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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】塗料組成物及び塗膜
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/02 20060101AFI20230802BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20230802BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20230802BHJP
   C08F 220/20 20060101ALI20230802BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C09D201/02
C09D183/04
C08F220/26
C08F220/20
B32B27/00 101
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022562155
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2022025752
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】597091890
【氏名又は名称】日本ペイントマリン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 靖久
(72)【発明者】
【氏名】森 智也
(72)【発明者】
【氏名】島田 守
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-256071(JP,A)
【文献】国際公開第2018/088377(WO,A1)
【文献】特開平11-256105(JP,A)
【文献】特開2012-005934(JP,A)
【文献】国際公開第2011/046087(WO,A1)
【文献】特開昭62-283167(JP,A)
【文献】国際公開第2021/065701(WO,A1)
【文献】特開2000-256610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 5/16,133/14,
143/04,201/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン原子含有樹脂を含む塗料組成物であって、
前記シリコン原子含有樹脂は、
下記式(I)で表される基、下記式(II)で表される基、下記式(III)で表される基及び下記式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種のシリコン原子含有基を有する単量体(a)から誘導される構成単位(A)と、
下記式(b)で表される(メタ)アクリル酸エステルである単量体(b)から誘導される構成単位(B)と、
前記単量体(a)及び前記単量体(b)以外の単量体(c)から誘導される構成単位(C)と、
を含み、
前記単量体(a)は、分子量が2500より大きく、
前記構成単位(A)の含有量は、前記シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、20質量%より大きく、
前記単量体(c)は、そのホモポリマーの溶解パラメータSPが9.0以上9.5以下であり、かつ、環状構造を有しない単量体であり、
前記単量体(c)は、下記式:
CH =C(R )(COOR
で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、ここで、R は水素原子又はメチル基であり、R は炭素数3以上の鎖状アルキル基であり、
前記構成単位(C)の含有量は、前記シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、2質量%より大きい、水中移動体用防汚塗料組成物。
【化1】

[式(I)中、a及びbは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、mは0~50のいずれかの整数を表し、nは3~270のいずれかの整数を表す。R~Rは、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を表す。]
【化2】

[式(II)中、c及びdは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、pは0~50のいずれかの整数を表す。R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、R又はRを表す。
は、
【化3】

(式中、xは0~200のいずれかの整数を表す。R23~R27は、同一又は異なって、アルキル基を表す。)であり、
は、
【化4】

(式中、yは1~200のいずれかの整数を表す。R28及びR29は、同一又は異なって、アルキル基を表す。)である。]
【化5】

[式(III)中、e、f、g及びhは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、q及びsは、それぞれ独立して、0~50のいずれかの整数を表し、rは3~270のいずれかの整数を表す。R~R12は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を表す。]
【化6】

[式(IV)中、i、j、k及びlは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、t及びuは、それぞれ独立して、0~50のいずれかの整数を表し、v及びwは、それぞれ独立して、0~70のいずれかの整数を表す。R13~R22は、同一又は異なって、アルキル基を表す。]
CH=C(R)(COOR) (b)
[式(b)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水酸基、カルボキシ基及びオキシアルキレン鎖からなる群より選択される1種以上を含む1価の基を表す。]
【請求項2】
前記式(b)におけるRは、オキシアルキレン鎖を含む1価の基を表す、請求項1に記載の水中移動体用防汚塗料組成物。
【請求項3】
前記単量体(a)は、下記式(I’)で表される単量体(a1)、下記式(II’)で表される単量体(a2)、下記式(III’)で表される単量体(a3)及び下記式(IV’)で表される単量体(a4)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の水中移動体用防汚塗料組成物。
【化7】

[式(I’)中、R31は水素原子又はメチル基を表し、a、b、m、n及びR~Rは前記と同じ意味を表す。]
【化8】

[式(II’)中、R32は水素原子又はメチル基を表し、c、d、p及びR~Rは前記と同じ意味を表す。]
【化9】

[式(III’)中、R33及びR34は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、e、f、g、h、q、r、s及びR~R12は前記と同じ意味を表す。]
【化10】

[式(IV’)中、R35及びR36は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、i、j、k、l、t、u、v、w及びR13~R22は前記と同じ意味を表す。]
【請求項4】
トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する単量体(d)から誘導される構成単位(D)をさらに有する、請求項1又は2に記載の水中移動体用防汚塗料組成物。
【請求項5】
前記単量体(d)は、下記式(VII’)で表される単量体(d1)である、請求項4に記載の水中移動体用防汚塗料組成物。
【化11】

[式(VII’)中、R43は水素原子又はメチル基を表し、R40、R41及びR42は、同一又は異なって、炭素数1~20の炭化水素基を表す。]
【請求項6】
前記構成単位(B)の含有量は、前記シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、1質量%以上30質量%以下である、請求項1又は2に記載の水中移動体用防汚塗料組成物。
【請求項7】
前記単量体(b)は、そのホモポリマーの溶解パラメータSPが10.0以上である、請求項1又は2に記載の水中移動体用防汚塗料組成物。
【請求項8】
消泡剤及びダレ止め剤からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1又は2に記載の水中移動体用防汚塗料組成物。
【請求項9】
前記シリコン原子含有樹脂は、下記式(V)で表される基及び下記式(VI)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子含有基を有する単量体(e)から誘導される構成単位(E)をさらに有する、請求項1又は2に記載の水中移動体用防汚塗料組成物。
【化12】

[式(V)中、Mは2価の金属原子を表し、R30は有機酸残基又はアルコール残基を表す。]
【化13】

[式(VI)中、Mは2価の金属原子を表す。]
【請求項10】
前記単量体(e)は、下記式(V’)で表される単量体(e1)及び下記式(VI’)で表される単量体(e2)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の水中移動体用防汚塗料組成物。
【化14】

[式(V’)中、R37は水素原子又はメチル基を表し、M及びR30は前記と同じ意味を表す。]
【化15】

[式(VI’)中、R38及びR39は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Mは前記と同じ意味を表す。]
【請求項11】
請求項1に記載の水中移動体用防汚塗料組成物によって形成される塗膜。
【請求項12】
防錆塗料からなる下塗り塗膜と、前記下塗り塗膜上に積層される請求項1に記載の水中移動体用防汚塗料組成物によって形成される塗膜とを有する複合塗膜。
【請求項13】
請求項11に記載の塗膜又は請求項12に記載の複合塗膜を有する、船舶。
【請求項14】
請求項11に記載の塗膜又は請求項12に記載の複合塗膜を有する、水中構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン原子含有樹脂を含む塗料組成物に関する。また本発明は、該塗料組成物から形成される塗膜及び該塗膜を有する複合塗膜、並びに、該塗膜又は該複合塗膜を備える船舶及び水中構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶においては、フジツボ、イガイ、藻類等の生物の付着によって効率のよい運行が妨げられ、燃料の浪費を招く等の問題が生じる。従来、生物の付着を防止するために、船舶の表面に防汚塗料組成物を塗布することが行われている。例えば国際公開第2011/046086号(特許文献1)には、ビヒクルとしてのシリコン原子含有樹脂と、熱可塑性樹脂及び/又は可塑剤とを含む防汚塗料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/046086号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防汚塗料組成物が塗布される被塗物が、船舶のように水中(例えば海水中)を移動するものである場合、該防汚塗料組成物から形成される塗膜には、被塗物が移動している最中において良好な防汚性能を発揮することが求められる。
【0005】
本発明は、被塗物が移動している最中において良好な防汚性能を発揮することができる塗料組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、該塗料組成物から形成される塗膜及び該塗膜を有する複合塗膜、並びに、該塗膜又は該複合塗膜を有する船舶及び水中構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の塗料組成物、塗膜、複合塗膜、船舶及び水中構造物を提供する。
〔1〕 シリコン原子含有樹脂を含む塗料組成物であって、
前記シリコン原子含有樹脂は、
下記式(I)で表される基、下記式(II)で表される基、下記式(III)で表される基及び下記式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種のシリコン原子含有基を有する単量体(a)から誘導される構成単位(A)と、
下記式(b)で表される(メタ)アクリル酸エステルである単量体(b)から誘導される構成単位(B)と、
前記単量体(a)及び前記単量体(b)以外の単量体(c)から誘導される構成単位(C)と、
を含み、
前記単量体(a)は、分子量が2500より大きく、
前記構成単位(A)の含有量は、前記シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、20質量%より大きく、
前記単量体(c)は、そのホモポリマーの溶解パラメータSPが9.5以下であり、かつ、環状構造を有しない単量体であり、
前記構成単位(C)の含有量は、前記シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、2質量%より大きい、塗料組成物。
【化1】

[式(I)中、a及びbは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、mは0~50のいずれかの整数を表し、nは3~270のいずれかの整数を表す。R~Rは、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を表す。]
【化2】

[式(II)中、c及びdは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、pは0~50のいずれかの整数を表す。R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、R又はRを表す。
は、
【化3】

(式中、xは0~200のいずれかの整数を表す。R23~R27は、同一又は異なって、アルキル基を表す。)であり、
は、
【化4】

(式中、yは1~200のいずれかの整数を表す。R28及びR29は、同一又は異なって、アルキル基を表す。)である。]
【化5】

[式(III)中、e、f、g及びhは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、q及びsは、それぞれ独立して、0~50のいずれかの整数を表し、rは3~270のいずれかの整数を表す。R~R12は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を表す。]
【化6】

[式(IV)中、i、j、k及びlは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、t及びuは、それぞれ独立して、0~50のいずれかの整数を表し、v及びwは、それぞれ独立して、0~70のいずれかの整数を表す。R13~R22は、同一又は異なって、アルキル基を表す。]
CH=C(R)(COOR) (b)
[式(b)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水酸基、カルボキシ基及びオキシアルキレン鎖からなる群より選択される1種以上を含む1価の基を表す。]
〔2〕 前記式(b)におけるRは、オキシアルキレン鎖を含む1価の基を表す、〔1〕に記載の塗料組成物。
〔3〕 前記単量体(a)は、下記式(I’)で表される単量体(a1)、下記式(II’)で表される単量体(a2)、下記式(III’)で表される単量体(a3)及び下記式(IV’)で表される単量体(a4)からなる群より選択される少なくとも1種である、〔1〕又は〔2〕に記載の塗料組成物。
【化7】

[式(I’)中、R31は水素原子又はメチル基を表し、a、b、m、n及びR~Rは前記と同じ意味を表す。]
【化8】

[式(II’)中、R32は水素原子又はメチル基を表し、c、d、p及びR~Rは前記と同じ意味を表す。]
【化9】

[式(III’)中、R33及びR34は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、e、f、g、h、q、r、s及びR~R12は前記と同じ意味を表す。]
【化10】

[式(IV’)中、R35及びR36は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、i、j、k、l、t、u、v、w及びR13~R22は前記と同じ意味を表す。]
〔4〕 トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する単量体(d)から誘導される構成単位(D)をさらに有する、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の塗料組成物。
〔5〕 前記単量体(d)は、下記式(VII’)で表される単量体(d1)である、〔4〕に記載の塗料組成物。
【化11】

[式(VII’)中、R43は水素原子又はメチル基を表し、R40、R41及びR42は、同一又は異なって、炭素数1~20の炭化水素基を表す。]
〔6〕 前記構成単位(B)の含有量は、前記シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、1質量%以上30質量%以下である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の塗料組成物。
〔7〕 前記単量体(b)は、そのホモポリマーの溶解パラメータSPが10.0以上である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の塗料組成物。
〔8〕 消泡剤及びダレ止め剤からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の塗料組成物。
〔9〕 前記シリコン原子含有樹脂は、下記式(V)で表される基及び下記式(VI)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子含有基を有する単量体(e)から誘導される構成単位(E)をさらに有する、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の塗料組成物。
【化12】

[式(V)中、Mは2価の金属原子を表し、R30は有機酸残基又はアルコール残基を表す。]
【化13】

[式(VI)中、Mは2価の金属原子を表す。]
〔10〕 前記単量体(e)は、下記式(V’)で表される単量体(e1)及び下記式(VI’)で表される単量体(e2)からなる群より選択される少なくとも1種である、〔9〕に記載の塗料組成物。
【化14】

[式(V’)中、R37は水素原子又はメチル基を表し、M及びR30は前記と同じ意味を表す。]
【化15】

[式(VI’)中、R38及びR39は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Mは前記と同じ意味を表す。]
〔11〕 〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の塗料組成物によって形成される塗膜。
〔12〕 防錆塗料からなる下塗り塗膜と、前記下塗り塗膜上に積層される〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の塗料組成物によって形成される塗膜とを有する複合塗膜。
〔13〕 〔11〕に記載の塗膜又は〔12〕に記載の複合塗膜を有する、船舶。
〔14〕 〔11〕に記載の塗膜又は〔12〕に記載の複合塗膜を有する、水中構造物。
【発明の効果】
【0007】
被塗物が移動している最中において良好な防汚性能を発揮することができる塗料組成物を提供することができる。また、該塗料組成物から形成される塗膜及び該塗膜を有する複合塗膜、並びに、該塗膜又は該複合塗膜を有する船舶及び水中構造物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<塗料組成物>
本発明に係る塗料組成物(以下、単に「塗料組成物」ともいう。)は、後述する特定のシリコン原子含有樹脂を含む。本発明に係る塗料組成物によれば、被塗物が移動している最中において良好な防汚性能を発揮できる塗膜を形成することが可能である。また、本発明に係る塗料組成物によれば、被塗物が移動している最中における良好な防汚性能を長期間発揮できる塗膜を形成することが可能である。以下、移動している最中での防汚性能を「動的防汚性」ともいう。本発明に係る塗料組成物は、船舶等の水中移動体に適用される防汚塗料組成物として好適に用いることができる。
以下、塗料組成物に含まれる又は含まれ得る成分について詳細に説明する。
【0009】
(1)シリコン原子含有樹脂
塗料組成物に含まれるシリコン原子含有樹脂は、構成単位(A)と構成単位(B)と構成単位(C)とを含む。構成単位(A)は、上記式(I)で表される基、上記式(II)で表される基、上記式(III)で表される基及び上記式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種のシリコン原子含有基を有する単量体(a)から誘導される構成単位である。構成単位(B)は、上記式(b)で表される(メタ)アクリル酸エステルである単量体(b)から誘導される構成単位である。構成単位(C)は、単量体(a)及び単量体(b)以外の単量体(c)であって、そのホモポリマーの溶解パラメータSPが9.5以下であり、かつ、環状構造を有しない単量体(c)から誘導される構成単位である。シリコン原子含有樹脂は、単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)以外の他の単量体から誘導される構成単位を含んでいてもよい。該構成単位の一例は、トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する単量体(d)から誘導される構成単位(D)である。
【0010】
(1-1)シリコン原子含有基
単量体(a)が有するシリコン原子含有基は、上記式(I)で表される基、上記式(II)で表される基、上記式(III)で表される基及び上記式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0011】
式(I)中、a及びbは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、mは0~50のいずれかの整数を表し、nは3~270のいずれかの整数を表す。R~Rは、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を表す。
【0012】
式(II)中、c及びdは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、pは0~50のいずれかの整数を表す。R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、R又はRを表す。
において、xは0~200のいずれかの整数を表す。R23~R27は、同一又は異なって、アルキル基を表す。
において、yは1~200のいずれかの整数を表す。R28及びR29は、同一又は異なって、アルキル基を表す。
【0013】
式(III)中、e、f、g及びhは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、q及びsは、それぞれ独立して、0~50のいずれかの整数を表し、rは3~270のいずれかの整数を表す。R~R12は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、置換フェニル基、フェノキシ基又は置換フェノキシ基を表す。
【0014】
式(IV)中、i、j、k及びlは、それぞれ独立して、2~5のいずれかの整数を表し、t及びuは、それぞれ独立して、0~50のいずれかの整数を表し、v及びwは、それぞれ独立して、0~70のいずれかの整数を表す。R13~R22は、同一又は異なって、アルキル基を表す。
【0015】
シリコン原子含有樹脂は、上記式(I)で表される基、上記式(II)で表される基、上記式(III)で表される基及び上記式(IV)で表される基からなる群より選択される2種以上のシリコン原子含有基を有していてもよい。この場合、上記式(I)で表される基を2種以上、上記式(II)で表される基を2種以上、上記式(III)で表される基を2種以上、及び/又は、上記式(IV)で表される基を2種以上有していてもよい。
【0016】
シリコン原子含有樹脂の好ましい一例は、シリコン原子含有基を有する(メタ)アクリル系樹脂である。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、メタクリル及びアクリルの少なくともいずれか一方を表す。
【0017】
(1-2)単量体(a)
単量体(a)は、上記式(I’)で表される単量体(a1)、上記式(II’)で表される単量体(a2)、上記式(III’)で表される単量体(a3)及び上記式(IV’)で表される単量体(a4)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。このような単量体(a)を含む単量体組成物の重合により、単量体(a1)、単量体(a2)、単量体(a3)及び単量体(a4)からなる群より選択される単量体(a)から誘導される構成単位(A)を含む(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。このシリコン原子含有樹脂は、上記式(I)で表される基、上記式(II)で表される基、上記式(III)で表される基及び上記式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種のシリコン原子含有基を有する。
シリコン原子含有樹脂は、単量体(a)から誘導される構成単位(A)を2種以上含んでいてもよい。
【0018】
式(I’)中、R31は水素原子又はメチル基を表し、a、b、m、n及びR~Rは前記と同じ意味を表す。
式(II’)中、R32は水素原子又はメチル基を表し、c、d、p及びR~Rは前記と同じ意味を表す。
式(III’)中、R33及びR34は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、e、f、g、h、q、r、s及びR~R12は前記と同じ意味を表す。
式(IV’)中、R35及びR36は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、i、j、k、l、t、u、v、w及びR13~R22は前記と同じ意味を表す。
【0019】
上記式(I’)で表される単量体(a1)、上記式(II’)で表される単量体(a2)、上記式(III’)で表される単量体(a3)及び上記式(IV’)で表される単量体(a4)は、それぞれ、上記式(I)で表される基、上記式(II)で表される基、上記式(III)で表される基及び上記式(IV)で表される基を有するシリコン原子含有重合性単量体である。
【0020】
単量体(a)は、分子量が2500よりも大きい。このような分子量の大きい単量体(a)から誘導される構成単位(A)を含有するシリコン原子含有樹脂を含む塗料組成物によれば、シリコン原子含有樹脂における構成単位(A)の含有量が後述する所定の範囲であり、シリコン原子含有樹脂が所定の構成単位(B)及び構成単位(C)をさらに含有し、かつ、シリコン原子含有樹脂における構成単位(C)の含有量が後述する所定の範囲であることを前提として、塗料組成物から形成される塗膜は優れた動的防汚性を得ることができる。単量体(a)の分子量は、数平均分子量であってよい。単量体(a)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0021】
優れた動的防汚性が得られる少なくとも1つの要因としては、シリコン原子含有樹脂が分子量の大きいシリコン含有側鎖を有することにより、水中を移動する塗膜表面にオイル様の被膜が生じ、これにより、塗膜表面の高い平滑性、塗膜の高い弾性及び塗膜-水間の低い界面自由エネルギーの効果が増大することが推定される。また、シリコン原子含有樹脂が単量体(b)から誘導される親水性の構成単位(B)をさらに含有することにより、塗膜表面に、微小スケールの親水性ドメインがランダムに分布してなる疎水-親水ドメイン様構造が形成されることにより、生物の付着が抑制されやすくなることも推定される。
【0022】
単量体(a)の分子量は、動的防汚性をより高め得ることから、好ましくは3000以上、より好ましくは4000以上又は5000以上であり、10000以上であってもよい。単量体(a)の分子量は、通常20000以下であり、好ましくは18000以下、より好ましくは15000以下、さらに好ましくは12000以下である。単量体(a)の分子量が大きすぎると、シリコン原子含有樹脂の調製に用いる単量体の混合物である単量体組成物における単量体同士の不相溶や単量体組成物の重合によって生成する高分子同士の不相溶によって、塗料組成物から形成される塗膜がその成分において不均一になりやすく、ひいては塗膜物性が低下するおそれがある。塗膜がその成分において不均一であるかどうかを確認する一つの方法は、シリコン原子含有樹脂のみからなる塗膜を作製し、該塗膜が透明であるかどうかを確認することである。該塗膜が透明であればその成分において均一であるといえ、白濁していれば不均一であるといえる。
【0023】
ただし、後述する単量体(c)から誘導される構成単位(C)の所定量をシリコン原子含有樹脂に含有させることにより、分子量が大きい単量体(a)を用いる場合であっても、成分が均一な塗膜を得られやすくすることができる。
【0024】
単量体(a)は、単量体(a)に属する2種以上の単量体の組み合わせであってもよい。該2種以上の単量体は、2500より大きい限り、互いに異なる分子量を有していてもよい。
【0025】
単量体(a1)は、上記式(I’)で表される。単量体(a)として単量体(a1)を用いることにより、上記式(I)で表されるシリコン原子含有基を側鎖に有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。
シリコン原子含有樹脂は、2種以上の単量体(a1)から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0026】
式(I’)〔式(I)についても同様。〕中のaは、好ましくは2又は3である。
bは、好ましくは2又は3である。
mは、塗膜の耐水性、下地に対する密着性等の観点から、好ましくは0以上25以下、より好ましくは0以上20以下である。mは、3以上又は5以上であってもよく、10以下又は8以下であってもよい。
nは、塗膜の防汚性及び一般的な有機溶剤への溶解性の観点から、通常は3以上270以下、好ましくは35以上245以下、より好ましくは45以上205以下、さらに好ましくは45以上160以下である。
~Rにおける置換フェニル基及び置換フェノキシ基が有する置換基は、例えば、アルキル基、ハロゲン原子である。
~Rは、好ましくはアルキル基、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基、特に好ましくはメチル基、エチル基である。
【0027】
単量体(a1)として市販品を用いてもよい。分子量が2500よりも大きい市販品としては、例えば、いずれも商品名で、JNC(株)製の「FM-0721」(片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:5000)、「FM-0725」(片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:10000)、信越化学工業(株)製の「KF-2012」(片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:4600)、「X-22-2426」(片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:12000)等が挙げられる。
【0028】
単量体(a2)は、上記式(II’)で表される。単量体(a)として単量体(a2)を用いることにより、上記式(II)で表されるシリコン原子含有基を側鎖に有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。単量体(a2)として市販品を用いてもよい。
シリコン原子含有樹脂は、2種以上の単量体(a2)から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0029】
式(II’)〔式(II)についても同様。〕中のcは、好ましくは2又は3である。
dは、好ましくは2又は3である。
pは、塗膜の耐水性、下地に対する密着性等の観点から、好ましくは0以上25以下、より好ましくは0以上20以下である。pは、3以上又は5以上であってもよく、10以下又は8以下であってもよい。
【0030】
xは、一般的な有機溶剤への溶解性の観点から、通常は0以上200以下、好ましくは10以上150以下、より好ましくは20以上125以下である。
yは、一般的な有機溶剤への溶解性の観点から、通常は1以上200以下、好ましくは10以上150以下、より好ましくは20以上125以下である。
~R及びR23~R29におけるアルキル基は、好ましくは炭素数1~6のアルキル基、より好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基、さらに好ましくはメチル基、エチル基である。
~Rは、いずれもアルキル基であることが好ましい。
【0031】
単量体(a3)は、上記式(III’)で表される。単量体(a)として単量体(a3)を用いることにより、上記式(III)で表されるシリコン原子含有基(このシリコン原子含有基は、ポリマー主鎖間を架橋する架橋基である。)を有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。
シリコン原子含有樹脂は、2種以上の単量体(a3)から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0032】
式(III’)〔式(III)についても同様。〕中のe及びhは、それぞれ、好ましくは2又は3である。
f及びgは、それぞれ、好ましくは2又は3である。
q及びsは、塗膜の耐水性、下地に対する密着性等の観点から、それぞれ、好ましくは0以上30以下、より好ましくは0以上25以下、さらに好ましくは0以上20以下である。q及びsは、それぞれ、3以上又は5以上であってもよく、10以下又は8以下であってもよい。
rは、塗膜の防汚性、一般的な有機溶剤への溶解性等の観点から、通常は3以上270以下、好ましくは35以上245以下、より好ましくは45以上205以下であり、さらに好ましくは45以上160以下である。
~R12における置換フェニル基及び置換フェノキシ基が有する置換基は、例えば、アルキル基、ハロゲン原子である。
~R12は、好ましくはアルキル基、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基、特に好ましくはメチル基、エチル基である。
【0033】
単量体(a3)として市販品を用いてもよい。分子量が2500よりも大きい市販品としては、例えば、いずれも商品名で、JNC(株)製の「FM-7721」(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:5000)、「FM-7725」(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:10000)、信越化学工業(株)製の「X-22-164B」(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:3200)、「X-22-164C」(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:4800)、「X-22-164E」(両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:7800)、「X-22-2445」(両末端アクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:3200)等が挙げられる。
【0034】
単量体(a4)は、上記式(IV’)で表される。単量体(a)として単量体(a4)を用いることにより、上記式(IV)で表されるシリコン原子含有基(このシリコン原子含有基は、ポリマー主鎖間を架橋する架橋基である。)を有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。単量体(a4)として市販品を用いてもよい。
シリコン原子含有樹脂は、2種以上の単量体(a4)から誘導される構成単位を含んでいてもよい。
【0035】
式(IV’)〔式(IV)についても同様。〕中のi及びlは、それぞれ、好ましくは2又は3である。
j及びkは、それぞれ、好ましくは2又は3である。
t及びuは、塗膜の耐水性、下地に対する密着性等の観点から、それぞれ、好ましくは0以上30以下、より好ましくは0以上25以下、さらに好ましくは0以上20以下である。q及びsは、それぞれ、3以上又は5以上であってもよく、10以下又は8以下であってもよい。
v及びwは、塗膜の防汚性、一般的な有機溶剤への溶解性等の観点から、それぞれ、通常は0以上70以下、好ましくは5以上60以下、より好ましくは10以上50以下である。
13~R22におけるアルキル基は、好ましくは炭素数1~6のアルキル基、より好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基、さらに好ましくはメチル基、エチル基である。
【0036】
a~n、p~y及びR~R29は、以上の記述を参照しつつ、単量体(a)の分子量が2500より大きくなるように適切に選択される。
【0037】
単量体(a)は、動的防汚性を高める観点及び市販品の入手容易性の観点から、好ましくは、単量体(a1)及び単量体(a3)からなる群より選択される少なくとも1種である。単量体(a)として、単量体(a1)と単量体(a3)との組み合わせを用いることも好ましい。
【0038】
単量体(a)から誘導される構成単位(A)の含有量は、動的防汚性及び静置防汚性(防汚塗膜を水(海水)中で静置したときの防汚性)の観点から、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、20質量%より大きく、好ましくは21質量%以上、より好ましくは25質量%以上であり、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上又は50質量%以上であってもよい。構成単位(A)の含有量が20質量%よりも大きいことにより、防汚剤を別途に含有させない場合においても十分な動的防汚性を示す塗料組成物となり得る。また、塗膜物性や上述の塗膜の均一性の観点から、構成単位(A)の含有量は、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0039】
シリコン原子含有樹脂は、式(I)で表される基、式(II)で表される基、式(III)で表される基及び式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種のシリコン原子含有基を有する単量体であって、分子量が2500以下である単量体(a’)から誘導される構成単位(A’)を含み得る。ただし、構成単位(A’)の含有量は、動的防汚性の観点から、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、なおさらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
【0040】
構成単位(A)及び構成単位(A’)の合計含有量に対する構成単位(A’)の含有量の比は、動的防汚性の観点から、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.4以下、なおさらに好ましくは0.2以下、特に好ましくは0である。
【0041】
(1-3)単量体(b)
単量体(b)は、上記式(b)で表される(メタ)アクリル酸エステルである単量体である。シリコン原子含有樹脂が単量体(b)から誘導される構成単位(B)をさらに含有することにより、動的防汚性を向上させることができ、また、構成単位(B)をさらに含有することは、静置防汚性の向上にも有利となり得る。さらに、構成単位(B)をさらに含有させることにより、塗料組成物から形成される塗膜の耐軟化性を優れたものとし得る。さらに、単量体(b)から誘導される構成単位(B)と後述する単量体(e)から誘導される構成単位(E)とを含有させることにより、塗膜消耗速度を適度に高めることができる。
【0042】
上記式(b)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、水酸基、カルボキシ基及びオキシアルキレン鎖からなる群より選択される1種以上を含む1価の基を表す。シリコン原子含有樹脂は、2種以上の単量体(b)から誘導される構成単位を含んでいてもよい。また、単量体(b)は、水酸基、カルボキシ基及びオキシアルキレン鎖からなる群より選択される2種以上の基を有する単量体であってもよい。
【0043】
動的防汚性、静置防汚性及び耐軟化性を高める観点から、単量体(b)が有するRは、少なくともオキシアルキレン鎖を含むことが好ましい。オキシアルキレン鎖に含まれるアルキレン基は、直鎖状であってもよいし分岐鎖状であってもよく、該アルキレン基の炭素数は、例えば1以上24以下、好ましくは1以上13以下、より好ましくは1以上6以下、さらに好ましくは2又は3である。該アルキレン基としては、例えば、-CH-、-(CH-、-(CH-、-CH(CH)CH-、-CHCH(CH)-等が挙げられる。
【0044】
動的防汚性及び静置防汚性を高める観点から、単量体(b)は、そのホモポリマーの溶解パラメータSP(以下、単に「SP」ともいう。)が好ましくは10.0以上であり、より好ましくは10.5以上、さらに好ましくは11.0以上である。単量体(b)のホモポリマーのSPは、通常25以下であり、好ましくは15以下である。SPの詳細については後述する。
【0045】
単量体(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等のエステル部の炭素数が1以上20以下の水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル;エステル部の炭素数が1以上20以下であるカルボキシ基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル等のエステル部の炭素数が1以上20以下である(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール〔-OC-の繰り返し数は例えば1~50、好ましくは1~24、より好ましくは2~14、さらに好ましくは2~9〕、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール〔-OC-の繰り返し数は例えば1~50、好ましくは1~24、より好ましくは2~14、さらに好ましくは2~9〕等のエステル部がポリアルキレングリコール鎖を含む(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸等のエステル部がポリアルキレングリコール鎖及びカルボキシ基を含む(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0046】
上記の中でも、単量体(b)は、エステル部の炭素数が1以上20以下である(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル、エステル部がポリアルキレングリコール鎖を含む(メタ)アクリル酸エステル、及び/又は、エステル部がポリアルキレングリコール鎖及びカルボキシ基を含む(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
【0047】
単量体(b)から誘導される構成単位(B)の含有量は、動的防汚性及び静置防汚性の観点から、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは3質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上30質量%以下であり、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下又は10質量%以下であってもよい。また、耐軟化性を高める観点から、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0048】
(1-4)単量体(c)
単量体(c)は、上記単量体(a)及び単量体(b)以外の単量体であって、そのホモポリマーのSPが9.5以下であり、かつ、環状構造を有しない単量体である。シリコン原子含有樹脂が単量体(c)から誘導される構成単位(C)をさらに含有することにより、動的防汚性を向上させることができ、また、構成単位(C)をさらに含有することは、静置防汚性の向上にも有利となり得る。シリコン原子含有樹脂は、単量体(c)から誘導される構成単位(C)を2種以上含んでいてもよい。
【0049】
構成単位(C)をさらに含有することにより、動的防汚性を向上させることができる少なくとも1つの要因としては、ホモポリマーのSPが小さい単量体(c)を併用することによってシリコン原子含有樹脂の調製に用いる単量体組成物における単量体同士の相溶性が向上し、これにより、単量体組成物の重合時において、動的防汚性に寄与する単量体(a)とのランダム共重合性が向上することが推測される。単量体(c)のホモポリマーのSPは、通常7.0以上であり、好ましくは8.0以上、より好ましくは9.0以上である。
【0050】
動的防汚性を高める観点から、単量体(c)は、環状構造を有しない単量体とされる。環状構造を有しない単量体(c)は、環状構造を有する単量体と比べたとき、疎水性がより低いため、該単量体を含む単量体組成物から塗料組成物から形成される塗膜において、該単量体から誘導される構成単位(C)が塗膜表面により局在しにくい傾向にある。したがって、環状構造を有しない単量体(c)を用いた方が、環状構造を有する単量体を用いる場合と比べて、疎水性である単量体(a)から誘導される構成単位(A)を塗膜表面に局在させやすくすることができ、その結果、動的防汚性を高めやすいと考えられる。
【0051】
本明細書において、ホモポリマーの溶解パラメータSPは、次の方法によって測定することができる(参考文献:SUH、CLARKE、J.P.S.A-1、5、1671~1681(1967))。
【0052】
測定温度20℃で、ホモポリマー0.5gを100mLビーカーに秤量し、良溶媒(アセトン)10mLをホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーにより溶解し、希釈溶液を調製する。次に、この希釈溶液に50mLビュレットを用いて、低SP貧溶媒(n-ヘキサン)を徐々に滴下し、希釈溶液に濁りが生じた点を低SP貧溶媒の滴下量とする。また別途、上記希釈溶液に高SP貧溶媒(イオン交換水)を徐々に滴下し、希釈溶液に濁りが生じた点を高SP貧溶媒の滴下量とする。SP値は、上記各貧溶媒の濁点に至るまでの滴下量から、上記参考文献等に記載されている公知の計算方法により算出することができる。
【0053】
単量体(c)は、好ましくは(メタ)アクリル系単量体であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステルであり、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。単量体(c)である(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、好ましくは、下記式で表される。
CH=C(R)(COOR
【0054】
上記式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数3以上の鎖状アルキル基である。鎖状アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。Rの炭素数は、通常20以下であり、好ましくは12以下である。
【0055】
単量体(c)としては、具体的には、アクリル酸n-ブチル(SP:9.5)、メタクリル酸n-ブチル(SP:9.3)、アクリル酸iso-ブチル(SP:9.5)、メタクリル酸iso-ブチル(SP:9.3)、メタクリル酸tert-ブチル(SP:9.4)、アクリル酸2-エチルヘキシル(SP:8.4)、メタクリル酸2-エチルヘキシル(SP:8.3)、メタクリル酸ラウリル(SP:7.8)、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソステアリル等が挙げられる。中でも、ホモポリマーのSPが9.0以上である単量体が好ましく、より好ましくは、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル等である。
【0056】
単量体(c)から誘導される構成単位(C)の含有量は、動的防汚性及び静置防汚性の観点から、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、2質量%より大きい。構成単位(C)の含有量は、動的防汚性及び静置防汚性の観点から、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、好ましくは3質量%以上60質量%以下、より好ましくは5質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは8質量%以上45質量%以下、なおさらに好ましくは10質量%以上40質量%以下である。
【0057】
(1-5)単量体(d)
シリコン原子含有樹脂は、単量体(d)から誘導される構成単位(D)をさらに含有することができる。単量体(d)は、トリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する単量体である。シリコン原子含有樹脂が単量体(d)から誘導される構成単位(d)をさらに含有することにより、動的防汚性を向上させることができ、また、構成単位(D)をさらに含有することは、静置防汚性の向上にも有利となり得る。
【0058】
単量体(d)は、好ましくは、上記式(VII’)で表される単量体(d1)である。単量体(d1)を含む単量体組成物の重合により、単量体(d1)から誘導される構成単位(D)を含む(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。このシリコン原子含有樹脂は、トリオルガノシリルオキシカルボニル基として-C(=O)-O-SiR404142を有する。
シリコン原子含有樹脂は、単量体(d)から誘導される構成単位(D)を2種以上含んでいてもよい。例えば、シリコン原子含有樹脂は、異なるトリオルガノシリルオキシカルボニル基を有する構成単位(D)を2種以上含んでいてもよい。
【0059】
式(VII’)中のR40、R41及びR42は、同一又は異なって、炭素数1~20の炭化水素残基(1価の炭化水素基)を表す。炭素数1~20の炭化水素残基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基等の炭素数が20以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基;シクロヘキシル基、置換シクロヘキシル基等の置換基を有していてもよい環状アルキル基;アリール基、置換アリール基等の置換基を有していてもよいアリール基が挙げられる。
【0060】
置換基を有する環状アルキル基としては、ハロゲン、炭素数18程度までのアルキル基、アシル基、ニトロ基又はアミノ基等で置換された環状アルキル基が挙げられる。置換基を有するアリール基としては、ハロゲン、炭素数18程度までのアルキル基、アシル基、ニトロ基又はアミノ基等で置換されたアリール基が挙げられる。
【0061】
中でも、動的防汚性及び静置防汚性を長期間安定して維持できる傾向にあることから、R40、R41及びR42の1以上がiso-プロピル基であることが好ましく、R40、R41及びR42のすべてがiso-プロピル基であることがより好ましい。
【0062】
シリコン原子含有樹脂が構成単位(D)を含む場合、単量体(d)から誘導される構成単位(D)の含有量は、動的防汚性及び静置防汚性の観点から、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、好ましくは2質量%以上50質量%以下、より好ましくは5質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上35質量%以下である。
【0063】
(1-6)単量体(e)
シリコン原子含有樹脂は、上記式(V)で表される基及び上記式(VI)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子含有基を有する単量体(e)から誘導される構成単位(E)をさらに有していてもよい。シリコン原子含有樹脂が構成単位(E)をさらに有することにより、動的防汚性を向上させることができ、また、構成単位(E)をさらに含有することは、静置防汚性の向上にも有利となり得る。
シリコン原子含有樹脂は、上記式(V)で表される基及び上記式(VI)で表される基の双方を有していてもよい。
【0064】
単量体(e)は、上記式(V’)で表される単量体(e1)及び上記式(VI’)で表される単量体(e2)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。このような単量体(e)を含む単量体組成物の重合により、単量体(e1)及び単量体(e2)からなる群より選択される単量体(e)から誘導される構成単位(E)を含む(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。このシリコン原子含有樹脂は、上記式(V)で表される基及び上記式(VI)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子含有基を有する。
シリコン原子含有樹脂は、単量体(e)から誘導される構成単位(E)を2種以上含んでいてもよい。
【0065】
式(V’)〔式(V)についても同様。〕及び式(VI’)〔式(VI)についても同様。〕中の2価の金属原子Mとしては、Mg、Zn、Cu等を挙げることができ、好ましくはZn又はCuである。
式(V’)〔式(V)についても同様。〕中のR30は、好ましくは有機酸残基である。
【0066】
単量体(e1)は、上記式(V’)で表される。単量体(e)として単量体(e1)を用いることにより、上記式(V)で表される金属原子含有基をさらに有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。
30において、有機酸残基を形成する有機酸としては、例えば、酢酸、モノクロル酢酸、モノフルオロ酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、カプリル酸、2-エチルヘキシル酸、カプリン酸、バーサチック酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、クレソチン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、ブラシジン酸、エルカ酸、α-ナフトエ酸、β-ナフトエ酸、安息香酸、2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、キノリンカルボン酸、ニトロ安息香酸、ニトロナフタレンカルボン酸、プルビン酸等の一塩基有機酸が挙げられる。
【0067】
中でも、有機酸残基が脂肪酸残基であると、長期にわたってクラックや剥離のない塗膜を維持することができる傾向にあり好ましい。特に、単量体(e1)として、可塑性の高いオレイン酸亜鉛(メタ)アクリレート又はバーサチック酸亜鉛(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0068】
また、他の好ましい有機酸として、芳香族有機酸以外の一塩基環状有機酸が挙げられる。一塩基環状有機酸としては、例えば、ナフテン酸等のシクロアルキル基を有する有機酸、三環式樹脂酸等の樹脂酸、及びこれらの塩が挙げられる。
三環式樹脂酸としては、例えば、ジテルペン系炭化水素骨格を有する一塩基酸が挙げられる。ジテルペン系炭化水素骨格を有する一塩基酸としては、例えば、アビエタン、ピマラン、イソピマラン、ラブダン骨格を有する化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、水添アビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、レボピマル酸、デキストロピマル酸、サンダラコピマル酸、及びこれらの塩等が挙げられる。中でも、塗膜の動的防汚性等の観点から、アビエチン酸、水添アビエチン酸、及びこれらの塩が好ましい。
【0069】
一塩基環状有機酸として、例えば、松脂、松の樹脂酸等を使用することもできる。このようなものとしては、例えば、ロジン類、水添ロジン類、不均化ロジン類、ナフテン酸等が挙げられる。ロジン類とは、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等である。ロジン類、水添ロジン類及び不均化ロジン類は、廉価で入手しやすく、取り扱い性に優れ、動的防汚性や静置防汚性を向上させやすい点で好ましい。
【0070】
一塩基環状有機酸の酸価は、好ましくは100mgKOH/g以上220mgKOH/g以下であり、より好ましくは120mgKOH/g以上190mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは140mgKOH/g以上185mgKOH/g以下である。
30を形成する一塩基環状有機酸として、上記範囲内の酸価を有するものを使用すると、塗膜の良好な動的防汚性及び静置防汚性をより長期間維持できる傾向にある。
単量体(e1)が有する有機酸残基は、1種の有機酸から形成されていてもよく、2種以上の有機酸から形成されていてもよい。
【0071】
30として有機酸残基を有する単量体(e1)の製造方法としては、例えば、無機金属化合物と、(メタ)アクリル酸のようなカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体と、非重合性有機酸(上記の有機酸残基を構成する有機酸)とを、アルコール系化合物を含有する有機溶剤中で反応させる方法が挙げられる。
単量体(e1)から誘導される構成単位(E)は、(メタ)アクリル酸のようなカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体を含む単量体組成物を重合させることにより得られる樹脂と、金属化合物と、非重合性有機酸(上記の有機酸残基を構成する有機酸)とを反応させる方法によっても形成することができる。
【0072】
単量体(e2)は、上記式(VI’)で表される。単量体(e)として単量体(e2)を用いることにより、上記式(VI)で表される金属原子含有基(この金属原子含有基は、ポリマー主鎖間を架橋する架橋基である。)をさらに有する(メタ)アクリル系樹脂であるシリコン原子含有樹脂が得られる。
【0073】
単量体(e2)としては、例えば、アクリル酸マグネシウム[(CH=CHCOO)Mg]、メタクリル酸マグネシウム[(CH=C(CH)COO)Mg]、アクリル酸亜鉛[(CH=CHCOO)Zn]、メタクリル酸亜鉛[(CH=C(CH)COO)Zn]、アクリル酸銅[(CH=CHCOO)Cu]、メタクリル酸銅[(CH=C(CH)COO)Cu]等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を必要に応じて適宜選択して用いることができる。
【0074】
単量体(e2)の製造方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸のような重合性不飽和有機酸と、金属化合物とをアルコール系化合物を含有する有機溶剤中で水とともに反応させる方法が挙げられる。この場合、反応物中の水の含有量を0.01質量%以上30質量%以下に調整することが好ましい。
【0075】
シリコン原子含有樹脂は、単量体(e1)から誘導される構成単位及び単量体(e2)から誘導される構成単位の双方を含んでいてもよい。
【0076】
シリコン原子含有樹脂が構成単位(E)を含む場合、構成単位(E)の含有量は、動的防汚性の観点、さらには静置防汚性等の観点から、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、好ましくは2質量%以上30質量%以下、より好ましくは4質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは6質量%以上20質量%以下である。
【0077】
(1-7)他の単量体
シリコン原子含有樹脂は、上記以外の他の単量体(f)から誘導される構成単位(F)を含んでいてもよい。シリコン原子含有樹脂は、構成単位(F)を2種以上含んでいてもよい。
【0078】
単量体(f)としては、単量体(a)~(e)と共重合可能な不飽和単量体である限り特に限定されず、単量体(b)及び(c)に属さない(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。単量体(e)として、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸iso-プロピル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。中でも、単量体(f)は、少なくともメタクリル酸メチルを含むことが好ましい。
【0079】
シリコン原子含有樹脂が構成単位(F)を含む場合、構成単位(F)の含有量は、シリコン原子含有樹脂に含まれる全構成単位中、通常0.1質量%以上78質量%未満であり、好ましくは5質量%以上75質量%以下、より好ましくは10質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上60質量%以下である。構成単位(F)の含有量が0.1質量%以上であることにより、得られる塗料組成物及び塗膜の諸特性のバランスを整えることが可能となる。構成単位(F)の含有量が78質量%未満であることにより、防汚剤を別途に含有させない場合においても十分な動的防汚性を示す塗料組成物となり得る。
【0080】
(1-8)シリコン原子含有樹脂の製造方法
シリコン原子含有樹脂の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上記した単量体を混合した単量体組成物をラジカル開始剤の存在下に60~180℃の反応温度で5~14時間反応させることによって製造することができる。重合反応の条件は適宜調整してよい。
【0081】
ラジカル開始剤としては、例えば、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ラウリルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、tert-ブチルパーオキ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。
【0082】
重合方法としては、有機溶剤中で行う溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。シリコン原子含有樹脂の製造効率等の観点から、好ましくは溶液重合法である。有機溶剤としては、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸n-ブチル等の一般の有機溶剤が挙げられる。
【0083】
シリコン原子含有樹脂の数平均分子量は、通常2600以上100000以下であり、好ましくは3000以上50000以下であり、より好ましくは5000以上30000である。シリコン原子含有樹脂の数平均分子量が2600以上であると、塗料組成物から形成される塗膜が動的防汚性を発現できる傾向にある。シリコン原子含有樹脂の数平均分子量が100000以下であると、シリコン原子含有樹脂が塗料組成物に均一に分散しやすい傾向にある。シリコン原子含有樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0084】
(1-9)シリコン原子含有樹脂の含有量
塗料組成物におけるシリコン原子含有樹脂の含有量は、塗料組成物に含有される固形分中、好ましくは25質量%以上99質量%以下、より好ましくは30質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以上85質量%以下であり、80質量%以下、70質量%以下又は60質量%以下であってもよい。シリコン原子含有樹脂の含有量が25質量%未満であると、動的防汚性、静置防汚性及び下地に対する塗膜の密着性が低下する傾向にある。塗料組成物に含有される固形分とは、塗料組成物に含まれる溶剤以外の成分の合計をいう。
【0085】
(2)塗料組成物が含有し得る他の成分
塗料組成物は、シリコン原子含有樹脂以外の他の成分を1種又は2種以上含むことができる。他の成分としては、例えば、消泡剤、ダレ止め剤、可塑剤、防汚剤、水結合剤、色分かれ防止剤、沈降防止剤、塗膜消耗調整剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、粘度調整剤、レベリング剤、顔料分散剤等の添加剤、顔料及び溶剤等が挙げられる。これらの添加剤、顔料及び溶剤は、それぞれ、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
消泡剤とは、形成されようとする泡の表面を不均一にし、泡の形成を抑える作用を有する剤、又は、形成された泡の表面を局部的に薄くし、泡を破る作用を有する剤である。塗料組成物がシリコン原子含有樹脂とともに消泡剤を含有することにより、動的防汚性をさらに向上させ得ることが明らかとなった。したがって、塗料組成物は、消泡剤を含有することが好ましい。
【0087】
消泡剤としては、シリコン系消泡剤、非シリコン系消泡剤が挙げられる。シリコン系消泡剤は、界面活性を有するポリシロキサン又はその変性物を含む消泡剤であり、非シリコン系消泡剤は、シリコン系消泡剤以外の消泡剤(ポリシロキサン又はその変性物を含まない消泡剤)である。シリコン系消泡剤は、フッ素変性シリコン系消泡剤であってもよい。フッ素変性シリコン系消泡剤とは、フッ素変性されたポリシロキサンを含む消泡剤である。
【0088】
非シリコン系消泡剤としては、高級アルコール系、高級アルコール誘導体系、脂肪酸系、脂肪酸誘導体系、パラフィン系、(メタ)アクリル重合体系、ミネラルオイル系等が挙げられる。シリコン系消泡剤としては、オイル型、コンパウンド型、自己乳化型、エマルジョン型等のタイプが挙げられる。
【0089】
消泡剤として、市販品が用いられてもよい。非シリコン系消泡剤の市販品としては、例えば、BYK社製の「BYK-030」等のミネラルオイル系消泡剤;楠本化成株式会社製の「ディスパロンOX68」、BYK社製の「BYK-1790」等のポリマー系消泡剤等が挙げられる。フッ素変性シリコン系消泡剤以外のシリコン系消泡剤の市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製の「KF-96」、BYK社製の「BYK-081」等のシリコーンオイル系消泡剤等が挙げられる。フッ素変性シリコン系消泡剤の市販品としては、例えば、BYK社製の「BYK-063」、「BYK-065」、「BYK-066N」、信越化学工業株式会社製の「FA-630」等のフロロシリコーンオイル系消泡剤等が挙げられる。
【0090】
消泡剤の含有量は、動的防汚性向上及び消泡性向上の観点から、シリコン原子含有樹脂100質量部に対して、0.002質量部以上0.60質量部以下、より好ましくは0.004質量部以上0.55質量部以下、さらに好ましくは0.01質量部以上0.40質量部以下、なおさらに好ましくは0.01質量部以上0.20質量部以下である。
【0091】
ダレ止め剤とは、塗料組成物を被塗物に塗布してから塗膜の乾燥が完了するまでの間に生じ得る塗料組成物のタレの発生を抑制する作用を有する剤である。塗料組成物がシリコン原子含有樹脂とともにダレ止め剤を含有することにより、動的防汚性をさらに向上させ得ることが明らかとなった。したがって、塗料組成物は、ダレ止め剤を含有することが好ましい。
【0092】
ダレ止め剤としては、例えば、アマイド系ダレ止め剤;ベントナイト系ダレ止め剤;酸化ポリエチレンワックス等のポリエチレンワックス;水添ヒマシ油ワックス;長鎖脂肪酸エステル系重合体;ポリカルボン酸;シリカ微粒子系ダレ止め剤;及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0093】
アマイド系ダレ止め剤としては、脂肪酸アマイドワックス、ポリアマイドワックス等のアマイドワックス系のダレ止め剤等が挙げられる。脂肪酸アマイドワックスとしては、例えば、ステアリン酸アマイドワックスやオレイン酸アマイドワックス等が挙げられる。
【0094】
ダレ止め剤として、市販品が用いられてもよい。アマイドワックス系ダレ止め剤の市販品としては、例えば、共栄社化学株式会社製の「ターレン7200-20」、楠本化成株式会社製の「ディスパロン6900-20X」及び「ディスパロンRE-8000」、HS CHEM社製「モノラル3300」等が挙げられる。その他のダレ止め剤の市販品としては、例えば、エレメンティスジャパン社製の「ベントン38」、BYK社製の「TIXOGEL」等の有機ベントナイト系ダレ止め剤等が挙げられる。
【0095】
ダレ止め剤の含有量は、動的防汚性向上及びダレ止め性向上の観点から、シリコン原子含有樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上6.0質量部以下、より好ましくは0.2質量部以上5.0質量部以下、さらに好ましくは0.25質量部以上4.0質量部以下、なおさらに好ましくは0.25質量部以上3.0質量部以下である。
【0096】
塗料組成物は、可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤を含有させることにより、塗膜の耐クラック性を向上させることができる。また、塗膜のポリッシングレート(研磨速度)を適度な速度に制御することが可能になるため、動的防汚性及び静置防汚性の点においても有利となり得る。
【0097】
可塑剤としては、例えば、塩素化パラフィン;塩化ゴム、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン;ポリビニルエーテル;ポリプロピレンセバケート;部分水添ターフェニル;ポリ酢酸ビニル;(メタ)アクリル酸メチル系共重合体、(メタ)アクリル酸エチル系共重合体、(メタ)アクリル酸プロピル系共重合体、(メタ)アクリル酸ブチル系共重合体、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル系共重合体等のポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ポリエーテルポリオール;アルキド樹脂;ポリエステル樹脂;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-プロピオン酸ビニル共重合体、塩化ビニル-イソブチルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル-イソプロピルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル-エチルビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;シリコーンオイル;油脂及びその精製物(ワックス、ひまし油等);ワセリン;流動パラフィン;ロジン、水添ロジン、ナフテン酸、脂肪酸及びこれらの2価金属塩;ジオクチルフタレート(DOP)、ジメチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル;アジピン酸イソブチル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールアルキルエステル等のグリコールエステル;トリクレジルリン酸(トリクレジルホスフェート)、トリアリールリン酸(トリアリールホスフェート)、トリクロロエチルリン酸等のリン酸エステル;エポキシ大豆油、エポキシステアリン酸オクチル等のエポキシ化合物;ジオクチルスズラウリレート、ジブチルスズラウリレート等の有機スズ化合物;トリメリット酸トリオクチル、トリアセチレン等が挙げられる。
【0098】
上記の中でも、シリコン原子含有樹脂との相溶性や塗膜の耐クラック性の観点から、塩素化パラフィン、ポリビニルエーテル、ポリエーテルポリオール、ロジン、塩化ビニル-イソブチルビニルエーテル共重合体、フタル酸エステル、リン酸エステルが好ましい。
【0099】
塗料組成物における可塑剤の含有量は、シリコン原子含有樹脂100質量部に対して、好ましくは3質量部以上100質量部以下、より好ましくは5質量部以上50質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上40質量部以下である。可塑剤の含有量がシリコン原子含有樹脂100質量部に対して3質量部未満であると、可塑剤の添加による耐クラック性の改善効果が認められない傾向にあり、また、可塑剤の添加による動的防汚性及び静置防汚性改善効果が認められない傾向にある。可塑剤の含有量がシリコン原子含有樹脂100質量部に対して100質量部を超えると、下地に対する塗膜の密着性が低下したり、塗膜の動的防汚性が低下したりする傾向にある。
【0100】
本発明の塗料組成物から形成される塗膜は、シリコン原子含有樹脂に基づく防汚効果により、良好な動的防汚性、さらには良好な静置防汚性を発揮し得るため、必ずしもシリコン原子含有樹脂とは別途に防汚剤を含有する必要はない。ただし、防汚性をさらに高めるために、あるいは、防汚性の長期持続性をより高めるために、必要に応じて、塗料組成物に防汚剤を含有させてもよい。防汚剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、無機化合物、金属を含む有機化合物、及び金属を含まない有機化合物等が挙げられる。
【0101】
防汚剤としては、例えば、酸化亜鉛;亜酸化銅;マンガニーズエチレンビスジチオカーバメート;ジンクジメチルジチオカーバメート;2-メチルチオ-4-tert-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-s-トリアジン;2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル;N,N-ジメチルジクロロフェニル尿素;ジンクエチレンビスジチオカーバーメート;ロダン銅(チオシアン酸第一銅);4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(4,5,-ジクロロ-2-n-オクチル-3(2H)イソチアゾロン);N-(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド;N,N’-ジメチル-N’-フェニル-(N-フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド;2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛塩(ジンクピリチオン)又は銅塩(銅ピリチオン)等の金属塩;テトラメチルチウラムジサルファイド;2,4,6-トリクロロフェニルマレイミド;2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジン;3-ヨード-2-プロピルブチルカーバーメート;ジヨードメチルパラトリスルホン;フェニル(ビスピリジル)ビスマスジクロライド;2-(4-チアゾリル)-ベンズイミダゾール;トリフェニルボロンピリジン塩;ステアリルアミン-トリフェニルボロン;ラウリルアミン-トリフェニルボロン;ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート;1,1-ジクロロ-N-[(ジメチルアミノ)スルホニル]-1-フルオロ-N-フェニルメタンスルフェンアミド;1,1-ジクロロ-N-[(ジメチルアミノ)スルホニル]-1-フルオロ-N-(4-メチルフェニル)メタンスルフェンアミド;N’-(3,4-ジクロロフェニル)-N,N’-ジメチル尿素;N’-tert-ブチル-N-シクロプロピル-6-(メチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン;4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル;4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール(一般名:メデトミジン)が挙げられる。
【0102】
塗料組成物における防汚剤の含有量は、シリコン原子含有樹脂100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、特に好ましくは0質量部である。
【0103】
顔料としては、例えば、沈降性バリウム、タルク、クレー、白亜、シリカホワイト、アルミナホワイト、ベントナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸、ケイ酸塩、酸化アルミニウム水和物、硫酸カルシウム等の体質顔料;酸化チタン、酸化ジルコン、塩基性硫酸鉛、酸化スズ、カーボンブラック、白鉛、黒鉛、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化クロム、黄色ニッケルチタン、黄色クロムチタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄(弁柄)、黒色酸化鉄、アゾ系赤・黄色顔料、クロムイエロー、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、ウルトラマリンブルー、キナクリドン等の着色顔料等が挙げられる。
【0104】
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロペンタン、オクタン、ヘプタン、シクロヘキサン、ホワイトスピリット等の炭化水素類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルセロソルブ等のエーテル類;酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ベンジル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;n-ブタノール、プロピルアルコール等のアルコール等が挙げられる。
【0105】
(3)塗料組成物の調製
塗料組成物は、例えば、シリコン原子含有樹脂又はこれを含有する樹脂組成物(例えば、シリコン原子含有樹脂を含む溶液又は分散液)に、必要に応じてその他の成分を添加し、ボールミル、ペブルミル、ロールミル、サンドグラインドミル、高速ディスパー等の混合機を用いて混合することにより、調製することができる。
【0106】
<塗膜及び複合塗膜>
本発明に係る塗膜(以下、単に「塗膜」ともいう。)は、本発明に係る上記塗料組成物から形成される塗膜である。塗膜は、防汚性能を有する防汚塗膜である。該防汚塗膜は、本発明に係る上記塗料組成物から形成されるため、良好な動的防汚性を示すことができる。
【0107】
塗膜は、上記塗料組成物を、常法に従って被塗物の表面に塗布した後、必要に応じて常温下又は加熱下で溶剤を揮散除去することによって形成することができる。塗料組成物の塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り、ローラー、静電塗装、電着塗装等の従来公知の方法が挙げられる。塗膜の厚みは、例えば50μm以上500μm以下であり、好ましくは100μm以上400μm以下である。
【0108】
被塗物としては、例えば、船舶、水中構造物が挙げられる。水中構造物としては、養殖用魚網等の各種漁網及びその他の漁具;港湾施設;オイルフェンス;発電所等の取水設備;冷却用導水管等の配管;橋梁;浮標;工業用水系施設;海底基地等が挙げられる。被塗物は、好ましくは水中移動体であり、水中移動体としては、例えば、船舶、漁網、漁具等が挙げられる。
【0109】
上記被塗物の塗装表面は、必要に応じて前処理されたものであってもよく、また、被塗物上に形成された防錆塗料(防食塗料)等の他の塗料からなる下塗り塗膜上に、本発明の塗料組成物からなる塗膜を形成して複合塗膜としてもよい。
【0110】
本発明の塗料組成物によれば、ビヒクルであるシリコン原子含有樹脂自体が良好な防汚性を示し得るため、別途に配合される防汚剤をなくすか又はその配合量を低減することが可能である。したがって、本発明の塗料組成物によれば、クリヤーな(透明性の高い)防汚塗膜を形成することが可能である。
【0111】
防汚剤として主に亜酸化銅を多量に含む従来の防汚塗料組成物から形成される防汚塗膜は、含有される亜酸化銅に起因して、通常赤味がかった色相を有しており、塗膜の色相が限定されていたが、本発明によれば、得られる塗膜の透明性を利用して種々の応用が可能となる。なお、クリヤーな塗膜を形成する場合、本発明の塗料組成物は、着色顔料を含まないことが好ましい。
【0112】
例えば、防錆塗料等からなる下塗り塗膜と該下塗り塗膜上に形成された本発明の塗膜とを有する複合塗膜において、本発明の塗膜をクリヤーな防汚塗膜とし、防錆塗料として各種色相のものを用いることにより、防汚性を有しつつ、複合塗膜形成表面が従来にない色相を有する船舶等の被塗物を提供することができる。また、防錆塗料等からなる下塗り塗膜とクリヤーな防汚塗膜との間に、各種色相を有する塗料からなる中塗り塗膜を形成することによっても、従来にない色相を有する被塗物を提供することができる。
【0113】
中塗り塗膜を形成する塗料としては、例えば、防汚塗料、エポキシ樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料、(メタ)アクリル樹脂系塗料、塩化ゴム系塗料、アルキッド樹脂系塗料、シリコン樹脂系塗料、フッ素樹脂系塗料等の各種塗料を用いることができる。中塗り塗膜を形成する防汚塗料は、本発明に係る塗料組成物であってもよいし、比較的多量の防汚剤を含む従来の防汚塗料組成物等の他の防汚塗料組成物であってもよい。
【0114】
中塗り塗膜は、下塗り塗膜の表面全体に形成されてもよいし、表面の一部に形成されてもよい。中塗り塗膜及び下塗り塗膜は、使用に供された旧い塗膜であってもよい。この場合、本発明の塗料組成物及びそれから形成される塗膜は、旧塗膜の補修用として用いられてもよい。
【0115】
防錆塗料等からなる下塗り塗膜とクリヤーな防汚塗膜との間の中塗り塗膜を、例えば、各種色相の文字状、模様状、図柄状、絵柄状等に形成すれば、被塗物に様々な意匠性を付与することができる。下塗り塗膜とクリヤーな防汚塗膜との間に介在される塗料からなる中塗り塗膜の代わりに、文字状、模様状、図柄状、絵柄状等の形状を有する各種色相のフィルムやシール部材を介在させることによっても被塗物に様々な意匠性を付与することができる。
【実施例
【0116】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0117】
<樹脂製造例S1~S12、T1~T10:樹脂S1~S12、T1~T10の製造>
温度計、冷却管、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、温度制御機を備えた4つ口フラスコに、溶剤としてのキシレン [A]質量部を加え、[B]℃に保った。そこに、表3又は表4に示される量(単位:質量部)の同表に示される単量体(合計100質量部)、溶剤としてのキシレン [C]質量部及びラジカル重合開始剤としてのtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート [D]質量部からなる混合液を滴下ロートに加え、これを[E]時間にわたり4つ口フラスコへ等速滴下し、滴下終了後[F]分間保温した。その後、キシレン [G]質量部及びtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート [H]質量部からなる混合液を30分間にわたり4つ口フラスコへ等速滴下し、滴下終了後[I]時間保温することにより、樹脂を含む樹脂組成物(溶液)を得た。
【0118】
樹脂製造例S1~S12、T1~T10のそれぞれにおける上記[A]~[I]の数値を表1及び表2にまとめた。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
以下、樹脂製造例S1~S12で得られた樹脂をそれぞれ「樹脂S1~S12」ともいい、樹脂製造例S1~S12で得られた樹脂組成物(溶液)をそれぞれ「樹脂組成物S1~S12」ともいう。樹脂製造例T1~T10で得られた樹脂をそれぞれ「樹脂T1~T10」ともいい、樹脂製造例T1~T10で得られた樹脂組成物(溶液)をそれぞれ「樹脂組成物T1~T10」ともいう。
【0122】
樹脂製造例S1~S12及びT1~T10において用いた単量体及びその使用量(質量部)を表3及び表4に示す。表3及び表4において、単量体(a’)とは、式(I)で表される基、式(II)で表される基、式(III)で表される基及び式(IV)で表される基からなる群より選択されるシリコン原子含有基を有するが、分子量(数平均分子量)が2500以下である単量体を意味し、また、単量体(a)及び単量体(a’)に属する各単量体における括弧内の数値は、該単量体の数平均分子量である。表6においても同様である。
【0123】
表3及び表4において、他の単量体とは、単量体(a)、単量体(a’)、単量体(b)、単量体(c)及び単量体(d)のいずれにも属さない単量体を意味し、また、単量体(c)及び他の単量体に属する各単量体における括弧内の数値は、該単量体のホモポリマーの溶解パラメータSPである。表6においても同様である。
【0124】
得られた樹脂S1~S12及びT1~T10の数平均分子量Mn、並びに、樹脂組成物S1~S12及びT1~T10の固形分を測定した。結果を表3及び表4に併せて示す。測定方法は次のとおりとした。
【0125】
〔i〕数平均分子量Mn
単量体(a)、単量体(a’)及び樹脂の数平均分子量Mnは、GPCにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。測定条件は次のとおりとした。
装置:東ソー社製「HLC-8220GPC」
カラム:TSKgel SuperHZM-M ×2本
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:35℃
検出器:RI
【0126】
〔ii〕固形分
下記式に従って、樹脂組成物の固形分を算出した。
固形分(質量%)=100×(溶剤を除く樹脂組成物の調製に使用した原料の合計質量)/(得られた樹脂組成物の質量)
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
<樹脂製造例S13及びS14:樹脂S13及びS14の製造>
温度計、冷却管、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、温度制御機を備えた4つ口フラスコに、溶剤としてのキシレン [A]質量部を加え、[B]℃に保った。そこに、表6に示される量(単位:質量部)の同表に示される単量体(合計100質量部)、溶剤としてのキシレン 10質量部及びラジカル重合開始剤としてのtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート [C]質量部からなる混合液を滴下ロートに加え、これを3時間にわたり4つ口フラスコへ等速滴下し、滴下終了後30分間保温した。その後、キシレン [D]質量部及びtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 0.3質量部からなる混合液を30分間にわたり4つ口フラスコへ等速滴下し、滴下終了後[E]時間保温することにより、カルボキシル基を有する樹脂を含む樹脂組成物(溶液)を得た。この樹脂組成物の固形分は[F]質量%であった。
【0130】
ついで、同様の反応容器に、上記樹脂組成物 100質量部、酢酸銅(II) [G]質量部、化合物[H] [I]質量部及びキシレン60質量部を加えてリフラックス温度まで昇温し、留出する酢酸、水及び溶剤の混合液を除去しつつ、同量のキシレンを補充しながら、反応を18時間継続した。反応の終点は、留出した溶剤中の酢酸量を定量することにより決定した。反応液を冷却後、n-ブタノール及びキシレンを加えて、樹脂を含む樹脂組成物(溶液)を得た。この樹脂組成物に含まれる樹脂は、上記カルボキシル基を有する樹脂のカルボキシル基が-COOCu2+OOC-Y)に変換されたものである。Yは、化合物[H]のカルボキシル基以外の構造部分である。
【0131】
樹脂製造例S13及びS14のそれぞれにおける上記[A]~[I]の数値を表5にまとめた。
【0132】
【表5】
【0133】
表5におけるH1及びH2は以下を表す。
H1:水素添加ロジン(ハイペールCH、酸価160mgKOH/g、荒川化学工業社製)
H2:ナフテン酸(NA-200、酸価200mgKOH/g、大和油脂工業社製)
【0134】
以下、樹脂製造例S13及びS14で得られた樹脂をそれぞれ「樹脂S13、S14」ともいい、樹脂製造例S13及びS14で得られた樹脂組成物(溶液)をそれぞれ「樹脂組成物S13、S14」ともいう。
【0135】
<樹脂製造例S15:樹脂S15の製造>
温度計、冷却管、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、温度制御機を備えた4つ口フラスコに、溶剤としてのキシレン 50質量部を加え、95℃に保った。そこに、表6に示される量(単位:質量部)の同表に示される単量体(合計100質量部)、溶剤としてのキシレン 10質量部及びラジカル重合開始剤としてのtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 1.2質量部からなる混合液を滴下ロートに加え、これを3時間にわたり4つ口フラスコへ等速滴下し、滴下終了後30分間保温した。その後、キシレン 40質量部及びtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 0.3質量部からなる混合液を30分間にわたり4つ口フラスコへ等速滴下し、滴下終了後1時間保温することにより、カルボキシル基を有する樹脂を含む樹脂組成物(溶液)を得た。この樹脂組成物の固形分は50.2質量%であった。
【0136】
ついで、同様の反応容器に、上記樹脂組成物 100質量部、酢酸亜鉛(II) 18.6質量部、ナフテン酸(NA-165、酸価165mgKOH/g、大和油脂工業社製) 33.2質量部及びキシレン60質量部を加えてリフラックス温度まで昇温し、留出する酢酸、水及び溶剤の混合液を除去しつつ、同量のキシレンを補充しながら、反応を18時間継続した。反応の終点は、留出した溶剤中の酢酸量を定量することにより決定した。反応液を冷却後、n-ブタノール及びキシレンを加えて、樹脂を含む樹脂組成物(溶液)を得た。この樹脂組成物に含まれる樹脂は、上記カルボキシル基を有する樹脂のカルボキシル基が-COOZn2+OOC-Y)に変換されたものである。Yは、ナフテン酸のカルボキシル基以外の構造部分である。
【0137】
以下、樹脂製造例S15で得られた樹脂を「樹脂S15」ともいい、樹脂製造例S15で得られた樹脂組成物(溶液)を「樹脂組成物S15」ともいう。
【0138】
樹脂製造例S13~S15において用いた単量体及びその使用量(質量部)を表6に示す。表6には、カルボキシル基を有する樹脂の製造に用いた単量体を示している。
【0139】
得られた樹脂S13~S15の数平均分子量Mn、並びに、樹脂組成物S13~S15の固形分を上記測定方法に従って測定した。結果を表6に併せて示す。数平均分子量Mnは、カルボキシル基を有する樹脂(カルボキシル基を-COOMe2+OOC-Y)に変換する反応を実施する前の樹脂)について測定した。MeはCu又はZnである。
【0140】
【表6】
【0141】
表3、表4及び表6に示される単量体の略称の詳細は次のとおりである。
(1)FM-0721:JNC(株)製の「FM-0721」、片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:5000、式(I’)において、m=0、b=3、n=65、R~R及びR31がメチル基、Rがn-ブチル基である単量体
(2)FM-0725:JNC(株)製の「FM-0725」、片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:10000、式(I’)において、m=0、b=3、n=132、R~R及びR31がメチル基、Rがn-ブチル基である単量体
(3)KF-2012:信越化学工業(株)製の「KF-2012」、片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:4600、式(I’)において、m=0、R~R及びR31がメチル基である単量体
(4)X-22-2426:信越化学工業(株)製の「X-22-2426」、片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:12000、式(I’)において、m=0、R~R及びR31がメチル基である単量体
(5)FM-7725:JNC(株)製の「FM-7725」、両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:10000、式(III’)において、q及びs=0、f及びg=3、r=131、R~R12、R33及びR34がメチル基である単量体
(6)X-22-164B:信越化学工業(株)製の「X-22-164B」、両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:3200、式(III’)において、q及びs=0、R~R12、R33及びR34がメチル基である単量体
(7)X-22-164E:信越化学工業(株)製の「X-22-164E」、両末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:7800、式(III’)において、q及びs=0、R~R12、R33及びR34がメチル基である単量体
(8)FM-0711:JNC(株)製の「FM-0711」、片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:1000、式(I’)において、m=0、b=3、n=10、R~R及びR31がメチル基、Rがn-ブチル基である単量体
(9)X-22-174ASX:信越化学工業(株)製の「X-22-174ASX」、片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:900、式(I’)において、m=0、R~R及びR31がメチル基である単量体
(10)X-22-174BX:信越化学工業(株)製の「X-22-174BX」、片末端メタクリロイルオキシアルキル変性オルガノポリシロキサン、分子量:2300、式(I’)において、m=0、R~R及びR31がメチル基である単量体
(11)HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(SP:13.5)
(12)MEMA:メタクリル酸2-メトキシエチル(SP:10.7)
(13)MEA:アクリル酸2-メトキシエチル(SP:10.7)
(14)M-40G:メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル(オキシエチレン鎖の繰り返し数=4、SP:13.7)
(15)M-90G:メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル(オキシエチレン鎖の繰り返し数=9、SP:13.9)
(16)M-230G:メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル(オキシエチレン鎖の繰り返し数=23、SP:21)
(17)SA:メタクリロイルオキシエチルコハク酸(SP:12.8)
(18)CB-1:メタクリロイルオキシエチルフタル酸(SP:13.2)
(19)t-BMA:メタクリル酸tert-ブチル(SP:9.4)
(20)n-BMA:メタクリル酸n-ブチル(SP:9.3)
(21)EHMA:メタクリル酸2-エチルヘキシル(SP:8.3)
(22)n-BA:アクリル酸n-ブチル(SP:9.5)
(23)TIPSA:アクリル酸トリiso-プロピルシリル
(24)TIPSMA:メタクリル酸トリiso-プロピルシリル
(25)MMA:メタクリル酸メチル(SP:10.7)
(26)EA:アクリル酸エチル(SP:10.5)
(27)AA:アクリル酸(SP:23.8)
【0142】
上記においてSPとは、その単量体のホモポリマーの溶解パラメータであり、既述の方法に従って測定した。
【0143】
<実施例1~19、比較例1~11>
表7~表9の配合(質量部)に従い、製造例で得られた樹脂組成物のいずれか、並びに表7~表9に示すその他の成分を使用して、高速ディスパーにて混合することにより、防汚塗料組成物を調製した。表7~表9に示す配合量(質量部)は、有姿の配合量であり、溶剤等を含む場合はそれを含んだ配合量である。
【0144】
(防汚塗料組成物の評価)
[a]防汚塗料組成物からなる塗膜の動的防汚性の評価(オープンドラム試験)
実施例及び比較例で得られた防汚塗料組成物を、あらかじめ防錆塗料が塗布されたブラスト板に乾燥膜厚が300μmとなるように塗布し、2昼夜室内に放置することにより乾燥させて、防汚塗膜を有する試験板を得た。
【0145】
得られた試験板を回転筒の側面に取り付け、自然海水中で試験板面が毎時10ノット程度となるように回転させる試験を24ヶ月間行い、海中生物の付着面積を求めて下記の基準に従って評価した。試験6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月及び24ヶ月時点での評価結果を表7~表9に示す。評価結果は、好ましくは3以上である。
5:海中生物の付着面積が0%以上5%未満
4:海中生物の付着面積が5%以上10%未満
3:海中生物の付着面積が10%以上15%未満
2:海中生物の付着面積が15%以上30%未満
1:海中生物の付着面積が30%以上
【0146】
[b]防汚塗料組成物からなる塗膜の静置防汚性の評価(筏静置防汚性試験)
実施例及び比較例で得られた防汚塗料組成物を、あらかじめ防錆塗料が塗布されたブラスト板に乾燥膜厚が300μmとなるように塗布し、2昼夜室内に放置することにより乾燥させて、防汚塗膜を有する試験板を得た。
【0147】
得られた試験板を兵庫県赤穂市相生湾の筏に浸漬する生物付着試験を24ヶ月間行い、海中生物の付着面積を求めて下記の基準に従って評価した。試験6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月及び24ヶ月時点での評価結果を表7~表9に示す。評価結果は、好ましくは3以上である。
5:海中生物の付着面積が0%以上5%未満
4:海中生物の付着面積が5%以上10%未満
3:海中生物の付着面積が10%以上15%未満
2:海中生物の付着面積が15%以上30%未満
1:海中生物の付着面積が30%以上
【0148】
[c]塗膜の耐軟化性
実施例及び比較例で得られた防汚塗料組成物を、あらかじめ防錆塗料が塗布されたブラスト板に乾燥膜厚が300μmとなるように塗布し、2昼夜室内に放置することにより乾燥させて、防汚塗膜を有する試験板を得た。得られた試験板を、合計12ヶ月間、兵庫県赤穂市相生湾の筏に浸漬し、下記の基準に従って塗膜の耐軟化性を評価した。耐軟化性は、試験板の塗膜を指触することにより行った。評価結果を表7~表9に示す。評価結果は、好ましくは3以上である。塗膜の軟化は、水吸収による塗膜の膨潤によって生じるものと考えられる。
5:浸漬期間が12ヵ月でも膜軟化が確認されない
4:浸漬期間7ヶ月超12ヵ月未満で膜軟化が確認される
3:浸漬期間3ヶ月超7ヵ月以下で膜軟化が確認される
2:浸漬期間1ヶ月超3ヵ月以下で膜軟化が確認される
1:浸漬期間1ヵ月以下で膜軟化が確認される
【0149】
【表7】
【0150】
【表8】
【0151】
【表9】
【0152】
表7~表9に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
(1)消泡剤:BYK社製「BYK-066N」、不揮発分:0.7質量%
(2)可塑剤:BASF社製「ルトナール A25」、ポリビニルエチルエーテル、不揮発分:95質量%
(3)顔料1:デュポン社製「TI-PURE R-900」、酸化チタン顔料
(4)顔料2:ランクセス社製「Bayferox 130」、酸化鉄赤顔料
(5)ダレ止め剤:HS CHEM社製「モノラル3300」、不揮発分:20質量%
【要約】
シリコン原子含有樹脂を含み、該シリコン原子含有樹脂は、式(I)、式(II)、式(III)及び式(IV)で表される基からなる群より選択される少なくとも1種のシリコン原子含有基を有する単量体(a)から誘導される構成単位(A)と、式(b)で表される(メタ)アクリル酸エステルである単量体(b)から誘導される構成単位(B)と、単量体(a)及び単量体(b)以外の単量体(c)から誘導される構成単位(C)とを含み、単量体(a)は分子量が2500より大きく、構成単位(A)の含有量は全構成単位中20質量%より大きく、単量体(c)はそのホモポリマーの溶解パラメータSPが9.5以下であり、かつ環状構造を有しない単量体であり、構成単位(C)の含有量は全構成単位中2質量%より大きい塗料組成物が提供される。