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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】異常温度検出回路
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/24 20060101AFI20230803BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
G01K7/24 A
G03G15/20 555
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020029100
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021135072
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 健治
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-333793(JP,A)
【文献】特開2018-200244(JP,A)
【文献】特開2008-111849(JP,A)
【文献】特開2013-214110(JP,A)
【文献】特開2007-226151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
G03G 15/20
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知用サーミスタと補償用サーミスタとを有して前記検知用サーミスタの出力と前記補償用サーミスタの出力とを出力するセンサ出力検出回路部と、
前記検知用サーミスタの出力を増幅して増幅出力として出力する検出側増幅回路部と、
前記増幅出力と前記補償用サーミスタの出力との差動出力である増幅時差動出力を出力する差動出力増幅回路部とを備え、
前記増幅出力の増幅率が、前記補償用サーミスタの出力に対する前記増幅時差動出力の最大値が前記検知用サーミスタの出力と前記補償用サーミスタの出力との差動出力の最大値よりも小さくなる値に設定されていることを特徴とする異常温度検出回路。
【請求項2】
請求項1に記載の異常温度検出回路において、
前記検出側増幅回路部が、前記検知用サーミスタの出力が正入力端子に入力される検知用オペアンプと、
前記検知用オペアンプの負入力端子に接続された2つの増幅用抵抗とを備えた非反転増幅回路であることを特徴とする異常温度検出回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の異常温度検出回路において、
前記検知用サーミスタが、画像形成装置の定着ローラの温度を測定する温度センサであることを特徴とする異常温度検出回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば定着ローラ等が異常温度になったことを判定可能なサーミスタを用いた異常温度検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンタ等の定着ローラ等の測定対象物から輻射により放射される赤外線を非接触で検出して測定対象物の温度を測定する温度センサとして、サーミスタが使用されている。このようなサーミスタで定着ローラ等の温度を測定する場合、定着ローラ等が加熱して異常温度に達した際に装置を停止させる必要があるため、サーミスタで検知した温度から定着ローラ等の高温異常を検出する異常温度検出回路が装置に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、非接触温度センサにおいて温度検出回路と比較演算回路とを用いた技術が記載されている。すなわち、これらの回路では、温度補償用感熱素子と赤外線検知用感熱素子との差動出力に基づいて周囲の温度の影響を相殺した定着ローラの表面温度の出力信号ΔTを得ると共に、出力信号ΔTと温度設定回路のしきい値とを比較演算することで、定着装置の温度制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-111849号公報(段落番号0029~0032、図7図8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
従来、図7及び図8に示す回路のように、差動増幅回路部103でセンサ出力検出回路部102からの検知出力Vdetと補償出力Vrefとの差動出力Vdiff_1を出力することで、異常温度検出回路部105で差動出力Vdiff_1と判定しきい値Vcmpとを比較した結果を、出力Vcomとしている。このため従来の回路では、検知と補償との温度差(差分温度に準じる出力)だけを見ているため、補償温度とセンサ温度とが同じであるとすると、補償温度が高くなるほど、図9に示すように、異常検出温度(過昇検出温度)も上昇してしまう問題があった。すなわち、この図9の場合、過昇検出温度の最低温度が240℃を下回らないように判定しきい値Vcmpを設定すると、センサ温度(補償温度)が高温時に過昇検出温度が360℃を超えてしまうことがわかる。このように過昇により異常と判定される最低温度と異常と判定されない最高温度との間の範囲(過昇検出温度の範囲)が拡がってしまう。なお、図9では、判定しきい値を0.5Vとしている。また、図8中の符号102aは、バッファ部である。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、補償温度が高い場合でも過昇検出温度の上昇を抑制することができる異常温度検出回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る異常温度検出回路は、検知用サーミスタと補償用サーミスタとを有して前記検知用サーミスタの出力と前記補償用サーミスタの出力とを出力するセンサ出力検出回路部と、前記検知用サーミスタの出力を増幅して増幅出力として出力する検出側増幅回路部と、前記増幅出力と前記補償用サーミスタの出力との差動出力である増幅時差動出力を検出する差動出力増幅回路部とを備え、前記増幅出力の増幅率が、前記補償用サーミスタの出力に対する前記増幅時差動出力の最大値が前記検知用サーミスタの出力と前記補償用サーミスタの出力との差動出力の最大値よりも小さくなる値に設定されていることを特徴とする。
【0008】
この異常温度検出回路では、増幅出力の増幅率が、補償用サーミスタの出力に対する増幅時差動出力の最大値が検知用サーミスタの出力と補償用サーミスタの出力との差動出力の最大値よりも小さくなる値に設定されているので、補償温度に対する増幅時差動出力の出力カーブのピークが従来の差動出力の出力カーブのピークよりも下がることで、出力カーブの傾斜が緩やかになる。すなわち、対象温度が一定なら補償温度が上がっても増幅時差動出力が大きく変わらず、増幅時差動出力が判定用しきい値を下回り、高温異常を検出することができる。したがって、異常と判定される最低温度と異常と判定されない最高温度との間の範囲(過昇検出温度の範囲)を狭くすることができる。
【0009】
第2の発明に係る異常温度検出回路は、第1の発明において、前記検出側増幅回路部が、前記検知用サーミスタの出力が正入力端子に入力される検知用オペアンプと、前記検知用オペアンプの負入力端子に接続された2つの増幅用抵抗とを備えた非反転増幅回路であることを特徴とする。
すなわち、この異常温度検出回路では、検出側増幅回路部が、検知用サーミスタの出力が正入力端子に入力される検知用オペアンプと、検知用オペアンプの負入力端子に接続された2つの増幅用抵抗とを備えた非反転増幅回路であるので、簡易で低コストな回路構成にできると共に、2つの増幅用抵抗の設定により増幅出力の増幅率を容易に設定することができる。
【0010】
第3の発明に係る異常温度検出回路は、第1又は第2の発明において、前記検知用サーミスタが、画像形成装置の定着ローラの温度を測定する温度センサであることを特徴とする。
すなわち、この異常温度検出回路では、検知用サーミスタが、画像形成装置の定着ローラの温度を測定する温度センサであるので、センサ温度(補償温度)が高くなっても、低い過昇検出温度で定着ローラの高温異常を検知して加熱を停止させることが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る異常温度検出回路によれば、増幅出力の増幅率が、補償用サーミスタの出力に対する増幅時差動出力の最大値が検知用サーミスタの出力と補償用サーミスタの出力との差動出力の最大値よりも小さくなる値に設定されているので、補償温度に対する増幅時差動出力の出力カーブのピークが従来の差動出力の出力カーブのピークよりも下がることで、補償温度が上がっても過昇検出温度の上昇を抑制することができる。
したがって、検知用サーミスタを、画像形成装置の定着ローラの温度を測定する温度センサとすることで、センサ温度(補償温度)が高くなっても、低い過昇検出温度で定着ローラの高温異常を検知して加熱を停止させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る異常温度検出回路の一実施形態を示すブロック図である。
図2】本実施形態において、異常温度検出回路を示す回路図である。
図3】加算回路部を有した異常温度検出回路を示す回路図である。
図4】補償用及び検出用のサーミスタの一般的な回路図である。
図5図4の回路において、温度に対する出力(電圧)を示すグラフである。
図6】本実施形態において、補償温度に対する加算出力又は増幅差分出力の出力電圧を示すグラフである。
図7】本発明に係る異常温度検出回路の従来例を示すブロック図である。
図8】本発明の従来例において、異常温度検出回路を示す回路図である。
図9】本発明の従来例において、補償温度に対する差動出力の出力電圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る異常温度検出回路の一実施形態を、図1から図6を参照しながら説明する。
【0014】
本実施形態の異常温度検出回路1は、例えば画像形成装置の定着ローラの高温異常を検出する回路であって、図1及び図2に示すように、検知用サーミスタTh1と補償用サーミスタTH2とを有して検知用サーミスタTh1の出力(以下、検出側出力と称す)Vdetと補償用サーミスタTH2の出力(以下、補償側出力と称す)Vrefとを出力するセンサ出力検出回路部2と、検知用サーミスタTh1の検出側出力Vdetを増幅して増幅出力Vampとして出力する検出側増幅回路部3と、増幅出力Vampと補償用サーミスタの補償側出力Vrefとの差動出力である増幅時差動出力Vdiffを出力する差動出力増幅回路部4と、増幅時差動出力Vdiffが予め設定された判定用しきい値Vcmpよりも低い場合に異常温度検出信号Vcomを出力する異常温度判定回路部5とを備えている。
【0015】
上記増幅出力Vampの増幅率は、補償用サーミスタTH2の補償側出力Vrefに対する増幅時差動出力Vdiffの最大値が検知用サーミスタTh1の検知側出力Vdetと補償用サーミスタTH2の補償側出力Vrefとの差動出力の最大値よりも小さくなる値に設定されている。
上記増幅出力Vampの増幅率の決定は、後述する。
上記検出側増幅回路部3は、図2に示すように、検知用サーミスタTh1の検知側出力Vdetが正入力端子に入力される検知用オペアンプA1と、検知用オペアンプA1の負入力端子に接続された2つの増幅用抵抗R13,R14とを備えた非反転増幅回路である。
【0016】
上記検知用サーミスタTh1は、赤外線を受光して温度を検出可能な非接触温度センサであり、測定対象物の定着ローラに対向配置され、定着ローラからの赤外線を受光して定着ローラの温度を測定可能になっている。また、補償用サーミスタTh2は、検知用サーミスタTh1と同構造であるが、定着ローラからの赤外線を遮断して周囲温度(補償温度)の検出が可能になっている。なお、検知用サーミスタTh1及び補償用サーミスタTh2は、NTCサーミスタ素子である。
【0017】
上記センサ出力検出回路部2は、検知用サーミスタTh1と補償用サーミスタTh2と抵抗R1と抵抗R2とにより構成されたブリッジ回路部B1と、ブリッジ回路部B1による補償用サーミスタTh2の補償側出力Vrefが入力され増幅率が1で補償用サーミスタTh2の補償側出力Vrefを出力するバッファ部B2とを備えている。
【0018】
上記検出側増幅回路部3は、ブリッジ回路部B1による検出用サーミスタTh1の検出側出力Vdetが入力され一定の増幅率で検出用サーミスタTh1の検出側出力Vdetを増幅して増幅出力Vampとして出力する。
上記差動出力増幅回路部4では、バッファ部B2を経由した補償用サーミスタTh2の補償側出力Vrefが入力されると共に検出側出力Vdetを増幅した増幅出力Vampが入力され、これらの差分を増幅し増幅時差動出力Vdiffとして出力する。
【0019】
上記異常温度判定回路部5は、増幅時差動出力Vdiffと判定用しきい値Vcmpとの大小に応じた加熱を制御する異常温度検出信号Vcomを出力する機能を有している。
すなわち、この異常温度判定回路部5では、Vdiff-Vcmpについてその大小に応じた固定値である異常温度検出信号Vcomを出力するコンパレータ(比較演算部)であり、Vdiff-Vcmp>0の場合、加熱を許可する信号Vcomを出力し、Vdiff-Vcmp<0の場合、加熱停止を指示する異常温度検出信号Vcomを出力する。
【0020】
次に、上記検出側増幅回路部3の増幅について説明するために、まず補償用サーミスタTh2の補償側出力Vrefに応じた加算値を差動出力Vdiffに加算して加算出力Vtgtとして出力する加算回路部24を有した異常温度検出回路10について、図3を参照して説明する。
【0021】
加算回路部24を有した異常温度検出回路10は、図3に示すように、検知用サーミスタTh1と補償用サーミスタTh2とを有して検知用サーミスタTh1の出力Vdetと補償用サーミスタTh2の出力Vrefとを出力するセンサ出力検出回路部22と、検知用サーミスタTh1の検出側出力Vdetと補償用サーミスタTh2の補償側出力Vrefとの差動出力Vdiff_1を検出する差動出力増幅回路部23と、補償用サーミスタTh2の補償側出力Vrefに応じた加算値を差動出力Vdiff_1に加算して加算出力Vtgtとして出力する加算回路部24と、加算出力Vtgtが、予め設定された判定用しきい値Vcmpより低い場合に、異常温度検出信号Vcomを出力する異常温度判定回路部25とを備えている。
【0022】
上記加算値は、補償用サーミスタTh2の補償側出力Vrefに対する加算出力Vtgtの最大値が補償用サーミスタTh2の補償側出力Vrefに対する差動出力Vdiff_1の最大値よりも小さくなる値に設定されている。
なお、上記加算値は、補償用サーミスタTh2の補償側出力Vrefの1倍としている。
【0023】
上記センサ出力検出回路部22は、検知用サーミスタTh1と補償用サーミスタTh2と抵抗R1と抵抗R2とにより構成されたブリッジ回路部B1と、ブリッジ回路部B1による補償用サーミスタTh2の補償側出力Vrefが入力され増幅率が1で補償用サーミスタTh2の補償側出力Vrefを出力すると共にブリッジ回路部B1による検出用サーミスタTh1の検出側出力Vdetが入力され増幅率が1で検出用サーミスタTh1の検出側出力Vdetを出力するバッファ部B2aとを備えている。
【0024】
上記差動出力増幅回路部23では、バッファ部B2aを経由した補償用サーミスタTh2の補償側出力Vrefが入力されると共に検知用サーミスタTh1の検出側出力Vdetが入力されこれらの差分を増幅し差動出力Vdiff_1として出力する。
【0025】
次に、上記加算回路部24で補償用サーミスタTh2の補償側出力Vrefを差動出力Vdiff_1に加算する理由について説明する。
非接触温度センサ(サーミスタ)では、通常、以下の基本式によって補償温度Trefと検知温度Tdetとから対象温度Tを算出することができる。
【数1】
【0026】
ただし、温度の組み合わせ(T,Tref,Tdet)の近傍では、近似的に基準温度Trefに検知補償温度差の係数倍を足した物と考えることができる。すなわち、以下のような式となる。
=Tref+α(Tdet-Tref
(α:換算係数)
【0027】
このとき、換算係数αは対象温度域±30℃程度で、Max/Min<2~3、補償温度0~100℃、対象温度0~250℃で、Max/Min<8~10になる。
また、補償、検知のそれぞれの温度を検出するサーミスタは、一般的に図4に示すような回路となり、その出力Voutは、温度に対して図5に示すようなグラフとなる。この回路の出力Voutは、温度に対して厳密には比例と言えないが、傾向としておよそ比例的な出力とみることができる。
【0028】
したがって、温度-サーミスタ抵抗-電圧検出温度の変換は以下のように近似することができる。
=Tref+α(Tdet-Tref
=Vref+G(Vdet-Vref
(G:増幅率)
【0029】
しかるに、従来の回路における差動増幅回路では、
=Vdiff_1=G(Vdet-Vref
であり、補償出力分(Vref)が不足していると考えられる。また、それが補償温度が上昇したときに異常検出温度も上昇してしまう理由である。
すなわち、図9に示すように、補償温度が一定であれば対象温度が上がると出力が下がり、対象温度が一定であれば補償温度が上がると出力が上がる。したがって、補償温度が高くなると同じ対象温度での出力が高くなるので、判定しきい値を下回らず、検出にはより高い対象温度が必要となる。
【0030】
そこで、上記異常温度検出回路10の加算回路部24において、Voutに補償出力分(Vref)を加算することで、検出温度の範囲を小さくしている。
なお、異常温度検出回路10では、図3に示す抵抗のうち、R9=R10,R11=R12とすることで、V=Vtgt=Vref+Vdiff_1となる。
【0031】
上記異常温度判定回路部25は、加算出力Vtgtと判定用しきい値Vcmpとの大小に応じた加熱を制御する異常温度検出信号Vcomを出力する機能を有している。
すなわち、この異常温度判定回路部25では、Vtgt-Vcmpについてその大小に応じた固定値である異常温度検出信号Vcomを出力するコンパレータ(比較演算部)であり、Vtgt-Vcmp>0の場合、加熱を許可する信号Vcomを出力し、Vtgt-Vcmp<0の場合、加熱停止を指示する異常温度検出信号Vcomを出力する。
【0032】
上記異常温度検出回路10による補償温度に対する加算出力Vtgtの出力電圧を、図6に示す。なお、判定用しきい値Vcmpは、1.1Vに設定している。
異常温度検出回路10の場合、図6から分かるように、図9に示す従来例の場合に比べて、ピーク(最大値)までの加算出力Vtgtの補償温度に対する上昇(傾き)が緩やかになっている。
すなわち、図6に示すように、補償温度が一定であれば、対象温度が上がると出力が下がり、対象温度が一定であれば、補償温度が下がっても出力が大きく変わらない。このように、検出出力(加算出力Vtgt)は対象温度に依存するが、補償温度には大きく依存しないので、異常検出温度はより狭い範囲となる。
【0033】
図9の従来例では、検出可能な最低温度が240℃を下回らないように判定しきい値Vcmpを設定すると、センサ温度(補償温度)が高温時に検出可能な温度(異常検出温度)が360℃を超えてしまっている。
これに対し、異常温度検出回路10では、検出可能な最低温度が240℃を下回らないように判定しきい値Vcmpを設定すると、センサ温度(補償温度)全域で240~340℃の範囲で検出が可能になっている。なお、図6及び図9では、出力電圧(加算出力Vtgt)が判定しきい値Vcmpよりも低い場合(Vtgt-Vcmp<0)に異常温度と判定される。
【0034】
上記異常温度検出回路10では、
tgt=Vref+Vdiff_1
と判定しきい値Vcmpと比較している。すなわち、以下の式で判定している。
tgt=Vref+Vdiff_1<Vcmp
diff_1=G(Vdet-Vref)なので、上記式は
ref+G(Vdet-Vref)<Vcmp
G・Vdet-(G-1)Vref<Vcmp
とできる。
【0035】
さらに、G’=G-1とすると、以下の式となる。
(1+G’)Vdet-G’・Vref=G’((1+1/G’)Vdet-Vref
これはVdetを(1+1/G’)倍したものとVrefとの差分を取ったものをG’倍したものを意味する。
すなわち、本実施形態の異常温度検出回路1の検出側増幅回路部3において、Vdetを(1+1/G’)倍の増幅率で増幅し、差動出力増幅回路部4においてVrefとの差分をG’倍に増幅し差動出力Vdiffとして出力することで、上記異常温度検出回路10と同じ出力となり、図6に示すように、補償温度に対する出力電圧(増幅差動出力)を得ることができる。したがって、上記異常温度検出回路10と本実施形態の異常温度検出回路1とは、同様の出力結果が得られる。
なお、検知側出力Vdetの上記増幅率「(1+1/G’)倍」は、図2に示す2つの増幅用抵抗R13,R14によって設定する。
【0036】
このように本実施形態の異常温度検出回路1では、増幅出力Vampの増幅率が、補償用サーミスタTH2の補償側出力Vrefに対する増幅時差動出力Vdiffの最大値が検知用サーミスタTh1の検知側出力Vdetと補償用サーミスタTH2の補償側出力Vrefとの差動出力の最大値よりも小さくなる値に設定されているので、補償温度に対する増幅時差動出力Vdiffの出力カーブのピークが従来の差動出力の出力カーブのピークよりも下がることで、出力カーブの傾斜が緩やかになる。すなわち、対象温度が一定なら補償温度が上がっても増幅時差動出力Vdiffが大きく変わらず、増幅時差動出力Vdiffが判定用しきい値Vcmpを下回り、高温異常を検出することができる。したがって、異常と判定される最低温度と異常と判定されない最高温度との間の範囲(過昇検出温度の範囲)を狭くすることができる。
【0037】
また、検出側増幅回路部3が、検知用サーミスタTh1の検知側出力Vdetが正入力端子に入力される検知用オペアンプVampと、検知用オペアンプVampの負入力端子に接続された2つの増幅用抵抗R13,R14とを備えた非反転増幅回路であるので、簡易で低コストな回路構成にできると共に、2つの増幅用抵抗R13,R14の設定により増幅出力Vampの増幅率を容易に設定することができる。
したがって、本実施形態では、検知用サーミスタTh1が、画像形成装置の定着ローラの温度を測定する温度センサであるので、センサ温度(補償温度)が高くなっても、低い過昇検出温度で定着ローラの高温異常を検知して加熱を停止させることが可能になる。
【0038】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1,10…異常温度検出回路、2…センサ出力検出回路部、3…増幅回路部、4…差動出力増幅回路部、5…異常温度判定回路部、Th1…検知用サーミスタ、Th2…補償用サーミスタ、Vdet…検出側出力、Vref…補償側出力、Vamp…増幅出力、Vdiff…増幅差動出力、Vcmp…判定用しきい値、Vcom…異常温度検出信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9