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特許7324424ガラスロール、ガラスロールの製造方法および品質評価方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】ガラスロール、ガラスロールの製造方法および品質評価方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 35/00 20060101AFI20230803BHJP
   C03B 33/02 20060101ALI20230803BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20230803BHJP
   B65H 26/02 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C03B35/00
C03B33/02
C03B17/06
B65H26/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019569131
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2019002961
(87)【国際公開番号】W WO2019151246
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018015106
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】森 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】森 浩一
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/157639(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/070442(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 35/00
C03B 33/02
C03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皺の形成された帯状ガラスフィルムがロール状に巻かれてなるガラスロールであって、
前記帯状ガラスフィルムが、幅方向の一方側端縁と他方側端縁とが平行に延びた区間であり、且つ、その先頭部および最後部の各々が該帯状ガラスフィルムの幅方向と平行に延びた有効区間を備え、
前記有効区間の表面に沿った前記先頭部から前記最後部までの長さを、前記帯状ガラスフィルムの前記一方側端縁に沿う第一位置および前記他方側端縁に沿う第二位置の各々に沿って測定した場合に、前記第一位置および前記第二位置に沿ってそれぞれ測定された第一測定長さおよび第二測定長さの両測定長さの差が、該両測定長さのうちの長い方の測定長さの210ppm以下であることを特徴とするガラスロール。
【請求項2】
前記両測定長さの差が、該両測定長さのうちの長い方の測定長さの200ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のガラスロール。
【請求項3】
前記両測定長さの差が、該両測定長さのうちの長い方の測定長さの100ppm以下であることを特徴とする請求項2に記載のガラスロール。
【請求項4】
前記第一測定長さおよび前記第二測定長さに加え、第三測定長さとして、前記有効区間の表面に沿った前記先頭部から前記最後部までの長さを、前記帯状ガラスフィルムにおける前記皺のない幅方向中心線上に沿って測定した場合に、前記第一測定長さと前記第三測定長さとの差と、前記第二測定長さと前記第三測定長さとの差とのうち、大きい方の差が、前記第一測定長さ~前記第三測定長さのうちの最長の測定長さの500ppm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のガラスロール。
【請求項5】
前記大きい方の差が、前記第一測定長さ~前記第三測定長さのうちの最長の測定長さの300ppm以下であることを特徴とする請求項4に記載のガラスロール。
【請求項6】
前記大きい方の差が、前記第一測定長さ~前記第三測定長さのうちの最長の測定長さの200ppm以下であることを特徴とする請求項5に記載のガラスロール。
【請求項7】
成形体により溶融ガラスを帯状に成形してなるガラスリボンを長手方向に引っ張りながら冷え固まらせることで、皺の形成された帯状ガラスフィルムを得る成形工程と、前記帯状ガラスフィルムの幅方向両端にそれぞれ存する両不要部を、両不要部の相互間に位置する有効部から分断する分断工程と、前記有効部でなる分断後帯状ガラスフィルムをロール状に巻き取ってガラスロールとする巻取工程とを備えたガラスロールの製造方法であって、
更に、前記巻取工程前の時点にある前記有効部の長手方向に沿った区間であり、且つ、その先頭部および最後部の各々が前記帯状ガラスフィルムの幅方向と平行に延びた被計測区間について、該被計測区間の表面に沿った前記先頭部から前記最後部までの長さを、前記有効部の幅方向の一方側端部および他方側端部の各々に沿って計測する計測工程と、
前記計測工程にて前記一方側端部および前記他方側端部に沿ってそれぞれ計測された第一計測長さおよび第二計測長さの両計測長さの差が、該両計測長さのうちの長い方の計測長さの210ppmを超える場合に実行する第一調節工程とを備え、
前記第一調節工程では、前記有効部の前記一方側端部および前記他方側端部とそれぞれ連なった前記ガラスリボンの幅方向の一方側端部および他方側端部の両者が冷え固まる速度の差が狭まるように調節し、
前記計測工程にて前記両計測長さの差が前記長い方の計測長さの210ppmを超える場合に、前記計測工程と前記第一調節工程との両工程を、前記計測工程を実行する度に前記被計測区間を新たな区間に変更しつつ前記両計測長さの差が前記長い方の計測長さの210ppm以下になるまで、交互に実行する共に、交互に実行した後の前記成形工程で得た前記帯状ガラスフィルムの前記有効部でなる分断後帯状ガラスフィルムを、前記巻取工程でロール状に巻き取ることを特徴とするガラスロールの製造方法。
【請求項8】
前記計測工程において、前記第一計測長さおよび前記第二計測長さに加え、第三計測長さとして、前記被計測区間の表面に沿った前記先頭部から前記最後部までの長さを、前記有効部の前記一方側端部と前記他方側端部との相互間に位置する前記皺のない中央部に沿って計測し、
前記計測工程にて、前記第一計測長さと前記第三計測長さとの差と、前記第二計測長さと前記第三計測長さとの差との二つの差の少なくとも一方が、前記第一計測長さ~前記第三計測長さのうちの最長の計測長さの500ppmを超える場合に実行する第二調節工程を備え、
前記第二調節工程では、前記ガラスリボンの前記一方側端部および前記他方側端部と、該両端部の相互間に位置する中央部とが、冷え固まる速度の差が狭まるように調節することを特徴とする請求項7に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項9】
前記二つの差の少なくとも一方が前記最長の計測長さの500ppmを超える場合に、前記計測工程と前記第二調節工程との両工程を、前記計測工程を実行する度に前記被計測区間を新たな区間に変更しつつ前記二つの差の双方が前記最長の計測長さの500ppm以下になるまで、交互に実行することを特徴とする請求項8に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項10】
各計測長さの計測に計測手段を用い、
前記計測手段が、前記被計測区間の表面に当接した状態で該表面との摩擦により回転しつつ、前記皺による前記被計測区間の表面の凹凸に倣って該被計測区間の厚み方向に移動可能な回転体を備え、該回転体が前記被計測区間の表面上を転動した距離に基づいて各計測長さを計測するように構成されていることを特徴とする請求項7~9のいずれかに記載のガラスロールの製造方法。
【請求項11】
前記被計測区間を前記有効部から分断して廃棄することを特徴とする請求項10に記載のガラスロールの製造方法。
【請求項12】
前記ガラスリボンの前記一方側端部、前記他方側端部、及び、両端部の相互間に位置する中央部をそれぞれ加熱可能な三基の加熱手段を用いて、各部位が冷え固まる速度を調節することを特徴とする請求項7~11のいずれかに記載のガラスロールの製造方法。
【請求項13】
ガラスロールの品質評価方法であって、
同一条件の下で作製された複数のガラスロールからサンプルガラスロールを抜き取る抜取工程と、
前記サンプルガラスロールを構成する皺の形成された帯状ガラスフィルムに備わった幅方向の一方側端縁と他方側端縁とが平行に延びた区間であり、且つ、その先頭部および最後部の各々が該帯状ガラスフィルムの幅方向と平行に延びた有効区間について、該有効区間の表面に沿った前記先頭部から前記最後部までの長さを、ロール・トゥ・ロールの形態を利用しながら前記帯状ガラスフィルムの幅方向の一方側端部および他方側端部の各々に沿って測定する測定工程と、
前記サンプルガラスロールを除く前記複数のガラスロールの品質の良否を判定する判定工程とを含み、
前記判定工程では、前記測定工程にて前記一方側端部および前記他方側端部に沿ってそれぞれ測定された一方側測定長さおよび他方側測定長さの両測定長さの差が、該両測定長さのうちの長い方の測定長さの210ppm以下である場合に、前記サンプルガラスロールを除く前記複数のガラスロールの品質を合格と判定することを特徴とするガラスロールの品質評価方法。
【請求項14】
前記測定工程において、前記一方側測定長さおよび前記他方側測定長さに加え、中央測定長さとして、前記有効区間の表面に沿った前記先頭部から前記最後部までの長さを、ロール・トゥ・ロールの形態を利用しながら前記帯状ガラスフィルムの前記一方側端部と前記他方側端部との相互間に位置する前記皺のない中央部に沿って測定し、
前記判定工程において、前記両測定長さの差が、該両測定長さのうちの長い方の測定長さの210ppm以下であり、且つ、前記一方側測定長さと前記中央測定長さとの差と、前記他方側測定長さと前記中央測定長さとの差とのうち、大きい方の差が、前記一方側測定長さ、前記他方側測定長さ、及び、前記中央測定長さのうちの最長の測定長さの500ppm以下である場合に、前記サンプルガラスロールを除く前記複数のガラスロールの品質を優良合格と判定することを特徴とする請求項13に記載のガラスロールの品質評価方法。
【請求項15】
各測定長さの測定に測定手段を用い、
前記測定手段が、前記有効区間の表面に当接した状態で該表面との摩擦により回転しつつ、前記皺による前記有効区間の表面の凹凸に倣って該有効区間の厚み方向に移動可能な回転体を備え、該回転体が前記有効区間の表面上を転動した距離に基づいて各測定長さを測定するように構成されていることを特徴とする請求項13又は14に記載のガラスロールの品質評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスロール、ガラスロールの製造方法および品質評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、近年急速に普及しているスマートフォンやタブレット型PC等のモバイル機器は、軽量であることが要求されるため、当該機器に採用されるガラス基板においては、薄板化が推進されているのが現状である。この結果として、ガラス基板をフィルム状にまで薄板化(例えば、厚みが300μm以下)したガラスフィルムが開発、製造されるに至っている。
【0003】
ガラスフィルムは、その厚みが極めて薄いことから、人手により容易に湾曲させることができる程度の可撓性を有している。これにより、例えば、オーバーフローダウンドロー法により連続的に成形した帯状ガラスフィルムを巻芯の周りにロール状に巻き取ってガラスロールを作製できる。また、このガラスロールについて、ロール・トゥ・ロールの形態を利用して、帯状ガラスフィルムに各種の処理(例えば、不要部の分断等)を施すことも可能である(特許文献1を参照)。
【0004】
なお、ロール・トゥ・ロールの形態とは、ガラスロールとして第一巻芯の周りに巻き取られた帯状ガラスフィルムを第一巻芯から巻き外して搬送しつつ処理を施した後、処理後の帯状ガラスフィルムを第一巻芯とは異なる第二巻芯の周りに巻き取って再びガラスロールとする形態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-077995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のロール・トゥ・ロールの形態を利用する場合には、下記のような解決すべき問題があった。
【0007】
すなわち、ロール・トゥ・ロールの形態を利用するにあたっては、図10aに示すように、帯状ガラスフィルム100を牽引して第二巻芯(図示省略)に誘導するための帯状のリーダー200をテープ300により帯状ガラスフィルム100と連結することがある。このようにした場合、帯状ガラスフィルム100に対する処理を適切に実行するためには、先行するリーダー200が通過した通過ラインを後続の帯状ガラスフィルム100がずれなく通過することが理想である。しかしながら、図10bに示すように、帯状ガラスフィルム100の不当な斜行(同図にて白抜き矢印で示す)に起因して、当該帯状ガラスフィルム100の通過ラインが幅方向にずれて、リーダー200の通過ライン(同図にて二点鎖線で示す)と一致しなくなる場合があり、その結果として処理を適切に実行できなくなる不具合が生じていた。
【0008】
さらに、図11aに示すように、第一巻芯400から第二巻芯500に至る帯状ガラスフィルム100の搬送経路上に、当該帯状ガラスフィルム100を厚み方向に挟持する一対のローラーでなるニップローラー600が配置されているような場合には、帯状ガラスフィルム100の弛みに起因した問題も発生している。具体的には、図11bに示すように、搬送経路上のニップローラー600の直上流側にて、帯状ガラスフィルム100の幅方向における両端部の一方のみに弛み(以下、片弛みと表記)が発生すると共に、この片弛みが次第に悪化していき、やがて帯状ガラスフィルム100が破損に至ってしまう場合があった。
【0009】
上記の事情に鑑みなされた本発明は、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合に、帯状ガラスフィルムにおける斜行や片弛みの発生を防止できるガラスロールを提供することを技術的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者達は、鋭意研究の結果、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合に、帯状ガラスフィルムに斜行や片弛みが発生する要因は、帯状ガラスフィルムに形成された皺にあることを見出した。そして、帯状ガラスフィルムの幅方向の一方側端部に存在する皺と、他方側端部に存在する皺との間において、皺の数や大きさのバランスが悪い場合に、斜行や片弛みが発生しやすいことを知見するに至った。なお、上記のような皺は、帯状ガラスフィルムだけでなく、例えば、同様の形状を有する帯状樹脂フィルムにも存在し得るが、帯状樹脂フィルムについてロール・トゥ・ロールの形態を利用したとしても、斜行や片弛みは発生し難い。これは、樹脂が伸縮性に富み、ロール・トゥ・ロールの形態を利用する際に帯状樹脂フィルムに張力を負荷すれば皺が伸びるため、上記のバランスが悪くとも、その影響が小さいからである。一方、帯状ガラスフィルムに形成された皺は、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した際の張力によっても殆ど伸びない。そのため、上記のバランスが悪い場合には、皺による影響を排除できずに斜行や片弛みが発生しやすくなってしまう。
【0011】
この知見に基づき、上記の課題を解決するために創案された本発明は、皺の形成された帯状ガラスフィルムがロール状に巻かれてなるガラスロールであって、帯状ガラスフィルムが、幅方向の一方側端縁と他方側端縁とが平行に延びた区間であり、且つ、その先頭部および最後部の各々が帯状ガラスフィルムの幅方向と平行に延びた有効区間を備え、有効区間の表面に沿った先頭部から最後部までの長さを、帯状ガラスフィルムの一方側端縁に沿う第一位置および他方側端縁に沿う第二位置の各々に沿って測定した場合に、第一位置および第二位置に沿ってそれぞれ測定された第一測定長さおよび第二測定長さの両測定長さの差が、両測定長さのうちの長い方の測定長さの400ppm以下であることに特徴付けられる。
【0012】
本ガラスロールについて、第一測定長さおよび第二測定長さの両測定長さは、いずれも帯状ガラスフィルムに備わった有効区間の表面に沿って、当該有効区間の先頭部から最後部までの長さを測定したものとなっている。そして、このように表面に沿って測定がなされていることで、両測定長さの測定結果には、皺による表面の凹凸の影響が反映され、第一位置および第二位置の各々において、有効区間の先頭部から最後部までの間に存在する皺の数の多寡や大きさの大小が、測定長さの長短として反映される。ここで、第一位置および第二位置は、それぞれ帯状ガラスフィルムの幅方向の一方側端縁に沿う位置および他方側端縁に沿う位置である。このことから、上記の両測定長さの差を割り出すことにより、当該差の大小に基づいて、帯状ガラスフィルムの幅方向の一方側端部と他方側端部との間における皺の数や大きさのバランスの良否が判明する。そして、両測定長さの差が小さい程、バランスが良いことになる。ここで、本発明の発明者達は、鋭意研究の結果、両測定長さの差が、両測定長さのうちの長い方の測定長さの400ppm以下であるガラスロールについて、ロール・トゥ・ロールの形態を利用すれば、帯状ガラスフィルムにおける斜行や片弛みの発生を防止できることを見出した。以上のことから、本ガラスロールによれば、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合に、帯状ガラスフィルムにおける斜行や片弛みの発生を防止することが可能となる。
【0013】
なお、本ガラスロールに対しては、帯状ガラスフィルムの幅方向の一方側端縁と他方側端縁とが平行に延びた区間であり、且つ、その先頭部および最後部の各々が帯状ガラスフィルムの幅方向と平行に延びた有効区間を対象として、第一測定長さおよび第二測定長さの両測定長さを測定する。このようにすることで、帯状ガラスフィルムの幅方向の一方側端部と他方側端部との間における皺の数や大きさのバランスの良否だけでなく、一方側端部と他方側端部との間での端部自体の長さ(帯状ガラスフィルムの長手方向に沿った長さ)の違いまでもが両測定長さの差として反映されてしまうことを回避する。例えば、本ガラスロールに対するものとは異なり、有効区間ではなく、帯状ガラスフィルムの表面に沿った当該帯状ガラスフィルムの先頭部から最後部までの長さを、第一位置および第二位置の各々に沿って測定し、両測定長さとした場合には、以下のような不具合が生じ得る。すなわち、帯状ガラスフィルムの幅方向の一方側端部と他方側端部との間で端部自体の長さが異なる場合、仮に一方側端部と他方側端部との間における皺の数や大きさのバランスが良好であったとしても、上記の両測定長さの差は、一方側端部と他方側端部との長さの差の分だけ上乗せされて大きくなってしまう。そのため、両測定長さの差からバランスの良否を正確に判別できない虞が生じる。このような虞を排除するべく、上述のように有効区間を対象として両測定長さを測定する。
【0014】
上記のガラスロールにおいて、両測定長さの差が、両測定長さのうちの長い方の測定長さの200ppm以下であることが好ましい。
【0015】
このようになっていれば、帯状ガラスフィルムの幅方向の一方側端部と他方側端部との間における皺の数や大きさのバランスが更に良いことになる。このため、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合に、帯状ガラスフィルムにおける斜行や片弛みの発生を防止する上で更に有利となる。
【0016】
上記のガラスロールにおいて、両測定長さの差が、両測定長さのうちの長い方の測定長さの100ppm以下であることが好ましい。
【0017】
このようになっていれば、帯状ガラスフィルムの幅方向の一方側端部と他方側端部との間における皺の数や大きさのバランスがより一層良いことになる。このため、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合に、帯状ガラスフィルムにおける斜行や片弛みの発生を防止する上でより一層有利となる。
【0018】
上記のガラスロールにおいて、第一測定長さおよび第二測定長さに加え、第三測定長さとして、有効区間の表面に沿った先頭部から最後部までの長さを、帯状ガラスフィルムにおける皺のない幅方向中心線上に沿って測定した場合に、第一測定長さと第三測定長さとの差と、第二測定長さと第三測定長さとの差とのうち、大きい方の差が、第一測定長さ~第三測定長さのうちの最長の測定長さの500ppm以下であることが好ましい。
【0019】
ロール・トゥ・ロールの形態を利用して帯状ガラスフィルムに処理を施すにあたっては、当該処理を好適に実行する上で、帯状ガラスフィルムに形成された皺の数や大きさが可及的に抑制されていることが望ましい。ここで、上述のとおり、第一測定長さおよび第二測定長さの測定結果には、有効区間の先頭部から最後部までの間に存在する皺の数の多寡や大きさの大小が、測定長さの長短として反映される。これに対して、第三測定長さは、皺がなく平坦な幅方向中心線上に沿って有効区間の先頭部から最後部までの長さを測定したものとなっている。すなわち、第三測定長さの測定結果には、皺による表面の凹凸の影響がないことになる。これらのことから、第一測定長さと第三測定長さとの差と、第二測定長さと第三測定長さとの差とをそれぞれ割り出した場合、これらの差が小さい程、帯状ガラスフィルムの幅方向の一方側端部および他方側端部にそれぞれ存在する皺の数や大きさが抑制されていることになる。そして、本発明の発明者達は、鋭意研究の結果、これら二つの差のうち、大きい方の差が、第一測定長さ~第三測定長さのうちの最長の測定長さの500ppm以下であるガラスロールについて、ロール・トゥ・ロールの形態を利用すれば、帯状ガラスフィルムに対して好適に処理を実行できることを見出した。以上により、本ガラスロールによれば、ロール・トゥ・ロールの形態を利用して、帯状ガラスフィルムに対して好適に処理を実行する上で有利となる。
【0020】
上記のガラスロールにおいて、大きい方の差が、第一測定長さ~第三測定長さのうちの最長の測定長さの300ppm以下であることが好ましい。
【0021】
このようになっていれば、帯状ガラスフィルムの幅方向の一方側端部および他方側端部にそれぞれ存在する皺の数や大きさが更に抑制されていることになる。従って、ロール・トゥ・ロールの形態を利用して、帯状ガラスフィルムに対して好適に処理を実行する上で更に有利となる。
【0022】
上記のガラスロールにおいて、大きい方の差が、第一測定長さ~第三測定長さのうちの最長の測定長さの200ppm以下であることが好ましい。
【0023】
このようになっていれば、帯状ガラスフィルムの幅方向の一方側端部および他方側端部にそれぞれ存在する皺の数や大きさがより一層抑制されていることになる。従って、ロール・トゥ・ロールの形態を利用して、帯状ガラスフィルムに対して好適に処理を実行する上でより一層有利となる。
【0024】
また、上記の課題を解決するために創案された本発明は、成形体により溶融ガラスを帯状に成形してなるガラスリボンを長手方向に引っ張りながら冷え固まらせることで、皺の形成された帯状ガラスフィルムを得る成形工程と、帯状ガラスフィルムの幅方向両端にそれぞれ存する両不要部を、両不要部の相互間に位置する有効部から分断する分断工程と、有効部でなる分断後帯状ガラスフィルムをロール状に巻き取ってガラスロールとする巻取工程とを備えたガラスロールの製造方法であって、更に、有効部の長手方向に沿った区間であり、且つ、その先頭部および最後部の各々が帯状ガラスフィルムの幅方向と平行に延びた被計測区間について、被計測区間の表面に沿った先頭部から最後部までの長さを、有効部の幅方向の一方側端部および他方側端部の各々に沿って計測する計測工程を備え、一方側端部および他方側端部に沿ってそれぞれ計測された第一計測長さおよび第二計測長さの両計測長さの差が、両計測長さのうちの長い方の計測長さの400ppmを超える場合に、両計測長さの差が小さくなるように調節する第一調節工程を実行することに特徴付けられる。
【0025】
本方法によれば、計測工程を実行することで、分断後帯状ガラスフィルムとして巻き取られる有効部の幅方向の一方側端部と他方側端部との間における皺の数や大きさのバランスの良否が、第一計測長さおよび第二計測長さの両計測長さの差として割り出される。そして、両計測長さの差が、両計測長さのうちの長い方の計測長さの400ppmを超える場合、すなわち、バランスが悪い場合には、第一調節工程を実行する。これにより、両計測長さの差が小さくなるように調節してバランスを改善する。その結果、バランスの良い有効部でなる分断後帯状ガラスフィルムを巻き取ってガラスロールを製造でき、このガラスロールについてロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合には、分断後帯状ガラスフィルムにおける斜行や片弛みの発生を好適に防止することが可能となる。
【0026】
上記の方法では、第一調節工程が、有効部の一方側端部および他方側端部とそれぞれ連なったガラスリボンの幅方向の一方側端部および他方側端部の両者が冷え固まる速度の差が狭まるように調節する工程であることが好ましい。
【0027】
本発明の発明者達は、鋭意研究の結果、有効部の幅方向の一方側端部と他方側端部との間における皺の数や大きさのバランスが悪化するのは、有効部の一方側端部および他方側端部とそれぞれ連なったガラスリボンの幅方向の一方側端部および他方側端部の両者が冷え固まる速度に差があることが要因であることを見出した。これにより、上記の両計測長さの差が、両計測長さのうちの長い方の計測長さの400ppmを超える場合に、第一調節工程を実行し、ガラスリボンの一方側端部と他方側端部とが冷え固まる速度の差が狭まるように調節すれば、上記のバランスを効果的に改善できる。
【0028】
上記の方法では、両計測長さの差が長い方の計測長さの400ppmを超える場合に、計測工程と第一調節工程との両工程を、計測工程を実行する度に被計測区間を新たな区間に変更しつつ両計測長さの差が長い方の計測長さの400ppm以下になるまで、交互に実行することが好ましい。
【0029】
このようにすれば、幅方向の一方側端部と他方側端部との間で皺の数や大きさのバランスの良い有効部を確実に成形できるようになる。そのため、このバランスの良い有効部でなる分断後帯状ガラスフィルムを巻き取ったガラスロールを確実に製造できる。
【0030】
上記の方法では、計測工程において、第一計測長さおよび第二計測長さに加え、第三計測長さとして、被計測区間の表面に沿った先頭部から最後部までの長さを、有効部の一方側端部と他方側端部との相互間に位置する皺のない中央部に沿って計測し、第一計測長さと第三計測長さとの差と、第二計測長さと第三計測長さとの差との二つの差の少なくとも一方が、第一計測長さ~第三計測長さのうちの最長の計測長さの500ppmを超える場合に、二つの差のうち、最長の計測長さの500ppmを超えた差が小さくなるように調節する第二調節工程を実行することが好ましい。
【0031】
このようにすれば、計測工程の実行に伴い、第一計測長さと第三計測長さとの差と、第二計測長さと第三計測長さとの差とを割り出すことができ、二つの差に基づいて、有効部(分断後帯状ガラスフィルム)の幅方向の一方側端部および他方側端部のそれぞれで、皺の数や大きさが抑制されているか否かが判明する。そして、二つの差の少なくとも一方が、第一計測長さ~第三計測長さのうちの最長の計測長さの500ppmを超える場合、つまり、皺の数や大きさが十分に抑制されていない場合には、第二調節工程を実行する。これにより、二つの差のうち、最長の計測長さの500ppmを超えた差が小さくなるように調節して皺の数や大きさを抑制する。その結果、一方側端部と他方側端部とに存在する皺の数や大きさが可及的に抑制された有効部を成形でき、この有効部でなる分断後帯状ガラスフィルムを巻き取ったガラスロールを製造できる。そして、このガラスロールについてロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合には、分断後帯状ガラスフィルムに対する処理を好適に実行することが可能となる。
【0032】
上記の方法では、第二調節工程が、ガラスリボンの一方側端部および他方側端部と、両端部の相互間に位置する中央部とが、冷え固まる速度の差が狭まるように調節する工程であることが好ましい。
【0033】
本発明の発明者達は、鋭意研究の結果、有効部の一方側端部や他方側端部にて皺の数や大きさを十分に抑制できないのは、ガラスリボンの一方側端部および他方側端部と、両端部の相互間に位置する中央部とが、冷え固まる速度に差があることが要因であることを見出した。そのため、上記の二つの差の少なくとも一方が、第一計測長さ~第三計測長さのうちの最長の計測長さの500ppmを超える場合に、第二調節工程を実行し、ガラスリボンの一方側端部および他方側端部と、中央部とが冷え固まる速度の差が狭まるように調節すれば、皺の数や大きさを効果的に抑制できる。
【0034】
上記の方法では、二つの差の少なくとも一方が最長の計測長さの500ppmを超える場合に、計測工程と第二調節工程との両工程を、計測工程を実行する度に被計測区間を新たな区間に変更しつつ二つの差の双方が最長の計測長さの500ppm以下になるまで、交互に実行することが好ましい。
【0035】
このようにすれば、幅方向の一方側端部と他方側端部との間で皺の数や大きさのバランスが良い上に、これら両端部に存在する皺の数や大きさ自体も十分に抑制された有効部を確実に成形できるようになる。そのため、この有効部でなる分断後帯状ガラスフィルムで構成された高品質なガラスロールを確実に製造することが可能となる。
【0036】
上記の方法では、各計測長さの計測に計測手段を用い、計測手段が、被計測区間の表面に当接した状態で表面との摩擦により回転しつつ、皺による被計測区間の表面の凹凸に倣って被計測区間の厚み方向に移動可能な回転体を備え、回転体が被計測区間の表面上を転動した距離に基づいて各計測長さを計測するように構成されていることが好ましい。
【0037】
このようにすれば、計測手段に備わった回転体が、被計測区間の表面の凹凸に倣って被計測区間の厚み方向に移動可能であることから、各計測長さを計測するにあたり、皺に対して負荷される力で皺が圧迫されて潰れてしまうような虞を確実に排除できる。これにより、各計測長さの計測結果に皺による表面の凹凸の影響を正確に反映させることが可能となり、ひいては、各計測長さの計測精度を向上させることができる。
【0038】
上記の方法では、被計測区間を有効部から分断して廃棄することが好ましい。
【0039】
このようにすれば、計測手段に備わった回転体との接触で表面が汚染されている虞のある被計測区間が、ガラスロールを構成する分断後帯状ガラスフィルム(有効部)の一部となることなく廃棄される。そのため、表面が清浄な状態にある分断後帯状ガラスフィルムのみで構成されるガラスロールを製造することが可能である。
【0040】
上記の方法では、ガラスリボンの一方側端部、他方側端部、及び、両端部の相互間に位置する中央部をそれぞれ加熱可能な三基の加熱手段を用いて、各部位が冷え固まる速度を調節することが好ましい。
【0041】
このようにすれば、ガラスリボンの一方側端部、他方側端部、及び、中央部の冷え固まる速度を個別に調節しやすくなる。このため、より高品質なガラスロールを製造する上で有利となる。
【0042】
さらに、本発明に係るガラスロールの品質評価方法は、同一条件の下で作製された複数のガラスロールからサンプルガラスロールを抜き取る抜取工程と、サンプルガラスロールを構成する皺の形成された帯状ガラスフィルムに備わった幅方向の一方側端縁と他方側端縁とが平行に延びた区間であり、且つ、その先頭部および最後部の各々が帯状ガラスフィルムの幅方向と平行に延びた有効区間について、有効区間の表面に沿った先頭部から最後部までの長さを、ロール・トゥ・ロールの形態を利用しながら帯状ガラスフィルムの幅方向の一方側端部および他方側端部の各々に沿って測定する測定工程と、一方側端部および他方側端部に沿ってそれぞれ測定された一方側測定長さおよび他方側測定長さの両測定長さの差に基づいて、サンプルガラスロールを除く複数のガラスロールの品質の良否を判定する判定工程とを含むことに特徴付けられる。
【0043】
本方法では、測定工程を実行することで、サンプルガラスロールを構成する帯状ガラスフィルムの幅方向の一方側端部と他方側端部との間における皺の数や大きさのバランスの良否が、一方側測定長さおよび他方側測定長さの両測定長さの差として割り出される。そして、両測定長さの差が小さい程、バランスが良いことになり、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合に、帯状ガラスフィルムに斜行や片弛みが発生し難いことになる。ここで、サンプルガラスロールは、抜取工程により複数のガラスロールから抜き取られたものであると共に、複数のガラスロールは、同一条件の下で作製されたものである。つまり、サンプルガラスロールと、当該サンプルガラスロールを除く複数のガラスロールの各々とは、略同じガラスロールと見做すことができる。このため、サンプルガラスロールが、上記の斜行や片弛みの発生を防止できるものであれば、サンプルガラスロールを除く複数のガラスロールの各々についても、同様に斜行や片弛みの発生を防止できるものと見做せる。以上のことから、本方法によれば、上記の両測定長さの差に基づく判定工程の実行に伴い、複数のガラスロールの品質を好適に評価することが可能となる。
【0044】
上記の方法では、判定工程において、両測定長さの差が、両測定長さのうちの長い方の測定長さの400ppm以下である場合に、サンプルガラスロールを除く複数のガラスロールの品質を合格と判定することが好ましい。
【0045】
このようにすれば、判定工程により品質が合格と判定された複数のガラスロールについて、これらの各々を構成する帯状ガラスフィルムは、その幅方向の一方側端部と他方側端部との間における皺の数や大きさのバランスが十分に良いことになる。これにより、複数のガラスロールの各々を、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合に、帯状ガラスフィルムにおける斜行や片弛みの発生を好適に防止できるガラスロールと評価することが可能となる。
【0046】
上記の方法では、測定工程において、一方側測定長さおよび他方側測定長さに加え、中央測定長さとして、有効区間の表面に沿った先頭部から最後部までの長さを、ロール・トゥ・ロールの形態を利用しながら帯状ガラスフィルムの一方側端部と他方側端部との相互間に位置する皺のない中央部に沿って測定し、判定工程において、両測定長さの差が、両測定長さのうちの長い方の測定長さの400ppm以下であり、且つ、一方側測定長さと中央測定長さとの差と、他方側測定長さと中央測定長さとの差とのうち、大きい方の差が、一方側測定長さ、他方側測定長さ、及び、中央測定長さのうちの最長の測定長さの500ppm以下である場合に、サンプルガラスロールを除く複数のガラスロールの品質を優良合格と判定することが好ましい。
【0047】
このようにすれば、判定工程により品質が優良合格と判定された複数のガラスロールについて、これらの各々を構成する帯状ガラスフィルムは、幅方向の一方側端部と他方側端部との間における皺の数や大きさのバランスが十分に良いことに加え、一方側端部および他方側端部にそれぞれ存在する皺の数や大きさが十分に抑制されていることになる。従って、複数のガラスロールの各々を、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合に、帯状ガラスフィルムにおける斜行や片弛みの発生を好適に防止でき、且つ、帯状ガラスフィルムに対して好適に処理を実行できるガラスロールと評価することが可能となる。
【0048】
上記の方法では、各測定長さの測定に測定手段を用い、測定手段が、有効区間の表面に当接した状態で表面との摩擦により回転しつつ、皺による有効区間の表面の凹凸に倣って有効区間の厚み方向に移動可能な回転体を備え、回転体が有効区間の表面上を転動した距離に基づいて各測定長さを測定するように構成されていることが好ましい。
【0049】
このようにすれば、各測定長さの測定結果に皺による表面の凹凸の影響を正確に反映させることが可能となり、各測定長さの測定精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合に、帯状ガラスフィルムにおける斜行や片弛みの発生を防止できるガラスロールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の実施形態に係るガラスロールを示す斜視図である。
図2a】本発明の実施形態に係るガラスロールを構成する帯状ガラスフィルムについて、その全長を仮想的に巻芯から巻き外した状態を示す平面図である。
図2b】本発明の実施形態に係るガラスロールを構成する帯状ガラスフィルムについて、その全長を仮想的に巻芯から巻き外した状態を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態に係るガラスロールについて、第一~第三測定長さを測定する態様を示す側面図である。
図4】本発明の実施形態に係るガラスロールについて、第一~第三測定長さを測定する態様を示す平面図である。
図5a】本発明の実施形態に係るガラスロールについて、第一~第三測定長さを測定する態様をローラーエンコーダーの周辺を拡大して示す側面図である。
図5b】本発明の実施形態に係るガラスロールについて、第一~第三測定長さを測定する態様をローラーエンコーダーの周辺を拡大して示す側面図である。
図5c】本発明の実施形態に係るガラスロールについて、第一~第三測定長さを測定する態様をローラーエンコーダーの周辺を拡大して示す側面図である。
図6】本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法を示す側面図である。
図7】本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法を示す平面図である。
図8】本発明の実施形態に係るガラスロールの製造方法を示す正面図である。
図9】本発明の実施形態に係るガラスロールの品質評価方法を示す図である。
図10a】従来のガラスロールにおける問題点を説明するための平面図である。
図10b】従来のガラスロールにおける問題点を説明するための平面図である。
図11a】従来のガラスロールにおける問題点を説明するための側面図である。
図11b】従来のガラスロールにおける問題点を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の実施形態に係るガラスロール、ガラスロールの製造方法および品質評価方法について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0053】
<ガラスロール>
最初に、ガラスロールから説明する。
【0054】
図1に示すように、ガラスロール1は、可撓性を備えた帯状ガラスフィルム2と、帯状ガラスフィルム2を傷等の発生から保護するための可撓性を備えた帯状保護シート3とが、重ね合わされた状態で巻芯4の周りにロール状に巻かれてなる。なお、帯状ガラスフィルム2は、その全幅が略均一な厚みに形成されており、厚みの一例としては300μm以下である。また、帯状ガラスフィルム2の全長は、一例として100m以上である。
【0055】
ここで、本実施形態では、帯状保護シート3の方が帯状ガラスフィルム2よりも幅寸法が大きくなっているが、この限りではない。本実施形態の変形例として、両者2,3の幅寸法は同一であってもよいし、帯状ガラスフィルム2の方が帯状保護シート3よりも幅寸法が大きくてもよい。
【0056】
ガラスロール1を構成する帯状ガラスフィルム2の全長を仮想的に巻芯4から巻き外した状態を示すと、図2aのようになる。同図に示すように、この帯状ガラスフィルム2では、その長手方向に沿った一端部である先頭部2a、及び、他端部である最後部2bの各々が、当該帯状ガラスフィルム2の幅方向と平行に形成されている。
【0057】
帯状ガラスフィルム2は、オーバーフローダウンドロー法に代表されるように、溶融ガラスを帯状に成形してなるガラスリボンを長手方向に引っ張りながら冷え固まらせて成形したガラスである。ただし、成形に伴って幅方向両端に形成される耳部(他の部位よりも厚みの大きい部位)は、分断されて除去されている。この帯状ガラスフィルム2は、後述の第一位置P1を含んだ幅方向の一方側端部2cと、後述の第二位置P2を含んだ他方側端部2dと、幅方向中心線CLを含むと共に、両端部2c,2dの相互間に位置する中央部2eとを有する。一方側端部2cおよび他方側端部2dには、皺5が形成されて表面2fに凹凸が存在する。これに対し、中央部2eには、皺5が形成されておらず表面2fが平坦となっている。
【0058】
ここで、本実施形態では、帯状ガラスフィルム2の一方側端部2c、他方側端部2d、及び、中央部2eの三つの部位のうち、一方側端部2cおよび他方側端部2dに皺5が形成されているが、この限りではない。本実施形態の変形例として、三つの部位うち、一つの部位のみに皺5が形成されている場合もある。例えば、一方側端部2cのみ、或いは、他方側端部2dのみに皺5が形成されている場合がある。
【0059】
上記の帯状ガラスフィルム2は、後述する第一測定長さL1~第三測定長さL3を測定される対象となる有効区間6を備えている。有効区間6は、帯状ガラスフィルム2にて、幅方向の一方側端縁2gと他方側端縁2hとが平行に延びた区間であり、且つ、その先頭部6aおよび最後部6bの各々が幅方向と平行に延びた区間である。つまり、帯状ガラスフィルム2を平面視した場合に、有効区間6は矩形をなす。これにより、図2aに示す帯状ガラスフィルム2にて有効区間6を最も長くとれば、帯状ガラスフィルム2の全長が有効区間6となる。この場合には、帯状ガラスフィルム2の先頭部2aと有効区間6の先頭部6a、及び、帯状ガラスフィルム2の最後部2bと有効区間6の最後部6bがそれぞれ一致する。
【0060】
ここで、上記の有効区間6の定義から、本実施形態の変形例として、図2bに示すように、帯状ガラスフィルム2の先頭部2aおよび最後部2bの各々が幅方向に対して傾いた方向に延びている場合には、有効区間6は、最も長くとったとしても、クロスハッチングを施して示す部位を除いた区間となる。この場合、帯状ガラスフィルム2の先頭部2aと有効区間6の先頭部6a、及び、帯状ガラスフィルム2の最後部2bと有効区間6の最後部6bは、いずれも一致しなくなる。
【0061】
上記の説明から明らかなように、有効区間6の長さ(帯状ガラスフィルム2の長手方向に沿った長さ)は、任意の長さとすることが可能であるが、好ましくは有効区間6の長さを20m以上とすることが好ましい。
【0062】
第一測定長さL1、第二測定長さL2、及び、第三測定長さL3は、有効区間6の表面2fに沿った先頭部6aから最後部6bまでの長さが、それぞれ帯状ガラスフィルム2の一方側端縁2gに沿う第一位置P1、他方側端縁2hに沿う第二位置P2、及び、幅方向中心線CL上に沿って測定された長さである。このように各測定長さL1~L3が表面2fに沿って測定されることで、第一測定長さL1および第二測定長さL2の測定結果には、皺5による表面2fの凹凸の影響が反映され、皺5の数の多寡や大きさの大小が測定長さの長短として反映される。これに対し、第三測定長さL3の測定結果には、皺5による表面2fの凹凸の影響がない。
【0063】
第一位置P1および第二位置P2は、それぞれ一方側端縁2gおよび他方側端縁2hから幅方向内側に50mmずれた位置である。本実施形態では、第一位置P1および第二位置P2に沿ってそれぞれ測定される第一測定長さL1および第二測定長さL2は、いずれも後述するローラーエンコーダー7を用いて測定される。このため、ローラーエンコーダー7を用いた測定の障害となる障害物が、上記の50mmずれた位置に存在する場合には、代わりに障害物からずれた位置を第一位置P1および第二位置P2とする。具体的には、障害物から幅方向内側に10mmずれた位置を第一位置P1および第二位置P2とする。なお、障害物の一例としては、帯状ガラスフィルム2の補強のために長手方向に沿って表面2fに貼着された補強テープ等が挙げられる。
【0064】
上記の第一測定長さL1および第二測定長さL2の両測定長さL1,L2の差(L1-L2の絶対値)は、両測定長さL1,L2のうちの長い方の測定長さの400ppm以下となっている。この条件を満たせば、帯状ガラスフィルム2の一方側端部2cと他方側端部2dとの間における皺5の数や大きさのバランスが、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合に、帯状ガラスフィルム2に斜行や片弛みを発生させない上で良好となる。なお、両測定長さL1,L2の差は、好ましくは長い方の測定長さの200ppm以下であり、更に好ましくは長い方の測定長さの100ppm以下である。
【0065】
また、第一測定長さL1と第三測定長さL3との差(L1-L3の絶対値)と、第二測定長さL2と第三測定長さL3との差(L2-L3の絶対値)とのうち、大きい方の差は、第一測定長さL1~第三測定長さL3のうちの最長の測定長さの500ppm以下となっている。この条件を満たせば、帯状ガラスフィルム2の一方側端部2cおよび他方側端部2dにそれぞれ存在する皺5の数や大きさが、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合に、帯状ガラスフィルム2に対して好適に処理を実行する上で十分に抑制されていることになる。なお、上記の大きい方の差は、好ましくは最長の測定長さの300ppm以下であり、更に好ましくは最長の測定長さの200ppm以下である。
【0066】
<第一測定長さ~第三測定長さの測定態様>
以下、第一測定長さL1~第三測定長さL3の測定態様について説明する。
【0067】
上記の第一測定長さL1~第三測定長さL3は、例えば、図3に示すように、本実施形態に係るガラスロール1について、ロール・トゥ・ロールの形態を利用して測定される。すなわち、上記の巻芯4を第一巻芯8として、ガラスロール1を構成する帯状ガラスフィルム2を第一巻芯8から巻き外して搬送しつつ、その搬送経路上の測定位置MPにて各測定長さL1~L3を測定していく。その後、測定位置MPを通過した帯状ガラスフィルム2を第一巻芯8とは異なる第二巻芯9の周りに巻き取って再びガラスロール10とする。
【0068】
なお、帯状ガラスフィルム2の先頭部2aは、帯状ガラスフィルム2に先行して第二巻芯9の周りに巻き取られていく帯状のリーダー(図示省略)の最後部と連結されている。つまり、帯状ガラスフィルム2は、リーダーに牽引されることで搬送されていく。
【0069】
ガラスロール1にて帯状ガラスフィルム2と重なり合っていた帯状保護シート3は、帯状ガラスフィルム2と共に第一巻芯8から巻き外した後、帯状ガラスフィルム2から分離させて第一シートロール11として回収する。また、測定位置MPを通過した帯状ガラスフィルム2は、第二シートロール12から供給される帯状保護シート13と重ね合わせた状態で第二巻芯9の周りに巻き取る。
【0070】
第一巻芯8から巻き外されて第二巻芯9に向けて搬送中の帯状ガラスフィルム2は、搬送経路に沿って配置された複数のローラー14に掛け渡された状態となっている。複数のローラー14は、いずれも帯状ガラスフィルム2の幅方向に沿って軸線が延びたローラーとなっている。なお、複数のローラー14の各々は、駆動源(例えば、モーター等)と接続された駆動ローラーである場合もあれば、フリーローラーである場合もある。
【0071】
複数のローラー14のうち、測定位置MPに配置されたローラー15は、当該測定位置MPを平置き姿勢で通過する帯状ガラスフィルム2をローラーエンコーダー7に備わったローラー7aと共に厚み方向に挟持するように配置されている。詳細には、ローラー15が帯状ガラスフィルム2に対して下方から当接し、ローラー7aが帯状ガラスフィルム2に対して上方から当接するようになっている。なお、ローラー15の径は、ローラー7aの径と比較して大きくなっている。
【0072】
ここで、本実施形態の変形例として、ローラー15が帯状ガラスフィルム2に対して上方から当接し、ローラーエンコーダー7に備わったローラー7aが帯状ガラスフィルム2に対して下方から当接するようにしてもよい。
【0073】
ローラーエンコーダー7は、上記の各測定長さL1~L3を測定する測定手段として機能する。ローラーエンコーダー7に備わった回転体としてのローラー7aは、有効区間6の表面2fに常に当接した状態で表面2fとの摩擦により滑りなく回転することが可能である。そして、ローラー7aが、表面2f上を転動した距離に基づいて各測定長さL1~L3が測定される。なお、ローラー7aにて、表面2fと当接する回転周部の材質は特に限定されるものではないが、表面2fと回転周部との滑りに起因して、上記の各測定長さL1~L3が不正確に測定される虞を排除する必要がある。このため、本実施形態においては、回転周部の材質として、滑りを防止する上で好適なシリコンゴムを用いている。
【0074】
図4に示すように、ローラーエンコーダー7は、第一位置P1、第二位置P2、及び、幅方向中心線CL上の各々に沿って測定される第一測定長さL1、第二測定長さL2、及び、第三測定長さL3のそれぞれの測定用として三器が配置されている。三器のローラーエンコーダー7にそれぞれ備わった三つのローラー7aは、帯状ガラスフィルム2の幅方向に沿って並べられており、帯状ガラスフィルム2の搬送経路上における同一地点に位置している。
【0075】
図5a~図5cに示すように、各ローラーエンコーダー7に備わったローラー7aは、皺5による有効区間6の表面2fの凹凸に倣って有効区間6の厚み方向に移動することが可能である。従って、これらの図に示すように、ローラー7aが、帯状ガラスフィルム2の搬送に伴って測定位置MPまで到達した皺5を乗り越える際には、図5bに二点鎖線で示した初期位置から実線で示す位置まで、ローラー7aが上方に移動する。なお、「初期位置」とは、ローラー7aが、有効区間6における皺5のない平坦な部位上を転動している場合の位置である。また、ローラー7aは、有効区間6に対して常に一定の荷重(帯状ガラスフィルム2の厚み方向に作用する荷重)を負荷するように構成されている。荷重の大きさは、ローラー7aと表面2fとが常に当接する状態を維持できつつも、皺5を潰して平坦化させることがない程度の大きさとなっている。
【0076】
なお、本実施形態の変形例として、ローラー7aが有効区間6に対して負荷する荷重の大きさを、ローラー7aが皺5を潰して平坦化させる程度の大きさとしてもよい。この場合においても、第一測定長さL1、第二測定長さL2、及び、第三測定長さL3を問題なく測定することができる。
【0077】
各ローラーエンコーダー7に備わったローラー7aが、それぞれ第一位置P1、第二位置P2、及び、幅方向中心線CL上において、有効区間6の表面2fに沿って先頭部2aから最後部2bまで転動し終えると、上記の各測定長さL1~L3が測定される。その結果、上記の両測定長さL1,L2の差、第一測定長さL1と第三測定長さL3との差、及び、第二測定長さL2と第三測定長さL3との差が判明することになる。
【0078】
<ガラスロールの製造方法>
以下、上記のガラスロール1を製造するための製造方法について説明する。
【0079】
図6図8に示すように、本製造方法は、成形体16により溶融ガラス17を帯状に成形してなるガラスリボン18を長手方向に引っ張りながら冷え固まらせることで、皺5の形成された帯状ガラスフィルム19を得る成形工程と、帯状ガラスフィルム19の幅方向両端にそれぞれ存する両不要部19a,19aを、両不要部19a,19aの相互間に位置する有効部19bから分断する分断工程と、有効部19bでなる分断後の帯状ガラスフィルム2をロール状に巻き取ってガラスロール1とする巻取工程と、有効部19bに備わった被計測区間S(図7にて斜線を施して示す区間)について、表面2fに沿った先頭部Saから最後部Sbまでの長さを、有効部19bの幅方向の一方側端部2c、他方側端部2d、及び、両端部2c,2dの相互間に位置する中央部2eの各々に沿って計測する計測工程とを含んでいる。
【0080】
さらに、本製造方法では、計測工程の結果により、有効部19bの一方側端部2cおよび他方側端部2dとそれぞれ連なったガラスリボン18の幅方向の一方側端部18aおよび他方側端部18bの両端部18a,18bが冷え固まる速度の差が狭まるように調節する第一調節工程を実行する。また、計測工程の結果により、ガラスリボン18の両端部18a,18bの冷え固まる速度と、両端部18a,18bの相互間に位置する中央部18cの冷え固まる速度との差が狭まるように調節する第二調節工程を実行する。
【0081】
ここで、ガラスリボン18の部位と部位との間で「冷え固まる速度の差を狭める」とは、ガラスリボン18が通過する経路上において、一方の部位が冷え固まる地点と、他方の部位が冷え固まる地点との経路に沿った距離(本実施形態では、上下方向に沿った距離)を狭めることを意味する。従って、両部位の間で冷え固まる速度の差が零であれば、両部位はガラスリボン18が通過する経路上の同一地点にて冷え固まることになる。
【0082】
成形工程の実行には、主として、楔状に形成されたオーバーフローダウンドロー法用の成形体16と、成形体16から流下するガラスリボン18を表裏両側から挟持しつつ下方への牽引が可能な上下複数段に配置されたローラー対でなるローラー群20と、流下中のガラスリボン18の両端部18a,18bおよび中央部18cをそれぞれ加熱可能な加熱手段としての三基のヒーター21a,21b,21cでなるヒーター群21とを用いる。なお、成形工程に用いる三者16,20,21のうち、成形体16やローラー群20は、その構成や動作が既に公知となっているので詳細な説明は省略し、ヒーター群21についてのみ詳細を説明する。
【0083】
ヒーター群21は、ガラスリボン18を歪点以下の温度まで徐冷するための徐冷炉(図示省略)内に配置されると共に、ヒーター群21を構成するヒーター21a,21b,21cは、ガラスリボン18が流下する経路上の同一地点に配置されている。つまり、ヒーター21a,21b,21cは、相互に同一の高さ位置にある。ヒーター21a,21b,21cは、それぞれガラスリボン18に付与する熱エネルギーの大小を独立して変化させ得る。これにより、ガラスリボン18の一方側端部18a、他方側端部18b、及び、中央部18cが冷え固まる速度を個別に調節することが可能である。
【0084】
ここで、本実施形態では、ガラスリボン18が流下する経路上にヒーター群21を一つのみ配置しているが、この限りではない。本実施形態の変形例として、ガラスリボン18が流下する経路に沿って複数のヒーター群21を上下複数段に配置してもよい。また、ガラスリボン18の部位と部位との間での冷え固まる速度の差を変更できるのであれば、必ずしもヒーター21a,21b,21cの三基を配置する必要はない。例えば、本実施形態の変形例として、三基のうちのヒーター21cのみが配置されていてもよい。
【0085】
なお、ガラスリボン18の一方側端部18aには、冷え固まった後に、帯状ガラスフィルム19の不要部19aとなる部位と、帯状ガラスフィルム19の有効部19bにおける一方側端部2cとなる部位とが含まれる。同様にして、他方側端部18bには、冷え固まった後に、帯状ガラスフィルム19の不要部19aとなる部位と、帯状ガラスフィルム19の有効部19bにおける他方側端部2dとなる部位とが含まれる。さらに、ガラスリボン18の中央部18cは、冷え固まった後に有効部19bの中央部2eとなる。
【0086】
成形工程により得られる帯状ガラスフィルム19は、例えば、その厚みが300μm以下に形成されている。帯状ガラスフィルム19の不要部19aには、他の部位と比較して厚みの大きい耳部が含まれている。なお、帯状ガラスフィルム19に皺5が形成される態様は、本実施形態で説明する限りではないが、ここでは、帯状ガラスフィルム19の両不要部19a,19aと、有効部19bの一方側端部2cおよび他方側端部2dとに皺5が形成され、有効部19bの中央部2eには皺5が形成されていない場合を例示する。
【0087】
ここで、本実施形態では、オーバーフローダウンドロー法により、帯状ガラスフィルム19を成形しているが、本実施形態の変形例として、スロットダウンドロー法やリドロー法等により、帯状ガラスフィルム19を成形してもよい。
【0088】
成形後に鉛直下方に搬送される帯状ガラスフィルム19は、湾曲した搬送軌道に沿って並べられた複数のローラーでなるローラー群22により、その搬送方向を鉛直下方向から水平方向へと転換させる。そして、コンベア23、板状体24、及び、コンベア25により帯状ガラスフィルム19を水平方向に搬送しつつ、帯状ガラスフィルム19に搬送経路上の計測位置X、分断位置Yを順次に通過させる。
【0089】
ここで、本実施形態では、帯状ガラスフィルム19の搬送経路において、帯状ガラスフィルム19が水平方向に搬送される区間内に計測位置Xが配置されているが、この限りではない。本実施形態の変形例として、帯状ガラスフィルム19が鉛直下方向に搬送される区間内に計測位置Xを配置してもよい。
【0090】
計測位置Xにて実行する計測工程では、それぞれが計測手段として機能する三器のローラーエンコーダー26を用いて、有効部19bの一方側端部2c、他方側端部2d、及び、中央部2eに沿ってそれぞれ計測される第一計測長さ(以下、第一計測長さLL1と表記)、第二計測長さ(以下、第二計測長さLL2と表記)、及び、第三計測長さ(以下、第三計測長さLL3と表記)を計測する。なお、有効部19bの「中央部2e」とは、有効部19bの幅方向中央に位置する幅200mmの部位を意味する。また、有効部19bの「一方側端部2c」および「他方側端部2d」とは、それぞれ中央部2eの幅方向外側に位置する部位を意味する。各計測長さLL1~LL3は、一方側端部2c、他方側端部2d、及び、中央部2eのそれぞれの幅内における任意の位置で計測される。
【0091】
各計測長さLL1~LL3を計測される対象となる被計測区間Sは、帯状ガラスフィルム19の有効部19bの長手方向に沿った区間であり、且つ、その先頭部Saおよび最後部Sbの各々が幅方向と平行に延びた区間である。つまり、帯状ガラスフィルム19を平面視した場合に、被計測区間Sは矩形をなす。なお、被計測区間Sの長さ(帯状ガラスフィルム19の長手方向に沿った長さ)は、任意の長さとすることが可能であるが、好ましくは被計測区間Sの長さを20m以上とする。
【0092】
各計測長さLL1~LL3は、それぞれ被計測区間Sの表面2fに沿って計測するため、第一計測長さLL1および第二計測長さLL2の計測結果には、皺5による表面2fの凹凸の影響が反映され、皺5の数の多寡や大きさの大小が計測長さの長短として反映される。これに対し、第三計測長さLL3の計測結果には、皺5による表面2fの凹凸の影響がない。
【0093】
計測工程の実行に用いる各ローラーエンコーダー26は、上記の<第一測定長さ~第三測定長さの測定態様>の項目で説明したローラーエンコーダー7と同一の構成を有し、同一の動作が可能であるので、ここでは説明を省略する。各ローラーエンコーダー26に備わった回転体としてのローラー26aが、それぞれ有効部19bの一方側端部2c、他方側端部2d、及び、中央部2eにて、被計測区間Sの表面2fに沿って先頭部Saから最後部Sbまで転動し終えると、上記の各計測長さLL1~LL3の計測が完了する。
【0094】
計測工程の結果、第一計測長さLL1および第二計測長さLL2の両計測長さLL1,LL2の差(LL1-LL2の絶対値)が、両計測長さLL1,LL2のうちの長い方の計測長さの400ppmを超える場合には、第一調節工程を実行する。この第一調節工程は単独で実行する場合もあるし、後述する第二調節工程と一緒に実行する場合もある。
【0095】
本実施形態では、第一計測長さLL1が第二計測長さLL2よりも長く、両計測長さLL1,LL2の差が、第一計測長さLL1の400ppmを超えている場合を例に挙げて説明する。この場合においては、有効部19bの一方側端部2cでは他方側端部2dと比較して皺5の数が不当に多い状態や、皺5が不当に大きい状態となっており、両端部2c,2dの間で皺5の数や大きさのバランスが悪化した状態となっている。
【0096】
ここで、本発明の発明者達は、鋭意研究の結果、有効部19bの一方側端部2cと他方側端部2dとの間で皺5の数や大きさのバランスが悪化するのは、ガラスリボン18の中央部18cと一方側端部18aとの間での冷え固まる速度の差と、中央部18cと他方側端部18bとの間での冷え固まる速度の差とのバランスが悪いことが要因であることを見出した。なお、通常、中央部18cは、両端部18a,18bのどちらよりも冷え固まる速度が速い。本実施形態では、中央部18cと一方側端部18aとの間での冷え固まる速度の差が、中央部18cと他方側端部18bとの間での冷え固まる速度の差に対して不当に大きくなっている。
【0097】
このような状態を是正するため、ヒーター21a,21b,21cを用いて、ガラスリボン18の両端部18a,18bの冷え固まる速度の差が狭まるように調節する。その結果として、ガラスリボン18の中央部18cと一方側端部18aとの間での冷え固まる速度の差と、中央部18cと他方側端部18bとの間での冷え固まる速度の差とのバランスを改善する。なお、好ましくは、両端部18a,18bの冷え固まる速度の差が零となるように調節し、ガラスリボン18が流下する経路上の同一地点にて両端部18a,18bが冷え固まるようにする。
【0098】
具体的には、下記の(A)、(B)のいずれかの操作を行う。(A)一方側端部18aと他方側端部18bとの一方の冷え固まる速度を固定した状態で、他方の冷え固まる速度を一方の冷え固まる速度に近付ける。具体例としては、他方側端部18bの冷え固まる速度を固定した状態で、一方側端部18aの冷え固まる速度を速める。(B)一方側端部18aおよび他方側端部18bの双方の冷え固まる速度を変更しつつ、両冷え固まる速度を近付ける。具体例としては、一方側端部18aおよび他方側端部18bの双方の冷え固まる速度を速めつつ、両冷え固まる速度を近付ける。
【0099】
第一調節工程を実行した後には、上記の被計測区間Sとは別の区間を新たな被計測区間Sとして再び計測工程を実行する。なお、「新たな被計測区間S」とは、第一調節工程の実行後に成形された有効部19bの長手方向に沿った区間である。
【0100】
そして、再度実行した計測工程の結果、上記の両計測長さLL1,LL2の差が、第一計測長さLL1の400ppm以下になっていれば、上記のバランスが改善されたものと見做し、ヒーター21a,21b,21cの稼働の状態を第一調節工程後の状態に維持する。
【0101】
一方、再度実行した計測工程の結果、両計測長さLL1,LL2の差が、未だ第一計測長さLL1の400ppmを超えていれば、計測工程と第一調節工程との両工程を、計測工程を実行する度に被計測区間Sを新たな区間に変更しつつ両計測長さLL1,LL2の差が第一計測長さLL1の400ppm以下になるまで、交互に実行する。
【0102】
さらに、計測工程の結果、第一計測長さLL1と第三計測長さLL3との差(LL1-LL3の絶対値)と、第二計測長さLL2と第三計測長さLL3との差(LL2-LL3の絶対値)との二つの差の少なくとも一方が、第一計測長さLL1~第三計測長さLL3のうちの最長の計測長さの500ppmを超える場合には、第二調節工程を実行する。この第二調節工程は単独で実行する場合もあるし、上記の第一調節工程と一緒に実行する場合もある。
【0103】
本実施形態では、第一計測長さLL1と第三計測長さLL3との差と、第二計測長さLL2と第三計測長さLL3との差との二つの差の双方が、第一計測長さLL1~第三計測長さLL3のうちの最長である第一計測長さLL1の500ppmを超える場合を例に挙げて説明する。この場合、有効部19bの一方側端部2cおよび他方側端部2dとの双方において、皺5の数や大きさが十分に抑制できていない状態となっている。
【0104】
ここで、本発明の発明者達は、鋭意研究の結果、有効部19bの一方側端部2cや他方側端部2dにおいて、皺5の数や大きさを十分に抑制できないのは、ガラスリボン18の中央部18cと一方側端部18aとの間や、中央部18cと他方側端部18bとの間での冷え固まる速度の差が大きいことが要因であることを見出した。本実施形態では、中央部18cに対して一方側端部18aおよび他方側端部18bの冷え固まる速度が不当に遅くなっている。
【0105】
このような状態を是正するため、ヒーター21a,21b,21cを用いて、ガラスリボン18の両端部18a,18bの冷え固まる速度と、中央部18cの冷え固まる速度との差が狭まるように調節する。なお、好ましくは、両端部18a,18bの冷え固まる速度と、中央部18cの冷え固まる速度との差が零となるように調節し、ガラスリボン18が流下する経路上の同一地点にて両端部18a,18bと、中央部18cとが冷え固まるようにする。
【0106】
具体的には、下記の(C)、(D)のいずれかの操作を行う。(C)両端部18a,18bの冷え固まる速度と、中央部18cの冷え固まる速度との一方を固定した状態で、他方の冷え固まる速度を一方の冷え固まる速度に近付ける。具体例としては、中央部18cの冷え固まる速度を固定した状態で、両端部18a,18bの冷え固まる速度を速める。さらに、別の具体例としては、両端部18a,18bの冷え固まる速度を固定した状態で、中央部18cの冷え固まる速度を遅くする。(D)両端部18a,18bの冷え固まる速度と、中央部18cの冷え固まる速度との双方を変更して、双方の速度を近付ける。具体例としては、両端部18a,18bの冷え固まる速度を速めると共に、中央部18cの冷え固まる速度を遅くして、双方の速度を近付ける。
【0107】
第二調節工程を実行した後には、上記の被計測区間Sとは別の区間を新たな被計測区間Sとして再び計測工程を実行する。なお、「新たな被計測区間S」とは、第二調節工程の実行後に成形された有効部19bの長手方向に沿った区間である。
【0108】
そして、再度実行した計測工程の結果、第一計測長さLL1と第三計測長さLL3との差と、第二計測長さLL2と第三計測長さLL3との差との二つの差の双方が、最長である第一計測長さLL1の500ppm以下になっていれば、一方側端部2cと他方側端部2dとの双方にて皺5の数や大きさを十分に抑制できたものと見做す。そして、ヒーター21a,21b,21cの稼働の状態を第二調節工程後の状態に維持する。
【0109】
一方、再度実行した計測工程の結果、上記の二つの差の少なくとも一方が、未だ最長である第一計測長さLL1の500ppmを超えていれば、計測工程と第二調節工程との両工程を、計測工程を実行する度に被計測区間Sを新たな区間に変更しつつ二つの差の双方が最長である第一計測長さLL1の500ppm以下になるまで、交互に実行する。
【0110】
なお、一回、又は、複数回実行される計測工程にて、有効部19bのうちの被計測区間Sとなった区間は、ローラーエンコーダー26に備わったローラー26aとの接触により表面2fが汚染されている虞があるため、有効部19bにおける巻き取りの対象となる区間から分断して廃棄する。さらに、有効部19bのうち、上記の両計測長さLL1,LL2の差が、長い方の計測長さ(ここでは、第一計測長さLL1)の400ppm以下になる前に成形された区間についても、有効部19bにおける巻き取りの対象となる区間から分断して不良品として廃棄する。詳細は後述する。
【0111】
計測位置Xを通過した後、分断位置Yに到達した帯状ガラスフィルム19に対しては分断工程を実行し、有効部19bと両不要部19a,19aとのそれぞれの境界線B1,B2に沿ってレーザー27を用いた切断を行う。これにより、有効部19bから両不要部19a,19aを分断する。レーザー27を用いた切断は、例えば、既に公知となっているレーザー割断法等により実行が可能である。なお、分断後の両不要部19a,19aは、コンベア25から下方に落下させて廃棄する。
【0112】
両不要部19a,19aと分断されると共に、分断位置Yを通過した有効部19b(分断後の帯状ガラスフィルム2)は、有効部19bを下方に弛ませた状態で搬送する弛み搬送位置Zを通過させて巻芯4に到達させる。なお、弛み搬送位置Zを通過させて巻芯4に到達させるのは、上記の被計測区間Sとなった区間、及び、不良品とされた区間を除く有効部19bである。不良品とされた区間、及び、被計測区間Sとなった区間は、巻芯4へと到達させることなく、巻き取りの対象となる区間から分断した後、弛み搬送位置Zにて下方に落下させて廃棄する。
【0113】
以上のようにして、廃棄の対象となる区間以外でなる有効部19bを巻芯4の周りに巻き取って所望の長さの巻き取りが完了すると、ガラスロール1が完成する。なお、有効部19bを巻芯4の周りに巻き取るに際しては、第三シートロール28から供給した帯状保護シート3と重ね合わせた状態で巻き取る。
【0114】
ここで、本実施形態では、第一調節工程として、ガラスリボン18の一方側端部18aおよび他方側端部18bの両端部18a,18bが冷え固まる速度の差が狭まるように調節を行っているが、この限りではない。第一調節工程は、両計測長さLL1,LL2の差が小さくなるように調節する限りで、本実施形態とは異なる形態で実行してよい。
【0115】
また、本実施形態では、第二調節工程として、ガラスリボン18の両端部18a,18bの冷え固まる速度と、両端部18a,18bの相互間に位置する中央部18cの冷え固まる速度との差が狭まるように調節を行っているが、この限りではない。第二調節工程は、(LL1-LL3の絶対値)と、(LL2-LL3の絶対値)との二つの差のうち、LL1~LL3のうちの最長の計測長さの500ppmを超えた差が小さくなるように調節する限りで、本実施形態とは異なる形態で実行してよい。
【0116】
<ガラスロールの品質評価方法>
以下、上記のガラスロール1の品質を評価するための方法について説明する。なお、本評価方法の説明において、上記の<ガラスロール>、<第一測定長さ~第三測定長さの測定態様>、及び、<ガラスロールの製造方法>の項目で既に説明済みの要素と同一の要素に関しては、両項目の説明で付したものと同一の符号を付すことで重複する説明を省略している。
【0117】
本評価方法の流れを図9に示す。本評価方法では、まず、同一条件の下で作製された複数のガラスロール1からサンプルガラスロール1aを抜き取る抜取工程を実行する。複数のガラスロール1は、例えば、上記の<ガラスロールの製造方法>により、同一の成形条件(ヒーター21a,21b,21cの稼働の状態も同一)、同一の分断条件、同一の巻取条件で作製されたものである。
【0118】
ここで、本実施形態では、サンプルガラスロール1aとしてガラスロール1を一つのみを抜き取っているが、この限りではない。本実施形態の変形例として、ガラスロール1を二つ以上抜き取ってもよい。このようにすれば、サンプルの数が増えた分だけ、後述する判定工程における判定の精度を高めることが可能である。また、一例として、サンプルガラスロール1aを一つのみ抜き取る場合の抜き取りの頻度としては、好ましくはガラスロールの製造日の三日あたりで一つであり、より好ましくは二日あたりで一つであり、更に好ましくは一日あたりで一つである。
【0119】
抜取工程で抜き取ったサンプルガラスロール1aに対しては測定工程を実行する。測定工程では、サンプルガラスロール1aを構成する皺5の形成された帯状ガラスフィルム2について、有効区間6の表面2fに沿った先頭部2aから最後部2bまでの長さを、ロール・トゥ・ロールの形態を利用しながら測定する。具体的には、有効区間6の幅方向の一方側端部2c、他方側端部2d、及び、両端部2c,2dの相互間に位置する中央部2eの各々に沿って上記の長さを測定し、それぞれの測定結果を一方側測定長さ(以下、一方側測定長さML1と表記)、他方側測定長さ(以下、他方側測定長さML2と表記)、及び、中央測定長さ(以下、中央測定長さML3と表記)とする。
【0120】
ここで、有効区間6の「中央部2e」とは、有効区間6の幅方向中央に位置する幅200mmの部位を意味する。また、有効区間6の「一方側端部2c」および「他方側端部2d」とは、それぞれ中央部2eの幅方向外側に位置する部位を意味する。
【0121】
一方側測定長さML1、他方側測定長さML2、及び、中央測定長さML3を測定する具体的な態様は、上記の第一測定長さL1、第二測定長さL2、及び、第三測定長さL3を測定する態様(図3図5c)と略同一であるので、第一測定長さL1~第三測定長さL3の測定態様との相違点についてのみ説明する。
【0122】
上記の第一測定長さL1、第二測定長さL2、及び、第三測定長さL3は、それぞれ上記の第一位置P1、第二位置P2、及び、幅方向中心線CLに沿って測定された長さである。これに対し、一方側測定長さML1、他方側測定長さML2、及び、中央測定長さML3は、それぞれ一方側端部2cの幅内における任意の位置、他方側端部2dの幅内における任意の位置、中央部2eの幅内における任意の位置に沿って測定される長さである。つまり、これら三つの任意の位置は、それぞれ第一位置P1、第二位置P2、及び、幅方向中心線CLと一致していても、異なっていても構わない。
【0123】
測定工程が完了すると、次いで、一方側測定長さML1および他方側測定長さML2の両測定長さML1,ML2の差に基づいて、サンプルガラスロール1aを除く複数のガラスロール1の品質の良否を判定する判定工程を実行する。
【0124】
ここで、サンプルガラスロール1aと、これを除く複数のガラスロール1の各々とは、同一条件で作製されたものであり、略同じガラスロール1と見做すことができる。そのため、サンプルガラスロール1aが、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合に、帯状ガラスフィルム2における斜行や片弛みの発生を防止できるものであれば、複数のガラスロール1の各々についても、同じ効果が得られるものと見做せる。また、サンプルガラスロール1aが、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合に、帯状ガラスフィルムに対して好適に処理を実行できるものであれば、複数のガラスロール1の各々についても、同じ効果が得られるものと見做せる。
【0125】
そして、判定工程においては、上記の両測定長さML1,ML2の差(ML1-ML2の絶対値)が、両測定長さML1,ML2のうちの長い方の測定長さの400ppm以下(好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下)である場合に、サンプルガラスロール1aを除く複数のガラスロール1の品質を合格と判定する。すなわち、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合に、帯状ガラスフィルム2における斜行や片弛みの発生を防止できるガラスロール1と判定する。
【0126】
加えて、上記の一方側測定長さML1と中央測定長さML3との差(ML1-ML3の絶対値)と、他方側測定長さML2と中央測定長さML3との差(ML2-ML3の絶対値)とのうち、大きい方の差が、三つの測定長さML1,ML2,ML3のうちの最長の測定長さの500ppm以下(好ましくは300ppm以下、より好ましくは200ppm以下)である場合には、サンプルガラスロール1aを除く複数のガラスロール1の品質を優良合格と判定する。すなわち、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合に、帯状ガラスフィルム2における斜行や片弛みの発生を防止できる上に、帯状ガラスフィルム2に対して好適に処理を実行できるガラスロール1と判定する。
【実施例
【0127】
本発明による効果の有無を調査するため、下記の[表1]に示した8種のガラスロール(実施例:6種、比較例:2種)、及び、[表2]に示した8種のガラスロール(実施例:5種、比較例:3種)の各々について、ロール・トゥ・ロールの形態を利用し、帯状ガラスフィルムの斜行や片弛みの発生を防止できるか否かを検証した。なお、[表1]に示した各ガラスロールは、厚みが100μmの帯状ガラスフィルムがロール状に巻かれてなり、[表2]に示した各ガラスロールは、厚みが50μmの帯状ガラスフィルムがロール状に巻かれてなる。
【0128】
本検証においては、ロール・トゥ・ロールの形態を利用するにあたり、帯状ガラスフィルムと同一の幅寸法を有するリーダーにより帯状ガラスフィルムを牽引して搬送した。これにより、帯状ガラスフィルムに全く斜行が発生しなかった場合には、先行するリーダーの幅方向端部が通った通過ラインを、後続の帯状ガラスフィルムの幅方向端部がずれなく通過することになる。
【0129】
また、本検証においては、搬送経路上に帯状ガラスフィルムを厚み方向に挟持する一対のローラーでなるニップローラー(図示省略)を配置した。これにより、帯状ガラスフィルムに許容範囲を超えて斜行が発生すると、ニップローラーの直上流側にて帯状ガラスフィルムの片弛みが悪化し、帯状ガラスフィルムが破損に至る虞が高まることになる。
【0130】
[表1]および[表2]の計算結果の項目における「計算結果1」とは、第一測定長さL1と第二測定長さL2との差(L1-L2の絶対値)と、両測定長さL1,L2のうちの長い方の測定長さとの、比率を示している。この計算結果1の値が小さくなる程、帯状ガラスフィルムの幅方向の一方側端部と他方側端部との間で皺の数や大きさのバランスが良いことになる。
【0131】
[表1]および[表2]の計算結果の項目における「計算結果2」とは、第一測定長さL1と第三測定長さL3との差(L1-L3の絶対値)と、第一~第三測定長さL1,L2,L3のうちの最長の測定長さとの、比率を示している。加えて、「計算結果3」とは、第二測定長さL2と第三測定長さL3との差(L2-L3の絶対値)と、第一~第三測定長さL1,L2,L3のうちの最長の測定長さとの、比率を示している。これらの計算結果2と計算結果3とのうちの相対的に大きい方の値が小さくなる程、帯状ガラスフィルムの幅方向の一方側端部および他方側端部にそれぞれ存在する皺の数や大きさが抑制されていることになる。
【0132】
[表1]および[表2]のロール・トゥ・ロール結果の項目における「斜行量」は、以下のようにして測定した値である。すなわち、帯状ガラスフィルムの搬送経路上の定点において、先行するリーダーの幅方向端部が通った通過ラインに対し、後続の帯状ガラスフィルムの幅方向端部が通った通過ラインが幅方向に最大でどれだけずれたかを測定した値である。
【0133】
[表1]および[表2]に検証の結果を示す。なお、[表1]および[表2]に示す各値は、第三測定長さL3の30000mmあたり(30mあたり)の値である。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
[表1]および[表2]に示す結果から明らかなように、計算結果1の値が400ppm以下である各実施例においては、各比較例とは異なり、帯状ガラスフィルムの破損が発生しなかったことが理解される。これは、各実施例では各比較例に対して大幅に斜行量が抑制されており、片弛みの発生を略皆無にできたことによるものと想定される。なお、[表1]の実施例6、及び、[表2]の実施例7、10、11においては、僅かに片弛みが発生したものの、帯状ガラスフィルムを破損に至らしめる程度まで悪化することは回避できた。以上のことから、本発明に係るガラスロールによれば、ロール・トゥ・ロールの形態を利用した場合に、帯状ガラスフィルムにおける斜行や片弛みの発生を抑制でき、帯状ガラスフィルムの破損を回避できるものと推認される。
【符号の説明】
【0137】
1 ガラスロール
1a サンプルガラスロール
2 帯状ガラスフィルム
2c 一方側端部
2d 他方側端部
2e 中央部
2f 表面
2g 一方側端縁
2h 他方側端縁
5 皺
6 有効区間
6a 先頭部
6b 最後部
7 ローラーエンコーダー
7a ローラー
16 成形体
17 溶融ガラス
18 ガラスリボン
18a 一方側端部
18b 他方側端部
18c 中央部
19 帯状ガラスフィルム
19a 不要部
19b 有効部
21 ヒーター群
21a~21c ヒーター
26 ローラーエンコーダー
26a ローラー
CL 幅方向中心線
L1 第一測定長さ
L2 第二測定長さ
L3 第三測定長さ
P1 第一位置
P2 第二位置
S 被計測区間
Sa 先頭部
Sb 最後部
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11a
図11b