(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】排水ピット装置
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20230803BHJP
E03C 1/12 20060101ALI20230803BHJP
C09D 1/02 20060101ALI20230803BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230803BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
E03F5/04 D
E03C1/12 A
C09D1/02
C09D7/61
C09D5/00 Z
(21)【出願番号】P 2022083412
(22)【出願日】2022-04-27
【審査請求日】2023-03-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390017813
【氏名又は名称】株式会社日本ピット
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 希
(72)【発明者】
【氏名】野▲崎▼ 孝博
(72)【発明者】
【氏名】阿部 克洋
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-257082(JP,A)
【文献】特開2006-326543(JP,A)
【文献】特許第5413882(JP,B2)
【文献】特開平11-216402(JP,A)
【文献】特開2007-167754(JP,A)
【文献】特開2017-210719(JP,A)
【文献】特開2018-003446(JP,A)
【文献】特開2015-055120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/04
E03C 1/12
C09D 1/02
C09D 7/61
C09D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材水処理場からの汚損水を
床面からグレーチング蓋(107)を介して流入するダスター溝(102)に、グレーチング蓋
(107)つきで
阻集籠(104)を収容した集水枡(103)を連通接続し、前記集水枡(103)の底部に
水封防臭カバー(106)を介して排水管(105)を連通接続し、前記
各グレーチング蓋(107)の表部に滑り止め用のエンボス加工部(109)を有し、前記グレーチング蓋(107)の端部を受けるL型の蓋受枠(108)を有する排水ピット装置において、前記
各グレーチング蓋(107)の表部の滑り止め用のエンボス加工部(109)の表面、及び前記阻集籠(104)の全表面、及び、ダスター溝(102)
の内壁面、及び前記集水枡(103)
の内壁面、及び前記水封防臭カバー(106)の上表面、及び前記各グレーチング蓋(107)の端部を受けるL型の蓋受枠(108)の内壁面の各々の汚損水接触面に水系無機塗料の塗布部(Z1~Z7)を形成し、前記各塗布部
(Z1~Z7)は、ケイ酸アルカリ100重量部に、硬化剤としてケイ酸カルシウム及び/またはリン酸亜鉛を合計5重量部~20重量部添加し、無機充填材として、コレマナイト(2CaO,3B
2O
3,5H
2O)及び/またはウレキサイト(Na
2O,2CaO,5B
2O
3,16H
2O)を主成分としたB
2O
3成分溶出作用を有する平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の微細な鱗片状天然ガラスを合計20重量部~80重量部と水50重量部を粉砕混合したものを含む水系無機塗料を3~5μmの薄膜を形成してなることを特徴とする排水ピット装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、食材水処理場からの汚損水を流入する排水ピット装置にて、混入汚染物などが付着汚染することを自洗により確実に防止して汚染拡大を未然に防ぐことを可能にして、食製材の衛生上及び安全上の全てに安心なHACCP用の排水ピット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食材工場、給食センター、学校給食、病院、レストランの厨房等における床排水ピット装置は、主に食材衛生法によるHACCPにより衛生面が強化される。
HACCP(Hazard(危害),Analysis(分析),Critical(重要),Control(管理),Point(点))システムは、食材製造工程を細分化し、工程ごとのリスク管理を行い、問題がある場合は、どの工程に原因があるのかを迅速に究明し対応するものである。
而して、従来の排水ピット装置は、コンクリート製のダスター溝を利用していたため経年劣化によりクラックが発生し徐々に拡張されて、そこに排水が侵入して汚水漏れを惹起する。これらを放置するとクラック部に汚染物が増殖・濃縮する恐れがある。
【0003】
このため近年は、抗菌性、抗カビ性、耐摩耗性、耐熱性、耐薬材性に優れているステンレス(SUS)製或いは樹脂製の受枠成形、ダスター溝成形の一体型のダスターピット及びネオトラフ等のダスター溝等による床排水ピット装置が開発された。
具体的な構造デザインとしては、食材の残菜・汚物・塵埃が付着し難く、清掃し易いように丸構造や楕円構造を採用し、大容量の箱型の隅部には曲面を成形し、底部には水勾配を形成する等の対策をして溜りが少なく円滑な汚損水の排水を可能にしようとしている。
叉、従来の前記ステンレス製の排水路にして汚損水路表面の凹凸を改善しているが、逆説的に汚損水排水路の表面への多少の汚染物の付着は免れず、累積による定期的に大がかりな掃除をする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、食材水処理場からの汚損水を流入する排水ピット装置にて、該汚損水を連続流水しながら流水路内で流水接触面への汚染物の付着及び累積を防止して、食製材の衛生上及び安全上の全てに安心なHACCP用の排水ピット装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を満足させる本発明における主な技術構成は、次の(1)の通りである。
(1)、食材水処理場からの汚損水を流入するダスター溝にグレーチング蓋つきの集水枡を連通接続し、前記集水枡の底部に排水管を連通接続した排水ピット装置において、前記ダスター溝、グレーチング蓋、集水枡の汚損水接触面に、ケイ酸アルカリ100重量部に、硬化剤としてケイ酸カルシウム及び/またはリン酸亜鉛を合計5重量部~20重量部添加し、無機充填材として、コレマナイト(2CaO,3B2O3,5H2O)及び/またはウレキサイト(Na2O,2CaO,5B2O3,16H2O)を主成分としたB
2
O
3
成分溶出作用を有する平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の微細な鱗片状天然ガラスを合計20重量部~80重量部混合したものを含む水系無機塗料を3~5μmの薄膜に塗付した塗布部を形成したことを特徴とする排水ピット装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明において、前記塗布部を形成する水系無機塗料は、好ましくは特許第5413882号で紹介の「水系無機塗料、塗装方法および塗装体」を利用することが好ましい。
本発明の食材水処理場からの汚損水を流入する前記排水ピット装置は、食材衛生の維持管理を容易にして衛生上及び安全上の全てに安心な排水ピット装置である。即ち、この前記水系無機塗料を排水ピット装置の汚損水接触面に塗付することにより、食材加工ライン(例:食材事前処理工程→加工処理工程→食製材出荷工程)において、食材事前処理工程から流出する汚損水を処理する排水ピット装置の、汚損水の接触面に前記の如く水系無機塗料を塗付しておくことにより、食材の残菜・汚物・塵埃・細菌・バクテリア・ウイルス等の付着を前記水系無機塗料により自洗して繁殖、累積を防止して、食材の衛生上及び安全上の全てに安心なHACCPを確立するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の排水ピット装置の実施例を示す側断面図(1)と平面説明図(2)である。
【
図3】
図1(2)の円Y1とY2内のグレーチング蓋の平面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明を実施するための形態を
図1~
図3に示す実施例により詳細に説明する。
図1の(1)(2)に示すように、本例の排水ピット装置100の基本構成は、複数の食材事前処理工程からの汚損水を流入するグレーチング蓋107付のダスター溝102(:ダスターピット又はダスタートラフ)床面101に埋設し、このダスター溝102に連通接続して流入水を一旦溜めるグレーチング蓋107付の集水枡103を設ける。前記集水枡103は上部に汚損水中の食材の残菜・汚物・塵埃を濾過する阻集籠104を取り外し可能に設け、底部に水封防臭カバー106を介して排水管105を連通接続する。
【0009】
前記排水ピット装置100において、ステンレス製及び/又は亜鉛メッキ鋼板製のダスター溝102、ステンレス製及び/又は亜鉛メッキ鋼板製の集水枡103、ステンレス製及び/又は亜鉛メッキ鋼板製の阻集籠104の内壁に接触する汚損水中の汚損物、細菌、バクテリア等の付着を確実に防止するために、
図1~
図3に示すように主な汚損水接触面に予め水系無機塗料の塗付部Z1~Z7を設置する。
塗付部Z1は、ダスター溝102の全内壁側面である。塗付部Z2と
Z3は
図1の(1)(2)及び
図3と
図3に示す各グレーチング蓋107の滑り止め用のエンボス加工部109の表面への塗付部である。塗付部Z4は阻集籠104の全内壁面への塗付部であり、塗付部Z5は集水枡103の全内壁面への塗付部である。塗付部Z6は全汚損水が接触する水封防臭カバー106の上表面への塗付部であり、
図2に示す塗付部Z7は蓋受枠108のL型の内壁面つまりグレーチング蓋107の端部が接触して汚損水の流れが淀む場所への塗付部である。
【0010】
前記塗付部Z1の水系無機塗料は、ケイ酸アルカリ100重量部に、硬化剤としてケイ酸カルシウム及び/またはリン酸亜鉛を合計5重量部~20重量部添加し、無機充填材として、コレマナイト(2CaO,3B2O3,5H2O)及び/またはウレキサイト(Na2O,2CaO,5B2O3,16H2O)を主成分としたB2O3成分溶出作用を有する平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の微細な鱗片状天然ガラスを合計20重量部~80重量部と、水50重量部とともにボールミルで3時間粉砕混合した塗料であり、4μmの薄膜の塗膜にした。
【0011】
前記塗付部Z2の水系無機塗料は、ケイ酸アルカリ100重量部に対して、硬化剤としてケイ酸カルシウム及びリン酸亜鉛を合計5重量部添加し、無機充填材として、コレマナイト(2CaO,3B2O3,5H2O)及びウレキサイト(Na2O,2CaO,5B2O3,16H2O)を主成分としたB2O3成分溶出作用を有する平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の微細な鱗片状天然ガラスを合計20重量部と、水50重量部とともにボールミルで3時間粉砕混合した塗料であり、3μmの薄膜の塗膜にした。
【0012】
前記塗付部Z3の水系無機塗料は、ケイ酸アルカリ100重量部に、硬化剤としてリン酸亜鉛を20重量部添加し、無機充填材として、ウレキサイト(Na2O,2CaO,5B2O3,16H2O)を主成分としたB2O3成分溶出作用を有する平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の微細な鱗片状天然ガラスを80重量部と、水50重量部とともにボールミルで3時間粉砕混合した塗料であり、5μmの薄膜の塗膜にした。
【0013】
前記塗付部Z4の水系無機塗料は、ケイ酸アルカリ100重量部に、硬化剤としてケイ酸カルシウム及びリン酸亜鉛を合計20重量部添加し、無機充填材として、コレマナイト(2CaO,3B2O3,5H2O)及びウレキサイト(Na2O,2CaO,5B2O3,16H2O)を主成分としたB2O3成分溶出作用を有する平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の微細な鱗片状天然ガラスを合計80重量部と、水50重量部とともにボールミルで3時間粉砕混合した塗料であり、4μmの薄膜の塗膜にした。
【0014】
前記塗付部Z5の水系無機塗料は、ケイ酸アルカリ100重量部に、硬化剤としてケイ酸カルシウム及びリン酸亜鉛を合計15重量部添加し、無機充填材として、コレマナイト(2CaO,3B2O3,5H2O)及びウレキサイト(Na2O,2CaO,5B2O3,16H2O)を主成分としたB2O3成分溶出作用を有する平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の微細な鱗片状天然ガラスを合計60重量部と、水50重量部とともにボールミルで3時間粉砕混合した塗料であり、3μmの薄膜の塗膜にした。
【0015】
前記塗付部Z6の水系無機塗料は、ケイ酸アルカリ100重量部に、硬化剤としてケイ酸カルシウムを20重量部添加し、無機充填材として、コレマナイト(2CaO,3B2O3,5H2O)及びウレキサイト(Na2O,2CaO,5B2O3,16H2O)を主成分としたB2O3成分溶出作用を有する平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の微細な鱗片状天然ガラスを合計30重量部と、水50重量部とともにボールミルで3時間粉砕混合した塗料であり、5μmの薄膜の塗膜にした。
【0016】
前記塗付部Z7の水系無機塗料は、ケイ酸アルカリ100重量部に、硬化剤としてケイ酸カルシウム及びリン酸亜鉛を合計13重量部添加し、無機充填材として、コレマナイト(2CaO,3B2O3,5H2O)及び/またはウレキサイト(Na2O,2CaO,5B2O3,16H2O)を主成分としたB2O3成分溶出作用を有する平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の微細な鱗片状天然ガラスを合計75重量部と、水50重量部とともにボールミルで3時間粉砕混合した塗料であり、4μmの薄膜の塗膜にした。
【0017】
本例はこれ等の構成により、食材処理汚損水専用の排水ピット装置100内の排水路を流れる食材汚染物である汚損物、細菌、バクテリア等が該排水路の壁等に付着することを前記水系無機塗料の塗付部Z1~Z7により確実に防止し、常に清潔な表面状態を維持することを可能にした。
因みに食材処理汚損水専用の排水ピット装置100を流れる汚損水は野菜処理水及び食用肉処理水であり、その量は平均して100~200m3/hrである。そして排水ピット装置100の定期掃除は従来毎日であったのが1週間毎で簡単に済み、悪臭の発生もなく且ついずれの塗付部Z1~Z7も剥離が無く、衛生上極めて清潔な排水管理を永年維持することができた。
【0018】
これらにより食材工場、給食センター、学校給食、病院、レストランの厨房等における食材衛生の維持管理を自動的に迅速的確に行い、食材の衛生上及び安全上の全てに安心なHACCPを確立することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の排水ピット装置は、前記した優れた作用効果を呈するため、食材工場、給食センター、病院、レストランの厨房等における床の食材処理汚損水専用の排水ピット装置に有利に適用することができるので食材産業界に貢献すること多大なものがある。
【符号の説明】
【0020】
100:排水ピット装置
101:床面
102:ダスター溝
103:集水枡
104:阻集籠
105:排水管
106:水封防臭カバー
107:グレーチング蓋
108:蓋受枠
109:滑り止め用のエンボス加工部
Z1~Z7:水系無機塗料の塗布部(厚み3~5μm)
【要約】 (修正有)
【課題】食材水処理場からの汚損水を流入する食材処理汚損水専用の排水ピット装置にて、該汚損水を連続流水しながら汚損水路内で汚染物の付着を確実に防止して汚染拡大を未然に防ぐことを可能にする排水ピット装置を提供する。
【解決手段】グレーチング蓋、ダスター溝、集水枡の汚損水接触面に、ケイ酸アルカリ100重量部に、硬化剤としてケイ酸カルシウム及び/またはリン酸亜鉛を合計5重量部~20重量部添加し、無機充填材として、コレマナイト(2CaO,3B
2O
3,5H
2O)及び/またはウレキサイト(Na
2O,2CaO,5B
2O
3,16H
2O)を主成分としたB2O3成分溶出作用を有する平均粒径30μmで厚み1.0μm以下の微細な鱗片状天然ガラスを合計20重量部~80重量部混合したものを含む水系無機塗料を3~5μmの薄膜に塗付した塗布部を形成したことを特徴とする排水ピット装置。
【選択図】
図1