(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】ゴルフ器具
(51)【国際特許分類】
A63B 69/36 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
A63B69/36 501B
(21)【出願番号】P 2023063414
(22)【出願日】2023-04-10
【審査請求日】2023-04-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523133742
【氏名又は名称】杉江精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 篤史
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-174735(JP,A)
【文献】特開2018-15025(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0300963(US,A1)
【文献】米国特許第10994184(US,B1)
【文献】米国特許第3254895(US,A)
【文献】中国特許出願公開第112512645(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1507569(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00
A63B 69/36
A63B 60/00
A63B 102/18
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状体と、前記棒状体の先端部に着脱可能に取り付けられるヘッドと、を備えるゴルフ器具であって、
前記棒状体の先端部には、前記棒状体の延伸方向に対して略直交する方向に突出する突出部が設けられ、
前記ヘッドは、
前記棒状体における前記突出部を、前記延伸方向に沿って挿入可能な挿入孔と、
前記挿入孔に連通した内部空間であって、前記突出部を、前記挿入孔から挿入されたときの第1の位置と、前記突出部の挿入方向視において前記第1の位置とは異なる第2の位置との間で変位可能なスペースを有する内部空間と、
前記挿入方向視において、前記第1の位置にある前記突出部とは異なる位置にあり、かつ、前記第2の位置にある前記突出部の手前に位置するストッパと、が形成された収容体を有しており、
前記収容体は、さらに、前記第2の位置にある前記突出部と前記ヘッドとを磁力で吸着するマグネット機構を有する、ゴルフ器具。
【請求項2】
請求項1に記載のゴルフ器具であって、
前記第2の位置は、前記第1の位置にある前記突出部を、前記棒状体を中心に回動させた位置である、ゴルフ器具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のゴルフ器具であって、
前記ヘッドは、さらに、前記挿入方向において前記収容体よりも手前側に位置する中間収容体を有しており、
前記中間収容体には、
前記挿入方向で前記第1の位置とは異なる第3の位置にある前記突出部を、前記延伸方向に沿って挿入可能な中間挿入孔と、
前記中間挿入孔と前記挿入孔とに連通した中間空間であって、前記突出部を、前記中間挿入孔から挿入されたときの前記第3の位置と、前記第1の位置との間で変位可能なスペースを有する内部空間と、
前記挿入方向視で、前記中間空間において前記第1の位置にある前記突出部の手前に位置する中間ストッパと、が形成されている、ゴルフ器具。
【請求項4】
請求項3に記載のゴルフ器具であって、
前記内部空間における前記突出部の変位方向と前記中間空間における前記突出部の変位方向とは互いに異なっている、ゴルフ器具。
【請求項5】
請求項1に記載のゴルフ器具であって、
前記収容体は、互いに着脱可能な少なくとも2つの部材により構成されている、ゴルフ器具。
【請求項6】
請求項1に記載のゴルフ器具であって、
前記マグネット機構は、前記突出部と前記内部空間を構成する内壁とが、前記第1の位置から前記第2の位置への変位方向において互いに対向する部分に配置されている、ゴルフ器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、ゴルフ器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シャフトの先端部にヘッドが着脱可能に取り付けられるゴルフ器具が知られている(下記特許文献1参照)。具体的には、このゴルフ器具では、ヘッドに凹部が形成されており、この凹部に雄ねじが設けられており、シャフトの先端部には雌ねじが設けられている。シャフトの先端部をヘッドの凹部に挿入させつつ、シャフトの雌ねじをヘッドの雄ねじに螺合させることにより、シャフトの先端部にヘッドを取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のゴルフ器具では、シャフトにヘッドが螺合により取り付けられている。このため、例えばゴルフ器具の使用中にシャフトに対してヘッドが回転してシャフトからヘッドが抜けるおそれがある。
【0005】
本明細書では、上述した課題の少なくとも一部を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本明細書に開示されるゴルフ器具は、棒状体と、前記棒状体の先端部に着脱可能に取り付けられるヘッドと、を備えるゴルフ器具であって、前記棒状体の先端部には、前記棒状体の延伸方向に対して略直交する方向に突出する突出部が設けられ、前記ヘッドは、前記棒状体における前記突出部を、前記延伸方向に沿って挿入可能な挿入孔と、前記挿入孔に連通した内部空間であって、前記突出部を、前記挿入孔から挿入されたときの第1の位置と、前記突出部の挿入方向視において前記第1の位置とは異なる第2の位置との間で変位可能なスペースを有する内部空間と、前記挿入方向視において、前記第1の位置にある前記突出部とは異なる位置にあり、かつ、前記第2の位置にある前記突出部の手前に位置するストッパと、が形成された収容体を有しており、前記収容体は、さらに、前記第2の位置にある前記突出部と前記ヘッドとを磁力で吸着するマグネット機構を有する。
【0008】
本ゴルフ器具では、棒状体の突出部を、ヘッドの挿入孔に挿入し、ヘッドの内部空間において第1の位置から第2の位置に変位させる。すると、ストッパによって棒状体の先端部(突出部)がヘッドから抜け出ることが抑制される。また、第2の位置にある突出部はヘッドに磁力で吸着する。このため、本ゴルフ器具によれば、棒状体の先端部がヘッドから抜けることを抑制しつつ、棒状体に対するヘッドの変位やがたつきを抑制することができる。
【0009】
(2)上記ゴルフ器具において、前記第2の位置は、前記第1の位置にある前記突出部を、前記棒状体を中心に回動させた位置である構成としてもよい。本ゴルフ器具によれば、ヘッドに対して棒状体の位置を変えることなく、棒状体を中心に回動させることにより、棒状体に対してヘッドを固定することができる。
【0010】
(3)上記ゴルフ器具において、前記ヘッドは、さらに、前記挿入方向において前記収容体よりも手前側に位置する中間収容体を有しており、前記中間収容体には、前記挿入方向で前記第1の位置とは異なる第3の位置にある前記突出部を、前記延伸方向に沿って挿入可能な中間挿入孔と、前記中間挿入孔と前記挿入孔とに連通した中間空間であって、前記突出部を、前記中間挿入孔から挿入されたときの前記第3の位置と、前記第1の位置との間で変位可能なスペースを有する内部空間と、前記挿入方向視で、前記中間空間において前記第1の位置にある前記突出部の手前に位置する中間ストッパと、が形成されている構成としてもよい。本ゴルフ器具によれば、2重のロックにより棒状体の先端部がヘッドから抜けることを効果的に抑制しつつ、棒状体に対するヘッドの変位等を抑制することができる。
【0011】
(4)上記ゴルフ器具において、前記内部空間における前記突出部の変位方向と前記中間空間における前記突出部の変位方向とは互いに異なっている構成としてもよい。本ゴルフ器具によれば、互いに逆方向に突出部を移動させることで抜け止め解除される構成であるため、棒状体の先端部がヘッドから抜けることを、より効果的に抑制しつつ、棒状体に対するヘッドの変位等を抑制することができる。
【0012】
(5)上記ゴルフ器具において、前記収容体は、互いに着脱可能な少なくとも2つの部材により構成されている構成としてもよい。本ゴルフ器具によれば、収容体が互いに着脱可能な少なくとも2つの部材により構成されているため、収容体を、互いに材質が異なる部材により構成したり、一部材を重量が異なる別の部材に交換したりすることができる。
【0013】
(6)上記ゴルフ器具において、前記マグネット機構は、前記突出部と前記内部空間を構成する内壁とが、前記第1の位置から前記第2の位置への変位方向において互いに対向する部分に配置されている構成としてもよい。本ゴルフ器具によれば、突出部を第2の位置に変位させたときに吸着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態におけるゴルフ器具10の全体構成を示す斜視図
【
図2】
図1のII-IIの位置におけるゴルフ器具10の先端側部分の横断面構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.実施形態:
A-1.ゴルフ器具10の構成:
図1は、本実施形態におけるゴルフ器具10の全体構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1のII-IIの位置におけるゴルフ器具10の先端側(下側)部分の横断面構成を示す説明図であり、
図3は、シャフト20の先端側部分を示す斜視図である。なお、横断面とは、シャフト20の延伸方向(Z軸方向)に直交する断面(XY断面)である。
図1から
図3には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとする。なお、後述の
図4についても同様である。
【0016】
図1に示すように、ゴルフ器具10は、シャフト20とヘッド30とを備える。ヘッド30は、シャフト20の先端部に着脱可能に取り付けられる。ゴルフ器具10では、互いに重量が異なる複数のヘッド30(
図1および
図2では、一種類のヘッド30のみ図示)が用意されている。一種類のヘッド30をシャフト20から取り外して、当該一種類のヘッド30とは重量が異なる別の種類のヘッド30をシャフト20に取り付けることにより、重量が互いに異なるヘッド30でゴルフスイングの練習を行うことができる。シャフト20は、特許請求の範囲における棒状体の一例である。
【0017】
A-1-1.シャフト20の構成:
図2および
図3に示すように、シャフト20は、シャフト本体22とグリップ24と差込金具80とを備えている。シャフト本体22は、例えば円筒状の棒状体であり、例えばステンレス等の金属で形成されている。シャフト本体22の先端部の中空空間S1には、雌ねじS3が形成された中間部材25が埋設されている。グリップ24は、シャフト本体22の上端側の部分(Z軸正方向側の)の外周面に設けられている。グリップ24は、例えば樹脂製やゴム製の帯体が螺旋状に巻回された構成である。シャフト本体22とグリップ24とは、例えば6番アイアンのゴルフシャフトと同等の構成(寸法、重量等)とされているが、他のアイアンやウッドなどのシャフトと同等の構成でもよい。
【0018】
差込金具80は、シャフト本体22の先端部に設けられている。差込金具80は、ツバ部82と固定部84とを有している。ツバ部82は、一対の突出部83,83を有している。一対の突出部83,83は、シャフト20(シャフト本体22)に対して、シャフト20の径方向外側に突出している。一対の突出部83,83は、シャフト20に対して互いに反対の径方向外側に突出している。具体的には、差込金具80は、シャフト20の径方向に延びる長尺体であり、その長尺体の両端部が、シャフト20の延伸方向(Z軸方向)視でシャフト20から径方向外側に突出している。径方向は、特許請求の範囲におけるシャフトの延伸方向に対して略直交する方向の一例である。
【0019】
一方の突出部83(
図3のシャフト20の中心軸Lに対して上側に位置する突出部83)のうち、シャフト20の中心軸Lの周りの周方向の一方側の面(
図3でX軸負方向側の面)にマグネット86が露出するように配置されており(
図3参照)、他方側の面(
図3でX軸正方向側の面)にはマグネット86が露出していない。他方の突出部83(
図3のシャフト20の中心軸Lに対して下側に位置する突出部83)のうち、上記周方向の上記一方の面(
図3でX軸正方向側の面)にマグネット86が露出するように配置されており、他方側の面(
図3でX軸負方向側の面)にはマグネット86が露出していない(
図3参照)。要するに、一対の突出部83,83は、上記周方向の一方側の面のそれぞれにマグネット86が設けられており、シャフト20の軸周りの周方向の他方側の面のそれぞれにはマグネット86が設けられていない。また、一対の突出部83は、シャフト20の中心軸Lからの径方向の長さが互いに同一である。
【0020】
固定部84は、ツバ部82をシャフト本体22に固定する。
図3に示すように、固定部84は、円筒状であり、固定部84の下端部にツバ部82が結合されており、上端面には、固定孔S4が形成されている。固定部84の固定孔S4にシャフト本体22の先端部が挿入される。差込金具80には、シャフト20の延伸方向に沿って、ツバ部82を貫通して固定孔S4に連通する貫通孔S5が形成されている。締結部材90を貫通孔S5に挿入して中間部材25の雌ねじS3に螺合させることにより、差込金具80がシャフト本体22に固定されている。
【0021】
A-1-2.ヘッド30の構成:
図4は、ヘッド30を分解した状態を示す斜視図である。
図4では、説明の都合上、差込金具80が複数示されている。
図4に示すように、ヘッド30は、全体として、略直方体状のブロック体である。なお、ヘッド30のブロック体のうち、シャフト20の延伸方向に沿った4つの辺は面取りされている。
【0022】
ヘッド30は、蓋ブロック40と、吸着ブロック50と、中間ブロック60と、入力ブロック70とを有している。蓋ブロック40と吸着ブロック50と中間ブロック60とは、特許請求の範囲における収容体の一例を構成し、入力ブロック70は、特許請求の範囲における中間収容体の一例である。
【0023】
入力ブロック70は、ヘッド30における最上段(Z軸正方向側)に位置する。入力ブロック70は、矩形板状(略正方形)のブロックである。入力ブロック70には、中間挿入孔72と中間空間74とが形成されている。
【0024】
具体的には、入力ブロック70は、ストッパ壁71と側壁73とを有している。ストッパ壁71は、上下方向に略垂直な矩形板状であり、入力ブロック70の上面を構成している。側壁73は、ストッパ壁71の周縁部から下方に延びる環状部分であり、入力ブロック70の外周面を構成している。中間挿入孔72は、ストッパ壁71に貫通形成されている。中間挿入孔72は、第2の回転位置(
図4のY軸方向)にある差込金具80を挿入可能であり、第1の回転位置(
図4のX軸方向)にある差込金具80を挿入不能な孔である。第2の回転位置にある差込金具80とは、ツバ部82が第1の方向(
図4のY軸方向)に沿っている差込金具80(
図4の左から1番目および4番目の差込金具80を参照)を意味する。第2の回転位置にある差込金具80とは、ツバ部82が、第2の方向とは異なる第1の方向(
図4のX軸方向)に沿っている差込金具80(
図4の左から2番目および3番目の差込金具80を参照)を意味する。第1の回転位置は、特許請求の範囲における第1の位置の一例であり、第2の回転位置は、特許請求の範囲における第2の位置、第3の位置の一例である。
【0025】
上下方向視で中間挿入孔72の開口形状は、第2の回転位置にある差込金具80(
図4の左から1番目の差込金具80を参照)の外形に対応して形状である。ストッパ壁71における中間挿入孔72の周囲部分は、特許請求の範囲における中間ストッパの一例である。
【0026】
中間空間74は、中間空間74は、ストッパ壁71と側壁73とによって画定されている。中間空間74の上端側は、中間挿入孔72に連通している。中間空間74の下端側は、全体的に下方に開口している。中間空間74は、差込金具80を、中間挿入孔72から挿入された第2の回転位置と、第1の回転位置との間で変位可能なスペースを有している。第1の回転位置は、第2の回転位置にある差込金具80を、シャフト20を中心に回転させた位置である。
【0027】
なお、本実施形態では、入力ブロック70は、中間空間74において、差込金具80を、第2の回転位置から第1の回転方向(
図4において、シャフト20を上から見た方向視で左回転方向)に回転させて第1の回転位置に変位可能である。一方、入力ブロック70の中間空間74には回転ストッパ部75が配置されている。回転ストッパ部75は、差込金具80を、第2の回転位置から、第1の回転方向とは逆の第2の回転方向(
図4において、シャフト20を上から見た方向視で右回転方向)に回転することを禁止する。具体的には、回転ストッパ部75は、第2の回転位置にある差込金具80の突出部83に対して第2の回転方向(右回転方向)で対向するよう配置されている。なお、差込金具80が第2の回転位置から第1の回転位置に変位する過程において、差込金具80に配置されたマグネット86は、入力ブロック70における中間空間74を構成する内壁面に接触しない。しかも、入力ブロック70は、例えばアルミニウムにより形成されている。このため、差込金具80と入力ブロック70とが磁力によって吸着することが抑制され、中間空間74内において差込金具80を円滑に回転させることができる。
【0028】
中間ブロック60は、入力ブロック70の直下に位置する。中間ブロック60も例えばアルミニウムにより形成されている。具体的には、中間ブロック60は、入力ブロック70における中間空間74の開口側に位置する。換言すれば、中間ブロック60とストッパ壁71とは、中間空間74を介して、上下方向に対向している。中間ブロック60には、挿入孔62が貫通形成されている。挿入孔62は、第1の回転位置にある差込金具80(
図4の左から2番目の差込金具80を参照)を挿入可能であり、第2の回転位置にある差込金具80を挿入不能な孔である。上下方向視で挿入孔62の開口形状は、第1の回転位置にある差込金具80の外形に対応して形状である。中間ブロック60における挿入孔62の周囲部分は、特許請求の範囲におけるストッパの一例である。
【0029】
吸着ブロック50は、中間ブロック60の直下に位置する。吸着ブロック50は、例えば鉄により形成されている。吸着ブロック50は、環状部材である。吸着ブロック50の内部空間52は、中間ブロック60の挿入孔62に連通している。内部空間52の下端側は、全体的に下方に開口している。内部空間52は、差込金具80を、挿入孔62から挿入された第1の回転位置と、第2の回転位置との間で変位可能なスペースを有している。
【0030】
なお、本実施形態では、吸着ブロック50は、内部空間52において、差込金具80を、第1の回転位置から第2の回転方向(右回転方向)に回転させて第2の回転位置に変位可能である。一方、吸着ブロック50の内部空間52には回転ストッパ部55が配置されている。回転ストッパ部55は、差込金具80を、第1の回転位置から、第1の回転方向(左回転方向)に回転することを禁止する。具体的には、回転ストッパ部55は、第1の回転位置にある差込金具80に対して第1の回転方向(左回転方向)で対向するよう配置されている。
【0031】
第1の回転位置にある差込金具80(
図4の左から3番目の差込金具80を参照)のうち、回転ストッパ部55に対向する面には、マグネット86は配置されていない。一方、第1の回転位置にある差込金具80(
図4の左から3番目の差込金具80を参照)のうち、回転ストッパ部55に対向しない反対側の面にはマグネット86が配置されている。このため、第1の回転位置にある差込金具80は吸着ブロック50に吸着されない。一方、吸着ブロック50の内部空間52には吸着面54が配置されている。第2の回転位置にある差込金具80のうち、吸着面54に対向する面には、マグネット86が配置されている。このため、第2の回転位置にある差込金具80は吸着ブロック50に吸着される。マグネット86と吸着ブロック50とは、特許請求の範囲におけるマグネット機構の一例である。
【0032】
蓋ブロック40は、吸着ブロック50の下方に配置される。蓋ブロック40は、例えばステンレスにより形成されている。具体的には、蓋ブロック40は、上下方向に略垂直な矩形板状の部材であり、吸着ブロック50の内部空間52の下側開口を塞ぐように配置される。
【0033】
蓋ブロック40と吸着ブロック50と中間ブロック60と入力ブロック70とは締結部材92によって締結され一体化されている。具体的には、各ブロック40,50,60には、複数(例えば4つ)のねじ貫通孔Hが形成されている。締結部材92を、ブロック40,50,60のそれぞれのねじ貫通孔Hに通して、蓋ブロック40に形成された雌ねじ(図示しない)に締結する。これにより、ヘッド30が完成する。なお、本実施形態では、互いに重量が異なる複数種類の蓋ブロック40が用意されており、一の種類の蓋ブロック40から別の種類の蓋ブロック40に交換することにより、ヘッド30の重量を変更することができる。
【0034】
なお、蓋ブロック40と吸着ブロック50とには、周方向において互いに係合する凹凸構造が形成されている。具体的には、入力ブロック70に凹部76が形成されており、中間ブロック60に凸部64が形成されており、凹部76と凸部64とが係合することにより、入力ブロック70と吸着ブロック50とが周方向に相対移動することが抑制されている。同様に、中間ブロック60に凸部66が形成されており、吸着ブロック50に凹部56が形成されており、凸部66と凹部56とが係合することにより、中間ブロック60と吸着ブロック50とが周方向に相対移動することが抑制されている。吸着ブロック50に凸部58が形成されており、蓋ブロック40に凹部42が形成されており、凸部58と凹部42とが係合することにより、吸着ブロック50と蓋ブロック40とが周方向に相対移動することが抑制されている。
【0035】
A-2.ゴルフ器具10の組み付け方法:
以上の構成により、シャフト20の差込金具80のツバ部82を、ヘッド30に対して第2の回転位置にし(
図4の左から1番目の差込金具80を参照)、入力ブロック70の中間挿入孔72を介して中間空間74に挿入する。次に、差込金具80のツバ部82を、中間空間74において第2の回転位置から第1の回転方向(左回転方向)に回転させて第1の回転位置に変位させる(
図4の左から2番目の差込金具80を参照)。これにより、ツバ部82の各突出部83の上面がストッパ壁71に当接するため、ツバ部82が入力ブロック70に対して抜け止めされる。但し、ツバ部82は、中間空間74において、入力ブロック70に吸着されない。
【0036】
次に、差込金具80のツバ部82を、第1の回転位置のままで、中間ブロック60の挿入孔62を介して挿入孔62に挿入する(
図4の左から3番目の差込金具80を参照)。次に、差込金具80のツバ部82を、内部空間52において第1の回転位置から第2の回転方向(右回転方向)に回転させて第2の回転位置に変位させる(
図4の左から4番目の差込金具80を参照)。これにより、ツバ部82の各突出部83の上面が中間ブロック60に当接するため、ツバ部82が中間ブロック60に対して抜け止めされる。しかも、ツバ部82は、内部空間52において、第2の回転位置に位置したとき、吸着ブロック50に吸着する。このため、内部空間52内における突出部83の変位と、シャフト20に対するヘッド30のがたつきが抑制される。要するに、本実施形態によれば、内部空間52における突出部83の変位を可能とするためのクリアランスを確保しつつ、マグネット機構により、そのクリアランスに起因するシャフト20に対するヘッド30のがたつきが抑制される。
【0037】
A-3.本実施形態の効果:
本実施形態のゴルフ器具10では、シャフト20の突出部83を、ヘッド30の挿入孔62に挿入し(
図4の左から3番目の差込金具80を参照)、ヘッド30の内部空間52において第1の位置(X軸方向に沿った位置)から第2の位置(Y軸方向に沿った位置)に変位させる(
図4の左から4番目の差込金具80を参照)。すると、中間ブロック60によってシャフト20の先端部(突出部83)がヘッド30から抜け出ることが抑制される。また、第2の位置にある突出部83はヘッド30に磁力で吸着する。このため、本実施形態によれば、シャフト20の先端部がヘッド30から抜けることを抑制しつつ、シャフト20に対するヘッド30の変位やがたつきを抑制することができる。
【0038】
本実施形態では、第1の回転位置は、第2の回転位置にある差込金具80を、シャフト20を中心に回転させた位置である。このため、本実施形態によれば、挿入方向視でヘッド30に対してシャフト20の位置を変えることなく、シャフト20を中心に回動させることにより、シャフト20に対してヘッド30を固定することができる。
【0039】
本実施形態では、ヘッド30は、更に入力ブロック70を備える(
図1,2,4参照)。このため、本実施形態によれば、2重のロックによりシャフト20の先端部がヘッド30から抜けることを効果的に抑制しつつ、シャフト20に対するヘッド30の変位等を抑制することができる。
【0040】
本実施形態では、内部空間52における突出部83の変位方向と中間空間74における突出部83の変位方向とは互いに異なっている(
図4の白抜き矢印参照)。このように、本実施形態によれば、互いに逆方向に突出部83を変位させることで抜け止め解除される構成であるため、シャフト20の先端部がヘッド30から抜けることを、より効果的に抑制しつつ、シャフト20に対するヘッド30の変位等を抑制することができる。
【0041】
本実施形態によれば、収容体が互いに着脱可能な少なくとも2つの部材(40~60)により構成されているため、収容体を、互いに材質が異なる部材により構成したり、一部材を重量が異なる別の部材に交換したりすることができる。
【0042】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0043】
上記実施形態では、ゴルフ器具として、練習用のゴルフ器具10を例示したが、これに限らず、実践で使用されるゴルフシャフトでもよい。上記実施形態では、棒状体として、ゴルフのシャフト20を例示したが、これに限らず、例えば杖、傘、ほうき、孫の手(などの各種の機能を備えた棒状体でもよい。また、棒状体の横断面形状は、円形に限らず、例えば多角形等でもよい。上記実施形態では、ヘッドの形状として、ブロック状(ヘッド30)を例示したが、これに限らず、例えば球状、円柱状、ゴルフクラブのヘッド(アイアン、ウッド等)の形状でもよい。
【0044】
上記実施形態では、シャフト20(差込金具80)が有する一対の突出部83,83が互いになす角度は、シャフト20を中心に180度であったが、これに限らず、180度未満(例えば60度や90度)でもよい。上記実施形態において、シャフト20(差込金具80)が有する突出部の数は、1でもよいし、3つ以上でもよい。例えばシャフト20(差込金具80)が、互いに90度の角度をなす4つの突出部を有する構成でもよい。また、複数の突出部の少なくとも2つの突出長さは互いに異なってもよい。また、突出部83とシャフト20(シャフト本体22)とが同一材料により一体形成された構成でもよい。
【0045】
上記実施形態では、マグネット機能として、シャフト20の突出部83側にマグネット86が設けられ、吸着ブロック50(ヘッド30)が金属製とされた構成を例示したが、例えば突出部83を金属製とし、吸着ブロック50側にマグネットを設けた構成や、突出部83と吸着ブロック50とに対して互いに逆極性のマグネットを設けた構成でもよい。
【0046】
上記実施形態では、ヘッド30は、4つのブロック40~70が分離可能に組み付けられた構成であったが、これらの4つのブロック40~70のうち、少なくとも2つのブロックが分離不能に一体形成された構成でもよい。上記実施形態において、ヘッド30は、入力ブロック70を備えない構成でもよい。
【0047】
上記実施形態は、中間空間74や内部空間52において、突出部83を、シャフト20の中心軸Lを中心に回転移動可能なスペースであったが、これに限らず、例えば、突出部83を、中心軸Lに垂直な方向にスライド移動可能なスペースでもよい。上記実施形態では、第3の位置として、突出部83が内部空間52内において中間ブロック60にロックされたときの位置(第2の回転位置)と同じであったが、第2の回転位置とは異なる位置でもよい。また、上記実施形態では、内部空間52における突出部83の変位方向(回転方向)と、中間空間74における突出部83の変位方向(回転方向)とは、互いに異なる方向(逆方向)であったが、これに限らず、同じ方向でもよい。
【0048】
上記実施形態では、吸着ブロック50が、中間ブロック60や入力ブロック70よりもマグネットに吸着しやすい材料により形成されているが、これに限られず、形成材料を任意のものに変更可能である。
【符号の説明】
【0049】
10:ゴルフ器具 20:シャフト 22:シャフト本体 24:グリップ 25:中間部材 30:ヘッド 40:蓋ブロック 42,56,76:凹部 50:吸着ブロック 52:内部空間 54:吸着面 55,75:回転ストッパ部 58,64,66:凸部 60:中間ブロック 62:挿入孔 70:入力ブロック 71:ストッパ壁 72:中間挿入孔 73:側壁 74:中間空間 80:差込金具 82:ツバ部 83,83:突出部 84:固定部 86:マグネット 90,92:締結部材 H:ねじ貫通孔 L:中心軸 S1:中空空間 S3:雌ねじ S4:固定孔 S5:貫通孔
【要約】
【課題】棒状体の先端部がヘッドから抜けることを抑制しつつ、棒状体に対するヘッドの変位やがたつきを抑制する。
【解決手段】ゴルフ器具は、棒状体と、棒状体の先端部に着脱可能に取り付けられるヘッドと、を備える。棒状体の先端部には、棒状体の延伸方向に対して略直交する方向に突出する突出部が設けられる。ヘッドは、収容体を有しており、収容体には、棒状体における突出部を、延伸方向に沿って挿入可能な挿入孔と、挿入孔に連通した内部空間であって、突出部を、挿入孔から挿入されたときの第1の位置と、突出部の挿入方向視において第1の位置とは異なる第2の位置との間で変位可能なスペースを有する内部空間と、挿入方向視において、第1の位置にある突出部とは異なる位置にあり、かつ、第2の位置にある突出部の手前に位置するストッパと、が形成され、さらに、第2の位置にある突出部とヘッドとを磁力で吸着するマグネット機構を有する。
【選択図】
図4