがって、実施形態においては、a)約200から1000の分子量(Mw)を有するPEGポリマーであって、約10%(w/w)で固体マトリクス内に存在する、PEGポリマーと、b)約20%(w/w)で存在するポリカプロラクトンポリマーと、c)約4%で存在するチロキサポールまたはポリソルベート80と、c)約66%(w/w)で存在するネパフェナクと、を含む、固体眼薬を局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤が本明細書に提供され、この製剤は、約2週間から約12週間の期間中、毎日治療的に有効なレベルでネパフェナクを放出するように適合される。
【0026】
他の実施形態においては、a)少なくとも一つの疎水性ポリマーおよび少なくとも一つの親水性ポリマーと、b)非イオン性界面活性剤と、c)眼薬とを含む、固体眼薬を局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤が本明細書に提供され、この製剤は、約2週間から約12週間の期間中、毎日治療的に有効なレベルで眼薬を放出するように適合される。
【0027】
実施形態においては、親水性ポリマーはPEGポリマーを含み、PEGポリマーは、約1000から約20,000の分子量(Mw)を有する。ある実施形態においては、PEGポリマーはPEG2000を含む。実施形態においては、PEGポリマーは、約5から約30%(w/w)または約15%から約30%(w/w)で存在する。
【0028】
実施形態においては、眼薬はシクロスポリンである。ある実施形態においては、眼薬はシクロスポリンであり、固体マトリクスは、ポリカプロラクトンと、PEG2000と、ポリソルベート界面活性剤とを含む。実施形態においては、眼薬はシクロスポリンであり、約36から60%(w/w)で存在し、固体マトリクスは、約2.5から約40%(w/w)のポリカプロラクトンと、約5から約15%(w/w)のPEG2000と、約15から約35%(w/w)のポリソルベート80とを含む。
【0029】
ある実施形態においては、a)少なくとも一つの疎水性ポリマーおよび少なくとも一つの親水性ポリマーであって、親水性ポリマーは1000から20,000の間の分子量(Mw)を有するPEGであり、疎水性ポリマーはポリカプロラクトンである、疎水性ポリマーおよび親水性ポリマーと、b)ポリソルベートと、c)シクロスポリンと、を含む、固体眼薬を局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤が本明細書に提供され、この製剤は、約2週間から約12週間の期間中、毎日治療的に有効なレベルでシクロスポリンを放出するように適合される。実施形態においては、PEGポリマーはPEG2000であり、約5から約15%(w/w)で固体マトリクス内に存在し得る。実施形態においては、ポリカプロラクトンは、約2.5から約40%(w/w)で固体マトリクス内に存在する。実施形態においては、ポリソルベートは、約15から約35%(w/w)で固体マトリクス内に存在し得るポリソルベート80である。実施形態においては、シクロスポリンは、約35から65%(w/w)で固体マトリクス内に存在する。
【0030】
実施形態においては、a)少なくとも一つの親水性ポリマーと、b)非イオン性界面活性剤と、c)眼薬とを含む、固体眼薬を局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤が本明細書に提供され、この製剤は、約2週間から約12週間の期間中、毎日治療的に有効なレベルで眼薬を放出するように適合され、固体マトリクスは疎水性ポリマーを含まない。実施形態においては、眼薬は、デキサメタゾン、ジフルプレドナート、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロン、デキサメタゾン、フルオシノロン、コルチゾン、プレドニゾロン、およびフルメトロンから選択されるステロイド系抗炎症剤である。実施形態においては、ステロイド系抗炎症剤はジフルプレドナートであり、約35から約55%w/wで存在し、マトリクスは、約40から約55%w/wのPEG2000を含む。
【0031】
代替的実施形態においては、a)液体非イオン性界面活性剤と、b)固体非イオン性界面活性剤と、c)眼薬とを含む、眼薬を局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤が本明細書に提供され、この製剤は、約2週間から約12週間の期間中、毎日治療的に有効なレベルで眼薬を放出するように適合され、固体マトリクスは、親水性または疎水性ポリマーを含まない。実施形態においては、眼薬はジフルプレドナートである。
【0032】
実施形態においては、液体界面活性剤は、ポリソルベートまたはチロキサポールから選択され、固体界面活性剤は、span(例えば、ソルビタン)またはBRIJ(例えば、エチレン、ポリエチレンまたはポリオキシエチレン部分を含む界面活性剤)界面活性剤から選択される。実施形態においては、合計の界面活性剤は、約25から約60%(w/w)で固体マトリクス内に存在する。ある実施形態においては、ジフルプレドナートは、約40から75%(w/w)で固体マトリクス内に存在する。実施形態においては、眼薬を局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤は、親水性ポリマーを含まず、親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー、アクリレート誘導体化PEG(PEGDA)ポリマー、ポリサッカライドポリマー、親水性ポリ無水物、またはその組み合わせから選択される。ある他の実施形態においては、眼薬を局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤は、疎水性ポリマーを含まず、疎水性ポリマーは、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリ(D,L乳酸グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリウレタン、ポリグリコール酸(PGA)またはその組み合わせから選択される。界面活性剤は、親水性または疎水性ポリマーの排除によって排除されない親水性(または疎水性)モノマーまたは部分を含み得ることが理解される。
【0033】
実施形態においては、製剤は、涙腺移植片、涙点プラグ、涙小管プラグまたは眼リングを含む医用デバイスとして構成される。実施形態においては、製剤は、眼内または眼に隣接して配置するように構成される。ある実施形態においては、医用デバイスは、実質的に円柱形状を有する。ある他の実施形態においては、医用デバイスは、眼の表面上に配置されるように構成された環の形状を有する。実施形態においては、製剤は、少なくとも部分的にマトリクス上にわたって配置される鞘部本体をさらに含む。ある実施形態においては、製剤の眼薬は、粉末、または水に溶解できないか、もしくは水にわずかに溶解できる。
【0034】
ある実施形態においては、固体マトリクス徐放眼薬製剤は、メタクリレートポリマーまたはモノマーを含まない。ある他の実施形態においては、固体マトリクス徐放眼薬製剤は、ポリサッカライドポリマーを含まない。
【0035】
実施形態においては、薬剤コアとして本発明の固体マトリクス徐放製剤と、薬剤コアを部分的に覆う不浸透性鞘部本体と、を含む薬剤挿入物が本明細書に提供される。実施形態においては、薬剤挿入物は、薬剤とポリマーとの混合剤(例えば、本発明の徐放製剤)を不浸透性鞘部に押し出すことによって製造され、任意で所望の長さに切断され、任意で一端を密封される。実施形態においては、薬剤挿入物は、約0.95インチの長さに切断され、一端を医用グレードの接着剤で密封される。
【0036】
実施形態においては、本発明の薬剤挿入物は、薬剤送達システムを形成するために涙腺移植片の空洞内に配置される。実施形態においては、プラグ本体と薬剤挿入物とを含む涙点プラグを含む涙腺移植片が本明細書に提供され、挿入物は、本発明の徐放製剤を含む薬剤コアと、薬剤コアを部分的に覆う不浸透性鞘部本体と、を含み、鞘部本体は、薬剤挿入物が涙点プラグのチャネル内に配置され、涙点プラグが患者の涙小管内に挿入される場合に、眼に治療薬を放出する涙液と直接接触する薬剤コアの露出された近位端を提供するように構成される。
【0037】
本明細書に提供される実施形態においては、医用デバイス、薬剤挿入物または薬剤送達システムとして、徐放製剤は、白内障手術後の治療用に眼に眼薬を送達するために用いられる。実施形態においては、患者の涙点を通じて、涙小管内に涙腺移植片を配置することを含む、白内障手術後に眼に抗炎症剤(NSAIDまたはステロイド系抗炎症剤)を送達するための方法が本明細書に提供され、移植片は、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤を含み、眼薬はNSAIDまたはステロイド系抗炎症剤であり、マトリクスは、約2週間から約1か月の期間中、抗炎症剤の日毎の治療的な量の送達のために構成される。
【0038】
本明細書に提供される実施形態においては、医用デバイス、薬剤挿入物または薬剤送達システムとして、徐放製剤は、ドライアイの治療用に眼に眼薬を送達するために用いられる。実施形態においては、患者の涙点を通じて、涙小管内に涙腺移植片を配置することを含む、眼にドライアイの治療用の薬剤を送達するための方法が本明細書に提供され、移植片は、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤を含み、眼薬はシクロスポリンAであり、マトリクスは、少なくとも2週間から6か月までの期間中、シクロスポリンAの日毎の治療的な量の送達のために構成される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図面においては、類似の参照番号は、幾つかの図面を通じて類似の構成要素を記述する。異なる添え字を有する類似の参照番号は、類似の構成要素の異なる実施例を表す。図面は、本明細書に開示された様々な実施形態を例示として、限定するわけではなく一般的に図示するものである。
【0040】
図1】眼に関連する解剖学的組織構造であって、涙腺移植片が用いられることができる適切な環境を提供するこれらの組織構造のうちのある構造の一例を図示する。
図2】眼に関連する解剖学的組織構造であって、涙腺移植片が用いられることができる適切な環境を提供するこれらの組織構造のうちのある構造の別の例を図示する。
図3A】本発明の一実施形態に従う、移植片の透視図を提供する。
図3B】本発明の一実施形態に従う、移植片の側面図である。
図3C】本発明の一実施形態に従う移植片の第二の部材と第三の部材とを図示する側面図である。
図3D】本発明の一実施形態に従う、移植片の裏面図である。
図3E】本発明の一実施形態に従う、穴を有する移植片を図示する、図3Dの線III(E)-III(E)で描かれた断面図である。
図3F】本発明の一実施形態に従う、移植片の第二の部材と、第三の部材と、第三の部材に形成された穴と、を図示する、円III(F)で描かれた図3Eの部分拡大図である。
図4A】本発明の一実施形態に従う、移植片の透視図を提供する。
図4B】本発明の一実施形態に従う、第二の部材に形成された空洞を有する移植片を図示する断面図である。
図4C】本発明の一実施形態に従う、移植片の第二の部材内の空洞と、第三の部材内の穴とを図示する、図4Bの円IV(C)で描かれた部分拡大図である。
図5】本発明の一実施形態に従う、移植片の部分断面図を提供する。
図6】本発明の別の実施形態に従う、移植片の部分断面図を提供する。
図7】ポリカプロラクトンおよびPEGポリマーを含むマトリクス内のネパフェナクを含む薬剤挿入物のための溶出プロファイルを提供する。
図8】ポリカプロラクトンおよびPEGポリマーを含むマトリクス内のネパフェナクを含む薬剤挿入物のための溶出プロファイルを提供する。
図9】PEGポリマーを含むマトリクス内のジフルプレドナートを含む薬剤挿入物のための溶出プロファイルを提供する。
図10】ポリカプロラクトン、PEG400およびチロキサポールを含むマトリクス内のネパフェナクを含む薬剤挿入物のための溶出プロファイルを提供する。
図11】PEG2000ポリマーおよびポリソルベート80を含むマトリクス内のジフルプレドナートを含む薬剤挿入物の溶出プロファイルを提供する。
図12】PEG2000ポリマー、ポリカプロラクトンおよびポリソルベート80を含むマトリクス内のシクロスポリンAを含む薬剤挿入物の溶出プロファイルを提供する。
図13】PEG2000ポリマー、ポリカプロラクトンおよびポリソルベート80を含むマトリクス内のシクロスポリンAを含む薬剤挿入物の溶出プロファイルを提供する。
図14】PEG400ポリマー、ポリカプロラクトンおよびチロキサポールを含むマトリクス内のジフルプレドナートを含む薬剤挿入物の溶出プロファイルを提供する。
図15】ポリソルベート80およびSpan40(ソルビタンモノパルミテート)を含むマトリクス内のジフルプレドナートを含む薬剤挿入物の溶出プロファイルを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[導入]
眼に眼薬を持続的、局所的に送達するための組成物、製造方法および方法が本明細書に提供される。実施形態においては、組成物は、長期間(例えば、少なくとも2週間から6か月まで)、眼に眼薬を局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤を含む。実施形態においては、眼薬は、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)であり、ステロイド系非炎症剤はステロイドまたはシクロスポリンである。
【0042】
本発明の眼薬を眼に局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤は、少なくとも2週間から6か月までの治療期間の間、眼薬を治療的レベルで毎日徐放するために、経験的に決定され、構成されたものである。治療期間および徐放期間は、眼病または治療によって規定される。例えば、白内障手術後の治療のための抗炎症剤を含む製剤は、約2週間から約4週間の治療期間の間、毎日の治療的送達のためにのみ構成される必要がある。ドライアイもしくは緑内障といった他の眼病または不調は、少なくとも1か月から6か月までといった、より長い治療期間を必要とする。
【0043】
本発明で用いられる薬剤送達システムにおける眼薬の実際の投与レベルは、投薬の特定の系および方法に対して、所望の治療反応を得るために効率的な眼薬の量を得るために変更されてもよい。このようにして選択された投与レベルは、例えば、所望の治療効果、投与経路、所望の治療期間やその他の要因といった要因に依存する。単回投与または分割投与で対象者に投与される眼薬の一日用量は、様々な要因に依存して広範囲に変化することができ、その要因は、例えば、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与時間および投与経路、吸収および排出速度、他の薬剤との組み合わせ、治療される具体的状態の深刻度などを含む。一般的に、本発明の薬剤送達システムに存在する眼薬の量は、約35%w/wから約80%w/wの範囲とすることができ、実施形態においては、約50%w/wから約70%w/wの範囲とすることができる。
【0044】
実施形態においては、眼薬は、抗炎症剤(ステロイドおよび非ステロイド系)、白内障手術後の治療(例えば、痛み、感染および/もしくは炎症)用の薬、ドライアイの治療用の薬または緑内障の治療用の薬である。抗炎症剤またはシクロスポリンで本発明の方法に従って治療されることができる疾病または不調の例は、手術前および手術後の眼治療、ドライアイ、抗眼性アレルギー、抗感染症、手術後の炎症もしくは疼痛を含むが、そのいずれにも限定はされない。本発明の方法によって治療することが可能なさらなる疾患は、炎症媒介変性症、手術後合併症、光線力学的治療(PDT)を含むレーザ治療に関連する損傷、手術光誘発医原性網膜症、白内障手術後および他の眼炎症疾患を含むが、そのいずれにも限定はされない。
【0045】
ある実施形態においては、眼薬はNSAIDネパフェナクである。親水性ポリマー(例えば、PEG200から1000といった低分子量PEG)と、ポリカプロラクトンなどの疎水性ポリマーとの組み合わせであって、ここで、疎水性ポリマーは、親水性ポリマーよりも高い割合(%w/w)で存在する、組み合わせと、ポリソルベートまたはチロキサポールなどの非イオン性界面活性剤とを含む固体マトリクス製剤は、二週間の治療期間にわたって、3.5μgから1μgの間のネパフェナクの日毎の溶出を提供したことが発見された。その投与量は、疼痛および/または炎症に対して、白内障手術後の治療のために治療的である。例示的実施形態においては、ネパフェナクを局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約66%w/wのネパフェナクと、約20%w/wのポリカプロラクトンと、約10%w/wのPEG400ポリマーと、約4%w/wの非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80またはチロキサポール)とを含む。図10を参照されたい。
【0046】
ある実施形態においては、眼薬は、ステロイド系抗炎症剤ジフルプレドナートである。薬剤と、非イオン性固体(例えば、ソルビタンまたは商品名BRIJとして販売されているものなどのポリエトキシル化脂肪族アルコール)および液体界面活性剤(例えば、ポリソルベートまたはチロキサポール)の組み合わせを含むが、さらなる親水性もしくは疎水性ポリマーは含まない固体マトリクス製剤は、約2週間の治療期間にわたって、少なくとも10μgのジフルプレドナートの日毎の溶出を提供したことが発見された。この投与量は、疼痛および/または炎症に対して、白内障手術後の治療のために治療的である。例示的一実施形態においては、ジフルプレドナートを局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約40-60%(w/w)のジフルプレドナートと、10-15%w/wのポリソルベート80と、約30-45%w/wのSpan40(ソルビタンモノパルミテート)と、を含む。実施例9を参照されたい。
【0047】
ある実施形態においては、眼薬はシクロスポリンである。親水性ポリマー(例えば、PEG1000から20,000などの高分子量PEG)とポリカプロラクトンなどの疎水性ポリマーとの組み合わせと、ポリソルベートまたはチロキサポールなどの非イオン性界面活性剤とを含む固体マトリクス製剤は、4週間の治療期間にわたって、少なくとも2μg、または17μgから3μgの間のシクロスポリンの日毎の溶出を提供したことが発見された。その投与量は、ドライアイの治療に対して治療的である。例示的実施形態においては、シクロスポリンを局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤は、36-58.5%w/wのシクロスポリンAと、18-29.25%w/wのポリソルベート80と、2.5-40%w/wのポリカプロラクトンと、約6-9.75%w/wのPEG2000ポリマーと、を含む。図12および図13、ならびに実施例11を参照されたい。
【0048】
[定義]
本明細書で用いられるように、“一つ(a)”または“一つ(an)”という用語は、特許文書で一般的なように、如何なる他の例または“少なくとも一つ(at least one)”もしくは“一つ以上(one or more)”の使用とは関係なく、一つ、または二つ以上を含むように用いられる。
【0049】
本明細書で用いられるように、“または(or)”という用語は、そうでないと特筆されない限りは、非排他的であるように、または、“AまたはB(A or B)”が“BではなくA(A but not B)”、“AではなくB(B but not A)”ならびに“AおよびB(A and B)”を含むように言及するために用いられる。
【0050】
本明細書で用いられるように、“約(about)”という用語は、明記された量に対して大体等しい、近傍である、ほとんど等しい、ほぼ等しい、または、等しい量を指すために用いられ、例えば、明記された量の+/-約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%である。
【0051】
本明細書で用いられるように、“軸(axis)”という用語は、そこに沿って部材が伸びる大体の方向を指す。この定義によれば、部材は、軸に対して、全体として、または部分的に対称的である必要はなく、軸の方向に沿って直線である必要もない。したがって、この定義の文脈においては、本出願で開示された、軸によって特徴づけられた如何なる部材も、対称的または直線構造に限定はされない。
【0052】
本文書においては、“近位(proximal)”という用語は、眼の角膜に対して比較的より近い位置を指し、“遠位(distal)”という用語は、角膜から比較的より遠い位置で、涙小管内により深く挿入されていることを指す。
【0053】
添付の特許請求の範囲においては、“含む(including)”および“in which”という用語は、其々、用語“含む(comprising)”および“wherein”の平易な英語の均等物として用いられる。また、以下の特許請求の範囲においては、“including”および“comprising”という用語は、オープンエンドであり、すなわち、請求項でこのような用語の後に記載されたものに加えて、構成要素を含むシステム、アセンブリ、デバイス、態様またはプロセスは、当該請求項の範囲内にあるとやはりみなされる。さらに、以下の特許請求の範囲においては、“第一の(first)”、“第二の(second)”および“第三の(third)”などの用語は、単にラベルとして用いられるものであって、それらの対象に対して数字的な要件を課すことを意図するものではない。
【0054】
[組成物]
実施形態においては、組成物は、医用デバイスとして、薬剤コアとして、薬剤挿入物(例えば、本発明の製剤および外層または覆い)として、および薬剤送達システム(例えば、薬剤挿入物もしくはコアと、所望の位置に薬剤挿入物もしくはコアを維持するための本体もしくは保持構造)として、本発明の固体マトリクス徐放製剤を含む。実施形態においては、医用デバイス(例えば、薬剤コアもしくは薬剤挿入物)は、涙小管内、または、眼の表面と眼瞼との間(例えば、視野外に位置する眼リング)、もしくは強膜組織層と眼の接合組織層との間といった強膜組織層間で、眼に眼薬を送達するために配置され得る。実施形態においては、医用デバイスは、医用デバイスの長さにわたって実質的に円柱状の直径を含み、涙小管(例えば、涙小管内プラグ)内または眼瞼と眼の表面との間のいずれかの配置用に構成され得、これは、環または線形の形状であってもよい。代替的実施形態においては、薬剤挿入物は、薬剤送達システムの本体内に配置されるように適合される。以下により詳細に開示される眼薬送達システムは、薬剤の局所的な徐放を提供するために、異なる薬剤および/または異なるマトリクスを含む薬剤挿入物と交換可能な本体を用いる。
【0055】
実施形態においては、本発明の涙腺移植片は、徐放デバイスとして構成され、例えば、少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、または少なくとも約12週間以上、の間、治療的に有効な投与量を提供する速度で、治療的に有効な方法で組み込まれた治療薬を放出する。例示的一実施形態においては、涙腺移植片は、治療薬の意図され、制御された放出の期間中、涙点によって保持されるように構成される。様々な実施形態においては、治療薬の意図され、制御された放出の期間は、少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、または少なくとも約12週間以上である。様々な実施形態においては、移植された移植片のうちの少なくとも95%は、治療薬の意図され、制御された放出の期間中に保持される。例示的一実施形態においては、移植片は、治療効果を示すために、期間中涙点によって保持される。
【0056】
[眼薬]
一般的に、本発明の方法で有用な薬剤的に活性のある薬剤は、例えば、眼に対して、有利かつ有用な結果を生み出すような、本明細書で記述されたものなどの、移植片から送達されることができるあらゆる化合物、組成物、またはその混合物(ここで、固体マトリクス持続製剤は医用デバイスとして提供される)、特に所望の局所的もしくは全身的な生理学的もしくは薬理学的効果を得るうえで効果的な薬剤とすることができる。
【0057】
このような薬剤の例は、麻酔薬、リドカインおよび関連化合物、ベンゾジアゼパム(benzodiazepam)および関連化合物などの鎮痛剤、フルコナゾールおよび関連化合物などの抗真菌剤、トリソジウムホスホモノホルメート、トリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、DDI、AZTなどの抗ウイルス剤、コルヒチン、ビンクリスチン、サイトカラシンBおよび関連化合物などの細胞輸送/移動切迫剤、抗緑内障薬(例えば、アドレナリンアゴニスト、アドレナリン拮抗薬(ベータブロッカー)、炭酸脱水酵素阻害剤(CAI、全身性および局所的)、副交感神経作用薬、プロスタグランジンおよび降圧脂質ならびにそれらの組み合わせ)、抗菌剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤、駆虫薬、抗真菌剤など)、副腎皮質ホルモンまたは他の抗炎症剤(例えば、NSAIDもしくは他の鎮痛および疼痛処理化合物)、充血除去剤(例えば、血管収縮薬)、アレルギー反応を防ぐか、緩和する薬剤(例えば、抗ヒスタミン剤、サイトカイン抑制剤、ロイコトリエン抑制剤、IgE抑制剤、免疫促進剤)、肥満細胞安定化剤、毛様筋調節薬、散瞳薬などを含むが、そのいずれにも限定はされない。
【0058】
本発明で固体マトリクス製剤に組み込まれることができる他の薬剤は、降圧剤、フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン(tetrahydrazoline)などの充血緩和剤、ムラミルジペプチドおよび関連化合物などの免疫応答調節剤、シクロスポリン(シクロスポリンAを含む)、インスリン、成長ホルモン、インスリン関連成長因子、ヒートショックたんぱく質および関連化合物などのペプチドおよびたんぱく質、コルチコステロイド、デキサメタゾン、ジフルプレドナート、トリアムシノロン、フルオシノロン、コルチゾン、プレドニゾロンもしくはフルメトロンおよび関連化合物などのステロイド化合物、フルオシノロンアセトニドおよび関連化合物などの難溶解性ステロイド、炭酸脱水酵素阻害剤、診断薬、抗アポトーシス剤、遺伝子治療薬、封鎖剤、グルタチオンなどの還元剤、抗浸透性剤、アンチセンス化合物、抗増殖剤、抗体複合体、抗うつ剤、血流増強剤、抗喘息薬、駆虫剤、ネパフェナク、ブロムフェナク、サリチル酸塩、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカムもしくはナブメトンなどの非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、栄養素およびビタミン、酵素阻害剤、抗酸化剤、抗白内障薬、アルドースリダクターゼ阻害剤、細胞保護剤、サイトカイン、サイトカイン阻害剤、及びサイトカイン保護剤、UVブロッカー、肥満細胞安定化剤、血管新生抑制剤、例えば、マトリクスメタロプロテアーゼ阻害剤などの抗血管新生剤を含む。
【0059】
本明細書で使用するためのさらなる薬剤的に活性を有する薬剤の代表例は、ニモジピンおよび関連化合物などの神経保護剤、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、エリスロマイシンなどの抗生物質、抗感染症薬、スルホンアミド、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフィソキサゾールなどの抗菌剤、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウムなど、アンタゾリン、メタピリレン、クロルフェニラミン、ピリルアミン、プロフェンピリダミンなどの抗アレルギー剤、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン21リン酸塩、フルオシノロン、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21リン酸塩、酢酸プレドニゾロン、フルオロメタロン、ベタメタゾン、トリミノロンなどの抗炎症剤、縮瞳薬、ピロカルピン、サリチル酸エセリン、カルバコール、ジイソプロピルフルオロリン酸、ホスホリンイオダイン、デメカリウムブロマイドなどの抗コリンエステラーゼ、縮瞳剤、硫酸アトロピン、シクロペントラート、ホマトロピン、スコポラミン、トロピカミド、ユーカトロピン、ヒドロキシアンフェタミンなどの散瞳薬、エピネフリンなどの交感神経作用剤、例えば、1985年にアムステルダムのHans Bundgaard,Elsevier Scientific Publishing Co.によって編集されたDesign of Prodrugsに記述されたものなどのプロドラッグを含むが、そのいずれにも限定はされない。前述の薬剤に加えて、ほ乳類生物の健康状態を治療、管理または診断するために適切な他の薬剤は、コポリマー内に取り込まれ、本発明の薬剤送達システムを用いて投与されてもよい。再度、参照は、例えば、薬理学的に活性のある薬剤に対するRemington’s Pharmaceutical Sciencesなどの任意の標準的な薬学の教科書に対して行われることがある。
【0060】
前述の治療的に活性のある薬剤のあらゆる薬学的に許容可能な形態は、本発明を実施する際に使用されてもよい。例えば、遊離塩基、遊離酸、薬学的に許容可能な塩、エステルまたはそのアミド、例えば、塩酸塩、水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシラート、メシラート、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、アスコルビン酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、及びラウリル硫酸塩などの酸付加塩、ナトリウム、カルシウム、カリウムおよびマグネシウム塩などのアルカリまたはアルカリ土類金属塩、水和物、光学異性体、異性体、ステレオ異性体、ジアステレオ異性体、変異性体、多形、その混合物、そのプロドラッグ、またはラセミ体もしくはそのラセミ混合物である。
【0061】
涙腺移植片を用いる本方法で使用されることができるさらなる薬剤は、連邦食品、薬品、および化粧品法(United States Federal Food,Drug, and Cosmetic Act)のSection505の下で、または、公衆衛生法(Public Health Service Act)の下で承認された薬剤を含むが、そのいずれにも限定はされない。それらのうちの幾つかは、米国食品医薬品局(FDA)のウェブサイト(http://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/drugsatfda/index)で見つけることができる。さらなる薬剤は、紙または電子形態のうちのいずれかで、Orange Bookに記載されたものを含み、これは、FDA Orange Bookのウェブサイト(http://www.fda.gov/cder/ob/)で見つけることができ、本特許文書の提出日と同一の日付、それよりも早い日付、またはそれよりも遅い日付を有するか、または記録する。例えば、これらの薬剤は、とりわけ、ドルゾラミド、オロパタジン、トラボプロスト、ビマトプロスト、シクロスポリン、ブリモニジン、モキシフロキサシン、トブラマイシン、ブリンゾラミド、アシクロビルチモロールマレイン酸塩、ケトロラックトロメタミン、プレドニゾロン酢酸塩、ヒアルロン酸ナトリウム、ネパフェナク、ブロムフェナク、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ジフルプレドナート、スプロフェナク、ビノキサン、パタノール、デキサメタゾン/トブラマイシン混合物、モキシフロキサシンまたはアシクロビルを含むことができる。
【0062】
上記の薬剤と、本発明の方法に従って治療されることができる疾病または不調の例は、緑内障、手術前および手術後の眼治療、ドライアイ、抗眼性アレルギー、抗感染症、手術後の炎症もしくは疼痛、アレルギーなどの呼吸関連の不調、めまいもしくは片頭痛などの内耳不調、または高血圧、コレステロール管理、肺疾患の不調もしくは免疫学的不調などの他の全身性の不調を含むが、そのいずれにも限定はされない。
【0063】
本発明の固体マトリクス徐放薬剤送達システムは、眼の疾病、不調、および/または損傷の治療で特に有用である。このような眼の疾病、不調または損傷の代表例は、糖尿病性網膜症、緑内障、黄斑変性症、網膜色素変性症、網膜裂孔、網膜剥離、網膜虚血、外傷関連急性網膜症、炎症媒介変性症、手術後合併症、光線力学的治療(PDT)を含むレーザ治療に関連する損傷、手術光誘発医原性網膜症、薬剤誘発網膜症、常染色体優性視神経萎縮、中毒性/栄養弱視、レーベル遺伝性視神経症(LHOP)、眼性症状もしくは合併症を伴う他のミトコンドリア疾患、血管新生、不定型RP、バルデー・ビードル症候群、青錐体全色覚異常、白内障、中心性輪紋状脈絡膜萎縮、コロイデレミア、錐体ジストロフィー、杆体ジストロフィー、錐体杆体ジストロフィー、杆体錐体ジストロフィー、先天停止性夜盲症、サイトメガロウィルス網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、優性遺伝性ドルーゼン、巨細胞性動脈炎(GCA)、ゴールドマン・ファブレジストロフィー、グレーブス眼症、脳回転状萎縮、ヒドロキシクロロキン、虹彩炎症、若年網膜隔離症、カーンズ・セイヤー症候群、ローレンス・ムーン・バルディ・ビードル症候群、レーバー先天性黒内障、ループス誘発綿花状白斑、非滲出型黄斑変性症、滲出型黄斑変性症、黄斑ドルーゼン、黄斑ジストロフィー、家族性ドルーゼン(malattia leventinese)、眼ヒストプラズマ症候群、オグチ病、酸化損傷、増殖性硝子体網膜症、レフサム病、白点状網膜炎、未熟児網膜症、錐体全色覚異常、RPおよびアッシャー症候群、強膜炎、セクターRP、シェーグレン・ラルソン症候群、ソースビー眼底変性症、スターガルト病および他の網膜疾患を含むが、そのいずれにも限定はされない。
【0064】
実施形態においては、眼薬は、ネパフェナク、ブロムフェナク、サリチル酸塩、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカムまたはナブメトンから選択される非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)と、コルチコステロイド、デキサメタゾン、ジフルプレドナート、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロン、フルオシノロン、コルチゾン、プレドニゾロン、またはフルメトロン、抗緑内障薬またはシクロスポリンから選択されるステロイド系抗炎症剤である。
【0065】
実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約50%から約80%w/w、約60%から約70%w/w、または約64%から約68%w/wの眼薬を含む。実施形態においては、眼薬は、ネパフェナクなどのNSAIDである。例示的実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約64%から約68%w/wのネパフェナクを含む。
【0066】
実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約35から約65%(w/w)、約35%から約60%w/w、約35%から約55%w/w、約35%から約50%w/w、または約35%から約45%w/wの眼薬を含む。他の実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約40%から約65%w/w、約45%から約65%w/w、約50%から約65%w/w、または約55%から約65%w/wの眼薬を含む。他のある実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約35%、約37.5%、約40%、約42.5%、約45%、約47.5%、約50%、約52.5%、約55%、約57.5%、約60%、約62.5%または約65%w/wの眼薬を含む。実施形態においては、眼薬はシクロスポリンである。
【0067】
実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約40から約75%(w/w)、約40%から約70%w/w、約40%から約65%w/w、約40%から約60%w/w、約40%から約55%w/w、または約40%から約50%w/wの眼薬を含む。他の実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約45%から約75%w/w、約50%から約75%w/w、約55%から約75%w/w、または約60%から約75%w/wの眼薬を含む。ある他の実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約35%、約37.5%、約40%、約42.5%、約45%、約47.5%、約50%、約52.5%、約55%、約57.5%、約60%、約62.5%または約65%w/wの眼薬を含む。実施形態においては、眼薬は、ジフルプレドナートなどのステロイド系抗炎症剤である。
【0068】
実施形態においては、上記で開示された眼薬を局所的に送達するための固体マトリクス徐放眼薬製剤は、ドライアイ、緑内障または白内障手術後の、疼痛および炎症などの治療用に用いられる。
【0069】
実施形態においては、製剤は、薬剤およびポリマー混合物または界面活性剤を溶解し、その後、所望の形状に形成することによって準備される。実施形態においては、製剤は、薬剤挿入物を形成するために鞘部本体に成型され、涙腺移植片またはデバイス(例えば、薬剤送達システム)とともに用いられ得る。他の実施形態においては、薬剤コアまたは薬剤挿入物は、鞘部本体を含まない。
【0070】
[固体マトリクス構成成分]
実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、親水性ポリマーを含む。本明細書で用いられるように、用語“親水性”は、水に対する強い親和性を有し、水に容易に溶解可能であり得るポリマーであることと理解される。例えば、親水性ポリマーは極性を有し得、その水性(および他の極性)物質との相互作用は、疎水性ポリマーまたは物質との相互作用よりも熱力学的により有利である。実施形態においては、親水性ポリマーは、例えば、極性ポリマー、アルギン酸およびキトサンを含むポリサッカライド、親水性ポリ酸無水物、ポリエチレングリコール(PEG)たんぱく質、DNA、ならびにポリビニルアルコールを含む。ある実施形態においては、親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー、アクリレート誘導体化PEG(PEGDA)ポリマー、ポリサッカライドポリマー、親水性ポリ酸無水物またはその組み合わせを含む。
【0071】
本明細書で用いられるように、PEGポリマー(エチレン酸化物のポリマーで、分岐するか、線形か、または他の部分で誘導体化され得る)は、その平均分子量によって呼ばれることがあり、例えば、20,000ダルトン(Da)であれば、PEG20,000となる。実施形態においては、PEGポリマーは、PEG200から約PEG20,000を含む。ポリマーは常に単分散されるわけではなく、その重量は、それらの平均分子量を示し得ることが理解される。さらに、用いられるPEGは、分子量の分散(多分散)を含み得、その大きさの分散は、その重量平均分子量(Mw)またはその数平均分子量(Mn)によって特徴づけられることができる。本明細書で開示される分子量数を有するPEGポリマー(例えば、PEG400またはPEG2000)は、平均分子量であることが理解される。
【0072】
PEGポリマーは、その分子量に依存して液体または低融点の固体である。一般的に、PEG1000以下は、室温(例えば、20-25℃)で液体である。ある実施形態においては、PEGポリマーは、20から25℃の間で液体である。ある実施形態においては、PEGポリマーは、PEG200から約PEG1000を含む。例示的実施形態においては、PEGポリマーはPEG400を含む。ある実施形態においては、PEG200からPEG1000が本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤で用いられるとき、製剤は、親水性ポリマーよりも高い割合(%w/w)で存在する疎水性ポリマー(以下により詳細に開示される)をさらに含む。
【0073】
実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、15%(w/w)以下で固体マトリクス内に存在する低分子量PEG(例えば、PEG200からPEG1000)を含む。ある実施形態においては、PEGポリマーは、約5から約15%(w/w)で存在する。実施形態においては、低分子量PEGは、15%(w/w)以下で固体マトリクス内に存在し、親水性PEGポリマーは、15%(w/w)以上で固体マトリクス内に存在する疎水性ポリマーと混合される。例示的実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約10%w/wのPEG400と、約15%(w/w)以上の疎水性ポリマーとを含む。実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、または約15%w/wで固体マトリクス内に存在する低分子量PEG(例えば、PEG200からPEG1000)を含む。%数は、全体の割合数の各々の上下0.5%を包含し、“約”に対する範囲を提供する。例えば、約10%は、9.5、9.75、10、10.25、10.50と、その間の各値を包含する。
【0074】
例示的実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約60から約70%(w/w)のネパフェナクと、約30から約15%(w/w)のポリカプロラクトンと、約5から約15%(w/w)のPEG400と、約1から約15%w/wの非イオン性界面活性剤と、を含む。
【0075】
他の実施形態においては、1000Daを超える分子量を有するPEGポリマーが用いられる。一般的に、約PEG1000から約PEG20,000は、室温で固体である。ある実施形態においては、PEGポリマーは、PEG1000から約PEG20,000を含む。例示的実施形態においては、PEGポリマーはPEG2000を含む。ある実施形態においては、PEG1000からPEG20,000が、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤で用いられるとき、製剤は、親水性ポリマーより高い割合(%w/w)、親水性ポリマーより低い割合(%w/w)、または親水性ポリマーと同じ割合で存在し得る疎水性ポリマー(以下により詳細に開示される)をさらに含む。
【0076】
実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約5から約15%(w/w)で固体マトリクス内に存在する高分子量PEG(例えば、PEG1000からPEG20,000)を含む。実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、または約15%で固体マトリクス内に存在する高分子量PEG(例えば、PEG1000からPEG20,000)を含む。%数は、全体の割合数の各々の上下0.5%を包含し、“約”に対する範囲を提供する。例えば、約10%は、9.5、9.75、10、10.25、10.50と、その間の各値を包含する。
【0077】
実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は疎水性ポリマーを含む。本明細書で用いられるように、用語“疎水性”は、水に対して限定された親和性を有し、水とはよく混合しないポリマーであると一般的に理解される。例えば、疎水性ポリマーは、無極性であり得、水溶液中で凝集し、水分子を排除するだろう。水の排除は、他の疎水性ポリマー、親水性ポリマーのいずれかまたは、存在するとすれば界面活性剤に対してさえも、疎水性ポリマーの水素結合を最大化する。実施形態においては、疎水性ポリマーは、例えば、疎水性コモノマー(例えば、カルボキシフェノキシプロパン)とともに、無極性ポリマー、ポリエステルポリマー、PLGA、PLA、ポリカプロラクトンおよびポリ酸無水物を含む。ある実施形態においては、疎水性ポリマーは、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリ(D,L-乳酸グリコール酸共重合体)(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリウレタン、ポリグリコール酸(PGA)、またはその組み合わせから選択される。例示的実施形態においては、疎水性ポリマーはポリカプロラクトンを含む。
【0078】
実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、疎水性ポリマーと親水性ポリマーとを含み、疎水性ポリマーは、15%w/w以上、または約15から約30%(w/w)で存在する。実施形態においては、親水性ポリマーは、低分子量PEGポリマーを含む。ある実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、または約30%(w/w)の疎水性ポリマーを含む。%数は、全体の割合数の各々の上下0.5%を包含し、“約”に対する範囲を提供する。例えば、約20%は、19.5、19.75、20、20.25、20.50%(w/w)と、その間の各値を包含する。例示的実施形態においては、疎水性ポリマーはポリカプロラクトンを含む。
【0079】
代替的実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、疎水性ポリマーと親水性ポリマーとを含み、疎水性ポリマーは、約2.5から約40%(w/w)で存在する。実施形態においては、親水性ポリマーは、高分子量PEGポリマーを含む。ある実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約2.5%、約5%、約7.5%、約10%、約12.5%、約15%、約17.5%、約20%、約22.5%、約25%、約27.5%、約30%、約32.5%、約35%、約37.5%または約40%(w/w)の疎水性ポリマーを含む。%数は、割合数の各々の上下1.25%を包含し、“約”に対する範囲を提供する。例えば、約5%は、3.75、4.5、5、5.5、6.25%(w/w)と、その間の各値を包含する。例示的実施形態においては、疎水性ポリマーはポリカプロラクトンを含む。
【0080】
実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は非イオン性界面活性剤を含む。本明細書で用いられるように“界面活性剤”は、二つの液体間、または液体と固体との間で表面張力を低下させる化合物を指す。界面活性剤は、典型的には両親媒性であり、水溶液中でミセルを形成する脂肪族アルコール基および化合物など、親水性部分と疎水性部分との双方を含むことを意味する。非イオン性界面活性剤は、共有結合された酸素含有親水性基を有し、これは、疎水性親構造、両親媒性化合物に結合される。酸素基の水溶性は、水素結合の結果である。非イオン性界面活性剤の個々の種類間の相違はわずかであり、選択は、特異的な性質、例えば、有効性および効率、毒性、皮膚科学的互換性および生分解性、または薬品使用許可のコストに基づいて主に管理される。即時の固体マトリクス徐放眼薬製剤においては、個々の界面活性剤の選択は、また、製造効率を改善すること(例えば、鞘部本体といったモールドまたはチューブへの製剤の押出)によって管理され得る。例えば、チロキサポールまたはポリソルベートの使用は、日毎の溶出速度にほとんど差がないが、疎水性および親水性ポリマーの選択ならびにマトリクスにおけるその全体の%W/Wに依存して、製造中の押出の改善を提供し得る。ある例示的実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤はチロキサポールを含む。他の例示的実施形態においては、固体マトリクス徐放眼薬製剤はポリソルベート80といったポリソルベート界面活性剤を含む。
【0081】
非イオン性界面活性剤の例は、脂肪族アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪酸エトキシレート(例えば、ポリソルベート)、あるエトキシル化脂肪族エステルおよび油、エトキシル化アミンおよび/または脂肪酸アミド、終端がブロックされたエトキシレート、ポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステル、グリセロールの脂肪酸エステル、ソルビトールの脂肪酸エステル(例えば、Span)、スクロースの脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、アミン酸化物、スルホキシド、アルキルアリルポリエチルアルコールのポリマー(例えば、チロキサポール)、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、BRIJ化合物)ならびにホスフィン酸化物を含む。
【0082】
ポリソルベート界面活性剤は、エトキシル化ソルビタンエステルであり、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、およびポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)を含み、ここで、‘ポリオキシエチレン’部分に続く数20は、分子内に見いだされるオキシエチレン-(CHCHO)-基の総数を指す。‘ポリソルベート’部分に続く数は、分子のポリオキシエチレンソルビタン部分と関連付けられる脂肪酸の種類に関連する。モノラウレートは、20によって示され、モノパルミテートは40によって示され、モノステアレートは60によって、モノオレエートは80によって示される。例示的実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は非イオン性界面活性剤ポリソルベート80を含む。
【0083】
BRIJ非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテルであり、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル、およびポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテルを含む。
【0084】
Span非イオン性界面活性剤は、ソルビタンオレエート、ソルビタンステアレート、ソルビタンラウレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンセスキオレエート、およびソルビタンモノパルミテートを含むソルビタンエステルである。実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、非イオン性界面活性剤ソルビタンエステルを含む。ある実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、非イオン性界面活性剤ソルビタンエステル(例えば、Span40)とポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)との組み合わせを含む。ある実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、非イオン性界面活性剤ソルビタンエステル(例えば、Span40)とポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)との組み合わせを含み、ここで、固体マトリクスは、上記で開示されたように、親水性または疎水性ポリマーを含まない。
【0085】
本明細書で用いられる界面活性剤は、液体の形態または固体の形態であり得る。我々は、特にジフルプレドナートに対して、固体および液体の界面活性剤の組み合わせは、所望の日毎の溶出速度を提供したことと、ここで、その製剤は、界面活性剤として提供された両親媒性化合物以外に親水性または疎水性ポリマーを含まないことと、を発見した。特に、ソルビタンエステル界面活性剤(Span)とエトキシル化ソルビタンエステル(ポリソルベート)との組み合わせは、薬剤(例えば、ジフルプレドナート)の所望の日毎の溶出速度を提供した。実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約10から15%w/wのポリソルベートと、約30-40%w/wのソルビタンエステル界面活性剤とを含む。
【0086】
ある実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約1%から約10%w/wの非イオン性界面活性剤を含む。実施形態においては、非イオン性界面活性剤は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、または約10%(w/w)で固体マトリクス製剤内に存在する。%数は、全体の割合数の各々の上下0.5%を包含し、“約”に対する範囲を提供する。例えば、約4%は、3.5、3.75、4、4.25、4.50と、その間の各値を包含する。ある実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、親水性ポリマーと疎水性ポリマーとをさらに含む。例示的実施形態においては、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベートまたはチロキサポールである。
【0087】
代替的実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、約15%から約30%w/wの非イオン性界面活性剤を含む。実施形態においては、非イオン性界面活性剤は、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、または約30%(w/w)で固体マトリクス製剤内に存在する。%数は、全体の割合数の各々の上下0.5%を包含し、“約”に対する範囲を提供する。例えば、約20%は、19.5、19.75、20、20.25、20.50と、その間の各値を包含する。ある実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、親水性ポリマーと疎水性ポリマーとをさらに含む。例示的実施形態においては、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベートまたはチロキサポールである。
【0088】
ある実施形態においては、本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤は、チロキサポール、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンエーテル、ポリソルベートまたはその組み合わせから選択された非イオン性界面活性剤を含む。
【0089】
実施形態においては、製造時および本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤が眼薬の送達用に配置される前に、固体マトリクス製剤は、10%未満の水(w/v)、もしくは5%未満または1%未満の水(w/v)を含む。ある実施形態においては、固体マトリクス製剤は、約1%の水、約2%の水、約3%の水、約4%の水、約5%の水、約6%の水、約7%の水、約8%の水、または約9%の水(w/v)を含む。ある実施形態においては、固体マトリクス製剤は、約1%から約10%、約2%から約10%、約3%から約10%、約4%から約10%、約5%から約10%、または約6%から約10%の水(w/v)を含む。ある実施形態においては、固体マトリクス製剤は、約1%から約9%、約1%から約8%、約1%から約7%、約1%から約6%、約1%から約5%、または約1%から約4%の水(w/v)を含む。
【0090】
[涙腺移植片]
実施形態においては、プラグ本体と薬剤挿入物とを含む涙点プラグを含む涙腺移植片が本明細書に提供され、ここで、挿入物は、本明細書に開示された本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤のうちの任意の一つを含む薬剤コアと、その薬剤コアを部分的に覆う不浸透性鞘部本体と、を含み、鞘部本体は、薬剤挿入物が涙点プラグのチャネル内に配置されて、涙点プラグが患者の涙小管内に挿入されるとき、眼に眼薬を放出する涙液と直接接触する薬剤コアの露出された近位端を提供するように構成される。
【0091】
ある実施形態においては、本明細書に開示された本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤のうちの任意のものは、眼に眼薬を送達するための医用デバイスとして構成される。これらの医用デバイスは、徐放性薬剤(depot)、個別の本体を有する涙腺移植片、個別のプラグ本体もしくは鞘部本体をさらに含まない涙小管内プラグ、眼リング(眼瞼下ではなく眼表面上に配置されるようなもの)、またはコンタクトレンズの形状であってもよい。ある実施形態においては、涙小管内プラグは、プラグを完全または部分的に包囲するポリマーコーテイングまたは層を含む。実施形態においては、医用デバイスは、医用デバイスに構造的完全性を提供するために、コーティングまたは内部フィラメントを含み得る。実施形態においては、医用デバイスは実質的に円柱形状を有し、医用デバイス全体の直径は、眼内、眼上または眼の近傍に配置されるときとほぼ同一である。
【0092】
ある実施形態においては、本発明の組成物は、治療薬(本明細書では眼薬と交換可能に用いられる)の徐放を提供するために、移植片本体の第一の部材305または第二の部材310のうちの少なくとも一つの内に配置された個別の固体マトリクス製剤の薬剤コアまたは統合薬または他の薬剤を含む移植片を含む。例えば、配置される薬剤コアまたは統合薬または他の薬剤は、薬剤または他の治療薬の徐放を提供するために、涙腺移植片400の空洞458内に配置され得る。
【0093】
本発明の方法で用いられる例示的移植片は、眼、鼻腔、または内耳系のうちの一つ以上に治療薬を送達するように構成される。様々な実施形態においては、薬剤は、眼を通じて被験者に全身的に送達される。治療薬コアは、一つ以上の治療薬を含むことができ、幾つかの例においては、薬剤または他の薬剤の徐放を提供するために一つ以上のマトリクス物質を含むことができる。
【0094】
様々な実施形態においては、薬剤コア(本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤と本明細書では交換可能に用いられる)は、空洞458内に挿入される。
【0095】
実施形態においては、組成物は、鞘部本体と、本発明の徐放眼薬製剤とを含む薬剤挿入物を含む。鞘部本体は、薬剤コアからの抗炎症剤の移動を制御するために適切な形状および材料を含むことができる。幾つかの実施形態においては、鞘部本体は、薬剤コアを収容し、コアに対してぴったりと適合することができる。鞘部本体は、抗炎症剤に対して実質的に不浸透性である材料から製造され、薬剤の移動速度が、鞘部本体によって覆われていない薬剤コアの露出された表面積によって大体制御され得るようにする。多くの実施形態においては、鞘部本体を通る抗炎症剤の移動は、薬剤コアの露出表面を通る抗炎症剤の移動の約1/10以下、しばしば、1/100以下とすることができる。換言すると、鞘部本体を通る抗炎症剤の移動は、薬剤コアの露出表面を通る抗炎症剤の移動の少なくとも約1桁分未満である。適切な鞘部本体の材料は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート(以降“PET”)を含む。鞘部本体は、約0.00025”から約0.0015”の、コアに隣接する鞘部表面からコアと反対側の鞘部表面までで定義されるような厚さを有する。コアを通って伸びる鞘部の全体の直径は、約0.2mmから約1.2mmの範囲である。コアは、鞘部材料内でコアを浸漬被覆することによって形成されてもよい。代替的に、または組み合わせて、鞘部本体は、管と、鞘部に導入されるコア、例えば、鞘部本体管に滑動されるか、挿入されるか、または押し出されることができる液体または固体と、を含むことができる。鞘部本体は、また、コア周囲で浸漬被覆されることができ、例えば、予め形成されたコアの周囲に浸漬被覆されることができる。
【0096】
本発明の固体マトリクス製剤が鞘部本体によって少なくとも部分的に包囲されるとき、疎水性または親水性ポリマーは失われないことが一般的に理解される。換言すると、それらのポリマーが異なる条件下で(例えば、鞘部本体によって保護されていないときなど)生分解性を有し得るとしても、それらは、加水分解または酸化を介した生分解性を有さない。したがって、ポリマー内に存在する親水性部分および/または本発明の固体マトリクス徐放眼薬製剤の界面活性剤は、涙液内に存在するものなどの、水分子と結合し得るが、ポリマーは、治療期間中に加水分解を一般的に経験しない。
【0097】
鞘部本体は、移植片の臨床利用を容易にするために、さらなる特徴を有するように提供されることができる。例えば、鞘部は、移植片本体、保持構造、および鞘部本体が被験者内に移植されたままである間に交換可能な薬剤コアを受けてもよい。鞘部本体は、上述されたように、しばしば、保持構造に対してしっかりと取り付けられ、保持構造が鞘部本体を保持する間にコアは交換可能である。特定の実施形態においては、鞘部本体からコアが押し出され、取り出されるとき、鞘部本体に力を与える外部突起を有するように鞘部本体は提供されることができる。別の薬剤コアは、その後、鞘部本体内に配置されることができる。多くの実施形態においては、鞘部本体または保持構造は、配置を示すために際立った特徴、例えば、際立った色を有してもよく、鞘部本体または保持構造の涙小管または他の生体組織構造内での配置が被験者によって容易に検出されることができるようにする。保持構成要素または鞘部本体は、涙小管内での配置の深さを示すために少なくとも一つのマークを含んでもよく、保持構成要素または鞘部本体が少なくとも一つのマークに基づいて、涙小管内で所望の深さに配置されることができるようにする。
【0098】
図3図6は、本発明の製剤および本発明の方法で使用する涙腺移植片の例示的実施形態を図示する。例示的移植片は、涙点212、214を通して、関連する涙小管208、210に挿入可能である。本発明で使用する例示的涙腺移植片は、図3Aで図示されるように、第一の部材305、第二の部材310、および第三の部材もしくは尾部330などの、第一の部材と第二の部材と尾部とを含む。例示的涙腺移植片は、例えば、図3Aにおける第三の部材もしくは尾部330内に形成された穴385などの、尾部内に形成された穴をさらに含む。幾つかの実施形態においては、例示的涙腺移植片は、空洞458をさらに含む(例えば、図4Aに図示された涙腺移植片)。
【0099】
図3Aを参照すると、本発明の方法で使用する例示的涙腺移植片300の透視図が図示され、第一の部材305が第一の軸Aによって特徴づけられ、第二の部材310が第二の軸Bによって特徴づけられる。
【0100】
第三の部材もしくは尾部330は、第一の部材305と第二の部材310とを第一の角度θで接続するように構成され、ここで、θは、第二の軸Bに対して第一の軸Aによって画定される。例えば、図3Aにおいて、第一の角度θは、第一の軸Aにおいて開始し、第一の軸Aから第二の軸Bに向かって反時計回りに回転する角度を指す。幾つかの実施形態においては、第一の軸Aおよび第二の軸Bは、同一平面内にあり、互いに交差する。幾つかの実施形態においては、第一の軸Aは、第二の軸Bの平面とは異なる平面内にあり、第一の軸Aおよび第二の軸Bは交差しない。このような実施形態においては、第一の角度θは、第二の軸Bに対して、第一の軸Aの平行線によって画定される角度を指す。この第一の軸Aの平行線は、第二の軸と同一平面内にあり、第二の軸と交差する。
【0101】
幾つかの実施形態においては、第一の角度θは、約30度から約150度、約45度から約135度、または約75度から約105度である。例えば、幾つかの実施形態においては、第一の角度θは、約90度である。
【0102】
幾つかの実施形態においては、第一の軸に沿った移植片の全体の寸法は、約4mmから約8mmである。例示的一実施形態においては、第一の軸に沿った全体の寸法は、約5mmから約7mmである。様々な実施形態においては、第一の軸に沿った全体の寸法は、約6.3mmである。
【0103】
様々な実施形態においては、第二の軸Bに沿った全体の寸法は、約1mmから約3mmであり、例えば、約1.2mmから約1.9mmである。
【0104】
幾つかの実施形態においては、第一の軸に沿った全体の寸法は約6.3mmであり、第二の軸に沿った全体の寸法は約1.2mmである。様々な実施形態においては、第一の軸に沿った全体の寸法は約6.3mmであり、第二の軸に沿った全体の寸法は約1.9mmである。幾つかの実施形態においては、第一の軸に沿った全体の寸法は約4.8mmであり、第二の軸に沿った全体の寸法は約1.9mmである。
【0105】
幾つかの実施形態においては、第一の部材305は、涙小管に伸びるように構成され、第二の部材310は涙小管の垂直部分220、222内にあって、関連する涙点の開口へと延びるか、または関連する涙点の開口の外へと延びるように構成される。このような構成の涙腺移植片300が涙小管に挿入されるとき、第一の軸Aおよび第二の軸Bの交差部は、図2における涙小管湾曲250など、概して涙小管の湾曲にある。幾つかの実施形態においては、第一の部材305および第二の部材310は、第一の角度で接続され、その角度は、少なくとも約45度であり、それによって、第一の部材と第二の部材との間の角度を有する交差部を形成する。様々な実施形態においては、涙腺移植片300が涙小管内に配置されるとき、角度を有する交差部の少なくとも一部は、涙小管の涙小管湾曲に対して傾いている。この実施形態においては、涙腺移植片300は、移植された涙腺移植片300の保持を容易にするために、解剖学的構造を使用する。
【0106】
図3Bは、本発明の例示的涙腺移植片300の側面図を示す。幾つかの実施形態においては、第一の部材305は、前方断片とチップ断片との間に、中間断片315と、チップ断片もしくはチップ325と、前方断片320とを含む。中間断片315は、第三の部材もしくは尾部330によって、第二の部材310に接続されるように構成され、チップ断片もしくはチップ325は、第一の部材305の他の二つの断片よりも前に、ならびに涙腺移植片300の他の部材よりも前に、涙点を通って挿入されるように構成される。
【0107】
幾つかの実施形態においては、中間断片315、前方断片320、およびチップ断片もしくはチップ325は、ほぼそれらの形状によって、互いに区別することができる。例えば、幾つかの実施形態においては、中間断片315はほぼ円柱形状を有し、その直径は、チップ断片もしくはチップ325の直径よりも大きい。様々な実施形態においては、前方断片320が一端で中間断片315と接続し、他端でチップ断片もしくはチップ325と接続するように、前方断片320は、先細りであり、円錐形状を有する。幾つかの実施形態においては、中間断片315から前方断片320への移行、または前方断片320からチップ断片もしくはチップ325への移行は、区別可能な端部が移行の際に存在しないように段階的かつ滑らかなものである。
【0108】
幾つかの実施形態においては、中間断片315は円柱形状を有する。様々な実施形態においては、中間断片は、円形断面、楕円形断面、または多角形断面を有する。中間断片315は、長さと直径とのあらゆる有用な組み合わせである。
【0109】
幾つかの実施形態においては、中間断片315は、約0.4mmから約0.8mmの直径を有する。例えば、幾つかの実施形態においては、中間断片315の直径は、約0.53mmから約0.63mmである。幾つかの実施形態においては、中間断片315は、約0.5mmから約3.5mmの、第一の軸Aに沿った長さを有する。例えば、幾つかの実施形態においては、中間断片315の長さは、約1mmから約2.8mmである。
【0110】
幾つかの実施形態においては、チップ断片もしくはチップ325は、実質的に半球または半球の一部である。例示的実施形態においては、半球または部分療法は、約0.05mmから約0.3mmの半径を有する。例えば、幾つかの実施形態においては、チップ断片もしくはチップ325の半径は、約0.20mmである。
【0111】
幾つかの実施形態においては、前方断片320は、円錐構造を有し、チップ断片もしくはチップ325に近づくにつれて、中間断片315の直径から先細りする。幾つかの実施形態においては、前方断片320は短く、急角度で先細りし、それによって、より広いテーパー角度を形成する。前方断片320はまた、長く、かつ、より緩やかに先細りすることができ、それによって、より狭いテーパー角度を形成する。テーパー角度θは、図3Eに図示される。幾つかの実施形態においては、テーパー角度θは、約2°から約10°である。例えば、幾つかの実施形態においては、テーパー角度θは、約3.8°から約7.8°である。幾つかの実施形態においては、θは、約7.8°である。幾つかの実施形態においては、前方断片320は、約1mmから約5mmの、第一の軸Aに沿った長さを有する。例えば、幾つかの実施形態においては、前方断片320の長さは、約1.7mmから約3.5mmである。
【0112】
図3Bを参照すると、本発明の方法で使用する移植片の幾つかの実施形態においては、第二の部材310は、第三の部材もしくは尾部330から第二の軸Bの方向にほぼ沿って伸びる直立断片335を含む。様々な実施形態においては、第二の部材310は、第三の部材もしくは尾部330とは逆端において直立断片335に取り付ける、頭部断片340をさらに含む。幾つかの実施形態においては、涙腺移植片300が涙小管内に配置されるときに、頭部断片340が涙点の外部を包囲する組織と接触する一方、直立断片335が涙小管の垂直部分にあるように、第二の部材310は構成される。図3A図3Fに図示される例示的一実施形態においては、直立断片335は円柱形状を有し、頭部断片340は、楕円または長方形構造を有する。しかしながら、あらゆる他の適切な形状または構造が使用されることができ、本発明の範囲内にあることが理解されるだろう。例えば、様々な実施形態においては、直立断片335は、円錐形であるように構成され、頭部断片340は、円形、楕円形または多角形の断面を有するように構成される。
【0113】
幾つかの実施形態においては、直立断片335は、約0.7mmから約0.9mmの特徴的な直径を有する。例えば、幾つかの実施形態においては、直立断片335の特徴的な直径は、約0.8mmである。
【0114】
幾つかの実施形態においては、直立断片335は、約0.7mmから約1.5mmの、第二の軸Bの方向における長さを有する。例えば、幾つかの実施形態においては、第二の軸Bの方向に沿った直立断片335の長さは、約0.9mmである。
【0115】
一般的に、頭部断片340は、短軸および長軸によって特徴づけられる断面を有する。短軸および長軸は、断面の最短の特徴的な直径と、最長の特徴的な直径を其々指す。このように、短軸は、長軸以下である。例えば、幾つかの実施形態においては、頭部断片340が円形断面を有する場合、短軸および長軸は等しい長さである。様々な実施形態においては、頭部断片340は、楕円形または長方形断面を有し、短軸は長軸よりも短い。幾つかの実施形態においては、頭部断片340は、第一の軸Aと平行な方向に延長される。長軸は、第一の部材305の伸長を示し、涙点および涙小管内に涙腺移植片300を配置することを容易にする。幾つかの実施形態においては、長軸は約1.5mmから約2.5mmである。様々な実施形態においては、短軸は、約1mmから約1.5mmである。例えば、幾つかの実施形態においては、頭部断片340の長軸および短軸は、其々約1.9mmと1.3mmである。幾つかの実施形態においては、頭部断片340は、約0.2mmから約0.4mmの、第二の軸の方向における厚さを有する。例えば、幾つかの実施形態においては、第二の軸の方向における頭部断片340の厚さは、約0.3mmである。
【0116】
図3Bをさらに参照すると、例示的な頭部断片340は、第三の部材もしくは尾部330に直面する下面350と、第三の部材もしくは尾部330から外側を向く外面355とを含む。例示的な頭部断片340は、下面350および外面355を結合する端面345をさらに含む。下面350と外面355との間の距離は、容易に変更されることができる。幾つかの実施形態においては、その距離は、約0.2mmから約0.4mmである。
【0117】
幾つかの実施形態においては、外面355は下面350よりも小さく、実質的に平坦である。様々な実施形態においては、端面345は、先細りするか、湾曲するか、角があるか、または多角的である。幾つかの実施形態においては、端面345は、約0.2mmから約0.7mmの曲率半径を有する。幾つかの実施形態においては、下面350はほぼ平坦であり、涙腺移植片300が涙小管内に配置されるとき、涙点を包囲する外部組織と接触するように構成される。
【0118】
幾つかの実施形態においては、第三の部材もしくは尾部330は、上面360と、下面365と側面370とを含む。図示された実施形態においては、穴385は、上面360から第三の部材もしくは尾部330に延びる。幾つかの実施形態においては、上面360および下面365は、実質的に平坦であり、ある距離によって相互に分離される。このような距離は、容易に可変であり、典型的には、約0.3mmから約0.7mmである。例えば、幾つかの実施形態においては、上面360および下面365は、約0.4mmから0.6mm(例えば、約0.53mm)の距離によって分離される。幾つかの実施形態においては、上面360は、第二の部材310との交差部を越えて伸びる。幾つかの実施形態においては、上面360は、約0.3から約0.6mmの距離の分、第二の部材310との交差部を越えて伸びる。上面360は、また、側面370とも接合されることができる。様々な実施形態においては、上面360および側面370は、湾曲した交差部380によって接合される。幾つかの実施形態においては、湾曲した交差部380は、約0.04mmから約0.08mmの曲率半径を有する。
【0119】
ここで図3Dおよび図3Fを参照すると、幾つかの実施形態においては、第三の部材もしくは尾部330は、第一の部材305に、または第一の部材305の中間断片315に、第三の部材もしくは尾部330を結合するように構成された尾部接続断片375を含む。尾部接続断片375は、平坦または湾曲した構造を含む容易に可変の形状である。図3Fにおいては、第二の軸Bの方向における尾部接続断片375の幅は、第一の軸Aの方向に沿って変化する。例えば、尾部接続断片375は、側面370または側面370の近傍で、第一の部材305の中間断片315の直径よりも小さい幅を有する。幾つかの実施形態においては、中間断片315との交差部または中間断片315との交差部の近傍で、尾部接続断片375は、幅が大きくなって、それにより、図3Fに図示されたような切欠きを形成する。切欠きは、第一の部材305または第二の部材310にぶつかる前に、第一の軸Aおよび第二の軸Bの双方に沿ってより深くなるか、またはより浅くなるかのいずれかとすることができることが理解されるだろう。
【0120】
切欠きは、本発明の移植片において必要不可欠な機構ではない。幾つかの実施形態においては、尾部接続断片375は、中間断片315の直径と同一の寸法を有する。例えば、第二の軸Bに沿った第三の部材もしくは尾部330の厚さは、第一の部材305の中間断片315の直径と等しい。例えば、幾つかの実施形態においては、第二の軸Bの方向における第三の部材もしくは尾部330の厚さと、中間断片315の直径との双方は、約0.53mmから約0.63mmである。このような構成においては、第三の部材もしくは尾部330は、図6における代替的な尾部接続断片675によって図示されるように、切欠きを形成することなく、中間断片315と結合する。
【0121】
例示として、図3A図3Fに図示された第三の部材もしくは尾部330は、第一の部材305の第一の軸Aに実質的に平行である。これは、必要不可欠なことではないことが理解されるだろう。幾つかの実施形態においては、第三の部材もしくは尾部330は、第一の軸Aに関して、角度を形成することができる。
【0122】
穴385の例示的構造が図3Eおよび図3Fに詳細に示され、ここで、涙腺移植片300の断面図および部分的に拡大された断面図が提供される。穴385は、涙点への涙腺移植片300の挿入を容易にするために、外部挿入ツールのチップまたは他の突起を受けるように構成される。尾部内の穴の寸法、形状、角度(θ)、および位置を含む構成は、穴と挿入ツールとのかみ合い、尾部の柔軟性、または涙腺移植片の保持を容易にするために容易に調整可能である。移植片の目的または用途と、尾部を製造するために用いられる材料とに依存して、上述の穴の特徴は、容易に変化する。本明細書に開示された穴385の構成は例示的なものであって、あらゆる他の適切な構成は、本発明の範囲内にある。
【0123】
図3Fにおいては、例示的な穴385は、第三の軸Cと、第一の角度θと同様の方法で第三の軸Aに対して第一の軸によって画定される第二の角度θとによって特徴づけられる。幾つかの実施形態においては、第二の角度θは、約15°から約90°である。例えば、幾つかの実施形態においては、第二の角度θは、約45°である。
【0124】
幾つかの実施形態においては、穴385は、約0.3mmから約0.7mmの、第三の軸Cの方向に沿った深さを有する。例えば、幾つかの実施形態においては、穴385の深さは、約0.4mmであり、幾つかの実施形態においては、約0.6mmである。穴385は、円形、楕円形、卵型、または多角形の断面を有するほぼ円柱形状の穴シャフト390を含んでもよい。穴385は、穴シャフト390が終端する穴チップ395をさらに含んでもよい。例示的な穴チップ395は、ほぼ半球の構造を有する。幾つかの実施形態においては、穴シャフト390は、約0.1mmから約0.3mmの特徴的な直径を有する。幾つかの実施形態においては、穴の特徴的な直径は、約0.17mmである。理解されるように、本出願で開示された形状、寸法、方向づけは例示的なものであって、あらゆる他の適切な形状、寸法、または方向付けが本出願の範囲内にある。さらに、穴の開口は、第二の部材に対してより近いか、もしくは尾部の端部に対してより近くに配置されることができることが理解されるだろう。
【0125】
図4A図4Cは、涙点212、214を通って、関連する涙小管208、210に挿入することが可能な例示的な涙腺移植片400を図示する。図4Aにおいては、涙腺移植片400は、様々な眼病、副鼻腔の疾病、または他の疾病の治療用に、眼または周囲組織に放出するための治療薬コアまたは他の物質を収容するように構成された空洞458を含む。
【0126】
図示された例示的実施形態においては、空洞458は、頭部断片340内に形成され、外面355を通る開口を有する。空洞458は、頭部断片340内に留まるように、浅くすることができる。空洞458は、また、より深くすることもでき、頭部断片340を越えて、直立断片335に伸びることができる。図示された例示的空洞458は、ほぼ、円形断面を有する実質的な円柱形状である。あらゆる他の適切な構成が、本出願の範囲内にある。例えば、幾つかの実施形態においては、空洞458は、先端を断ち切った半球構造を有し、または楕円形もしくは多角形断面を有する円柱構造を有する。
【0127】
幾つかの実施形態においては、空洞458は、約0.2mmから約1.4mmの、第二の軸Bの方向における深さを有する。例えば、幾つかの実施形態においては、空洞458の深さは約1.2mmである。幾つかの実施形態においては、空洞458は、約0.3mmから約0.7mmの直径を有する。例えば、幾つかの実施形態においては、空洞458の直径は、約0.42mmから約0.55mmである。例示的一実施形態においては、空洞458は、直立断片335に伸び、空洞458の直径は、直立断片335の直径よりも小さい。
【0128】
図4Cを参照すると、空洞458は底部482を含む。様々な実施形態においては、底部482は曲線的である。様々な実施形態においては、曲線の底部は、約0.03mmから約0.07mmの曲率半径を有する。
【0129】
図5は、空洞458の例示的構成を図示する。図5においては、空洞458は、空洞458の開口に配置された縁部584もしくは他の保持構造を含む。縁部584もしくは他の保持構造は、空洞458を部分的に包囲する、例えば、空洞458の外に治療薬コアまたは他の物質が流出することを防ぐように任意に構成される。幾つかの実施形態においては、縁部584は、外面355から空洞458へ下方に伸び、空洞458の開口の中心に向かって内部に伸びる正方形断面の環である。幾つかの実施形態においては、縁部584は、タブ構造であり、空洞458の開口に内部に伸びる複数の離隔された縁部を含む。縁部584は、下方に約0.02mmから約0.1mm伸び、内部に約0.02mmから約0.1mm伸びてもよい。例えば、幾つかの実施形態においては、縁部584は、下方または内部に約0.05mm伸びる。
【0130】
本発明の方法で使用する例示的な涙腺移植片は、プラスチック、ゴム、ポリマー、または複合材料を含む様々な材料で製造される。本発明の例示的な涙腺移植片は、プラスチック、ゴム、ポリマー、複合材料、または他の適切な材料を含む一つ以上の材料から形成される。幾つかの実施形態においては、涙腺移植片は、液状シリコンゴムから形成される。例えば、例示的実施形態においては、涙腺移植片は、NuSil4840液状シリコンゴム、NuSil4870、またはこのような液状シリコンゴムを含む混合物など、市販の材料から形成される。このような混合物の例は、約1%から約5%、例えば、約2%から約4%の6-4800を有するNuSil4840、を含む、6-4800として市販される材料を含む。
【0131】
幾つかの実施形態においては、涙腺移植片は、生分解性材料、例えば、ポリ(ビニルアルコール)などの架橋ポリマーを含む生分解性弾性材料から形成される。幾つかの実施形態においては、涙腺移植片は、シリコーン/ポリウレタンコポリマー、シリコーン/ウレタン、シリコーン/ポリ(エチレングリコール)(PEG)、およびシリコーン/2ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)などの、コポリマーを含むことができる。参照によってその全体において本明細書に組み入れられた、2008年9月5日に出願された、“DRUG CORES FOR SUSTAINED RELEASE OF THERAPEUTIC AGENTS”と題された、共同所有されたUtkhedeらによる米国特許出願整理番号12/231,986号で論じられるように、ウレタンベースのポリマーおよびコポリマー材料は、様々な処理方法を可能にし、相互に良好に結合する。
【0132】
材料の硬さは、涙点およびその関連する涙小管内での涙腺移植片の保持を容易にするか、または変化させるために選択される。したがって、幾つかの実施形態においては、約20Dから約80D、例えば、約30Dから約70D、例えば、約40Dから約60Dのデュロメータ評価値を有する材料が、患者の快適性および保持などのパラメータを調整するために有用である。例えば、幾つかの実施形態においては、涙腺移植片を形成するために用いられる材料のデュロメータ評価値は、約40Dである。明記された範囲内(特に約40Dである)の涙腺移植片用のデュロメータ評価値を提供する、上記に例示されたもの以外の材料も、また有用である。幾つかの実施形態においては、より硬い材料、またはより柔らかい材料が、涙腺移植片全体またはその一部に対して使用される。このような場合には、涙腺移植片は、約70Dのデュロメータ評価値を提供する材料から形成される。
【0133】
幾つかの実施形態においては、本発明の方法で使用する涙腺移植片は、複数の材料で形成され、涙腺移植片のある部材、または涙腺移植片の一部は、異なる特性を有する材料で形成される。例えば、幾つかの実施形態においては、第一の部材305は、より硬いデュロメータ評価値の材料で形成され、一方、第二の部材310は、より柔らかいデュロメータ評価値の材料で形成される。幾つかの実施形態においては、第一の部材305は、より柔らかいデュロメータ評価値の材料で形成され、一方、第二の部材310は、より硬いデュロメータ評価値の材料で形成される。幾つかの実施形態においては、第三の部材もしくは尾部330は、第二の部材310の残部の一つ以上の部分よりも硬いデュロメータ評価値の材料で形成される。様々な実施形態においては、第三の部材もしくは尾部330は、第二の部材310の残部よりも柔らかいデュロメータ評価値の材料で形成される。
【0134】
本発明で使用する例示的移植片は、当該技術分野で周知の方法によって形成されることができ、その方法は、所望の形状および寸法に対象物を機械加工することと、移植片を形成する材料を成型することとを含むが、そのいずれにも限定はされない。
【0135】
移植片は、長時間の間、抗炎症剤または薬剤を放出する、任意の数の異なる設計のうちの一つとすることができる。以下の特許文書の開示は、本発明の実施形態の方法で使用するための例示的移植片の構造または処理の実施形態、および当該移植片の製造方法を開示しており、その全体において、本明細書に参照によって組み入れられる。米国出願整理番号60/871,864号(2006年12月26日出願、Nasolacrimal Drainage System Implants for Drug Therapyと題される)、米国出願整理番号11/695,537号(2007年4月2日出願、Drug Delivery Methods, Structures, and Compositions for Nasolacrimal Systemと題される)、米国出願整理番号12/332,219号(2008年12月10日出願、Drug Delivery Methods, Structures, and Compositions for Nasolacrimal Systemと題される)、米国出願整理番号60/787,775号(2006年3月31日出願、Nasolacrimal Drainage System Implants for Drug Therapyと題される)、米国出願整理番号11/695,545号(2007年4月2日出願、Nasolacrimal Drainage System Implants for Drug Therapyと題される)、米国出願整理番号60/585,287号(2004年7月2日出願、Treatment Medium Delivery Device and Methods for Delivery of Such Treatment Mediums to the Eye Using Such a Delivery Deviceと題される)、米国出願整理番号11/571,147号(2006年12月21日出願、Treatment Medium Delivery Device and Methods for Delivery of Such Treatment Mediums to the Eye Using Such a Delivery Deviceと題される)、米国出願整理番号60/970,696号(2007年9月7日出願、Expandable Nasolacrimal Drainage System Implantsと題される)、米国出願整理番号60/974,367号(2007年9月21日出願、Expandable Nasolacrimal Drainage System Implantsと題される)、米国出願整理番号60/970,699号(2007年9月7日出願、Manufacture of Drug Cores for Sustained Release of Therapeutic Agentsと題される)、米国出願整理番号60/970,709号(2007年9月7日出願、Nasolacrimal Drainage System Implants for Drug Deliveryと題される)、米国出願整理番号60/970,720号(2007年9月7日出願、Manufacture of Expandable Nasolacrimal Drainage System Implantsと題される)、米国出願整理番号60/970,755号(2007年9月7日出願、Prostaglandin Analogues for Implant Devices and Methodsと題される)、米国出願整理番号60/970,820号(2007年9月7日出願、Multiple Drug Delivery Systems and Combinations of Drugs with Punctal Implantsと題される)、米国出願整理番号61/066,223号(2008年2月18日出願、Lacrimal Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号61/049,347号(2008年4月30日出願、Lacrimal Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号61/033,211号(2008年3月3日出願、Lacrimal Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号61/049,360号(2008年4月30日出願、Lacrimal Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号61/052,595号(2008年5月12日出願、Lacrimal Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号61/075,309号(2008年6月24日出願、Lacrimal Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号61/154,693号(2009年2月23日出願、Lacrimal Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号61/209,036号(2009年3月2日出願、Lacrimal Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号61/209,630号(2009年3月9日出願、Lacrimal Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号61/036,816号(2008年3月14日出願、Lacrimal Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号61/271,862号(2009年7月27日出願、Lacrimal Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号61/252,057号(2009年10月15日出願、Lacrimal Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号12/710,855号(2010年2月23日出願、Lacrimal Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号60/871,867号(2006年12月26日出願、Drug Delivery Implants for Inhibition of Optical Defectsと題される)、米国出願整理番号12/521,543号(2009年12月31日出願、Drug Delivery Implants for Inhibition of Optical Defectsと題される)、米国出願整理番号61/052,068号(2008年5月9日出願、Sustained Release Delivery of Latanoprost to Treat Glaucomaと題される)、米国出願整理番号61/052,113号(2008年5月9日出願、Sustained Release Delivery of Latanoprost to Treat Glaucomaと題される)、米国出願整理番号61/108,777号(2008年10月27日出願、Sustained Release Delivery of Latanoprost to Treat Glaucomaと題される)、米国出願整理番号12/463,279号(2009年5月8日出願、Sustained Release Delivery of Active Agents to Treat Glaucoma and Ocular Hypertensionと題される)、米国出願整理番号61/049,337号(2008年4月30日出願、Lacrimal Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号12/432,553号(2009年4月29日出願、Composite Lacrimal Insert and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号61/049,317号(2008年4月30日出願、Drug-Releasing Polyurethane Lacrimal Insertと題される)、米国出願整理番号12/378,710号(2009年2月17日出願、Lacrimal Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号61/075,284号(2008年6月24日出願、Combination Treatment of Glaucomaと題される)、米国出願整理番号12/490,923号(2009年6月24日出願、Combination Treatment of Glaucomaと題される)、米国出願整理番号61/134,271号(2008年7月8日出願、Lacrimal Implant Body Including Comforting Agentと題される)、米国出願整理番号12/499,605号(2009年7月8日出願、Lacrimal Implant Body Including Comforting Agentと題される)、米国出願整理番号61/057,246号(2008年5月30日出願、Surface Treatment of Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号61/132,927号(2008年6月24日出願、Surface Treated Implantable Articles and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号12/283,002号(2008年9月5日出願、Surface Treated Implantable Articles and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号12/231,989号(2008年9月5日出願、Lacrimal Implants and Related Methodsと題される)、米国出願整理番号61/049,317号(2008年4月30日出願、Drug-Releasing Polyurethane Lacrimal Insertと題される)、米国出願整理番号12/231,986号(2008年9月5日出願、Drug Cores for Sustained Release of Therapeutic Agentsと題される)、米国出願整理番号61/050,901号(2008年5月6日出願、Punctum Plug Detectionと題される)、米国出願整理番号12/231,987号(2008年9月5日出願、Lacrimal Implant Detectionと題される)、米国出願整理番号61/146,860号(2009年1月23日出願、Sustained Release Delivery of One or More Anti-Glaucoma Agentsと題される)、米国出願整理番号61/152,909号(2009年2月16日出願、Sustained Release Delivery of One or More Anti-Glaucoma Agentsと題される)、米国出願整理番号61/228,894号(2009年7月27日出願、Sustained Release Delivery of One or More Anti-Glaucoma Agentsと題される)、米国出願整理番号61/277,000号(2009年9月18日出願、Drug Cores for Sustained Ocular Release of Therapeutic Agentsと題される)、米国出願整理番号12/692,452号(2010年1月22日出願、Sustained Release Delivery of One or More Agentsと題される)、米国出願整理番号61/283,100号(2009年11月27日出願
、Lacrimal Implants Including Split and Insertable Drug Coreと題される)、国際出願整理番号PCT/US2010/058129(2010年11月26日出願、WO2011/066479として公開、Lacrimal Implants Including Split and Insertable Drug Coreと題される)、米国出願整理番号61/139,456号(2008年12月19日出願、Substance Delivering Punctum Implants and Methodsと題される)、米国出願整理番号12/643,502号(2009年12月21日出願、Substance Delivering Punctum Implants and Methodsと題される)、米国出願整理番号10/825,047号(2004年4月15日出願、Drug Delivery via Punctal Plugと題される)、米国出願整理番号12/604,202号(2009年10月22日出願、Drug Delivery via Ocular Implantと題される)、国際出願整理番号PCT/US2005/023848(2005年7月1日出願、WO2006/014434として公開、Treatment Medium Delivery Device and Methods for Deliveryと題される)、国際出願整理番号PCT/US2007/065792(2007年4月2日出願、WO2007/115261として公開、Drug Delivery Methods, Structures, and Compositions for Nasolacrimal Systemと題される)、および国際出願整理番号PCT/US2007/065789(2007年4月2日出願、WO2007/115259として公開、Nasolacrimal Drainage System Implants for Drug Therapyと題される)。
【0136】
本発明の方法の様々な実施形態においては、保持構造を含む移植片が、涙点または涙小管内に移植片を保持するために使用される。保持構造は、移植片本体に取り付けられるか、移植片本体と一体化している。保持構造は、移植片が所望の組織位置、例えば、涙点または涙小管に容易に配置できるような寸法および形状である適切な材料を含む。幾つかの実施形態においては、薬剤コアは、少なくとも部分的に鞘部を介して、保持構造に取り付けられてもよい。幾つかの実施形態においては、保持構造は、保持構造が涙点内に配置されるときに膨張するように構成されたヒドロゲルを含む。保持構造は、軸方向に方向づけられた表面を有する取り付け部材を含むことができる。幾つかの実施形態においては、ヒドロゲルの膨張は、ヒドロゲルが水和されつつ、ヒドロゲルを軸方向に方向づけられた表面に対して保持することができる。幾つかの実施形態においては、取り付け部材は、保持構造の一部を通る突起、フランジ、リム、または開口のうちの少なくとも一つを含むことができる。幾つかの実施形態においては、保持構造は、涙点および涙小管の組織に実質的に適合するような、移植片本体部の寸法および形状を含む。
【0137】
保持構造は、涙小管管腔内に少なくとも部分的に適合するのに適切な寸法を有してもよい。保持構造は、挿入に適した小さな外形の構造と、管腔内に保持構造を固定するための大きな外形の構造との間で拡張可能とすることができ、保持構造は、薬剤コアの遠位端の近傍に取り付けられることができる。特定の実施形態においては、保持構造が小さな外形の構造から大きな外形の構造に拡張するときに、保持構造は、近位端の近傍で薬剤コアに沿って滑動することができる。薬剤コアに沿った保持構造の長さは、小さい外形の構造よりも大きい外形の構造において、より短くすることができる。
【0138】
幾つかの実施形態においては、保持構造は、弾性的に拡張可能である。小さい外形は、約0.2mm未満の断面を有してもよく、大きい外形は、約2.0mm未満の断面を有してもよい。保持構造は、溝によって分離された腕部を有する管状本体を含んでもよい。保持構造は、薬剤コアを少なくとも部分的に覆うように配置されることができる。
【0139】
幾つかの実施形態においては、保持構造は、機械的に展開することができ、典型的には、所望の断面形状に拡張し、例えば、保持構造は、Nitinol(商標)などの超弾性形状記憶合金を含む。Nitinol(商標)に加えて他の材料が使用されることができ、例えば、所望の拡張を提供するための、弾力のある金属またはポリマー、塑性的に変形可能な金属またはポリマー、および形状記憶ポリマーなどである。幾つかの実施形態においては、SanDiego、CAのBiogeneral,Inc.から市販されているポリマーおよび被覆繊維が使用されてもよい。ステンレス鋼および非形状記憶合金などの多くの金属が使用されることができ、所望の拡張を提供することができる。この拡張能力は、様々な寸法、例えば、0.3mmから1.2mmの範囲の涙小管の中空の組織構造に移植片が適合することを可能とする(すなわち、一つの寸法がすべてに適合する)。単一の保持構造は、直径0.3から1.2mmの涙小管に適合するように製造されることができるが、複数の代替的に選択可能な保持構造が、必要に応じて、この範囲に適合するために用いられることができ、例えば、0.3から約0.9mmの涙小管に対して第一の保持構造が、約0.9から1.2mmの涙小管に対して第二の保持構造が用いられる。保持構造は、保持構造を取り付ける解剖学的構造に適切な長さを有し、例えば、涙小管の涙点近傍に配置された保持構造に対しては、約3mmの長さである。様々な解剖学的構造に対しては、長さは、適切な保持力を提供するために適切なものとすることができ、例えば、必要に応じて1mmから15mmの長さである。
【0140】
移植片本体は、上述されたように、保持構造の一端に取り付けられてもよいが、多くの実施形態においては、保持構造が拡張する間に、鞘部本体および薬剤コアを含む移植片本体の上で保持構造が滑動できるように、保持構造の他端は、移植片本体に取り付けられない。所望の断面幅をとるために保持構造が幅を拡張するにつれて、保持構造は長さが縮小し得るため、一端における滑動性能が望ましい。しかしながら、多くの実施形態は、コアに対して滑動しない鞘部本体を使用してもよいことに留意されたい。
【0141】
多くの実施形態においては、保持構造は、組織から回収されることができる。例えば、フック、ループ、またはリングなどの突起は、保持構造の除去を容易にするために、移植片本体の一部から延びることができる。
【0142】
幾つかの実施形態においては、鞘部および保持構造は、二部品を含むことができる。
【0143】
本発明の涙腺移植片は、非常に優れた保持特性を有し、選択された期間にわたって移植片を保持する、移植片が移植された眼の割合に基づくと、市販のプラグに対して向上した期間、涙点および涙小管内に保持される。
【0144】
例示的一実施形態においては、本発明の方法は、少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、または少なくとも約12週間以上、の間、涙点内に移植されたまま保持されるように構成された涙腺移植片を用いる。例示的一実施形態においては、涙腺移植片は、治療薬の意図された徐放期間、涙点によって保持されるように構成される。様々な実施形態においては、治療薬の意図された徐放期間は、少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、または少なくとも約12週間以上である。様々な実施形態においては、少なくとも約95%、少なくとも約90%、少なくとも約85%、または少なくとも約80%の移植された移植片が、治療薬の意図され、制御された放出の期間、保持される。例示的一実施形態においては、移植片は、効能を示すために、ある期間、涙点によって保持される。
【0145】
様々な実施形態においては、本発明は、涙点内の移植片の保持を高める構造的特徴を有する移植片の使用を可能とする。他の特徴の中でもとりわけ、本発明の移植片の尾部(例えば、330)は、涙小管膨大部(例えば、252)内に静止するように構成され、移植片をその位置に効率的にロックする。しかしながら、本発明者は、移植されたデバイスの回転や相対的な移動を防ぐために、デバイスの移動においてある役割を果たす第一の部材が膨大部内に尾部を維持する必要があったことを認識していた。したがって、第一の部材、例えば、305は、涙小管内に涙点プラグを安定させ、周囲の組織が動くときにプラグの回転を防ぎ位置を保持するように構成される。
【0146】
例示的一実施形態においては、本発明の方法は、密封構成要素を有する移植片を使用する。密封構成要素は、涙が流れることを阻害するために、保持構造に取り付けられ、保持構造とともに拡張可能とすることができる。密封構成要素は、管腔を通って涙が流れることを抑制してもよく、密封構成要素は、保持構造から管腔を保護するために、保持構造の少なくとも一部を覆ってもよい。移植片が、中空の組織構造を通る流体の流れ(例えば、涙小管を通る涙液)を少なくとも部分的に抑制、阻害さえもすることができるように、密封構成要素は、適切な寸法および形状の材料を含む。密封材料は、保持構造とともに拡張や収縮が可能な生体適合性材料、例えばシリコン(silicone)の薄い壁の膜であってもよい。密封構成要素は、上述されたように、保持構造の一端の上を滑動し、保持構造の一端に取り付けられた材料の分離された薄い管として形成される。あるいは、密封構成要素は、生体適合性ポリマー、例えば、シリコンポリマー内に保持構造を浸漬被覆することによって形成されることができる。密封構成要素の厚さは、約0.01mmから約0.15mmで、しばしば、約0.05mmから0.1mmの範囲とすることができる。
【0147】
[使用方法]
実施形態においては、白内障手術前または白内障手術後の治療用に眼に眼薬を送達するための方法が本明細書に提供され、その方法は、本明細書に開示された固体マトリクス徐放眼薬製剤のうちの任意のものを含む、本明細書に開示された医用デバイスを患者の眼上、眼内または眼の近傍に配置することを含み、眼薬は、NSAIDまたはステロイド系抗炎症剤である。ある実施形態においては、医用デバイスは涙腺移植片であり、涙腺移植片は、患者の涙点を通じて、涙小管内へ配置される。他のある実施形態においては、医用デバイスは涙小管内プラグであり、涙小管内プラグは、患者の涙点を通じて、涙小管内へ配置される。他の実施形態においては、医用デバイスは、眼リングであり、リングは、眼の表面上と眼瞼下(視野外)に配置される。
【0148】
実施形態においては、白内障手術前後の治療期間は、約2週間から約4週間である。
【0149】
実施形態においては、ドライアイ治療用に眼に眼薬を送達するための方法が本明細書で提供され、その方法は、本明細書に開示された固体マトリクス徐放眼薬製剤のうちの任意のものを含む、本明細書に開示された医用デバイスを患者の眼上、眼内または眼の近傍に配置することを含み、眼薬は、シクロスポリンである。ある実施形態においては、医用デバイスは涙腺移植片であり、涙腺移植片は、患者の涙点を通じて、涙小管内へ配置される。他のある実施形態においては、医用デバイスは涙小管内プラグであり、涙小管内プラグは、患者の涙点を通じて、涙小管内へ配置される。他の実施形態においては、医用デバイスは、眼リングであり、リングは、眼の表面上と眼瞼下(視野外)に配置される。
【0150】
実施形態においては、ドライアイ用の治療期間は、約1か月から約6か月である。
【0151】
本発明の方法は、様々な経路によって治療の必要なほ乳類に投与されることができる。例えば、薬剤送達システムは、局所的、例えば、眼の内部に薬剤送達が必要な生体の一部内に移植することによって用いられ得る。しかしながら、例示的なマトリクス制御された拡散薬剤送達システムは、眼科領域で当業者に周知の他の手術手順に従って同様に用いられてもよい。例えば、薬剤送達システムは、本技術分野で周知の器具を用いた治療を必要とする眼の領域に投与されることができる。例えば、米国特許出願公開番号2002/0002362に開示されたフレキシブルマイクロカテーテルシステムもしくはカニューレ、または、米国特許番号5,273,530および5,409,457に開示された網膜内送達および除去システムで、これら各々の内容は、本明細書に参照によって組み入れられる。薬剤的に活性を有する薬剤は、持続的に長期間にわたって、薬剤送達デバイスから放出され得る。任意で、薬剤放出速度は、また、例えば、薬剤送達デバイスの表面処理によって、内部拡散バリアの取り付けを通じて制御され得る。表面処理は、例えば、酸化プラズマ、蒸着、浸漬被覆または押出成形技術といった、本技術分野で周知の様々な表面処理技術を通じて適用され得る。
【0152】
[任意の製剤構成成分]
本発明の製剤は、薬学的に許容可能なキャリアをさらに含み得、それは、例えば、賦形剤、沈殿防止剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、溶剤、分散媒、コーティング、等張剤、および当該技術分野で周知の他の物質である。薬剤的な製剤は、任意で、増強剤、錯化剤、標的薬剤、安定剤、溶剤、加圧ガスまたは可溶化剤複合物を含む。
【0153】
例示的な賦形剤は、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールなどの糖、コーンスターチ、小麦スターチ、米スターチ、ポテトスターチ、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルオキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース製剤を含む。望ましい賦形剤は、ラクトース、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および低分子量のスターチ製品を含む。
【0154】
加圧パック吸入システム内でバルブ潤滑剤として機能することができる例示的な沈殿防止剤が望ましい。このような薬剤は、オレイン酸、カルボン酸単純誘導体、およびソルビタントリオレエートを含む。
【0155】
例示的な希釈剤は、水、生理食塩水、リン酸緩衝クエン酸または生理食塩水溶液、および粘液溶解薬を含む。他の考えられ得る希釈剤は、アルコール、プロピレングリコールおよびエタノールを含み、これらの溶剤または希釈剤は、口腔エアゾール製剤でより一般的である。呼吸器系と適合する張性およびpHを有する生理学的に許容可能な希釈剤が望ましい。望ましい希釈剤は、塩化ナトリウムまたはスクロースまたはデキストロースまたはマンニトールで張性が調整された等張生理食塩水、リン酸緩衝等張溶液を含む。
【0156】
例示的な充填剤は、グリセリン、プロピレングリコール、エタノールを液体または流体の調剤中に含む。乾燥粉末吸入システム用の適切な充填剤は、ラクトース、スクロース、デキストロース、適切なアミノ酸およびラクトースの誘導体を含む。望ましい充填剤は、グリセリン、プロピレングリコール、ラクトースおよびあるアミノ酸を含む。
【0157】
例示的塩は、生理学的に適合し、所望の張性の調整を提供するものを含む。強酸または弱酸の一価および二価の塩が望ましい。望ましい塩は、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、リン酸ナトリウムを含む。
【0158】
例示的緩衝剤は、リン酸もしくはクエン酸緩衝液、または低い緩衝容量の混合緩衝系を含む。望ましい緩衝剤は、リン酸またはクエン酸緩衝剤を含む。
【0159】
[実施例]
以下の実施例は、本明細書で提供された実施形態の使用法を完全に開示し、記述するために、当業者に提示されるものであって、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、また、以下の実施例が実験の全てまたは実施された実験のみであることを表すことを意図するものでもない。用いられる数(例えば、量、温度など)について精度を保証する努力はなされ得るが、何らかの実験的誤りおよび誤差が説明されるべきである。他に示されない限りは、部分は、体積による部分であり、温度は、セ氏である。記述されたような方法における変更は、実施例が図示することを意味する基本的態様を変更することなく行われることができることが理解されるべきである。
【0160】
実施例1:ポリカプロラクトンおよびPEG400マトリクス内のネパフェナク薬剤挿入物の製造。
ネパフェナク(0.685g)、ポリカプロラクトンポリマー(0.210g、SigmaAldrich)およびポリエチレングリコール400(PEG400)(0.105g、SigmaAldrich)が、透明な黄色溶液が得られるまで室温で撹拌することによって、70mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解された。混合時間は約2.5時間であった。混合液は、THFを除去するために回転蒸発装置を用いて乾燥され、真空オーブンで40℃で、その後、少なくとも12時間高真空にされた。続いて、乾燥した混合物は、スライドグラスに移され、手動撹拌でホットプレート上で溶解された。混合物は、その後冷却された。冷却された混合物は、12インチの長さのポリイミド鞘部(内径0.022インチ、外径0.024インチ)に取り付けられたステンレス鋼シリンジに移された。ここで、混合物は、圧力下(60psi)で加熱された(70℃)押出機内の鞘部に押し出された。押し出されたネパフェナク/ポリカプロラクトン/PEG400混合物は冷却され、鞘部は0.95mmの長さに切断され、一端は、シアノアクリレート接着剤で密封された。完成したネパフェナク薬剤挿入物は、その後、本明細書に開示される涙点プラグの受空洞内に配置された。各薬剤挿入物は、約192±14μgのネパフェナクを含有した。
【0161】
実施例2:界面活性剤を有するポリカプロラクトンおよびPEG400マトリクス内のネパフェナク薬剤挿入物の製造。
ネパフェナク(1.32g)、ポリカプロラクトンポリマー(0.400g、SigmaAldrich)、ポリエチレングリコール400(PEG400)(0.200g、SigmaAldrich)およびチロキサポール(0.080g、SigmaAldrich)は、透明な黄色溶液が得られるまで60℃で撹拌することによって、100mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解された。混合時間は約10分間であった。混合液は、THFを除去するために回転蒸発装置を用いて乾燥され、真空オーブンで60℃で、その後、少なくとも12時間高真空にされた。続いて、乾燥した混合物は、手動撹拌で加熱マントルを用いて丸底フラスコ内で混合された。混合物は、その後冷却された。冷却された混合物は、12インチの長さのポリイミド鞘部(内径0.022インチ、外径0.024インチ)に取り付けられたステンレス鋼シリンジに移された。ここで、混合物は、圧力下(30psi)で加熱された(62℃)押出機内の鞘部に押し出された。押し出されたネパフェナク/ポリカプロラクトン/PEG400/チロキサポール混合物は冷却され、鞘部は0.95mmの長さに切断され、一端は、シアノアクリレート接着剤で密封された。完成したネパフェナク薬剤挿入物は、その後、本明細書に開示される涙点プラグの受空洞内に配置された。各薬剤挿入物は、約204μgのネパフェナクを含有した。
【0162】
実施例3:(界面活性剤がある場合とない場合の)ポリカプロラクトンおよびPEG400マトリクス内のネパフェナク薬剤挿入物の溶出プロファイル。
ネパフェナク薬剤挿入物は、実施例1で開示されたように準備された。各薬剤挿入物は、60-70%w/wの範囲のネパフェナクと、30-21%w/wのポリカプロラクトン80Kポリマーと、10-10.5%w/wのPEG400ポリマーとを含む。薬剤挿入物からのネパフェナクの溶出は、約1mlの溶出緩衝液(0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を有するリン酸緩衝液)内に(涙点プラグ内の)薬剤挿入物を配置することによって評価された。ネパフェナク薬剤挿入物を含む涙点プラグは、新しい溶出バッファに毎日移されて、緩衝液内の薬剤量が測定された。結果は、50日の期間にわたって、日毎に少なくとも1μgのネパフェナクの長期溶出を示した。図7を参照されたい。
【0163】
さらなる溶出の研究が行われ、薬剤挿入物は、本質的には実施例1で開示されたように準備され、各薬剤挿入物は、50-70%w/wの範囲のネパフェナクと、17-21%w/wのポリカプロラクトンポリマーと、10-15%w/wのPEG400ポリマーとを含んでいた。薬剤挿入物からネパフェナクの溶出は、本質的には上記に開示されたように評価された。結果は、30日の期間にわたって、日毎に少なくとも1μgのネパフェナクの長期溶出を示した。図8を参照されたい。
【0164】
さらなる溶出の研究が行われ、薬剤挿入物は、本質的には実施例2で開示されたように準備され、各薬剤挿入物は、55-66%w/wの範囲のネパフェナクと、20%w/wのポリカプロラクトンポリマーと、4-15%w/wの界面活性剤(チロキサポールまたはポリソルベート80)と、10%w/wのPEG400ポリマーとを含んでいた。薬剤挿入物からのネパフェナクの溶出は、本質的には上記に開示されたように評価された。結果は、14日間にわたって、日毎に少なくとも1.5μgのネパフェナクの長期溶出を示した。界面活性剤の追加は、固体マトリクスの押出の効率を改善した。図14を参照されたい。
【0165】
最後の溶出の研究が行われ、薬剤挿入物は、本質的には実施例2で開示されたように準備され、各薬剤挿入物は、約66%w/wのネパフェナクと、約20%w/wのポリカプロラクトンポリマーと、約10%w/wのPEG400ポリマーと、約4%w/wのチロキサポールとを含んでいた。薬剤挿入物からのネパフェナクの溶出は、本質的には上記に開示されたように評価された。結果は、15日間にわたって、日毎に少なくとも1μgのネパフェナクの長期溶出を示した。図10を参照されたい。
【0166】
実施例4:PEG400マトリクス内のジフルプレドナートの製造。
ジフルプレドナート(0.240g)およびポリエチレングリコール400(PEG400)(0.060g、SigmaAldrich)は、透明無色溶液が得られるまで、室温で撹拌することによって約15mlのクロロホルムに溶解された。混合液は、溶媒を除去するために回転蒸発装置を用いて乾燥され、真空オーブンで40℃で、少なくとも12時間乾燥された。乾燥された混合物は、12インチの長さのポリイミド鞘部(内径0.022インチ、外径0.024インチ)に取り付けられたステンレス鋼シリンジに移された。ここで、混合物は、圧力下(45psiまで)で加熱された(240℃)押出機内の鞘部に押し出された。押し出されたジフルプレドナート/PEG400混合物は冷却され、鞘部は0.95mmの長さに切断され、一端は、シアノアクリレート接着剤で密封された。完成したジフルプレドナート薬剤挿入物は、その後、本明細書に開示される涙点プラグの受空洞内に配置された。各薬剤挿入物は、約193±11μgのジフルプレドナートを含有した。
【0167】
実施例5:PEG400マトリクス内のジフルプレドナート薬剤挿入物の溶出プロファイル。
ジフルプレドナート薬剤挿入物は、実施例4で開示されたように準備された。各薬剤挿入物は、約80%w/wのジフルプレドナートと、約20%w/wのPEG400ポリマーとを含む。薬剤挿入物からのジフルプレドナートの溶出は、約1mlの溶出緩衝液(0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を有するリン酸緩衝液)内に(涙点プラグ内の)薬剤挿入物を配置することによって評価された。ジフルプレドナート薬剤挿入物を含む涙点プラグは、毎日新しい溶出緩衝液に移されて、緩衝液内の薬剤の量が測定された。結果は、14日間にわたって、日毎に少なくとも2μgのジフルプレドナートの長期溶出を示した。図9を参照されたい。
【0168】
実施例6:界面活性剤を有するPEG2000マトリクス内のジフルプレドナートの製造。
ジフルプレドナート(0.240g)、ポリソルベート80(.020g)およびポリエチレングリコール2000(PEG2000)(0.060g、SigmaAldrich)は、透明無色溶液が得られるまで、室温で撹拌することによって約15mlのジクロロメタンに溶解された。混合液は、溶媒を除去するために回転蒸発装置を用いて乾燥され、真空オーブンで約40℃で、少なくとも12時間乾燥された。乾燥された混合物は、12インチの長さのポリイミド鞘部(内径0.022インチ、外径0.024インチ)に取り付けられたステンレス鋼シリンジに移された。ここで、混合物は、圧力下(45psiまで)で加熱された(200℃)押出機内の鞘部に押し出された。押し出されたジフルプレドナート/PEG2000/ポリソルベート80混合物は冷却され、鞘部は0.95mmの長さに切断され、一端は、シアノアクリレート接着剤で密封された。完成したジフルプレドナート薬剤挿入物は、その後、本明細書に開示される涙点プラグの受空洞内に配置された。各薬剤挿入物は、約110μgのジフルプレドナートを含有した。
【0169】
実施例7:界面活性剤を有するPEG2000マトリクス内のジフルプレドナート薬剤挿入物の溶出プロファイル。
ジフルプレドナート薬剤挿入物は、実施例6で開示されたように準備された。各薬剤挿入物は、約40%w/wのジフルプレドナートと、5-10%w/wのポリソルベート80と、約45-50%w/wのPEG2000ポリマーとを含む。薬剤挿入物からのジフルプレドナートの溶出は、約1mlの溶出緩衝液(0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を有するリン酸緩衝液)内に(涙点プラグ内の)薬剤挿入物を配置することによって評価された。ジフルプレドナート薬剤挿入物を含む涙点プラグは、毎日新しい溶出緩衝液に移されて、緩衝液内の薬剤の量が測定された。結果は、8日間にわたって、日毎に少なくとも2μgのジフルプレドナートの長期溶出を示した。図11を参照されたい。
【0170】
実施例8:固体および液体界面活性剤の組み合わせにおけるジフルプレドナート薬剤挿入物の製造。
ジフルプレドナート(0.120g)、ポリソルベート80(0.045g)およびソルビタンモノパルミテート(Span40)は、透明無色溶液が得られるまで、室温で撹拌することによって約15mlのジクロロメタンに溶解された。混合液は、溶媒を除去するために回転蒸発装置を用いて乾燥され、真空オーブンで約40℃で、少なくとも12時間乾燥された。乾燥された混合物は、12インチの長さのポリイミド鞘部(内径0.022インチ、外径0.024インチ)に取り付けられたステンレス鋼シリンジに移された。ここで、混合物は、圧力下(45psiまで)で加熱された(200℃)押出機内の鞘部に押し出された。押し出されたジフルプレドナート/ポリソルベート80/Span40混合物は冷却され、鞘部は0.95mmの長さに切断され、一端は、シアノアクリレート接着剤で密封された。完成したジフルプレドナート薬剤挿入物は、その後、本明細書に開示される涙点プラグの受空洞内に配置された。各薬剤挿入物は、約110μgのジフルプレドナートを含有した。
【0171】
実施例9:固体および液体界面活性剤の組み合わせを有するマトリクス内のジフルプレドナート薬剤挿入物の溶出プロファイル。
ジフルプレドナート薬剤挿入物は、実施例8で開示されたように準備された。各薬剤挿入物は、約40-60%(w/w)のジフルプレドナートと、10-15%w/wのポリソルベート80と、約30-45%w/wのSpan40とを含む。薬剤挿入物からのジフルプレドナートの溶出は、約1mlの溶出緩衝液(0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を有するリン酸緩衝液)内に(涙点プラグ内の)薬剤挿入物を配置することによって評価される。ジフルプレドナート薬剤挿入物を含む涙点プラグは、毎日新しい溶出緩衝液に移されて、緩衝液内の薬剤の量が測定された。結果は、40%(w/w)のジフルプレドナートと、15%のポリソルベート80と、約45%w/wのSpan40との製剤として、4日間にわたって、日毎に少なくとも10μgのジフルプレドナートの長期溶出を示した。図15を参照されたい。
【0172】
実施例10:界面活性剤を有するポリカプロラクトンおよびPEG2000マトリクス内のシクロスポリン薬剤挿入物の製造。
シクロスポリンA(0.292g)、ポリソルベート80(0.146g)、ポリカプロラクトン(0.013g)およびポリエチレングリコール2000(PEG2000)(0.049g、SigmaAldrich)は、透明無色溶液が得られるまで、室温で撹拌することによって約10mlのテトラヒドロフランに溶解された。混合液は、溶媒を除去するために回転蒸発装置を用いて乾燥され、真空オーブンで50℃で、少なくとも12時間乾燥された。乾燥された混合物は、12インチの長さのポリイミド鞘部(内径0.022インチ、外径0.024インチ)に取り付けられたステンレス鋼シリンジに移された。ここで、混合物は、圧力下(10psiまで)で加熱された(約75℃)押出機内の鞘部に押し出された。押し出されたシクロスポリンA/PEG2000/ポリソルベート80/ポリカプロラクトン混合物は冷却され、鞘部は0.95mmの長さに切断され、一端は、シアノアクリレート接着剤で密封された。完成したシクロスポリンA薬剤挿入物は、その後、本明細書に開示される涙点プラグの受空洞内に配置された。各薬剤挿入物は、約150±2μgのシクロスポリンを含有した。
【0173】
実施例11:界面活性剤を有するポリカプロラクトンおよびPEG2000マトリクス内のシクロスポリンA薬剤挿入物の溶出プロファイル。
シクロスポリンA薬剤挿入物は、実施例9で開示されたように準備された。各薬剤挿入物は、約36-58.5%w/wのシクロスポリンAと、18-29.25%w/wのポリソルベート80と、2.5-40%w/wのポリカプロラクトンと、約6-9.75%w/wのPEG2000ポリマーとを含む。薬剤挿入物からのシクロスポリンAの溶出は、約1mlの溶出緩衝液(0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を有するリン酸緩衝液)内に(涙点プラグ内の)薬剤挿入物を配置することによって評価された。シクロスポリンA薬剤挿入物を含む涙点プラグは、毎日新しい溶出緩衝液に移されて、緩衝液内の薬剤の量が測定された。結果は、28日間にわたって、日毎に少なくとも2μgのシクロスポリンの長期溶出を示した。図12および図13を参照されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15