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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】鉱石連続供給装置
(51)【国際特許分類】
   F27D 3/18 20060101AFI20230803BHJP
   B65G 65/40 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
F27D3/18
B65G65/40 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019147582
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028552
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】楠瀬 健太
(72)【発明者】
【氏名】木谷 昌和
(72)【発明者】
【氏名】海野 遥祐
(72)【発明者】
【氏名】ダダン スンダナ
(72)【発明者】
【氏名】アハマド ムニブ フィクリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘリ ブディ ヌルウィボウォ
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-272875(JP,A)
【文献】実公昭58-037870(JP,Y2)
【文献】特開昭59-036027(JP,A)
【文献】特開2001-206547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/18
B65G 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体の鉱石を一時的に溜める調圧タンクと、
該調圧タンクから該鉱石を受け入れて製錬炉に排出するリフトタンクを有し、
調圧タンクには圧力制御用の圧縮空気を導入する第一空気路が接続しており、
さらに、該リフトタンクには圧力制御用の圧縮空気と鉱石輸送用の圧縮空気を導入する第二空気路が接続しており、
それらの圧縮空気は上記調圧タンクに設けられた調圧タンク制御手段と上記リフトタンクに設けられたリフトタンク制御手段とによって制御され、
上記調圧タンクの鉱石受入時および上記リフトタンクへの鉱石排出時を通じて上記リフトタンクから製錬炉に鉱石が連続的に供給される圧力制御系が形成されており、
該圧力制御系を備えた複数の鉱石供給機構が該鉱石を搬入するコンベアの上流側から下流側にかけて並列に該コンベアに接続されており、
該鉱石供給機構の鉱石受入が上流側から下流側に順に行われると共に、下流端の上記鉱石供給機構の鉱石受入の終了前に、上流端の上記鉱石供給機構の鉱石受入れが開始されるように制御する供給制御手段が設けられていることを特徴とする鉱石連続供給装置。
【請求項2】
上記供給制御手段において、下流端の上記鉱石供給機構の鉱石受入の終了前に、上流端の上記鉱石供給機構の鉱石受入れが開始される時間は、上流端と下流端の上記鉱石供給機構の間のコンベア搬送中の鉱石全量が下流端の上記鉱石供給機構に受け入れ終了するまでの時間に先立つ時間である請求項1に記載する鉱石連続供給装置。
【請求項3】
上記調圧タンクと上記コンベアの間にサービスタンクが設けられている請求項1または請求項2に記載する鉱石連続供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄製錬などにおいて、粉粒体の鉱石を、該鉱石の受入れ時にも断続せずに連続して製錬炉に供給することができる鉱石連続供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄製錬などにおいて、粉粒体の鉱石を製錬炉に供給する装置として、特開平5-272875号に記載されている鉱石供給装置が知られている。この装置は、フローコンベア等によって搬入された粉体状の鉱石を一時的に溜めるサービスタンクと、該サービスタンクの下方に位置するリフトタンクを備えており、サービスタンクに溜めた鉱石をリフトタンクに送り込み、リフトタンクに一定量の鉱石が溜まったら、該リフトタンクに圧縮空気を導入してタンク内の鉱石を圧縮空気と共に製錬炉に送り、炉内のランスを通じて浴中に吹き込む構造を有している。
【0003】
このような装置では、サービスタンクから鉱石をリフトタンクに送り込む際に、鉱石がリフトタンクに受け入れられるように、リフトタンクの内圧を大気圧に開放する必要があり、このためリフトタンクに導入している鉱石搬送用の圧縮空気を一時的に止めなければならず、製錬炉に送る鉱石の搬送が中断されるため連続的な供給ができず、鉱石はバッチで炉内に搬送されている。
【0004】
このようにリフトタンクへの鉱石供給とリフトタンクから製錬炉への鉱石搬送を一バッチごとに繰り返すので、一バッチの時間のうち鉱石が輸送される時間の割合(以下、給鉱率)は約40%~70%に留まり、効率が悪い。リフトタンクは、その瞬間搬送能力の上限量で鉱石の搬送を行っており、バッチでの運転では搬送を停止する時間を完全に無くすことができず、これ以上の製錬炉への鉱石搬送量の増加が困難である。また、短期的には炉内に輸送される鉱石量と炉内に吹き混む酸素量のバランスが取れ難く、製錬炉内の浴温およびドラフトが変動する要因になっている。
【0005】
また、鉱石供給路の先端に設けられているランスの先端は製錬炉内の溶融浴上に位置しているので、ランスにとって冷材の作用を果たす鉱石が輸送されていない時にランスの加熱が進み、ランスの先端部が熔損する原因になり、定期的に所定長さのランスの継ぎ足しを行う必要が生じる。また、製錬炉を構成する耐火物の溶湯浴による浸食は、炉体の寿命を決定する重要な因子であり、浴温が高温になる程炉体の寿命は短くなる。とりわけランス直下の炉床耐火物や溶湯浴界面近傍の側壁耐火物の浸食は製錬炉の炉修周期を決定する大きな要因になる。一方、製錬炉から発生する排ガスは後段の排ガス処理設備で炉内のドラフトを常時負圧に保つ様に吸引する必要がある。このため、ドラフトの変動分だけ排ガスを過剰に吸引する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-272875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、従来の給鉱装置は、製錬炉への鉱石の供給が断続的であるために、製錬炉へ供給する鉱石量の増加が難しいだけでなく、後段の排ガス処理設備で製錬炉から発生する排ガスを過剰に吸引する必要があり、またランス先端部の溶損や炉内の溶湯浴界面付近の耐火物の浸食が進む問題があった。
本発明の装置は、従来の給鉱装置における上記問題を解決したものであり、鉱石の受入時にも、鉱石の供給が中断せずに連続的に鉱石を製錬炉に供給できる装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の構成からなる鉱石連続供給装置に関する。
〔1〕粉粒体の鉱石を一時的に溜める調圧タンクと、
該調圧タンクから該鉱石を受け入れて製錬炉に排出するリフトタンクを有し、
調圧タンクには圧力制御用の圧縮空気を導入する第一空気路が接続しており、
さらに、該リフトタンクには圧力制御用の圧縮空気と鉱石輸送用の圧縮空気を導入する第二空気路が接続しており、
それらの圧縮空気は上記調圧タンクに設けられた調圧タンク制御手段と上記リフトタンクに設けられたリフトタンク制御手段とによって制御され、
上記調圧タンクの鉱石受入時および上記リフトタンクへの鉱石排出時を通じて上記リフトタンクから製錬炉に鉱石が連続的に供給される圧力制御系が形成されており、
該圧力制御系を備えた複数の鉱石供給機構が該鉱石を搬入するコンベアの上流側から下流側にかけて並列に該コンベアに接続されており、
該鉱石供給機構の鉱石受入が上流側から下流側に順に行われると共に、下流端の上記鉱石供給機構の鉱石受入の終了前に、上流端の上記鉱石供給機構の鉱石受入れが開始されるように制御する供給制御手段が設けられていることを特徴とする鉱石連続供給装置。
〔2〕上記供給制御手段において、下流端の上記鉱石供給機構の鉱石受入の終了前に、上流端の上記鉱石供給機構の鉱石受入れが開始される時間は、上流端と下流端の上記鉱石供給機構の間のコンベア搬送中の鉱石全量が下流端の上記鉱石供給機構に受け入れ終了するまでの時間に先立つ時間である上記[1]に記載する鉱石連続供給装置。
〔3〕上記調圧タンクと上記コンベアの間にサービスタンクが設けられている上記[1]または上記[2]に記載する鉱石連続供給装置。
【0009】
〔具体的な説明〕
本発明の鉱石連続供給装置を以下に具体的に説明する。
本発明の鉱石連続供給装置は、粉粒体の鉱石を一時的に溜める調圧タンクと、該調圧タンクから該鉱石を受け入れて製錬炉に排出するリフトタンクを有し、さらに該調圧タンクの鉱石受入時およびリフトタンクへの鉱石排出時を通じてリフトタンクから製錬炉に鉱石が連続的に供給される圧力制御系を備えた鉱石供給機構を有し、上記鉱石を搬入するコンベアの上流側から下流側にかけて複数の上記鉱石供給機構が並列に該コンベアに接続されており、該コンベアの上流側から下流側にかけて上記鉱石供給機構の鉱石受入が順に行われると共に、下流端の上記鉱石供給機構の鉱石受入の終了前に、上流端の上記鉱石供給機構の鉱石受入れが開始されるように制御する供給制御手段が設けられていることを特徴とする鉱石連続供給装置である。
【0010】
本発明の鉱石連続供給装置に設けられている鉱石供給機構の基本的な装置構成を図1に示す。図1に示す鉱石供給機構100は、粉粒体の鉱石を一時的に溜める調圧タンク50と、該調圧タンク50から該鉱石を受け入れて製錬炉52に排出するリフトタンク51が設けられている。該調圧タンク50には、内部の圧力を測る圧力計Aと鉱石量を測る検量計Bが設けられており、さらに内部の圧力を開放する排気ラインが接続しており、該排気ラインに排気弁53が設けられている。また、該調圧タンク50の上部には粉粒体状の鉱石を受け入れるための開閉弁Fが設けられている。
【0011】
該調圧タンク50には圧力制御用の圧縮空気を導入する第一空気路が接続している。該第一空気路の該調圧タンク50に至る経路には調圧弁Cが設けられている。
【0012】
さらに、リフトタンク51には圧力制御用の圧縮空気と、鉱石輸送用の圧縮空気を導入する第二空気路が接続しており、該第二空気路のリフトタンク51に至る経路には調圧弁Jが設けられており、該リフトタンク51から製錬炉52に至る鉱石供給路には供給弁Kが設けられている。また、該リフトタンク51には、内部の圧力を測る圧力計Hと鉱石量を測る検量計Iが設けられている。さらに上記調圧タンク50から上記リフトタンク51に至る鉱石排出路には開閉弁Gが設けられている。
【0013】
さらに、リフトタンク51の内部空気を調圧タンク50に逃がすことができるように、調圧タンク50とリフトタンク51は空気が流れる調圧通気路によって接続されており、該調圧通気路には調圧弁Dと調圧弁Eが設けられている。
【0014】
調圧タンク50には調圧タンク制御手段60が設けられており、該調圧タンク制御手段60は、調圧タンク50の圧力計A、検量計B、排気弁53、開閉弁F、第一空気路の調圧弁C、鉱石排出路の開閉弁G、通気路の調圧弁Dと調圧弁Eによって形成されている。圧力計Aおよび検量計Bの検出信号は調圧タンク制御手段60に送られ、排気弁53、調圧弁C、調圧弁D、調圧弁E、開閉弁F、開閉弁Gは調圧タンク制御手段60からの信号を受けて開閉される。
【0015】
リフトタンク51にはリフトタンク制御手段70が設けられており、該リフトタンク制御手段70は、第二空気路の調圧弁J、鉱石供給路の供給弁K、該リフトタンク51の圧力計H、検量計Iによって形成されている。圧力計Hおよび検量計Iの検出信号はリフトタンク制御手段70に送られ、調圧弁J、調圧弁Kはリフトタンク制御手段70からの信号を受けて開閉される。
【0016】
上記調圧タンク制御手段60と上記リフトタンク制御手段70によって、該調圧タンク50の鉱石受入時およびリフトタンク51への鉱石排出時を通じてリフトタンク51から製錬炉52に鉱石が連続的に供給される圧力制御系が形成されている。
【0017】
上記鉱石供給機構100は、粉粒体の鉱石を該装置に搬入するフローコンベア80に接続されており、該フローコンベア80と上記調圧タンク50との間の鉱石受入路に上記開閉弁Fが設けられている。
【0018】
鉱石の受入時に、排気弁53が開放されて調圧タンク50の内部は大気圧になり、フローコンベア80によって搬送されてきた鉱石は開閉弁Fを通じて調圧タンク50に供給される。下側の開閉弁Gは閉じられている。一定量の鉱石が溜まると検量計Bによって検出され、調圧タンク制御手段60によって排気弁53が閉じられ、一方、調圧弁Cが開いて第一空気路を通じて圧縮空気が調圧タンク50に導入され、該調圧タンク50の内圧がリフトタンク51の内圧よりやや高く設定される。その後、開閉弁Gが開き、鉱石排出路を通じて鉱石がリフトタンク51に供給される。
【0019】
リフトタンク51が調圧タンク50から鉱石を受け入れるときは、鉱石受け入れ量と同等容量の空気をタンク内から排出する必要がある。調圧タンク50からリフトタンク51に鉱石を排出する時に、通気路の調圧弁D、Eを開弁しリフトタンク50の内部空気を調圧タンク50に逃がすことによって、調圧タンク50の鉱石がリフトタンク51に排出されやすくなる。また、鉱石の供給を停止するときは、排気弁53が開いた状態で、通気路の調圧弁D,Eが開いてリフトタンク51の内圧を開放し、調圧タンク50およびリフトタンク51の内圧を大気圧に下げて鉱石供給のシーケンスが停止する。
【0020】
一方、リフトタンク51には第二空気路の調圧弁Jが開いて圧縮空気が導入され、リフトタンク51の内圧が圧力計Hによって一定圧に保たれている。この状態で鉱石供給路の供給弁Kが開かれ、この圧縮空気によって鉱石がリフトタンク51から排出されて鉱石供給路を通じて製錬炉52に送り込まれる。このように、調圧タンク50からリフトタンク51に鉱石が送り込まれている間にも、リフトタンク51から製錬炉52に鉱石が送り込まれる。なお、リフトタンク制御手段70を通じて調圧弁Jの開閉を調整して鉱石の流量を制御することができる。
【0021】
リフトタンク51の鉱石量は検量計Iによって検知されており、鉱石量が基準以下に減少すると、調圧タンク制御手段60を通じて開閉弁Gが開き、調圧タンク50から鉱石が排出路を通じてリフトタンク51に供給され、鉱石が製錬炉52に搬送される間中、リフトタンク51の鉱石量は一定量以上に保たれる。
【0022】
このように、リフトタンク51の鉱石量は一定量以上に保たれ、リフトタンク51には鉱石受入時および鉱石排出時を通じて連続して圧縮空気がリフトタンク51に導入されるので、リフトタンク51は鉱石を受入れながら連続して製錬炉52に鉱石を供給することができる。
【0023】
本発明の鉱石連続供給装置は、図2に示すように、上記鉱石供給機構100と同様の構造を有する複数の鉱石供給機構101~103が、コンベア80の上流側から下流側にかけて並列に該コンベア80に接続されている。図2には4個の鉱石供給機構100~103が示されているが、該鉱石供給機構の個数は制限されない。
【0024】
さらに、上記鉱石連続供給装置には、コンベア80の上流側から下流側にかけて上記鉱石供給機構100~103の順に鉱石受入が行われると共に、下流端の上記鉱石供給機構103の鉱石受入の終了前に、上流端の上記鉱石供給機構100の鉱石受入れが開始されるように制御する供給制御系90が設けられている。該供給制御系90は、例えば、上記調圧タンク制御手段60および上記リフトタンク制御手段70を上記のように鉱石が供給されるように制御する。
【0025】
下流端の鉱石供給機構103の鉱石受入の終了前に、上流端の鉱石供給機構100の鉱石受入れが開始される時間は、上流端と下流端の鉱石供給機構100~103の間のコンベア搬送中の鉱石全量が下流端の鉱石供給機構103に受け入れ終了するまでの時間が得られる時間であり、例えば、上記鉱石全量が鉱石供給機構103に受け入れ終了するまでにX時間かかるとき、このX時間分だけ先立つ時間である。例えば、コンベア80からの鉱石搬送量を200t/hr、調圧タンクの鉱石受入れ量を6tとした場合、調圧タンクの鉱石受入れ時間は108sec.になる。一方上流端の鉱石供給機構100から下流端の鉱石供給機構103までのコンベアの搬送時間を60sec.とした場合、鉱石供給機構103が鉱石を受入れ開始してから108秒から60秒先立つ48秒後に、鉱石供給機構100の鉱石受入れが開始されることになる。
【0026】
鉱石供給機構100~103の調圧タンク50に、上流側から順に鉱石が供給されて、各々の調圧タンク50に一定量の鉱石が溜まった後に各々のリフトタンク51に鉱石が供給され、各リフトタンク51が鉱石を受入れながら連続して鉱石供給路54を通じて製錬炉に鉱石が供給される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の鉱石連続供給装置に設けられている鉱石供給機構は、従来のサービスタンク
に代えて、タンク内圧を調整できる調圧タンクがリフトタンクの上流に設けられており、鉱石の受入れ時には該調圧タンクの内圧を一時的に開放して鉱石を受け入れ、受入後に該タンク内圧をリフトタンク内圧よりやや高くしてリフトタンクに鉱石を送り込むので、リフトタンクが鉱石を受け入れるときにリフトタンクの内圧を大気圧に開放する必要がなく、リフトタンクは鉱石を受入れながら連続して製錬炉に鉱石を供給することができる。このため、給鉱率を従来の40%~70%から100%に増加させることができる。
【0028】
本発明の鉱石連続供給装置に設けられている鉱石供給機構は、リフトタンクが鉱石を受入れながら連続して製錬炉に鉱石が供給されるので、常時、製錬炉内に吹き込む鉱石量と酸素量のバランスが保たれ、熔湯浴中の温度変動と製錬炉内のドラフトの変動を少なくすることができる。従って、排ガスの過剰な吸引量を削減するとともに製錬炉への鉱石搬送量を増加することができ、また、ランスの熔損や炉床および炉側壁等の耐火物の浸食を抑制することができる。
【0029】
また、本発明の鉱石連続供給装置は、上記鉱石を搬入するコンベアの上流側から下流側にかけて複数の上記鉱石供給機構が並列に該コンベアに接続されており、該コンベアの上流側から下流側にかけて上記鉱石供給機構の鉱石受入れと排出が順に行われるので、複数の鉱石供給機構から断続することなく安定に連続して鉱石が製錬炉に供給される。
【0030】
さらに、本発明の鉱石連続供給装置は、下流端の上記鉱石供給機構の鉱石受入の終了前に、上流端の上記鉱石供給機構の鉱石受入れが開始されるように制御する供給制御手段が設けられているので、コンベアの下流側に鉱石が滞留せず、安定して連続的に鉱石を製錬炉に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の鉱石連続供給装置に設けられている鉱石供給機構の説明図。
図2】本発明の鉱石連続供給装置の概略図。
図3】本発明の鉱石連続供給装置の実施態様図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の鉱石連続供給装置について、実施態様の装置構成を図3に示す。なお、図3の図中、上流側から2番目以降の鉱石供給機構は、上流側から1番目以降の鉱石供給機構と構成が同一なので一部が省略されている。
〔装置構成〕
図3に示すように、フローコンベア1の下方に調圧タンク2が設けられており、フローコンベア1と調圧タンク2を接続する鉱石受入路にはダンパー3、投入元弁4、投入弁5が設けられている。これらのダンパー3、投入元弁4、投入弁5は図1の装置の開閉弁Fに相当する。また、調圧タンク2には、鉱石量を検知するリミットスイッチ12、32とロードセル13が設けられている。これらのリミットスイッチ12、32とロードセル13は図1の装置の検量計Bに相当する。さらに、調圧タンク2には大排気弁29、小排気弁31が設けられている。これらの大排気弁29、小排気弁31は図1の装置の開放弁53に相当する。
【0033】
調圧タンク2には圧縮空気の供給路14が設けられており、この供給路14は図示しないコンプレッサに接続されており、さらに、圧縮空気供給路14の調圧タンク2に至る管路に加圧弁33が設けられている。供給路14の調圧タンク2に至る管路は図1の装置の第一空気路に相当し、加圧弁33は弁手段Cに相当する。調圧タンク2の下方にはリフトタンク6が設けられており、調圧タンク2とリフトタンク6を接続する鉱石排出路には投入元弁7と投入弁8が設けられている。投入元弁7と投入弁8は図1の装置の弁手段Gに相当する。圧縮空気の供給路14は分岐してリフトタンク6に接続している。リフトタンク6に接続する供給路14は図1の装置の第二空気路に相当する。
【0034】
また、調圧タンク2とリフトタンク6には均圧弁15、16を備えた均圧配管17が接続されており、さらに各タンク2、6には圧力測定器19、20と圧力設定器21、22が設けられている。均圧弁15、16はおのおの図1の装置の弁手段D,Eに相当し、均圧配管17は第三空気路に相当する。また、圧力測定器19、20は各々図1の装置の圧力計A、Hに相当する。
【0035】
リフトタンク6の下部には鉱石輸送用のエア供給配管9と鉱石供給路11が接続しており、エア供給配管9は上記圧縮空気供給路14と一体になって図示しないコンプレッサに接続されており、鉱石供給路11の先端はランス10に連結されている。リフトタンク6の鉱石はエア供給配管9を通じて導入される圧縮空気によって、リフトタンク6から鉱石供給路11とランス10を通じて製錬炉に送られる。
【0036】
リフトタンク6には、投入された鉱石量を検知するロードセル23が設けられている。ロードセル23は図1の装置の検量計Iに相当する。また、鉱石供給路11には供給弁24が設けられており、この鉱石供給路11は供給弁24を介してリフトタンク6に連通している。また鉱石供給路11には分岐路25が設けられており、この分岐路25にはブースター弁26と流量設定器27とが直列に接続されている。さらに、圧縮空気供給路14のリフトタンク6に至る管路に加圧弁30が設けられている。これらのエア供給配管9と鉱石供給路11、圧縮空気供給路14は図1の装置の第二空気路に相当する。ブースター弁26、加圧弁30は図1の装置の弁手段Jに相当する。供給弁24は弁手段Kに相当する。
【0037】
圧力設定器21、22と流量設定器27とは制御装置28に接続されている。この制御装置28には、調圧タンク2とリフトタンク6の鉱石量とタンク圧を示す電気信号が各々入力されるようになっており、図1に示す圧力計A、検量計B、弁手段C、D、E、F、Gに相当する上記各機器によって、調圧タンク2について図1に示す調圧タンク制御手段と同様の制御系が形成されている。また、図1に示す圧力計H、検量計I、弁手段J,Kに相当する上記各機器によって、リフトタンク6について図1に示すリフトタンク制御手段と同様の制御系が形成されている。これらの電気信号に基づいて、次回のリフトタンク6の鉱石受入れまでに、リフトタンク6の鉱石量が設定量になるように、リフトタンク6の圧力設定値と流量設定値が変更される。
【0038】
〔装置の作動状態〕
図3に示す上記装置において、均圧弁15、16、大排気弁29を開弁(排気工程)した後に、投入弁8、投入元弁7が開弁することにより、調圧タンク2から鉱石がリフトタンク6に排出される。リフトタンク6のロードセル13が定量を計測するか、またはタイマがカウントアップされたときに、均圧弁15、16、投入弁8、投入元弁7、大排気弁29が閉弁して、鉱石の排出が停止する。
【0039】
次に、加圧弁30が開弁してリフトタンク6の内力を上昇させる。その後、リフトタンク6の内圧が圧力設定器22で設定した圧力に達した後に、加圧弁30が閉弁して加圧を停止する。その後、ブースター弁26および供給弁24が開弁し、リフトタンク6の鉱石が鉱石鉱供給路11を通じて圧縮空気によってランス10に向かって輸送される(輸送工程)。
【0040】
リフトタンク6の鉱石量が減少し、調圧タンク2とリフトタンク6に設けたロードセル13、23により計量される残存する鉱石の合計重量が設定重量より低下すると、調圧タンク2からリフトタンク6へ鉱石の排出が準備される。先ず加圧弁33が開弁して、圧力測定器20によって測定されたリフトタンク6の圧力と制御装置28により予め設定された圧力差、例えば、調圧タンク2の圧力がリフトタンク6の圧力よりやや高くなるまで調圧タンク2を加圧する(加圧工程)。
【0041】
次に、投入弁8、投入元弁7、均圧弁15、16が開弁して、調圧タンク2から鉱石がリフトタンク6に投入される(投入工程)。従って、従来装置のようなリフトタンクの排気工程を必要とせず、リフトタンク6は鉱石の受入れを行いながら鉱石を輸送することができる。調圧タンク2のレベル計12によって鉱石量が検知され、またはタイマがカウントアップされ、あるいは調圧タンク2のロードセル13が鉱石の減少量を検知したときに、均圧弁15、16、投入弁8、投入元弁7が閉弁して鉱石の投入が停止される(投入停止工程)。次いで、小排気弁31、大排気弁29が開弁して、調圧タンク2内圧が大気圧まで開放され(排気工程)、ダンパー3のサイクルタイムに応じ、ダンパー3と投入弁5、投入元弁4が開弁して、フローコンベア1から搬送される鉱石が調圧タンク2に供給される(供給工程)。
【0042】
通常、フローコンベア1の上流側の調圧タンク2から順に、ダンパー3、投入弁5、投入元弁4が1系統ずつ開閉して鉱石を受け入れる。ダンパー3、投入弁5、投入元弁4は、受入開始後にタイマがカウントアップされるか、または調圧タンク2に設けたロードセル13が定量を計測したときに閉まる。その後、下流側に位置する直近の待機工程中の調圧タンク34のダンパー35、投入弁36、投入元弁37が開き、鉱石の受入を開始する。
【0043】
フローコンベア1の最も下流に位置する調圧タンク38が鉱石を受け入れる時に限り、待機工程中の最も上流に位置する調圧タンク2のダンパー3、投入弁5、投入元弁4が開き、受入を開始する。その際、調圧タンク2と調圧タンク38の間に位置するフローコンベア内の鉱石全量を調圧タンク38で受け入れるため、調圧タンク2の受入は、調圧タンク2と調圧タンク38の間の距離とフローコンベア輸送速度に基づいて、調圧タンク38の鉱石受入が終了する前に(タイマがカウントアップされるよりも前に)、一定時間先立って開始するように制御される。これによって、フローコンベア内の鉱石が調圧タンク38よりも下流に流れることが防止される。
【0044】
調圧タンクおよびリフトタンクの個数は制限されない。調圧タンクおよびリフトタンクの設置個数が少ない場合、あるいは、これらの個数が多い場合においても、コンベア下流の調圧タンクについては、フローコンベア等と該調圧タンクの間の連結路に、サービスタンク38を設けることによって、コンベア内に鉱石が滞留するリスクを低減することができる。
【0045】
また、フローコンベアと最も下流側のサービスタンク39あるいは調圧タンク38の連結路には、ダンパーの故障リスクを低減する観点からダンパーを設けないほうが好ましい。
【符号の説明】
【0046】
1-フローコンベア、2-調圧タンク、3-ダンパー、4-投入元弁、5-投入弁、6-リフトタンク、7-投入元弁、8-投入弁、9-エア供給配管、10-ランス、11-鉱石供給路、12と32-リミットスイッチ、13-ロードセル、14-圧縮空気の供給路、15と16-均圧弁、17-均圧配管、19と20-圧力測定器、21と22-圧力設定器、23-ロードセル、24-供給弁、25-分岐路、26-ブースター弁、27-流量設定器、28-制御装置、29-大排気弁、30と33-加圧弁、31-小排気弁、33-加圧弁、34-調圧タンク、35-ダンパー、36-投入弁、37-投入元弁、38-調圧タンク、39-サービスタンク、50-調圧タンク、51-リフトタンク、52-製錬炉、53-排気弁、60-調圧タンク制御手段、70-リフトタンク制御手段、80-コンベア。

図1
図2
図3