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  • 特許-温度変性放射線遮蔽材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-02
(45)【発行日】2023-08-10
(54)【発明の名称】温度変性放射線遮蔽材
(51)【国際特許分類】
   G21F 1/10 20060101AFI20230803BHJP
   A61N 5/10 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
G21F1/10
A61N5/10 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019147919
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028609
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】門前 一
(72)【発明者】
【氏名】門脇 良人
(72)【発明者】
【氏名】鴫田 正文
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-201581(JP,A)
【文献】特開2017-173296(JP,A)
【文献】特開2013-127021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 1/00 - 7/06
A61N 5/00 - 5/10
A61B 6/00 - 6/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム材を含む保持材と、
タングステン粉末を含み、
動的粘弾性のtanδが、
摂氏36℃で0.58以下であり、
摂氏60℃で0.80以上であり、
前記タングステン粉末が88~97質量%であることを特徴とする温度変性放射線遮蔽材。
【請求項2】
摂氏36℃でのtanδが0.52以下であることを特徴とする請求項1に記載された温度変性放射線遮蔽材。
【請求項3】
摂氏36℃でのtanδが0.50以下であることを特徴とする請求項2に記載された温度変性放射線遮蔽材。
【請求項4】
架橋剤を含まないことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一の請求項に記載された温度変性放射線遮蔽材
【請求項5】
前記保持材は
主材であるゴム材と、
補材として熱可塑性樹脂と可塑剤を含むことを特徴とする請求項1乃至の何れか一の請求項に記載された温度変性放射線遮蔽材。
【請求項6】
前記主材が4.0質量%以上7.0質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至の何れか一の請求項に記載された温度変性放射線遮蔽材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療の際に放射線を照射する患部以外の部分を放射線から保護するための遮蔽材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線治療では、患部に放射線を照射することで治療を行う。しかし、放射線は健常な細胞にもダメージが及ぶ。したがって、患部だけを露出させ、患部の周辺には放射線が当たらないような遮蔽を行う。通常このような遮蔽は、患部の周辺を型取りし、その型にあった遮蔽物を低融点鉛で形成する。この低融点鉛は、錫、鉛などの合金で、約100℃程度で溶解する。
【0003】
しかし、鉛は人体に有害となるおそれが高い。また、低融点とはいえ、遮蔽物の形成には、時間もかかる。したがって、照射する現場で、患部を見ながら、その場で遮蔽物を作製するというリアルタイム性はなかった。そこで、他の遮蔽材の要望があった。
【0004】
このような遮蔽材に要求されるのは、その場での変形性と放射線の遮蔽性および安全性である。タングステンは人体に有害ではなく、放射線の遮蔽性も有している。したがって、タングステンを用いた変形可能な遮蔽材が、医療以外の用途も含めて検討されていた。
【0005】
特許文献1には、未加硫ゴムとタングステン粉末とを含み、前記未加硫ゴムを介して前記タングステン粉末に形状が付与されるタングステン含有複合材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-187829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
タングステンをゴムや樹脂といった保持材に分散させる遮蔽材は多く検討されてきた。その中には、特許文献1のように、未加硫ゴムを用いて、形状を付与するまでは、柔らかさが維持されるものもある。
【0008】
しかし、放射線治療に用いる場合は、人体のように、一定の温度の場所で、成形された形状を維持できる程度の硬さが必要であり、また、人が触れる程度の温度に加熱した際には、容易に変形することができるという特定の温度特性を有することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みて想到されたものであり、人肌の温度では形状が崩れない程度に硬く、人が容易に扱える高温(60℃)では、容易に変形可能な温度変性放射線遮蔽材を提供するものである。
【0010】
より具体的に本発明に係る温度変性放射線遮蔽材は、
ゴム材を含む保持材と、
タングステン粉末を含み、
動的粘弾性のtanδが、
摂氏36℃で0.58以下であり、
摂氏60℃で0.80以上であり、
前記タングステン粉末が88~97質量%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る温度変性放射線遮蔽材は、粘弾性の温度特性で、36℃でのtanδを0.58以下にし、60℃でのtanδを0.80以上としたので、60℃で変形しやすく、また、36℃では変形しにくい遮蔽材を提供することができる。これは、口腔内を始め、形状が複雑な表在性の腫瘍への放射線照射治療の際に、正常組織を放射線から保護するために好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ゴム材を含む保持材中にタングステンを含有させたサンプルの貯蔵弾性率E’と損失弾性率E’’およびtanδの温度依存性を示す測定の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明に係る温度変性放射線遮蔽材について実施例を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
【0014】
本発明に係る温度変性放射線遮蔽材は、人肌の温度においては、形状を維持できる程度に硬く、手で触れることができる範囲で熱く加熱した時には、容易に形状が変えられる粘弾性の温度特性を有するものである。
【0015】
より具体的に36℃での粘弾性におけるtanδの値(以後単に「tanδ」と呼ぶ。)は0.58以下、好ましくは0.52以下、さらにより好ましくは0.50以下である。また、60℃でのtanδが0.80以上であり、タングステンが90質量%以上含有される温度変性放射線遮蔽材である。
【0016】
36℃での粘弾性のtanδが0.58以下であれば、照射されている放射線を遮蔽している際にその形状を維持することができ、遮蔽した部分への放射線の照射量を抑制することができる。また、この材料は口腔内での放射線照射に対する遮蔽材としても利用される。したがって、万一患者が噛んでも変形しにくい程度の硬さが必要である。tanδが0.58以下であれば、万一患者が噛んでしまっても、大きく変形することはない。
【0017】
一方、60℃でのtanδが0.80以上であれば、60℃にしたときには、素手に近いゴム手袋をした状態でも支障なく触ることができ、患部の形状に応じた形に温度変性放射線遮蔽材を変形することできる。したがって、放射線照射の現場で、患部の位置と放射線照射装置の角度などの関係から、最も望ましい形状の遮蔽物を形成することができる。
【0018】
本発明の趣旨は、上記の粘弾性およびタングステンの含有量を満足すれば、タングステンを保持する保持材の構成は特に限定されるものではない。しかし、タングステンが90質量%以上含有させた状態で、粘弾性をある程度制御させるには、保持材として以下のものを混合するのが好適である。
【0019】
<主材>
保持材の主材であり、全体の4.0~7.0質量%含まれる。温度が上がると柔らかく、温度変性放射線遮蔽材中の含有率を上げると、tanδを上げる方向に特性が変化する。しかし、7.0質量%を超えて含有させると、60℃に加熱した時のtanδの値は十分に高く(柔らかく)なるが、手で変形させる際に変形しにくさを覚える。
【0020】
主材としては、所謂エラストマーと呼ばれるゴム材が利用できる。例えば、天然ゴムや、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム等の合成ゴム、またスチレン系、オレフィン/アルケン系、塩ビ系、ウレタン系、アミド系といった熱可塑性エラストマーの少なくとも1種を好適に利用できる。また、複数種を混合して用いてもよい。主材としては、特に、エチレン・プロピレンゴムが好適に利用できる。
【0021】
<補材>
主材の温度特性を調整するために、使用される。例えば、主材となるゴム材が、人肌の温度である36℃では柔らかすぎる場合に、その温度では、まだ硬さを有する熱可塑性樹脂を用いれば、36℃付近のtanδを下げることができる。また、変形させるとは、形を変えたときに、そのままの形状を維持する必要があり、弾性をもって、変形前に戻ってしまっては、変形しやすいとは言えない。可塑剤は、主材となるゴムの弾性を低下させ、変形が残りやすい特性にする。
【0022】
補材は、全体の0.5~3.5質量%含まれる。補材としては、熱可塑性樹脂および可塑剤を利用することができる。特に、融点が50~60℃の熱可塑性樹脂は好適に利用できる。なお、補材も複数種を混合して用いることができる。
【0023】
タングステンは粉末状のものが好適に利用できる。最終製品である温度変性放射線遮蔽材としての密度は、6.0Mg/mから12.0Mg/mに設定するのがよい(質量%で、88~97質量%に相当する)。放射線吸収量を大きくし放射線遮蔽性能を高めるためである。使用するタングステン粉末は、平均粒径は1μm以上、50μm以下が好ましい。タングステン粉末の平均粒径をこの範囲に設定することで、保持材との混錬が良好になる。なお、タングステン粉末は粒径の異なる粉末を複数混合して使用してもよい。
【0024】
tanδは、温度変性放射線遮蔽材を所定の大きさに成形し、振動型粘弾性温度特性測定器で計測する。この装置では、弾性を表す貯蔵弾性率E’と粘性を表す損失弾性率E’’が測定される。tanδはこれらの比(損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))としてあらわされる。単位はない。tanδの値がゼロであれば、完全弾性体であり、変形しない。tanδの値が大きくなれば、粘性が増し、柔らかくなる。
【0025】
基本的には、弾性項E’が粘性項E’’のおよそ2倍以上あれば、形が変形することはないと考えられる。一方、粘性項E’’が弾性項E’より大きくなれば、変形は容易と考えられる。しかし、本発明に係る温度変性放射線遮断材は、放射線技師が放射線治療の現場で、患部にフィットした形状を作るので、人が操作する感覚が非常に重要となる。そこで、以下のような官能実験を交えた実施例をおこない、36℃でのtanδは0.58以下であり、60℃でのtanδが0.80以上となれば望ましいことをつきとめた。
【実施例
【0026】
主材として、エチレン・プロピレンゴム(EPT4010:三井化学株式会社製)を用いた。補材としては、熱可塑性樹脂(Vestenamer:エボニック社製)、および可塑剤として、液状イソプレンゴム(LIR-30:株式会社クラレ製)の2種を用いた。
【0027】
タングステン粉末は、日本新金属株式会社製のW-3KD(平均粒度1.50~1.99μm、以下「タングステンA」と呼ぶ。)とW-6(平均粒度8.0~16.00μm、以下「タングステンB]と呼ぶ。)を用いた。
【0028】
サンプル1(以下「SP1」と記す。)を以下の組成で調製した。
主材:エチレン・プロピレンゴム 80重量部(5.67質量%)
補材:熱可塑性樹脂 20重量部(1.42質量%)
:可塑剤 10重量部(0.71質量%)
タングステンA:650重量部(46.1質量%)
タングステンB:650重量部(46.1質量%)
【0029】
サンプル2(以下「SP2」と記す。)を以下の組成で調製した。
主材:エチレン・プロピレンゴム 90重量部(6.38質量%)
補材:熱可塑性樹脂 10重量部(0.71質量%)
:可塑剤 10重量部(0.71質量%)
タングステンA:650重量部(46.1質量%)
タングステンB:650重量部(46.1質量%)
【0030】
サンプル3(以下「SP3」と記す。)を以下の組成で調製した。
主材:エチレン・プロピレンゴム 100重量部(7.09質量%)
補材:熱可塑性樹脂 0重量部(0.0質量%)
:可塑剤 10重量部(0.71質量%)
タングステンA:650重量部(46.1質量%)
タングステンB:650重量部(46.1質量%)
【0031】
サンプル4(以下「SP4」と記す。)を以下の組成で調製した。
主材:エチレン・プロピレンゴム 70重量部(4.96質量%)
補材:熱可塑性樹脂 30重量部(2.13質量%)
:可塑剤 10重量部(0.71質量%)
タングステンA:650重量部(46.1質量%)
タングステンB:650重量部(46.1質量%)
【0032】
サンプル5(以下「SP5」と記す。)を以下の組成で調製した。
主材:エチレン・プロピレンゴム 90重量部(6.92質量%)
補材:熱可塑性樹脂 10重量部(0.77質量%)
:可塑剤 0.0重量部(0.0質量%)
タングステンA:600重量部(46.15質量%)
タングステンB:600重量部(46.15質量%)
【0033】
サンプル6(以下「SP6」と記す。)を以下の組成で調製した。
主材:エチレン・プロピレンゴム 90重量部(6.70質量%)
補材:熱可塑性樹脂 10重量部(0.74質量%)
:可塑剤 3.0重量部(0.22質量%)
タングステンA:620重量部(46.17質量%)
タングステンB:620重量部(46.17質量%)
【0034】
サンプル7(以下「SP7」と記す。)を以下の組成で調製した。
主材:エチレン・プロピレンゴム 95重量部(7.07質量%)
補材:熱可塑性樹脂 5.0重量部(0.37質量%)
:可塑剤 3.0重量部(0.22質量%)
タングステンA:620重量部(46.17質量%)
タングステンB:620重量部(46.17質量%)
【0035】
サンプル8(以下「SP8」と記す。)を以下の組成で調製した。
主材:エチレン・プロピレンゴム 70重量部(4.75質量%)
補材:熱可塑性樹脂 30重量部(2.03質量%)
:可塑剤 15重量部(1.02質量%)
タングステンA:680重量部(46.1質量%)
タングステンB:680重量部(46.1質量%)
【0036】
各原料は上記の組成に基づいて二本ロールを用いて混合分散させ、所定のサンプルを作製した。作製したサンプルは、幅5mm、長さ45mm、厚さ2mmに成形し、振動型粘弾性温度特性測定器(DMS6100:株式会社日立製)を用いて、-60℃から60℃、周波数1Hzで測定した。測定の例を図1に示す。
【0037】
図1を参照して、横軸は温度(temp)(℃)であり、左縦軸は弾性率E’およびE’’(Pa)であり、右縦軸はtanδである。また、実線が貯蔵弾性率E’、二重線が損失弾性率E’’であり、点線がtanδである。各サンプルとも、22℃、36℃、60℃のtanδを求めた。
【0038】
次に人による官能試験について説明する。各サンプルはランダムな番号を付して、約150gの塊にした。試験者は、放射線科の放射線技師4名である。各サンプルは60℃および36℃で5分加熱を行い、サンプルを手で捏ねながら、60℃では成形性、36℃では形状の維持性を5段階で評価した。評価は2分以内で行った。評価の基準は以下の通りである。
【0039】
5 問題なく利用でき、使いやすい
4 問題なく利用できる
3 利用可能
2 問題はあるが利用可能
1 臨床現場では使えない
【0040】
各サンプルとも4名の評価者の60℃の成形性および36℃の形状維持性の評価点の平均を求め平均評価点を加算することで合計点とした。表1に各サンプルの組成、tanδ、官能試験の結果を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
これを官能試験の結果で並べ替えたものを表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
サンプルSP4は、全ての評価者で大変使いやすいという評価を得た。また、サンプルSP1もそれに次ぐ評価を得た。このことから、36℃でのtanδは、0.5以下であり、60℃のtanδは0.8以上であれば、60℃での成形性は使いやすい程度の柔らかさを有し、36℃での形状維持性は、実用上問題のない硬さになっていることが分かる。
【0045】
サンプルSP6は60℃での成形性が多少困難であった。しかし36℃での形状維持性については問題なく利用可能できるほどであった。また、サンプルSP8は逆に36℃の形状維持性が多少弱く、少し硬いと感じた。しかし、60℃での成形性は、問題なく利用できる程度に近かった。結果、SP6とSP8は官能試験の結果が同点となった。
【0046】
サンプルSP2は60℃の成形性は実用レベルであり、36℃では、若干柔らかかったが、利用できるレベルであった。
【0047】
以上の5サンプルは、順位はついているものの、臨床での利用は十分であるとの判断であった。したがって、tanδで見ると、36℃のtanδが0.56以下であり、60℃のtanδが0.8以上であれば、臨床の現場で問題なく利用できることが分かった。
【0048】
次にサンプルSP5は、36℃でのtanδが0.586と高く、この温度において柔らかかった。官能試験は4名の平均で1.5であったが、評価1を付けた評価者もいた。また、サンプルSP3は、36℃でのtanδが0.64と高かった。官能試験では、この温度で評価1を付けた者はいなかったが、60℃の高温側で成形性が非常に悪かった。
【0049】
サンプルSP7は、36℃のtanδが0.591と高く、36℃形状維持性では、評価1であった。
【0050】
サンプルSP3およびSP7はtanδの値は十分に高く、柔らかいので、成形性は利用可能と思われたが、主材が7.0質量%以上と多いため、柔らかくても却って弾性を有し、成形性に問題があったと考えられた。また、サンプルSP5、SP3、SP7は36℃でのtanδが大きく、形状維持性が低くなったと考えられる。
【0051】
以上のように本発明に係る温度変性放射線遮蔽材は、粘弾性の温度特性で、36℃でのtanδを0.58以下にし、60℃でのtanδを0.80以上としたので、60℃で変形しやすく、また、36℃では変形しにくい遮蔽材を提供することができる。これは、口腔内を始め、特に表在性の腫瘍への放射線照射治療の際に、正常組織を放射線から保護するために好適に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る温度変性放射線遮蔽材は、放射線治療を行う際の遮蔽材として好適に利用することができる。また、医療用途以外にも、放射線遮蔽を必要とする建築材や、シーリング材等にも利用することができる。
図1