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特許7324374酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトー及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/04 20230101AFI20230802BHJP
   C23C 8/10 20060101ALI20230802BHJP
   B22F 10/34 20210101ALI20230802BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20230802BHJP
   B22F 5/00 20060101ALI20230802BHJP
   C22C 16/00 20060101ALI20230802BHJP
   C22F 1/18 20060101ALI20230802BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230802BHJP
   A61L 27/04 20060101ALI20230802BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230802BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230802BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20230802BHJP
【FI】
C22C1/04 E
C23C8/10
B22F10/34
B22F1/052
B22F5/00 Z
C22C16/00
C22F1/18 E
B22F1/00 R
A61L27/04
B33Y10/00
B33Y80/00
C22F1/00 621
C22F1/00 628
C22F1/00 630A
C22F1/00 630C
C22F1/00 630D
C22F1/00 640A
C22F1/00 675
C22F1/00 613
C22F1/00 687
C22F1/00 691A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 692A
C22F1/00 692B
C22F1/00 692Z
C22F1/00 691Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022545387
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 CN2021101285
(87)【国際公開番号】W WO2022088703
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】202011195196.6
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522225594
【氏名又は名称】嘉思特医療器材(天津)股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】劉 念
(72)【発明者】
【氏名】李 莉
(72)【発明者】
【氏名】王 献抗
(72)【発明者】
【氏名】曹 雨
(72)【発明者】
【氏名】楊 友
(72)【発明者】
【氏名】周 紅秀
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534116(JP,A)
【文献】特開平06-233811(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109620481(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0216940(US,A1)
【文献】特表2017-520282(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106618804(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F1/00-12/90;C22C1/04-1/059;33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの第1の中間生成物を得、前記第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、不活性ガスの保護雰囲気下にて、温度を1250℃~1400℃に上げ、140MPa~180MPaにて一定温度で1時間~3時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)前記第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃~-120℃に下げ、一定温度で5時間~10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間~36時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)前記第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃~-120℃に下げ、一定温度で5時間~10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間~36時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
4)前記第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、半脛骨プラトートレイ上面の表面粗さRa≦0.050μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、
5)前記第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量5質量%~15質量%の常圧不活性ガスを導入し、5℃/分~20℃/分で500℃~700℃に加熱し、0.4℃/分~0.9℃/分で温度を400℃~495℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーを得るステップ、
を有する酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの製造方法であって、
前記不活性ガスはヘリウムガス又はアルゴンガスであり;
前記酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの構造は、半脛骨プラトートレイ(1)を含み、前記半脛骨プラトートレイの直線縁の上面に側壁(2)が設けられ、前記半脛骨プラトートレイの下面の前記側壁近くに長丸孔付きの半楕円形キール(3)が設けられ、前記半脛骨プラトートレイの下面及び前記長丸孔付きの半楕円形キールの表面に骨梁が設けられ、前記半脛骨プラトートレイの下面において前記長丸孔付きの半楕円形キールを連結する部分以外の他の部分に設けられた骨梁は、前方骨梁(8)及び後方骨梁(9)に分けられ、前記前方骨梁(8)と前記後方骨梁(9)の領域分割線(6)は前記側壁(2)に対して垂直に配置され、又は前記側壁(2)に対して45°~70°の角度(4)をなすように配置され;前記長丸孔付きの半楕円形キールの表面に設けられた骨梁は、上部骨梁(10)及び下部骨梁(11)に分けられ、前記上部骨梁及び前記下部骨梁の領域分割線が第2の領域分割線(12)であり、前記第2の領域分割線が長丸孔の頂部の下面又は長丸孔の底部の上面に位置し;
上部骨梁(10)の気孔径及び気孔率は、順次に前記後方骨梁、前記前方骨梁及び前記下部骨梁より小さい、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%でZr:85.6%~96.5%、Nb:1.0%~12.5%を含有し、残部が不可避不純物であり;前記ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45μm~150μmである
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ2)、前記ステップ3)の温度調整は、温度を-120℃~-80℃に上げ、一定温度で3時間~5時間保持し、次に温度を-40℃~-20℃に上げ、一定温度で3時間~5時間保持し、さらに温度を4℃~8℃に上げ、一定温度で1時間~3時間保持した後、温度を上げる
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記領域分割線(6)は、前記側壁(2)に対して垂直に設置され、前記領域分割線(6)と前記側壁(2)との交点(5)が前記側壁を側壁前部(13)及び側壁後部(14)に分割し、前記側壁前部(13)と前記側壁後部(14)の比率が(2-3):1である
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記領域分割線(6)は、前記側壁に対して45°~70°の角度(4)をなすように配置され、領域分割線(6)と前記側壁(2)との交点(5)が前記側壁の中に位置する
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記上部骨梁(10)の気孔径は、351μm~450μmで、気孔率が60%~65%であり;
前記後方骨梁(9)の気孔径は、451μm~550μmで、気孔率が66%~70%であり;
前記前方骨梁(8)の気孔径は、551μm~650μmで、気孔率が70%~75%であり;
前記下部骨梁(11)の気孔径は、651μm~750μmで、気孔率が76%~80%であり;
前記上部骨梁(10)、前記後方骨梁(9)、前記前方骨梁(8)及び前記下部骨梁(11)は、1mm~2mmの範囲の同じ厚さを有する
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の方法で製造され
半脛骨プラトートレイ(1)を含み、前記半脛骨プラトートレイの直線縁の上面に側壁(2)が設けられ、前記半脛骨プラトートレイの下面の前記側壁近くに長丸孔付きの半楕円形キール(3)が設けられ、前記半脛骨プラトートレイの下面及び前記長丸孔付きの半楕円形キールの表面に骨梁が設けられ、前記半脛骨プラトートレイの下面において前記長丸孔付きの半楕円形キールを連結する部分以外の他の部分に設けられた骨梁は、前方骨梁(8)及び後方骨梁(9)に分けられ、前記前方骨梁(8)と前記後方骨梁(9)の領域分割線(6)は前記側壁(2)に対して垂直に配置され、又は前記側壁(2)に対して45°~70°の角度(4)をなすように配置され;前記長丸孔付きの半楕円形キールの表面に設けられた骨梁は、上部骨梁(10)及び下部骨梁(11)に分けられ、前記上部骨梁及び前記下部骨梁の領域分割線が第2の領域分割線(12)であり、前記第2の領域分割線が長丸孔の頂部の下面又は長丸孔の底部の上面に位置し;
上部骨梁(10)の気孔径及び気孔率は、順次に前記後方骨梁、前記前方骨梁及び前記下部骨梁より小さい
ことを特徴とする酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工関節の技術分野に関し、特に、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユニコンパートメント膝関節プロテーゼは、膝関節の片側の病変のあるコンパートメントの表面置換に使用され、手術の傷口が小さく、骨を削る量も少なく、他の正常な関節コンパートメントに影響を与えないか、影響が少なく、膝伸展装置に損傷を与えることなく、十字靭帯と軟骨が保たれることができるため、単顆膝関節置換術後の回復が早く、合併症が少なく、膝関節の自然な動き及び固有受容感覚が保たれる。
【0003】
現在、ユニコンパートメント膝関節プロテーゼは、固定方法の違いによって骨セメント固定及び生物学的固定に分けられる。骨セメント固定は、骨セメントの割れ、骨組織への熱傷、感染などの臨床的な骨セメント症候群が引き起こしやすいだけではなく、プロテーゼが緩んでいると誤って考えて、臨床上の生理学的な透亮像の誤判断を引き起こしやすく、術後の多くの不必要な改修をもたらす。
【0004】
生物学的なユニコンパートメント膝関節プロテーゼは、骨組織とプロテーゼの界面の効果的な嵌め合いを実現し、骨セメント固定によってもたらされる欠陥を防ぐことができる。現在、生物学的なユニコンパートメント膝関節プロテーゼの多くは、ダブルコーティング技術(チタン多孔体+HAコーティング)で、コーティングの剥離、コーティング塗布厚さが不均一で、プロテーゼの長期固定に影響を与えるリスクがある。また、人工関節置換術が失敗する主な原因は、プロテーゼと骨の間の大きな剛性の違いによって生じる応力遮蔽は、プロテーゼの周りの骨リモデリングを引き起こし、プロテーゼの緩みにつながる。従来の生物学的なユニコンパートメント膝関節プロテーゼの弾性率は、骨組織よりもはるかに大きく、プロテーゼと骨界面の間の応力遮蔽力を大幅に高め、骨芽細胞の形成を減らし、最終的にプロテーゼの緩みにつながる。3Dプリントの均質な骨梁ユニコンパートメント膝関節プロテーゼは、ある程度で応力遮蔽効果を低減し、プロテーゼの長期生存率を向上させることができ、異なる領域での骨組織の力学的特性の差異及び異なる領域でのプロテーゼの力学的な環境の差異により、均質な骨梁プロテーゼ固定の不均一性を引き起こし、プロテーゼの長期的な安定性に一定の影響を及ぼし、失敗のリスクを高める。
【0005】
ジルコニウム・ニオブ合金は、優れた耐食性、機械的性質、及び優れた生体適合性を備え、医療機器の分野で徐々に応用されている。ジルコニウム・ニオブ合金は、N、C、Oなどの元素と反応して、表面に硬い酸化門層を形成でき、優れた耐摩耗性及び低い摩耗率を備えているため、柔軟な材料の摩耗を低減でき、すなわち関節表面・界面の耐摩耗性に優れている。かつ酸化物層は、金属イオンの放出を減らすことができ、優れた生体適合性を持ち、すなわちオッセオインテグレーション界面との生体適合性に優れている。摩耗率の低い関節面と骨の内方成長の特性に優れたオッセオインテグレーション界面(骨梁)との有機的な組み合わせるにより、プロテーゼは両方の界面の利点を同時に実現させることができる。しかしながら従来技術では、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーを製造するためのジルコニウム・ニオブ合金の使用に関する報告はない。
【0006】
アディティブマニュファクチャリングテクノロジーとしての3Dプリント技術は、製造プロセスに向けた製品設計コンセプトを打ち破り、パフォーマンスに向けた製品設計コンセプトを実現し、すなわち、複雑な部品の一体成形の難しさを解決するだけでなく、機械加工による原材料及びエネルギーの無駄を減少する。しかし3Dプリント製品の実体部分は、微細構造の不均一性、内部欠陥、機械的性質の低下などの問題が発生しやすく、骨梁部分の構造内の粉末は十分に溶融結合できず、機械的性質にも劣る。
【0007】
従来技術の欠陥に着目し、当業者は、機械的性質に優れ、2つの界面の利点を同時に実現する酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの開発に取り組むことで、単一コンパートメント脛骨プラトーの固定の信頼性及びプロテーゼの一次安定性及び長期安定性を向上させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術における上述の問題点の克服を意図しており、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーを提供することである。
【0009】
本発明の第2の目的は、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の技術的手段は、次の通りである。
【0011】
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの第1の中間生成物を得、前記第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、不活性ガスの保護雰囲気下にて、温度を1250℃~1400℃に上げ、140MPa~180MPaにて一定温度で1時間~3時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃~-120℃に下げ、一定温度で5時間~10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間~36時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃~-120℃に下げ、一定温度で5時間~10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間~36時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
4)第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、半脛骨プラトートレイ上面の表面粗さRa≦0.050μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、及び、
5)第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量5質量%~15質量%の常圧不活性ガスを導入し、5℃/分~20℃/分で500℃~700℃に加熱し、0.4℃/分~0.9℃/分で温度を400℃~495℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーを得るステップ、
を有する酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの製造方法であって、
前記不活性ガスはヘリウムガス又はアルゴンガスであり;
前記酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの構造は、半脛骨プラトートレイ1を含み、前記半脛骨プラトートレイの直線縁の上面に側壁2が設けられ、前記半脛骨プラトートレイの下面の側壁近くに長丸孔付きの半楕円形キール3が設けられ、前記半脛骨プラトートレイの下面及び長丸孔付きの半楕円形キールの表面に骨梁が設けられ、半脛骨プラトートレイの下面において前記長丸孔付きの半楕円形キールを連結する部分以外の他の部分に設けられた骨梁は、前方骨梁8及び後方骨梁9に分けられ、前記前方骨梁8と後方骨梁9の領域分割線6は前記側壁2に対して垂直に配置され、又は側壁に対して45°~70°の角度4をなすように配置され;
前記長丸孔付きの半楕円形キールの表面に設けられた骨梁は、上部骨梁10及び下部骨梁11に分けられ、前記上部骨梁及び下部骨梁の領域分割線が第2の領域分割線12であり、第2の領域分割線が長丸孔の頂部の下面又は長丸孔の底部の上面に位置し;
上部骨梁10の気孔径及び気孔率は、順次に後方骨梁、前方骨梁及び下部骨梁より小さい。
【0012】
ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%でZr:85.6%~96.5%、Nb:1.0%~12.5%を含有し、残部が不可避不純物であり;ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmである。
【0013】
ステップ2)、ステップ3)の温度調整は、温度を-120℃~-80℃に上げ、一定温度で3時間~5時間保持し、次に温度を-40℃~-20℃に上げ、一定温度で3時間~5時間保持し、さらに温度を4℃~8℃に上げ、一定温度で1時間~3時間保持した後、温度を上げる。
【0014】
前記領域分割線6は、前記側壁2に対して垂直に設置され、前記領域分割線6と側壁2との交点5が側壁を側壁前部13及び側壁後部14に分割し、側壁前部13と側壁後部14の比率が(2-3):1である。
【0015】
前記領域分割線6は、側壁に対して45°~70°の角度4をなすように配置され、領域分割線6と側壁2との交点5が側壁の中心に位置する。
【0016】
前記上部骨梁10の気孔径は、351μm~450μmで、気孔率が60%~65%であり;後方骨梁9の気孔径は、451μm~550μmで、気孔率が66%~70%であり;前方骨梁8の気孔径は、551μm~650μmで、気孔率が70%~75%であり;下部骨梁11の気孔径は、651μm~750μmで、気孔率が76%~80%である。
【0017】
前記上部骨梁10、後方骨梁9、前方骨梁8及び下部骨梁11は、1mm~2mmの範囲の同じ厚さを有する。
【0018】
上記方法で製造された酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの半脛骨プラトートレイの下面及びキールの表面に勾配分布の骨梁構造が設けられるため、プロテーゼと骨界面との間の微動を低下し、骨組織に対するプロテーゼの応力遮蔽効果を低減し、脛骨プラトーの骨組織応力を均一にさせ、優れた骨の内方成長特性を持ち、一次安定性及び長期安定性が向上する。
【0020】
本発明は、3Dプリントで一体成形し、従来の機械加工では複雑な構造を作製できないという難題を解決し、かつ骨梁と実体との結合強度が高く、脱落し難くなり、プロテーゼの寿命を延ばす。
【0021】
本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの骨梁部分は、優れた耐圧縮性を有し、実体部分の圧縮降伏強度が向上し、可塑性が向上する。
【0022】
本発明の前記酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの一体化により、オッセオインテグレーション界面の優れた生体適合性、骨の内方成長性及び摩擦界面の超耐摩耗性、低摩耗率を実現する。
【0023】
本発明の前記酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーのセラミック層とマトリックスとの間に酸素リッチ層があり、酸素リッチ層が遷移層の機能を有し、セラミック層とマトリックスとの間の付着力を高め、セラミック層の脱落を防ぎ、かつセラミック層の硬度が高い。
【0024】
本発明の前記酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーは、アーチファクトが低く、核磁気共鳴への干渉がほぼなく、核磁気共鳴画像検査を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの概略構成図である。
図2】酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの等角図である。
図3】酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの前面図である(領域分割線12は、長丸孔の底部の上面を通過する)。
図4】為酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの前面図である(領域分割線12は、長丸孔の頂部の下面を通過する)。
図5】酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの底面図である(領域分割線6と側壁とのなす角度は、60°となり、交点が側壁の中央にある)。
図6】酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの底面図である(領域分割線6は、側壁に垂直である)。
図7】比較例1の均質な骨梁の単一コンパートメント脛骨プラトーの有限要素モデルとホスト骨組織の有限要素モデルとの間の界面の微動クラウドマップである。
図8】実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの有限要素モデルとホスト骨組織の有限要素モデルとの間の界面の微動クラウドマップである。
図9】比較例1の均質な骨梁の単一コンパートメント脛骨プラトーの有限要素モデルの接触圧力クラウドマップである。
図10】実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの有限要素モデルの接触圧力クラウドマップである。
図11】比較例1の均質な骨梁の単一コンパートメント脛骨プラトーの有限要素モデルの等価応力クラウドマップである。
図12】実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの有限要素モデルの等価応力クラウドマップである。
図13】比較例1の有限要素解析に用いられる脛骨プラトー骨組織有限要素モデルの等価応力クラウドマップである。
図14】実施例1の有限要素解析に用いられる脛骨プラトー骨組織有限要素モデルの等価応力クラウドマップである。
図15】比較例2に係る実体部分の金属組織学的微細構造画像である(Aは、倍率を50倍拡大して観察したもので、Bが倍率を500倍拡大して観察したものである)。
図16】製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の実体部分の金属組織学的微細構造画像(Aは、倍率を50倍拡大して観察したもので、Bが倍率を500倍拡大して観察したものである)。
図17】比較例2の骨梁部分SEM画像である。
図18】製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の骨梁部分SEM画像である。
図19】実施例1の酸化物層及びマトリックスの横断面SEM画像である。
図20】実施例1の酸化物層表面のXRD曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーは、3Dプリントで一体成形される。
【0027】
以下には、添付の図面及び実施例を参照しつつ本発明をさらに説明する。
【0028】
(実施例1)
酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの製造方法であって、以下の構成を有する。すなわち、
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの第1の中間生成物を得、第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、ヘリウムガスの保護雰囲気下にて、温度を1250℃に上げ、180MPaにて一定温度で3時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃に下げ、一定温度で10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃に下げ、一定温度で10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
ステップ2)、ステップ3)の温度調整の具体的なステップは、温度を-120℃に上げ、一定温度で5時間保持し、次に温度を-40℃に上げ、一定温度で5時間保持し、さらに温度を4℃に上げ、一定温度で3時間保持した後、温度を上げ、
4)第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、半脛骨プラトートレイ上面の表面粗さRa=0.012μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、
5)第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量5質量%の常圧ヘリウムガスを導入し、5℃/分で500℃に加熱し、0.4℃/分で温度を400℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーを得るステップ、
酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの第1の中間生成物、第2の中間生成物、第3の中間生成物、第4の中間生成物、第5の中間生成物は、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの構造と同じである。
【0029】
前記酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトー(図1図2)の構造は、半脛骨プラトートレイ1を含み、前記半脛骨プラトートレイの直線縁の上面に側壁2が設けられ、前記半脛骨プラトートレイの下面の側壁近くに長丸孔付きの半楕円形キール3が設けられ、前記半脛骨プラトートレイの下面及び長丸孔付きの半楕円形キールの表面に骨梁が設けられ、半脛骨プラトートレイの下面において前記長丸孔付きの半楕円形キールを連結する部分以外の他の部分に設けられた骨梁は、前方骨梁8及び後方骨梁9に分けられ、前記前方骨梁8と後方骨梁9の領域分割線6は前記側壁2に対して垂直に配置され(図6);前記領域分割線6と側壁2との交点5が側壁を側壁前部13及び側壁後部14に分割し、側壁前部13と側壁後部14の比率が2:1(3:1でもよい)であり;
前記長丸孔付きの半楕円形キールの表面に設けられた骨梁は、上部骨梁10及び下部骨梁11に分けられ、前記上部骨梁11及び下部骨梁の領域分割線が第2の領域分割線12であり、第2の領域分割線12が長丸孔の頂部の下面(図4)に位置し;
ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%でZr:85.6%、Nb:12.5%を含有し、残部が不可避不純物であり;ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmであり、西安賽隆金属材料有限責任会社から購入した。
【0030】
前記上部骨梁10の気孔径は、400μm、気孔率が63%;
後方骨梁9の気孔径は、500μmで、気孔率が68%であり;
前方骨梁8の気孔径は、600μmで、気孔率が73%であり;
下部骨梁11の気孔径は、700μmで、気孔率が78%である。
【0031】
前記上部骨梁10、後方骨梁9、前方骨梁8及び下部骨梁11は、1.5mmの同じ厚さを有する。
【0032】
(実施例2)
酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの製造方法であって、以下の構成を有する。すなわち、
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの第1の中間生成物を得、第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、ヘリウムガスの保護雰囲気下にて、温度を1325℃に上げ、160MPaにて一定温度で2時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-100℃に下げ、一定温度で7時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて24時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-100℃に下げ、一定温度で7時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて24時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
ステップ2)、ステップ3)の温度調整ステップは、温度を-100℃に上げ、一定温度で4時間保持し、次に温度を-30℃に上げ、一定温度で4時間保持し、さらに温度を6℃に上げ、一定温度で2時間保持した後、温度を上げ、
4)第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、半脛骨プラトートレイ上面の表面粗さRa=0.035μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、
5)第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量10質量%の常圧ヘリウムガスを導入し、15℃/分で600℃に加熱し、0.7℃/分で温度を450℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーを得るステップ、
酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの第1の中間生成物、第2の中間生成物、第3の中間生成物、第4の中間生成物、及び第5の中間生成物は、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの構造と同じである。
【0033】
前記酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの構造は、半脛骨プラトートレイ1を含み、前記半脛骨プラトートレイの直線縁の上面に側壁2が設けられ、前記半脛骨プラトートレイの下面の側壁近くに長丸孔付きの半楕円形キール3が設けられ、前記半脛骨プラトートレイの下面及び長丸孔付きの半楕円形キールの表面に骨梁が設けられ、半脛骨プラトートレイの下面において前記長丸孔付きの半楕円形キールを連結する部分以外の他の部分に設けられた骨梁は、前方骨梁8及び後方骨梁9に分けられ、前記前方骨梁8と後方骨梁9の領域分割線6は側壁に対して45°の角度4(図5)をなすように配置され;前記領域分割線6と側壁2との交点5が側壁の中心に位置し;
前記長丸孔付きの半楕円形キールの表面に設けられた骨梁は、上部骨梁10及び下部骨梁11に分けられ、前記上部骨梁11及び下部骨梁の領域分割線が第2の領域分割線12であり、第2の領域分割線12が長丸孔の頂部の下面(図4)に位置し;
前記長丸孔付きの半楕円形キールの表面に設けられた骨梁は、上部骨梁10及び下部骨梁11に分けられ、前記上部骨梁10及び下部骨梁11の領域分割線が第2の領域分割線12であり、第2の領域分割線12が長丸孔の底部の上面(図3)に位置し;
ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%でZr:93.4%、Nb:5.1%を含有し、残部が不可避不純物であり;ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmであり、西安賽隆金属材料有限責任会社から購入し;
前記上部骨梁10の気孔径は、351μm、気孔率が60%;
後方骨梁9の気孔径は、451μmで、気孔率が66%であり;
前方骨梁8の気孔径は、551μmで、気孔率が70%であり;
下部骨梁11の気孔径は、651μmで、気孔率が76%である。
【0034】
前記上部骨梁10、後方骨梁9、前方骨梁8及び下部骨梁11は、1mmの同じ厚さを有する。
【0035】
(実施例3)
酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの製造方法であって、以下の構成を有する。すなわち、
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの第1の中間生成物を得、第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、アルゴンガスの保護雰囲気下にて、温度を1400℃に上げ、140MPaにて一定温度で1時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-120℃に下げ、一定温度で5時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて36時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-120℃に下げ、一定温度で5時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて36時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
ステップ2)、ステップ3)の温度調整の具体的なステップは、温度を-80℃に上げ、一定温度で3時間保持し、次に温度を-20℃に上げ、一定温度で3時間保持し、さらに温度を8℃に上げ、一定温度で1時間保持した後、温度を上げ、
4)第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、半脛骨プラトートレイ上面の表面粗さRa=0.050μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、
5)第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量15質量%の常圧アルゴンガスを導入し、20℃/分で700℃に加熱し、0.9℃/分で温度を495℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーを得るステップ、
前記酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの構造は、半脛骨プラトートレイ1を含み、前記半脛骨プラトートレイの直線縁の上面に側壁2が設けられ、前記半脛骨プラトートレイの下面の側壁近くに長丸孔付きの半楕円形キール3が設けられ、前記半脛骨プラトートレイの下面及び長丸孔付きの半楕円形キールの表面に骨梁が設けられ、半脛骨プラトートレイの下面において前記長丸孔付きの半楕円形キールを連結する部分以外の他の部分に設けられた骨梁は、前方骨梁8及び後方骨梁9に分けられ、前記前方骨梁8と後方骨梁9の領域分割線6は側壁に対して70°の角度4をなすように配置され;前記領域分割線6と側壁2との交点5が側壁の中心に位置し;
前記長丸孔付きの半楕円形キールの表面に設けられた骨梁は、上部骨梁10及び下部骨梁11に分けられ、前記上部骨梁10及び下部骨梁11の領域分割線が第2の領域分割線12であり、第2の領域分割線12が長丸孔の頂部の下面に位置し;
ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%でZr:96.5%、Nb:1%を含有し、残部が不可避不純物であり;ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmであり、西安賽隆金属材料有限責任会社から購入し;
前記上部骨梁10の気孔径は、450μm、気孔率が65%;
後方骨梁9の気孔径は、550μmで、気孔率が70%であり;
前方骨梁8の気孔径は、650μmで、気孔率が75%であり;
下部骨梁11の気孔径は、750μmで、気孔率が80%である。
【0036】
前記上部骨梁10、後方骨梁9、前方骨梁8及び下部骨梁11は、2mmの同じ厚さを有する。
【0037】
(比較例1)
均質な骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの製造方法及び構造と実施例1との相違点としては、
上部骨梁、下部骨梁、前方骨梁及び後方骨梁は、同種の骨梁であり、気孔径は500μm、気孔率は68%、骨梁の厚さは1.5mmである。
【0038】
(比較例2)
ジルコニウム・ニオブ合金粉末(実施例1と同じ)を原料として、3Dプリントによる一体成形及び機械加工トリミングを経て、実施例1と同じ構造の単一コンパートメント脛骨プラトーを得た。
【0039】
≪実験的検証≫
プロテーゼと骨界面の信頼できる生物学的固定は、主にプロテーゼ固定の一次安定性に依存する。プロテーゼと骨界面の間の過度の相対的な運動は、オッセオインテグレーション過程を阻害する。研究によると、プロテーゼと骨界面の微動が50~150μmを超えると、骨界面に大量の線維性組織が形成され、プロテーゼの固定強度が低下し、最終的にはプロテーゼの緩みにつながる。実施例1と比較例1の有限要素モデル、及び脛骨プラトーの海綿骨領域分割の簡易モデルを有限要素解析にかけ、図7図8に示す微動クラウドマップを得た。比較例1の均質な骨梁単一コンパートメント脛骨プラットフォームと比較して、実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトー有限要素モデルと脛骨プラトー骨組織有限要素モデル界面との間の微動の最大値は4.50μmで、43%程度減少し、本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーは人体に植え込まれた後、優れた一次安定性を有することを示している。
【0040】
実施例1と比較例1の有限要素モデル、及び脛骨プラトーの海綿骨領域分割の簡易モデルを有限要素解析にかけ、接触圧力クラウドマップ(図9図10)及び等価応力クラウドマップ(図11図14)を得た。比較例1の均質な骨梁脛骨プラトーと比較して、実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトー有限要素モデルの接触圧力はより均一であり、骨の内方成長特性が均一であることを示している。実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトー有限要素モデルの等価応力の最大値は2.50MPaで、40%程度減少し、対照的に脛骨プラトー骨組織有限要素モデルの等価応力の最大値が1.28MPaで、4%程度増加し、本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーは、応力遮蔽効果を低減させ、骨の内方成長特性に優れることを示している。結果では、本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーは、優れた均一な骨の内方成長特性を持ち、プロテーゼが長期植え込まれた後、骨粗鬆症によるプロテーゼの緩みを避け、長期安定性を得ることができることを示している。
【0041】
有限要素解析の結果は、実施例2、3の微動クラウドマップ、接触圧力クラウドマップ、等価応力クラウドマップが実施例1と似ていることを証明した。
【0042】
倒立顕微鏡(Axio Vert.A1、ドイツのカールツァイス社製)で比較例2の実体部分及び前記製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の実体部分に対し、金属組織学的微細構造を観察し、結果を図15及び図16に示す。比較例2の金属組織写真では、微細なαマルテンサイトが観察され、組織が比較的微細で、応力集中が発生しやすく、可塑性に劣る。実施例1の金属組織は、バスケット構造と結晶粒微細化を伴うα相を示している。結果は、本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーのマトリックス部分(酸化物層を除く)が優れた強度及び可塑性を有することを示している。
【0043】
走査型電子顕微鏡(Crossbeam340/550、ドイツのカールツァイス社製)で比較例2の骨梁部分及び前記製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の骨梁部分を観察や解析した結果を図17図18に示す。比較例2と比較して、実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの骨梁構造中のジルコニウム・ニオブ合金粉末は、さらに溶融結合されることで、骨梁の総合特性が向上されたことを示している。
【0044】
電子式万能試験機(UTM5105、中国の深セン三思縦横科技股▲ふん▼有限公司製)で前記製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の実体圧縮試験片(試験片のサイズ:8×8×10mm)及び比較例2の実体圧縮試験片(試験片のサイズ:8×8×10mm)に対して圧縮試験を行い、実施例1及び比較例2の実体圧縮試験片はそれぞれ5個で、結果を表1に示す。実施例1の圧縮降伏強度は、546.72MPaで、比較例2(P<0.05)よりも優れ、本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの実体部分は、優れた耐圧縮性を持つことを示している。
【0045】
【表1】
【0046】
電子式万能試験機(UTM5105、中国の深セン三思縦横科技股▲ふん▼有限公司製)で気孔径600μm、気孔率73%の比較例2の骨梁圧縮試験片及び前記製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない気孔径600μm、気孔率73%の実施例1の骨梁圧縮試験片(試験片のサイズ:8×8×10mm)に対して圧縮試験を行い、比較例2及び実施例1の骨梁圧縮試験片はそれぞれ5個で、結果を表2に示す。実施例1の骨梁降伏強度は、17.92MPaで、比較例2(P<0.05)よりも明らかに高く、本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの骨梁部分は、優れた耐圧縮性を持つことを示している。
【0047】
【表2】
【0048】
走査型電子顕微鏡(Crossbeam340/550、ドイツのカールツァイス社製)で実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーのジルコニウム・ニオブ合金マトリックス及び酸化物層の横断面を観察した(図19)。実施例2、実施例3の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーのジルコニウム・ニオブ合金マトリックス及び酸化層の横断面も観察し、酸化物層の厚さは、それぞれ10.3μm、17.2μm及び20.6μmで、酸化物層とジルコニウム・ニオブ合金マトリックスとの間に酸素リッチ層があり、ジルコニウム・ニオブ合金マトリックスと酸化物層との間の結合力を向上する。
【0049】
XRD(D8DISCOVER,ドイツのBruker社製)で実施例1の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの酸化物層を解析(図20)し、酸化物層は単斜晶の二酸化ジルコニウム及び正方晶の二酸化ジルコニウムを含んでいた。
【0050】
微小硬度計(MHVS-1000 PLUS、中国の上海奧龍星迪検測設備有限公司製)で実施例1~3の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーに対して微小硬さ試験を行い、試験荷重は0.05kgで、試験片の荷重時間が20秒で、各試験片から8点取った。実施例1~3で測定された平均硬さ値は1948.6Hv、1923.7Hv、及び1967.2Hvであり、本発明の酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの酸化物層の硬度が高いことを示している。
【0051】
実験により、実施例2、3で製造された酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーの骨梁部分のジルコニウム・ニオブ合金粉末溶融結合程度、圧縮強度、実体部分の耐圧縮性、金属組織、酸化物層の結晶構造、厚さ及び硬さは、実施例1で製造された酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の領域分割骨梁単一コンパートメント脛骨プラトーと似ていることを証明した。
図1
図2
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