(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-01
(45)【発行日】2023-08-09
(54)【発明の名称】キシリレンジイソシアネート組成物、重合性組成物、樹脂、成形体、光学素子およびレンズ
(51)【国際特許分類】
C08G 18/76 20060101AFI20230802BHJP
C08G 18/71 20060101ALI20230802BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20230802BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20230802BHJP
【FI】
C08G18/76 014
C08G18/71 050
C08G18/38 076
G02B1/04
(21)【出願番号】P 2023511683
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2022017306
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2021147170
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高口 勝之
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0115998(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111363114(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0093028(KR,A)
【文献】国際公開第2018/190290(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/179575(WO,A1)
【文献】特開2000-119590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
G02B 1/00- 1/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリレンジイソシアネート組成物であって、
キシリレンジイソシアネートと、
4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートと
を含有
し、
前記キシリレンジイソシアネート組成物中の4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートの割合は、質量基準で、1ppm以上、15000ppm以下である、光学用キシリレンジイソシアネート組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の光学用キシリレンジイソシアネート組成物と、
活性水素基含有成分と
を含有する、重合性組成物。
【請求項3】
前記活性水素基含有成分は、ポリチオールを含有する、請求
項2に記載の重合性組成物。
【請求項4】
前記ポリチオールは、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、および、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求
項3に記載の重合性組成物。
【請求項5】
請求
項2に記載の重合性組成物の硬化物である、樹脂。
【請求項6】
請求
項5に記載の樹脂からなる、成形体。
【請求項7】
請求
項6に記載の成形体である、光学素子。
【請求項8】
請求
項7に記載の光学素子である、レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キシリレンジイソシアネート組成物、重合性組成物、樹脂、成形体、光学素子およびレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種産業製品に用いられる樹脂の原料として、キシリレンジイソシアネート組成物が知られている。
【0003】
例えば、キシリレンジイソシアネートと、ジクロロメチルベンジルイソシアネートとを含み、ジクロロメチルベンジルイソシアネートの含有割合が、0.6ppm以上60ppm以下である、キシリレンジイソシアネート組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のキシリレンジイソシアネート組成物から製造される樹脂について、目的および用途に応じて、色相および透明性の向上が要求される場合がある。
【0006】
本発明は、樹脂の色相および透明性を向上できるキシリレンジイソシアネート組成物、重合性組成物、樹脂、成形体、光学素子およびレンズを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、キシリレンジイソシアネート組成物であって、キシリレンジイソシアネートと、4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートとを含有する、キシリレンジイソシアネート組成物を含む。
【0008】
本発明[2]は、前記キシリレンジイソシアネート組成物中の4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートの割合が、質量基準で、15000ppm以下である、上記[1]のキシリレンジイソシアネート組成物を含む。
【0009】
本発明[3]は、光学用である、上記[1]または[2]のキシリレンジイソシアネート組成物を含む。
【0010】
本発明[4]は、上記[1]から[3]のいずれか1つのキシリレンジイソシアネート組成物と、活性水素基含有成分とを含有する、重合性組成物を含む。
【0011】
本発明[5]は、前記活性水素基含有成分が、ポリチオールを含有する、上記[4]の重合性組成物を含む。
【0012】
本発明[6]は、前記ポリチオールが、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、および、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[5]の重合性組成物を含む。
【0013】
本発明[7]は、上記[4]~[6]のいずれか1つの重合性組成物の硬化物である、樹脂を含む。
【0014】
本発明[8]は、上記[7]の樹脂からなる、成形体を含む。
【0015】
本発明[9]は、上記[8]の成形体である、光学素子を含む。
【0016】
本発明[10]は、上記[9]の光学素子である、レンズを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明のキシリレンジイソシアネート組成物は、4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートを含有する。そのため、上記したキシリレンジイソシアネート組成物から製造される樹脂は、色相および透明性に優れる。
【0018】
本発明の重合性組成物は、上記したキシリレンジイソシアネート組成物を含む。そのため、上記した重合性組成物から製造される樹脂は、色相および透明性に優れる。
【0019】
本発明の樹脂は、上記した重合性組成物の硬化物である。そのため、樹脂は、色相および透明性に優れる。
【0020】
本発明の成形体は、上記した樹脂からなる。そのため、成形体は、色相および透明性に優れる。
【0021】
本発明の光学素子は、上記した成形体である。そのため、光学素子は、色相および透明性に優れる。
【0022】
本発明のレンズは、上記した光学素子である。そのため、レンズは、色相および透明性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.キシリレンジイソシアネート組成物
キシリレンジイソシアネート組成物(XDI組成物)は、主成分として、キシリレンジイソシアネート(XDI)を含有する。
【0024】
XDIとして、例えば、1,2-XDI(o-XDI)、1,3-XDI(m-XDI)、および、1,4-XDI(p-XDI)が挙げられる。
【0025】
このようなXDIは、XDI組成物に1種または2種類以上含有されてもよい。
【0026】
XDIとして、好ましくは、1,3-XDI(m-XDI)が挙げられる。
【0027】
XDIの含有割合(純度)は、XDI組成物の総質量に対して、例えば、98.00質量%以上、好ましくは、99.00質量%以上、より好ましくは、99.30質量%以上、さらに好ましくは、99.60質量%以上、また、例えば、99.95質量%以下である。つまり、XDI組成物は、ほぼ、XDIのみからなる。XDIの含有割合は、国際公開第2018/190290号の[0377]段落に記載の方法により測定できる。
【0028】
XDI組成物は、副成分として、4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネート(PTSI、別名:p-トルエンスルホニルイソシアネート)を含有する。
【0029】
XDI組成物中のPTSIの割合は、質量基準で、15000ppm以下、好ましくは、12000ppm以下、より好ましくは、10000ppm以下、より好ましくは、8000ppm以下、より好ましくは、5000ppm以下、より好ましくは、2000ppm以下、より好ましくは、1000ppm以下、より好ましくは、500ppm以下、より好ましくは、100ppm以下である。
【0030】
XDI組成物中のPTSIの割合が上記上限値以下であれば、XDI組成物から製造される樹脂の色相および透明性を向上できる。特に、XDI組成物中のPTSIの割合が8000ppm以下であれば、XDI組成物から製造される樹脂の色相を、より向上できる。
【0031】
なお、色相は、後述する実施例に記載のイエロー・インデックスにより、評価できる。透明性は、後述する実施例に記載の失透度により、評価できる。
【0032】
また、XDI組成物中のPTSIの割合は、質量基準で、例えば、0ppmを超過し、好ましくは、1ppm以上、より好ましくは、5ppm以上、より好ましくは、10ppm以上、より好ましくは、20ppm以上、より好ましくは、40ppm以上である。
【0033】
PTSIの含有割合が上記下限値以上であれば、XDI組成物から製造される樹脂の色相および透明性を向上できる。
【0034】
なお、上記したPTSIの含有割合の上限値と下限値とを適宜組み合わせて、PTSIの含有割合の範囲を設定することができる。
【0035】
PTSIの含有割合を測定するには、まず、PTSIを含有するXDI組成物100mgと、内部標準物質としてのメチルナフタレン0.5mgとを混合して、得られた混合物を10mLに定容し、サンプルを得る。次に、得られたサンプルを、以下の測定条件でガスクロマトグラフィー質量分析する。保持時間12.1分に現れる内部標準物質のピークと、保持時間13.2分から13.9分に現れるPTSIのピークとの面積比から、PTSIの含有割合を計算する。
(ガスクロマトグラフィー質量分析の測定条件)
カラム;HP19091L-433 HP-50+(内径0.25mm×長さ30m、フィルム0.25μm)、
オーブン温度;50℃で1分間保持、50℃から280℃まで10.0℃/minで昇温、280℃到達後6分間保持、
キャリアガス;He1.0ml/min コンスタントフローモード、
注入方法;パルスドスプリットレス法(150kPa at 0.5min)、
注入量;1.0μL、
サンプル濃度:1.0質量%ジクロロメタン溶液、
注入温度;200℃、
インターフェース温度;280℃、
四重極温度;150℃、
イオン源温度;230℃、
検出方法;Scan法(m/z:10~500)。
【0036】
なお、XDI組成物は、PTSI以外の他の副成分を含有してもよい。
【0037】
他の副成分として、例えば、4-メチルベンゼンスルホンアミド(PTSA、別名:p-トルエンスルホンアミド)、国際公開第2018/190290号の段落[0028]~[0030]に記載されるジクロロメチルベンジルジイソシアネート(DCI)、および、国際公開第2018/190290号の段落[0039]~[0041]に記載されるモノクロロメチルベンジルイソシアネート(CBI)が挙げられる。
【0038】
XDI組成物中のPTSAの割合は、例えば、3000ppm以下、好ましくは、2000ppm以下である。
【0039】
PTSAの含有割合が上記範囲内であれば、XDI組成物から製造される樹脂の黄変および白濁を抑制できる。
【0040】
XDI組成物中のDCIの割合は、例えば、0.1ppm以上、好ましくは、0.3ppm以上、より好ましくは、0.6ppm以上、より好ましくは、1.0ppm以上であり、例えば、60ppm以下、好ましくは、50ppm以下、より好ましくは、30ppm以下、より好ましくは、20ppm以下である。
【0041】
XDI組成物中のDCIの割合が上記範囲内であれば、XDI組成物から製造される樹脂の黄変および白濁を抑制できる。
【0042】
XDI組成物中のCBIの割合は、例えば、0.2ppm以上、好ましくは、6ppm以上、より好ましくは、100ppm以上、例えば、5000ppm以下、好ましくは、4000ppm以下、より好ましくは、3000ppm以下、とりわけ好ましくは、1600ppm以下、特に好ましくは、1000ppm以下である。
【0043】
また、CBIの含有割合は、DCIの含有割合に対して、例えば、2倍以上、好ましくは、10倍以上、より好ましくは、20倍以上、例えば、800倍以下、好ましくは、300倍以下、より好ましくは、50倍以下である。
【0044】
CBIの含有割合が上記の範囲であれば、樹脂の黄変を抑制できる。とりわけ、CBIの含有割合が上記上限以下であれば、樹脂の黄変を抑制できるとともに、樹脂の製造時のウレタン化反応を円滑に進行させることができ、樹脂の機械特性を確実に向上できる。
【0045】
DCIの含有割合、および、CBIの含有割合は、国際公開第2018/190290号の実施例に記載の方法により測定できる。
【0046】
2.XDI組成物の製造方法
次に、XDI組成物の製造方法について説明する。
【0047】
XDI組成物の製造方法は、例えば、国際公開第2018/190290号の[0054]~[0110]段落に記載のXDI組成物の製造方法によって、反応マス(精製前組成物)を製造する工程と、反応マスを精製する工程と、PTSIの含有割合を調節する工程とを含む。
【0048】
反応マスを製造するには、例えば、キシリレンジアミンと塩化水素とを混合して、キシリレンジアミン塩酸塩を造塩した後、塩酸塩と塩化カルボニル(ホスゲン)とを反応させる(アミン塩酸塩のホスゲン化法)。
【0049】
以下において、キシリレンジアミンをXDAとする。XDAとして、例えば、1,2-XDA(o-XDA)、1,3-XDA(m-XDA)、および、1,4-XDA(p-XDA)が挙げられ、好ましくは、1,3-XDA(m-XDA)が挙げられる。
【0050】
XDA塩酸塩を造塩する造塩工程では、例えば、XDAと塩化水素とを、不活性溶媒存在下で混合して、XDA塩酸塩を製造(造塩)する。
【0051】
不活性溶媒として、例えば、国際公開第2018/190290号の[0059]段落に記載の不活性溶媒が挙げられる。不活性溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。不活性溶媒のなかでは、好ましくは、ハロゲン化芳香族炭化水素類が挙げられ、より好ましくは、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンが挙げられる。
【0052】
そして、XDAが不活性溶媒に溶解された溶液を撹拌しながら、塩化水素ガスを供給し、混合する。
【0053】
XDAおよび不活性溶媒の質量の総和に対する、XDAの質量割合(全アミン濃度)は、例えば、3質量%以上、好ましくは、5質量%以上、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、15質量%以下である。
【0054】
塩化水素の供給割合は、XDA1モルに対して、例えば、2モル以上、また、例えば、10モル以下、好ましくは、6モル以下、より好ましくは、4モル以下である。
【0055】
造塩工程における造塩温度は、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上、また、例えば、160℃以下、好ましくは、150℃以下である。造塩工程における造塩圧力(ゲージ圧)は、例えば、大気圧(0MPaG)以上、好ましくは、0.01MPaG以上、また、例えば、1.0MPaG以下、好ましくは、0.5MPaG以下である。
【0056】
これにより、XDAと塩化水素とからXDA塩酸塩が生成し(塩酸塩化反応)、XDA塩酸塩を含むスラリーが製造される。
【0057】
次いで、XDA塩酸塩を含むスラリーに二塩化カルボニルを供給して、副生する塩化水素ガスを取り除きながら、XDA塩酸塩と二塩化カルボニルとを反応させる(イソシアネート化反応、ホスゲン化)。
【0058】
二塩化カルボニルの供給割合は、XDA塩酸塩1モルに対して、例えば、4モル以上、好ましくは、5モル以上、より好ましくは、6モル以上、また、例えば、50モル以下、好ましくは、40モル以下、より好ましくは、30モル以下である。
【0059】
イソシアネート化工程の反応時間は、例えば、4時間以上、好ましくは、6時間以上、また、例えば、25時間以下、好ましくは、20時間以下、より好ましくは、15時間以下である。
【0060】
イソシアネート化工程における反応温度は、例えば、90℃以上、好ましくは、100℃以上、より好ましくは、110℃以上、また、例えば、190℃以下、好ましくは、180℃以下、より好ましくは、160℃以下である。
【0061】
イソシアネート化工程における反応圧力(ゲージ圧)としては、例えば、大気圧(0MPaG)を超過し、好ましくは、0.0005MPaG以上、より好ましくは、0.001MPaG以上、さらに好ましくは、0.003MPaG以上、とりわけ好ましくは、0.01MPaG(10kPaG)以上、特に好ましくは、0.02MPaG(20kPaG)以上、最も好ましくは、0.03MPaG(30kPaG)以上、また、例えば、0.6MPaG以下、好ましくは、0.4MPaG以下、より好ましくは、0.2MPaG以下である。
【0062】
イソシアネート化工程は、好ましくは、連続式により実施される。つまり、撹拌槽において生成したスラリー(XDA塩酸塩)を、撹拌槽から撹拌槽とは別の反応槽に連続的に送液して、反応槽においてXDA塩酸塩と二塩化カルボニルとを反応させながら、反応槽から反応液(反応マス)を連続的に取り出す。
【0063】
これによって、XDA塩酸塩と二塩化カルボニルとが反応して、主成分としてXDIが生成する。
【0064】
次いで、必要により、反応液(反応混合物)に対して、脱ガス工程、脱溶媒工程および脱タール工程を実施する。脱ガス工程では、反応液(反応混合物)から、余剰な塩化カルボニルや副生する塩化水素などのガスを、公知の脱ガス塔により除去する。脱溶媒工程では、反応液から公知の蒸留塔により不活性溶媒を留去する。脱タール工程では、反応液から公知の脱タール器によりタール成分を除去する。
【0065】
以上によって、XDIを含有する反応マスが製造される。
【0066】
反応マスにおけるXDIの含有割合は、例えば、80.0質量%以上、好ましくは、90.0質量%以上、より好ましくは、95.0質量%以上、また、例えば、99.0質量%以下、好ましくは、98.5質量%以下、より好ましくは、98.0質量%以下である。
【0067】
次いで、反応マスを精製する。
【0068】
反応マスの精製方法として、例えば、蒸留が挙げられる。反応マスを蒸留により精製するには、例えば、反応マスから低沸物(低沸点成分)を蒸留により留去した後、脱低沸後の反応マスである脱低沸マスを精留する。
【0069】
脱低沸工程では、例えば、反応マスを脱低沸塔により蒸留して、低沸物を留去する。
【0070】
脱低沸塔として、例えば、棚段塔および充填塔が挙げられ、好ましくは、充填塔が挙げられる。脱低沸塔の理論段数は、例えば、3段以上、好ましくは、5段以上、より好ましくは、7段以上、また、例えば、40段以下、好ましくは、20段以下、より好ましくは、15段以下である。
【0071】
脱低沸塔の塔底温度は、例えば、130℃以上、好ましくは、140℃以上、より好ましくは、150℃以上、また、例えば、200℃以下、好ましくは、190℃以下、より好ましくは、180℃以下である。
【0072】
脱低沸塔の塔頂温度は、例えば、90℃以上、好ましくは、100℃以上、より好ましくは、110℃以上、また、例えば、160℃以下、好ましくは、150℃以下、より好ましくは、140℃以下である。
【0073】
脱低沸塔の塔頂圧力は、例えば、0.05kPa以上、好ましくは、0.1kPa以上、より好ましくは、0.2kPa以上、また、例えば、3.0kPa以下、好ましくは、2.0kPa以下、より好ましくは、1.0kPa以下である。
【0074】
脱低沸塔の塔頂還流比は、例えば、1以上、好ましくは、5以上、より好ましくは、10以上、また、例えば、80以下、好ましくは、60以下、より好ましくは、50以下である。
【0075】
脱低沸塔の滞留時間は、例えば、0.1時間以上、好ましくは、0.2時間以上、より好ましくは、0.3時間以上、また、例えば、10時間以下、好ましくは、5時間以下、より好ましくは、3時間以下である。
【0076】
これより、低沸物を留去させて、脱低沸マスを缶出液として得る。
【0077】
次いで、精留工程では、例えば、脱低沸マスを精留塔により蒸留して留分を取り出す。
【0078】
精留塔として、例えば、棚段塔および充填塔が挙げられ、好ましくは、充填塔が挙げられる。精留塔の理論段数は、例えば、1段以上、また、例えば、20段以下、好ましくは、10段以下、より好ましくは、5段以下である。
【0079】
精留塔の塔底温度は、例えば、120℃以上、好ましくは、130℃以上、より好ましくは、140℃以上、また、例えば、190℃以下、好ましくは、180℃以下、より好ましくは、170℃以下である。
【0080】
精留塔の塔頂温度は、例えば、90℃以上、好ましくは、110℃以上、より好ましくは、130℃以上、また、例えば、180℃以下、好ましくは、170℃以下、より好ましくは、160℃以下である。
【0081】
精留塔の塔頂圧力は、例えば、0.05kPa以上、好ましくは、0.1kPa以上、より好ましくは、0.2kPa以上、また、例えば、3.0kPa以下、好ましくは、2.0kPa以下、より好ましくは、1.0kPa以下である。
【0082】
精留塔の塔頂還流比は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.2以上、より好ましくは、0.3以上、また、例えば、50以下、好ましくは、20以下、より好ましくは、10以下である。
【0083】
精留塔の滞留時間は、例えば、0.2時間以上、好ましくは、0.5時間以上、より好ましくは、1.0時間以上、また、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0084】
以上によって、XDIを主成分とする留分が、取り出される。取り出された留分には、上記した範囲で、DCIおよびCBIが含有される。
【0085】
次に、PTSIの含有割合を調節する。
【0086】
PTSIの含有割合を調節するには、PTSIの含有割合が上記した範囲内に収まるように、PTSIを、取り出された留分に混合する。
【0087】
なお、PTSIの含有割合を調整する方法は、限定されない。PTSIがXDI組成物中に含まれる場合、PTSIの含有割合は、例えば、蒸留、カラム精製等の公知の方法により調整してもよい。
【0088】
また、XDI組成物にPTSAを配合する場合、PTSAの含有割合が上記した範囲内に収まるように、PTSAを、取り出された留分に混合する。
【0089】
以上により、XDI組成物が得られる。
【0090】
<作用効果>
本発明のXDI組成物は、PTSIを含有する。
【0091】
そのため、XDI組成物から製造される樹脂は、色相および透明性に優れる。
【0092】
XDI組成物中のPTSIの割合が、質量基準で、15000ppm以下であると、XDI組成物から製造される樹脂の色相および透明性の向上を図ることができる。
【0093】
3.重合性組成物
重合性組成物は、イソシアネート成分と、活性水素基含有成分とを含有する。イソシアネート成分は、XDI組成物を含有する。言い換えると、重合性組成物は、XDI組成物を含有する。好ましくは、イソシアネート成分は、XDI組成物からなる。
【0094】
活性水素基含有成分として、例えば、ポリオール、ポリチオール、および、ポリアミンが挙げられる。
【0095】
活性水素基含有成分は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0096】
活性水素基含有成分は、光学特性の観点から、好ましくは、ポリチオールを含有する。より好ましくは、活性水素基含有成分は、ポリチオールからなる。
【0097】
ポリチオールとして、例えば、脂肪族ポリチオール、芳香族ポリチオール、および、複素環ポリチオールが挙げられる。
【0098】
脂肪族ポリチオールとして、例えば、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピネート)、チオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、および、トリス(メルカプトエチルチオ)メタンが挙げられる。
【0099】
芳香族ポリチオールとして、例えば、1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、および、2,6-ナフタレンジチオールが挙げられる。
【0100】
複素環ポリチオールとして、例えば、2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、および、ビスムチオールが挙げられる。
【0101】
このようなポリチオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0102】
また、ポリチオールとして、好ましくは、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)およびジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0103】
3.樹脂
樹脂は、重合性組成物の硬化物である。つまり、XDI組成物は、樹脂の原料として利用される。詳しくは、樹脂は、上記したイソシアネート成分と、上記した活性水素基含有成分とを反応させることにより、製造される。活性水素基含有成分がポリチオールを含有する場合、樹脂は、透明性に優れている。そのため、樹脂は、光学材料として好適である。つまり、XDI組成物は、好ましくは、光学用である。言い換えると、XDI組成物は、光学材料の原料である。
【0104】
樹脂のイエロー・インデックスの値(Y.I.値)は、例えば、1.10以下、好ましくは、1.05以下、より好ましくは、1.03以下、より好ましくは、1.00以下である。Y.I.値が上記上限値以下であると、色相に優れている。
【0105】
なお、樹脂のY.I.値の下限値は、限定されない。樹脂のY.I.値は、例えば、0.95以上である。
【0106】
樹脂の失透度は、例えば、18以下、好ましくは、16以下、より好ましくは、15以下である。失透度が上記した上限値以下であると、樹脂は、透明性に優れている。
【0107】
なお、樹脂の失透度の下限値は、限定されない。樹脂の失透度は、例えば、10以上である。
【0108】
樹脂は、好ましくは、公知の成形方法によって成形される。樹脂は、好ましくは、注型成形される。注型成形では、イソシアネート成分と活性水素基含有成分とを、活性水素基含有成分中の活性水素基(アミノ基、チオール基、または水酸基)に対するイソシアネート成分中のイソシアネート基が0.8~1.2となる割合で混合し、得られた混合物を型に注入し、その後、加熱硬化させる。これにより、注型成形品としての成形体が得られる。つまり、成形体は、樹脂からなる。成形体は、光学部品として好適である。樹脂の成形体として、例えば、光学素子が挙げられる。
【0109】
光学素子として、例えば、レンズ、シートおよびフィルムが挙げられ、好ましくは、レンズが挙げられる。
【0110】
レンズは、例えば、XDI組成物とポリチオールとの反応により製造される。レンズの製造では、例えば、注型法を採用することができる。
【0111】
レンズとして、例えば、透明レンズ、サングラスレンズ、偏光レンズ、眼鏡レンズ、カメラレンズ、ピックアップレンズ、および、コンタクトレンズが挙げられる。
【0112】
<作用効果>
樹脂、成形体、光学素子およびレンズは、重合性組成物の硬化物を含む。そのため、樹脂、成形体、光学素子およびレンズは、色相および透明性に優れる。
【0113】
なお、XDI組成物は、コーティング剤(例えば、塗料および接着剤)の原料として利用することもできる。この場合、XDI組成物は、必要に応じて公知の方法で変性されて、イソシアネート成分として、コーティング用重合性組成物に含まれる。
【0114】
キシリレンジイソシアネート変性体組成物(以下、XDI変性体組成物とする。)は、上記したXDI組成物を変性することにより製造され、下記(a)~(i)の官能基を少なくとも1種含有する。
(a)イソシアヌレート基、
(b)アロファネート基、
(c)ビウレット基、
(d)ウレタン基、
(e)ウレア基、
(f)イミノオキサジアジンジオン基、
(g)ウレトジオン基、
(h)ウレトンイミン基、
(i)カルボジイミド基。
【0115】
より具体的には、上記(a)の官能基(イソシアヌレート基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのトリマーを含有しており、例えば、XDIモノマー組成物に公知のイソシアヌレート化触媒を添加して反応させ、XDIをイソシアヌレート化(例えば三量化)することにより、得ることができる。
【0116】
上記(b)の官能基(アロファネート基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのアロファネート変性体を含有しており、例えば、XDIモノマー組成物と、1価アルコールまたは2価アルコールとを反応させた後、公知のアロファネート化触媒を添加してさらに反応させることにより、得ることができる。
【0117】
上記(c)の官能基(ビウレット基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのビウレット変性体を含有しており、例えば、XDIモノマー組成物と、水または第二級アミンとを反応させた後、公知のビウレット化触媒を添加してさらに反応させることにより、得ることができる。
【0118】
上記(d)の官能基(ウレタン基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのポリオール変性体を含有しており、例えば、XDIモノマー組成物と、低分子量ポリオール(例えば、トリメチロールプロパン)との反応により、得ることができる。
【0119】
上記(e)の官能基(ウレア基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのポリアミン変性体を含有しており、例えば、XDIモノマー組成物と、ポリアミンとの反応により、得ることができる。
【0120】
上記(f)の官能基(イミノオキサジアジンジオン基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのイミノオキサジアジンジオン変性体(非対称性トリマー)を含有しており、例えば、XDI組成物を公知のイミノオキサジアジンジオン化触媒の存在下において反応させ、XDIをイミノオキサジアジンジオン化(例えば三量化)することにより、得ることができる。
【0121】
上記(g)の官能基(ウレトジオン基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのウレトジオン変性体を含有しており、例えば、XDI組成物を90℃~200℃程度で加熱する方法、あるいは公知のウレトジオン化触媒の存在下において反応させ、XDIをウレトジオン化(例えば、二量化)することにより、得ることができる。
【0122】
上記(h)の官能基(ウレトンイミン基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのウレトンイミン変性体を含有しており、例えば、XDI組成物を公知のカルボジイミド化触媒の存在下において反応させ、カルボジイミド基を形成した後、そのカルボジイミド基にXDIを付加させることにより、得ることができる。
【0123】
上記(i)の官能基(カルボジイミド基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのカルボジイミド変性体を含有しており、例えば、XDI組成物を公知のカルボジイミド化触媒の存在下において反応させることにより、得ることができる。
【0124】
なお、XDI変性体組成物は、上記(a)~(i)の官能基を少なくとも1種含有していればよく、2種以上含有することもできる。また、XDI変性体組成物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0125】
コーティング用重合性組成物は、例えば、二液硬化型であって、硬化剤としてのA剤と、主剤としてのB剤とを含む。A剤は、イソシアネート成分を含む。A剤は、好ましくは、XDI変性体組成物を含む。B剤は、活性水素基含有成分を含む。B剤は、好ましくは、ポリオールを含む。
【実施例】
【0126】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0127】
1.XDI組成物の製造
国際公開第2018-190290号公報に記載の方法により、XDI組成物を製造した。
【0128】
次に、得られたXDI組成物に所定量のPTSI(富士フィルム和光純薬社製)を混合し、「XDI組成物中のPTSIの割合」を、表1に示す割合に調節した。
【0129】
これにより、各実施例および比較例のXDI組成物を得た。
【0130】
2.プラスチックレンズの製造
表1に示すXDI組成物50.8質量部に、硬化触媒としてジメチル錫ジクロライド0.01質量部と、ゼレックUN(商品名Stepan社製品;酸性リン酸エステル)0.10質量部と、バイオソーブ583(堺化学社製;紫外線吸収剤)1.5質量部とを、20℃で混合し、溶解させて、混合液1を得た。
【0131】
次に、混合液1に、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンを主成分とするポリチオール組成物49.2質量部を均一に混合して、混合液2(重合性組成物)を得た。
【0132】
混合液2を、600Paで1時間脱泡し、その後、1μmテフロン(登録商標)フィルターにて濾過した。
【0133】
次に、濾過した混合液2を、ガラスモールドとテープからなる型へ注入した。
【0134】
次に、混合液2が注入された型をオーブンへ投入し、25℃から120℃まで昇温し、120℃で24時間硬化させた。
【0135】
その後、オーブンから型を取り出し、型から硬化物を離型して、得られた硬化物を120℃で1時間アニールした。
【0136】
以上により、各実施例および比較例の硬化物(成形体)を得た。
【0137】
3.測定方法
(1)イエロー・インデックスの値(Y.I.値)
各実施例および比較例の硬化物を、円板状(厚さ9mm、直径75mm)のプラスチックレンズ(光学素子)に成形した。
【0138】
得られたプラスチックレンズの透過のY.I.値を、分光測色計CM-5(コニカミノルタ社製)を用いて、測定した。
【0139】
なお、Y.I.値が小さいほど、プラスチックレンズの色相が良く、Y.I.値が大きいほど、色相が不良となる。結果を表1に示す。
【0140】
(2)失透度
各実施例および比較例の硬化物を、円板状(厚さ9mm、直径75mm)のプラスチックレンズ(光学素子)に成形した。
【0141】
次に、レンズに光源(ハヤシレピック社製Luminar Ace LA-150A)からの光を透過させた。
【0142】
円板レンズを透過した光の画像を画像処理装置(宇部情報システム社製)に取り込み、取り込んだ画像を濃淡処理した。
【0143】
処理後の画像の濃淡の度合いを画素毎に数値化し、各画素の濃淡の度合いの数値の平均値を計算した。得られた平均値が、レンズの失透度である。失透度が小さい程、レンズの透明性が優れている。結果を表1に示す。
【0144】
【0145】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明のキシリレンジイソシアネート組成物、キシリレンジイソシアネート変性体組成物、重合性組成物、樹脂および成形体は、レンズ、シートおよびフィルムなどの光学素子に利用される。
【要約】
キシリレンジイソシアネート組成物は、キシリレンジイソシアネートと、4-メチルベンゼンスルホニルイソシアネートとを含有する。